説明

ブラスト機

【目的】比較的簡単な構成により優れた品質性能を有する人工毛髪を容易に得ることができるブラスト機を提供する。
【構成】複数本の繊維材を束ねて成る繊維束3を一端側から供給してブラスト加工して人工毛髪を製造するブラスト機Bであって、繊維束3を直線状に給送するための集束ガイド4,5と、給送されてくる繊維束3のまわりに配置され、且つ、上流側から下流側へずらした位置に配置した2つ又は3つの噴射ノズル6,7,8と、を備えており、各噴射ノズル6,7,8から繊維束3に対してそれぞれブラスト材6a,7a,8aが噴射されると、集束ガイド4,5によって区切られた各区間において、各噴射ノズル6,7,8の噴射空気圧力によって、繊維束3を個々の繊維材にバラけさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かつら,増毛用毛髪,代用毛髪等に用いられる人工毛髪を製造するためのブラスト機に関する。
【背景技術】
【0002】
かつら,増毛用毛髪等に用いる人工毛髪は、合成繊維材料により形成され得るが、その合成繊維の表面は一般に、極めて平滑で、鏡面光沢を有しており、そのままでは、外観や触感などの点でかつら,増毛用毛髪等として好適なものではない。このため従来より合成繊維の表面を粗面化することにより鏡面光沢をおさえて、外観,触感等を天然毛髪のそれに近づけるようにしている。
その具体的な従来の方法として、繊維表面に機械的に擦過傷を生じさせる方法(サンディング)や、紡出の際に異形の口金に因って異形断面になるようにする方法等が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開平01−291922号公報
【特許文献2】特開昭61−245301号公報
【特許文献3】特公昭43−22349号公報
【特許文献4】特開昭63−12716号公報
【特許文献5】特開平05−140807号公報
【特許文献6】特開平05−140817号公報
【特許文献7】特公昭45−4409号公報
【特許文献8】特開昭62−156308号公報
【特許文献9】特開昭62−156309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、擦過傷が形成された繊維の場合、その傷は筋状の傷となり、人工毛髪として使用する際、ブラッシングなどにより該繊維に外力がかかると、この外力はその傷に集まるので強度低下により切損することにもなり、さらにその繊維に当たる光の角度によって強い反射光が生じて不自然な光沢が残るなどの問題がある。また、まゆ型や星型などの異型断面を有する繊維の場合、その繊維軸に沿って筋状の凹条が形成され、角度により著しい反射光を生じさせ、同様に不自然な光沢が生じてしまう。
いずれにしても従来の人工毛髪では、表面が平滑な又は凹凸形成が不十分なものとなり、天然毛髪のキューティクル構造によって生じる自然な光沢や風合いとは著しく異なる様相を呈している。
【0005】
また、ポリアミド繊維表面を無機酸によって溶解浸食させる方法(特許文献3参照)や、微粒子を含有するポリエステル繊維をアルカリ処理する方法(特許文献4〜6参照)なども知られている。ところが、これらの方法では、用いる素材が限定されざるを得ず、また制御方法に難点がある上、結果的に得られた繊維において、内部まで脆化が進む場合があり、物性が低下して切損し易くなる。
【0006】
更に、上記特許文献2に記載の人造毛の製造方法によれば、レーザ光線の照射処理により繊維表面を粗面化するが、その場合、生産コストが高くなり、人工毛髪の製造には適当ではない。
