説明

ブルー相液晶及びその製造方法

【課題】本発明は、均一性を高くし、駆動電圧を下げ、ヒステリシス効果を除去することにより、表示領域に利用することが可能なブルー相液晶及びその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】液晶混合物の温度をブルー相と等向相の共存温度範囲内に制御する温度制御ステップS01と、前記液晶混合物の温度を下げて、ブルー相操作温度まで到達させ、この場合の前記ブルー相操作温度は、ブルー相とさらに温度の低い相の相転移温度よりも高い温度である降温ステップS02と、前記温度制御ステップと前記降温ステップを繰り返す重複ステップS03とを備えるブルー相液晶の製造方法によって解決した。特定結晶格子面の液晶を備え、単位面積内において、前記特定結晶格子面の液晶が占める面積の割合が、20%から95%の間であるブルー相液晶によって解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶及びその製造方法に関し、特に、ブルー相液晶及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブルー相液晶(Blue phase liquid crystal, BPLC)は、自己集結した三次元フォトニック結晶構造であり、等向相(Isotropic phase)とコレステリック相(Cholesteric phase)の間に出現するが、その他の構造の液晶混合物との組成例中に出現することもある。例えば、スメクチック(smectic)液晶または屈曲型液晶(bend-shape、またはバナナ型液晶banana-shapeとも言う)である。ブルー相液晶は、自己組成の3D格子の特性を有する一方で、流体特性をも有する。さらに、格子パラメーターが変更しやすく、異なる光電特性を有することが可能であり、極めて良好な可調式のフォトニック結晶である。
【0003】
しかしながら、不均一なブルー相液晶は、ブラッグ反射により結晶格子面(ミラー指数(Miller index, (h, k, l))に影響を受けて、platelet構造を形成するため、表示領域として利用することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明は、ブルー相液晶の均一性を高くして、駆動電圧を下げ、ヒステリシス効果を除去して表示領域に応用することが可能なブルー相液晶及びその製造方法を提供することを課題とする。
【0005】
すなわち、ブルー相液晶(Blue phase liquid crystal, BPLC)は、降温結晶生成の過程において、温度の段階変化及び境界条件(boundary condition)が異なることで、全体の均一性(uniformity)も異なる。ここで、均一性とは、ブルー相液晶の結晶のサイズと結晶の配向(orientation、つまり結晶面を指す)が均一であることを指す。また、異なる結晶配向のブルー相液晶は、電場における電光特性も異なり、且つ、ヒステリシス(hysteresis)も有する。さらに、ブルー相液晶は、表示技術の応用面から言えば、操作電圧が高すぎることも大きな問題である。したがって、これらの問題解決が本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るブルー相液晶の製造方法は、液晶混合物の温度をブルー相と等向相の共存温度範囲内に制御する温度制御ステップと、液晶混合物の温度を下げて、ブルー相操作温度まで到達させ、この場合の前記ブルー相操作温度は、ブルー相とさらに温度の低い相の相転移温度よりも高い温度である降温ステップと、温度制御ステップと降温ステップを繰り返す重複ステップとを備えることを特徴とするものである。
【0007】
本発明において、前記液晶混合物は、液晶、モノマー及び光重合開始剤を含むものである。
【0008】
さらに、本発明において、前記降温ステップ中の温度下降速度は、0℃/分〜5℃/分の間の範囲であるが、0℃/分は含まないことを特徴とする。
【0009】
