説明

ブラックインク、インクセット、ならびにインクカートリッジ

【課題】高濃度を得ることができ、画像の耐久性、ならびにインク経時安定性に優れた、インク、インクセット、ならびにインクカートリッジを提供すること。
【解決手段】インクを下記条件で経時試験した際の、下記にて定義される吸光度の変化率ΔAbsが20%以下であるブラックインク。<経時試験条件> インクを還流しながら75℃、24時間経時する。<吸光度の変化率ΔAbsの定義> 経時前のインクを希釈し、分光光度計を使用して吸光度測定したときの、吸光度(Abs)をAbs1、経時後のインクを経時前の溶液と同様にして測定した際の吸光度(Abs)を同様にAbs2としたときに、ΔAbs=100×(Abs1−Abs2)/Abs1で表されるΔAbsを吸光度の変化率(%)と定義。上記ブラックインクを含むインクセット。上記ブラックインクもしくは上記インクセットを含有するインクカートリッジ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高濃度の黒画像が得られ、画像の耐久性ならびにインク経時安定性に優れたブラックインク、インクセット、ならびにインクカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピューターの普及に伴い、インクジェットプリンターがオフィスだけでなく家庭で紙、フィルム、布等に印字するために広く利用されている。
インクジェット記録方法には、ピエゾ素子により圧力を加えて液滴を吐出させる方式、熱によりインク中に気泡を発生させて液滴を吐出させる方式、超音波を用いた方式、あるいは静電力により液滴を吸引吐出させる方式がある。これらのインクジェット記録用インク組成物としては、水性インク、油性インク、あるいは固体(溶融型)インクが用いられる。これらのインクのうち、製造、取り扱い性・臭気・安全性等の点から水性インクが主流となっている。
【0003】
これらのインクジェット記録用インクに用いられる着色剤に対しては、溶剤に対する溶解性が高いこと、高濃度記録が可能であること、色相が良好であること、光、熱、空気、水や薬品に対する堅牢性に優れていること、受像材料に対して定着性が良く滲みにくいこと、インクとしての保存性に優れていること、毒性がないこと、純度が高いこと、さらには、安価に入手できることが要求されている。しかしながら、これらの要求を高いレベルで満たす着色剤を捜し求めることは、極めて難しい。
既にインクジェット用として様々な染料や顔料が提案され、実際に使用されているが、未だに全ての要求を満足する着色剤は、発見されていないのが現状である。カラーインデックス(C.I.)番号が付与されているような、従来からよく知られている染料や顔料では、インクジェット記録用インクに要求される色相と堅牢性とを両立させることは難しい。
【0004】
インクジェット用のブラック染料としては、これまでフードブラック系染料、ナフトール系の直接アゾ染料、酸性アゾ染料などが広く公知である。
フードブラック系染料としては、C.I.Food Black 1、C.I.Food Black 2が代表的であり、これらをインクジェット用ブラックインクに使用する技術については、特許文献1,特許文献2、特許文献3等に記載がある。
また、酸性アゾ染料としては、C.I.Acid Black 2,同31、同52、同140、同187等をインクジェット用ブラックインクに使用する技術が特許文献4、特許文献5、特許文献6等に、また直接アゾ染料としては、C.I.Direct Black 9、同17、同38、同51、同60、同102、同107、同122、同142、同154、同168等をインクジェット用ブラックインクに使用する技術が、特許文献7,特許文献8、特許文献9等に記載されている。
【0005】
一般に顔料インクでは、耐久性や耐水性に優れるものの、画像の光沢感や高濃度部での画像のなめらかさに問題があることがわかっている。これを回避するために、顔料の粒子サイズを小さくしたり、顔料表面を樹脂でコートしたりする技術が当該分野では先行技術として知られている。
しかしながら、画像の光沢感が高濃度部でも十分に得られるレベルまで顔料粒子を細かくすると、顔料自体の耐久性が染料と同等レベルまで低下してしまうことがわかっている。
インクジェットによる画像記録では、写真と異なりC,M,Y以外の色相のインクを自由に選択することが可能である。これまでもEPSON社よりダークイエローインク(染料)やブルーインク、レッドインク(いずれも顔料)が搭載されたシステムが発表、発売されている。また、CANON社よりレッドインク(染料)が搭載されたシステムも発表、発売された。
これらのインクは、インクジェット記録最大の弱点である「単位面積あたりのインク容量」を抑制しつつ、高濃度かつ高画質の画像を得るために開発されてきた。しかしながら、インクジェット記録が写真感光材料による画像形成と異なる最大の点は、ブラックインクを印刷による画像記録同様に使用できることである。
このため、各社ではブラックインクとして、濃度の異なるインクを染料ならびに顔料を含めて、何種類か併用したインクセットを形成したシステムを発表、発売している。
これまで、ドキュメントにおける文字の印画には、黒顔料としてカーボンブラックが一般的に使用されてきた。しかしながら、カーボンブラックは高画質な写真画像形成には不利であり、写真画質を達成するためには、高品位の黒染料を使用することが望まれている。
【0006】
発明者らは、染料を用いるインクジェット用インクについて検討を進めてきた。しかしながら、水性のブラックインクは画像耐久性が低いという問題があることがわかった。特に耐オゾン性や、高湿条件下での保存において、褪色したり画像にじみを起こしたりするような黒染料が多く、当該分野において問題となっていた。
また、上記の目的から、水溶性のブラックインクは、その経時によって吸収特性が変化してしまうものを用いると、画像の再現性が著しく損なわれるものであることがわかった。水溶性のブラックインクは広い範囲の波長領域をカバーする吸収特性を有する必要性があるため、含まれる染料の安定性が高いことが望まれる。特に、カートリッジ内や、製造もしくは溶液運搬時に高温経時される条件などが存在した場合、染料の分解が起こると、経時後の画像品質が著しく損なわれてしまうことがわかった。
【0007】
【特許文献1】特開平2−36276号公報
【特許文献2】特開平2−233782号公報
【特許文献3】特開平2−233783号公報
【特許文献4】特開昭60−108481号公報
【特許文献5】特開平2−36277号公報
【特許文献6】特開平2−36278号公報
【特許文献7】特開昭56−139568号公報
【特許文献8】特開昭61−285275号公報
【特許文献9】特開平3−106974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、高濃度の黒画像品質まで含めた画像の耐久性、ならびにインク経時安定性に優れた、インクジェット用ブラックインク、インクセット、ならびにインクカートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の課題は、下記の手段により解決することができる。
1)インクを下記条件で経時試験した際の、下記にて定義される吸光度の変化率ΔAbsが20%以下であることを特徴とするブラックインク。
<経時試験条件>
インクを還流しながら75℃、24時間経時する。
<吸光度の変化率ΔAbsの定義>
経時前のインクを希釈し、分光光度計を使用して吸光度測定したときの、吸光度(Abs)をAbs1、経時後のインクを経時前の溶液と同様にして測定した際の吸光度(Abs)を同様にAbs2としたときに、ΔAbs=100×(Abs1−Abs2)/Abs1で表されるΔAbsを吸光度の変化率(%)と定義する。
2)酸化電位が1.0V(vs SCE)よりも貴である染料を含むことを特徴とする上記1)記載のブラックインク。
3)下記条件で経時試験した際の、下記にて定義される残存率が90%以上である染料を含むことを特徴とする上記1)または2)記載のブラックインク。
<経時試験条件>
温度25℃、pH=9.0のBritton-Robinsonバッファーに染料が1mmol/lの溶液となるように溶解して、この溶液100mlを還流しながら75℃、24時間経時する。
<残存率の定義>
経時前の染料溶液を50倍希釈し、分光光度計を使用して吸光度測定したときの、λmax部の吸光度(Abs)をAbs3、経時後の溶液を経時前の溶液と同様にして測定した際の吸光度(Abs)を同様にAbs4としたときに、Z=(Abs4/Abs3)×100で表されるZを残存率(%)と定義する。
4)ヘテロ環基を有する染料を含むことを特徴とする上記1)〜3)の何れかに記載のブラックインク。
5)λmaxが500nmから700nmにあり、かつ吸光度1.0に規格化した希薄溶液の吸収スペクトルにおける半値幅が100nm以上である染料を含むことを特徴とする上記1)〜4)の何れかに記載のブラックインク。
6)λmaxが350nmから500nmにある染料を含むことを特徴とする上記1)〜5)の何れかに記載のブラックインク。
7)下記一般式(1)で示される染料を含むことを特徴とする上記1)〜6)の何れかに記載のブラックインク。
一般式(1):A1−N=N−A2−N=N−A3
式中、A1、A2およびA3は、各々独立に、置換されていてもよい芳香族基または置換されていてもよい複素環基を表す。A1およびA3は一価の基であり、A2は二価の基である。
8)前記A2が少なくとも1つのアルキル基、アリール基、及びヘテロ環基から選ばれる基が置換した芳香族複素環基であることを特徴とする上記7)記載のブラックインク。
9)前記A1またはA3が芳香族複素環基であることを特徴とする上記7)または8)記載のブラックインク。
10)下記一般式(5)で表される染料を含むことを特徴とする上記1)〜9)の何れかに記載のブラックインク。
【0010】
一般式(5)
【化1】