そしてまた、繊維表面に球晶を生成することにより、凹凸構造を形成する粗面化方法(特許文献7〜9参照)も知られている。これらの方法によれば、紡糸条件の制御を行うことで天然毛髪のキューティクル構造と非常に良く似た凹凸形状が出現し、天然毛髪に酷似した外観,触感が得られる。しかし、この方法では、適正な紡糸条件を得るための制御が難しく、生産性を上げようとすると繊維表面の凹凸構造が天然毛髪のキューティクル構造に比して不十分なものとなり、外観,触感が天然毛髪と異なってしまう。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑み、比較的簡単な構成により優れた品質性能を有する人工毛髪を容易に得ることができるブラスト機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、複数本の繊維材を束ねて成る繊維束を一端側から供給してブラスト加工して人工毛髪を製造するブラスト機であって、上記繊維束を直線状に給送するための集束ガイドと、給送されてくる上記繊維束のまわりに配置され、且つ、上流側から下流側へずらした位置に配置した2つ又は3つの噴射ノズルと、を備えており、各噴射ノズルから上記繊維束に対してそれぞれブラスト材が噴射されると、上記集束ガイドによって区切られた各区間において、各噴射ノズルの噴射空気圧力によって、上記繊維束が個々の繊維材にバラけることを特徴としている。
【0009】
ブラスト材としては、アルミナ系,シリコン系,鉄系,ガラス系,合成樹脂系或いは植物系などがあり、研削力を考慮すると、中でもアルミナ質研削材又は炭化珪素質研削材(JIS,R6111;人造研削材)が好適である。その粒度は、好適には#200〜#2000(平均径80〜6.3μm)、より好ましくは#400〜#1000(平均径40〜13μm)の範囲である。その他の粒度のものも使用可能ではあるが、その場合、一般には研削力を得るためのノズル距離や空気圧などの条件設定が難しい。
【0010】
繊維材としては、ポリアミド,ポリエステル,モダアクリル及び塩化ビニルなど、材質やそれらの断面形状を問わず何れも適用され得る。また、糸径は、通常20〜150μm、好ましくは天然毛髪の径と近似する30〜100μmのモノフィラメント繊維が用いられる。本発明では、この繊維材としては、人工毛髪用などに好適なように、予め凹凸を形成したものが用いられる。
【0011】
粗面化すべき繊維材は、ブラスト加工を行うことができ、繊維表面の傷は点状となる。特に繊維束の場合、ブラスト材の衝突力、とくに吸引式または加圧式のブラスト装置を用いたときはブラスト材の衝突力に加えて、ブラスト材と共に噴出するブラスト材を運ぶキャリヤ流体(例えば圧縮空気など)により、その繊維束を個々の繊維材にバラけさせ、各繊維材の間隙にブラスト材が入り込んで各繊維材表面に衝突し、繊維束を構成する多数の繊維材を均一且つ適正に粗面化することができる。
【0012】
本発明はまた、合成繊維の紡糸工程中に組み込むことができ、紡出された表面が平滑な繊維の最終巻取り段の上流において、本発明によるブラスト加工工程を組み込むことができる。或いは、前述した従来の各種方法で人工毛髪用に凹凸を形成した繊維に対して適用することができ、この場合、凹凸形状が不完全なものであっても、或いは筋状の凹条であっても本発明を適用すれば天然毛髪の発する表面光沢と風合いに一層酷似したものとすることができる。
なお、長尺な繊維材又は繊維束をブラスト装置へ連続供給することで生産性が向上する。ブラスト材は回収して再利用することが可能である。
【0013】
さらに、本発明の好ましい態様によれば、上記ブラスト加工が下記の何れかの条件(1)〜(3)の下で行われる。
【0014】
条件(1)
a)ブラスト材の種類:人造エメリー研削材
b)ブラスト材の粒度:#600
c)噴射空気圧力:3kg/cm2
d)噴射ノズル及び繊維材間の距離:10cm
e)繊維材給送速度:200m/min
【0015】
条件(2)
a)ブラスト材の種類:褐色アルミナ研削材
b)ブラスト材の粒度:#1000
c)噴射空気圧力:5kg/cm2
d)噴射ノズル及び繊維材間の距離:8cm
e)繊維材給送速度:200m/min
【0016】
条件(3)
a)ブラスト材の種類:人工エメリー研削材
b)ブラスト材の粒度:#600
c)噴射空気圧力:2kg/cm2
d)噴射ノズル及び繊維材間の距離:12cm
e)繊維材給送速度:300m/min
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明によれば、比較的簡単な構成により、この種の球晶生成が不十分な繊維材の表面を適度に且つ均一に粗面化することができ、優れた品質性能を有する人工毛髪を容易に得ることができる。
