説明

ブリスター包装体、及びこれを用いたプレフィルドシリンジの包装品

【課題】十分な遮光性を確保しつつ、色を自由に選択して着色することができるブリスター包装体、及びこれを用いたプレフィルドシリンジの包装品を提供する。
【解決手段】光感受性の薬液が充填されたプレフィルドシリンジを包装するブリスター包装体16を、プレフィルドシリンジ12を収容する凹部76を有する収容体72と、収容体72の凹部76の開口を覆って該凹部76を密閉する蓋材74とから構成し、収容体72を、遮光性を有する遮光層90と、該遮光層90の外側または内側のうち少なくとも外側の表面を覆うとともに任意の色に着色された着色層92とから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレフィルドシリンジを包装するブリスター包装体、およびブリスター包装体でプレフィルドシリンジが包装されたプレフィルドシリンジの包装品に関する。
【背景技術】
【0002】
光によって品質や性状が変化する、いわゆる光感受性の薬液が充填されたプレフィルドシリンジは、使用される直前まで遮光された状態で維持される。なお、ここでいう「遮光」とは、「通常の取扱い、運搬又は保存状態において、内容医薬品に規定された性状及び品質に対して影響を与える光の透過を防ぎ、内容医薬品を光の影響から保護することができること」を指す。
【0003】
例えば、プレフィルドシリンジは、衝撃や雑菌からプレフィルドシリンジを守るブリスター包装体に包装された状態で箱に収納されて遮光される。しかし、この場合、ブリスター包装体を箱から取り出すと遮光されない欠点がある。
【0004】
これに対して、プレフィルドシリンジが、箱に収納されることなく、例えば特許文献1に記載するような遮光性を備える材料で作製されたブリスター包装体に包装された状態で遮光されることもある。
【特許文献1】特公平3−49828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたブリスター包装体のように、全波長に亘って遮光するためカーボンブラックを材料に含ませると、ブリスター包装体の色が黒またはグレーに限定されてしまう。また、近紫外部の低波長領域の遮光を行うため紫外線吸収剤を配合したものは、褐色等に限定されてしまう。
【0006】
このように、ブリスター包装体の遮光性を確保しようとすると、ブリスター包装体の色を自由に選択することができなくなる。したがって、遮光性を有する従来のブリスター包装体は、プレフィルドシリンジ内の薬液、例えばワクチンに対応する色に着色することができず、そのブリスター包装体の色によって薬液の種類を識別可能とすることができなかった。
【0007】
そこで、本発明は、十分な遮光性を確保しつつ、色を自由に選択して着色することができるブリスター包装体、及びこれを用いたプレフィルドシリンジの包装品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明に係るブリスター包装体は、
光感受性の薬液が充填されたプレフィルドシリンジを包装するブリスター包装体であって、
プレフィルドシリンジを収容する凹部を有する収容体と、
収容体の凹部の開口を覆って該凹部を密閉する、遮光性を有する蓋材とを有し、
収容体が、遮光性を有する遮光層と、該遮光層の外側または内側のうち少なくとも外側の表面を覆うとともに任意の色に着色された着色層とを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明に係るプレフィルドシリンジの包装品は、
光感受性の薬液が充填されたプレフィルドシリンジの包装品であって、
上記のブリスター包装体でプレフィルドシリンジが包装されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ブリスター包装体の収容体が遮光層と着色層を有するため、遮光層によって十分な遮光性を確保できるとともに、着色層の色を自由に選択することができる。したがって、プレフィルドシリンジ内のワクチン等の薬液に対応した色に着色層を着色することで、着色層の色を見ただけで収容体に収容されたシリンジ内の薬液の種類を識別することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本明細書において、包装体に対して使用される「遮光性」の用語は、完全に光を遮光する特性を言うのではなく、光を遮光するものの、それは完全でなく、小さい光量の光が透過する特性を言う。完全に光を遮光する特性については、「完全な遮光性」という用語を使用する。
【0012】
