説明

ブラシローラ再生装置及びブラシローラ再生方法

【課題】使用済みとなったブラシローラを安価で実用的に再生可能なブラシローラ再生装置及び再生方法を提供する。
【解決手段】このガイド部材4には、圧縮空気吹き付け手段である圧縮空気噴射ノズル6を保持する保持部7を取り付けた移動部材5が取り付けられており、移動部材5のE方向への移動と共に、回収部8も圧縮空気噴射ノズル6と同時に塗布ブラシローラ27を介して圧縮空気噴射ノズル6と対向した状態でE方向に移動可能となっている。さらに、支持板2には、ブラシ部27bに加圧水蒸気10aを吹き付ける加圧水蒸気噴射ノズル10を搭載した移動台11が2本の案内ロッド12で塗布ブラシローラ27の回転軸と平行に移動可能なように取り付けら、移動台11は、モータ13に連結されたスクリューネジ14を回転させることによってG方向に移動可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタや複写機等の画像形成装置において使用され、回転軸の外周に植毛体を取り付けてトナー像が形成される像担持体の表面と摺接する前記植毛体の植毛繊維からなるブラシ部を有するブラシローラの再生装置及び再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年における地球環境保護の気運の高まりから、複写機やプリンタ等の画像形成装置においても、省資源、省エネルギー、廃棄物の削減を目的として、部品、ユニット、材料などを、再生・再利用(リサイクル)することが必要となってきている。使用済みになって回収された部品、ユニットなどには、劣化したトナーが残留している場合が多く、回収された部品、ユニット等を再利用するためには、残留トナーを除去する必要があり、この残留トナーを除去しないと再利用時に画質に影響を及ぼす恐れもある。しかしながら、再生工程における残留トナーの除去は、多くの時間を要し、かつ大量に洗浄水を使用するなど、高コストであるのが現状である。
また、重要機能部品である回転軸の外周に植毛体を取り付けてトナー像が形成される像担持体の表面と摺接する前記植毛体の植毛繊維からなるブラシ部を有する帯電ブラシローラや潤滑剤塗布ブラシローラ等のブラシローラの再生は行われておらず、保証期間あるいは、保証枚数が過ぎてしまうと使用済みローラとして破棄されてきた。即ち、この種ブラシローラは、前述のブラシ部内に取り込まれた残留トナーの除去だけでなく、像担持体との摺接によってブラシ部の植毛繊維の毛倒れが生じ、ブラシローラの外形寸法が変動する等の品質上の懸念があるため、破棄扱いしているのが現状である。
特に、潤滑剤塗布ブラシローラでは、潤滑剤の常時加圧当接などで起こる毛倒れや部分的な凹み形状の影響により、像担持体表面への潤滑剤塗布ムラによるクリーニング性能への影響や潤滑剤掻き取り能力が新品のものと比べ劣ることでの画質欠陥が発生するなど不具合が生じるという問題点があり、ブラシローラの機能を回復させるまでには至らず、採算性を考慮し、1回の使用で用済みとしていた。
【0003】
このようなブラシローラの再生について、いくつかの試みがなされており、例えば、特許文献1に記載されているように、帯電ブラシローラを回転させながら圧縮空気をブラシ部に吹き付け付けてブラシ部内に取り込まれている残留トナーや外添剤を飛ばして除去すると共に、指定ブラシ外径よりもはみ出した毛を刃物でカットすることで帯電ブラシローラを再生することが提案されている。また、他の方法としては、帯電ブラシローラを回転させながら、櫛状の起毛処理部と帯電ブラシローラのブラシ部を接触させて植毛繊維を起毛させるとともに、回転刃で毛先をカットすることで帯電ブラシローラを再生することが提案されている。(例えば特許文献2参照)
【特許文献1】特開2001−109239公報
【特許文献2】特開2006−39436公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載のものでは、潤滑剤が常時当接されている場合などは、ブラシ部の植毛繊維が毛倒れて毛先がつぶれているため、指定外径より小径になるケースがほとんどであり、圧縮空気の吹き付けのみで起毛させることは困難であるという問題がある。
また、特許文献2記載のものでも、これも毛先がつぶれているようなケースでは、櫛で起毛させても一時的に起毛できるが時間が経つと、また元の毛倒れ状態になってしまい長期の使用に耐えることができず実用的でない。