とくに、本発明によって得られる繊維表面の傷は点状になり、従来のサンディングによる筋状の傷と異なり、外力がかかっても分散されるので、十分な強度を保持している。また、点状の傷であるため、光の角度によっても不自然な光沢を生じることがない。さらに、無機酸やアルカリを用いて行う化学的処理のように繊維内部まで侵されることがないので、物性低下の虞れも少なく、繊維の材質,形状なども限定されず、何れの繊維も適用可能である。また、本発明によれば、使用済みのブラスト材を再利用することもでき、レーザ光線による粗面化と比べ製造コストも廉価である。
【0018】
さらに、球晶生成が不十分な繊維に対して本発明法を適用することで、外観,触感ともに天然毛髪に酷似した人工毛髪が得られる。
【0019】
また本発明によれば、繊維を固定保持してブラスト加工を施すので、ブラスト材の打力などにより繊維同士が絡まることなく、繊維表面をむらなく粗面化できる。そして、粗面化し得る繊維の長さも特に制限されることはなく、数百m以上の比較的長尺な繊維に対しても適用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明によるブラスト機を用いて人工毛髪を製造する第一実施例を説明する。
ここで先ず、図1は、本発明の方法に使用するブラスト機の概略構成を示している。ブラスト機は、この実施例では一連の紡糸工程の中で最終段に設置されており、通常の溶融紡糸方法によって紡出された繊維材が、ブラスト機Bの一端側のガイドローラ1を介して供給されると共に、他端側のガイドローラ2を介して送出されるようになっている。なお本実施例では、繊維材としてナイロン6(糸径70μm、丸型断面形状)を用い、この繊維材が50本同時に紡糸されて繊維束3としてブラスト機Bに供給されるものとする。
【0021】
図1に示されるように、繊維束3は、ブラスト機B内において一定張力で張架され、集束ガイド4,5を介して直線状に給送される。その給送方向(矢印A)における離隔した位置にて、この実施例では3つの噴射ノズル6,7及び8が設けられている。噴射ノズル6,7及び8は、好適には図2に示したように繊維束3(図面では1本の繊維材3aによって示されている)に対して、そのまわりをほぼ3分割する位置に配置される。このように好適には、3つの噴射ノズル6,7及び8が三方向に設けられるが、例えば2つの噴射ノズル6及び7を用い、繊維束3を挟んで180°対向するように配置してもよい。
本実施例では、噴射ノズル6,7,8は上流側から下流側へ1本毎にずらした位置に配置されている。これにより噴射ノズルにてブラスト材を吹き付けたとき干渉が生ぜず、吹き付け速度に変化が生じない。
【0022】
上記第一実施例により、繊維束3を給送しながら、各噴射ノズル6,7及び8によってブラスト加工を行うが、本実施例における具体的加工条件は次の通りである。
加工条件:
a)ブラスト機形式:吸引式のエア加速式ブラスト機
b)ブラスト材の種類:人造エメリー研削材
c)ブラスト材の粒度:#600
d)噴射ノズルの径:7mm
e)噴射ノズルの個数:3
f)噴射空気圧力:3kg/cm2
g)噴射ノズル及び繊維材間の距離:10cm
h)繊維材給送速度:200m/min
【0023】
本発明によれば、各噴射ノズル6,7及び8から、図3に示されるように繊維束3に対してそれぞれブラスト材6a,7a及び8aが噴射される。そして集束ガイド4,5によって区切られた各区間において、各噴射ノズル6,7及び8の噴射空気圧力によって、その繊維束3を個々の繊維材3aにバラけさせる。なお図において、1はブラスト機の入口側に設けた集束ガイドである。
【0024】
図4に示されるように、繊維材3a相互の隙間に入り込んだブラスト材(小黒点により示されている)は、各繊維材3aに衝突する。しかも繊維束3を一定方向に給送しながら、3つの噴射ノズル6,7及び8により3方向からブラスト材を噴射することにより、全ての繊維材3aの全表面を万遍なくブラスト加工し、これにより最適な状態で均一に粗面化することができる。
【0025】
