説明

ブレード先端間隙を測定するための方法

ファンケースアセンブリと、複数のブレードを有するロータとを有するガスタービンエンジンのブレード先端間隙を測定するための方法が、センサを有する測定具をファンケースアセンブリに着脱可能に取り付けるステップと、ロータを回転させるステップと、ロータの回転中に複数のブレードのブレード先端間隙を測定するステップとを含む。取付けステップは、測定具と連結されたねじおよびブッシングを、ファンケースアセンブリの孔を通して配置するステップをさらに含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本例示的実施形態は、一般にガスタービンエンジンに関し、詳細にはブレード先端間隙を測定するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガスタービンエンジン、蒸気タービン、航空エンジン、ジェットエンジン、およびその他の軸流ターボ機械は、ブレード先端とブレードハウジングまたはケースとの間の半径方向間隙を最小にするよう設計される。ブレード先端とケースとの間に間隙があると、ガスまたは空気がエンジン動作の下流の段に漏出するため、効率が低下する。ブレード先端とケースとの間の間隙はエンジン速度および温度に依存し、エンジン動作中に間隙が変化する。運転回転速度が高速であれば、回転金物品(すなわちブレード)が半径方向に弾性的に伸張することにより、ブレード先端が半径方向に伸張する。さらに、高温によってケース内および回転金物品内に熱膨張が生じる。現在、運転速度でのブレード先端とファンケースとの間の間隙を求めるためのいくつかの検査方法が使用されている。
【0003】
ブレード先端とケースとの間の間隙を求めるための1つの方法は、軸方向穿孔ボルトに挿入して固定した細い金属棒を使用し、得られたアセンブリを、ファンケースに取り付けられた取付板に挿入する。棒の端部は、ブレード先端があるはずのところに位置する。この方法では、エンジンを特定の時間動作させた後に、棒の磨耗量を測定してブレード先端とケースとの間の間隙の変化を求める必要がある。細い金属棒は曲がったり折れたりすることが多く、測定が不確かなものになるため、この方法は不十分である。また、細い金属棒から剥がれた破片状または粉状の金属は、エンジンに損傷を与えるおそれがある。さらに、このような細い金属棒は、ファンケースからブレード先端までの距離を測定して個別に作らなければならないため、手間と時間がかかる。さらに、このような方法は、測定、データ記録、加工等の誤差が生じる。作られた細い金属棒が短すぎたり長すぎたりすることが多い。棒が短いとブレード先端に触れず、棒が長いと曲がったり折れたりしてしまう。さらに、このアセンブリは、ファンケースに孔を追加する必要があるため、ケースが弱くなり、長期間使用すると構造的な損傷が生じるおそれがある。
【0004】
他の方法では、テーパゲージとゲージブロックとを使用して、個々のブレードの先端間隙を求めている。ゲージブロックがファンケース内部に配置され、テーパゲージがブロック上部に配置される。テーパゲージは、ブレードに接触するまでゲージブロックに沿って摺動する。その後、技術者がテーパゲージを読んでブレードとケースとの間の間隙を求めることができる。このプロセスをブレードごとに繰り返して行う。これは非常に時間がかかり、製造とオーバーホールにかかる時間が長くなる。また、この技術は誤差が生じやすい。この誤差には、ゲージブロックによるファンケースのブリッジングや、テーパゲージを読む際の測定値の読み間違いや視差による誤差が含まれる。さらに、ブレード先端にすくい角をつけることがあるため、接触点でゲージを読むことができないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許6927567号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一例示的実施形態では、ファンケースアセンブリと、複数のブレードを有するロータとを有するガスタービンエンジンのブレード先端間隙を測定するための方法が、センサを有する測定具をファンケースアセンブリに着脱可能に取り付けるステップと、ロータを回転させるステップと、ロータの回転中に複数のブレードのブレード先端間隙を測定するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】例示的ガスタービンエンジンの概略横断面図である。
【図2】例示的ファンアセンブリの横断面図である。
【図3】測定具の例示的実施形態の斜視図である。
【図4】測定具が設置された例示的実施形態を示す、例示的ファンアセンブリの横断面図である。
【図5】図4の丸で囲んだ部分5の拡大横断面図である。
【図6】測定具が設置された例示的実施形態を示す、図4の6−6線に沿った例示的ファンアセンブリの上面図である。
【図7】測定具が設置された例示的実施形態を示す、例示的ファンアセンブリの底面図である。
