説明

ブレーキ装置

【課題】小型化を図ることができるブレーキ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】制動子と、制動子を制動対象に向かう制動方向に進退させる進退部材4と、進退部材4を制動方向に進退可能に支持する支持部6cと、進退部材4へ向かう駆動方向一方側に進出させることで、進退部材4を制動方向制動側に進出させるくさび部材19とを備え、支持部6cは、進退部材4に対してくさび部材19と反対側に設けられ、進退部材を駆動方向一方側に支持可能であり、支持部6cと進退部材4の一方には、他方に向けて突出し、制動方向に延設された凸条部42が設けられ、他方には、駆動方向他方側へと、駆動方向及び制動方向に直交する幅方向両側へとの凸条部42の移動を規制する溝部43が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪等の制動対象に制動力を加えるブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車輪に制動力を加えるブレーキ装置としては、例えば、以下の特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
図9及び図10に示すように、この特許文献1に記載されたブレーキ装置101は、車輪の踏面Sを制動するブレーキシュー(制動子)102と、制動子102を車輪に向かう制動方向に進退させる押棒128と、押棒128制動方向に進退可能に支持するケーシング106と、ケーシング106の内部に設けられ、空気圧を駆動力として受けて進退移動するピストン118と、このピストン118と一体に固定されたくさび部材119とを備えている。
押棒128の両側には、移動ローラ126が設けられている。また、ケーシング106側には、ピストン118が押棒128を押す押付力に対する反力を受けるための一対の固定ローラ124が固定されている。
【0004】
二個の移動ローラ126は、くさび部材119の制動方向に直交する駆動方向への進退移動に伴い、制動方向に進退移動するように構成されている。即ち、くさび部材119が駆動方向に進退移動することにより、くさび部材119の傾斜面122に当接する二個の移動ローラ126が制動方向に押される。これにより、押棒128は制動方向に進退移動する。
【0005】
押棒128が制動方向に進退移動する際は、押棒128は、移動ローラ126と同軸上であって、移動ローラ126の軸方向外側に設けられたガイドローラ150をケーシング106に設けられたガイドレール151上を走行させる。これにより、押棒128の移動方向は、制動方向に規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−122703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、ガイドローラ150が押棒128に設けられた移動ローラ126の更に外側に張り出す構造であるため、これに応じてケーシング106が大型化してしまう問題があった。
【0008】
この発明は、このような従来技術の問題点に着目し、小型化を図ることができるブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
本発明のブレーキ装置は、制動対象に向けて進出、接触して前記制動対象を制動する制動子と、前記制動子を、前記制動対象に向かう制動方向に進退させる進退部材と、前記進退部材を前記制動方向に進退可能に支持する支持部と、前記制動方向と直交する駆動方向に進退可能に設けられ、前記進退部材へ向かう駆動方向一方側に進出させることで、前記進退部材を制動方向制動側に進出させるくさび部材とを備え、前記支持部は、前記進退部材に対して前記くさび部材と反対側に設けられ、前記進退部材を駆動方向一方側に支持可能であり、前記支持部と前記進退部材とのうちいずれか一方には、他方に向けて突出し、前記制動方向に延設された凸条部が設けられ、他方には、前記駆動方向他方側へと、前記駆動方向及び前記制動方向に直交する幅方向両側へとの前記凸条部の移動を規制する溝部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、くさび部材と反対側となる位置で進退部材と支持部とに凸条部及び溝部を設ける構造としたため、制動方向に直交する方向両側に支持する構造とすることなく、くさび部材から受ける荷重を支持しつつ、進退部材のガイド構造を小型化でき、ひいてはブレーキ装置全体の小型化を図ることができる。
【0011】
本発明のブレーキ装置において、前記凸条部は、先端部が基端部に対して前記幅方向に張り出した張出部を有し、前記溝部は、前記凸条部に対応して奥側が広がった形状を有していることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、進退部材の駆動方向他方側への移動をより確実に規制することができる。