【0011】
式中、Aは、水酸基もしくは−NR12で表される基を示す。ここで、R1およびR2はそれぞれ独立して、水素原子もしくは置換されていてもよいアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、−CO−R5基、−SO2−R6基、−PO(R7)−R8基を表す。ここで、R5はアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基を表す。R6はアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を表す。R7,R8はアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、を表す。R3およびR4はそれぞれ独立してアリール基、または芳香族複素環基を表す。
Mは水素原子、カチオン性の金属原子、もしくは含窒素カチオン基を表す。
11)一般式(5)で表される染料を2種以上含むことを特徴とする上記10)に記載のブラックインク。
12)インク全量に対しアミド系溶剤の総含有量が5質量%以下であることを特徴とする上記1)〜11)の何れかに記載のブラックインク。
13)インク全量に対し水溶性グリコール系溶剤の総含有量が30質量%以下であることを特徴とする上記1)〜12)の何れかに記載のブラックインク。
14)インクのpHが5〜9であることを特徴とする上記1)〜13)の何れかに記載のブラックインク。
15)染料の会合性を促進する機能を有した化合物を含むことを特徴とする上記1)〜14)の何れかに記載のブラックインク。
16)インクジェット記録に用いることを特徴とする上記1)〜15)の何れかに記載のブラックインク。
17)上記1)〜16)記載のブラックインクを含むことを特徴とするインクセット。
18)上記1)〜16)記載のブラックインクもしくは上記17)記載のインクセットを含有することを特徴とするインクカートリッジ。
【発明の効果】
【0012】
本発明のインクは、経時における吸光度の変化ΔAbsが小さく、また求核剤による攻撃を受けにくいため、経時安定性に優れると共に染料濃度を高濃度に維持可能であり、経時安定性に優れた高濃度の画像を得ることができる。
また、本発明のインクは、酸化電位が高いので耐候性に優れ、かつ色相の安定性に優れた高濃度の画像を提供することができる。
【0013】
本発明のブラックインク(本発明のインクともいう)は、基本構成として、少なくとも染料を含んでなるものを意味する。本発明のインクは、媒体を含有させることができるが、媒体として溶媒を用いた場合は特にインクジェット記録用インクとして好適である。本発明のインクは、媒体として、親油性媒体や水性媒体中用いて、それらの中に、染料を溶解及び/又は分散させることによって作製することができる。好ましくは、水性媒体を用いる場合である。本発明のインクには、媒体を除いたインク用組成物も含まれる。必要に応じてその他の添加剤を、本発明の効果を害しない範囲内において含有される。その他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの各種添加剤は、水溶性インクの場合にはインク液に直接添加する。油溶性染料を分散物の形で用いる場合には、染料分散物の調製後分散物に添加するのが一般的であるが、調製時に油相又は水相に添加してもよい。
【0014】
本発明のブラックインクは、還流しながら75℃、24時間経時した際の、吸光度の変化率ΔAbsが20%以下と小さいことを特徴とし、経時安定性に優れたブラックインクを提供することができる。
経時試験に供されるブラックインクは、媒体に溶解されたブラックインクであれば、特に制限はない。媒体の組成も任意である。
ΔAbsは、経時前のインクを希釈したときの吸光度Abs1、及び経時後のインクを同様に希釈したときの吸光度Abs2を、分光光度計を用いて測定し、ΔAbs=100×(Abs1−Abs2)/Abs1から求められる。
ここで用いる分光光度計は、光源がUVランプもしくはタングステンランプ、セルがガラス又は石英であるものを用いる。
【0015】
本発明のインクにおいて使用する染料は、堅牢性、オゾンガスに対する堅牢性の点から、酸化電位が1.0V(vs SCE)よりも貴である染料を含む。酸化電位は、1.1V(vs SCE)よりも貴であることがさらに好ましく、1.15V(vs SCE)よりも貴であることが特に好ましい。この染料は、ΔAbsを満足することが好ましい。
【0016】
本発明において使用する染料の酸化電位の値(Eox)は当業者が容易に測定することができる。この方法に関しては、例えばP.Delahay著「New Instrumental Methods in Electrochemistry」(1954年 Interscience Publishers社刊)やA.J.Bard他著「Electrochemical Methods」(1980年 JohnWiley & Sons社刊)、藤嶋昭他著「電気化学測定法」(1984年 技報堂出版社刊)に記載されている。
【0017】
具体的に酸化電位は、過塩素酸ナトリウムや過塩素酸テトラプロピルアンモニウムといった支持電解質を含むジメチルホルムアミドやアセトニトリルのような溶媒中に、被験試料を1×10-2〜1×10-6モル/リットル溶解して、サイクリックボルタンメトリー等を用いてSCE(標準飽和カロメル電極)に対する値として測定する。この値は、液間電位差や試料溶液の液抵抗などの影響で、数10ミルボルト程度偏位することがあるが、標準試料(例えばハイドロキノン)を入れて電位の再現性を保証することができる。
なお、電位を一義的に規定する為、本発明では、0.1モル/リットルの過塩素酸テトラプロピルアンモニウムを支持電解質として含むジメチルホルムアミド中(染料の濃度は0.001モル/リットル)で測定した値(vs SCE)を染料の酸化電位とする。
【0018】
Eoxの値は試料から電極への電子の移りやすさを表わし、その値が大きい(酸化電位が貴である)ほど試料から電極への電子の移りにくい、言い換えれば、酸化されにくいことを表す。化合物の構造との関連では、電子求引性基を導入することにより酸化電位はより貴となり、電子供与性基を導入することにより酸化電位はより卑となる。本発明では、求電子剤であるオゾンとの反応性を下げるために、染料骨格に電子求引性基を導入して酸化電位をより貴とすることが望ましい。
【0019】
本発明のインクは、下記条件で経時試験した際の、下記にて定義される残存率が90%以上(好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上)である染料を含むことが好ましい。
<経時試験条件>
温度25℃、pH=9.0のBritton-Robinsonバッファーに染料が1mmol/lの溶液となるように溶解して、この溶液100mlを還流しながら75℃、24時間経時する。
<残存率の定義>
経時前の染料溶液を50倍希釈し、分光光度計を使用して吸光度測定したときの、λmax部の吸光度(Abs)をAbs3、経時後の溶液を経時前の溶液と同様にして測定した際の吸光度(Abs)を同様にAbs4としたときに、Z=(Abs4/Abs3)×100で表されるZを残存率(%)と定義する。
上記残存率Zを求めるための経時試験条件に用いるBritton-Robinsonバッファー(ブリトン−ロビンソン緩衝液)は、化学便覧に記載のもので、公知であり、混合することによりpHを9.0に調整したものを用いる。
【0020】
本発明のブラックインクにおいて、残存率Zを規定した意義は、以下の通りである。
酸化電位の高い染料は、抗酸化性に優れるものであるが、一方、後述する種々の機能を有する添加剤に含まれる求核剤による求核攻撃を受けやすくなり、ひいては染料が経時的に分解し易くなるという性質もある。
この理由は、以下のように説明される。
一般的に化合物の酸化電位を上げ、真空準位から見たときの化合物の分子軌道における最高被占軌道(HOMO=Highest Occupied Molecular Orbital)を離せば離すほど、これに付随する形で最低空位軌道(LUMO=Lowest Unoccupied Molecular Orbital)も下がる(すなわち、還元されやすくなる)ことになり、求核剤による求核攻撃を受けやすくなる。特に染料の場合は、可視域にπ−π*遷移に帰属される強い吸収を有することから、一般的な有機化合物よりもHOMO-LUMO間のバンドギャップが小さい。このため、LUMOに対する求核剤の攻撃により、化合物が分解しやすいのである。
【0021】
これはとりもなおさず、インク中に染料が存在する場合、インク溶液が高pHになると、水酸化物イオンなどの求核種によって染料が攻撃されるため、高電位の染料は溶液中で不安定であることを意味する。
すなわち、本発明に用いられる染料の残存率Zが高いということは、水酸化物イオンなどの求核種が多量に存在する高pH溶液において極めて安定であること、言い換えれば、本発明に用いる染料は酸化電位が高く、かつ求核剤の攻撃に対しても安定であることを意味するものである。
すなわち、インク中で染料が経時に分解し難く、またカートリッジ充填後の経時で、インク中の染料濃度を高く維持できるという効果を奏する。
【0022】
また、本発明のブラックインクにおいて、残存率Zを求める方法は、特に高酸化電位を有する染料の求核剤に対する反応性を定量的に測定する方法をも提供するものであり、経時安定性の高いインクの製造に使用できる染料かどうかを判断する指標とすることができる。
上記残存率Zの測定において、λmaxは染料溶液の吸収スペクトルから求められる値を意味する。λmaxは、吸光度(Abs)が最大の波長を意味する。ここで、吸収スペクトルは、通常使用する1cmのセルを用いた分光光度計で測定されるものを意味する。
【0023】
本発明のブラックインクは、ヘテロ環基を有する染料を含むことが好ましい。このヘテロ環基を有する染料は、ΔAbs、酸化電位及び残存率Zが上記本発明範囲となるように選択されることが好ましい。なお、本発明のブラックインクは、上記酸化電位及び残存率Zを満たさない染料も併用できる。
【0024】
本発明のブラックインクは、λmaxが500nmから700nmにあり、かつ吸光度1.0に規格化した希薄溶液の吸収スペクトルにおける半値幅が100nm以上(好ましくは120〜500nm、さらに好ましくは120nm〜350nm)である染料を含むことが好ましい。ここで、吸収スペクトル及びλmaxは、残存率Zの場合と同じである。
この希薄溶液の溶媒としては特に制限はない。溶媒としては、例えば、水の他にアルコール系溶媒、グリコール系溶媒、アミド系溶媒等種々のものが使用できる。また、前記ΔAbsのAbs1を測定するための希釈溶液でもよい。
上記λmax及び半値幅の測定で、溶媒を規定しない理由は、溶媒の性質によりそれらの値が変化するためであり、本発明ではそのような変化を考慮した上で上記範囲が好ましい範囲としたものである。
例えば、染料がある溶媒の溶液中で会合状態になると見かけの吸収スペクトルが変化し、分子そのものが有する特性としての吸収スペクトルとは異なる可能性が高くなる。それに対し、例えば、アミド系溶媒は会合を破壊する特徴があり、分子状態で溶解した染料のスペクトルをそのまま反映しているものと考えられる。
このような染料の会合の破壊は、インクの経時安定性を確保する上で不利であり、インクにおける上記アミド系溶媒、その他グリコール系溶媒などの存在量は後述のそれら溶媒が示す各種機能(例えば、乾燥防止、浸透促進、表面張力調整、消泡、粘度調整等)を確保した上で、できるだけ少ないことが好ましい。
本発明のブラックインクでは、インク全量に対しアミド系溶剤の総含有量が5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることが更に好ましい。
また、本発明のブラックインクでは、インク全量に対しグリコール系溶剤の総含有量が30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることが更に好ましい。
【0025】
アミド系溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−アセチルピペリジン、N−アセチルピロリジン、N−アセチルモルホリン、N,N−ジメチルメタンスルホンアミド、N,N−ジエチルメタンスルホンアミド、2−ピロリドン、ε−カプロラクタム、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N,N−ジメチルイミダゾリジノンなど、種々のものが使用可能であるが、中でもN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドは染料の会合の破壊が強い。アミド系溶剤としては種々のものが使用可能であるが、中でも2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N,N−ジメチルイミダゾリジノンを溶剤として使用することが好ましい。なお、固形となるアミド系素材(例えば尿素、エチレン尿素など)はアミド系溶媒に含まれない。
【0026】
グリコール系溶剤としては、グリコール及びその誘導体が包含され、後者はグリコールに置換基が置換したタイプの溶剤を表す。
グリコール系溶剤としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテルなどを表し、好ましくはジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルなどである。
【0027】
上記と同様に経時安定性の観点から、本発明のブラックインクのpHは、5〜9であることが好ましく、6〜8.5であることが更に好ましい。
また、後述されるpH調節剤の添加量は、インク1000gあたり0.1mol以下が好ましく、0.05mol以下が更に好ましい。
【0028】
本発明のインクは、染料の会合性を促進する機能を有した化合物(以下、「会合促進化合物」ともいう)を含むことが好ましい。
会合促進化合物とは、上記N,N−ジメチルアセトアミド等の会合を破壊する機能を有した化合物とは逆の機能を有した化合物である。会合促進化合物の具体的な作用としては、染料と化学的な相互作用を示すことにより、染料の会合性を高めることが挙げられる。ここで、化学的な相互作用とは、西尾之宏著「有機化学のための分子間力入門」(講談社サイエンティフィク(2000年)にあるように、クーロン相互作用、CH−π相互作用、ファンデルワールス力、水素結合等を意味する。中でも、水素結合を介して相互作用する化合物であることが好ましい。
水素結合性の基としては、水酸基、チオ基、カルボニル基、カルボキシル基、ウレタン基、ウレイド基、アミド基、スルホンアミド基、アシルアミノ基、イミド基、ヒドロキシルアミノ基、アミノ基、アミジノ基、グアニジノ基等を挙げることができるが、本発明ではアミド基、ウレタン基、ウレイド基、スルホンアミド基、アシルアミノ基、イミド基等、窒素原子を介した水素結合を形成可能な基が、好ましく使用できる。
上記化合物の中でも、特にアミド結合、スルホンアミド結合を有する化合物が好ましく使用できる。中でもアミド基が連続して複数存在するような構造の化合物であることが好ましい。
このような化合物の例としてはアミノ酸誘導体等の生体関連素材を挙げることができる。
その例としては、グリシン、グリシルグリシン、グリシルグリシルグリシン、アラントイン、グルタミン、ビューレット、フェニルグリシン、タウリン、リシン等を挙げることができる。
【0029】
本発明のインクに用いる染料は、酸化電位が1.0V(vs SCE)よりも貴である特性、及び残存率Zが90%以上である特性、並びにλmaxが500nmから700nmで、かつ吸光度1.0に規格化した希薄溶液の吸収スペクトルにおける半値幅が100nm以上である特性からなる群から選択される少なくとも1種の特性を有することが好ましく、全ての特性を有することが更に好ましい。本発明のインクは、上記特性を有する染料を少なくとも1種含むことができる。
【0030】
また、本発明のブラックインクは、λmaxが350nmから500nmにある染料を含むことが好ましい。このλmaxの定義も上記と同義の吸光度1.0に規格化した希薄溶液の吸収スペクトルから同様に求められる。
本発明のブラックインクにおいて、λmaxが500nmから700nmのブラック染料(染料(L)とも記す)単独で、画像品質の高い「(しまりのよい)黒」を観察光源によらず、かつB,G,Rのいずれかの色調が強調されにくい黒を実現できる場合は、この染料を単独でブラックインク用染料として使用することも可能であるが、通常はこの染料の吸収が低い領域をカバーする染料として上記λmaxが350nmから500nmにあるイエロー染料(染料(S)とも記す)を併用することが好ましい。また、さらに他の染料と併用してブラックインクを作製することも可能である。
【0031】
本発明においては、1)耐候性に優れること、および/または、2)褪色後も黒のバランスが崩れないことを満足するために、下記の条件を満たすようなインクが好ましい。
【0032】
本発明のインクを用いてJISコード2223の黒四角記号を48ポイントで印字し、これをステータスAフィルターにより測定した反射濃度(Dvis)を初期濃度として規定して、この印画物を、5ppmのオゾンを常時発生可能なオゾン褪色試験機を用いて強制的に褪色させ、その反射濃度(Dvis)が初期濃度値の80%となるまでの時間から強制褪色速度定数(kvis)を定めたときに、該速度定数(kvis)が5.0×10-2[hour-1]以下であることが好ましく、更に好ましくは3.0×10-2[hour-1]以下、特に好ましくは1.0×10-2[hour-1]以下となることである。
ステータスAフィルターを搭載した反射濃度測定機としては、たとえばX−Rite濃度測定機などを挙げることができる。強制褪色速度定数(kvis)は、反射濃度(Dvis)が初期反射濃度値の80%となるまでの時間(t)から「0.8=exp(−kvis・t)」なる関係式から求める。
【0033】
また、本発明のインクを用いてJISコード2223の黒四角記号を48ポイントで印字し、これをステータスAフィルターにより測定した濃度測定値で、DvisではないC(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー)3色の反射濃度(DR,DG,DB)も初期濃度として規定する。ここで、(DR,DG,DB)は、(レッドフィルターによるC反射濃度,グリーンフィルターによるM反射濃度,ブルーフィルターによるY反射濃度)を示す。この印画物を上記の方法に従って5ppmのオゾンを常時発生可能なオゾン褪色試験機を用いて強制的に褪色させ、それぞれの反射濃度(DR,DG,DB)が初期濃度値の80%となるまでの時間からも同様に強制褪色速度定数(kR,kG,kB)を定める。本発明のインクは、該3つの速度定数を求めて、その最大値と最小値の比(R)を求めた場合(たとえばkRが最大値でkGが最小値の場合、R=kR/kGである)、該比(R)が1.2以下が好ましく、1.1以下がさらに好ましく、1.05以下が特に好ましい。
【0034】
なお、上記で使用した「JISコード2223の黒四角記号を48ポイントで印字した印字物」は、濃度測定に十分な大きさを与えるため、測定機のアパーチャーを十分にカバーする大きさに画像を印字したものである。
【0035】
本発明のインクは、ブラックインクとして用いてもよいし、他の任意の色を示すインクの形成に用いることができる。
また、本発明のインクでは、上記特性条件を満足する染料としてアゾ染料を含有することが好ましい。また、本発明のインクをインクセットに用いる場合、アゾ染料は、インクセットの構成インクの全ての色の呈色に用いられてもよいし、一部の色の呈色に用いられてもよいし、当該両者の色の呈色のために他の構造の染料と併用されてもよい。アゾ染料は、好ましくは、イエローインク、ダークイエローインク、マゼンタインク、ライトマゼンタインク、ブラックインクなどに用いられることが好ましい。
該アゾ染料としては、後述されるような芳香環基がアゾ結合で連結されている構造が好ましい。
また、本発明のインクセットでは、金属キレート染料を含有することが好ましい。該金属キレート染料の使用法は、上記アゾ染料の場合と同様である。該金属キレート染料としては、シアンインク、ライトシアンインク等に用いられることが好ましい。
当該金属キレート染料としては、フタロシアニン染料が好ましい。
また、本発明のインクセットではインクの染料濃度として、ブラックインクの染料濃度が最も高いことが、インクの混合打滴部の画像品質の観点から好ましい。
更に、そのブラックインクは染料からなるインクの他に顔料分散物からなるインクを別に包含することが、耐久性向上、文字品位向上の観点から好ましい。尚、本発明はブラックインクとして、顔料分散物からなるインクを染料からなるブラックインクと併用してもよいし、単独で用いてもよい。
【0036】
これまで述べたブラック染料のうち、本発明では、特に一般式(1)で表されるアゾ染料を好ましく使用することができる。また、この染料は、上記特性の少なくとも1つを有していることが好ましく、全ての特性を有していることが更に好ましい。
ここで、一般式(1)で表される染料のうち、特に長波側染料(染料(L))に該当するものについて詳細に述べる。
以下に、一般式(1)で表される染料について説明する。
一般式(1):A1−N=N−A2−N=N−A3
式中、A1、A2およびA3は、各々独立に、置換されていてもよい芳香族基または置換されていてもよい複素環基を表す。A1およびA3は一価の基であり、A2は二価の基である。
一般式(1)で表されるアゾ染料は、特に下記一般式(2)で表される染料であることが好ましい。
一般式(2);
【0037】
【化2】

【0038】
上記一般式(2)中、T1およびT2は、各々=CR12−および−CR13=を表すか、あるいはいずれか一方が窒素原子、他方が=CR12−または−CR13=を表す。
【0039】
1、R12およびR13は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、複素環オキシカルボニル基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アルキルアミノ基、アリールアミノ基、複素環アミノ基を含む)、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基、複素環スルホニルアミノ基、ニトロ基、アルキルもしくはアリールチオ基、複素環チオ基、アルキルもしくはアリールスルホニル基、複素環スルホニル基、アルキルもしくはアリールスルフィニル基、複素環スルフィニル基、スルファモイル基、またはスルホ基を表し、各基は更に置換されていてもよい。
【0040】
10、R11は、各々独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルまたはアリールスルホニル基、スルファモイル基を表し、各基は更に置換基を有していてもよい。
また、R12とR10、あるいはR10とR11が結合して5乃至6員環を形成してもよい。
1及びA2は一般式(1)と同義である。
【0041】
一般式(2)で表されるアゾ染料は、さらに下記一般式(3−1)または下記一般式(3−2)で表される染料であることが好ましい。
【0042】
【化3】

