ブレード装置及びその製造方法
パルプ及び紙の製造工程に使用する工業用ブレード、及び斯かるブレードの作製方法について、開示する。この工業用ブレードは、典型的にはドクターブレードであり、複数のウェブ層から作製され、各ウェブ層は、ポリアミド及び共重合ポリエステルの混合物から形成され、これにより、厚フェルトを形成する。この厚フェルトの端部に、ポリウレタンのコーティングが適用され、このフェルトは、コーティングされた端部上で一定の角度で切断される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、一般的に、製紙工程及びその他の製造工程に使用する工業用のブレード装置に関する。特に、本発明は、ポリウレタンでコートされた傾斜角を有する厚フェルト（ｔｈｉｃｋ ｆｅｌｔ）で作製されたドクターブレードに関する。
【背景技術】
【０００２】
パルプ又は紙の製造機は、パルプ又は紙の製造工程中、種々の部品を利用する。これらの部品としては、例えば、ベルト、プレスロール及び機械ロールが挙げられる。機械ロールは、パルプ又は紙の製造工程の種々の態様、例えば、形成動作、プレス動作、乾燥動作及び／又はカレンダー動作において、使用される。
【０００３】
機械ロールの動作は、ロールの表面上に形成する異物を除去する装置、及び／又はシートを機械ロールから引き剥がす装置をしばしば必要とする。異物を効果的に除去すること、又はシートを機械ロールから除去することに失敗すると、製造される製品の質に壊滅的な影響を及ぼす可能性がある。上記の事項を達成するひとつの方法は、ドクター又はドクターブレードと一般的に称される機械的な装置を使用することである。
【０００４】
また、抄紙機の動作中、及び特に例えば長尺ニッププレス及び特に溝を有するベルトを有するプレス部におけるプレスの動作中、ベルトがプレスニップに戻るにつれて、ベルトの表面及び溝が水のフィルム層を有する可能性があるため、非効率な脱水という高いリスクがある。従って、ドクターブレードは、ベルトから過剰な水を除去するのに有効であってもよい。
【０００５】
ドクターブレードは、所望の適用に応じて、強固な設計又は柔軟な設計であってもよい。また、ドクターブレードは、典型的に取り外し可能なものであってもよく、従って、摩耗した場合、取り替え可能なものであってもよい。
【０００６】
ドクターブレードは、ブレードホルダー及びブレードが設けられた抄紙機の至るところに調節可能に支持される構造ビームに典型的に固定される。ドクターブレードは、ロール表面から、パルプ若しくは紙ウェブのシート又はこれらの一部を含む種々の異物を削り取るように、ロールの表面に直接接触する。
【０００７】
例えば、Ｔａｋｅｕｃｈｉらによる、表題”Ｄｏｃｔｏｒ Ｂｌａｄｅ”なる特許文献１は、一体の基材とバット繊維層とから作製されたドクターブレードに関する。その繊維積層体のひとつの側面に樹脂が含浸される。使用する際、樹脂の量が少ない層は、ベルトに接触する。この出願の記載事項を参照して、本願に取り込む。
【０００８】
また、Ｔａｋｅｕｃｈｉらによる、表題”Ｄｏｃｔｏｒ Ｂｌａｄｅ”なる特許文献２は、繊維積層体に含浸された樹脂を有するドクターブレードに関するものであって、この積層体は、基材と、ニードルパンチにより一体化されたバット層とを有する。この出願の記載事項を参照して、本願に取り込む。
【０００９】
第三に、Ｔａｋｅｕｃｈｉらによる、表題”Ｄｏｃｔｏｒ Ｂｌａｄｅ ｆｏｒ Ｒｅｍｏｖｉｎｇ Ｗａｔｅｒ”なる特許文献３は、溝を有するベルトから水を除去するための、積層された樹脂を含浸したドクターブレードに関する。ベルト接触層の繊維は、ベルトの進行方向に配向している。この出願の記載事項を参照して、本願に取り込む。
【００１０】
残念ながら、水及びその他の異物を除去する上記のタイプのドクターブレードを使用すると、溝を有するベルトの表面に所望しない擦り切れや摩耗を生じる。この擦り切れは、ドクターブレードに含まれる、本願においてＰＥＴとも称するポリエステル、又はガラス繊維に典型的に由来し、堅い樹脂に含浸した際、本願においてＰＵＲとも称するポリウレタン樹脂から通常なる柔軟なベルトの表面と接触する表面を研磨することとなる。
【００１１】
溝を有するベルトの表面の擦り切れの第二の原因は、ブレードの穴空け（ｐｉｔｔｉｎｇ）又は曲げにより生じるドクターブレード上の障害領域に捕捉され又は詰められる炭酸カルシウム（ＣａＣＯ３）などの異物や外来粒子である。このことは、ベルトの研磨をさらに悪化させ、ベルトの運用期間を短縮してしまう。
【００１２】
さらに、トランスファーベルトを使用することで、上記のタイプに対して、向上したドクターブレードの要求が増す。トランスファーベルトの表面は、シュープレスベルトと比較して、より柔軟で、より追従性が高い。トランスファーベルトは、紙ウェブと直接接触するので、トランスファーベルトの表面は、除去されるべきウェブから、異物／粘着物を拾う可能性がある。プレスニップに侵入する前に、トランスファーベルトの表面は、脱水の効果の損失を最小限とするため、並びに紙ウェブの初期の圧搾を阻止し及び／又は水膜を崩壊させて紙シートがトランスファーベルトから離脱するようにベルトの表面に形成される水膜の厚みを最小限とするため、相対的に乾燥される必要がある。また、トランスファーベルトの表面は、ドクターブレードの端部に埋没した異物により、均一に摩耗、又は引っ掻かれ（ｓｃｏｒｅｄ／ｓｃｒａｔｃｈｅｄ）得ない。不均一にすり減ったトランスファーベルトは、紙ウェブに不均一な圧力を印加することとなり、これは、紙の脱水及びシートの移行の両方に影響を及ぼす可能性がある。引っ掻かれたベルトは、紙シートにマークをつけることとなる。