本発明のブルー相液晶の製造方法は、さらに、前記液晶混合物を前記共存温度範囲内まで加熱する、最初の加熱ステップを備えることを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明は、前記重複ステップの後に、さらに、液晶混合物を重合させる重合ステップを備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のブルー相液晶の製造方法は、液晶混合物の温度をブルー相の温度にコントロールする温度制御ステップと、液晶混合物に対して、電場を印加する電場印加ステップと、液晶混合物に対して、電場を減少させる電場減少ステップと、電場印加ステップと電場減少ステップを繰り返す重複ステップとを備えることを特徴とするものである。
【0012】
本発明において、前記電場減少ステップは、前記電場を完全に除去する場合を含むことを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明において、前記電場印加ステップは、第一電場を印加し、電場減少ステップは、第二電場まで電場を減少し、第二電場の強度は第一電場の強度より小さいことを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明は、前記電場印加ステップにおいて、液晶混合物に対して印加される電場の偏圧は、ブルー相液晶中の二重螺旋柱が破壊されて(deconstruction)コレステリック相となる電圧の2倍より小さいが、0倍ではないことを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明において、前記温度制御ステップは、液晶混合物の温度をブルー相と等向相の共存温度範囲内にコントロールすることを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明において、前記液晶混合物は、液晶、モノマー及び光重合開始剤を含むことを特徴とする。
【0017】
さらに、本発明において、前記電場、第一電場または第二電場は、上部基板と下部基板によって形成され、液晶混合物は上部基板と下部基板の間に充填されることを特徴とする。
【0018】
さらに、本発明において、前記重複ステップの後に、さらに、液晶混合物を重合させる重合ステップを備えることを特徴とする。
【0019】
さらにまた、本発明は、前記課題を解決するためのブルー相液晶についても開示する。
すなわち、本発明のブルー相液晶は、特定結晶格子面の液晶を備え、単位面積内において、特定結晶格子面の液晶が占める面積の割合が20%から95%の間であることを特徴とする。
【0020】
本発明のにおいて、前記特定結晶格子面は、(1 1 0)、または(1 0 0)であるが、その他の実施例において、体心立方格子構造(Body-Centered Cubic Crystal Structure,BCC)または面心立方格子構造(Face-Centered Cubic Crystal Structure,FCC)により生成する格子面であればよく、ここでは(1 1 0)、または(1 0 0)の格子面を例として挙げたに過ぎない。
【0021】
また、本発明のブルー相液晶は、特定バンドの光線を反射し、単位面積内において、前記特定バンドの光線を反射する部分が占める面積の割合は、全体の20%から95%の範囲であることを特徴とする。
【0022】
本発明のブルー相液晶において、単位面積内の結晶のサイズは10μmより大きく、且つ、占める面積の割合は、20%から95%の範囲であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
このように、本発明は、二種類の外的要素(温度または電圧)を利用して、ブルー相液晶の結晶を破壊し、さらに、最低のフリーエネルギー条件に適合させるために、新たに結晶を成長させて、その均一性を改善するようにしたものである。
本発明における第一種の方法は、温度の上昇と下降の過程をコントロールすることによって、ブルー相液晶の均一性を改善する。それは主に、ブルー相(BP)と等向相(Isotropic)の共存温度に達した時、異なる結晶配向が異なる相転移(BP→Isotropic)速度を有することを利用して、これらの相転移領域が、再びブルー相操作温度まで下降した時、新たに結晶成長が行われるか、または、結晶が拡張される領域となり、最後に、このシステムに適合するブルー相液晶結晶配向がほぼ空間全体に埋め尽くされる。したがって、この発明は、温度操作によってブルー相液晶結晶の破壊と構築が行なわれることを利用して、その均一性を改善するものである。この方法を利用して、温度の昇降を10回循環させると、結晶のサイズを元の4〜5倍に拡大することができる。もし、0.1℃/minの温度下降速度によって循環を行えば、結晶のサイズは、例えば、60μmにまで達することができ、同様に、結晶配向の面積は、例えば、90%以上に達する。