【0043】
上記一般式(3−1)および一般式(3−2)中、R14およびR15は、一般式(2)のR12と同義である。A1、R10、R11、T1、T2、およびV1は、一般式(2)と同義である。
【0044】
ここで、一般式(1)、一般式(2)、一般式(3−1)および一般式(3−2)(以下、一般式(3−1)と一般式(3−2)とをまとめて表すときには一般式(3)と記載する。)の説明において使用される用語(置換基)について説明する。これらの用語は後述する一般式(4)、一般式(5)の説明にも共通するものである。
【0045】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子および臭素原子が挙げられる。
【0046】
脂肪族基は、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アラルキル基および置換アラルキル基を意味する。脂肪族基は分岐を有していてもよく、また環を形成していてもよい。脂肪族基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜16であることがさらに好ましい。アラルキル基および置換アラルキル基のアリール部分はフェニルまたはナフチルであることが好ましく、フェニルが特に好ましい。脂肪族基の例には、メチル、エチル、ブチル、イソプロピル、t−ブチル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、シアノエチル、トリフルオロメチル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、シクロヘキシル基、ベンジル基、2−フェネチル基、ビニル基、およびアリル基を挙げることができる。
【0047】
1価の芳香族基はアリール基および置換アリール基を意味する。アリール基は、フェニルまたはナフチルであることが好ましく、フェニルが特に好ましい。1価の芳香族基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜16がさらに好ましい。1価の芳香族基の例には、フェニル、p−トリル、p−メトキシフェニル、o−クロロフェニルおよびm−(3−スルホプロピルアミノ)フェニルが含まれる。2価の芳香族基は、これらの1価の芳香族基を2価にしたものであり、その例としてフェニレン、p−トリレン、p−メトキシフェニレン、o−クロロフェニレンおよびm−(3−スルホプロピルアミノ)フェニレン、ナフチレンなどが含まれる。
【0048】
複素環基には、置換基を有する複素環基および無置換の複素環基が含まれる。複素環に脂肪族環、芳香族環または他の複素環が縮合していてもよい。複素環基としては、5員または6員環の複素環基が好ましく、複素環のヘテロ原子としてはN、O、およびSをあげることができる。上記置換基の例には、脂肪族基、ハロゲン原子、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アシルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、イオン性親水性基などが含まれる。1価の複素環基の例には、2−ピリジル基、2−チエニル基、2−チアゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、2−ベンゾオキサゾリル基および2−フリル基が含まれる。2価の複素環基は、前記の1価の複素環中の水素原子を取り除いて結合手になった基である。
【0049】
カルバモイル基には、置換基を有するカルバモイル基および無置換のカルバモイル基が含まれる。前記置換基の例には、アルキル基が含まれる。前記カルバモイル基の例には、メチルカルバモイル基およびジメチルカルバモイル基が含まれる。
【0050】
アルコキシカルボニル基には、置換基を有するアルコキシカルボニル基および無置換のアルコキシカルボニル基が含まれる。アルコキシカルボニル基としては、炭素原子数が2〜20のアルコキシカルボニル基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。前記アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニル基およびエトキシカルボニル基が含まれる。
【0051】
アリールオキシカルボニル基には、置換基を有するアリールオキシカルボニル基および無置換のアリールオキシカルボニル基が含まれる。アリールオキシカルボニル基としては、炭素原子数が7〜20のアリールオキシカルボニル基が好ましい。前記置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。前記アリールオキシカルボニル基の例には、フェノキシカルボニル基が含まれる。
【0052】
複素環オキシカルボニル基には、置換基を有する複素環オキシカボニル基および無置換の複素環オキシカルボニル基が含まれる。複素環オキシカルボニル基としては、炭素原子数が2〜20の複素環オキシカルボニル基が好ましい。前記置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。前記複素環オキシカルボニル基の例には、2−ピリジルオキシカルボニル基が含まれる。
アシル基には、置換基を有するアシル基および無置換のアシル基が含まれる。アシル基としては、炭素原子数が1〜20のアシル基が好ましい。上記置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。上記アシル基の例には、アセチル基およびベンゾイル基が含まれる。
【0053】
アルコキシ基には、置換基を有するアルコキシ基および無置換のアルコキシ基が含まれる。アルコキシ基としては、炭素原子数が1〜20のアルコキシ基が好ましい。置換基の例には、アルコキシ基、ヒドロキシル基、およびイオン性親水性基が含まれる。上記アルコキシ基の例には、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、メトキシエトキシ基、ヒドロキシエトキシ基および3−カルボキシプロポキシ基が含まれる。
【0054】
アリールオキシ基には、置換基を有するアリールオキシ基および無置換のアリールオキシ基が含まれる。アリールオキシ基としては、炭素原子数が6〜20のアリールオキシ基が好ましい。上記置換基の例には、アルコキシ基およびイオン性親水性基が含まれる。上記アリールオキシ基の例には、フェノキシ基、p−メトキシフェノキシ基およびo−メトキシフェノキシ基が含まれる。
【0055】
複素環オキシ基には、置換基を有する複素環オキシ基および無置換の複素環オキシ基が含まれる。上記複素環オキシ基としては、炭素原子数が2〜20の複素環オキシ基が好ましい。上記置換基の例には、アルキル基、アルコキシ基、およびイオン性親水性基が含まれる。上記複素環オキシ基の例には、3−ピリジルオキシ基、3−チエニルオキシ基が含まれる。
【0056】
シリルオキシ基としては、炭素原子数が1〜20の脂肪族基、芳香族基が置換したシリルオキシ基が好ましい。シリルオキシ基の例には、トリメチルシリルオキシ、ジフェニルメチルシリルオキシが含まれる。
【0057】
アシルオキシ基には、置換基を有するアシルオキシ基および無置換のアシルオキシ基が含まれる。アシルオキシ基としては、炭素原子数1〜20のアシルオキシ基が好ましい。前記置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アシルオキシ基の例には、アセトキシ基およびベンゾイルオキシ基が含まれる。
【0058】
カルバモイルオキシ基には、置換基を有するカルバモイルオキシ基および無置換のカルバモイルオキシ基が含まれる。前記置換基の例には、アルキル基が含まれる。カルバモイルオキシ基の例には、N−メチルカルバモイルオキシ基が含まれる。
【0059】
アルコキシカルボニルオキシ基には、置換基を有するアルコキシカルボニルオキシ基および無置換のアルコキシカルボニルオキシ基が含まれる。アルコキシカルボニルオキシ基としては、炭素原子数が2〜20のアルコキシカルボニルオキシ基が好ましい。アルコキシカルボニルオキシ基の例には、メトキシカルボニルオキシ基、イソプロポキシカルボニルオキシ基が含まれる。
【0060】
アリールオキシカルボニルオキシ基には、置換基を有するアリールオキシカルボニルオキシ基および無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基が含まれる。アリールオキシカルボニルオキシ基としては、炭素原子数が7〜20のアリールオキシカルボニルオキシ基が好ましい。アリールオキシカルボニルオキシ基の例には、フェノキシカルボニルオキシ基が含まれる。
【0061】
アミノ基には、アルキル基、アリール基または複素環基で置換されたアミノ基が含まれ、アルキル基、アリール基および複素環基はさらに置換基を有していてもよい。アルキルアミノ基としては、炭素原子数1〜20のアルキルアミノ基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アルキルアミノ基の例には、メチルアミノ基およびジエチルアミノ基が含まれる。
アリールアミノ基には、置換基を有するアリールアミノ基および無置換のアリールアミノ基が含まれる。アリールアミノ基としては、炭素原子数が6〜20のアリールアミノ基が好ましい。置換基の例としては、ハロゲン原子、およびイオン性親水性基が含まれる。アリールアミノ基の例としては、アニリノ基および2−クロロフェニルアミノ基が含まれる。
複素環アミノ基には、置換基を有する複素環アミノ基および無置換の複素環アミノ基が含まれる。複素環アミノ基としては、炭素数2〜20個の複素環アミノ基が好ましい。置換基の例としては、アルキル基、ハロゲン原子、およびイオン性親水性基が含まれる。
【0062】
アシルアミノ基には、置換基を有するアシルアミノ基および無置換基のアシルアミノ基が含まれる。アシルアミノ基としては、炭素原子数が2〜20のアシルアミノ基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アシルアミノ基の例には、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、N−フェニルアセチルアミノおよび3,5−ジスルホベンゾイルアミノ基が含まれる。
【0063】
ウレイド基には、置換基を有するウレイド基および無置換のウレイド基が含まれる。ウレイド基としては、炭素原子数が1〜20のウレイド基が好ましい。置換基の例には、アルキル基およびアリール基が含まれる。ウレイド基の例には、3−メチルウレイド基、3,3−ジメチルウレイド基および3−フェニルウレイド基が含まれる。
【0064】
スルファモイルアミノ基には、置換基を有するスルファモイルアミノ基および無置換のスルファモイルアミノ基が含まれる。置換基の例には、アルキル基が含まれる。スルファモイルアミノ基の例には、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ基が含まれる。
【0065】
アルコキシカルボニルアミノ基には、置換基を有するアルコキシカルボニルアミノ基および無置換のアルコキシカルボニルアミノ基が含まれる。アルコキシカルボニルアミノ基としては、炭素原子数が2〜20のアルコキシカルボニルアミノ基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、エトキシカルボニルアミノ基が含まれる。
【0066】
アリールオキシカルボニルアミノ基には、置換基を有するアリールオキシカボニルアミノ基および無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基が含まれる。アリールオキシカルボニルアミノ基としては、炭素原子数が7〜20のアリールオキシカルボニルアミノ基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アリールオキシカルボニルアミノ基の例には、フェノキシカルボニルアミノ基が含まれる。
【0067】
アルキル及びアリールスルホニルアミノ基には、置換基を有するアルキル及びアリールスルホニルアミノ基、および無置換のアルキル及びアリールスルホニルアミノ基が含まれる。スルホニルアミノ基としては、炭素原子数が1〜20のスルホニルアミノ基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。これらスルホニルアミノ基の例には、メチルスルホニルアミノ基、N−フェニル−メチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、および3−カルボキシフェニルスルホニルアミノ基が含まれる。
【0068】
複素環スルホニルアミノ基には、置換基を有する複素環スルホニルアミノ基および無置換の複素環スルホニルアミノ基が含まれる。複素環スルホニルアミノ基としては、炭素原子数が1〜12の複素環スルホニルアミノ基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。複素環スルホニルアミノ基の例には、2−チオフェンスルホニルアミノ基、3−ピリジンスルホニルアミノ基が含まれる。
【0069】
複素環スルホニル基には、置換基を有する複素環スルホニル基および無置換の複素環スルホニル基が含まれる。複素環スルホニル基としては、炭素原子数が1〜20の複素環スルホニル基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。複素環スルホニル基の例には、2−チオフェンスルホニル基、3−ピリジンスルホニル基が含まれる。
【0070】
複素環スルフィニル基には、置換基を有する複素環スルフィニル基および無置換の複素環スルフィニル基が含まれる。複素環スルフィニル基としては、炭素原子数が1〜20の複素環スルフィニル基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。複素環スルフィニル基の例には、4−ピリジンスルフィニル基が含まれる。
【0071】
アルキル、アリール及び複素環チオ基には、置換基を有するアルキル、アリール及び複素環チオ基と無置換のアルキル、アリール及び複素環チオ基が含まれる。アルキル、アリール及び複素環チオ基としては、炭素原子数が1から20のものが好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アルキル、アリール及び複素環チオ基の例には、メチルチオ基、フェニルチオ基、2−ピリジルチオ基が含まれる。
【0072】
アルキル及びアリールスルホニル基には、置換基を有するアルキル及びアリールスルホニル基、無置換のアルキル及びアリールスルホニル基が含まれる。アルキル及びアリールスルホニル基の例としては、それぞれメチルスルホニル基およびフェニルスルホニル基を挙げることができる。
【0073】
アルキル及びアリールスルフィニル基には、置換基を有するアルキル及びアリールスルフィニル基、無置換のアルキル及びアリールスルフィニル基が含まれる。アルキル及びアリールスルフィニル基の例としては、それぞれメチルスルフィニル基及びフェニルスルフィニル基を挙げることができる。
【0074】
スルファモイル基には、置換基を有するスルファモイル基および無置換のスルファモイル基が含まれる。置換基の例には、アルキル基が含まれる。スルファモイル基の例には、ジメチルスルファモイル基およびジ−(2−ヒドロキシエチル)スルファモイル基が含まれる。
【0075】
次に、一般式(1)、(2)および(3)について更に説明する。
以下の説明において、基、置換基は、既に説明したことが適用される。
一般式(1)において、A1、A2、A3は、それぞれ独立して、置換されていてもよい芳香族基(A1、A3は1価の芳香族基、例えばアリール基;A2は2価の芳香族基、例えばアリーレン基)または置換されていてもよい複素環基(A1、A3は1価の複素環基;A2は2価の複素環基)を表す。芳香族環の例としてはベンゼン環やナフタレン環を挙げることができ、複素環のヘテロ原子としてはN、O、およびSを挙げることができる。複素環に脂肪族環、芳香族環または他の複素環が縮合していてもよい。
置換基はアリールアゾ基または複素環アゾ基であってもよい。したがって、一般式(1)で表される染料には、トリスアゾ染料やテトラキスアゾ染料も含まれる。
また、A1、A2、A3の少なくとも二つは、好ましくは複素環基である。
【0076】
3の好ましい複素環基として、芳香族含窒素6員複素環基が挙げられる。特に好ましいものは、A3が下記一般式Pで表される芳香族含窒素6員複素環基の場合であり、この時、一般式(1)は一般式(2)に相当する。
一般式P;
【0077】
【化4】

【0078】
一般式(P)において、T1およびT2は、各々=CR12−および−CR13=を表すか、あるいはいずれか一方が窒素原子、他方が=CR12−または−CR13=を表すが、各々=CR12−、−CR13=を表すものがより好ましい。
10、R11は、各々独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルまたはアリールスルホニル基、スルファモイル基を表し、各基は更に置換基を有していてもよい。R10、R11で表される好ましい置換基は、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルキルまたはアリールスルホニル基を挙げることができる。さらに好ましくは水素原子、芳香族基、複素環基、アシル基、アルキルまたはアリールスルホニル基である。最も好ましくは、水素原子、アリール基、複素環基である。各基は更に置換基を有していてもよい。
【0079】
1、R12、R13は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、複素環オキシカルボニル基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アルキルアミノ基、アリールアミノ基、複素環アミノ基を含む)、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基、複素環スルホニルアミノ基、ニトロ基、アルキルもしくはアリールチオ基、複素環チオ基、アルキルもしくはアリールスルホニル基、複素環スルホニル基、アルキルもしくはアリールスルフィニル基、複素環スルフィニル基、スルファモイル基、またはスルホ基を表し、各基は更に置換されていてもよい。
【0080】
1で表される置換基としては、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、複素環オキシ基、アミノ基(アルキルアミノ基、アリールアミノ基、複素環アミノ基を含む)、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキル及びアリールチオ基、または複素環チオ基が好ましく、更に好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アミノ基(アルキルアミノ基、アリールアミノ基、複素環アミノ基を含む)またはアシルアミノ基であり、中でも水素原子、アリールアミノ基、アシルアミノ基が最も好ましい。各基は更に置換基を有していてもよい。
【0081】
12、R13で表される好ましい置換基は、水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基を挙げることができる。各基は更に置換基を有していてもよい。R12とR10、あるいはR10とR11が結合して5乃至6員環を形成してもよい。A1、R12、R13、R10、R11、V1で表される各置換基が更に置換基を有する場合の置換基としては、上記V1、R10、R11で挙げた置換基を挙げることができる。また、A1、R8、R9、R10、R11、V1上のいずれかの位置に置換基としてさらにイオン性親水性基を有することが好ましい。
【0082】
置換基としてのイオン性親水性基には、スルホ基、カルボキシル基、ホスホノ基および4級アンモニウム基等が含まれる。前記イオン性親水性基としては、カルボキシル基、ホスホノ基、およびスルホ基が好ましく、特にカルボキシル基、スルホ基が好ましい。カルボキシル基、ホスホノ基およびスルホ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対イオンの例には、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)および有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジニウムイオン、テトラメチルホスホニウムイオン)が挙げられ、なかでもリチウムイオンが好ましい。
【0083】
2で表される好ましい複素環としては、チオフェン環、チアゾール環、イミダゾール環、ベンゾチアゾール環、チエノチアゾール環を挙げることができる。各複素環基は更に置換基を有していてもよい。中でも下記一般式(a)から(e)で表されるチオフェン環、チアゾール環、イミダゾール環、ベンゾチアゾール環、チエノチアゾール環が好ましい。なお、A2が(a)で表されるチオフェン環であり、A3が前記一般式Pで表される構造であるときは、一般式(1)は一般式(3−1)に相当し、A2が(b)で表されるチアゾール環であり、A3が前記一般式Pで表される構造であるときは、一般式(1)は一般式(3−2)に相当することになる。
【0084】
【化5】

【0085】
上記一般式(a)から(e)において、R16からR24は、一般式PにおけるV1、R12、R13と同義の置換基を表す。
【0086】
一般式(3)で表される染料のうち、特に好ましい構造は、下記一般式(4−1)または一般式(4−2)で表されるものである(以下、一般式(4−1)と一般式(4−2)をまとめて表す時には、一般式(4)と記載する。)。
【0087】
【化6】