なお上記実施例においては、50本の繊維材3aにより構成される繊維束3に対して、ブラスト材を適用する例を説明したが、1本の繊維材3aを給送しながら、各噴射ノズル6,7及び8によってブラスト加工を施す場合にも、上記実施例と同様な作用効果を得ることができるのは勿論である。
また、ブラスト機は、この実施例では一連の紡糸工程の中で最終段に設置されているが、紡糸工程とは無関係に独立して設置することも勿論可能である。
【0026】
上記第一実施例の変形例として、単一の噴射ノズルを用い、繊維束3を回転させながら給送してもよい。その際、噴射ノズルを複数個使用することも勿論可能である。
【0027】
次に、本発明による人工毛髪の製造方法の第二実施例を説明する。この実施例では、繊維材としてポリエステル繊維(糸径70μm、丸型断面形状)を用い、上記第一実施例と基本的に同様に、図1のブラスト機を用いて行った。
【0028】
第二実施例における具体的加工条件は次の通りである。
加工条件:
a)ブラスト機形式:吸引式のエア加速式ブラスト機
b)ブラスト材の種類:褐色アルミナ研削材
c)ブラスト材の粒度:#1000
d)噴射ノズルの径:7mm
e)噴射ノズルの個数:3
f)噴射空気圧力:5kg/cm2
g)噴射ノズル及び繊維材間の距離:8cm
h)繊維材給送速度:200m/min
【0029】
第二実施例においても、第一実施例と同様全ての繊維材3aの全表面を万遍なくブラスト加工することができ、しかも最適な状態で均一に粗面化ができ、良好な結果が得られた。
【0030】
次に、本発明による人工毛髪の製造方法の第三実施例を説明する。この実施例は、表面に球晶を生成することにより凹凸構造を形成する粗面化方法(例えば、特開平3−1911号)を利用するものである。
ところで、この球晶形成による粗面化方法では、天然毛髪と酷似した表面構造を形成し得るが、球晶生成の度合いに比例してデニールむらなどが発生し易くなって生産性が悪くなる傾向があり、適正な球晶生成と生産性とを維持する条件設定が難しかった。そこで、効率よく天然毛髪の外観・触感に似た人工毛髪を得るため、球晶形成による粗面化において、生産性を高めるべく球晶生成を不十分にしたナイロン繊維に対して、ブラスト加工を行ってみた。
すなわち、球晶生成を不十分とした条件下で紡出された顔料,染料を含むナイロン6(糸径75μm、丸型断面形状)を30本の繊維束3として、繊維紡糸工程の最終巻取り前に集束させて、ブラスト加工を適用する。
【0031】
第三実施例における具体的加工条件は次の通りである。
加工条件:
a)ブラスト機形式:吸引式のエア加速式ブラスト機
b)ブラスト材の種類:人工エメリー研削材
c)ブラスト材の粒度:#600
d)噴射ノズルの径:7mm
e)噴射ノズルの個数:3
f)噴射空気圧力:2kg/cm2
g)噴射ノズル及び繊維材間の距離:12cm
h)繊維材給送速度:300m/min
【0032】
第三実施例においても良好な結果が得られるが、特に、生産性を上げ球晶生成が不十分な繊維に対して本発明法によるブラスト加工を行うことで、適正な球晶生成を行った繊維に匹敵するような、天然毛髪と外観,触感の酷似した人工毛髪を効率よく製造することができた。
【0033】
以上のように、サンディング,異形断面,酸やアルカリによる化学的表面処理或いは球晶生成などの従来の粗面化技術により得られる人工毛髪に対しても、本発明によりブラスト加工を施せば、より自然な表面光沢を容易に付与することができる。
【0034】
さらに、本発明による人工毛髪の製造方法の第四実施例について説明する。この実施例では、所定長さに裁断した多数の繊維材が、芯部材(治具)のまわりに配置され、この芯部材を回転させながら、2方向からブラスト材を吹き付けるものである。
【0035】
図5は、第四実施例に係るブラスト装置の概略構成例を示している。図において、10はターンテーブル11上に立設された芯部材としての専用治具、12はターンテーブル11を回転駆動するモータである。専用治具10は、モータ12によって矢印のように回転制御される。13は多数の繊維材13aにより構成される適当な長さに裁断された繊維束である。
【0036】