本発明は、上記実情を考慮してなされたものであり、使用済みとなったブラシローラを安価で実用的に再生可能なブラシローラ再生装置及び再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、回転軸の外周に植毛体を取り付けてトナー像が形成される像担持体の表面と摺接する前記植毛体の植毛繊維からなるブラシ部を有するブラシローラを回転自在に支持して回転させる回転手段と、前記ブラシ部に圧縮空気を吹き付けてブラシ部内に取り込まれたトナーを前記ブラシ部から除去する圧縮空気吹き付け手段と、前記ブラシ部の植毛繊維の毛倒れ方向と反対方向から前記ブラシ部に加圧水蒸気を吹き付けて、前記ブラシ部の植毛繊維を起毛させる加圧水蒸気吹き付け手段と、を備えたことを特徴とするブラシローラ再生装置としたものである。
また、請求項2の発明は、請求項1記載のブラシローラ再生装置において、前記ブラシローラは、前記像担持体表面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布ブラシローラであることを特徴とする。
また、請求項3の発明は、請求項1又は2記載のブラシローラ再生装置において、前記加圧水蒸気吹き付け手段は、前記回転手段に取り付けられたブラシローラの回転軸と平行移動可能に取り付けられた移動台上に取り付けられ、前記ブラシローラの回転と共に、前記移動台は、前記回転軸と平行移動するように制御されていることを特徴とする。
【0006】
また、請求項4の発明は、請求項3記載のブラシローラ再生装置において、前記加圧水蒸気吹き付け手段は、前記移動台上に取り付けられて前記平行移動の方向に対して直交方向に移動可能な可動台上に取り付けられ、当該可動台上に前記ブラシローラのブラシ部に向けて加圧水蒸気を吹き付ける加圧水蒸気噴出ノズルを取り付け、当該加圧水蒸気噴出ノズルと前記ブラシローラの回転軸との距離を前記可動台を移動させて変動可能としたことを特徴とする。
また、請求項5の発明は、請求項3又は4記載のブラシローラ再生装置において、前記加圧水蒸気吹き付け手段は、前記移動台上に前記ブラシローラのブラシ部に向けて加圧水蒸気を吹き付ける加圧水蒸気噴出ノズルを回動自在に取り付けて当該加圧水蒸気噴出ノズルの前記ブラシローラに対する噴出角度を可変状態で取り付けられることを特徴とする。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項記載のブラシローラ再生装置において、前記回転手段に取り付けられたブラシローラを介して前記圧縮空気吹き付け手段と対向させて前記ブラシ部から除去されたトナーを回収する回収部を配設させたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項7の発明は、請求項6記載のブラシローラ再生装置において、前記圧縮空気吹き付け手段と前記回収部は、前記回転手段に取り付けられたブラシローラの回転軸と平行方向に移動自在に取り付けられ、前記回収部は、前記圧縮空気吹き付け手段と同時に平行移動することを特徴とする。
また、請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれか1項記載のブラシローラ再生装置において、前記加圧水蒸気吹き付け手段は、当該加圧水蒸気の噴出しノズルから2バール〜5バールの噴射圧力で加圧水蒸気を前記ブラシローラのブラシ部に吹き付けることを特徴とする。
また、請求項9の発明は、請求項1乃至8のいずれか1項記載のブラシローラ再生装置において、前記ブラシローラの回転軸上に再生回数をマーキングするマーキング手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項10の発明は、回転軸の外周に植毛体を取り付けてトナー像が形成される像担持体の表面と摺接する前記植毛体の植毛繊維からなるブラシ部を有するブラシローラを回転させながら前記ブラシ部に圧縮空気を吹き付けてブラシ部内に取り込まれたトナーを前記ブラシ部から除去し、その後、前記ブラシローラを回転させながら前記ブラシ部の植毛繊維の毛倒れ方向と反対方向から前記ブラシ部に加圧水蒸気を吹き付けて、前記ブラシ部の植毛繊維を起毛させることを特徴とするブラシローラの再生方法としたものである。