【図8】設置状態のブッシングを示す例示的実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、例示的ガスタービンエンジン100の概略横断面図である。ガスタービンエンジン100は、ファンアセンブリ102、低圧コンプレッサ104、高圧コンプレッサ106、燃焼器108、高圧タービン110、および低圧タービン112を備える。ファンアセンブリ102および低圧コンプレッサ104は、シャフト114を介して低圧タービン112に結合される。高圧コンプレッサ106は、シャフト116を介して高圧タービン110に結合される。動作時には、空気がファンアセンブリ102、低圧コンプレッサ104および高圧コンプレッサ106を通って流れる。高圧縮空気が燃焼器108に送られ、ここで燃料と混合されて点火され、燃焼ガスを発生する。燃焼ガスは燃焼器108から運ばれてタービン110、112を駆動する。タービン112は、シャフト114を介してファンアセンブリ102および低圧コンプレッサ104を駆動する。タービン110は、シャフト116を介して高圧コンプレッサ106を駆動する。
【0009】
図2は、例示的ファンアセンブリ102の横断面図である。図2はファンアセンブリの底部を示す。先端間隙は、一般にファンケースの底部中心で測定される。ファンケース周囲のどの位置で測定を行ってもよく、例示的実施形態を底部のみに限定すべきではないことに注目されたい。ファンアセンブリ102はロータ118を備え、このロータ118は複数のファンブレード120を受けることができる。あるいは、ロータ118は、ロータ118と一体の複数のエーロフォイルがロータ118から外側に延びるブリスクとすることができる。ファンブレード120は、プラットホーム122から先端124まで半径方向に延びる。ファンケースアセンブリ126は、先端12と半径方向で境界を接する。ファンケースアセンブリ126は、ファンケース128およびファンシュラウド130を備えることができる。ファンシュラウド130は半径方向内面132を有する。ブレード先端124とファンシュラウド130の内面132とが、間隙134を画定する。
【0010】
図3〜7は、間隙134の高さ、すなわちブレード先端124とファンシュラウド130の内面132との間の距離を、ブレード先端124の軸方向長さに沿った種々の点で測定するための測定具136の例示的実施形態を示す。測定具136は、フレーム138を有する。フレーム138は、裏当て部140および延出部142を備えることができる。測定具136をファンケースアセンブリ126に固定して取り付けることができれば、どのような構成のフレーム138を使用してもよいことに注目されたい。裏当て部140は取付けシステム144を備えることがきる。測定具136をファンケースアセンブリ126に固定して取り付けることができれば、公知のどのような取付けシステムを使用してもよい。一例示的実施形態では、取付けシステムが複数のクランプ146を備えることができる。クランプ146は、限定されないが、カムクランプ、オーバセンタクランプ、バイスクランプ、またはその他の同様のクランプ等の、公知のどのようなクランプ機構であってもよい。クランプ146は、レバー148およびカム150を備え、これらはねじ152およびブッシング154と協働して、測定具136をファンケースアセンブリ126に固定して取り付けることができる。クランプ146は、係止位置と解除位置とを有する。解除位置は図3に示される。係止位置は図4に示され、これについては詳細に後述する。クランプ146は、ねじ152、ブッシング154および支柱156がファンケースアセンブリ126の既存の孔に入るように、離間して設けられる。これにより、ファンケースアセンブリ126を改造することなく測定を行うことができる。
【0011】
アーム158をフレーム138に取り付けることができる。一例示的実施形態では、アーム158が、ねじ160またはその他の取付機構により延出部142に取り付けられる。別の例示的実施形態では、アーム158が、アーム158を偏倚させてファンケース128に接触させるヒンジおよびばね機構を使用して取り付けられる。公知のどのような取付機構を使用してもよい。アーム158は、一端で取り付けることができ、他端は自由とすることができる。自由端はセンサ162を備えることができる。センサ162は、2点間の距離を測定可能な公知のどのようなセンサであってもよい。一例示的実施形態では、センサ162が、限定されないが、容量位置センサまたは光学センサ等の非接触変位センサである。センサ162はリード164を備え、このリード164は、センサ162から経路166を通って、測定具136から離れて配置された電子部品に至る。図5に示すように、アーム158は、面132に接触してセンサ162を安定させる突起168を有する。一例示的実施形態では、この突起168は球状である。使用するアーム158の数、および各アーム158で使用するセンサ162の数はいくつであってもよい。測定具136をファンケースアセンブリ126に取り付ける際に、センサまたはセンサ162が、限定されないが、ブレード中心170、前縁172、および/または後縁174等の適切な測定位置に配置されれば、アーム158はどのような長さまたは幅であってもよい。アーム158は、例えば、測定中にブレード120がアーム158に接触して折れた場合に、あるいは別のアームに変更することにより様々な位置で測定するために、容易に取り外して交換できるように取り付けられる。
【0012】