本実施例では、繊維材13aとしてナイロン66(糸径60μm、丸型断面形状)を用い、繊維材13aを束ねて繊維束13を構成する。各繊維材13aは、かつらの植毛に適した例えば長さ60cm程度に裁断されており、繊維束13の重量としては150g程度で繊維束の直径は2cm程度となる。繊維束13は、その上端部にて集束されて緊締され、またその下端部において外周の直径が30〜40mm程度の専用治具10に固定されている。
【0037】
さらに14,15は専用治具10に対向するようにセットされた噴射ノズル、16は噴射ノズル14,15を昇降させるための上下スライドユニット、17及び18は噴射ノズル14,15の上下端を規制するそれぞれリミットスイッチである。なお、繊維束13の直径と芯材の外周の直径は上記数値に限定されるものではなく、噴射ノズル径,噴射圧力,ブラスト材の粒径,繊維材の表面硬度等により適宜選択される。
【0038】
この第四実施例において、専用治具10を回転させ、且つ噴射ノズル14,15を昇降させながら、これら2つの噴射ノズル14,15によって繊維束13に対して2方向からブラスト材を吹き付ける。
【0039】
第四実施例における具体的加工条件は次の通りである。
加工条件:
a)ブラスト機形式:吸引式のエア加速式ブラスト機
b)ブラスト材の種類:人工エメリー研削材
c)ブラスト材の粒度:#600
d)噴射ノズルの径:9mm
e)噴射ノズルの個数:2
f)噴射空気圧力:5kg/cm2
g)噴射ノズル及び繊維材間の距離:8cm
h)加工時間:3min
【0040】
第四実施例によれば、繊維束13を専用治具10にセットして回転させながら、噴射ノズル14,15を昇降させてブラスト加工することにより、全ての繊維材13aの全表面を万遍なく、最適な状態で均一に粗面化することができ、上記各実施例と同様に、良好な結果を得ることができた。なお、本実施例では噴射ノズルを2個使用しているが、1個のみ又は3個以上設けるようにしてもよい。
また、専用治具10は横などに取り付けるようにしてもよく、この場合は噴射ノズル14,15は左右等に移動することになる。
【0041】
第四実施例の変形例として、繊維束13を回転させることなく、噴射ノズル14,15を上下動させつつ繊維束13の回りで回動するように構成してもよい。それに代えて、繊維束13を上下動させつつ回転するように構成することも勿論可能であり、何れも本発明の範囲に包含される。また、繊維束13或いは噴射ノズルの回転速度を適宜調整することにより、該噴射ノズルを1個のみ又は3個以上設けるようにしてもよい。
【0042】
さらに、本発明法を実施可能な第五実施例について図6及び図7を用いて説明する。この例では、比較的短尺な繊維束20が給送コンベア21上に載置されて順次搬送され、その途上で給送コンベア21の上下に配置した噴射ノズル22,23によってブラスト材が吹き出されてブラスト加工されるようになっている。繊維束20は給送コンベア21の幅方向に載置され、押さえバネ24を介してコンベア両端に配置したコ字状の繊維束押圧板25によって繊維束20の両端が挟持されることにより、給送コンベア21上で横方向に保持されている。
【0043】
この実施例によれば、給送コンベア21が図7の矢印方向に回動すると、その上に保持された繊維束20は図面上右側へ搬送され、その途上、コンベアの上下に配置した噴射ノズル22,23が図5において矢印Xで示すように左右に繊維束20の長さ方向に往復動しつつ、ブラスト材を噴射する。これによって、繊維束20はほぼその全長にわたって万遍なく粗面化されることになる。この例では噴射ノズルを往復運動させることにより万遍なく粗面化する場合を述べたが、噴射ノズルを往復運動させることなく必要なだけ複数個設けることにより粗面化するようにしてもよい。
【0044】
なお上記各実施例において、具体的数値を示して本発明方法を説明したが、これらの数値例等は、本発明の範囲内で適宜変更可能であり、上述した数値のみに限定されるものではない。