【0013】
本発明のブレーキ装置において、前記凸条部は、断面視してT字形状であり、前記溝部は、前記凸条部に対応して断面視してT字形状であることが好ましい。
【0014】
本発明のブレーキ装置において、前記溝部は、断面視してアリ溝形状であり、前記凸条部は、前記溝部に対応するアリ形状としてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、進退部材と支持部とに直接凸条部及び溝部を設ける構造としたため、進退部材のガイド構造を小型化でき、ひいてはブレーキ装置全体の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るブレーキ装置の要部切欠き断面図である。
【図2】図1におけるA−A線断面図であり(a)クサビ部材挿入前、(b)クサビ部材挿入後を示す図である。
【図3】図1におけるB−B線断面図である。
【図4】スライドガイド機構の分解拡大図である。
【図5】スライドガイド機構の拡大図である。
【図6】本発明の別の実施形態のスライド機構を示す図である。
【図7】本発明の別の実施形態のスライド機構を示す図である。
【図8】本発明の別の実施形態のスライド機構を示す図である。
【図9】従来のブレーキ装置の要部切欠き断面図である。
【図10】図9のおけるC−C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態のブレーキ装置1は、鉄道車両用のブレーキ装置であり、詳しくは、車輪の踏面Sに対して片側からブレーキシュー(制動子)2を押し当てる踏面片押式のユニット形式のブレーキ装置である。ブレーキ装置1は、車輪の斜め上方に配置されており、取付部45(図2(a)参照)においてボルト等を介して車両に取り付けられている。
【0018】
図1に示すように、ブレーキ装置1は、制動対象である車輪の踏面Sに接して、車輪に制動力を加えるブレーキシュー2と、このブレーキシュー2を車輪に対して遠近方向に移動させる進退ユニット4を備えたユニット本体3と、ブレーキシュー2を移動可能に支えるハンガー5を主な構成要素として備えている。
【0019】
ブレーキシュー2は、車輪の踏面Sに押し当てられて制動力を発生する、湾曲した板状のブレーキ摩擦材2aを踏面Sとの接触箇所に設けた部材である。ブレーキシュー2は連結ピン32を回動軸としてハンガー5に連結されている。また、ブレーキシュー2の回動軸のやや下方には、傾き調整孔33が形成されている。傾き調整孔33についての詳細は後述する。
【0020】
ユニット本体3は、その外形をなすケーシング6を有しており、ケーシング6の上部には、斜め上方へ延出するアーム部7が一体的に形成されている。ハンガー5の一端は、アーム部7の先端に連結ピン31を介して回動自在に取り付けられている。従って、ハンガー5はハンガー5の一端を支点に揺動させることができる。即ち、ハンガー5が連結ピン31を支点に回動することによって、ハンガー5の他端に連結されたブレーキシュー2がユニット本体3に対して相対的に移動する。また、アーム部7とハンガー5の連結部には、図示しない、ねじりコイルバネが組み込まれている。このねじりコイルバネは、ブレーキシュー2を車輪から遠ざける方向に付勢する役目を担っている。
【0021】
図2(a)に示すように、ユニット本体3のケーシング6の内部には、ブレーキシュー2を移動させるための駆動力を発生させるピストンユニット8と、この駆動力をブレーキシュー2に伝達する進退ユニット4と、進退ユニット4を進退移動させる際に利用される一対の固定ローラ24(図2(a)には1つのみ図示されている)が内蔵されている。
ユニット本体3においては、ピストンユニット8を構成するピストン18が空気圧による駆動力に応じて進退移動することにより、後述するクサビ部材19を介して進退ユニット4が進退移動する。これにより進退ユニット4に取り付けられたブレーキシュー2が車輪の踏面Sに押し当てられる。
【0022】
ここで、本実施形態では、ピストンユニット8のピストン18の進退方向と進退ユニット4の進退移動方向とは直交している。
また、以下の説明においては、進退ユニット4、及びブレーキシュー2の進退方向を制動方向、ピストン18(及び後述するクサビ部材19)の進退方向を駆動方向と称し、車輪を制動すべく進行する方向を一方、制動を解除すべく待避する方向を他方と称す。即ち、図1において、左側が制動方向一方側であり、右側が制動方向他方側である。同様に、図2において、下方が駆動方向一方側であり、上方が駆動方向他方側である。
また、駆動方向及び制動方向に直交する方向であって、図1の上方向を上方と称し、上方の反対方向を下方と称す。