図1は、開封状態のプレフィルドシリンジの包装品を示している。図において符号10で示すプレフィルドシリンジの包装品は、プレフィルドシリンジ12と、プレフィルドシリンジ12に添付される添付文書14と、プレフィルドシリンジ12と添付文書14を包装するブリスター包装体16と、ブリスター包装体16を封緘するシール18を有する。
【0013】
まず、プレフィルドシリンジ12の詳細について図2を参照しつつ説明する。
【0014】
プレフィルドシリンジ12は、バレル20と、バレル20内に嵌入される2つの栓体22、24と、2つの栓体22、24の間に収容される薬液26と、バレル20の一端に取り付けられたフィンガーグリップ28と、バレル20の他端に取り付けられるとともに後述の針支持体を支持するハブルアロック30と、注射針32を支持する針支持体34と、注射針32を保護するプロテクタ36と、栓体24に取り付けられるプランジャーロッド38から構成される。
【0015】
バレル20は、内部に収容する薬液26が視認可能な透明な材料、例えばガラスで作製されている。
【0016】
栓体22、24は、概円柱形状であってゴムなどの弾性体で作製されている。栓体24は、プレフィルドシリンジ12の使用時、薬液26を外部に押し出すピストンとして機能する。一方、栓体22は、保管時、栓体24とバレル20と協働して薬液26を収容する空間(容器)を形成する役割をする。
【0017】
フィンガーグリップ28は、プレフィルドシリンジ12の使用時、利用者の指が掛かる部分である。フィンガーグリップ28は、利用者の指が掛かるグリップ部40と、バレル20の一端が嵌入される円筒部42で構成される。
【0018】
ハブルアロック30は、針支持体34を支持するとともにバレル20の他端が嵌入可能に形成され、バレル20と該針支持体34を連結する。また、ハブルアロック30は、後述するように、プレフィルドシリンジ12の使用時に栓体22が収容される収容部44を有する。収容部44を形成する内周面には、収容部44に栓体22が収容されてもバレル20内の薬液26が針支持体34に向かって流れるように、針支持体34に通ずる流路46とバレル20内とを連絡する溝48が形成されている。
【0019】
針支持体34は、注射針32を支持するとともに該注射針32内部とハブルアロック30の流路46を連絡している。
【0020】
プロテクタ36は、プレフィルドシリンジ12が使用されるまで注射針32を保護するキャップ状のもので、ハブルアロック30と着脱可能に係合するように構成されている。
【0021】
プランジャーロッド38は、栓体24と係合する一端と、使用時に利用者の親指によって押圧される他端(以下、「押圧部」と称する。)50を備える。
【0022】
プレフィルドシリンジ12の使用方法について説明する。まず、プロテクタ36がハブルアロック30からはずされる。
【0023】
続いて、注射針32が上方に向いた状態でプランジャーロッド38がバレル20内に押し込まれる。プランジャーロッド38が押し込まれることにより、ピストンとして機能する栓体24が上方に移動する。
【0024】
プランジャーロッド38がさらにバレル20内に押し込まれると、2つの栓体22、24の間に収容された薬液26の圧力が高まり、栓体22がハブルアロック30の収容部44に向かって移動し始める。栓体22がハブルアロック30の収容部44に収容されると、バレル20内の薬液26が溝48を介して針支持体34に流れる。注射針32から外部に薬液26が流れ出ることによりプルフィルドシリンジ12内の空気が抜け、プレフィルドシリンジ12は使用可能となる。
【0025】
薬液26は、プレフィルドシリンジ製剤として調製可能な医薬品であれば特に限定されるものではない。例えば、本発明においては、種々のワクチン等が挙げられる。
【0026】
図1に戻り、添付文書14は、プレフィルドシリンジ10の使用に関する情報、例えば薬液26の成分、接種上の注意、プレフィルドシリンジ10の使用方法などが記載されている。添付文書14は、1枚の紙であって、板形状に幾重にも折り畳まれた状態でプリフィルドシリンジ10とともにブリスター包装体16に包装される。
【0027】
ブリスター包装体16は、プレフィルドシリンジ12と添付文書14を収容する収容体72と、収容体72に接着される蓋シート(請求の範囲に記載の蓋材に対応。)74とから構成される。
【0028】
収容体72は、プレフィルドシリンジ12を収容する凹部形状の収容部76と、蓋シート74が接着されるフランジ部78を有する。
【0029】