また、請求項11の発明は、請求項10記載のブラシローラの再生方法において、前記加圧水蒸気を前記ブラシローラの回転軸と平行方向に移動させながら前記ブラシ部に吹き付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回転軸の外周に植毛体を取り付けてトナー像が形成される像担持体の表面と摺接する前記植毛体の植毛繊維からなるブラシ部を有するブラシローラを回転自在に支持して回転させる回転手段と、前記ブラシ部に圧縮空気を吹き付けてブラシ部内に取り込まれたトナーを前記ブラシ部から除去する圧縮空気吹き付け手段と、前記ブラシ部の植毛繊維の毛倒れ方向と反対方向から前記ブラシ部に加圧水蒸気を吹き付けて、前記ブラシ部の植毛繊維を起毛させる加圧水蒸気吹き付け手段とを備えたブラシローラ再生装置とすることによって、使用済みとなったブラシローラを安価で実用的に再生可能なブラシローラ再生装置を提供することができる。
また、本発明によれば、回転軸の外周に植毛体を取り付けてトナー像が形成される像担持体の表面と摺接する前記植毛体の植毛繊維からなるブラシ部を有するブラシローラを回転させながら前記ブラシ部に圧縮空気を吹き付けて前記像担持体との摺接によってブラシ部内に取り込まれたトナーを前記ブラシ部から除去し、その後、前記ブラシローラを回転させながら前記ブラシ部の植毛繊維の毛倒れ方向と反対方向から前記ブラシ部に加圧水蒸気を吹き付けて、前記ブラシ部の植毛繊維を起毛させることによって、使用済みとなったブラシローラを安価で実用的に再生可能なブラシローラの再生方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
先ず、本発明による再生装置で再生されるブラシローラについて図1に基づいて説明する。図1は、画像形成装置の感光体周囲の構成を示す概略図である。この画像形成装置は、像担持体としてのドラム状の感光体20を有し、画像形成動作の開始に伴って、感光体20は、矢印B方向に回転駆動される。このとき、感光体20の表面に対向配置された帯電ローラ21が、感光体20の表面の回転に従動して矢印C方向に回転する。帯電ローラ21は、金属製芯金21aと、その周りに巻回されて固定された導電性繊維を植毛した植毛体からなるブラシ部21bからなるブラシローラを構成しており、かかる帯電ローラ21が上述のように感光体20の表面に摺接しながら回転するとき、その芯金21aに所定極性の帯電電圧が印加され、これによって感光体20の表面が所定の極性に帯電される。帯電された感光体20の表面には、露光装置の1例であるレーザ書き込みユニット(図示せず)から出射する光変調されたレーザビームLBが照射され、これによって感光体8の表面に静電潜像が形成される。
【0011】
この静電潜像は、現像装置22によりトナー像として可視像化される。ここでの現像装置22は、粉体状のトナーとキャリアからなる現像剤を収容した現像ケース22aと、現像剤を担持して搬送する現像ローラ22bと、トナーとキャリアを混合、攪拌する攪拌スクリュー22cを有し、回転駆動される現像ローラ22bの周面に担持された現像剤のトナーが感光体20に形成された静電潜像に静電的に移行し、前記静電潜像がトナー像として可視像化される。感光体20には、矢印A方向に駆動、移送される中間転写ベルト23が接触配置され、先に感光体20上に形成されたトナー像が中間転写ローラ24によって中間転写ベルト23に転写される。トナー像転写後の感光体20の表面に付着する転写残トナーは、感光体20の表面に圧接したクリーニングブレード25によって掻き取り除去される。掻き取り除かれた転写残トナーは廃トナー搬送スクリュー26によって搬送され、図示しない廃トナータンクへ蓄積される。
【0012】
クリーニングブレード25によって清浄にされた感光体20表面の幅方向に延設されて回転自在、接離自在に取り付けられた潤滑剤塗布ブラシローラ27が配置されている。この塗布ブラシローラ27には、加圧スプリング28によって塗布ブラシローラ27に対して押圧された固形の潤滑剤からなる潤滑剤29が感光体20の対向位置に接離自在に取り付けられている。潤滑剤29が回転する塗布ブラシローラ27に摺接しているときは、塗布ブラシローラ27が潤滑剤29を削り取り、削り取った潤滑剤29を塗布ブラシローラ27に保持した状態で回転し、塗布ブラシローラ27が感光体20と接触しているときに、この感光体20に潤滑剤を塗布する。感光体20上に塗布された潤滑剤は、潤滑剤均し手段の1例である潤滑剤塗布ブレード30によって周方向に延ばされ平坦に均されて、感光体ドラム20に馴染むようになっている。
なお、本実施形態による画像形成装置においては、感光体20、帯電ローラ21、塗布ブラシローラ27がユニットケースに一体に組み付けられてプロセスカートリッジを構成している。感光体20等の保守、交換時にプロセスカートリッジの取り出しによって、感光体20と共に帯電ローラ21、塗布ブラシローラ27が同時に取り外されるようになっている。