さらに、ブラスト加工の後処理工程として、ブラスト材の除去工程を組み込んで、風圧や水により該繊維又は繊維束に付着している余分なブラスト材を除去するようにしてもよい。この際、水による洗浄の場合にはその後に乾燥工程を組み込めば、直ぐに人工毛髪として使用可能となる。また、この工程で回収したブラスト材と、ブラスト加工時に回収し循環させて再利用しているブラスト材とを併せて使用することも可能である。このように、ブラスト加工においては、ブラスト材を簡単に回収再利用することができるので、レーザ光線による加工などと比較して製造コストの点でも有利である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明による人工毛髪の製造方法の第一実施例に係るブラスト機の概略構成を示す図である。
【図2】本発明方法に使用する上記ブラスト機の噴射ノズルによるブラスト加工の作用を説明する図である。
【図3】本発明による人工毛髪の製造方法の第一実施例におけるブラスト加工の適用例を示す図である。
【図4】本発明方法におけるブラスト材の作用を説明する図である。
【図5】本発明による人工毛髪の製造方法の第四実施例に係るブラスト機の概略構成を示す図である。
【図6】本発明法に適用可能なブラスト機の第五実施例を示す概略正断面図である。
【図7】図6に示すブラスト機の概略側断面図である。
【符号の説明】
【0046】
B ブラスト機
1,2 ガイドローラ
3 繊維束
3a 繊維材
4,5 集束ガイド
6,7,8 噴射ノズル
10 専用治具
11 ターンテーブル
12 モータ
13 繊維束
14,15 噴射ノズル
16 上下スライドユニット
17,18 リミットスイッチ
20 繊維束
21 給送コンベア
22,23 噴射ノズル
24 押さえバネ
25 繊維束押圧板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の繊維材を束ねて成る繊維束を一端側から供給してブラスト加工して人工毛髪を製造するブラスト機であって、
上記繊維束を直線状に給送するための集束ガイドと、
給送されてくる上記繊維束のまわりに配置され、且つ、上流側から下流側へずらした位置に配置した2つ又は3つの噴射ノズルと、を備えており、
各噴射ノズルから上記繊維束に対してそれぞれブラスト材が噴射されると、上記集束ガイドによって区切られた各区間において、各噴射ノズルの噴射空気圧力によって上記繊維束が個々の繊維材にバラけることを特徴とする、ブラスト機。
【請求項2】
前記ブラスト加工が、
a)ブラスト材の種類:人造エメリー研削材
b)ブラスト材の粒度:#600
c)噴射空気圧力:3kg/cm2
d)噴射ノズル及び繊維材間の距離:10cm
e)繊維材給送速度:200m/min
の条件で行われることを特徴とする、請求項1に記載のブラスト機。
【請求項3】
前記ブラスト加工が、
a)ブラスト材の種類:褐色アルミナ研削材
b)ブラスト材の粒度:#1000
c)噴射空気圧力:5kg/cm2
d)噴射ノズル及び繊維材間の距離:8cm
e)繊維材給送速度:200m/min
の条件で行われることを特徴とする、請求項1に記載のブラスト機。
【請求項4】
前記ブラスト加工が、
a)ブラスト材の種類:人工エメリー研削材
b)ブラスト材の粒度:#600
c)噴射空気圧力:2kg/cm2
d)噴射ノズル及び繊維材間の距離:12cm
e)繊維材給送速度:300m/min
の条件で行われることを特徴とする、請求項1に記載のブラスト機。
【請求項5】
前記繊維束が、一端側のガイドローラを介して供給されると共に、他端側のガイドローラを介して送出されるようになっていることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載のブラスト機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−23475(P2007−23475A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−203638(P2006−203638)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【分割の表示】特願2003−26501(P2003−26501)の分割
【原出願日】平成5年12月8日(1993.12.8)
【出願人】(000126676)株式会社アデランス (49)
【Fターム(参考)】