説明

ブルーレイディスク及びコンテンツの配信システム

【課題】版識別子を視認できるブルーレイディスクを提供する。また、ブルーレイディスクの固有識別子に基づいたコンテンツ配信システムも提供する。
【解決手段】スタンパの作製時に付与されるスタンパの版識別子を記憶し、当該スタンパを用いてブルーレイディスクをプレス成形する際に記憶した版識別子を読み出してブルーレイディスクの記録面以外の部分に記録する。また、ブルーレイディスクの固有識別子が配信サーバに設定された固有識別子と合致する場合に、コンテンツを再生装置へ出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタンパの版IDを視認できるブルーレイディスク及びこれを用いたコンテンツの配信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ブルーレイディスク(以下、単にBDともいう。)は、コンテンツのデジタルデータをディスクイメージにオーサリング処理したのち、このデータをAACS規格にしたがってプレスイメージに処理する。さらにこのプレスイメージに処理されたデータに基づいて1枚の原版(スタンパ)が作製され、このスタンパを用いてユーザに供される複数枚のBD−ROMがプレス成形さる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−310269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スタンパには版ごとにVolume ID(以下、版識別子ともいう。)と、暗号化されたタイトルキー(Unit Key RO.inf,Volume IDに基づいて暗号化される)とが付与され、スタンパを用いてプレスされたBD−ROMの記録面にもそのスタンパの版識別子及び暗号化されたタイトルキーがデータとして記録される。
【0005】
しかしながら、BD−ROMのプレス枚数が多くなるとスタンパが劣化するためスタンパを再版し交換する必要がある。この際に、コンテンツをディスクイメージに処理したデータは保存データを利用することができるものの、これに版識別子と暗号化されたタイトルキーを再度付与する必要があるため、再版された新たなスタンパの版識別子及び暗号化されたタイトルキーは元のスタンパのそれらとは異なることになる。
【0006】
これら版識別子及び暗号化されたタイトルキーは、ディスクの記録面にデータとして記録されるだけであって外部から視認できない。またプログラムを用いて解読することも極めて困難である。
【0007】
版識別子及び当該版識別子に基づいて暗号化されたタイトルキーはプレスされたBD−ROMにも記録されることから、版識別子が認識できないとBD−ROMの版識別子を認識してコンテンツなどの情報を配信するシステムにも影響が生じる。また、そのBD−ROMに製造上の不具合が生じたときの原因解明が困難となる。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、版識別子が視認できるブルーレイディス及び版識別子が相違しても情報配信が可能なコンテンツの配信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ブルーレイディスクの記録面以外の部分にプレス成形のスタンパの版識別子に対応した固有識別子を記録すること、又は、ブルーレイディスクをプレス成形した際のスタンパの版識別子に対応したブルーレイディスクの固有識別子と、前記スタンパの再版スタンパの版識別子に対応したブルーレイディスクの固有識別子とを配信サーバに関連付けて設定することによって、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るブルーレイディスクによれば、版識別子が視認できる。また本発明に係るコンテンツの配信サーバによれば、版識別子が相違しても情報配信が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態を適用したコンテンツの配信システムを示すブロック図である。
【図2】図1の配信システムで用いられるプレイリストファイル、クリップインフォファイル及びストリームファイルを示すデータ構造図である。
【図3】図1の配信サーバに格納されたデータ量が異なる3つのストリームファイルを示すデータ構造図である。
【図4】図1に示す再生装置で実行されるデータ量の調整を説明するためのデータ構造図である。
【図5】図1に示す再生装置で実行されるIピクチャのデータ量の調整を説明するためのデータ構造図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係るブルーレイディスクの製法を示す工程図である。
【図7】図6に示す製法により製造したブルーレイディスクのレーベル面を示す正面図である。