【0013】
使用する潤滑剤の材料としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸鉄、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸銅、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸マグネシウム、オレイン酸亜鉛、オレイン酸マンガン、オレイン酸鉄、オレイン酸コバルト、オレイン酸鉛、オレイン酸マグネシウム、オレイン酸銅、パルチミン酸、亜鉛パルチミン酸コバルト、パルチミン酸銅、パルチミン酸マグネシウム、パルチミン酸アルミニウム、パルチミン酸カルシウム、カプリル酸鉛、カプロン酸鉛、リノレン酸亜鉛、リノレン酸コバルト、リノレン酸カルシウム及びコリノネン酸カドミウム、または同様のラウリン酸、ミリスチン酸などの脂肪酸塩が適宜用いられる。その他にも、例えば、カポットコーポレーションから市販されているCab−O−S11(商品名)のようなコロイド状高温シリカ粉末を使用することもでき、その他、カルナバワックス等のような天然ワックスも適宜用いることができる。またはPVDFなどのフッ素化合物も使用することができる。
【0014】
このような画像形成装置において、潤滑剤塗布ブラシローラ27には、回転軸27aの外周にレーヨンやナイロン等のプラスチック製繊維を植毛した植毛体が巻回されて植毛繊維からなるブラシ部27bが形成されており、このブラシ部27bで前記固形潤滑剤29を削り取って感光体20の表面に塗布している。このような塗布ブラシローラ27は、潤滑剤29や感光体20との摺接によってブラシ部27bの植毛繊維に毛倒れを生じ、潤滑剤29の削り出しや感光体20への潤滑剤の塗布が不十分となって、潤滑剤の塗布ムラ等を発生してしまう。このような植毛繊維の毛倒れが顕著となると、回復はできず、採算性を考慮して1回の使用で廃棄していた。
本発明者らは、潤滑剤等の常時加圧当接でブラシ部の植毛繊維の毛倒れが生じたブラシローラの再生のための起毛について検討した結果、圧縮空気の吹き付けや櫛での処理では、一時的に起毛できても、ほんの数時間レベルで元の状態に戻ってしまい長期の使用に耐えることができず実用てきでないことに気がついた。そこで、その課題を解決する手段として、ブラシローラのブラシ部内に取り込まれている残留トナーを落した状態で、ブラシローラを高速回転させる。そこに加圧水蒸気噴射ノズルから加圧水蒸気を直接ブラシ部に斜めから毛先を起こすように当てることで、ブラシ部の植毛繊維に付着した水蒸気の水分が錘となり、高速回転による遠心力で起毛させると同時に、水蒸気の熱で植毛繊維の起毛状態を維持・安定させることで、毛倒れを再生させることが可能であることを究明した。この究明に基づき、以下に示すブラシローラの再生装置を開発して発明を完成させるに至った。
【0015】
本発明においては、このような潤滑剤塗布ブラシローラ27のブラシ部27bの毛倒れした植毛繊維を再度起毛させて再使用(再生)可能とするブラシローラ再生装置及び再生方法を提供しようとするものである。なお、以下の実施形態においては、潤滑剤塗布ブラシローラの再生について説明するが、前述の帯電ブラシローラ21にも適用可能である。
また、前述においては、潤滑剤塗布ブラシローラによる潤滑剤の塗布が、トナー画像が形成される像担持体の一例として感光体20に対して行われる場合について説明したが、潤滑剤が塗布される像担持体として、前述の中間転写ベルト24を選定し、当該中間転写ベルトに対して潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布ブラシローラにも適用可能である。なお、本発明による再生装置は、ブラシローラのブラシ部に導電性PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維、導電性ナイロン繊維、導電性アクリル繊維、ポリエステル繊維等からなるプラスチック繊維を用いたブラシローラに好適である。
【0016】
図2は、本発明による一実施形態に係る潤滑剤塗布ブラシローラ27の再生装置の概略構成を示す図、図3は、図2のA−A線上で切断した断面図、図4は、図2のガイド部材、圧縮空気噴射ノズル及び回収部を取り外した上面図、図5は、加圧水蒸気噴射ノズルの塗布ブラシローラの配置関係を示す概略模式図である。
