説明

ブラシ

【課題】 従来、育毛マッサージや育毛剤を塗布するブラシなどは、プラスチックで成形したものや金属製、獣毛などで作成していたが、このようなブラシであると、硬いものであると使用時に頭皮を傷つけ、柔らかいものであると耐久性が弱く、又、弾性が弱いためマッサージ効果が期待できず、立毛しているブラシであると、斑なく広範囲に塗布することが困難であるといった問題が残されていた。
【解決手段】 毛先がテーパー化された合成樹脂製のフィラメントを束ねてブラシとし、このブラシの中間部における外径とブラシ先端部近傍における外径とがほぼ同径にすると共に、先端部を斜形状に配置したブラシにおいて、前記合成樹脂製のフィラメントを束ねたブラシの弾性荷重が、そのブラシをレオメータに60度にセットし、平面上に3.0mm押し付けたとき、15〜80gで構成した育毛マッサージブラシ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、育毛マッサージブラシや育毛剤を塗布するブラシ及び美容液用のブラシなどのインキ内容物を面で塗布するブラシに関し、塗布時に面塗りし易く、一度に広範囲に塗布できる共に、皮膚面に適度の刺激を与えることでマッサージ効果を得ることができるブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、育毛マッサージなどのブラシは、多数の櫛歯体を林立させたベースと、これに連なる柄部から構成されており、そのほとんどがプラスチック一体成形のものとして甚だ広汎に使われていることは周知の通りである。その他、特殊なものでは、プラスチック一体成形の代わりに金属製の細い線径のものを使用し、ブラシの一部としている製品もある。しかし、プラスチックで成形したブラシや金属製のブラシは、形状などの品質は一定するが、使用時に頭皮を傷つけ、また、細部に塗布し難いといった問題があった(特許文献1参照)。
【0003】
そこで、ブラシをプラスチックや金属で成形する代わりに、馬毛もしくは豚毛を用いることが行われている。具体的に説明すると、基台上には所定のピッチで穴が整列・形成されており、その穴に前記馬毛や豚毛などが植毛されている(特許文献2参照)。
【0004】
ところで、基台上の穴に馬毛や豚毛を植毛するブラシは、頭皮に対する肌当たりはソフトで良いが耐久性が弱いと言った問題やブラシ自体の弾性が弱いため、マッサージ効果があまり得られないと言った問題を有している。
この問題を解決するために、本体を備え、本体の一方の面に、複数のブラシ及び複数の育毛剤供給機構が規則的に配列されており、本体の内部に、育毛剤を収容するための中空部が設けられており、前記育毛剤供給機構が、本体に固着された先細りの細長いホルダを有しており、そのホルダの中央には、長さ方向に延びた貫通孔が設けられ、貫通孔が、本体の中空部と連通しており、その本体の先端に、回転できるようにボールが嵌め込まれており、そのホルダのボールを頭皮に押しつけて移動させ、そのボールを回転させることにより、ボールの表面に付着した育毛剤を頭皮に塗布するマッサージ用ブラシが提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−199628号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2003−3322号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2003−663号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、複数のブラシ及び複数の育毛剤供給機構が規則的に立毛されたブラシは、そのブラシの先端が先細り形成されており、また、それらは、プラスチックで成形さることが一般的である。これに加え、上記の従来技術にあっては、ホルダの先端にボールを取り付け、そのボールを回転させることによって薬液を頭皮に塗布している。しかし、プラスチック材より成る先細りのブラシに加え、小さなボールを頭皮に接触させるため、その頭皮に傷を付けてしまう危険性があった。