【図8】図6に示す製法による製造時に用いられるスタンパの版識別子とブルーレイディスクの固有識別子との対応関係の一例を示すデータ関連図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
《ブルーレイディスクの製法》
最初にブルーレイディスクの製法を説明する。
図6に示すように、ブルーレイディスクの製法は、スタンプ原版作製前処理工程(以下単に前処理工程ともいう)と、スタンプ原版作製工程と、複製工程とを備える。
【0013】
まずブルーレイディスクに記録するコンテンツのファイルをディスクイメージにしてオーサリングを実施する。この状態のデータをタイプAと称する。前処理工程では、このタイプAのデータを、AACS(Advanced Access Content System)規格で定められた手法により生成したタイトルキーを用いて暗号化し、当該暗号化したコンテンツと、暗号化に使用したタイトルキーとをディスクイメージに生成する。この状態をタイプBと称する。
【0014】
次いで、タイプBのデータにAACSで規定された証明書(Certificate)とMBK(AACSで規定されたメディアキーブロック)及びSBK(AACSで規定されたシーケンスキーブロック)を追加処理する。この状態をタイプCと称する。タイプCのデータはスタンパ原版を再版する際に用いるために保管される。
【0015】
以上が前処理工程であり、続くスタンプ原版作製工程ではタイプCのデータをもとにプレスイメージを生成する。すなわち、スタンパの原版を作製するたびに版識別子(Volume ID)を生成し、この生成された版識別子を用いてタイプCのデータに含まれたタイトルキーを暗号化する。この状態をタイプDと称する。タイプDはスタンパ原版である。
【0016】
複製工程では、作製されたスタンパ原版を用いてプレス成形することで、コンテンツが記録された複数のブルーレイディスクBD−ROMを製造する。
【0017】
ところで、ブルーレイディスクのスタンパ原版は製造枚数が増えると劣化が生じるため、内容が同じスタンパ原版を再版する必要がある。また、ブルーレイディスクのプレス成形ラインが複数存在する場合も内容が同じスタンパ原版を複数作製する必要がある。しかしながら、図6に示すスタンパ原版作製工程では、作製されるスタンパ原版ごとに異なる版識別子が生成され、これを用いてタイトルキーを暗号化するため、コンテンツが同一でもブルーレイディスクに記録された版識別子が異なることになる。
【0018】
そこで、本例のブルーレイディスクBD−ROMには、図7に示すように記録面以外の部分、たとえばレーベル面の中央の孔の周囲に、プレス成形で使用したスタンパ原版の版識別子に対応した固有識別子IDを記録することとしている。この固有識別子IDは、そのブルーレイディスクBD−ROMのプレス成形に使用されたスタンパ原版の版識別子に対応した識別子であればよく、版識別子と同じ識別子であっても異なる識別子であってもよい。
【0019】
そして、スタンパ原版を作製するたびに、生成された版識別子と、ブルーレイディスクBD−ROMのプレス成形時に記録する固有識別子との対応データを記憶しておく。図8に、スタンパ原版の版識別子とブルーレイディスクの固有識別子との対応データの一例を示す。
【0020】
このように、本例のブルーレイディスクBD−ROMにはプレス成形の際に用いられたスタンパ原版の版識別子に対応した固有識別子が記録され、外部から視認可能とされているので、たとえば配布されたブルーレイディスクBD−ROMが読み取れなかったりするなど、何らかの不具合が生じた場合に、その原因がスタンパ原版にあるか否かといった生産履歴による原因究明が可能となる。
【0021】
また、スタンパ原版の版識別子に対応した固有識別子が視認可能とされているので、ブルーレイディスクBD−ROMを出荷する際に同じスタンパ原版によりプレス成形されたブルーレイディスクをまとめて保管したり配送したりすることができるので、製造品質の管理も容易になる。
【0022】
また、スタンパ原版の版識別子に対応した固有識別子を管理することで、以下のようなコンテンツの配信システムにおいて固有識別子が相違してもコンテンツの配信を可能とすることができる(換言すれば固有識別子の齟齬によるアクセス不能を防止することができる)。以下、配信システムの一例を説明する。
【0023】
《コンテンツの配信システムの一例》
図1に示す配信システムは、再生装置1と配信サーバ4とを備え、再生装置1は、BD−LIVE規格に対応した再生装置であって、インターネット5などの通信回線を介して配信サーバ4に接続し、映画やビデオカメラで撮影した動画などの所望のコンテンツをダウンロードしつつダウンロード中に再生を開始する、いわゆるプログレッシブダウンロード再生を行うものである。このプログレッシブダウンロード再生は、ブルーレイディスク(以下、BDと略す。)のフォーマットにおいて記録及び実行可能なJava(登録商標)プログラムなどのプログラムによって行われる。