【0023】
ケーシング6は、制動方向に沿う中心軸を有する筒形状の本体筒部11と、この本体筒部11の側方に一体に設けられたピストンシリンダ部12とからなる。本体筒部11は、制動方向一方側に本体開口部13を有し、ピストンシリンダ部12は、駆動方向他方側にピストン開口部14を有している。
【0024】
ピストンユニット8は、ピストンシリンダ部12のピストン開口部14を覆うと共に、ピストンシリンダ部12の内部に圧縮空気を導入する供給口16が形成されているピストン蓋15と、ピストンシリンダ部12内を駆動方向に進退移動するピストン18と、ピストン18に一体に取り付けられた一対のクサビ部材19と、ピストン18を駆動方向他方側に付勢する圧縮コイルバネ20とを備えている。
【0025】
クサビ部材19は、上方から視て楔形状をなす板状部材であり、同形状のクサビ部材19がピストン18の駆動方向一方側の面の上部及び下部に上下対称となるように取り付けられている。クサビ部材19は、駆動方向に沿うガイド面21と、駆動方向に対して傾斜し、ガイド面21からの距離が駆動方向一方側から他方側に向かって漸次大きくなるように形成された傾斜面22とを有している。
圧縮コイルバネ20は、一端が後述するスリーブ保持部材25の側壁に、他端がピストン18の駆動方向一方側の面であって、一対のクサビ部材19の間に固定されている。即ち、ピストン18は圧縮コイルバネ20によって、駆動方向他方側に付勢されている。
【0026】
また、ケーシング6の本体筒部11の下部には、塵埃等を捕集する為のフィルタ52が配置されるとともに、フィルタ52に接続して流通パイプ53が上下方向に配置されている。この流通パイプ53の下端には、下向きの開口である流通口54が形成され、ケーシング6の内部空間は、この流通口54を介して大気に連通されている。
【0027】
図2(a),図2(b)に示すように、固定ローラ24は、クサビ部材19が駆動方向に移動する際に、ガイド面21が固定ローラ24の外周面に接触しつつ、固定ローラ24を回転させる位置に固定されている。固定ローラ24は、外周面を接触相手に接触させることで回転する所謂ローラフォロアであり、ケーシング6の上部壁6a及び下部壁6bに取り付けられ、上下方向に延在する固定ローラ軸24aに回転可能に取り付けられている。
【0028】
進退ユニット4は、制動方向に移動可能に構成されているスリーブ保持部材25と、スリーブ保持部材25の上下に取り付けられた移動ローラ26と、スリーブ保持部材25に対し揺動可能に固定されたスリーブ27と、スリーブ27の制動方向一方側の端部に取り付けられた押棒28とを有している。
【0029】
スリーブ保持部材25は、本体部29と、本体部29の上下方向に延在する移動ローラ軸30とからなり、後述するスライドガイド機構41により制動方向に移動可能に構成されている。
スリーブ保持部材25の本体部29は略直方体の部材であり、制動方向に対向する二面を貫通するように、球面滑り軸受35を取り付けるための取付孔29aが形成されている。また、図3に示すように、本体部29の側面29bには、溝部43が形成されている。
【0030】
移動ローラ26は、移動ローラ軸30のそれぞれに回転自在に固定されている。移動ローラ26は、固定ローラ24と同様のローラフォロアであり、クサビ部材19が駆動方向に移動する際に、傾斜面22に接触する位置に設けられている。
また、取付孔29aには、球面滑り軸受35が取り付けられている。
【0031】
スリーブ27は、円筒形状を有し、その外周面が球面滑り軸受35を介してスリーブ保持部材25に取り付けられている。これにより、スリーブ27はスリーブ保持部材25に対して揺動可能、かつスリーブ27の中心軸回りに回転可能とされている。また、スリーブ27の内周面には、送りネジ(雌ネジ)が形成されている。
【0032】
押棒28は、スリーブ27の制動方向一方側への移動に伴い、押棒28の制動方向一方側に取り付けられたブレーキシュー2を踏面Sに押し当てる軸部材である。押棒28の制動方向一方側の先端部には、下方に延在する屈曲部36が形成されており、押棒28の制動方向他方側には、スリーブ27の送りネジと噛み合う送りネジ(雄ネジ)が形成されている。屈曲部36の先端は、連結ピン37を介してブレーキシュー2の傾き調整孔33と連結されている。
【0033】
また、スリーブ保持部材25には、ブレーキ解除時におけるブレーキの隙間を一定に保持するための適宜の隙間調整機構(図示せず)が取り付けられている。隙間調整機構は、ブレーキシュー2と進退ユニット4の位置に応じてスリーブ27を回転させることで、前述した送りネジにより押棒28を制動方向一方側に送るように構成されている。
【0034】