本発明における第二種の方法は、電場を利用して、ブルー相液晶の結晶配向に対する選択を行うものである。電場作用を有する条件下では、特定の結晶配向のみが回転動力トルクを有さない。その他の結晶配向は、トルクの影響によりトルクを有さない面に移動する。しかしながら、多数の結晶が存在する場合、結晶は回転できないため、回転動力トルクはブルー相液晶結晶を破壊する。電圧を放つか、もしくは電圧を減少させるかした後、トルクを有さない(またはトルクに破壊されない)結晶配向が生成される。本発明は、ブルー相液晶の均一性を改善するだけに留まらず、さらに、均一性を改善することで、ヒステリシス効果を除去して駆動電圧を下げるという効果を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例1におけるブルー相液晶の製造方法のステップを示した図である。
【図2】本発明の実施例2におけるブルー相液晶の製造方法のステップを示した図である。
【図3】本発明の実施例2における電場印加のステップを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施例におけるブルー相液晶及びその製造方法について説明する。
【実施例1】
【0026】
図1は、本発明の実施例1におけるブルー相液晶の製造方法のステップを示した図である。この場合、本発明の製造方法は、ステップS01〜S03を備える。
【0027】
本発明の製造方法は、まず、ステップS01を備える。ステップS01は、温度制御ステップである。液晶混合物の温度をブルー相(blue phase)と等向相(isotropic phase)の共存温度範囲内になるようコントロールする。ここで、液晶混合物は、少なくとも一つの液晶の種類を含み、且つ、液晶はキラリティー(chirality)を有するか、もしくは、キラリティーを有さない。前記液晶が、キラリティーが低いか、キラリティーを有さない種類のものである場合、液晶混合物はさらにキラル物質(chiral dopant)を含ませることで、液晶にキラリティーを持たせるか、または、そのキラリティーを強化させる。また、液晶混合物は、さらに、モノマー(monomer)と光重合開始剤(photo initiator)を含み、光重合開始剤の作用によりモノマーに照光時に光重合反応を起こさせる。このように、その後に行われる光照射はモノマーを重合させることにより、液晶混合物中のモノマーにポリマーを形成させて、液晶の構造を安定させて、高分子安定化ブルー相液晶(Polymer-stabilized blue phase liquid crystal, PSBP-LC)にする。液晶混合物は、透光容器内、または、非透光容器内に置かれる。ここでは、特に容器の材質は制限されず、例えば、それはガラスである。その後、温度を上げるか、温度を下げるかして、液晶混合物の温度をブルー相と等向相の共存温度範囲内にコントロールする。ここで、共存温度範囲内には、ブルー相と等向相が同時に存在する。本実施例1において、ブルー相と等向相の共存温度は、例えば、45.6℃である。さらにまた、ブルー相液晶の製造方法は、初めの加熱ステップを備え、それは、液晶混合物を環境温度(例えば、室温である。)によって共存温度範囲内にまで加熱するステップである。
【0028】
次に、製造方法はステップS02を備える。ステップS02は、温度下降ステップであり、液晶混合物の温度を下げて、ブルー相操作温度にまで到達させる。ブルー相操作温度は、上述の共存温度より低く、且つ、ブルー相とブルー相よりさらに低温の相の相転移温度より高い。例えば、ブルー相とコレステリック相(Cholesteric)の相転移温度より高いか、または、ブルー相とセマチック相(Sematic)の相転移温度より高い。本実施例1において、液晶混合物の温度は、例えば、44.5℃まで下げられ、温度下降速度は0℃/分〜5℃/分の範囲であるが、0℃/分ではない。
【0029】
さらに、製造方法はステップS03を備える。ステップS03は、重複ステップであり、温度制御ステップ(S01)と温度下降ステップ(S02)を繰り返すものである。本実施例1では、温度制御のステップと温度下降のステップをそれぞれ少なくとも1度行う。以下、本実施例1におけるブルー相液晶の製造方法の原理について説明する。
【0030】