【0024】
図1に示す再生装置1は、BDフォーマットの情報が再生可能な装置であって、BDの入力部、情報処理用CPU、表示装置B2への出力部を備える。同図に示す再生装置1は、当該装置の入力部にJava(登録商標)プログラムを記録したBDをセットして情報処理用CPUにプログラムの内容が展開された状態の機能ブロックを示す。なお、本発明のプログラムはBDに記録するほか配信サーバ4からダウンロードすることもできる。
【0025】
図1に示すように、再生装置1に本実施形態のプログラムが読み込まれると、入出力部11、復号部12、管理ファイル記憶部13、ストリームファイル記憶部14、容量調整部15、検出部16、選択部17および再生制御部18といった各種機能が展開される。
【0026】
入出力部11は、配信サーバ4に対して所定のコンテンツのダウンロード要求を出力するとともに、ダウンロードしたコンテンツを入力する。コンテンツのダウンロード要求は、たとえば配信サーバのダウンロード画面に「ダウンロード」と「プログレッシブダウンロード再生」の選択肢が用意され、「ダウンロード」をクリックすると通常のダウンロードが実行されて再生装置1の図示しないメモリに記録される一方で、「プログレッシブダウンロード再生」をクリックするとプログレッシブダウンロード再生が実行される。通常のダウンロードについては説明を省略し、以下においてはプログレッシブダウンロード再生について説明する。
【0027】
ここで、図2を参照して本実施形態にて取り扱われるコンテンツのデータ構造を説明すると、一つのコンテンツ(たとえば一つの映画)は、プレイリストファイルと、クリップインフォファイルと、ストリームファイルとからなる。プレイリストファイルは、ストリーム再生を行うための情報を保持するファイルであり、複数のプレイアイテム1,2,…nを有するが、一つのコンテンツに対して一つのファイルで構成されている。
【0028】
クリップインフォファイルは、プレイリストファイルのプレイアイテムのそれぞれに対応して複数のクリップインフォファイル1,2,…nが存在し、ストリームファイルのサイズや再生時間等の情報を保持するファイルである。
ストリームファイルは、たとえば動画圧縮規格H.264/MPEG−4 AVC形式で保存された動画ファイルであるm2tsなどの再生用AVストリームファイルであり、上述したプレイアイテムおよびクリップインフォファイル毎に一つのファイルが存在する。したがって、ストリームファイルもクリップインフォファイルと同じ数だけ存在する。これらプレイリストに対応した一つのクリップインフォファイルと一つのストリームファイルが存在することにより再生が可能となる。
【0029】
図1に戻り、復号部12は、配信サーバ4にて暗号化されたクリップインフォファイルを複合化するものである。すなわち、コンテンツの容量が大きい場合は、一つのプレイリストファイルに対するクリップインフォファイルも多数存在することになるが、このクリップインフォファイルのダウンロード時間を短縮するために、配信サーバ4側でクリップインフォファイルを一定のアルゴリズムを用いて暗号化(圧縮)する。復号部12は、この圧縮されたクリップインフォファイルを所定のアルゴリズムを用いて復号化(解凍)する。
【0030】
ただし、クリップインフォファイルの送信時間が所定時間未満であるように、クリップインフォファイルのデータ量が所定量未満の場合は、配信サーバB4にてファイルの暗号化はせず、その場合は復号部12による複合化処理も行わない。
【0031】
管理ファイル記憶部13は、バッファメモリであり、配信サーバ4からダウンロードしたプレイリストファイルとクリップインフォファイルを一時的に記憶し、コンテンツの再生処理が終了したら消去する。ただし、消去しないでそのまま保持することもでき、保持した場合は、同じコンテンツを再度視聴する場合に保持したプレイリストファイルとクリップインフォファイルを用いることができるのでダウンロード時間を短縮することができる。
【0032】
ストリームファイル記憶部14も、バッファメモリであり、配信サーバ4からダウンロードしたストリームファイルを一時的に記憶し、コンテンツの再生処理が終了したら消去する。すなわち、本実施形態のストリームファイルは複数に分割され、各ストリームファイルが順次ダウンロードされるが、図2に示すようにダウンロードされたストリームファイルは、ストリームファイル記憶部(バッファメモリ)に順次保存され、再生を終了したら消去される。
【0033】
検出部16は、配信サーバ4と再生装置1との間のインターネット5による通信速度を検出する。この検出は、最初のストリームファイル(データ量は既知)をダウンロードしたときの通信速度を検出してもよいし、直前にダウンロードしたストリームファイルの通信速度を検出してもよい。また、データ量が既知の速度検出用ファイルを配信サーバ4から再生装置1へ送り、このときの通信速度を検出することもできる。