【0088】
式中、Z1はハメットの置換基定数σp値が0.20以上の電子吸引性基を表す。Z1は、σp値が0.30以上の電子吸引性基であるのが好ましく0.45以上の電子吸引性基が更に好ましく、0.60以上の電子吸引性基が特に好ましいが、1.0を超えないことが望ましい。
【0089】
具体的には、ハメット置換基定数σp値が0.60以上の電子吸引性基としては、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基(例えばメタンスルホニル基、アリールスルホニル基(例えばベンゼンスルホニル基)を例として挙げることができる。
【0090】
ハメット置換基定数σp値が0.45以上の電子吸引性基としては、上記に加えアシル基(例えばアセチル基)、アルコキシカルボニル基(例えばドデシルオキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(例えば、m−クロロフェノキシカルボニル)、アルキルスルフィニル基(例えば、n−プロピルスルフィニル)、アリールスルフィニル基(例えばフェニルスルフィニル)、スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル)、ハロゲン化アルキル基(例えば、トリフロロメチル)を挙げることができる。
【0091】
ハメット置換基定数σp値が0.30以上の電子吸引性基としては、上記に加え、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ)、カルバモイル基(例えば、N−エチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル)、ハロゲン化アルコキシ基(例えば、トリフロロメチルオキシ)、ハロゲン化アリールオキシ基(例えば、ペンタフロロフェニルオキシ)、スルホニルオキシ基(例えばメチルスルホニルオキシ基)、ハロゲン化アルキルチオ基(例えば、ジフロロメチルチオ)、2つ以上のσp値が0.15以上の電子吸引性基で置換されたアリール基(例えば、2,4−ジニトロフェニル、ペンタクロロフェニル)、およびヘテロ環(例えば、2−ベンゾオキサゾリル、2−ベンゾチアゾリル、1−フェニルー2−ベンズイミダゾリル)を挙げることができる。
【0092】
ハメット置換基定数σp値が0.20以上の電子吸引性基の具体例としては、上記に加え、ハロゲン原子などが挙げられる。
【0093】
1としては、なかでも、炭素数2〜20のアシル基、炭素数2〜20のアルキルオキシカルボニル基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数6〜20のアリールスルホニル基、炭素数1〜20のカルバモイル基及び炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基が好ましい。特に好ましいものは、シアノ基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数6〜20のアリールスルホニル基であり、最も好ましいものはシアノ基である。
なお、本明細書中で用いられるハメットの置換基定数σp値については、特開2003−306623号の〔0059〕から〔0060〕に記載されるものと同義である。
【0094】
一般式(4)中のR10、R11、R12、R13、R14は一般式(3)と同義である。R25、R26は、各々独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルもしくはアリールスルホニル基、またはスルファモイル基を表す。中でも、水素原子、芳香族基、複素環基、アシル基、アルキルもしくはアリールスルホニル基が好ましく、水素原子、芳香族基、複素環基が特に好ましい。
【0095】
一般式(4)で説明した各基は更に置換基を有していてもよい。これらの各基が更に置換基を有する場合、該置換基としては、一般式(2)で説明した置換基、V1、R10、R11で例示した基やイオン性親水性基が挙げられる。
【0096】
さらに一般式(1)で表されるアゾ染料は、水溶液もしくはインク中での保存安定性を確保するために、アゾ基に直結していない芳香環基に共役π電子を有するアゾ染料が好ましい。アゾ基に直結した芳香環基とはアゾ基に結合している芳香環基全体のことを指すのに対し、アゾ基に直結していない芳香環基はアゾ基には直接結合せずアゾ染料を構成する発色団上の置換基として存在する芳香環基を意味する。例えばアゾ基にナフタレン環基が直結していた場合、ナフタレン環基全体をアゾ基に直結している芳香環基と見なす。アゾ基にビフェニル基が結合している場合は、アゾ基に結合しているフェニル基は直結した芳香環基であり、もう一方のフェニル基は直結していない芳香環基とする。芳香環基とは、芳香族基もしくは芳香族複素環基を意味する。芳香族複素環基とは、ヘテロ原子を有し、芳香族性を示す置換基を意味する。このような芳香環基を置換基として有することにより、上記染料は好ましい会合性を示すようになり保存安定性を向上させることができる。なお、芳香環基の置換位置としては、一般式(4)において、R10、R11、R12、R13、R14、R25、R26が好ましく、特にR10、R11、R14、R25、R26が好ましい。
【0097】
1は芳香族基、複素環基のいずれであってもよいが、好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイソチアゾール環であり、更にはベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、イソチアゾール環、ベンゾチアゾール環であり、最も好ましくベンゼン環、ナフタレン環である。
【0098】
本発明の一般式(2)で表されるアゾ染料として特に好ましい置換基の組み合わせは、R10およびR11として好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基、スルホニル基、アシル基であり、さらに好ましくは水素原子、アリール基、複素環基、スルホニル基であり、最も好ましくは、水素原子、アリール基、複素環基である。ただし、R10およびR11が共に水素原子であることはない。
1として、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシル基、アミノ基、アシルアミノ基であり、さらに好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、アシルアミノ基であり、最も好ましくは水素原子、アミノ基、アシルアミノ基である。
1のうち、好ましくはピラゾール環、イミダゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環であり、さらにはピラゾール環、イソチアゾール環であり、最も好ましくはピラゾール環である。
1およびT2が、それぞれ=CR12−、−CR13=であり、R12、R13は、各々好ましくは水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、カルバモイル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基であり、さらに好ましくは水素原子、アルキル基、カルボキシル基、シアノ基、カルバモイル基である。
【0099】
尚、前記一般式(1)で表されるアゾ染料の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0100】
中でも、本発明では、上記一般式中でBの部位にあたる環に、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基が置換しているものであることが好ましい。
まず、Bの環として好ましいものは、電子過剰となる5員ヘテロ芳香族環である。この例としては前述の通り、チオフェン、フラン、ピロール、シロール、ピラゾール、チアゾール、イミダゾール、オキサゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、トリアゾール等を挙げることができる。また、これらが5−5縮環したものも好ましく使用できる。例えば、ピラゾロトリアゾール、ピラゾロイミダゾール、ピロロトリアゾール等である。
中でも好ましくは、ハロゲン原子(例えばクロル基、ブロム基など)、シアノ基、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイル等が挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル等が挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシ等が挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等が挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノ等が挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ等が挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノ等が挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイル等が挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイル等が挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシル等が挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニル等が挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイド等が挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミド等が挙げられる。)、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含むものであり具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル、アゼピニル等が挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリル等が挙げられる。)といった電子吸引性基の置換したチオフェン環、ならびにチアゾール環が好ましく、チオフェン環の場合、置換基としてはシアノ基、アシル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基が好ましい。
この置換基は更に置換されても良い。また置換基が二つ以上ある場合は、同一でも異なっていても良い。また、可能な場合には互いに連結して環を形成していても良い。
【0101】
さらに、本発明では、B環のA環側のアゾ基のオルト位に、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。)アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル等が挙げられる。)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含むものであり具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル、アゼピニル等が挙げられる。)が置換しているものであることが好ましい。これらのアルキル基、アリール基、ヘテロ環基は置換基を有していてもよく、その例としては、例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニル等が挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニル等が挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル等が挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜12、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジフェニルアミノ、ジベンジルアミノ等が挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ等が挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシ等が挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイル等が挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル等が挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシ等が挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等が挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノ等が挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ等が挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノ等が挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイル等が挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイル等が挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオ等が挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオ等が挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシル等が挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニル等が挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイド等が挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミド等が挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含むものであり具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル、アゼピニル等が挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリル等が挙げられる。)等が挙げられる。これらの置換基は更に置換されても良い。また置換基が二つ以上ある場合は、同一でも異なっていても良い。また、可能な場合には互いに連結して環を形成していても良い。
【0102】
中でも、アリール基(ヘテロアリール基を含む)の置換したB環であることが好ましい。アリール基としては、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2,3,4−トリメチルフェニル基、2,3,5−トリメチルフェニル基、2,3,6−トリメチルフェニル基、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが好ましく、特に好ましくは、フェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、2−ピリジル基、4−ピリジル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などである。
【0103】
前記一般式(1)で表されるアゾ染料の具体例を以下に示すが、本発明は、下記の例に限定されるものではなく、また下記の具体例中でカルボキシル基、ホスホノ基およびスルホ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対イオンの例には、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)および有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジニウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が含まれる。これらの中でもアンモニウムイオン、有機カチオン、リチウムイオンの場合が好ましく、リチウムイオンが最も好ましい。
【0104】
【化7】

【0105】
【化8】

【0106】
【化9】

【0107】
【化10】

【0108】
【化11】

【0109】
【化12】

【0110】
【化13】

【0111】
【化14】

【0112】
【化15】

【0113】
【化16】

【0114】
【化17】

【0115】
【化18】

【0116】
また、本発明のブラックインクには、この染料に加えて一般式(5)で表される染料も好ましく使用できる。
【0117】
一般式(5)で表される染料は、芳香族ビスアゾ染料に分類される染料である。式中、R1およびR2はそれぞれ独立して、水素原子もしくは置換されていてもよいアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル等が挙げられる。)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含むものであり具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル、アゼピニル、トリアジニル等が挙げられる。)、−CO−R5基、−SO2−R6基、−PO(R7)−R8基を表す。
【0118】
ここで、R5はアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。)、(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル等が挙げられる。)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含むものであり具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル、アゼピニル、トリアジニル等が挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ等が挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシ等が挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含むものであり具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル、アゼピニル、トリアジニル等が挙げられる。)、アルキルアミノ基(アルキルとして好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、アルキルの例としては例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。)、アリールアミノ基(アリールの例として好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、アリールの例としては例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル等が挙げられる。)、ヘテロ環アミノ基(ヘテロ環として好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含むものであり具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル、アゼピニル、トリアジニル等が挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイル等が挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル等が挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシカルボニル基(ヘテロ環として好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含むものであり具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル、アゼピニル、トリアジニル等が挙げられる。)を表す。
【0119】
6はアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。)、(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル等が挙げられる。)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含むものであり具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル、アゼピニル、トリアジニル等が挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ等が挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシ等が挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含むものであり具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル、アゼピニル、トリアジニル等が挙げられる。)、アルキルアミノ基(アルキルとして好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、アルキルの例としては例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。)、アリールアミノ基(アリールの例として好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、アリールの例としては例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル等が挙げられる。)、ヘテロ環アミノ基(ヘテロ環として好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含むものであり具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル、アゼピニル、トリアジニル等が挙げられる。)を表す。
【0120】
7,R8はアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル等が挙げられる。)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含むものであり具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル、アゼピニル、トリアジニル等が挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ等が挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシ等が挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含むものであり具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル、アゼピニル、トリアジニル等が挙げられる。)、アルキルアミノ基(アルキルとして好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、アルキルの例としては例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。)、アリールアミノ基(アリールの例として好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、アリールの例としては例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル等が挙げられる。)、ヘテロ環アミノ基(ヘテロ環として好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含むものであり具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル、アゼピニル、トリアジニル等が挙げられる。)を表す。
【0121】
これらの基は置換基を有していてもよく、その例としては、例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニル等が挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニル等が挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル等が挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜12、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジフェニルアミノ、ジベンジルアミノ等が挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ等が挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシ等が挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイル等が挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル等が挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシ等が挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等が挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノ等が挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ等が挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノ等が挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイル等が挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイル等が挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオ等が挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオ等が挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシル等が挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニル等が挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイド等が挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミド等が挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含むものであり具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル、アゼピニル等が挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリル等が挙げられる。)等が挙げられる。これらの置換基は更に置換されても良い。また置換基が二つ以上ある場合は、同一でも異なっていても良い。また、可能な場合には互いに連結して環を形成していても良い。
【0122】
1,R2の中でも好ましくは、一方が水素原子もしくはアルキル基であり、もう一方がアシル基、アルキルスルホニル基、ヘテロ環基のものである。
【0123】
3およびR4はそれぞれ独立してアリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル等が挙げられる。)、芳香族複素環基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含むものであり具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、ピラゾリル、ピラゾロニル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル、アゼピニル、トリアジニル等が挙げられる。)を表す。
【0124】
これらの基は置換基を有していてもよく、その例としては、例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニル等が挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニル等が挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル等が挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜12、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジフェニルアミノ、ジベンジルアミノ等が挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ等が挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシ等が挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイル等が挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル等が挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシ等が挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等が挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノ等が挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ等が挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノ等が挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイル等が挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイル等が挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオ等が挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオ等が挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシル等が挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニル等が挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイド等が挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミド等が挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含むものであり具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル、アゼピニル等が挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリル等が挙げられる。)等が挙げられる。これらの置換基は更に置換されても良い。また置換基が二つ以上ある場合は、同一でも異なっていても良い。また、可能な場合には互いに連結して環を形成していても良い。
【0125】
この中でも好ましくは、R3およびR4の少なくとも一方が芳香族複素環基のものである。
【0126】
Mは水素原子、カチオン性の金属原子(例えばナトリウム、カリウム、リチウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ストロンチウム等で好ましくは1価のアルカリ金属イオンである。)、もしくは含窒素カチオン基(例えばアンモニウム、アルキルアンモニウム、ポリアルキルアンモニウム、アリールアンモニウム、ポリアリールアンモニウム、グアニジウム、アルキルグアニジウム、ポリアルキルグアニジウム、アミジウム、アルキルアミジウム、ポリアルキルアミジウム等を表し、好ましくはアンモニウムである。)を表す。
【0127】
下記に一般式(5)で表される化合物の好ましい例を列挙するが、本発明はもちろんこれによって限定されるものではない。
【0128】
【化19】