温度を下降させる操作が続く状況において、容器基板の表面のフリーエネルギーの影響により、このシステム中で結晶が成長するのに最適な結晶配向を選び出す。ここで、仮に赤色結晶格子面(すなわち赤い光を反射、例えば(1 0 0))と青色結晶格子面(すなわち青い光を反射、例えば(1 1 0))はいずれもこのシステム中で結晶が成長する。青色結晶格子面は、基板のフリーエネルギーに適合しやすいため、結晶成長の速度は、赤色結晶格子面の結晶よりかなり速い。結晶の成長が最も完全になった(例えば、結晶がこれ以上大きくならない状態)のを待って、加熱して温度を高温に移行させる。ブルー相と等向相の共存温度範囲内まで温度が上昇した時、青色結晶格子面が最もシステム全体のフリーエネルギー条件に適合することで、高温下において完全な結晶が保留できる。赤色結晶格子面は、高温の影響により大きく相の変化を見せる。したがって、この原理を利用して、このシステムのフリーエネルギーの下で結晶が成長するのに最も適した結晶の配向が選び出される(仮に(1 1 0)面とする)。次に、再び、温度下降ステップを行う。このとき、(1 1 0)面に残された結晶構造が完全なことにより、且つ、基板表面のフリーエネルギーに最も適合するため、結晶成長速度も速い。故に、(1 1 0)面が占める面積は、(1 0 0)面より大きい。また、結晶成長の空間全体に限りがあるため、青色結晶格子面の結晶は、最後には赤色結晶格子面の結晶成長を抑制する。このため、本実施例1のサーマルリサイクル(thermal recycling)によって、ブルー相液晶が特定の結晶格子面の結晶から組成されるのをコントロールすることができる。
【0031】
ブルー相液晶がモノマーを含む場合、製造方法は、さらに、重合のステップを含み、前記モノマーを重合させて高分子を形成させる。ここでは、光の照射を利用して重合反応を達成する。その他の実施例において、材料によっては、加熱によって重合反応を達成する。形成された高分子は、ブルー相液晶構造の安定に有利に働く。
【0032】
本発明における温度昇降操作の反復、循環の回数を多くすれば、ブルー相液晶の均一性が高くなり、且つ、結晶のサイズも大きくなる。例えば、温度下降速度を1℃/分とし、1回だけ循環を行った場合、青色結晶格子面は、単位面積において占める面積の割合は20%であるが、循環を10回まで増やした場合、青色結晶格子面が占める面積の割合は39%に達する。もし、温度下降速度が0.5℃/分で、10回循環させた場合、青色結晶格子面の単位面積に占める面積の割合は68%にまで及ぶ。本発明により、温度下降速度が同一の条件下において、温度昇降循環の回数が多いほど優れた均一性が得られることが証明できる。すなわち、例えば、青色結晶格子面のような単一結晶格子面が占める面積が大きくなるということである。さらに、同一回数の循環で言えば、温度下降速度が小さいほど、その均一性に優れる。
【0033】
また、本発明の検証結果により、以下のことが明らかになった。すなわち、同一の温度下降速度の条件下において、循環回数が多いほど、特定結晶格子面の結晶サイズが大きい。さらに、同一の循環回数の条件下において、温度下降速度が小さいほど、結晶のサイズが大きい。例えば、温度下降速度が1℃/分で1回のみの循環の場合、ブルー相液晶の結晶のサイズは6μmであるが、10回循環を経た場合、ブルー相液晶の結晶のサイズは20μmに増加する。仮に、温度下降速度が0.5℃/分で、10回循環させた場合、ブルー相液晶の結晶サイズは30μmまで増加する。もし、温度下降速度が0.1℃/分なら、ブルー相液晶の結晶サイズは62μmまで増加する。
【実施例2】
【0034】
図2は、本発明の実施例2におけるブルー相液晶の製造方法のステップを示した図であり、この場合、ステップS11〜S14を備える。
【0035】
この製造方法は、まず、ステップS11を備える。ステップS11は、温度制御ステップであり、液晶混合物の温度をブルー相の温度にコントロールする。液晶混合物についてはすでに前記実施例1で詳述されているため、ここでは再述しない。また、本実施例では、液晶混合物の温度をブルー相と等向相の共存温度範囲内にコントロールすることで、液晶混合物の流動性を増加させて結晶成長の効率を高めるようにする。
【0036】