【0034】
選択部17は、検出部16にて検出された現在の通信速度に基づいて、配信サーバ4に格納された、データ量が異なる複数のストリームファイルの中から、適切なデータ量のストリームファイルを選択する。すなわち、本実施形態の配信サーバ4には、図3に示すように、ひとつのストリームファイルに対して3種類のデータ量が異なるストリームファイルが用意されている。図3に示す例では、最もデータ量が大きいHi bit rate ストリームファイル(通信速度は10Mbps)と、最もデータ量が小さいLow bit rateストリームファイル(通信速度は2Mbps)と、その中間のMiddle bit rateストリームファイル(通信速度は5Mbps)という3種類の、内容が同じでデータ量が異なるストリームファイルが、配信サーバ4のコンテンツ記憶部43に格納されている。このデータ量が異なるストリームファイルは、ストリームファイル1,2,…nごとに用意されている。なお、データ量の大小はフレームレートfps、圧縮比、解像度などを変更することにより調整することができる。
【0035】
そして、検出部16で検出された現在の通信速度が遅い場合に、Hi bit rateストリームファイルをダウンロードするとダウンロードに長時間を要するため、前のストリームファイルの再生が終了しているにも拘らず次のストリームファイルのダウンロードが終了せず、画像再生の中断が生じる。
【0036】
このため、本実施形態では、検出部16で検出された通信速度を予め3段階に分類し、第1の所定値以上の高速の場合はHi bit rateストリームファイルを選択し、第1の所定値より小さい第2の所定値以下の低速の場合はLow bit rateストリームファイルを選択し、第1及び第2の所定値の間である場合はMiddle bit rateストリームファイルを、選択部17により選択する。これにより、通信速度が遅い場合でも、前のストリームファイルの再生が終了する前に次のストリームファイルのダウンロードが終了することになる。逆に、通信速度が速い場合には、高画質のストリームファイルを再生することができる。
【0037】
容量調整部15は、選択部17により選択されてダウンロードされたストリームファイルのデータ量を、対応するクリップインフォファイルに規定されたデータ量に調整するものである。
【0038】
クリップインフォファイルは、対応するストリームファイルのデータ量を保持し、再生時にプレイリストファイルとともにこれらの情報を用いて再生処理を実行するが、クリップインフォファイルに規定されたデータ量とストリームファイルの実際のデータ量が異なると再生処理を実行することができない。
【0039】
特に本実施形態の場合は、プレイリストファイルとクリップインフォファイルはダウンロードの当初に管理ファイル記憶部13にダウンロードされ、これに対し、ストリームファイルは通信速度に応じて3種類のデータ量の中から一つのストリームファイルが選択される。したがって、クリップインフォファイルにあらかじめ規定されたストリームファイルのデータ量と、実際にダウンロードされたストリームファイルのデータ量が異なる場合がある。
【0040】
本例ではクリップインフォファイルにHi bit rateストリームファイルのデータ量を規定するので、Middle bit rateやLow bit rateのストリームファイルをダウンロードした場合はクリップインフォファイルに規定されたデータ量と異なる。
【0041】
そこで、選択部17にてMiddle bit rateやLow bit rateのストリームファイルを選択し、これをダウンロードした場合は、このストリームファイルのデータ量を、クリップインフォファイルに規定されたHi bit rateのストリームファイルのデータ量に調整するために、パディングデータ(Padding data)を付加する。具体的には、図4に示すようにNull Packと称される空データをHi bit rateストリームファイルとのデータ量の差だけMiddle bit rateやLow bit rateのストリームファイルに付加する。Null Packはデータ量を調整するためのデータであって、再生処理の際、再生制御部18はNull Packを無視する。
【0042】
再生制御部18は、容量調整部15で調整されたストリームファイル(Hi bit rateストリームファイルに対してはパディングデータを付加しない調整をする)を、プレイリストファイル及びクリップインフォファイルに基づいて再生処理を実行し、表示装置2に出力する。これにより、表示装置2にダウンロードしたコンテンツがプログレッシブダウンロード再生されることになる。
【0043】
