説明

ブラシレスモータ及び電動パワーステアリング装置

【課題】トルクリップルの発生を抑えつつ、バスバーを廃して小型化及び低コスト化を図ることができるブラシレスモータを提供すること。
【解決手段】10極12スロット型のブラシレスモータとして構成されたモータは、その12個のモータコイル17のうちの6つとして、周方向に隣り合う二つの巻回方向が相違するように環状配置された6つの環状結線コイル32を備える。また、モータは、残る6つのモータコイル17として、当該各環状結線コイル32間を接続する6本の接続線31に対し、その周方向に隣り合う二つの巻回方向が相違するように一端(接続端35a)が接続されることにより、各環状結線コイル32間に配置される6つの星型結線コイル35を備える。そして、各星型結線コイル35の他端(自由端35b)には、その周方向に隣り合う三端子を組として三相の駆動電圧が印加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレスモータ及び電動パワーステアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、10極12スロット及び14極12スロット、並びにこれらの磁極数及びスロット数を整数倍した構成を有するブラシレスモータにおいては、各モータコイルの結線構造として環状結線(Δ結線)及び星型結線(Y結線)を併用することにより、そのトルクリップルの低減が可能であることが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、6個のモータコイルを環状結線するとともに、これらの環状結線コイルを二つずつ三相に区分する各位置に、残る6個のモータコイルを二つずつ直列に接続することにより三相の星型結線を形成する構成が開示されている(第3,4図参照)。また、同特許文献1には、同じく6個のモータコイルを環状結線するとともに、直列接続された二つを組として残る6個のモータコイルを星型結線し、これらの環状結線コイルと星型結線コイルとを並列に接続する構成が開示されている(第9図参照)。そして、特許文献2には、並列接続された2個を組として6個のモータコイルを環状結線するとともに、並列接続された2個を組として残る6個のモータコイルを星型結線し、その環状結線コイル群と星型結線コイル群とを並列に接続する構成が開示されている(第3図参照)。
【0004】
即ち、環状に配置される12n個(nは整数)のモータコイルのうち、その半分を環状結線により三相接続するとともに、残る半分を星型結線により三相接続する。そして、各環状結線コイルの電流位相と各星型結線コイルの電流位相とをπ/6(電気角)ずらすことにより、両者に生ずる6次成分のトルクリップルを互いに打ち消すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3399330号明細書
【特許文献2】特開2010−104112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記各特許文献に示されるような結線構造を採用することで、周方向に離間したモータコイル間を接続する必要性が生ずる。このため、従来、図10に示すように、各相(U,V,W,中性点)に対応する円環状の導電板50U,50V,50W,50N及び給電端子51U,51V,51Wを有したバスバー52及び当該バスバー52を保持する絶縁樹脂ホルダー(図示略)を用いて各モータコイルを結線することにより、その組付け性及び信頼性の向上を図る構成が一般的となっている。
【0007】
しかしながら、例えば、電動パワーステアリング装置(EPS)のような電動アクチュエータの駆動源に用いられるモータにおいては、常に、その小型化及び低コスト化が求められており、上記のようなバスバー52(及び絶縁樹脂ホルダー)は、その阻害要因の一つにもなっている。そのため、従来、トルクリップルの発生を抑えつつ、バスバーを廃して小型化及び低コスト化を図ることができる新たな技術の創出が求められていた。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、トルクリップルの発生を抑えつつ、バスバーを廃して小型化及び低コスト化を図ることができるブラシレスモータ及び電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、10n極又は14n極(但し、nは整数)の磁極が形成されたロータと、12n個のモータコイルを有するステータと、を備えたブラシレスモータであって、前記ステータは、周方向に隣り合う二つの巻回方向が相違するように環状配置された6n個の環状結線コイルと、前記各環状結線コイル間を接続する6n本の接続線に対して、それぞれ、その周方向に隣り合う二つの巻回方向が相違するように一端が接続されることにより、前記各環状結線コイル間に配置される6n個の星型結線コイルと、を備えてなるとともに、前記各星型結線コイルの他端には、その周方向に隣り合う三端子を組として三相の駆動電圧が印加されること、を要旨とする。
【0010】