次に、本実施例2の製造方法はステップS12を備える。ステップS12は、電場印加ステップであり、液晶混合物に対して電場を印加する。図3は、電場印加ステップを示した図である。この場合、液晶混合物101は、容器中に置かれ、前記容器は、上部基板102及び下部基板103を有する。上部基板102上には電極層が設置され、下部基板103上にも、電極層が設置される。前記電極層は、電圧信号を受信して前記電場を形成する。電場に印加される偏圧はブルー相液晶中の二重螺旋柱が破壊(deconstruction)されてコレステリック相となる電圧であり、この電圧はサンプル材料とサンプル電極の設計に応じて異なる。全面破壊電圧がVdであると定義すれば、印加される偏圧はVdの2倍より低い電圧である。本実施例2において、液晶混合物に印加される電場の偏圧は13Vである。
【0037】
さらに、本実施例2の製造方法はステップS13を備える。ステップS13は、電場減少ステップであり、液晶混合物101に対する前記電場を減少させる。ここでは、電場減少ステップにおいて前記電場を完全に除去する。
【0038】
さらに、本実施例2の製造方法はステップS14を備える。ステップS14は、重複ステップであり、電場印加ステップ(S12)と電場減少ステップ(S13)を繰り返す。本実施例2では、電場印加ステップと電場減少ステップを少なくとも一回繰り返す。以下、本実施例2におけるブルー相液晶製造方法の原理について説明する。
【0039】
液晶混合物に対して電場を印加する際、ブルー相液晶は回転動力トルクを発生させる。そのトルクの大きさはτ=P×Eによって表される。ここで、τは回転動力トルク、Pは分極ベクトル、Eは外部電場である。異なる結晶配向は、異なる分極ベクトルPを発生させて、異なる配向と大きさのトルクを発生させる。これらのトルクは、結晶をトルクを有さない配向に回転させる傾向がある。しかしながら、多数の結晶が存在する環境での電場印加は、いずれの結晶も周囲のその他の結晶に固定されてしまうため、電場によってトルクの回転が行われず、最後に結晶がトルクの圧力に耐え切れずに構造が破壊される。ブルー相液晶中の二重螺旋柱が破壊(deconstruction)されて一重螺旋のコレステリックとなり、電場によって引き起こされる相転移(electric-field induce phase transition)と呼ばれる現象が発生する。外部電場が除去されると、相転移によってコレステリックに変化した領域の周囲が、トルクによって破壊されないブルー相液晶に包囲されるため、前記領域が最低のフリーエネルギーの条件に適合するために、新たにブルー相液晶が生成されて、且つ、配向が周囲のトルクを有さない配向と一致するようになる。したがって、本実施例2における電場循環法(electric field recycling)により、ブルー相液晶が特定の結晶格子面の結晶により組成されるようにコントロールすることができる。
【0040】
また、その他の実施例において、電場印加ステップでは、第一電場が印加され、電場減少ステップでは、前記第一電場を減少させて第二電場とするようにする。第二電場の強度の絶対値は、第一電場の強度の絶対値より小さい。この場合、第二電場に印加される時、コレステリックに変化する領域の周囲にも、新しくブルー相液晶が生成されて、且つ、配向は周囲のトルクを有さない配向と一致する。また、第二電場によって他の特定結晶格子面の結晶を選択して、生成されたブルー相液晶が二種類の特定結晶格子面を有する結晶を有するようにすることも可能である。
【0041】
仮にブルー相液晶がモノマーを含む場合、その製造方法は、さらに、重合ステップを備えて、前記液晶混合物を重合させるようにする。ここでは、光の照射を利用して重合反応を達成することが可能である。その他の実施例において、材料によっては、加熱によって重合反応を達成することも可能である。
【0042】
本発明の多数回の電場循環によって、ブルー相液晶に高い均一性を持たせ、且つ、結晶のサイズを大きくすることが可能である。例えば、1回のみの循環の場合、青色結晶格子面の単位面積に閉める割合は27%であるが、45回循環を経た場合、青色結晶格子面が占める単位面積は70%となる。故に、本発明により、電場循環の回数が多いほど、均一性に優れるということ、すなわち、特定結晶格子面が占める面積が大きいということが証明されたことになる。その上、循環回数には上限制限がないため、極めて均一性の高いブルー相液晶を製造することが可能である。
【0043】
また、本発明により、以下のことが証明された。すなわち、電場循環の回数の増加に伴い、特定結晶格子面の結晶のサイズが大きくなり、その他の結晶格子面の結晶のサイズは小さくなるということである。例えば、1回のみの循環の場合、赤色結晶格子面の結晶のサイズは8μm、青色結晶格子面の結晶のサイズは9μmであるが、45回循環を経た場合、赤色結晶格子面の結晶のサイズは5μmとなり、青色結晶格子面の結晶のサイズは17μmと大きくなることが確認できた。