配信サーバ4は、ビデオカメラなどの撮像装置3からのライブ映像や再生装置1からの要求信号を入力するとともに、コンテンツ記憶部43に格納されたコンテンツを出力する入出力部41と、撮像装置3から入力したライブ映像をBD−LIVE規格のデジタルデータを生成するコンテンツ生成部42と、このコンテンツ生成部42で生成したコンテンツを格納するコンテンツ記憶部43とを備える。
【0044】
また配信サーバ4は、外部装置である識別子出力部6から上述したBDのプレス成形時に使用されたスタンパ原版の版識別子に対応した識別子を入力して記憶する識別子記憶部44を備える。識別子出力部6から出力され識別子記憶部44に記憶される識別子は、当該配信サーバ4に対するアクセスが許可される識別子が設定されている。ここで、アクセスが許可される識別子には、図6に示すタイプCのデータを再版した際に、タイトルキーが同じであるが版識別子が異なるものが含まれる。すなわち、図8に示す例でいえば、コンテンツとタイトルキーが同じであるが異なる版識別子00066First,00066Second,00066Thirdを用いてタイトルキーを暗号化したタイプDのDB識別子00066A,00066B,00066Cについてはアクセスが許可される識別子として識別子記憶部44に設定されている。
【0045】
上述した識別子記憶部44は、配信サーバ4に対するアクセスが許可されるBDの版識別子に対応した識別子が設定されるが、これに代えて再生装置1の装置固有識別子(Device Binding ID)又はこれに対応した識別子を設定してもよい。この場合は、BDに記録されたJava(登録商標)プログラム又は配信サーバ4からダウンロードされたJava(登録商標)プログラムによって再生装置1の装置固有識別子(Device Binding ID)を読み出すことができる。こうすることで、BDによるユーザの識別以外にも再生装置1によるユーザの識別が可能となり、さらにBDの識別子と組み合わせれば同じBDを使用しても再生装置1が異なれば異なるユーザとして識別することができる。
【0046】
コンテンツ記憶部43は、既述したとおりひとつのストリームファイルに対して、最もデータ量が大きいHi bit rate ストリームファイル(通信速度は10Mbps)と、最もデータ量が小さいLow bit rateストリームファイル(通信速度は2Mbps)と、その中間のMiddle bit rateストリームファイル(通信速度は5Mbps)という3種類の、内容が同じでデータ量が異なるストリームファイルが格納されている。
【0047】
また、コンテンツ生成部42は、複数のクリップインフォファイルの送信時間が所定時間以上であるように、複数のクリップインフォファイルのデータ量が所定量以上の場合は、複数のクリップインフォファイルを一定のアルゴリズムを用いて暗号化(圧縮)する。
【0048】
また、コンテンツ生成部42は、再生装置1から早送りまたは早戻しの要求信号が入力されたら、生成したコンテンツのストリームファイルに含まれるIピクチャのみを抽出し、これをコンテンツ記憶部43に格納したのち入出力部41を介して再生装置1へ送出する。
【0049】
ストリームファイルは、図5に示すように、他のピクチャと切り離して画像生成の復号化処理が可能なIピクチャ(Intra Picture)と、過去、未来両方のフレームから予測したデータとの差分を符号化したBピクチャと、過去のフレームから予測したデータとの差分をエンコードしたPピクチャとで構成されているが、早送りまたは早戻しする際は画像生成が可能なIピクチャのみを再生装置1へ送出し、これを受けた再生装置1は、容量調整部15においてIピクチャと次のIピクチャとの間に、本来存在したBピクチャとPピクチャのデータ量に相当するデータ量のパディングデータを付加する。これにより、早送りまたは早戻し操作をクリップインフォファイルに基づいて実行することができる。
【0050】
以上のように、たとえば配信サーバ4のコンテンツ記憶部43に格納された映画などのコンテンツをプログレッシブダウンロード再生する場合は、再生装置1からプログレッシブダウンロード再生の要求を配信サーバ4に送出する。このときBDに記録された固有識別子が同時に配信サーバ4に読み込まれる。またこれに代えて、装置固有識別子(Device Binding ID)を用いてユーザを特定する場合は、当該再生装置1の装置固有識別子が配信サーバ4に読み込まれる。
【0051】