【0129】
【化20】

【0130】
【化21】

【0131】
【化22】

【0132】
【化23】

【0133】
【化24】

【0134】
上記式で表される染料以外に、特開平10−130557号、同9-255906号、同7−97541号,同6−234944号、欧州特許982371A1号、特開2002−302619号、同2002−327131号、同2002−265809号、国際公開特許2000−43450号、同2000−43451号、同2000−43452号、同2000−43453号、同2003−106572号、同2003−104332号、特開2003−238862号、特開2004−83609号、各公報に記載の染料も好ましく用いることができる。
【0135】
前記一般式(1)、(2)、(3)、(4)及び(5)で表されるアゾ染料は、ジアゾ成分とカプラーとのカップリング反応によって合成することができる。主たる合成法としては、特願2002−113460に記載の方法により合成できる。
本発明のブラックインクは、上記の染料をインク中0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜40質量%、特に好ましくは0.5〜30質量%含むものである。
【0136】
本発明に用いることができる染料の例としては上記した以外に以下を挙げることができる。染料は、単独でも色調を整えるために複数組み合わせて使用される。また、本発明は、フルカラーの画像を得るため複数の染料を用いた複数のインクからなるインクセットとしたものを用いることができる。
【0137】
イエロー染料としては、例えばカップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラゾロン類、ピリドン類、開鎖型活性メチレン化合物類を有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;例えばカップリング成分として開鎖型活性メチレン化合物類を有するアゾメチン染料;例えばベンジリデン染料やモノメチンオキソノール染料等のようなメチン染料;例えばナフトキノン染料、アントラキノン染料等のようなキノン系染料などがあり、これ以外の染料種としてはキノフタロン染料、ニトロ・ニトロソ染料、アクリジン染料、アクリジノン染料等を挙げることができる。これらの染料は、クロモフォアの一部が解離して初めてイエローを呈するものであってもよく、その場合のカウンターカチオンはアルカリ金属や、アンモニウムのような無機のカチオンであってもよいし、ピリジニウム、4級アンモニウム塩のような有機のカチオンであってもよく、さらにはそれらを部分構造に有するポリマーカチオンであってもよい。
【0138】
マゼンタ染料としては、例えばカップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類を有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;例えばカップリング成分としてピラゾロン類、ピラゾロトリアゾール類を有するアゾメチン染料;例えばアリーリデン染料、スチリル染料、メロシアニン染料、オキソノール染料のようなメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料のようなカルボニウム染料、例えばナフトキノン、アントラキノン、アントラピリドンなどのようなキノン系染料、例えばジオキサジン染料等のような縮合多環系色素等を挙げることができる。これらの染料は、クロモフォアの一部が解離して初めてマゼンタを呈するものであってもよく、その場合のカウンターカチオンはアルカリ金属や、アンモニウムのような無機のカチオンであってもよいし、ピリジニウム、4級アンモニウム塩のような有機のカチオンであってもよく、さらにはそれらを部分構造に有するポリマーカチオンであってもよい。
【0139】
シアン染料としては、例えばインドアニリン染料、インドフェノール染料のようなアゾメチン染料;シアニン染料、オキソノール染料、メロシアニン染料のようなポリメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料のようなカルボニウム染料;フタロシアニン染料;アントラキノン染料;例えばカップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類を有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料、インジゴ・チオインジゴ染料を挙げることができる。これらの染料は、クロモフォアの一部が解離して初めてシアンを呈するものであってもよく、その場合のカウンターカチオンはアルカリ金属や、アンモニウムのような無機のカチオンであってもよいし、ピリジニウム、4級アンモニウム塩のような有機のカチオンであってもよく、さらにはそれらを部分構造に有するポリマーカチオンであってもよい。
【0140】
また、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反応性染料等の水溶性染料を併用することもできる。なかでも好ましいものとしては、
C.I. ダイレクトレッド2、4、9、23、26、31、39、62、63、72、75、76、79、80、81、83、84、89、92、95、111、173、184、207、211、212、214、218、21、223、224、225、226、227、232、233、240、241、242、243、247
C.I. ダイレクトバイオレット7、9、47、48、51、66、90、93、94、95、98、100、101
C.I. ダイレクトイエロー8、9、11、12、27、28、29、33、35、39、41、44、50、53、58、59、68、86、87、93、95、96、98、100、106、108、109、110、130、132、142、144、161、163
C.I. ダイレクトブルー1、10、15、22、25、55、67、68、71、76、77、78、80、84、86、87、90、98、106、108、109、151、156、158、159、160、168、189、192、193、194、199、200、201、202、203、207、211、213、214、218、225、229、236、237、244、248、249、251、252、264、270、280、288、289、291
C.I. ダイレクトブラック9、17、19、22、32、51、56、62、69、77、80、91、94、97、108、112、113、114、117、118、121、122、125、132、146、154、166、168、173、199
C.I. アシッドレッド35、42、52、57、62、80、82、111、114、118、119、127、128、131、143、151、154、158、249、254、257、261、263、266、289、299、301、305、336、337、361、396、397
C.I. アシッドバイオレット5、34、43、47、48、90、103、126
C.I. アシッドイエロー17、19、23、25、39、40、42、44、49、50、61、64、76、79、110、127、135、143、151、159、169、174、190、195、196、197、199、218、219、222、227
C.I. アシッドブルー9、25、40、41、62、72、76、78、80、82、92、106、112、113、120、127:1、129、138、143、175、181、205、207、220、221、230、232、247、258、260、264、271、277、278、279、280、288、290、326
C.I. アシッドブラック7、24、29、48、52:1、172
C.I. リアクティブレッド3、13、17、19、21、22、23、24、29、35、37、40、41、43、45、49、55
C.I. リアクティブバイオレット1、3、4、5、6、7、8、9、16、17、22、23、24、26、27、33、34
C.I. リアクティブイエロー2、3、13、14、15、17、18、23、24、25、26、27、29、35、37、41、42
C.I. リアクティブブルー2、3、5、8、10、13、14、15、17、18、19、21、25、26、27、28、29、38
C.I. リアクティブブラック4、5、8、14、21、23、26、31、32、34
C.I. ベーシックレッド12、13、14、15、18、22、23、24、25、27、29、35、36、38、39、45、46
C.I. ベーシックバイオレット1、2、3、7、10、15、16、20、21、25、27、28、35、37、39、40、48
C.I. ベーシックイエロー1、2、4、11、13、14、15、19、21、23、24、25、28、29、32、36、39、40
C.I. ベーシックブルー1、3、5、7、9、22、26、41、45、46、47、54、57、60、62、65、66、69、71
C.I. ベーシックブラック8、等が挙げられる。
【0141】
さらに、本発明は、顔料を染料と共に併用したインクを用いることもできる。
本発明に用いることのできる顔料としては、市販のものの他、各種文献に記載されている公知のものが利用できる。文献に関してはカラーインデックス(The Society of Dyers and Colourists編)、「改訂新版顔料便覧」日本顔料技術協会編(1989年刊)、「最新顔料応用技術」CMC出版(1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版(1984年刊)、W.Herbst,K.Hunger共著によるIndustrial Organic Pigments(VCH Verlagsgesellschaft、1993年刊)等がある。具体的には、有機顔料ではアゾ顔料(アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料)、多環式顔料(フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、インジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等)、染付けレーキ顔料(酸性または塩基性染料のレーキ顔料)、アジン顔料等があり、無機顔料では、黄色顔料のC.I.Pigment Yellow 34,37,42,53など、赤系顔料のC.I.Pigment Red 101,108など、青系顔料のC.I.Pigment Blue 27,29,17:1など、ブラック系顔料のC.I.Pigment Black 7,マグネタイトなど、白系顔料のC.I.Pigment White 4,6,18,21などを挙げることができる。
【0142】
画像形成用に好ましい色調を持つ顔料としては、青ないしシアン顔料ではフタロシアニン顔料、アントラキノン系のインダントロン顔料(たとえばC.I.Pigment Blue 60など)、染め付けレーキ顔料系のトリアリールカルボニウム顔料が好ましく、特にフタロシアニン顔料(好ましい例としては、C.I.Pigment Blue 15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同15:6などの銅フタロシアニン、モノクロロないし低塩素化銅フタロシアニン、アルニウムフタロシアニンでは欧州特許860475号に記載の顔料、C.I.Pigment Blue 16である無金属フタロシアニン、中心金属がZn、Ni、Tiであるフタロシアニンなど、中でも好ましいものはC.I.Pigment Blue 15:3、同15:4、アルミニウムフタロシアニン)が最も好ましい。
【0143】
赤ないし紫色の顔料では、アゾ顔料(好ましい例としては、C.I.Pigment Red 3、同5、同11、同22、同38、同48:1、同48:2、同48:3、同48:4、同49:1、同52:1、同53:1、同57:1、同63:2、同144、同146、同184)など、中でも好ましいものはC.I.Pigment Red 57:1、同146、同184)、キナクリドン系顔料(好ましい例としてはC.I.Pigment Red 122、同192、同202、同207、同209、C.I.Pigment Violet 19、同42、なかでも好ましいものはC.I.Pigment Red 122)、染め付けレーキ顔料系のトリアリールカルボニウム顔料(好ましい例としてはキサンテン系のC.I.Pigment Red 81:1、C.I.Pigment Violet 1、同2、同3、同27、同39)、ジオキサジン系顔料(例えばC.I.Pigment Violet 23、同37)、ジケトピロロピロール系顔料(例えばC.I.Pigment Red 254)、ペリレン顔料(例えばC.I.Pigment Violet 29)、アントラキノン系顔料(例えばC.I.Pigment Violet 5:1、同31、同33)、チオインジゴ系(例えばC.I.Pigment Red 38、同88)が好ましく用いられる。
【0144】
黄色顔料としては、アゾ顔料(好ましい例としてはモノアゾ顔料系のC.I.Pigment Yellow 1,3,74,98、ジスアゾ顔料系のC.I.Pigment Yellow 12,13,14,16,17,83、総合アゾ系のC.I.Pigment Yellow 93,94,95,128,155、ベンズイミダゾロン系のC.I.Pigment Yellow 120,151,154,156,180など、なかでも好ましいものはベンジジン系化合物を原料に使用しなもの)、イソインドリン・イソインドリノン系顔料(好ましい例としてはC.I.Pigment Yellow 109,110,137,139など)、キノフタロン顔料(好ましい例としてはC.I.Pigment Yellow 138など)、フラパントロン顔料(例えばC.I.Pigment Yellow 24など)が好ましく用いられる。
【0145】
ブラック顔料としては、無機顔料(好ましくは例としてはカーボンブラック、マグネタイト)やアニリンブラックを好ましいものとして挙げることができる。
この他、オレンジ顔料(C.I.Pigment Orange 13,16など)や緑顔料(C.I.Pigment Green 7など)を使用してもよい。
【0146】
本発明に使用できる顔料は、上述の裸の顔料であってもよいし、表面処理を施された顔料でもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤やエポキシ化合物、ポリイソシアネート、ジアゾニウム塩から生じるラジカルなど)を顔料表面に結合させる方法などが考えられ、次の文献や特許に記載されている。
(1)金属石鹸の性質と応用(幸書房)
(2)印刷インキ印刷(CMC出版 1984)
(3)最新顔料応用技術(CMC出版 1986)
(4)米国特許5,554,739号、同5,571,311号
(5)特開平9−151342号、同10−140065号、同10−292143号、同11−166145号
特に、上記(4)の米国特許に記載されたジアゾニウム塩をカーボンブラックに作用させて調製された自己分散性顔料や、上記(5)の日本特許に記載された方法で調製されたカプセル化顔料は、インク中に余分な分散剤を使用することなく分散安定性が得られるため特に有効である。
【0147】
本発明おいては、顔料はさらに分散剤を用いて分散されていてもよい。分散剤は、用いる顔料に合わせて公知の種々のもの、例えば界面活性剤型の低分子分散剤や高分子型分散剤を用いることができる。分散剤の例としては特開平3−69949号、欧州特許549486号等に記載のものを挙げることができる。また、分散剤を使用する際に分散剤の顔料への吸着を促進するためにシナジストと呼ばれる顔料誘導体を添加してもよい。
本発明に使用できる顔料の粒径は、分散後で0.01〜10μmの範囲であることが好ましく、0.05〜1μmであることが更に好ましい。
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造時に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、縦型あるいは横型のアジテーターミル、アトライター、コロイドミル、ボールミル、3本ロールミル、パールミル、スーパーミル、インペラー、デスパーサー、KDミル、ダイナトロン、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986)に記載がある。
【0148】
本発明に用いられる水溶性染料としては特開2002−371214号公報に記載のマゼンタ染料、特開2002−309118号公報に記載のフタロシアニン染料、特開2003−12952号及び同2003−12956号公報中の水溶性フタロシアニン染料等に記載の染料を用いることも好ましい。
【0149】
本発明のインクは、水性媒体中に染料を含有させることによって作製することができる。この染料を含有させる手段としては、好ましくは、溶解および/または分散させることが挙げられる。本発明における「水性媒体」とは、水、もしくは水に必要に応じて水混和性有機溶剤などの溶剤を添加したものを意味する。
【0150】
本発明において用いることができる上記水混和性有機溶剤は、当該分野ではインクジェット記録用インクの乾燥防止剤、浸透促進剤、湿潤剤などの機能を有する材料であり、主に高沸点の水混和性有機溶媒が使用される。このような化合物としては、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、グリコール誘導体(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングルコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングルコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)およびその他の極性溶媒(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン)が挙げられる。尚、前記水混和性有機溶剤は、2種類以上を併用してもよい。
【0151】
この中でも、アルコール系溶媒が特に好ましい。また、本発明のインクでは沸点150℃以上の水混和性有機溶剤を含むことが好ましく、例えば、上記した中から選択される2−ピロリドン等が挙げられる。
これらの水混和性有機溶剤は、総量でインク中に5〜60質量%含有することが好ましく、特に好ましくは10〜45質量%である。
【0152】
本発明のインクを調液する際には、前記染料が水溶性の場合、まず水に溶解することが好ましい。そのあと、各種溶剤や添加物を添加し、溶解、混合して均一なインクとする。
このときの溶解方法としては、攪拌による溶解、超音波照射による溶解、振とうによる溶解等種々の方法が使用可能である。中でも特に攪拌法が好ましく使用される。攪拌を行う場合、当該分野では公知の流動攪拌や反転アジターやディゾルバを利用した剪断力を利用した攪拌など、種々の方式が利用可能である。一方では、磁気攪拌子のように、容器底面との剪断力を利用した攪拌法も好ましく利用できる。
【0153】
本発明のインクに界面活性剤を含有させ、その液物性を調整することで、その吐出安定性を向上させ、画像の耐水性の向上や印字した滲みの防止などに優れた効果を持たせることができる。
界面活性剤としては、例えばドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルオキシスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤、セチルピリジニウムクロライド、トリメチルセチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤や、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のノニオン性界面活性剤などが挙げられる。中でも特にノニオン系界面活性剤が好ましく使用される。
【0154】
界面活性剤の含有量はインクに対して0.001〜20質量%、好ましくは0.005〜10質量%、更に好ましくは0.01〜5質量である。
【0155】
前記染料が油溶性染料の場合は、該油溶性染料を高沸点有機溶媒中に溶解させ、水性媒体中に乳化分散させることによって調製することができる。
本発明のインクに用いられる高沸点有機溶媒の沸点は150℃以上であるが、好ましくは170℃以上である。
例えば、フタル酸エステル類(例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロへキシルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、デシルフタレート、ビス(2,4−ジ−tert−アミルフェニル)イソフタレート、ビス(1,1−ジエチルプロピル)フタレート)、リン酸又はホスホンのエステル類(例えば、ジフェニルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、ジオクチルブチルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルフェニルホスフェート)、安息香酸エステル酸(例えば、2−エチルヘキシルベンゾエート、2,4−ジクロロベンゾエート、ドデシルベンゾエート、2−エチルヘキシル−p−ヒドロキシベンゾエート)、アミド類(例えば、N,N−ジエチルドデカンアミド、N,N−ジエチルラウリルアミド)、アルコール類またはフェノール類(イソステアリルアルコール、2,4−ジ−tert−アミルフェノールなど)、脂肪族エステル類(例えば、コハク酸ジブトキシエチル、コハク酸ジ−2−エチルヘキシル、テトラデカン酸2−ヘキシルデシル、クエン酸トリブチル、ジエチルアゼレート、イソステアリルラクテート、トリオクチルシトレート)、アニリン誘導体(N,N−ジブチル−2−ブトキシ−5−tert−オクチルアニリンなど)、塩素化パラフィン類(塩素含有量10%〜80%のパラフィン類)、トリメシン酸エステル類(例えば、トリメシン酸トリブチル)、ドデシルベンゼン、ジイソプロピルナフタレン、フェノール類(例えば、2,4−ジ−tert−アミルフェノール、4−ドデシルオキシフェノール、4−ドデシルオキシカルボニルフェノール、4−(4−ドデシルオキシフェニルスルホニル)フェノール)、カルボン酸類(例えば、2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ酪酸、2−エトキシオクタンデカン酸)、アルキルリン酸類(例えば、ジ−2(エチルヘキシル)リン酸、ジフェニルリン酸)などが挙げられる。高沸点有機溶媒は油溶性染料に対して質量比で0.01〜3倍量、好ましくは0.01〜1.0倍量で使用できる。
これらの高沸点有機溶媒は単独で使用しても、数種の混合〔例えばトリクレジルホスフェートとジブチルフタレート、トリオクチルホスフェートとジ(2−エチルヘキシル)セバケート、ジブチルフタレートとポリ(N−t−ブチルアクリルアミド)〕で使用してもよい。
【0156】