【0044】
上述の実施例1における方法、または、実施例2における方法、またはその組み合わせによる方法により、均一性の高いブルー相液晶が製造できる。したがって、本発明の製造方法によるブルー相液晶は、特定結晶格子面の液晶を備えて、且つ、単位面積内において、前記特定結晶格子面の液晶が占める面積の割合を、20%から95%の間とすることが可能である。上述の実施例における方法を実施する前、すなわち、温度をコントロールする前には、液晶混合物内にはブルー相液晶は存在しなかった。しかしながら、上述の実施例におけるブルー相液晶の製造方法により、循環の回数を多くした場合、特定結晶格子面の液晶が占める面積の割合が高く、最高95%にも達することが確認できた。
【0045】
この場合、形成される前記特定結晶格子面は、例えば、(1 1 0)、または(1 0 0 )である。また、均一性が高いことで、本発明のブルー相液晶は、特定バンドの光線を反射することができ、且つ、単位面積内において、前記特定バンドの光線を反射する部分が全体面積に占める割合は、20%から95%の間である。この場合、前記特定バンドの光線は、可視光または非可視光である。また、単位面積内において、結晶のサイズは10μmより大きく、且つ、その占める面積の割合は20%から95%の間である。
【0046】
このように、本発明は、二種類の外的要素(温度または電圧)を利用して、ブルー相液晶の結晶を破壊し、さらに、最低のフリーエネルギー条件に適合させるために、新たに結晶を成長させて、その均一性を改善するものである。。
本発明における第一種の方法は、温度の上昇と下降の過程をコントロールすることによって、ブルー相液晶の均一性を改善する。それは主に、ブルー相(BP)と等向相(Isotropic)の共存温度に達した時、異なる結晶配向が異なる相転移(BP→Isotropic)速度を有することを利用して、これらの相転移領域が、再びブルー相操作温度まで下降した時、新たに結晶成長が行われるか、または、結晶が拡張される領域となり、最後に、このシステムに適合するブルー相液晶結晶配向がほぼ空間全体に埋め尽くされる。したがって、この発明は、温度操作によってブルー相液晶結晶の破壊と構築が行なわれることを利用して、その均一性を改善するものである。この方法を利用して、温度の昇降を10回循環させると、結晶のサイズを元の4〜5倍に拡大することができる。もし、0.1℃/minの温度下降速度によって循環を行えば、結晶のサイズは、例えば、60μmにまで達することができ、同様に、結晶配向の面積は、例えば、90%以上に達する。
本発明における第二種の方法は、電場を利用して、ブルー相液晶の結晶配向に対する選択を行うものである。電場作用を有する条件下では、特定の結晶配向のみが回転動力トルクを有さない。その他の結晶配向は、トルクの影響によりトルクを有さない面に移動する。しかしながら、多数の結晶が存在する場合、結晶は回転できないため、回転動力トルクはブルー相液晶結晶を破壊する。電圧を放つか、もしくは電圧を減少させるかした後、トルクを有さない(またはトルクに破壊されない)結晶配向が生成される。本発明は、ブルー相液晶の均一性を改善するだけに留まらず、さらに、均一性を改善することで、ヒステリシス効果を除去して駆動電圧を下げるという効果を達成できる。
【0047】
以上、本発明の実施例を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更などがあっても、本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は以上の如く構成したので、ブルー相液晶の均一性を高くして、駆動電圧を下げ、ヒステリシス効果を除去することができるため、表示領域として好適に利用することが可能なブルー相液晶及びその製造方法を提供し得るものである。
【符号の説明】
【0049】
101 液晶混合物
102 上部基板
103 下部基板
S01〜S03、S11〜S14 ブルー相液晶の製造方法のステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶混合物の温度をブルー相と等向相の共存温度範囲内に制御する温度制御ステップと、