上記構成によれば、周方向に離間した位置のモータコイルを接続することなく、その電流位相が相互に「π/6」ずれた各6n個ずつの環状結線コイル及び各星型結線コイルを形成することができる。その結果、トルクリップルの発生を抑えつつ、バスバーを廃して小型化及び低コスト化を図ることができるようになる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のブラシレスモータを備えた電動パワーステアリング装置であること、を要旨とする。
上記構成によれば、トルクリップルの小さな小型且つ低コストのモータを駆動源とした電動パワーステアリング装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、トルクリップルの発生を抑えつつ、バスバーを廃して小型化及び低コスト化を図ることが可能なブラシレスモータ及び電動パワーステアリング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】電動パワーステアリング装置(EPS)の概略構成図。
【図2】モータの断面図。
【図3】ステータの斜視図。
【図4】環状に結線されたモータコイル(環状結線コイル)の斜視図。
【図5】(a)(b)各環状結線コイル間の各接続線に後付けされるモータコイル(星型結線コイル)の斜視図。
【図6】各モータコイル及び各接続線により形成される巻線構造を示す斜視図。
【図7】環状結線コイルの製造工程を示す説明図。
【図8】モータの巻線展開図。
【図9】モータの結線図。
【図10】バスバーの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を電動パワーステアリング装置(EPS)の駆動源を構成するブラシレスモータに具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態のEPS1において、ステアリング2が固定されたステアリングシャフト3は、ラックアンドピニオン機構4を介してラック軸5と連結されており、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト3の回転は、ラックアンドピニオン機構4によりラック軸5の往復直線運動に変換される。そして、このステアリングシャフト3の回転に伴うラック軸5の往復直線運動が、同ラック軸5の両端に連結されたタイロッド6を介して図示しないナックルに伝達されることにより、転舵輪7の舵角が変更される。
【0015】
尚、本実施形態のステアリングシャフト3は、コラムシャフト3a、インターミディエイトシャフト3b、及びピニオンシャフト3cを連結することにより形成される。そして、本実施形態のEPS1は、モータ10を駆動源として、そのコラムシャフト3aを回転駆動する所謂コラム型のEPSとして構成されている。
【0016】
即ち、本実施形態のEPS1は、減速機構9によりモータ10の回転を減速してステアリングシャフト3(コラムシャフト3a)に伝達する。そして、これにより、そのモータトルクをアシスト力として操舵系に付与する構成となっている。
【0017】
次に、本実施形態のEPS1の駆動源を構成するモータ10について説明する。
図2に示すように、本実施形態のモータ10は、ハウジング11内に収容されたステータ12と、同ステータ12の径方向内側において回転自在に支承されたロータ13とを備えたブラシレスモータとして構成されている。
【0018】
詳述すると、ステータ12は、略円筒状をなすハウジング11の内周に固定された円環部14と、同円環部14から径方向内側に向って延びる複数のティース15とを備えてなる。具体的には、本実施形態のステータ12は、円環部14の全周に亘って均等配置された「12本」のティース15を備えている。そして、これらの各ティース15には、それぞれモータコイル17が巻回されている。
【0019】
尚、本実施形態のステータ12は、その円環部14をティース15毎に分割した形状を有する複数の分割コア16を環状に連結してなる所謂分割コア連結型の構成を有している。そして、同ステータ12は、軸方向から圧入されることにより、その外周(円環部14の外周)がハウジング11の内周に固定された状態で、同ハウジング11内に収容されるようになっている。
【0020】
一方、ロータ13は、回転軸21とともに一体回転するロータコア22の外周にマグネット23を固定することにより形成される。具体的には、本実施形態のマグネット23には、円筒状のリングマグネットが用いられるとともに、同マグネット23の外周には、着磁により「10極」の磁極が形成されている。そして、ロータ13は、その回転軸21がハウジング11に設けられた軸受(図示略)に軸支されることにより、上記ステータ12の内側において回転自在に支承されるようになっている。
【0021】
即ち、ロータ13は、そのマグネット23の各磁極が形成する界磁磁束とステータ12側に形成される回転磁界との関係に基づき回転する。そして、本実施形態のモータ10は、そのハウジング11の軸方向端部から外部に突出された回転軸21の一端を出力部として、ロータ13の回転により生ずるモータトルクを取り出すことが可能となっている。
【0022】
(モータの巻線構造及び製造方法)