収容体72の収容部76は、プレフィルドシリンジ12を収容するシリンジ収容スペースとは別に、添付文書14を収容する添付文書収容スペースを備える。添付文書収容スペースは、シリンジ収容スペースと収容体72の収容部76底面との間に設けられている。すなわち、添付文書14は、収容体72とプレフィルドシリンジ12の間に収容される。
【0030】
収容体72の収容部76側壁には、添付文書収容内における添付文書14の収容部76開口に向かう移動を規制する添付文書規制部82a、82bが内側に向けて突設されている。
【0031】
添付文書規制部82a、82bは、収容部76の長手方向に間隔を空けて例えば2組設けられている。各組の添付文書規制部82a、82bは、収容部76における互いに対向する側壁に設けられた2つの添付文書規制部82a、82bから構成されている。
【0032】
収容体72の側面から見た添付文書規制部82a、82bの形状は、例えば上辺よりも下辺の幅が大きい略台形となっている。また、プレフィルドシリンジ12の軸方向52から見た添付文書規制部82a、82bの形状は、図5に示すように、下端に底辺を有する細長の略三角形状であり、添付文書収容スペースに収められた添付文書14が、添付文書規制部82a、82bの下端面に係止されることで、添付文書14が上方へ移動しないようになっている。添付文書14の上端コーナー部が添付文書規制部82a、82bの下端面に係止可能なように、添付文書規制部82a、82bの下端は、収容部76に収容されたプレフィルドシリンジ12よりも下側に位置している。具体的に、添付文書規制部82a、82bの下端の収容体72底面からの高さは、添付文書14の高さによって決定されるが、例えば6.55mmに設定される。
【0033】
添付文書規制部82a、82bは、封緘状態のブリスター包装体16の収容体72の収容部76の底部を外から見た図4に示すように、添付文書14が収容体72の底面上に配置された状態を維持する。
【0034】
図1に戻って、収容体72の収容部76には、収容部76におけるプレフィルドシリンジ12の移動を規制するシリンジ規制部80a、80b、80cが突設されている。
【0035】
シリンジ規制部80aがプレフィルドシリンジ12のプロテクタ36を支持するとともに、シリンジ規制部80cがプランジャーロッド38を支持することにより、プレフィルドシリンジ12は、プレフィルドシリンジ12の中心軸52方向に関して直交する方向の移動が規制される。
【0036】
また、シリンジ規制部80bと一方の組の添付文書規制部82bとの間にプレフィルドシリンジ12のフィンガーグリップ28のグリップ部40が挟持されることにより、プレフィルドシリンジ12の中心軸52方向の移動が規制される。このように、一方の組の添付文書規制部82bは、シリンジ規制部としての機能を兼ね備えている。
【0037】
収容体72のフランジ部78は、蓋シート74が接着される部分であって、収容部76の開口に沿って形成されている。フランジ部78の外縁形状は、蓋シート74の形状と略一致する。フランジ部78に蓋シート74が接着されることにより、収容体72の収容部76の開口が覆われ該収容部76が密閉される。
【0038】
図5に示すように、収容体72は、遮光性を有する遮光層90と、遮光層90の外側表面を覆うとともに任意の色に着色された外側の着色層92と、遮光層90の内側表面を覆うとともに任意の色に着色された内側の着色層94とを含む。
【0039】
ただし、着色層92、94は、必ずしも遮光層90の外側および内側の双方に設ける必要はなく、少なくとも遮光層90の外側に設ければ良い。
【0040】
遮光層90および着色層92、94は、ポリプロピレン、低密度ポリエチレンおよび着色マスターバッチから構成される。ポリプロピレン、低密度ポリエチレンおよび着色マスターバッチは、ポリプロピレン:低密度ポリエチレン:着色マスターバッチ=(57〜90):(40〜0):(3〜10)となるような比率(重量パーセント)で配合されている。ここで、遮光層90における着色マスターバッチの重量パーセントは例えば8%とするのが好ましく、これにより、遮光性を有するのに十分な量の着色マスターバッチが遮光層90に添加される。
【0041】
ポリプロピレンとしては、JIS K 7210に準拠する測定方法で測定されたMFI(メルトフローインデックス)が0.3〜10.0g/10minのものが好適に用いられ、低密度ポリエチレンとしては、MFIが0.2〜10.0g/10minのものが好適に用いられる。
【0042】