本発明のインクにおいて用いられる高沸点有機溶媒の前記以外の化合物例及び/またはこれら高沸点有機溶媒の合成方法は例えば米国特許第2,322,027号、同第2,533,514号、同第2,772,163号、同第2,835,579号、同第3,594,171号、同第3,676,137号、同第3,689,271号、同第3,700,454号、同第3,748,141号、同第3,764,336号、同第3,765,897号、同第3,912,515号、同第3,936,303号、同第4,004,928号、同第4,080,209号、同第4,127,413号、同第4,193,802号、同第4,207,393号、同第4,220,711号、同第4,239,851号、同第4,278,757号、同第4,353,979号、同第4,363,873号、同第4,430,421号、同第4,430,422号、同第4,464,464号、同第4,483,918号、同第4,540,657号、同第4,684,606号、同第4,728,599号、同第4,745,049号、同第4,935,321号、同第5,013,639号、欧州特許第276,319A号、同第286,253A号、同第289,820A号、同第309,158A号、同第309,159A号、同第309,160A号、同第509,311A号、同第510,576A号、東独特許第147,009号、同第157,147号、同第159,573号、同第225,240A号、英国特許第2,091,124A号、特開昭48−47335号、同50−26530号、同51−25133号、同51−26036号、同51−27921号、同51−27922号、同51−149028号、同52−46816号、同53−1520号、同53−1521号、同53−15127号、同53−146622号、同54−91325号、同54−106228号、同54−118246号、同55−59464号、同56−64333号、同56−81836号、同59−204041号、同61−84641号、同62−118345号、同62−247364号、同63−167357号、同63−214744号、同63−301941号、同64−9452号、同64−9454号、同64−68745号、特開平1−101543号、同1−102454号、同2−792号、同2−4239号、同2−43541号、同4−29237号、同4−30165号、同4−232946号、同4−346338号等に記載されている。
上記高沸点有機溶媒は、油溶性染料に対し、質量比で0.01〜3.0倍量、好ましくは0.01〜1.0倍量で使用する。
【0157】
本発明のインクでは油溶性染料や高沸点有機溶媒は、水性媒体中に乳化分散して用いられる。乳化分散の際、乳化性の観点から場合によっては低沸点有機溶媒を用いることができる。低沸点有機溶媒としては、常圧で沸点約30℃以上150℃以下の有機溶媒である。例えばエステル類(例えばエチルアセテート、ブチルアセテート、エチルプロピオネート、β−エトキシエチルアセテート、メチルセロソルブアセテート)、アルコール類(例えばイソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、セカンダリーブチルアルコール)、ケトン類(例えばメチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン)、アミド類(例えばジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン)、エーテル類(例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン)等が好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。
【0158】
乳化分散は、高沸点有機溶媒と場合によっては低沸点有機溶媒の混合溶媒に染料を溶かした油相を、水を主体とした水相中に分散し、油相の微小油滴を作るために行われる。この際、水相、油相のいずれか又は両方に、界面活性剤、湿潤剤、染料安定化剤、乳化安定剤、防腐剤、防黴剤等の添加剤を必要に応じて添加することができる。
乳化法としては水相中に油相を添加する方法が一般的であるが、油相中に水相を滴下して行く、いわゆる転相乳化法も好ましく用いることができる。なお、染料が水溶性で、添加剤が油溶性の場合にも前記乳化法を適用し得る。
【0159】
乳化分散する際には、種々の界面活性剤を用いることができる。例えば脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型の両性界面活性剤等も好ましい。更に、特開昭59−157,636号の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも使うことができる。
【0160】
また、乳化直後の安定化を図る目的で、上記界面活性剤と併用して水溶性ポリマーを添加することもできる。水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドやこれらの共重合体が好ましく用いられる。また多糖類、カゼイン、ゼラチン等の天然水溶性ポリマーを用いるのも好ましい。さらに染料分散物の安定化のためには実質的に水性媒体中に溶解しないアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、ビニルエステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、オレフィン類、スチレン類、ビニルエーテル類、アクリロニトリル類の重合により得られるポリビニルやポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレア、ポリカーボネート等も併用することができる。これらのポリマーは−SO3-、−COO-を含有していること好ましい。これらの実質的に水性媒体中に溶解しないポリマーを併用する場合、高沸点有機溶媒の20質量%以下用いられることが好ましく、10質量%以下で用いられることがより好ましい。
【0161】
乳化分散により油溶性染料や高沸点有機溶媒を分散させて水性インクとする場合、特に重要なのはその粒子サイズのコントロールである。インクジェットにより画像を形成した際の、色純度や濃度を高めるには平均粒子サイズを小さくすることが必須である。体積平均粒径で好ましくは1μm以下、より好ましくは5〜100nmである。
前記分散粒子の体積平均粒径および粒度分布の測定方法には静的光散乱法、動的光散乱法、遠心沈降法のほか、実験化学講座第4版の417〜418ページに記載されている方法を用いるなど、公知の方法で容易に測定することができる。例えば、インク中の粒子濃度が0.1〜1質量%になるように蒸留水で希釈して、市販の体積平均粒径測定機(例えば、マイクロトラックUPA(日機装(株)製))で容易に測定できる。更に、レーザードップラー効果を利用した動的光散乱法は、小サイズまで粒径測定が可能であり特に好ましい。
体積平均粒径とは粒子体積で重み付けした平均粒径であり、粒子の集合において、個々の粒子の直径にその粒子の体積を乗じたものの総和を粒子の総体積で割ったものである。体積平均粒径については「高分子ラテックスの化学(室井 宗一著 高分子刊行会)」の119ページに記載がある。
【0162】
また、粗大粒子の存在も印刷性能に非常に大きな役割を示すことが明らかになった。即ち、粗大粒子がヘッドのノズルを詰まらせる、あるいは詰まらないまでも汚れを形成することによってインクの不吐出や吐出のヨレを生じ、印刷性能に重大な影響を与えることが分かった。これを防止するためには、インクにした時にインク1μl中で5μm以上の粒子を10個以下、1μm以上の粒子を1000個以下に抑えることが重要である。
これらの粗大粒子を除去する方法としては、公知の遠心分離法、精密濾過法等を用いることができる。これらの分離手段は乳化分散直後に行ってもよいし、乳化分散物に湿潤剤や界面活性剤等の各種添加剤を加えた後、インクカートリッジに充填する直前でもよい。
平均粒子サイズを小さくし、且つ粗大粒子を無くす有効な手段として、機械的な乳化装置を用いることができる。
【0163】
乳化装置としては、簡単なスターラーやインペラー撹拌方式、インライン撹拌方式、コロイドミル等のミル方式、超音波方式など公知の装置を用いることができるが、高圧ホモジナイザーの使用は特に好ましいものである。
高圧ホモジナイザーは、米国特許4533254号、特開平6−47264号等に詳細な機構が記載されているが、市販の装置としては、ゴーリンホモジナイザー(A.P.V GAULIN INC.)、マイクロフルイダイザー(MICROFLUIDEX INC.)、アルティマイザー(株式会社スギノマシン)等がある。
また、近年になって米国特許5720551号に記載されているような、超高圧ジェット流内で微粒子化する機構を備えた高圧ホモジナイザーは本発明の乳化分散に特に有効である。この超高圧ジェット流を用いた乳化装置の例として、DeBEE2000(BEE INTERNATIONAL LTD.)があげられる。
【0164】
高圧乳化分散装置で乳化する際の圧力は50MPa以上であり、好ましくは60MPa以上、更に好ましくは180MPa以上である。
例えば、撹拌乳化機で乳化した後、高圧ホモジナイザーを通す等の方法で2種以上の乳化装置を併用するのは特に好ましい方法である。また、一度これらの乳化装置で乳化分散した後、湿潤剤や界面活性剤等の添加剤を添加した後、カートリッジにインクを充填する間に再度高圧ホモジナイザーを通過させる方法も好ましい方法である。
高沸点有機溶媒に加えて低沸点有機溶媒を含む場合、乳化物の安定性及び安全衛生上の観点から低沸点溶媒を除去するのが好ましい。低沸点溶媒を除去する方法は溶媒の種類に応じて各種の公知の方法を用いることができる。即ち、蒸発法、真空蒸発法、限外濾過法等である。この低沸点有機溶剤の除去工程は乳化直後、できるだけ速やかに行うのが好ましい。
【0165】
なお、インクジェット用インクの調製方法については、特開平5−148436号、同5−295312号、同7−97541号、同7−82515号、同7−118584号の各公報に詳細が記載されていて、本発明のインクの調製にも利用できる。
【0166】
本発明のインクには、インクに種々の機能を付与するための機能性成分を含有させることができる。例えば、機能性成分としては、前記した各種溶媒、インクの噴射口での乾操による目詰まりを防止するための乾燥防止剤、インクを紙によりよく浸透させるための浸透促進剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、分散剤、分散安定剤、防黴剤、防錆剤、pH調整剤、消泡剤、キレート剤等の各種添加剤が挙げられ、本発明のインクは、これらを適宜選択して適量使用することができる。これら機能性成分は一種の化合物で一つ又は二つ以上の機能を発揮し得るものも含む。従って、以下の機能性成分の配合割合において、機能が重複する場合の機能性成分の取り扱いは、その化合物を各機能性成分に独立に算入させるものとする。
【0167】
本発明に使用される乾燥防止剤としては水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤が好ましい。具体的な例としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、トリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール類、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチルー2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−エチルモルホリン等の複素環類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−スルホレン等の含硫黄化合物、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能化合物、尿素誘導体が挙げられる。これらのうちグリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコールがより好ましい。また上記の乾燥防止剤は単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。これらの乾燥防止剤はインク中に10〜50質量%含有することが好ましい。
【0168】
本発明に使用される浸透促進剤としてはエタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール等のアルコール類やラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムやノニオン性界面活性剤等を用いることができる。これらはインク中に10〜30質量%含有すれば充分な効果があり、印字の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こさない添加量の範囲で使用するのが好ましい。
【0169】
本発明で画像の保存性を向上させるために使用される紫外線吸収剤としては特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンゾオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤も用いることができる。
【0170】
本発明では、画像の保存性を向上させるために使用される酸化防止剤として、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としてはハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、複素環類などがあり、金属錯体としてはニッケル錯体、亜鉛錯体などがある。より具体的にはリサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのIないしJ項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
【0171】
本発明に使用される防黴剤としてはデヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンおよびその塩等が挙げられる。これらはインク中に0.02〜5.00質量%使用するのが好ましい。
尚、これらの詳細については「防菌防黴剤事典」(日本防菌防黴学会事典編集委員会編)等に記載されている。
また、防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。これらは、インク中に0.02〜5.00質量%使用するのが好ましい。
【0172】
本発明に使用されるpH調整剤はpH調節、分散安定性付与などの点で好適に使用することができ、25℃でのインクのpHが8〜11に調整されていることが好ましい。pHが8未満である場合は染料の溶解性が低下してノズルが詰まりやすく、11を超えると耐水性が劣化する傾向がある。pH調製剤としては、塩基性のものとして有機塩基、無機アルカリ等が、酸性のものとして有機酸、無機酸等が挙げられる。
塩基性化合物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸1水素ナトリウムなどの無機化合物やアンモニア水、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ピペリジン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロウンデセン、ピリジン、キノリン、ピコリン、ルチジン、コリジン等の有機塩基を使用することも可能である。
酸性化合物としては、塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、リン酸2水素カリウム、リン酸2水素ナトリウム等の無機化合物や、酢酸、酒石酸、安息香酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サッカリン酸、フタル酸、ピコリン酸、キノリン酸等の有機化合物を使用することもできる。
【0173】
本発明のインクの伝導度は0.01〜10S/mの範囲である。中でも好ましい範囲は伝導度が0.05〜5S/mの範囲である。
伝導度の測定方法は、市販の飽和塩化カリウムを用いた電極法により測定可能である。
伝導度は主に水系溶液中のイオン濃度によってコントロール可能である。塩濃度が高い場合、限外濾過膜などを用いて脱塩することができる。また、塩等を加えて伝導度調節する場合、種々の有機物塩や無機物塩を添加することにより調節することができる。
無機物塩としては、ハロゲン化物カリウム、ハロゲン化物ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸1水素ナトリウム、ホウ酸、リン酸2水素カリウム、リン酸2水素ナトリウム等の無機化合物や、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酒石酸カリウム、酒石酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、サッカリン酸カリウム、フタル酸カリウム、ピコリン酸ナトリウム等の有機化合物を使用することもできる。
また、後述される水性媒体の成分を選定することによっても伝導度を調整し得る。
【0174】
本発明のインクの粘度は、25℃において1〜30mPa・sであることが好ましい。更に好ましくは2〜15mPa・sであり、特に好ましくは2〜10mPa・sである。30mPa・sを超えると記録画像の定着速度が遅くなり、吐出性能も低下する。1mPa・s未満では、記録画像がにじむために品位が低下する。
粘度の調製はインク溶剤の添加量で任意に調製可能である。インク溶剤として例えば、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエタノールアミン、2−ピロリドン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルなどがある。
また、粘度調整剤を使用してもよい。粘度調整剤としては、例えば、セルロース類、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーやノニオン系界面活性剤等が挙げられる。更に詳しくは、「粘度調製技術」(技術情報協会、1999年)第9章、及び「インクジェットプリンタ用ケミカルズ(98増補)−材料の開発動向・展望調査−」(シーエムシー、1997年)162〜174頁に記載されている。
【0175】
液体の粘度測定法はJISのZ8803に詳細に記載されているが、市販品の粘度計にて簡便に測定することができる。例えば、回転式では東京計器のB型粘度計、E型粘度計がある。本発明では山一電機の振動式VM−100A−L型により25℃にて測定した。粘度の単位はパスカル秒(Pa・s)であるが、通常はミリパスカル秒(mPa・s)を用いる。
【0176】
本発明のインクの表面張力は動的・静的表面張力のいずれも、25℃において20〜50mN/mであることが好ましく、20〜40mN/mであることが更に好ましい。表面張力が50mN/mを超えると吐出安定性、混色時のにじみ、ひげ等印字品質が著しく低下する。また、インクの表面張力を20mN/m以下にすると吐出時、ハード表面へのインクの付着等により印字不良となる場合がある。
表面張力を調整する目的で、前記カチオン、アニオン、ノニオン系並びにベタイン系の各種界面活性剤を添加することができる。また、界面活性剤は2種以上を併用することができる。
【0177】
静的表面張力測定法としては、毛細管上昇法、滴下法、吊環法等が知られているが、本発明においては、静的表面張力測定法として、垂直板法を用いている。
ガラスまたは白金の薄い板を液体中に一部分浸して垂直に吊るすと、液体と板との接する長さに沿って液体の表面張力が下向きに働く。この力を上向きの力で釣り合わせて表面張力を測定することが出来る。
【0178】
また、動的表面張力測定法としては、例えば、「新実験化学講座、第18巻、界面とコロイド」[(株)丸善、p.69〜90(1977)]に記載されるように、振動ジェット法、メニスカス落下法、最大泡圧法などが知られており、さらに、特開平3−2064号公報に記載されるような液膜破壊法が知られているが、本発明においては、動的表面張力測定法として、バブルプレッシャー差圧法を用いている。以下、その測定原理と方法について説明する。
【0179】
撹拌して均一となった溶液中で気泡を生成すると、新たな気−液界面が生成され、溶液中の界面活性剤分子が水の表面に一定速度で集まってくる。バブルレート(気泡の生成速度)を変化させたとき、生成速度が遅くなれば、より多くの界面活性剤分子が泡の表面に集まってくるため、泡がはじける直前の最大泡圧が小さくなり、バブルレートに対する最大泡圧(表面張力)が検出出来る。好ましい動的表面張力測定としては、大小二本のプローブを用いて溶液中で気泡を生成させ、二本のプローブの最大泡圧状態での差圧を測定し、動的表面張力を算出する方法を挙げることができる。
【0180】
本発明のインク中における不揮発性成分は、インクの全量の10〜70質量%であることがインクの吐出安定性やプリント画質、画像の各種堅牢性や印字後の画像の滲みと印字面のべたつき低減の点で好ましく、20〜60質量%であることがインクの吐出安定性や印字後の画像の滲みの低減の点でさらに好ましい。
ここで、不揮発性成分とは、1気圧のもとでの沸点が150℃以上の液体や固体成分、高分子量成分を意味する。インクジェット用インクの不揮発性成分は、染料、高沸点溶媒、必要により添加されるポリマーラテックス、界面活性剤、染料安定化剤、防黴剤、緩衝剤などであり、これら不揮発性成分の多くは、染料安定化剤以外ではインクの分散安定性を低下させ、また印字後にもインクジェット受像紙上に存在するため、受像紙での染料の会合による安定化を阻害し、画像部の各種堅牢性や高湿度条件下での画像の滲みを悪化させる性質を有している。
【0181】
本発明においては高分子量化合物を含有することも可能である。ここで高分子量化合物とは、インク中に含まれている数平均分子量が5000以上のすべての高分子化合物を指す。これらの高分子化合物としては水性媒体中に実質的に溶解する水溶性高分子化合物や、ポリマーラテックス、ポリマーエマルジョンなどの水分散性高分子化合物、さらには補助溶剤として使用する多価アルコールに溶解するアルコール可溶性高分子化合物などが挙げられるが、実質的にインク液中に均一に溶解又は分散するものであれば、いずれも本発明における高分子量化合物に含まれる。
【0182】
水溶性高分子化合物の具体例としては、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドなどのポリアルキレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド誘導体等の水溶性高分子、多糖類、デンプン、カチオン化デンプン、カゼイン、ゼラチンなどの天然水溶性高分子、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドやこれらの共重合体などの水性アクリル樹脂、水性アルキッド樹脂,分子内に−SO3-、−COO-基を有し、実質的に水性媒体中に溶解する水溶性高分子化合物が挙げられる。
また、ポリマーラテックスとしては、スチレン−ブタジエンラテックス、スチレン−アクリルラテックスやポリウレタンラテックスなどが挙げられる。さらに、ポリマーエマルジョンとしては、アクリルエマルジョンなどが挙げられる。