次に、本実施形態のモータにおける巻線(コイル)構造及び同モータの構成について説明する。
【0023】
図3は、本実施形態におけるステータの斜視図である。また、図4は、環状に結線されたモータコイル(環状結線コイル)の斜視図、図5(a)(b)は、各環状結線コイル間の各接続線に後付けされるモータコイル(星型結線コイル)の斜視図である。そして、図6は、これらの各モータコイル及び各接続線が形成する本実施形態のモータにおける巻線構造を示す斜視図である。
【0024】
図3に示すように、本実施形態のステータ12において、環状配置された各分割コア16の軸方向一端側、即ち各ティース15への巻回状態で環状配置された各モータコイル17の軸方向一端側には、略円環状をなす絶縁ホルダ30が取着されている。そして、各モータコイル17は、この絶縁ホルダ30を挟む軸方向位置において、6本の接続線31を介して互いに結線されている。
【0025】
尚、本実施形態の絶縁ホルダ30は、絶縁樹脂により形成されるとともに、ステータ12を構成する各分割コア16、詳しくは、上記円環部14となる部分を、その円環状に配置された状態で保持することが可能となっている。そして、本実施形態のステータ12は、この絶縁ホルダ30により各分割コア16を仮組みした状態で、ハウジング11内に圧入されるようになっている。
【0026】
詳述すると、図4及び図6に示すように、本実施形態のモータ10は、周方向に隣り合う二つの巻回方向が相違するように上記各接続線31を介して環状結線(Δ結線)された6つのモータコイル17(環状結線コイル32)を備えている。
【0027】
尚、図7に示すように、本実施形態では、治具33を用いて略均等間隔で配置された6本のティース15(分割コア16)に対して、交互に巻回方向(右巻き又は左巻き)を反転しつつ連続的に巻線34を巻回する。そして、その巻線34の始端34a及び終端34bを接続することにより、図4に示されるような、各接続線31を挟んで右巻きコイル32Rと左巻きコイル32Lとが周方向に交互に配置される態様で上記各環状結線コイル32が形成される。
【0028】
また、図6及び図8に示すように、本実施形態では、上記各接続線31の途中には、それぞれ、図5(a)に示すような右巻きコイル35R、又は図5(b)に示すような左巻きコイル35Lの一端(接続端35a)が接続されている。具体的には、本実施形態では、周方向に隣り合う二本の接続線31について、その後付けにより接続された二つのモータコイル17の巻回方向が相違するように、上記右巻きコイル35R及び左巻きコイル35Lが交互に接続されている。
【0029】
尚、本実施形態では、これら右巻きコイル35R及び左巻きコイル35Lの接続端35aには、それぞれ、略U字状に形成された掛合部36が形成されている。そして、各右巻きコイル35R及び左巻きコイル35Lは、この掛合部36をかしめることにより、その対応する各接続線31に接続されるようになっている。
【0030】
更に、本実施形態では、これら後付けにより各接続線31に接続された6つのモータコイル17、即ち各3つずつの上記右巻きコイル35R及び左巻きコイル35Lは、それぞれ、その接続された各接続線31に対応する周方向位置において、上記各環状結線コイル32間に配置されている。そして、これら右巻きコイル35R及び各左巻きコイル35Lの他端(自由端35b)には、その周方向に隣り合う三端子を組として三相(U,V,W)の駆動電圧が印加されるようになっている。
【0031】
即ち、図9の結線図に示すように、本実施形態では、これら各接続線31に後付けされた6つのモータコイル17(35R,35L)は、上記各接続線31及び各環状結線コイル32の環状結線αを中性点とした星型結線コイル35を構成する。そして、図8に示すように、その給電端子37を構成する自由端35bに対して、上記の態様で三相の駆動電圧を印加することにより、当該各星型結線コイル35に通電される電流位相が、上記各環状結線コイル32に通電される電流位相に対して電気角で「π/6」ずれるように構成されている。
【0032】
尚、図8及び図9中、「U−」「V−」「W−」の位相符号を付した各環状結線コイル32は、それぞれ、同相コイルである「U+」「V+」「W+」の位相符号を付した各環状結線コイル32に対し、電気角で「180°」ずれた位相を有することを示している。そして、各星型結線コイル35に付した「X+」「Y+」「Z+」「X−」「Y−」「Z−」の各位相符号は、それぞれ、各環状結線コイル32に付した「U+」「V+」「W+」「U−」「V−」「W−」の各位相符号に対応したものとなっている。
【0033】
また、本実施形態のモータ10には、その軸方向一端に、当該モータ10に対して三相の駆動電力を供給する図示しない電子制御装置(ECU)が取着されるようになっている。そして、本実施形態では、上記のように給電端子37を構成する各星型結線コイル35の自由端35b(図3参照)は、そのECU上に実装された電子回路(PWMインバータ出力端子)に対して、直接に接続される構成となっている。
【0034】