また、ブラシと育毛剤供給機構が間隔をおいて立毛されているので、前記塗布する面積がピンポイントで狭く、斑なく広範囲に塗布することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、毛先がテーパー化された合成樹脂製のフィラメントを束ねてブラシとし、このブラシの中間部における外径とブラシ先端部近傍における外径とがほぼ同径にすると共に、先端部を斜形状に配置したブラシにおいて、前記合成樹脂製のフィラメントを束ねたブラシの弾性荷重が、そのブラシをレオメータに60度にセットし、平面上に3.0mm押し付けたとき、15〜80gで構成したことを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、毛先がテーパー化された合成樹脂製のフィラメントを束ねてブラシとし、このブラシの中間部における外径とブラシ先端部近傍における外径とがほぼ同径にすると共に、先端部を斜形状に配置したブラシにおいて、前記合成樹脂製のフィラメントを束ねたブラシの弾性荷重が、そのブラシをレオメータに60度にセットし、平面上に3.0mm押し付けたとき、15〜80gで構成したので、塗布時に面塗りし易く、一度に広範囲に塗布できると共に、ブラシの弾力性により皮膚面を傷けることなく、適度に刺激を与えることでマッサージ効果が良好なブラシが得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に関わるブラシ1の概略図である。
【図2】(a)フィラメント2にテーパー加工を施し、そのフィラメント2の先端部を円形状の斜形状に配置し、後端部を熱溶着した側面図である。 (b)ブラシ1を固定管7の後方より挿入し圧入固定され、前軸8の先端部より圧入し、前軸8と後軸9をネジ固定された横断面図である。
【図3】本発明に係るフィラメントの拡大図と、その中央部分における断面図である。
【図4】変形例を示す図である。
【図5】ブラシの弾力荷重を測定する過程を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について説明する。図1において、参照符号1は、美容液用のブラシ1であり、そのブラシ1は、固定管7に挿入・固定され、この固定管7は前軸8の先端部に圧入し、インキ内蔵された後軸9と前軸8が前軸8後方よりネジ固定されブラシ1を形成している。又、ブラシ1は、先端にテーパー加工されたストレートを有するフィラメント2を用い、そのフィラメント2を長手方向に集束して、後端部を熱溶着や接着剤による接着などの方法により固着し、ブラシ1の弾性荷重が、そのブラシをレオメータに60度にセットし、平面上に3.0mm押し付けたとき、15〜80gになるように形成したものである。
尚、ブラシ1の断面形状としては、ブラシ1の中間部と先端近傍部において、ほぼ同径の円柱状をなしているが、ブラシ1の断面形状を楕円形状としても良く、或いは、8角形や12角形、16角形などとしても良い。
また、図4に示すように、後軸9をボトル状にすることによって、大量のインキを貯留することができるようになると共に、自立可能なものとなる。
【0011】
フィラメント2に使用している繊維材質としは、ポリアミド(6,6−ナイロン、6−ナイロン、6,12−ナイロン、6,10−ナイロンなど)ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)などを用いることができるが、上記材質が同一であっても異なっていても良い。
尚、ブラシ1に使用するフィラメント2は、ストレートな断面が円形なフィラメント2だけでなく、断面が中空のフィラメント3、断面が異形のフィラメント4、フィラメント表面に凹凸を有するフィラメント5、クリンプを有するフィラメント6を使用しても良い。
又、使用する用途及びインキ粘度、使用するインキの種類によっては、ブラシ1の先端が円柱状の斜形状に配置すれば、上記繊維を混毛して使用することもできる。
【0012】
前記合成樹脂の先端をテーパー化しブラシ1と成すには、処理液による方法が好ましく、その処理液の具体的一例としては、ポリアミドに対してメタクレゾールと塩化カルシウムーメタノール溶液との混和液、ポリエステルに対して水酸化ナトリウムなどを組み合わせが挙がられる。但し、必ずしもこの方法に限定されるものではなく、例えば合成樹脂製繊維に熱延伸を与えてテーパー状に引き伸ばし、グラインダー研磨など機械的にテーパー化するなどの他の方法を採用しても良い。
【0013】