着色マスターバッチの成分は、遮光層90または着色層92、94を着色する色によって異なる。例えば、ベージュの着色に用いる着色マスターバッチの成分は、酸化チタン、複合酸化物(Fe-Ti)顔料、カーボンブラック、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンおよびポリエチレンであり、グレーの着色に用いる着色マスターバッチの成分は、酸化チタン、カーボンブラック、ステアリン酸カルシウムおよびポリプロピレンであり、青の着色に用いる着色マスターバッチの成分は、酸化チタン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンおよびポリエチレンである。
【0043】
遮光層90は、遮光性を有するようにグレー、ベージュまたは褐色等に着色される。他方、着色層92、94は、ワクチン等の薬液に対応する色に着色され、着色層92、94の色によりプレフィルドシリンジ12内の薬液の種類を識別可能となっている。
【0044】
ここで、複数種類のワクチンには、世界保険機構(WHO)が推奨する色が対応付けされている。例えば、百日咳・ジフテリア・破傷風混合ワクチン(DPT)の場合は黄色が対応付けされ、破傷風ワクチンの場合は緑色が対応付けされている。したがって、DPTワクチンがプレフィルドシリンジに充填されている場合、ブリスター包装体の外側表面は黄色で着色される。
【0045】
着色層92、94への着色は、着色層92、94全体に施すことが望ましく、これにより、収容体72の遮光性が一層向上する。ただし、本発明は、着色層92、94の一部に着色することを妨げるものではない。また、内側の着色層94と外側の着色層92は、互いに異なる色に着色するようにしても良い。さらに、着色層92、94への着色は、ワクチンに対応する色に限られず、任意の色を選択して着色することができる。
【0046】
外側の着色層92、遮光層90および内側の着色層94の層厚の比率(%)は、(外側の着色層92の層厚):(遮光層90の層厚):(内側の着色層94の層厚)=(15〜35):(30〜70):(15〜35)となるように形成されている。
【0047】
なお、内側の着色層94の内側または外側の着色層92の外側のいずれか一方または両方に、着色が施されない層を設けるようにしても良い。例えば、内側の着色層94の内側に着色が施されない層を形成する場合、外側の着色層92、遮光層90、内側の着色層94および着色が施されない層の層厚の比率(%)は、例えば、(外側の着色層92の層厚):(遮光層90の層厚):(内側の着色層94の層厚):(着色が施されない層の層厚)=(15〜35):(30〜70):(14〜30):(1〜5)となるように形成される。
【0048】
収容体72の作製方法の一例を簡単に説明する。先ず、共押出により外側の着色層92、遮光層90および内側の着色層94が積層された長尺の樹脂シートを形成し、その樹脂シートを搬送しつつヒータなどで加熱し、加熱により軟化した樹脂シートに収容部76の凹部形状と対応する凸形状の金型を押し付けて該収容部76をプレス成形して、収容部76が形成された樹脂シート部分(フランジ部78を含む部分)をプレス機で打ち抜くことにより収容体72が作製される。
【0049】
ただし、上記の樹脂シートは、必ずしも共押出によって形成する必要はなく、外側の着色層92、遮光層90および内側の着色層94を接着剤で接着したり熱融着したりすることで積層するようにしても良い。
【0050】
蓋シート74は、樹脂シート(例えば、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレンなど)とアルミシートなどの複数のシートを重ねたもので、アルミシートにより完全な遮光性を備える。蓋シート74の外側面84には、プレフィルドシリンジ12の薬液26の名称、プレフィルドシリンジ10の製造日や製造番号などが記載されている。
【0051】
シール18は、ブリスター包装体16を封緘するシート状のシールであって、2つ折り状態で図4に示すように一部が収容体72のフランジ部78に貼り付けられ、図6に示すように残りが蓋シート74に貼り付けられる。シール18は、例えば国家検定の合格証紙で構成される。なお、シール18は、収容体72と蓋シート74が接着された状態を維持するものでなく、ブリスター包装体16が未開封または開封済みであるかを示すものである。したがって、シール18は、ブリスター包装体16が開封されたときに破れるように構成されている、または開封時に一度収容体72または蓋シート74から剥離されると二度と貼り付かないように構成されている。シール18の状態により、薬液26が遮光された状態で維持されているか否かがわかる(シール18が破れているなどブリスター包装体16の開封済みを示している場合、薬液26が遮光された状態で維持されていないことを示している、すなわち薬液26が光によって品質や性状が変化している可能性があることを示している。)。