本実施形態に係る再生装置は、図2に示すように、基台1上に取り付けられて回転軸27a上にナイロン繊維を植毛した生地を螺旋状に巻き付け固定してブラシ部27bを有する潤滑剤塗布ブラシローラ27をその回転軸27aの両端で回転自在に支持する一対の支持板2を有している。そして、塗布ブラシローラ27の回転軸27aの一端には、回転軸27aを回転させる回転手段であるモータ3の出力軸が取り付けられており、図3で示すように、矢印D方向に回転されるようになっている。
【0017】
支持板2の上端には、ガイド部材4が取り付けられており、このガイド部材4には、圧縮空気吹き付け手段である圧縮空気噴射ノズル6を保持する保持部7を取り付けた移動部材5が取り付けられており、図示しない駆動手段によって、移動部材5がガイド部材4に沿って塗布ブラシローラ27の回転軸27aと平行に矢印E方向に移動可能となっている。そして、保持部7には、塗布ブラシローラ27を介して圧縮空気噴射ノズル6と対向した状態で開口したロート状の開口8aを有する回収部8が連結部9で連結されており、移動部材5のE方向への移動と共に、回収部8も圧縮空気噴射ノズル6と同時に塗布ブラシローラ27を介して圧縮空気噴射ノズル6と対向した状態でE方向に移動可能となっている。従って、圧縮空気ノズル6から、図3に示すように、圧縮空気を塗布ブラシローラ27のブラシ部27bに吹き付けて(矢印F方向)ブラシ部27b内に取り込まれている残留トナーや潤滑剤をブラシ部27bから吹き飛ばして除去すると共に、除去されたトナーや潤滑剤を確実に回収部8内に回収することが可能となる。このように回収部8内に回収されたトナーや潤滑剤は、図示しない吸引手段で吸引して回収パイプ8bを通じて系外に回収されている。なお、図2中6aは、図示しない圧縮空気供給手段と圧縮空気噴射ノズル6とを接続して圧縮空気を圧縮空気噴射ノズル6に送給するパイプである。
なお、圧縮空気ノズル6の噴出し方向Fが、図3に示すように、塗布ブラシローラの中心位置27a1とブラシ部27bの外周27b1との間になるように配設すると、ブラシ部27b内の内奥に取り込まれているトナーや潤滑剤を除去することが可能となるので好適である。
【0018】
また、支持板2には、図4で示すように、塗布ブラシローラ27のブラシ部27bに加圧水蒸気10aを吹き付ける加圧水蒸気噴射ノズル10を搭載した移動台11が2本の案内ロッド12で塗布ブラシローラ27の回転軸と平行(矢印G方向)に移動可能なように取り付けられている。そして、移動台11は、モータ13に連結されたスクリューネジ14を回転させることによって矢印G方向に移動可能となっている。従って、加圧水蒸気噴射ノズル10から塗布ブラシローラ27の回転軸27aの長さ方向の全長に亘り、塗布ブラシローラ27のブラシ部27bに加圧水蒸気を吹き付けることが可能となっている。なお、図4中、符号10bは、加圧水蒸気噴射ノズル10と後述する加圧水蒸気供給手段19とを接続して、加圧水蒸気噴射ノズル10に加圧水蒸気10aを供給するパイプである。
【0019】
さらに、移動台11上には、図2〜図4に示すように、前記G方向に直交する方向(矢印H方向)に移動可能な可動台15が取り付けられており、この可動台15上に、加圧水蒸気噴射ノズル10を矢印I方向に回動自在に取り付けられている。従って、図5に示すように、加圧水蒸気噴射ノズル10からの噴射角度θ、加圧水蒸気噴射ノズル10と塗布ブラシローラ27との離間距離Lを適当に調節可能となっている。なお、噴射角度θは、加圧水蒸気噴射ノズル10の噴射中心線Xと塗布ブラシローラ27の中心線Yとの交差各、離間距離Lは、加圧水蒸気噴射ノズル10の噴射口10aから塗布ブラシローラ27の中心線Yまでの距離を示す。また、図5中符号Sは、移動台11と共に矢印G方向に移動する加圧水蒸気噴射ノズル10の移動速度を表している。
【0020】
次に、このブラシローラ再生装置を使用して、ブラシローラとして、上述の構造を有する潤滑剤塗布ブラシローラ27を再生する方法について説明する。
潤滑剤塗布ブラシローラ27の回転軸27bを支持版部2に取り付け、回転軸27bの一端にモータ3の回転軸を連結する。この場合、画像形成装置内に取り付けられる前述のプロセスカートリッジ内の塗布ブラシローラ27は、保証期間あるいは、保証枚数使用した後、ブラシ部27bに潤滑剤や残留トナーを付着しており、さらに、潤滑剤29の常時当接によってブラシ部27bの植毛繊維の毛倒れや部分的に凹形状になっている。その毛倒れや部分的な凹形状があると品質問題(潤滑剤塗布ムラによるクリーニング不良やトルク変動によるバンディングなど)を引き起こすため、再使用するためには、つぶれた毛先を起毛させなければならない。