毛先がテーパー化された合成樹脂製のフィラメント2を束ねてブラシ1とし、このブラシ1の中間部における外径Aとブラシ1先端部近傍における外径Bとがほぼ同径にすると共に、先端部を斜形状に配置したブラシ1において、前記合成樹脂製のフィラメント2を束ねたブラシ1の弾性荷重を、そのブラシをレオメータに60度にセットし、平面上に3.0mm押し付けたとき、15〜80gのものを使用する目的は、ブラシ1の弾力性を15〜80gにすることで、弾性が強いため、ブラシ1を押し付けたときブラシ1の撓みが少なくなり、頭皮に刺激を与え易くなることでマッサージ効果を良好とすると共に、ブラシ1の撓みによる曲がりが少ないので、耐久性を良くする目的で使用するものである。又、前記合成樹脂製のフィラメント2を束ねたブラシ1の弾力性(一定量押し付けたときの変形荷重)が15gに満たないとブラシ1が撓み易くなり、耐久性が弱くなり、マッサージ効果が低下する問題がある。さらに、前記合成樹脂製のフィラメント2を束ねたブラシ1の弾性荷重が80gを超えると弾力性が強くなりすぎて、頭皮を傷つける問題もある。
【0014】
上記の弾力性は、ブラシ1を取り付けた製品をレオメータ101の昇降台102に60度に傾けセットし、変位計である平面測定部位103にブラシ1を3.0mm押し付けたときの変形する荷重のピークを測定したものである。その他の条件としては、ブラシ1の押し付け速度は、2cm/minである(図5参照)。符号104は、荷重が示される表示パネルである。
【0015】
又、本発明の前提条件であるブラシ1の中間部における外径Aとブラシ1先端部近傍における外径Bとがほぼ同径にすると共に、先端部を斜形状に配置することで、ブラシ1が開いているため、面塗りがし易く、1度に広範囲に塗布することができ、又、先端が斜形状にしたことで、ブラシ1が平面である場合に、面で塗布しようとすると90度になってしまうが、斜形状の場合は、60度程度で面にフィトするので、楽な作業で塗布することができる。
【0016】
又、ここで、ブラシ1を円柱状になすには、フィラメント2先端部からテーパー部の長さが重要であり、その範囲としては、2.0mm〜8.0mm程度が好ましい。通常の円錐状にまとまっているブラシ1は、8.0mm以上のテーパー長さで構成されている。
【0017】
上記の毛先がテーパー化された合成樹脂製のフィラメント2を束ねてブラシ1とし、このブラシ1の中間部における外径Aとブラシ1先端部近傍における外径Bとがほぼ同径にすると共に、先端部を斜形状に配置することや、前記合成樹脂製のフィラメント2を束ねたブラシ1の弾性荷重を、そのブラシをレオメータに60度にセットし、平面上に3.0mm押し付けたとき、15〜80gにしたことで、塗布時に面塗りがし易く、1度に広範囲に塗布することができ、又、先端の弾力性が強いため、ブラシ1を押し付けたときにブラシ1の撓みが少なくなり、頭皮に刺激を与え易くなることでマッサージ効果を良好とすると共に、耐久性が良くなり、塗布面にフィトし易いので楽な作業ができるものである。
【0018】
さらに、ブラシ1のフィラメント2のテーパー部の太さがテーパー先端部から1.0mm、3.0mm、5.0mm、8.0mmの各部位におけるフィラメント2の基部の直径Dに対して、35〜70%、70〜90%、80〜95%、90〜100%の範囲が好ましい。その理由としては、フィラメント2のテーパー部の太さがテーパー先端部から1.0mm、3.0mm、5.0mm、8.0mmの各部位におけるフィラメント2の基部の直径Dが上記寸法より細いと、ブラシ1にしたとき円柱状になり難いことやテーパー部が細いことで、耐久性が弱くなるからである。又、フィラメント2のテーパー部の太さがテーパー先端部から1.0mm、3.0mm、5.0mm、8.0mmの各部位におけるフィラメント2の基部の直径Dが上記寸法より太いと先端のテーパー部が太いため、頭皮を傷つけてしまうからである。
【0019】
又、合成樹脂製のフィラメント2のテーパー部太さが上記寸法より太いと、フィラメント2が密集して、吐出が悪くなったりもする。
ブラシ1の基部の断面が円形状のときの太さは、4.0mm〜20.0mmの範囲が好ましい。但し、ブラシ1の基部の形状が円形以外でも断面面積が上記と同じ範囲であれば良い。
【0020】
ブラシ1に用いるフィラメント2の直径Dは、製造する用途又は大きさ(太さ及び長さ)によっても異なるが、本発明に係るブラシ1におけるフィラメント2は、0.16mm〜0.25mmのものを用いることが好ましい。0.16mmを満たないものは、径が細いためマッサージ効果が期待できず、0.25mmを超えるものは、使用時に皮膚を傷つけるおそれがある。尚、ここでいうフィラメント2の直径Dとは、テーパー加工されていない部分の径をいうものである。
【0021】