【0052】
シール18が貼り付けられるブリスター包装体16の部分は、シール18の貼りやすさやシール18との接着性を考慮すると、ほぼ平坦に形成されているのが好ましい。図4に示すように、シール18は、平坦な収容体72のフランジ部78の裏面(蓋シート74が接着される面に対向する面)に貼り付けられている。
【0053】
本実施形態によれば、プレフィルドシリンジ12は、完全な遮光性を備える蓋シート74と遮光性を備える収容体72からなるブリスター包装体16に包装される。プレフィルドシリンジ12は、蓋シート74によって収容体72の収容部76開口側から照射される光から完全に遮光され、遮光層90によって収容体72の収容部76の底面および側面を透過した光からも十分に遮光される。
【0054】
特に、収容体72の収容部76の底面を透過した光については、板形状に幾重に折り畳まれた添付文書14によって略完全に遮光される。このように、収容体72の収容部76底面とプレフィルドシリンジ12の薬液収容部との間に添付文書14が収容されているため、プレフィルドシリンジ12の薬液26は一層確実に遮光される。
【0055】
なお、収容体72の収容部76の側面を透過した光からも略完全に遮光するために、添付文書を「コ」の字断面形状やハーフパイプ形状など3方向から照射される光を遮光できる形状に幾重に折りたたみ、収容体72とプレフィルドシリンジ12の間に配置するようにしても良い。この場合、収容体72には、プレフィルドシリンジ12と収容体72の間に3方向から照射される光を遮光できる形状に幾重に折りたたまれた添付文書を収容可能なスペースと該スペースでの添付文書の配置を維持する規制部を形成する必要がある。
【0056】
また、例えば帯状に幾重に折り畳まれた添付文書によって薬液を収容しているバレル20を巻回した状態で、プレフィルドシリンジ12および添付文書を収容体72に収容可能としても良く、その場合、プレフィルドシリンジの薬液をより一層確実に遮光することができる。
【実施例】
【0057】
(試験1)
遮光層90をグレーに着色するとともに外側の着色層92および内側の着色層94を紫色に着色してなるブリスター包装体16の収容体72(以下、「実施例1」と称す。)について、遮光性を確認する試験1を行った。
【0058】
収容体72の遮光性は、収容体72から切り離した測定部位の光の透過率を分光光度計により測定することで確認した。測定条件は、SCAN SPEEDを120.0nm/min、BAND PASSを2.00nm、波長の測定範囲を800〜200nmとなるように設定した。測定部位は、図4に示すように、プレフィルドシリンジ12の薬液収容部の収容部分である収容体72中央部の底面A、収容体72中央部の側面B、プレフィルドシリンジ12のプランジャーロッド38のヘッドを収容する収容体72のヘッド収容部の底面C、およびプレフィルドシリンジ12中心軸52方向ヘッド側から見た収容体72のヘッド収容部の側面Dとした。
【0059】
試験1の結果、収容体72中央部の底面A、収容体72中央部の側面B、収容体72のヘッド収容部の底面Cおよび収容体72のヘッド収容部の側面Dにおける最大透過率は、図7(a)〜(d)における破線で示されるように、いずれも波長800nmにおいて認められた。具体的に、収容体72中央部の底面A、収容体72中央部の側面Bおよび収容体72のヘッド収容部の底面Cにおける最大透過率はいずれも0.1%以下であり、収容体72のヘッド収容部の側面Dにおける最大透過率は1.2%であった。
【0060】
試験1により、プレフィルドシリンジ12の薬液収容部の遮光に与える影響が小さいヘッド収容部の側面Dでは、高波長領域において透過率が僅かに高くなったが、その他の測定部位、すなわち中央部底面A、中央部側面B、およびヘッド収容部底面Cにおいては、いずれの周波数領域においても極めてゼロに近い透過率を示し、実施例1の収容体が極めて優れた遮光性を有することを確認することができた。
【0061】
(試験2)
遮光層90をグレーに着色するとともに外側の着色層92および内側の着色層94を黄色に着色してなるブリスター包装体16の収容体72(以下、「実施例2」と称す。)について、遮光性を確認する試験2を行った。
【0062】
測定方法、測定条件および測定部位は、試験1と同様である。
【0063】