【0021】
起毛再生の前準備として、まず、ブラシローラ内に残っている残留トナーを取り除かなければならない。この時の塗布ブラシローラ27の回転は、20〜30〔rpm〕程度の低速回転で構わない。塗布ブラシローラ27内の残留トナーを取り除くために、図2に示すように、圧縮空気噴射ノズル6から圧縮空気をブラシ部27bに吹き付けながら同時に回収部8でブラシ部27bから吹き落とされたトナー等を吸引収集して回収し、系外に搬送する。この操作をブラシ部27bの全長に亘って行い、ブラシ部27bからトナーや潤滑剤を除去する。
ブラシ部27bからの残留トナーの除去作業が終了したら、起毛作業に入る。起毛作業としては、始めに、塗布ブラシローラ27のブラシ部27bの材質等を考慮して、可動台15を移動させるとともに、加圧水蒸気噴射ノズル10を回動させて、加圧水蒸気噴射ノズル10からの噴射角度θ、加圧水蒸気噴射ノズル10と塗布ブラシローラ27との離間距離Lとを所定の値になるようにセットする。
【0022】
続いて、図4に示すように、入力部16からの起毛開始信号を制御部17に送給することによって、制御部17が加圧水蒸気供給手段を作動させて加圧水蒸気を加圧水蒸気噴射ノズル10に供給して塗布ブラシローラ27のブラシ部27bに加圧水蒸気を吹き付ける。同時に、制御部17は、モータ3を駆動させて前述のトナー除去作業時より高速に塗布ブラシローラ27を回転させると共に、モータ13を回転させて移動台11を設定された移送速度でブラシ部27bの一端から他端までG方向に移動させる。この場合、加圧水蒸気温度、加圧水蒸気圧力が整った時点で、加圧水蒸気噴射ノズル10を塗布ブラシローラ27の長手方向に移動させる。こうすることによってブラシ部27bの植毛部分以外の場所から加圧水蒸気10bを当て始めることで、初期の加圧水蒸気ムラによる起毛のバラツキを低減させることが可能となる。そして、移動台11の移動と共に、加圧水蒸気噴射ノズル10をブラシ部27bの一端から他端までG方向に移動させながら加圧水蒸気噴射ノズル10から加圧水蒸気10bをブラシ部27bに吹き付けて、ブラシ部27bの植毛繊維を起毛させる。移動台11がブラシ部27bの他端(終端)に到達したとき、これを検知して、モータ3及び13の回転を停止させる。なお、必要に応じて、加圧水蒸気によって濡れた塗布ブラシローラ27を乾燥させるために、加圧水蒸気噴射ノズル10を移送させるモータ13のみを停止させ、所定の時間、塗布ブラシローラ27を回転させるモータ3を作動させて塗布ブラシローラ27を高速回転させるようにすることもできる。
【0023】
この場合における起毛のイメージとしては、図6(a)に示すように、起毛角度αの植毛繊維27cの毛倒れ方向(矢印K方向)に対して反対方向の斜め方向Xに加圧水蒸気噴射ノズル10から加圧水蒸気を直接塗布ブラシローラ27のブラシ部27b吹き付けて、図6(b)に示すように、斜めから植毛繊維27cの毛先(起毛角度β>α)を起こすようにしている。この場合、このように、加圧水蒸気を斜め方向から吹き付けることによって、植毛繊維27cに付着した加圧水蒸気の水分が錘となり、高速回転による遠心力で起毛させると同時に、加圧水蒸気の熱で植毛繊維の起毛状態を長期に亘り維持・安定させることで、ブラシ部27bの全長に亘って毛倒れを再生させることが可能となる。
【0024】
本実施形態における再生装置には、ブラシ部27bの植毛繊維の特性(材質、太さ、長さ等)等が異なった塗布ブラシローラに対しても起毛再生可能となるように、可動台15をH方向に移動調節可能として加圧水蒸気噴射ノズル10と塗布ブラシローラ27との離間距離Lを所要の距離に設定可能となっている。また、加圧水蒸気噴射ノズル10も可動台15上でI方向に回動させて加圧水蒸気噴射ノズル10からの噴射角度θを所要の角度に設定可能となっている。
その他、調整用パラメータとしては、加圧水蒸気噴射ノズル10と塗布ブラシローラ27との離間距離Lの他に、加圧水蒸気噴射圧力、加圧水蒸気温度、塗布ブラシローラ回転数、加圧水蒸気噴射ノズルの送り速度等があり、これらのパラメータは、モータ3及び13、加圧水蒸気供給手段18を適当に調整することによって、所望の設定値に調整可能となっている。
【0025】