これらの水溶性高分子化合物は単独でも2種以上併用して用いることもできる。
【0183】
水溶性高分子化合物は、すでに述べたように粘度調整剤として、吐出特性の良好な粘度領域にインクの粘度を調節するために使用されるが、その添加量が多いとインクの粘度が高くなってインク液の吐出安定性が低下し、インクが経時したときに沈殿物によってノズルがつまり易くなる。
粘度調整剤の高分子化合物の添加量は、添加する化合物の分子量にもよるが(高分子量のものほど添加量は少なくて済む)、インク全量に対して添加量を0〜5質量%、好ましくは0〜3質量%、より好ましくは0〜1質量%である。
【0184】
また本発明では分散剤、分散安定剤として上述のカチオン、アニオン、ノニオン系並びにベタイン系の各種界面活性剤、消泡剤としてフッ素系、シリコーン系化合物やEDTAに代表されるキレート剤等も必要に応じて使用することができる。
【0185】
本発明のインクは、その画像耐久性の高さから、種々の画像記録に使用することが可能である。イメージング用の染料としては、例えば写真感光材料への利用、昇華型熱転写材料への利用、感熱・感圧記録材料への利用、インクジェット記録への利用など種々の利用、応用が可能であるが、中でも好ましくは、インクジェット記録用のインクとしての利用が適している。
【0186】
本発明のインクをインクジェット記録用インク(以下、「インク」ともいう)として使用する場合、各色のインクが組み合わされ、フルカラー記録が可能となるようにするためには、最小で3色のインクからなるインクセットが必要である。インクセット中に少なくとも1種、本発明のインクが含まれていることが好ましい。
【0187】
本発明のインクならびにインクセットをインクジェット記録に使用する場合、インクのすべてもしくは一部は、インクカートリッジに充填されていることが好ましい。このインクカートリッジとしては、スポンジを利用して連続的にインクを供給するタイプのもの、プランジャーポンプ形式でインクを供給するもの等、種々のものが使用可能であるが、本発明のインクに対しては、初期状態ではインクカートリッジ内部が、大気圧よりも低圧に保たれているものが好ましい。
【0188】
大気圧としては、通常、980〜1040hPaの範囲で変動することが考えられるため、カートリッジ内部の圧力としては、600〜980hPa、好ましくは700〜960hPa、特に好ましくは、800〜950hPaに保たれていることが好ましい。
【0189】
インクカートリッジ内にスポンジを充填し、その圧力を利用して、連続的にインク供給するタイプのカートリッジの場合、そのスポンジの材質としては、ウレタン系ポリマーが好ましく使用される。
【0190】
本発明に好適に用いられる記録媒体である反射型メディアについて更に説明する。反射型メディアとしては、記録紙及び記録フィルム等が挙げられる。記録紙及び記録フィルムにおける支持体はLBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGP等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ等からなり、必要に応じて従来の公知の顔料、バインダー、サイズ剤、定着剤、カチオン剤、紙力増強剤等の添加剤を混合し、長網抄紙機、円網抄紙機等の各種装置で製造されたもの等が使用可能である。支持体としては、これらの支持体の他に合成紙、プラスチックフィルムシートのいずれであってもよく、支持体の厚みは10〜250μm、坪量は10〜250g/m2が望ましい。
支持体にそのまま受像層及びバックコート層を設けて本発明のインク並びにインクセットの受像材料としてもよいし、デンプン、ポリビニルアルコール等でサイズプレスやアンカーコート層を設けた後、受像層及びバックコート層を設けて受像材料としてもよい。さらに支持体には、マシンカレンダー、TGカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダー装置により平坦化処理を行ってもよい。
支持体としては、両面をポリオレフィン(例、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブテンおよびそれらのコポリマー)やポリエチレンテレフタレートでラミネートした紙およびプラスチックフイルムがより好ましく用いられる。ポリオレフィン中に、白色顔料(例、酸化チタン、酸化亜鉛)または色味付け染料(例、コバルトブルー、群青、酸化ネオジウム)を添加することが好ましい。
【0191】
支持体上に設けられる受像層には、多孔質材料や水性バインダーが含有される。また、受像層には顔料を含むのが好ましく、顔料としては、白色顔料が好ましい。白色顔料としては、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、合成非晶質シリカ、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、二酸化チタン、硫化亜鉛、炭酸亜鉛等の無機白色顔料、スチレン系ピグメント、アクリル系ピグメント、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。特に好ましくは、多孔性の白色無機顔料がよく、特に細孔面積が大きい合成非晶質シリカ等が好適である。合成非晶質シリカは、乾式製造法(気相法)によって得られる無水珪酸及び湿式製造法によって得られる含水珪酸のいずれも使用可能である。
【0192】
上記顔料を受像層に含有する記録紙としては、具体的には、特開平10−81064号、同10−119423、同10−157277、同10−217601、同11−348409、特開2001−138621、同2000−43401、同2000−211235、同2000−309157、同2001−96897、同2001−138627、特開平11−91242、同8−2087、同8−2090、同8−2091、同8−2093、同8−174992、同11−192777、特開2001−301314などに開示されたものを用いることができる。
【0193】
受像層に含有される水性バインダーとしては、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、デンプン、カチオン化デンプン、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド誘導体等の水溶性高分子、スチレンブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン等の水分散性高分子等が挙げられる。これらの水性バインダーは単独または2種以上併用して用いることができる。本発明においては、これらの中でも特にポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコールが顔料に対する付着性、インク受容層の耐剥離性の点で好適である。
【0194】
受像層は、顔料及び水性バインダーの他に媒染剤、耐水化剤、耐光性向上剤、耐ガス性向上剤、界面活性剤、硬膜剤その他の添加剤を含有することができる。
【0195】
受像層中に添加する媒染剤は、不動化されていることが好ましい。そのためには、ポリマー媒染剤が好ましく用いられる。
ポリマー媒染剤については、特開昭48−28325号、同54−74430号、同54−124726号、同55−22766号、同55−142339号、同60−23850号、同60−23851号、同60−23852号、同60−23853号、同60−57836号、同60−60643号、同60−118834号、同60−122940号、同60−122941号、同60−122942号、同60−235134号、特開平1−161236号の各公報、米国特許2484430号、同2548564号、同3148061号、同3309690号、同4115124号、同4124386号、同4193800号、同4273853号、同4282305号、同4450224号の各明細書に記載がある。特開平1−161236号公報の212〜215頁に記載のポリマー媒染剤を含有する受像材料が特に好ましい。同公報記載のポリマー媒染剤を用いると、優れた画質の画像が得られ、かつ画像の耐光性が改善される。
【0196】
耐水化剤は、画像の耐水化に有効であり、これらの耐水化剤としては、特にカチオン樹脂が望ましい。このようなカチオン樹脂としては、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン、ポリエチレンイミン、ポリアミンスルホン、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、カチオンポリアクリルアミド等が挙げられる。これらのカチオン樹脂の含有量は、インク受容層の全固形分に対して1〜15質量%が好ましく、特に3〜10質量%であることが好ましい。
【0197】
耐光性向上剤、耐ガス性向上剤としては、フェノール化合物、ヒンダードフェノール化合物、チオエーテル化合物、チオ尿素化合物、チオシアン酸化合物、アミン化合物、ヒンダードアミン化合物、TEMPO化合物、ヒドラジン化合物、ヒドラジド化合物、アミジン化合物、ビニル基含有化合物、エステル化合物、アミド化合物、エーテル化合物、アルコール化合物、スルフィン酸化合物、糖類、水溶性還元性化合物、有機酸、無機酸、ヒドロキシ基含有有機酸、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、トリアジン化合物、複素環化合物、水溶性金属塩、有機金属化合物、金属錯体等があげられる。
これらの具体的な化合物例としては、特開平10−182621号、特開2001−260519号、特開2000−260519号、特公平4−34953号、特公平4−34513号、特公平4−34512号、特開平11−170686号、特開昭60−67190号、特開平7−276808号、特開2000−94829号、特表平8−512258号、特開平11−321090号等に記載のものがあげられる。
【0198】
界面活性剤は、塗布助剤、剥離性改良剤、スベリ性改良剤あるいは帯電防止剤として機能する。界面活性剤については、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載がある。
界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。有機フルオロ化合物の例には、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)および固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれる。有機フルオロ化合物については、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭61−20994号、同62−135826号の各公報に記載がある。
【0199】
硬膜剤としては特開平1−161236号公報の222頁、特開平9−263036号、特開平10−119423号、特開2001−310547号に記載されている材料などを用いることができる。
【0200】
その他の受像層に添加される添加剤としては、顔料分散剤、増粘剤、消泡剤、染料、蛍光増白剤、防腐剤、pH調整剤、マット剤等が挙げられる。尚、インク受容層は1層でも2層でもよい。
【0201】
記録紙及び記録フィルムには、バックコート層を設けることもでき、この層に添加可能な成分としては、白色顔料、水性バインダー、その他の成分が挙げられる。
バックコート層に含有される白色顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。
【0202】
バックコート層に含有される水性バインダーとしては、スチレン/マレイン酸塩共重合体、スチレン/アクリル酸塩共重合体、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、デンプン、カチオン化デンプン、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、スチレンブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン等の水分散性高分子等が挙げられる。バックコート層に含有されるその他の成分としては、消泡剤、抑泡剤、染料、蛍光増白剤、防腐剤、耐水化剤等が挙げられる。
【0203】
インクジェット記録紙及び記録フィルムの構成層(バック層を含む)には、ポリマー微粒子分散物を添加してもよい。ポリマー微粒子分散物は、寸度安定化、カール防止、接着防止、膜のひび割れ防止のような膜物性改良等の目的で使用される。ポリマー微粒子分散物については、特開昭62−245258号、同62−136648号、同62−110066号の各公報に記載がある。ガラス転移温度が低い(40℃以下の)ポリマー微粒子分散物を媒染剤を含む層に添加すると、層のひび割れやカールを防止することができる。また、ガラス転移温度が高いポリマー微粒子分散物をバック層に添加しても、カールを防止できる。
【0204】
本発明のインクは、インクジェット記録以外の用途に使用することもできる。例えば、ディスプレイ画像用材料、室内装飾材料の画像形成材料および屋外装飾材料の画像形成材料などに使用が可能である。
【0205】
ディスプレイ画像用材料としては、ポスター、壁紙、装飾小物(置物や人形など)、商業宣伝用チラシ、包装紙、ラッピング材料、紙袋、ビニール袋、パッケージ材料、看板、交通機関(自動車、バス、電車など)の側面に描画や添付した画像、ロゴ入りの洋服、等各種の物を指す。本発明のインクをディスプレイ画像の形成材料とする場合、その画像とは狭義の画像の他、抽象的なデザイン、文字、幾何学的なパターンなど、人間が認知可能なパターンをすべて含む。
【0206】
室内装飾材料としては、壁紙、装飾小物(置物や人形など)、照明器具の部材、家具の部材、床や天井のデザイン部材等各種の物を指す。本発明のインクを画像形成材料とする場合、その画像とは狭義の画像の他、抽象的なデザイン、文字、幾何学的なパターンなど、人間が認知可能な染料によるパターンをすべて含む。
【0207】
屋外装飾材料としては、壁材、ルーフィング材、看板、ガーデニング材料屋外装飾小物(置物や人形など)、屋外照明器具の部材等各種の物を指す。本発明のインクを画像形成材料とする場合、その画像とは狭義の画像のみならず、抽象的なデザイン、文字、幾何学的なパターンなど、人間が認知可能なインクによるパターンをすべて含む。
【0208】
以上のような用途において、パターンが形成されるメディアとしては、紙、繊維、布(不織布も含む)、プラスチック、金属、セラミックス等種々の物を挙げることができる。染色形態としては、媒染、捺染、もしくは反応性基を導入した反応性染料の形で色素を固定化することもできる。この中で、好ましくは媒染形態で染色されることが好ましい。
【0209】
インクの製造において、染料などの添加物の溶解工程等に超音波振動を加えることもできる。
超音波振動とは、インクが記録ヘッドで加えられる圧力によって気泡を発生することを防止するため、記録ヘッドで受けるエネルギーと同等かそれ以上の超音波エネルギーを予めインクの製造工程中に加えて気泡を除去しておくものである。
超音波振動は、通常、振動数20kHz以上、好ましくは40kHz以上、より好ましくは50kHzの超音波である。また超音波振動により液に加えられるエネルギーは、通常、2×107J/m3以上、好ましくは5×107J/m3以上、より好ましくは1×108J/m3以上である。また、超音波振動の付与時間としては、通常、10分〜1時間程度である。
超音波振動を加える工程は、染料を媒体に投入以降であれば何時行っても効果を示す。完成後のインクを一旦保存した後に超音波振動を加えても効果を示す。しかし、染料を媒体中に溶解及び/又は分散する際に超音波振動を付加することが、気泡除去の効果がより大きく、尚且つ超音波振動により色素の媒体への溶解及び/又は分散が促進されるので好ましい。
即ち、上記少なくとも超音波振動を加える工程は、染料を媒体中に溶解及び/又は分散する工程中でもその工程後であってもいずれの場合にも行うことができる。換言すれば、上記少なくとも超音波振動を加える工程は、インク調製後に製品となるまでの間に任意に1回以上行うことができる。
実施の形態としては媒体中に溶解及び/又は分散する工程は、前記染料を全媒体の一部分の媒体に溶解する工程と、残余の媒体を混合する工程とを有することが好ましく、上記少なくともいずれかの工程に超音波振動を加えることが好ましく、染料を全媒体の一部分の媒体に溶解する工程に少なくとも超音波振動を加えることが更に好ましい。
上記残余の溶媒を混合する工程は、単独工程でも複数工程でもよい。
また、本発明によるインク製造に加熱脱気あるいは減圧脱気を併用することは、インク中の気泡除去の効果を上げるので好ましい。加熱脱気工程あるいは減圧脱気工程は、残余の媒体を混合する工程と同時またはその後に実施することが好ましい。
超音波振動を加える工程における、超音波振動発生手段としては、超音波分散機等の公知の装置が挙げられる。
【0210】
本発明のインクを作製する際には、さらに調液した後に行われる、濾過により固形分であるゴミを除く工程が重要である。この作業には濾過フィルターを使用するが、このときの濾過フィルターとは、有効径が1μm以下、好ましくは0.3μm以下0.05μm以上、特に好ましくは0.3μm以下0.25μm以上のフィルターを用いる。フィルターの材質としては種々のものが使用できるが、特に水溶性染料のインクの場合には、水系の溶媒用に作製されたフィルターを用いるのが好ましい。中でも特にゴミの出にくい、ポリマー材料で作製されたフィルターを用いるのが好ましい。濾過法としては送液によりフィルターを通過させてもよいし、加圧濾過、減圧濾過のいずれの方法も利用可能である。
この濾過後には溶液中に空気を取り込むことが多い。この空気に起因する泡もインクジェット記録において画像の乱れの原因となることが多いため、前述の脱泡工程を別途設けることが好ましい。脱泡の方法としては、濾過後の溶液を静置してもよいし、市販の装置などを用いた超音波脱泡や減圧脱泡等種々の方法が利用可能である。超音波による脱泡の場合は、好ましくは30秒〜2時間、より好ましくは5分〜1時間程度脱泡操作を行うとよい。
これらの作業は、作業時におけるゴミの混入を防ぐため、クリーンルームもしくはクリーンベンチなどのスペースを利用して行うことが好ましい。本発明では特にクリーン度としてクラス1000以下のスペースにおいてこの作業を行うことが好ましい。ここで「クリーン度」とは、ダストカウンターにより測定される値を指す。
【0211】
本発明におけるインクの記録材料上への打滴体積は0.1pl以上100pl以下である。打滴体積の好ましい範囲は0.5pl以上50pl以下であり、特に好ましい範囲は2pl以上50pl以下である。
【0212】
本発明では、本発明のインクもしくはインクセットを使用して、インクジェットプリンターにより画像記録を行う方法であれば、インクジェットの記録方式に制限はなく、公知の方式、例えば静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット)方式等に用いられる。
インクジェット記録方式には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。インクの打滴体積の制御は主にプリントヘッドにより行われる。
【0213】
例えばサーマルインクジェット方式の場合、プリントヘッドの構造で打滴体積を制御することが可能である。すなわち、インク室、加熱部、ノズルの大きさを変えることにより、所望のサイズで打滴することができる。またサーマルインクジェット方式であっても、加熱部やノズルの大きさが異なる複数のプリントヘッドを持たせることで、複数サイズの打滴を実現することも可能である。
ピエゾ素子を用いたドロップオンデマンド方式の場合、サーマルインクジェット方式と同様にプリントヘッドの構造上打滴体積を変えることも可能であるが、後述するようにピエゾ素子を駆動する駆動信号の波形を制御することにより、同じ構造のプリントヘッドで複数のサイズの打滴を行うことができる。
【0214】
本発明のインクを、記録材料へ打滴するときの吐出周波数は1kHz以上であることが好ましい。
写真のように、高画質の画像を記録するためには、小さいインク滴で鮮鋭度の高い画像を再現するため、打滴密度を600dpi(1インチあたりのドット数)以上とする必要がある。
一方、インクを複数のノズルを有するヘッドで打滴するにあたり、記録紙とヘッドが互いに直交する方向に移動して記録するタイプでは同時に駆動できるヘッドの数は数十から200程度であり、ラインヘッドと呼ばれるヘッドが固定されたタイプでも数百であるという制約がある。これは駆動電力に制約があることや、ヘッドでの発熱が画像に影響を及ぼすため、多数のヘッドノズルを同時に駆動できないためである。
ここで駆動周波数を高くすることにより、記録速度を上げることが可能である。
打滴周波数を制御するには、サーマルインクジェット方式の場合、ヘッドを加熱するヘッド駆動信号の周波数を制御することで可能である。
ピエゾ方式の場合、ピエゾを駆動する信号の周波数を制御することで可能である。
ピエゾヘッドの駆動に関して説明する。プリントすべき画像信号はプリンタ制御部により、打滴サイズ、打滴速度、打滴周波数が決定され、プリントヘッドを駆動する信号が作成される。駆動信号はプリントヘッドに供給される。ピエゾを駆動する信号により打滴サイズ、打滴速度、打滴周波数が制御される。ここで打滴サイズと打滴速度は駆動波形の形状と振幅で決定され、周波数は信号の繰返し周期で決定される。
この打滴周波数を10kHzに設定すると、100マイクロ秒ごとにヘッドは駆動され、400マイクロ秒で1ラインの記録が終了する。記録紙の移動速度を400マイクロ秒に1/600インチすなわち約42ミクロン移動するように設定することにより、1.2秒に1枚の速度でプリントすることが出来る。
【0215】
本発明に用いる印刷装置の構成、プリンタの構成に関しては、たとえば特開平11−170527に開示されるような様態が好適である。また、インクカートリッジに関しては、たとえば特開平5−229133に開示されるものが好適である。吸引およびその際に印字ヘッドを覆うキャップ等の構成に関しては、たとえば特開平7−276671に開示されるものが好適である。また、ヘッド近傍には特開平9−277552に開示されるような気泡を排除するためのフィルタを備えることが好適である。
また、ノズルの表面は特開2002−292878号公報に記載されるような撥水処理を施すことが好適である。用途としては、コンピュータと接続されるプリンタであってもよいし、写真をプリントすることに特化した装置であってもよい。
本発明に適用されるインクジェット記録方法は、インクを記録材料へ打滴するときの平均打滴速度が2m/sec以上、好ましくは5m/sec以上であることが好ましい。
打滴速度を制御するには、ヘッドを駆動する波形の形状と振幅を制御することにより行う。
また複数の駆動波形を使い分けることにより、同じヘッドで複数のサイズの打滴を行うことができる。
【実施例】
【0216】
以下、本発明を実施例によって説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、染料は、以下のものを用いた。
【0217】
【化25】