試験2の結果、収容体72中央部の底面A、収容体72中央部の側面B、収容体72のヘッド収容部の底面Cおよび収容体72のヘッド収容部の側面Dにおける最大透過率は、図8(a)〜(d)における破線で示されるように、いずれも波長800nmにおいて認められた。具体的に、収容体72中央部の底面Aにおける最大透過率は0.2%、収容体72中央部の側面Bにおける最大透過率は0.7%、収容体72のヘッド収容部の底面Cにおける最大透過率は0.3%、収容体72のヘッド収容部の側面Dにおける最大透過率は2.5%であった。
【0064】
試験2により、実施例2の最大透過率は、いずれの測定部位においても実施例1と比較するとやや高い値を示すが、中央部底面A、中央部側面B、およびヘッド収容部底面Cにおける最大透過率は極めて低く、実施例2の収容体も優れた遮光性を有することを確認することができた。
【0065】
すなわち、実施例2の収容体は、実施例1の収容体と比較すると遮光性が僅かに劣るものの、実施例1および実施例2のいずれの遮光性も、プレフィルドシリンジに充填されるワクチン等の薬液の性状に全く影響しないレベルであることを確認している。また、収容体に添付文書を収容して使用することで、透過率を上記試験の結果よりも低減することができるため、遮光性を十分に高めた状態で使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係るブリスター包装体の開封状態を示す図である。
【図2】本発明に係るブリスター包装体に収容されるプレフィルドシリンジの部分断面図である。
【図3】プレフィルドシリンジを収容した状態の収容体を収容部の開口正面から見た図である。
【図4】収容体の底部を外側から見た図である。
【図5】収容体の部分拡大断面図である。
【図6】本発明に係るブリスター包装体の封緘状態を示す図である。
【図7】実施例1の遮光性試験の結果を示すグラフである。
【図8】実施例2の遮光性試験の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0067】
12:プレフィルドシリンジ
14:添付文書
16:包装体(ブリスター包装体)
26:薬液(ワクチン)
72:収容体
76:凹部(収容部)
80a,80b,80c:シリンジ規制部
82a,82b:添付文書規制部
90:遮光層
92,94:着色層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光感受性の薬液が充填されたプレフィルドシリンジを包装するブリスター包装体であって、
プレフィルドシリンジを収容する凹部を有する収容体と、
収容体の凹部の開口を覆って該凹部を密閉する、遮光性を有する蓋材とを有し、
収容体が、遮光性を有する遮光層と、該遮光層の外側または内側のうち少なくとも外側の表面を覆うとともに任意の色に着色された着色層とを含むことを特徴とするブリスター包装体。
【請求項2】
収容体の着色層の少なくとも一部が、薬液に対応する色に着色されていることを特徴とする請求項1に記載のブリスター包装体。
【請求項3】
プレフィルドシリンジに添付される添付文書を収容する添付文書収容スペースが、プレフィルドシリンジを収容するシリンジ収容スペースと、収容体底部との間に設けられていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のブリスター包装体。
【請求項4】
添付文書収容スペース内における添付文書の上記開口に向かう移動を規制する添付文書規制部が、収容体の側壁から内側に向けて突設されていることを特徴とする請求項3に記載のブリスター包装体。
【請求項5】
収容体の凹部におけるプレフィルドシリンジの移動を規制するシリンジ規制部が、収容体の凹部に突設されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のブリスター包装体。
【請求項6】
光感受性の薬液が充填されたプレフィルドシリンジの包装品であって、
請求項1から5のいずれかに記載のブリスター包装体でプレフィルドシリンジが包装されていることを特徴とするプレフィルドシリンジの包装品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−290720(P2007−290720A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−118186(P2006−118186)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(000173555)財団法人化学及血清療法研究所 (86)
【出願人】(500163366)出光ユニテック株式会社 (128)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】