測定具136は、ファンケースの前方フランジ176を介してファンケースアセンブリ126上に設置される。前方フランジ176は、ねじ152、ブッシング154および支柱156を受けるための複数の孔178を有する。その後、レバー148が係止位置に作動される。図8に示すように、ねじ152を前方フランジ側に引いて、ブッシング154を長孔180に沿って拡張することができる。ブッシング154は、前方フランジ176に軸方向の力を加え、測定具136を前方フランジ176に対して引いて、測定具136と前方フランジ176との間の間隙がほぼなくなるようにする。測定具136の位置および構成は、センサ162を、測定するブレード120の領域と位置合わせするように、あらかじめ決められる。測定具136が定位置に係止されると、ファンブレード120が回転したときセンサ162は測定を開始することができる。センサ162は、各ファンブレード120のデータを1回転で得ることができる。しかし、2回転以上でデータを得るようにしてもよいことを理解されたい。比較的短い時間で、測定具136を取り付けて測定することができ、かつ正確な測定を確実に行うことができる。さらに、測定具は、組立て用に設けられた孔を使用するため、孔を追加したりファンケースアセンブリの構造を変えたりする必要がない。このため、製造サイクルが短くなり、正確で確実な先端間隙測定を行うことができる。
【0013】
上記説明は、当業者が例示的実施形態を製造して使用できるよう、最良の形態を含む例示的実施形態を開示している。特許可能な範囲は特許請求の範囲によって定義されるものであり、当業者が想定する他の例を含むことができる。このような他の例は、構造的要素が特許請求の範囲の記載と異なっていない場合、あるいは特許請求の範囲の記載との間に実体的な違いのない、均等な構造的要素を含む場合、特許請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0014】
100 ガスタービンエンジン
102 ファンアセンブリ
104 低圧コンプレッサ
106 高圧コンプレッサ
108 燃焼器
110 高圧タービン
112 低圧タービン
114 シャフト
116 シャフト
118 ロータ
120 ファンブレード
122 プラットホーム
124 先端
126 ファンケースアセンブリ
128 ファンケース
130 ファンシュラウド
132 内面
134 間隙
136 測定具
138 フレーム
140 裏当て部
142 延出部
144 取付けシステム
146 クランプ
148 レバー
150 カム
152 ねじ
154 ブッシング
156 支柱
158 アーム
160 ねじ
162 センサ
164 リード
166 経路
168 突起
170 ブレード中心
172 前縁
174 後縁
176 前方フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンケースアセンブリと、複数のブレードを有するロータとを有するガスタービンエンジンのブレード先端間隙を測定するための方法であって、
センサを有する測定具を前記ファンケースアセンブリに着脱可能に取り付けるステップと、
前記ロータを回転させるステップと、
前記ロータの回転中に前記複数のブレードのブレード先端間隙を測定するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記取付けステップが、前記測定具と連結されたねじおよびブッシングを、前記ファンケースアセンブリの孔を通して配置するステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記取付けステップが、前記測定具と連結されたクランプを係止して、前記ねじおよびブッシングにより前記測定具を前記ファンケースアセンブリに固定するステップをさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記係止ステップが、前記ブッシングを拡張することにより、前記ファンケースアセンブリに軸方向の力を加えるステップをさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記センサを、測定する前記ブレードの一部分と位置合わせするステップをさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記取付けステップが、前記測定具と連結されたクランプを係止して、前記測定具を前記ファンケースアセンブリに固定するステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記センサを、測定する前記ブレードの一部分と位置合わせするステップをさらに含む、請求項1乃至3のいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−508879(P2011−508879A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540694(P2010−540694)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/083882
【国際公開番号】WO2009/085430
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】