【0218】
【化26】

【0219】
【化27】

【0220】
【化28】

【0221】
【化29】

【0222】
(実施例1)
下記の成分に超純水(抵抗値18MΩ以上)を加え1リッターとした後、30〜40℃で加熱しながら1時間撹拌した。その後、平均孔径0.25μmのミクロフィルターで減圧濾過してブラックインク(Bk−101)を調製した。
〔ブラックインク(Bk−101)処方〕
(固形分)
ブラック染料(BL−A) 60g
補色染料A 10g
補色染料B 5g
プロキセル XL2(アビシア製) 5g
尿素 20g
ベンゾトリアゾール 3g
(液体成分)
ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DGB) 100g
グリセリン(GR) 125g
ジエチレングリコール(DEG) 100g
2−ピロリドン 100g
トリエタノールアミン(TEA) 30g
サーフィノールSTG(SW)(日信化学製) 10g
【0223】
このブラックインク(Bk−101)において、ブラック染料種のみを変更したブラックインクをそれぞれ作製し、ブラックインクのΔAbs及び該ブラック染料のZ値を測定した。結果を表1に示す。
【0224】
【表1】

【0225】
これらのインクをEPSON社製インクジェットプリンターPM−G800のインクカートリッジに装填し、写真用紙モード設定にして、C,M,Y,B,G,R6色とグレーに関して、階段状に濃度が変化した画像パターンを印字させた。
ここで使用した受像シートは、富士写真フイルム(株)製インクジェットペーパーフォト光沢紙「画彩」を用いた。
1)印画安定性の評価は、インクカートリッジを70℃の恒温機に1週間保管した後、印画することにより評価した。
このとき、グレーの階段状パターンで、画像が均一に印画されているものをA、一部かすれが認められるものをB、全体にかすれが認められるものをCとした。
2)ブラック色素の画像保存性については、グレー印字サンプルを用いて、以下の評価を行った。画像保存性の評価は、階段状パターンの濃度を、ステータスAフィルターを搭載したX−rite310濃度測定機を用いて測定し、Dvis=1.0付近の点を基準点として、そこの濃度変化を測定することにより行った。
(1)光堅牢性は、印字直後の階段状パターンの濃度(Dvis)Ciを測定した後、アトラス社製ウェザーメーターを用い画像にキセノン光(8万5千ルックス)を21日照射した。その後再び階段状パターンの濃度Cfを測定し染料残存率(Cf/Ci)×100を求め評価を行った。
染料残像率が80%以上の場合をA、70〜80%の場合をB、70%未満の場合をCとした。
(2)耐湿熱性については、80℃70%RHの条件下に21日間、試料を保存する前後での階段状パターンの濃度をX−rite310にて測定し、上記1)と同様にして染料残存率を求め評価した。
染料残像率が90%以上の場合をA、80〜90%の場合をB、80%未満の場合をCとした。
(3)耐オゾン性については、オゾンガス濃度が10ppmに設定されたボックス内に試料を200時間放置し、オゾンガス下放置前後の階段状パターンの濃度をX−rite310にて測定し、上記1)と同様にして染料残存率を求め評価した。
ボックス内のオゾンガス濃度は、APPLICS製オゾンガスモニター(モデル:OZG−EM−01)を用いて設定した。
染料残像率が80%以上の場合をA、70〜80%の場合をB、70%未満の場合をCとした。
結果を表2に示す。
【0226】
【表2】

【0227】
以上、表1及び2の結果より、本発明の実施例は、比較例に比べてΔAbs及びZ値が低く、ブラックインク及びブラック染料が極めて安定であり、印画安定性、耐光性、耐湿熱性、及び耐オゾン性に優れることが明らかである。
【0228】
(実施例2)
下記の成分に抵抗値18MΩ以上の超純水を加え1リッターとした後、30〜40℃で加熱しながら1時間撹拌した。その後、平均孔径0.25μmのミクロフィルターで減圧濾過してブラックインク(Bk−201)を調製した。
〔ブラックインク(Bk−201)処方〕
(固形分)
ブラック染料(BL−A) 60g
補色染料A 10g
補色染料B 5g
プロキセル XL2(アビシア製) 5g
尿素 20g
ベンゾトリアゾール 3g
(液体成分)
トリエチレングリコール(TEG) 80g
グリセリン(GR) 120g
トリエチレングリコールモノブチルエーテル(TGB) 70g
1,5−ペンタンジオール(PTD) 60g
イソプロパノール(IPA) 20g
トリエタノールアミン(TEA) 8g
サーフィノールSTG(SW)(日信化学製) 10g
【0229】
このブラックインク(Bk−201)において、ブラック染料種のみを変更したブラックインクをそれぞれ作製し、ブラックインクのΔAbs及び該ブラック染料のZ値を測定した。結果を表3に示す。
【0230】
【表3】

【0231】
これらのインクをCANON社製インクジェットプリンターPIXUS990iのインクカートリッジに装填し、実施例1と同様にC,M,Y,B,G,R6色とグレーに関して、階段状に濃度が変化した画像パターンを印字させた。
ここで使用した受像シートは、富士写真フイルム(株)製インクジェットペーパーフォト光沢紙「画彩」を用いた。
実施例1と同様にして画像の評価を行った。
結果を表4に示す。
【0232】
【表4】

【0233】
以上、表3及び4の結果より、本発明の実施例は、比較例に比べてΔAbs及びZ値が低く、ブラックインク及びブラック染料が極めて安定であり、印画安定性、耐光性、耐湿熱性、及び耐オゾン性に優れることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを下記条件で経時試験した際の、下記にて定義される吸光度の変化率ΔAbsが20%以下であることを特徴とするブラックインク。
<経時試験条件>
インクを還流しながら75℃、24時間経時する。
<吸光度の変化率ΔAbsの定義>
経時前のインクを希釈し、分光光度計を使用して吸光度測定したときの、吸光度(Abs)をAbs1、経時後のインクを経時前の溶液と同様にして測定した際の吸光度(Abs)を同様にAbs2としたときに、ΔAbs=100×(Abs1−Abs2)/Abs1で表されるΔAbsを吸光度の変化率(%)と定義する。
【請求項2】
酸化電位が1.0V(vs SCE)よりも貴である染料を含むことを特徴とする請求項1記載のブラックインク。
【請求項3】
下記条件で経時試験した際の、下記にて定義される残存率が90%以上である染料を含むことを特徴とする請求項1または2記載のブラックインク。
<経時試験条件>
温度25℃、pH=9.0のBritton-Robinsonバッファーに染料が1mmol/lの溶液となるように溶解して、この溶液100mlを還流しながら75℃、24時間経時する。
<残存率の定義>
経時前の染料溶液を50倍希釈し、分光光度計を使用して吸光度測定したときの、λmax部の吸光度(Abs)をAbs3、経時後の溶液を経時前の溶液と同様にして測定した際の吸光度(Abs)を同様にAbs4としたときに、Z=(Abs4/Abs3)×100で表されるZを残存率(%)と定義する。
【請求項4】
ヘテロ環基を有する染料を含むことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のブラックインク。
【請求項5】
λmaxが500nmから700nmにあり、かつ吸光度1.0に規格化した希薄溶液の吸収スペクトルにおける半値幅が100nm以上である染料を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のブラックインク。
【請求項6】
λmaxが350nmから500nmにある染料を含むことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のブラックインク。
【請求項7】
下記一般式(1)で示される染料を含むことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のブラックインク。
一般式(1):A1−N=N−A2−N=N−A3
式中、A1、A2およびA3は、各々独立に、置換されていてもよい芳香族基または置換されていてもよい複素環基を表す。A1およびA3は一価の基であり、A2は二価の基である。
【請求項8】
前記A2が少なくとも1つのアルキル基、アリール基、及びヘテロ環基から選ばれる基が置換した芳香族複素環基であることを特徴とする請求項7記載のブラックインク。
【請求項9】
前記A1またはA3が芳香族複素環基であることを特徴とする請求項7または8記載のブラックインク。
【請求項10】
下記一般式(5)で表される染料を含むことを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載のブラックインク。
一般式(5)
【化1】


式中、Aは、水酸基もしくは−NR12で表される基を示す。ここで、R1およびR2はそれぞれ独立して、水素原子もしくは置換されていてもよいアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、−CO−R5基、−SO2−R6基、−PO(R7)−R8基を表す。ここで、R5はアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基を表す。R6はアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を表す。R7,R8はアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、を表す。R3およびR4はそれぞれ独立してアリール基、または芳香族複素環基を表す。
Mは水素原子、カチオン性の金属原子、もしくは含窒素カチオン基を表す。
【請求項11】
一般式(5)で表される染料を2種以上含むことを特徴とする請求項10に記載のブラックインク。
【請求項12】
インク全量に対しアミド系溶剤の総含有量が5質量%以下であることを特徴とする請求項1〜11の何れかに記載のブラックインク。
【請求項13】
インク全量に対し水溶性グリコール系溶剤の総含有量が30質量%以下であることを特徴とする請求項1〜12の何れかに記載のブラックインク。
【請求項14】
インクのpHが5〜9であることを特徴とする請求項1〜13の何れかに記載のブラックインク。
【請求項15】
染料の会合性を促進する機能を有した化合物を含むことを特徴とする請求項1〜14の何れかに記載のブラックインク。
【請求項16】
インクジェット記録に用いることを特徴とする請求項1〜15の何れかに記載のブラックインク。
【請求項17】
請求項1〜16記載のブラックインクを含むことを特徴とするインクセット。
【請求項18】
請求項1〜16記載のブラックインクもしくは請求項17記載のインクセットを含有することを特徴とするインクカートリッジ。

【公開番号】特開2006−37045(P2006−37045A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−223229(P2004−223229)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】