また、ケーシング6の本体開口部13には、その中央部に押棒28が貫通するための孔が形成されたケーシング蓋17が取り付けられている。ケーシング蓋17とスリーブ保持部材25との間には、ケーシング蓋17とスリーブ保持部材25の双方に設けられた複数のスタッドを介して複数の圧縮コイルバネ38が介在している。これにより、スリーブ保持部材25は制動方向他方側に付勢される。
【0035】
次に、スライドガイド機構41について説明する。スライドガイド機構41は、進退ユニット4を構成するスリーブ保持部材25を制動方向にガイドする機構である。
スライドガイド機構41は、ケーシング6の側壁6cであって、クサビ部材19とは反対側の側壁6cに設けられた凸条部42とスリーブ保持部材25の本体部29の側面29bに形成された溝部43とから構成されている。
【0036】
図4に示すように、凸条部42は、制動方向に延在し制動方向から視た断面形状がT字形状をなすレール状の部位であり、ブラケット44を介してケーシング6の側壁6cに取り付けられている。詳しくは、ブラケット44は、ボルト・ナットによりケーシング6の側壁6cに取り付けられており、凸条部42は、ボルトによってブラケット44に取り付けられている。
【0037】
凸条部42は、ケーシング6の側壁6cより突出するとともに制動方向に延在する凸条本体部42aと、凸条本体部42aの先端部より上下方向に突出する張出部42bとからなる。
溝部43は、制動方向に延在し、凸条部42と組み合わされる長溝状の部位であり、凸条部42の張出部42bを保持する為の一対の張出部溝43aが設けられている。即ち、溝部43の制動方向から視た断面形状は、凸条部42と略一致している。
【0038】
また、図5に示すように、凸条部42と溝部43との間には所定の隙間が設けられている。これにより、スリーブ保持部材25(進退ユニット4)は、ケーシング6に対してやや傾くことが可能となる。
【0039】
ここでブレーキシュー2の傾きを調整する機構について説明する。ブレーキシュー2の傾き調整孔33は、ブレーキシュー2の一定角度の傾きを許容できるように長穴状に形成されている。ブレーキ緩解時などにブレーキシュー2が傾いた場合には、傾き調整孔33の内壁に連結ピン37が当接することでブレーキシュー2の傾きを規制することができる。
【0040】
次に、ブレーキ装置1の動作について説明する。
ここで、ブレーキシュー2は、最も制動方向他方側、即ち待避位置に位置しているとともに、ピストン18は最も駆動方向他方側に位置している。クサビ部材19は、図2(a)に示すように、その先端側が僅かに固定ローラ24移動ローラ26との間に挿入された状態である。即ち、移動ローラ26は、固定ローラ24に最も接近した状態にある。
【0041】
ブレーキシュー2で車輪に制動力を加える際は、ピストンユニット8の供給口16から圧縮空気を導入させる。これにより、圧縮コイルバネ20の付勢力に逆らって、ピストン18が駆動方向に駆動される。これに伴い、ピストン18に取り付けられたクサビ部材19が駆動方向に移動する。
【0042】
図2(b)に示すように、クサビ部材19は、固定ローラ24と移動ローラ26との間に侵入し、これに伴い移動ローラ26は、クサビ部材19の傾斜面22と直交する方向に押圧力、言い換えると、制動方向一方側に沿う成分力を有する押圧力を受ける。移動ローラ26が押圧されることにより、移動ローラ26が取り付けられたスリーブ保持部材25が圧縮コイルバネ38の付勢力に逆らって移動する。
【0043】
この際、スライドガイド機構41により、スリーブ保持部材25の移動方向は、制動方向に規制される。スリーブ保持部材25の制動方向一方側への移動により、スリーブ27、押棒28を介して、ブレーキシュー2が制動方向一方側に移動し、車輪の踏面Sに押し当てられ、制動力を加える。
【0044】
この際、ブレーキシュー2は、ハンガー5が支点である連結ピン31を中心に回動するのに伴い、連結ピン31を中心に揺動しつつ制動方向一方側に移動する。この際、ブレーキシュー2に連結されている押棒28の制動方向一方側先端も同様の軌跡を描く。即ち、押棒28の進退移動は、押棒28の先端部の揺動を伴うが、押棒の28端側において螺合されているスリーブ27が、球面滑り軸受35によって揺動可能とされていることにより、この揺動する動きが吸収される。
【0045】
また、図5に示すように、凸条部42と溝部43との間に隙間が設けられていることにより、スリーブ保持部材25にスリーブ27を介して接続された押棒28の先端が揺動した場合においても、この揺動を吸収することができる。
【0046】
車輪に加えられている制動力を解除する際は、ピストンユニット8の供給口16から圧縮空気を流出させる。すると、空気圧により縮んでいた圧縮コイルバネ20が伸び、ピストン18は、駆動方向他方側に移動し、元の位置に戻る。この結果、スリーブ保持部材25(進退ユニット4)は、ピストン18及びクサビ部材19から制動方向一方側への力を受けなくなるため、ケーシング6の本体筒部11内に設けられている圧縮コイルバネ38が伸び、ブレーキシュー2は制動方向他方側に移動し、元の位置に戻る。この際、スライドガイド機構41により、スリーブ保持部材25の移動方向は、制動方向に規制される。