これを受けた配信サーバ4は、識別子記憶部44に設定された識別子とBD(又は再生装置1)から読み出された識別子(又は装置固有識別子)とを比較し、アクセスが許可された識別子である場合は、コンテンツ記憶部43に格納されたコンテンツのうち、プレイリストファイルと複数のクリップインフォファイルを、インターネット5を介して再生装置1の入出力部11に出力し、再生装置1は管理ファイル記憶部13に格納する。本例では異なる版識別子により暗号化したタイトルキーが記録されたBDであっても、アクセスを許可するBDとして識別子記憶部44に設定されているので、再版されたスタンパによって作成されたBDによるアクセスは許可される。なお、BDから読みだされた識別子が識別子記憶部44に設定された識別子とは異なる場合はアクセスを拒否し、その旨を再生装置1に出力する。
【0052】
このとき、クリップインフォファイルのデータ量が大きい場合は、配信サーバ4側で複数のクリップインフォファイルを圧縮処理して送信し、再生装置1の復号部12で解凍したのち管理ファイル記憶部13に格納する。
【0053】
プレイリストファイルとクリップインフォファイルをダウンロードしたら、次に複数のストリームファイルを順次ダウンロードする。最初のストリームファイルはHi bit rateストリームファイルをダウンロードし、検出部16はこのストリームファイルのダウンロード時間を検出することにより通信速度を検出する。次のストリームファイルは、今検出した通信速度に基づいて3種類のストリームファイルの中から適切なサイズのファイルを選択部17で選択する。例えば、通信速度が遅い場合はサイズが小さいLow bit rateのストリームファイルを選択し、通信速度が速い場合はサイズが大きいHi bit rateのストリームファイルを選択する。このダウンロード処理を最後のストリームファイルまで繰り返す。
【0054】
選択部17で選択したストリームファイルがHi bit rateのストリームファイル以外のファイルサイズである場合は、図4に示すように容量調整部15にてパディングデータを付加し、データ量をHi bit rateのストリームファイルのファイルサイズと等しくする。
【0055】
このように容量調整されたストリームファイルを用いると、管理ファイル記憶部13に格納されたプレイリストファイルとクリップインフォファイルに基づいてストリームファイルを再生することができる。また、選択部17にて通信速度に応じた適切なファイルサイズのストリームファイルを選択してダウンロードするので、再生中に画像再生が中断することが防止される。
【0056】
なお、図1に示す撮像装置3により、たとえば運動会などのイベント会場で撮影したライブ映像を、インターネット5を介して配信サーバ4へ送信し、配信サーバ4ではこのライブ映像に基づいてコンテンツを生成する一方で、イベント会場から離れた場所にある再生装置1を配信サーバ4に接続すれば、運動会などのライブ映像を離れた場所でリアルタイムに観賞することができる。
【0057】
また、コンテンツが同一でスタンパ原版が相違しても配信サーバ4へのアクセスが可能となるので、多数のスタンパ原版を用いて同一のコンテンツを記録したブルーレイディスクを製造し配布することができる。
【符号の説明】
【0058】
1…再生装置
11…入出力部
12…復号部
13…管理ファイル記憶部
14…ストリームファイル記憶部
15…容量調整部
16…検出部
17…選択部
18…再生制御部
2…表示装置
3…撮像装置
4…配信サーバ
41…データ入出力部
42…コンテンツ生成部
43…コンテンツ記憶部
44…識別子記憶部
5…インターネット
6…識別子出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス成形のスタンパの版識別子に対応した固有識別子が記録面以外の部分に記録されていることを特徴とするブルーレイディスク。
【請求項2】
請求項1に記載のブルーレイディスクにおいて、
前記スタンパの作製時に付与される前記版識別子を記憶し、当該スタンパを用いて前記ブルーレイディスクをプレス成形する際に前記記憶した前記版識別子を読み出して前記ブルーレイディスクの記録面以外の部分に記録することを特徴とするブルーレイディスク。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のブルーレイディスクと、
前記ブルーレイディスクの記録面以外の部分に記録した固有識別子と、当該ブルーレイディスクをプレス成形した際のスタンパの版識別子との対応データを記憶する記憶手段と、を備えることを特徴とするブルーレイディスクの識別システム。
【請求項4】
一又は複数のネットワーク接続機能を有するプログラムが格納されたブルーレイディスク媒体と、
前記ブルーレイディスク媒体の前記プログラムを起動し、前記ネットワークを介して前記プログラムにより指定されたサーバに接続するとともに、装置固有識別子が記憶された再生装置と、
前記再生装置の前記装置固有識別子を読み出し、前記装置固有識別子が予め設定された固有識別子と合致する場合は所定のコンテンツを前記再生装置へ出力するサーバと、を備えたことを特徴とするコンテンツの配信システム。
【請求項5】