前記液晶混合物の温度を下げて、ブルー相操作温度まで到達させ、この場合の前記ブルー相操作温度は、ブルー相とさらに温度の低い相の相転移温度よりも高い温度である降温ステップと、
前記温度制御ステップと前記降温ステップを繰り返す重複ステップとを備えることを特徴とするブルー相液晶の製造方法。
【請求項2】
前記液晶混合物は、液晶、モノマー及び光重合開始剤を含むことを特徴とする請求項1に記載のブルー相液晶の製造方法。
【請求項3】
前記降温ステップ中の温度下降速度は0℃/分〜5℃/分の間の範囲であるが、0℃/分は含まないことを特徴とする請求項1に記載のブルー相液晶の製造方法。
【請求項4】
さらに、前記液晶混合物を前記共存温度範囲内まで加熱する、最初の加熱ステップを備えることを特徴とする請求項1に記載のブルー相液晶の製造方法。
【請求項5】
前記重複ステップの後に、さらに、前記液晶混合物を重合させる重合ステップを備えることを特徴とする請求項1に記載のブルー相液晶の製造方法。
【請求項6】
液晶混合物の温度をブルー相の温度にコントロールする温度制御ステップと、
前記液晶混合物に対して、電場を印加する電場印加ステップと、
前記液晶混合物に対して、電場を減少させる電場減少ステップと、
前記電場印加ステップと前記電場減少ステップを繰り返す重複ステップとを備えることを特徴とするブルー相液晶の製造方法。
【請求項7】
前記電場減少ステップは、前記電場を完全に除去する場合を含むことを特徴とする請求項6に記載のブルー相液晶の製造方法。
【請求項8】
前記電場印加ステップは、第一電場を印加し、前記電場減少ステップは、第二電場まで電場を減少し、前記第二電場の強度は前記第一電場の強度より小さいことを特徴とする請求項6に記載のブルー相液晶の製造方法。
【請求項9】
前記電場印加ステップにおいて前記液晶混合物に対して印加される電場の偏圧は、ブルー相液晶中の二重螺旋柱が破壊されてコレステリック相となる電圧の2倍より小さいが、0倍ではないことを特徴とする請求項6に記載のブルー相液晶の製造方法。
【請求項10】
前記温度制御ステップは、前記液晶混合物の温度をブルー相と等向相の共存温度範囲内にコントロールすることを特徴とする請求項7または8に記載のブルー相液晶の製造方法。
【請求項11】
前記液晶混合物は、液晶、モノマー及び光重合開始剤を含むことを特徴とする請求項6に記載のブルー相液晶の製造方法。
【請求項12】
前記電場、前記第一電場または前記第二電場は、上部基板と下部基板によって形成され、前記液晶混合物は前記上部基板と前記下部基板の間に充填されることを特徴とする請求項6、7または8に記載のブルー相液晶の製造方法。
【請求項13】
前記重複ステップの後に、さらに、前記液晶混合物を重合させる重合ステップを備えることを特徴とする請求項6に記載のブルー相液晶の製造方法。
【請求項14】
特定結晶格子面の液晶を備え、単位面積内において、前記特定結晶格子面の液晶が占める面積の割合が20%から95%の間であることを特徴とするブルー相液晶。
【請求項15】
前記特定結晶格子面は、(1 1 0)、(1 0 0)、または、面心立方格子構造及び体心立方格子構造により生成する格子面であることを特徴とする請求項14に記載のブルー相液晶。
【請求項16】
特定バンドの光線を反射し、単位面積内において、前記特定バンドの光線を反射する部分が占める面積の割合は、全体の20%から95%の範囲であることを特徴とするブルー相液晶。
【請求項17】
前記単位面積内において、結晶のサイズは10μmより大きく、且つ、面積の割合は、20%から95%の範囲であることを特徴とする請求項14または16に記載のブルー相液晶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−80198(P2013−80198A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−89026(P2012−89026)
【出願日】平成24年4月10日(2012.4.10)
【出願人】(512084547)群康科技(深▲せん▼)有限公司 (2)
【出願人】(510134581)奇美電子股▲ふん▼有限公司 (28)
【氏名又は名称原語表記】Chimei Innolux Corporation
【住所又は居所原語表記】No.160 Kesyue Rd.,Chu−Nan Site,Hsinchu Science Park,Chu−Nan 350,Miao−Li County,Taiwan,
【Fターム(参考)】