この再生装置を用いて、加圧水蒸気噴射ノズル10からの噴射角度θ、加圧水蒸気噴射ノズル10と塗布ブラシローラ27との離間距離L、加圧水蒸気噴射ノズル10の移送速度Sを変えて潤滑剤塗布ブラシローラの再生状況を試験した。なお、この場合、塗布ブラシローラ27のブラシ部は、330T/48Fの導電性アクリル繊維を密度、30000F/inchに植毛されているものを使用した。また、加圧水蒸気としては、100℃の水蒸気を加圧水蒸気噴射ノズル10から噴射する加圧水蒸気圧力としては、3バール(bar)で噴射し、塗布ブラシローラ27を1,000rpm高速回転させて行った。
【0026】
この試験結果を図7に示す。なお、図7中、○印、△印、×印は、それぞれ、良好、良、不良を示す。この試験結果から、加圧水蒸気噴射ノズル10からの噴射角度θは25度〜45度、加圧水蒸気噴射ノズル10と塗布ブラシローラ27との離間距離Lは、40mm〜50mm、加圧水蒸気噴射ノズル10の移送速度Sは、80mm/min以上とすることが好ましいことが明らかである。噴射角度θが小さい場合には、毛倒れした植毛繊維の先端部分に加圧水蒸気が吹き付けられ、十分に起毛させることが困難となる。また、離間距離Lが近すぎると、植毛繊維を必要以上に起毛させ、長期の起毛状態を維持することが困難となる。さらに、ノズルの移送速度Sが遅い場合には、加圧水蒸気の熱が植毛繊維に必要以上に照射されるために、変形が生じるので好ましくない。
また、加圧水蒸気噴射ノズル10から噴射する加圧水蒸気圧力が2bar以下の場合には、毛倒れした植毛繊維を引き起こすのに十分な力が印加されず、逆に5bar以上の時には、植毛繊維が必要以上に起毛されてしまうので、2bar〜5barの範囲とすることが好ましい。
【0027】
続いて、噴射角度θ=35度、ノズル移送速度S=80mm/min、離間距離L=40mmと設定して、毛倒れした30個の潤滑剤塗布ブラシローラについて、上記再生処理を行い、塗布ブラシローラの処理前と処理後の外径寸法の分布を試験した。図8は、その結果である。白塗りの棒グラフは処理前の外径寸法の分布を示し、黒塗りの棒グラフは、処理後の外径寸法の分布を示している。この結果から明らかなように、約90%の塗布ブラシローラが起毛されて外径寸法規格範囲内に入るまで再生されていることが分かる。
なお、本発明に係る再生装置によって再生されたブラシローラは、再生回数とともに再生能力が低下するので、再生されたブラシローラに再生回数を表示するマークを表示することが好ましい。そして、その再生回数を知ることによって、再度、再生処理を行うか否かの判断を行うことが好ましい。そのため、前記再生装置においては、図4で示すように、塗布ブラシローラ27の回転軸27bの近傍にマーキング手段19を配設し、回転軸27b上に外周円マークを記録し、再生回数と共に、回転軸27bの軸方向にマーキングを移動させて記録し、マーキングの本数を計測することによって再生回数を認識可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による一実施形態の画像形成装置の感光体周囲の構成を示す概略断面図である。
【図2】本発明による一実施形態に係る潤滑剤塗布ブラシローラの再生装置の概略構成を示す平面図である。
【図3】図2のA−A線上で切断した断面図である。
【図4】図2のガイド部材、圧縮空気噴射ノズル及び回収部を取り外した上面図である。
【図5】加圧水蒸気噴射ノズルの塗布ブラシローラの配置関係を示す概略模式斜視図である。
【図6】ブラシ部の植毛繊維の毛倒れ状態及び起毛状態を示す概略断面図で、(a)は、植毛繊維の毛倒れ状態を示す断面図、(b)は起毛状態を示す断面図である。
【図7】ノズル噴射角度、ノズル移送速度及びノズル離間距離と起毛状態との関係を示す表図である。
【図8】本発明による再生処理の前後のブラシローラの外径寸法の分布状態を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0029】
1 基台、2 支持板、3、13 モータ、4 ガイド部材、6 圧縮空気噴射ノズル、7 保持部、8 回収部、9 連結部、10 加圧水蒸気噴射ノズル、11 移動台、12 案内ロッド、14 スクリューネジ、15 可動台、16 入力部、17 制御部、18 加圧水蒸気供給部、19 マーキング手段、20 感光体、21 帯電ローラ、21a 回転軸、21b ブラシ部、23 中間転写ベルト、27 潤滑剤塗布ブラシローラ、27a 回転軸、27b ブラシ部、27c 植毛繊維、29 潤滑剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の外周に植毛体を取り付けてトナー像が形成される像担持体の表面と摺接する前記植毛体の植毛繊維からなるブラシ部を有するブラシローラを回転自在に支持して回転させる回転手段と、