さらに詳述すると、図3に示すように、本実施形態では、上記絶縁ホルダ30の周縁部には、外周に開口する複数の切欠き40が形成されており、同絶縁ホルダ30は、各環状結線コイル32間の各接続線31(図4参照)を径方向外側に押し広げた状態で、その円環状に配置された分割コア16の軸方向一端に取着される。そして、上記各星型結線コイル35の各端子、即ち上記掛合部36が形成された接続端35a及び給電端子37を構成する自由端35b、並びに上記各環状結線コイル32の各端子32cを、これらの各切欠き40に挿入することにより、各接続線31は、絶縁ホルダ30を挟んで各モータコイル17と対向する軸方向位置に配置されるようになっている。
【0035】
また、本実施形態の絶縁ホルダ30には、各星型結線コイル35の自由端35bに対応する位置において、当該各自由端35bの移動を規制する複数の保持部41が設けられている。具体的には、本実施形態の保持部41は、当該絶縁ホルダ30の上面30a、即ち各接続線31が配置される側の面から、軸方向、当該各接続線31側に突出する態様で略円筒状に形成されている。そして、更に、その側面には、上記各切欠き40に連続する切欠き41aが形成されている。
【0036】
即ち、各星型結線コイル35の自由端35bは、この切欠き41aを介して各保持部41の筒内に挿入される。そして、本実施形態では、これら各保持部41により各自由端35bの移動を規制、詳しくは、各接続線31に近接する方向の移動を規制することにより、当該各接続線31と各自由端35bとの接触を防止する構成になっている。
【0037】
以上、本実施形態によれば、以下のような作用・効果を得ることができる。
(1)10極12スロット型のブラシレスモータとして構成されたモータ10は、その12個のモータコイル17のうちの6つとして、周方向に隣り合う二つの巻回方向が相違するように環状配置された6つの環状結線コイル32を備える。また、モータ10は、残る6つのモータコイル17として、当該各環状結線コイル32間を接続する6本の接続線31に対し、その周方向に隣り合う二つの巻回方向が相違するように一端(接続端35a)が接続されることにより、各環状結線コイル32間に配置される6つの星型結線コイル35を備える。そして、各星型結線コイル35の他端(自由端35b)には、その周方向に隣り合う三端子を組として三相の駆動電圧が印加される。
【0038】
上記構成によれば、周方向に離間した位置のモータコイル17を接続することなく、その電流位相が相互に「π/6」ずれた各6つずつの環状結線コイル32及び各星型結線コイル35を形成することができる。その結果、トルクリップルの発生を抑えつつ、バスバーを廃して小型化及び低コスト化を図ることができるようになる。
【0039】
(2)各ティース15への巻回状態で環状配置された各モータコイル17の軸方向一端側には、略円環状をなす絶縁ホルダ30が取着される。
これにより、構成簡素、且つ組み立て工程の煩雑化を招くことなく、各モータコイル17間の短絡を防止することができる。また、通常、所謂インナーロータ型のブラシレスモータにおいて、そのステータは、複数の分割コア16を連結することにより形成される。そして、上記構成によれば、その絶縁ホルダ30により、円環状に仮組みされた各分割コア16を保持することが可能になる。その結果、その組み立て作業を効率化して、製造コストを低減することができるようになる。
【0040】
(3)絶縁ホルダ30の周縁部には、各環状結線コイル32の各端子32c、及び各星型結線コイル35の各端子(接続端35a及び自由端35b)を挿入可能な複数の切欠き40が形成される。
【0041】
上記構成によれば、各環状結線コイル32間の各接続線31を径方向外側に押し広げた状態で絶縁ホルダ30を取着する。そして、その後、各星型結線コイル35の各端子(35a,35b)及び各環状結線コイル32(32c)を上記各切欠き40に挿入することにより、容易に、絶縁ホルダ30を挟んで各モータコイル17と対向する軸方向位置に各接続線31を配置させることができる。その結果、その組み立て作業を効率化して、更なる製造コストの低減を図ることができるようになる。
【0042】
(4)絶縁ホルダ30は、各星型結線コイル35の自由端35bに対応する位置に形成されて該自由端35bの移動を規制する保持部41を備える。このような構成とすることで、各自由端35bと各接続線31との接触を防止することができる。更に、各星型結線コイル35が、周方向において交互に巻回方向(右巻き・左巻き)が反転するように正しく接続されているか否かを容易に確認することができる。そして、これにより、更なる信頼性の向上を図ることができる。
【0043】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、本発明をEPS1の駆動源として用いられるブラシレスモータに具体化した。しかし、これに限らず、本発明は、EPS以外の用途に用いられるブラシレスモータに適用してもよい。そして、EPSに具体化する場合であっても、上記実施形態に示されたようなコラム型のEPSに限らず、その他、ラック型やピニオン型のEPSに適用してもよい。
【0044】