又、ブラシ1の先端部を基部Aとほぼ同径Bにすると共に、斜形状に配置したブラシ1の頂部10から斜形状底部11の長さの差異Eは、0.5〜4.0mmが好ましい。ブラシ1の先端部を基部Aとほぼ同径Bによると共に斜形状に配置したブラシ1の頂部10から斜形状底部11の長さの差異Eが0.5mmより小さいとブラシ1の角度が鈍角になり過ぎて、塗布面にフィトし難くなるばかりか、楽な作業で塗布することができない。又、ブラシ1の先端部を基部Aとほぼ同径Bによると共に斜形状に配置したブラシ1の頂部10から斜形状底部11の長さの差異Eが4.0mmを超えるとブラシ1の角度が鋭角になりすぎて、広範囲に塗布し難くなり、塗布の作業頻度が増えてしまうからである。
【0022】
本発明のブラシ1を製造するに当たっては、テーパー加工されたフィラメント2を、先端部の基部の外径Aとほぼ同径Bにすると共に斜形状に配置し形成されたものを集束し、集束した物の後端部を溶着や接着又は、後端部を糸などで縛ってフィラメント2の脱落を防止してブラシ1となす訳であるが、前記合成樹脂製のフィラメント2を束ねたブラシ1の弾性荷重を、そのブラシをレオメータに60度にセットし、平面上に3.0mm押し付けたとき、15〜80gの範囲のものを用いることが好ましい。
【0023】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。図2(a)において、フィラメント2にテーパー加工を施した後、その長手方向に沿って、フィラメント2を先端に寄せてから、所定の治具を使用し、先端部を円柱状の斜形状に配置し、そのフィラメント2の後端部を溶着してブラシ1を形成したものである。
【0024】
図2(d)に示すように、ブラシ1を固定管7の後方より挿入し圧入固定され、前軸8の先端部より圧入し、前軸8と後軸9をネジ固定され、筆を形成している。
このブラシ1は、フィラメント2のようにテーパー加工を施し、そのフィラメント2の先端部を円柱状の斜形状に配置した形状のブラシ1を用いるが、他の条件のブラシ1の弾性、使用フィラメント2の形状、フィラメント2の太さ(直径D)を示す表1に示すと共に、実施例1〜12並びに、比較13〜24を表2に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
上記実施例1〜12、並びに、比較例13〜24のブラシ1を用いて、図1に示す美容液用のブラシ1を形成し、面塗り易さ・マッサージ効果・耐久性についてアンケート調査を行った。
【0027】
【表2】

【0028】
方法:任意に抽出したモニターに実際に美容液用の筆穂を使用してもらい、使用性についてモニター調査を実施した。その調査結果を表3に示す。
【0029】
【表3】

【符号の説明】
【0030】
1 ブラシ
2 先端をテーパー加工したストレートフィラメント
3 先端をテーパー加工した断面が中空するフィラメント
4 先端をテーパー加工した断面が異形はフィラメント
5 先端をテーパー加工した表面が凹凸を有するフィラメント
6 先端をテーパー加工したクリンプを有するフィラメント
7 固定管
8 前軸
9 後軸
10 ブラシ1円柱状の斜形状の頂部
11 ブラシ1円柱状の斜形状の底部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛先がテーパー化された合成樹脂製のフィラメントを束ねてブラシとし、このブラシの中間部における外径とブラシ先端部近傍における外径とがほぼ同径にすると共に、先端部を斜形状に配置したブラシにおいて、前記合成樹脂製のフィラメントを束ねたブラシの弾性荷重が、そのブラシをレオメータに60度にセットし、平面上に3.0mm押し付けたとき、15〜80gで構成したことを特徴とする育毛マッサージブラシ。
【請求項2】
前記合成樹脂製のフィラメントのテーパー部の太さがテーパー先端部から1.0mm、3.0mm、5.0mm、8.0mmの各部位におけるフィラメントの基部の直径に対して、35〜70%、70〜90%、80〜95%、90〜100%で、それぞれ特定されるフィラメント形状で構成したことを特徴とする請求項1に記載の育毛マッサージブラシ。
【請求項3】
前記ブラシに使用するフィラメントの基部の太さが0.16mm〜0.25mmの範囲としたことを特徴とする請求項1〜請求項2の何れかに記載のブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−274000(P2010−274000A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131524(P2009−131524)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】