前記ブラシ部に圧縮空気を吹き付けてブラシ部内に取り込まれたトナーを前記ブラシ部から除去する圧縮空気吹き付け手段と、
前記ブラシ部の植毛繊維の毛倒れ方向と反対方向から前記ブラシ部に加圧水蒸気を吹き付けて、前記ブラシ部の植毛繊維を起毛させる加圧水蒸気吹き付け手段と、
を備えたことを特徴とするブラシローラ再生装置。
【請求項2】
請求項1記載のブラシローラ再生装置において、
前記ブラシローラは、前記像担持体表面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布ブラシローラであることを特徴とするブラシローラ再生装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のブラシローラ再生装置において、
前記加圧水蒸気吹き付け手段は、前記回転手段に取り付けられたブラシローラの回転軸と平行移動可能に取り付けられた移動台上に取り付けられ、前記ブラシローラの回転と共に、前記移動台は、前記回転軸と平行移動するように制御されていることを特徴とするブラシローラ再生装置。
【請求項4】
請求項3記載のブラシローラ再生装置において、
前記加圧水蒸気吹き付け手段は、前記移動台上に取り付けられて前記平行移動の方向に対して直交方向に移動可能な可動台上に取り付けられ、当該可動台上に前記ブラシローラのブラシ部に向けて加圧水蒸気を吹き付ける加圧水蒸気噴出ノズルを取り付け、当該加圧水蒸気噴出ノズルと前記ブラシローラの回転軸との距離を前記可動台を移動させて変動可能としたことを特徴とするブラシローラ再生装置。
【請求項5】
請求項3又は4記載のブラシローラ再生装置において、
前記加圧水蒸気吹き付け手段は、前記移動台上に前記ブラシローラのブラシ部に向けて加圧水蒸気を吹き付ける加圧水蒸気噴出ノズルを回動自在に取り付けて当該加圧水蒸気噴出ノズルの前記ブラシローラに対する噴出角度を可変状態で取り付けられることを特徴とするブラシローラ再生装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項記載のブラシローラ再生装置において、
前記回転手段に取り付けられたブラシローラを介して前記圧縮空気吹き付け手段と対向させて前記ブラシ部から除去されたトナーを回収する回収部を配設させたことを特徴とするブラシローラ再生装置。
【請求項7】
請求項6記載のブラシローラ再生装置において、
前記圧縮空気吹き付け手段と前記回収部は、前記回転手段に取り付けられたブラシローラの回転軸と平行方向に移動自在に取り付けられ、前記回収部は、前記圧縮空気吹き付け手段と同時に平行移動することを特徴とするブラシローラ再生装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項記載のブラシローラ再生装置において、
前記加圧水蒸気吹き付け手段は、当該加圧水蒸気の噴出しノズルから2バール〜5バールの噴射圧力で加圧水蒸気を前記ブラシローラのブラシ部に吹き付けることを特徴とするブラシローラ再生装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項記載のブラシローラ再生装置において、
前記ブラシローラの回転軸上に再生回数をマーキングするマーキング手段を備えたことを特徴とするブラシローラ再生装置。
【請求項10】
回転軸の外周に植毛体を取り付けてトナー像が形成される像担持体の表面と摺接する前記植毛体の植毛繊維からなるブラシ部を有するブラシローラを回転させながら前記ブラシ部に圧縮空気を吹き付けて ブラシ部内に取り込まれたトナーを前記ブラシ部から除去し、その後、前記ブラシローラを回転させながら前記ブラシ部の植毛繊維の毛倒れ方向と反対方向から前記ブラシ部に加圧水蒸気を吹き付けて、前記ブラシ部の植毛繊維を起毛させることを特徴とするブラシローラ再生方法。
【請求項11】
請求項10記載のブラシローラ再生方法において、
前記加圧水蒸気を前記ブラシローラの回転軸と平行方向に移動させながら前記ブラシ部に吹き付けることを特徴とするブラシローラ再生方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−189444(P2009−189444A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31106(P2008−31106)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】