管理ファイルおよびデータ量が異なる複数のストリームファイルを有するコンテンツが格納されるとともに、一又は複数のネットワーク接続機能を有するプログラムおよび媒体の固有識別子が格納されたブルーレイディスクをプレス成形した際のスタンパの版識別子に対応したブルーレイディスクの固有識別子と、前記スタンパの再版スタンパの版識別子に対応したブルーレイディスクの固有識別子とを関連付けて設定する配信サーバと、
前記ブルーレイディスクの前記プログラムを起動し、通信回線を介して前記プログラムにより指定されたサーバに接続して前記コンテンツをダウンロードし、当該ダウンロード中にコンテンツの再生を開始する再生装置と、を備えたコンテンツの配信システムであって、
前記再生装置は、
前記管理ファイルをダウンロードして一時的に記憶する管理ファイル記憶部と、
前記通信回線による通信速度を検出する検出部と、
前記配信サーバに格納された、前記データ量が異なる複数のストリームファイルの中から、前記検出部で検出された通信速度に応じたデータ量のストリームファイルを選択する選択部と、
前記選択部により選択されたストリームファイルをダウンロードして一時的に記憶するストリームファイル記憶部と、
前記ストリームファイル記憶部に記憶されたストリームファイルのデータ量が前記管理ファイルで規定されたデータ量と異なる場合に、当該ストリームファイルのデータ量を、前記管理ファイルで規定されたデータ量に一致させるようにパディングデータを付加する容量調整部と、
前記容量調整部により調整されたストリームファイルを再生処理する再生制御部と、を備え、
前記配信サーバは、前記ブルーレイディスクの固有識別子を読み出すプログラムを有し、当該ブルーレイディスクの固有識別子が前記配信サーバに設定された固有識別子と合致する場合は前記コンテンツを前記再生装置へ出力するとともに、前記再生装置が前記配信サーバに対して再生の早送り又は早戻しの要求を出力した場合に、当該早送り又は早戻しの要求に対して前記ストリームファイルに含まれるIピクチャのみを抽出して出力し、
前記再生装置は、ダウンロードされた複数のIピクチャを一時的に記憶するとともに、前記記憶された複数のIピクチャのデータ量が本来のストリームファイルのデータ量と一致するようにパディングデータを付加し、前記管理ファイルに含まれるクリップインフォファイルに基づいて前記Iピクチャを再生することを特徴とするコンテンツの配信システム。
【請求項6】
管理ファイルおよびデータ量が異なる複数のストリームファイルを有するコンテンツが格納された配信サーバと、
通信回線を介して前記コンテンツをダウンロードし、当該ダウンロード中にコンテンツの再生を開始する再生装置と、を備えたコンテンツの配信システムであって、
前記再生装置は、
前記管理ファイルをダウンロードして一時的に記憶する管理ファイル記憶部と、
前記通信回線による通信速度を検出する検出部と、
前記配信サーバに格納された、前記データ量が異なる複数のストリームファイルの中から、前記検出部で検出された通信速度に応じたデータ量のストリームファイルを選択する選択部と、
前記選択部により選択されたストリームファイルをダウンロードして一時的に記憶するストリームファイル記憶部と、
前記ストリームファイル記憶部に記憶されたストリームファイルのデータ量が前記管理ファイルで規定されたデータ量と異なる場合に、当該ストリームファイルのデータ量を、前記管理ファイルで規定されたデータ量に一致させるようにパディングデータを付加する容量調整部と、
前記容量調整部により調整されたストリームファイルを再生処理する再生制御部と、を備え、
前記配信サーバは、前記再生装置の固有識別子を読み出すプログラムを有し、当該再生装置の固有識別子が前記配信サーバに設定された固有識別子と合致する場合は前記コンテンツを前記再生装置へ出力するとともに、前記再生装置が前記配信サーバに対して再生の早送り又は早戻しの要求を出力した場合に、当該早送り又は早戻しの要求に対して前記ストリームファイルに含まれるIピクチャのみを抽出して出力し、
前記再生装置は、ダウンロードされた複数のIピクチャを一時的に記憶するとともに、前記記憶された複数のIピクチャのデータ量が本来のストリームファイルのデータ量と一致するようにパディングデータを付加し、前記管理ファイルに含まれるクリップインフォファイルに基づいて前記Iピクチャを再生することを特徴とするコンテンツの配信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−165275(P2011−165275A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27815(P2010−27815)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(501064343)株式会社プランネット・アソシエイツ (8)
【Fターム(参考)】