【0047】
以上のように、本実施形態によれば、進退ユニット4を構成するスリーブ保持部材25とケーシング6の側壁部6cに一体的に凸条部42及び溝部43を設ける構造としたため、スライドガイド機構41を小型化でき、ひいてはブレーキ装置1全体の小型化を図ることができる。
【0048】
スライドガイド機構41を構成する凸条部42及び溝部43は、それぞれ、互いに嵌まり合う張出部42bと、張出部溝43aが設けられているため、進退ユニット4の駆動方向他方側への移動をより確実に規制することができる。
【0049】
次に、スライドガイド機構の別の実施形態について説明する。
別の実施形態に係るブレーキ装置のスライドガイド機構41Bは、図6に示すように、アリ形状の凸条部42Bと、アリ溝形状の溝部43Bとから構成されている。このような形状を採用すると、スライドガイド機構をより小さなスペースで実現できる場合がある。
また、図7に示すように、張出部溝43aの面にボールやローラ46回動可能に保持し、このボールやローラ46と張出部溝43aにより形成される空間を凸条部42Bの断面と略一致するようにしてもよい。
【0050】
更に別の実施形態に係るブレーキ装置のスライドガイド機構41Cは、図8に示すように、断面略円形状の凸条部42Cと、これに対応する断面略円形状の溝部43Cとから構成されている。このような形状を採用すると、スライドガイド機構をより容易に形成することができる。
【0051】
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
例えば、以上で説明した各実施形態では、スリーブ保持部材25に溝部43を形成し、ケーシング6に凸条部42を設ける構成としたが、スリーブ保持部材25側に凸条部を形成し、ケーシング6に溝部を設ける構成としてもよい。
【0052】
また、上記実施形態においては、凸条部42はブラケット44を介してケーシング6に取り付けたが、これに限ることはなく、凸条部42を直接ケーシング6に取り付けてもよいし、ケーシング6に直接凸条部を形成してもよい。
【符号の説明】
【0053】
S…踏面(制動対象) 1…ブレーキ装置 2…ブレーキシュー(制動子) 4…進退ユニット(進退部材) 6…ケーシング 19…クサビ部材 42…凸条部 43…溝部 6c…側壁(支持部) 42a…凸条本体部 42b…張出部 43a…張出部溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制動対象に向けて進出、接触して前記制動対象を制動する制動子と、
前記制動子を、前記制動対象に向かう制動方向に進退させる進退部材と、
前記進退部材を前記制動方向に進退可能に支持する支持部と、
前記制動方向と直交する駆動方向に進退可能に設けられ、前記進退部材へ向かう駆動方向一方側に進出させることで、前記進退部材を制動方向制動側に進出させるくさび部材とを備え、
前記支持部は、前記進退部材に対して前記くさび部材と反対側に設けられ、前記進退部材を駆動方向一方側に支持可能であり、
前記支持部と前記進退部材とのうちいずれか一方には、他方に向けて突出し、前記制動方向に延設された凸条部が設けられ、
他方には、前記駆動方向他方側へと、前記駆動方向及び前記制動方向に直交する幅方向両側へとの前記凸条部の移動を規制する溝部が設けられていることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項2】
前記凸条部は、先端部が基端部に対して前記幅方向に張り出した張出部を有し、前記溝部は、前記凸条部に対応して奥側が広がった形状を有していることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ装置。
【請求項3】
前記凸条部は、断面視してT字形状であり、前記溝部は、前記凸条部に対応して断面視してT字形状であることを特徴とする請求項2に記載のブレーキ装置。
【請求項4】
前記溝部は、断面視してアリ溝形状であり、
前記凸条部は、前記溝部に対応するアリ形状であることを特徴とする請求項2に記載のブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−87878(P2013−87878A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229524(P2011−229524)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】