・上記実施形態では、本発明を10極12スロット型のブラシレスモータに具体化した。しかし、これに限らず、14極12スロット型の構成に具体化してもよい。そして、更に、その整数倍の磁極数及びスロット数(モータコイル数)を有する10n極型及び14n極型(但し、「n」は整数)の構成に具体化してもよい。
【0045】
・上記実施形態では、各モータコイル17の軸方向一端側に絶縁ホルダ30を取着することとしたが、当該絶縁ホルダ30に代えて、樹脂モールドを行う構成としてもよい。
次に、以上の実施形態から把握することのできる技術的思想を記載する。
【0046】
(イ)前記ステータは、環状配置された前記各モータコイルの軸方向一端に取着される円環状の絶縁ホルダを備え、前記各モータコイルは、前記絶縁ホルダを挟む軸方向位置において前記各接続線を介して結線されることにより、前記各環状結線コイル及び前記各星型結線コイルを構成すること、を特徴とするブラシレスモータ。
【0047】
上記構成によれば、構成簡素、且つ組み立て工程の煩雑化を招くことなく、各モータコイル間の短絡を防止することができる。また、通常、所謂インナーロータ型のブラシレスモータにおいて、そのステータは、複数の分割コアを連結することにより形成される。そして、上記構成によれば、その絶縁ホルダにより、円環状に仮組みされた各分割コアを保持することが可能になる。その結果、その組み立て作業を効率化して、製造コストを低減することができるようになる。
【0048】
(ロ)前記絶縁ホルダの周縁部には、前記各環状結線コイル及び各星型結線コイルの各端子を挿入可能な複数の切欠きが設けられること、を特徴とするブラシレスモータ。
上記構成によれば、各環状結線コイル間の各接続線を径方向外側に押し広げた状態で絶縁ホルダを取着する。そして、その後、各星型結線コイルの各端子及び各環状結線コイルを各切欠きに挿入することにより、容易に、絶縁ホルダを挟んで各モータコイルと対向する軸方向位置に各接続線を配置させることができる。その結果、その組み立て作業を効率化して、更なる製造コストの低減を図ることができるようになる。
【0049】
(ハ)前記絶縁ホルダは、前記各星型結線コイルの自由端に対応する位置に形成されて該自由端の移動を規制する保持部を備えること、を特徴とするブラシレスモータ。
上記構成によれば、各自由端と各接続線との接触を防止することができる。更に、各星型結線コイルが、周方向において交互に巻回方向(右巻き・左巻き)が反転するように正しく接続されているか否かを確認することができる。そして、これにより、更なる信頼性の向上を図ることができる。
【0050】
(ニ)10n極又は14n極(但し、nは整数)の磁極が形成されたロータと、12n個のモータコイルを有するステータと、を備えるブラシレスモータの製造方法であって、交互に巻回方向を反転しつつ6n個の環状結線コイルを形成する工程と、前記各環状結線コイル間に形成される6n本の各接続線に対して、それぞれ、コイルの一端を接続することにより、該各環状結線コイル間に配置されるとともに周方向に隣り合う二つの巻回方向が相違する6n個の星型結線コイルを形成する工程と、を備えること、を特徴とするブラシレスモータの製造方法。
【符号の説明】
【0051】
1…電動パワーステアリング装置(EPS)、10…モータ、12…ステータ、13…ロータ、14…円環部、15…ティース、16…分割コア、17…モータコイル、23…マグネット、30…絶縁ホルダ、31…接続線、32…環状結線コイル、32R…右巻きコイル、32L…左巻きコイル、32c…端子、34…巻線、35…星型結線コイル、35R…右巻きコイル、35L…左巻きコイル、35a…接続端、35b…自由端、36…掛合部、37…給電端子、40…切欠き、41…保持部、41a…切欠き、α…環状結線、50U,50V,50W,50N…導電板、51U,51V,51W…給電端子、52…バスバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10n極又は14n極(但し、nは整数)の磁極が形成されたロータと、12n個のモータコイルを有するステータと、を備えたブラシレスモータであって、
前記ステータは、周方向に隣り合う二つの巻回方向が相違するように環状配置された6n個の環状結線コイルと、
前記各環状結線コイル間を接続する6n本の接続線に対して、それぞれ、その周方向に隣り合う二つの巻回方向が相違するように一端が接続されることにより、前記各環状結線コイル間に配置される6n個の星型結線コイルと、を備えてなるとともに、
前記各星型結線コイルの他端には、その周方向に隣り合う三端子を組として三相の駆動電圧が印加されること、を特徴とするブラシレスモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のブラシレスモータを備えた電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−90497(P2012−90497A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237425(P2010−237425)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】