【特許文献１】欧州特許出願第１２９５９８８号明細書
【特許文献２】欧州特許出願第１２９８２５０号明細書
【特許文献３】欧州特許出願第１３４２８４２号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【００１３】
従って、ブレードの意図する機能を満足のいくように実行しつつ、ベルト又はブレードが接触する表面の擦り切れ及び摩耗を最小限にする表面を有するドクターブレードが所望されている。
【課題を解決するための手段】
【００１４】
本発明は、ドクターブレードなどの工業用ブレードに関し、これは、ブレードが接触する部品の表面の擦り切れを最小限とする表面を有し、これにより、部品の運用期間を増加させる。
【００１５】
従って、本発明の一実施例は、複数のウェブ層を有する工業用ブレードに係り、各ウェブ層は、ポリアミド及び共重合ポリエステルの混合物から形成される。ウェブ層の端部は、ポリウレタンコーティングをも有し、ブレードは、傾斜部分を有するように作製される。
【００１６】
本発明の他の実施例は、ブレードの製造方法に関する。この方法は、複数のウェブ層を設けるステップを有し、各ウェブ層は、ポリアミド及び共重合ポリエステルの混合物から形成される。この複数のウェブ層は、厚フェルトを形成するように、ニードリングされ、その後、カレンダリングされる。ポリウレタンは、この厚フェルトの端部に適用され、所定時間の後、この端部上に傾斜表面が形成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１７】
本発明を特徴付ける新規な種々の特徴は、特に添付した特許請求の範囲に指摘されており、この開示の一部を形成するものである。本発明、並びに本発明の作用効果及び使用によって得られる特定の目的をより良好の理解するため、添付の記載事項について述べ、これは、添付の図面に本発明の好適実施例が示されており、この図面において、対応する部材は、同様の参照番号を付した。
【００１８】
従って、本発明により、その目的及び利点が認識され、以下の記載は、図面とともに参照されるべきものである。
【００１９】
本発明は、向上されたドクターブレード、及び斯かるブレードの製造方法を提供する。一実施例において、本発明は、ポリウレタン（ＰＵＲ）から製造されるものなどの、柔らかいベルトと接触するドクターブレードの表面に由来するベルトの擦り切れの問題を解決する。第二に、本発明は、従来のドクターブレードの障害を受けた端部に捕捉され又は詰められる異物又は外来粒子の問題をも解決する。斯かる障害は、ブレードの穴空け又は曲げに由来して発生する可能性がある。捕捉された異物又は外来粒子は、ベルトの擦り切れを起こすばかりでなく、ベルト表面の引っ掻きをもたらす可能性もあり、究極的にシートのマーキングをもたらす。
【００２０】
Ｉ．ドクターブレードの摩擦によるベルトの擦り切れの軽減
特に、本発明は、ブレードからＰＥＴ繊維又はガラス繊維を除き、ポリアミド（ＰＡ）及び共重合ポリエステルの繊維混合物でドクターブレードを構築することにより、向上したドクターブレードを提供する。この混合物は、ベルトやロールカバーなどの細工される（ｄｏｃｔｏｒｅｄ）表面を接触する、より柔らかく摩耗の少ない表面を提供する。この繊維は、厚フェルトを形成するように、混合され且つニードリングされ、その後、長尺ストリップ（ｌｏｎｇ ｓｔｒｉｐ）に切断される。
【００２１】
このストリップは、その後、ドクターブレードを利用する製紙工程やその他の製造工程などの所望の適用例に必要な硬度及び合成を達成するのに十分高い温度（例えば、２００℃以上）で、ホットプレス又はカレンダリングされる。
【００２２】
ホットプレスの工程の後、厚フェルトの１つ以上の端部は、所望の角度に切断される。この角度は、例えば、厚フェルトの長手方向の軸に対して、約２５°〜８０°であってもよく、好ましくは約４５°である。
【００２３】
ブレードの端部を切断動作で一旦形成すると、ブレードは、ドクターブレードが所望の様式でベルトやロールカバーなどの細工される表面と、所望の様式で相互作用するように、ドクター台又はドクターバック（ｄｏｃｔｏｒ ｂａｃｋ）などに、固定又は柔軟な様式で、取り付けられてもよい。
【００２４】
ＩＩ．ドクターブレードの割れ目領域を充填する粒子
上記の実施例と組み合わせて使用してもよい本発明の他の実施例は、ブレード、特に、ベルト又はロールカバーと接触するブレードの端部が、所望しない異物又は外来粒子による侵入に耐性を有することである。この耐性の特性は、ブレードの一領域、典型的には、一定の角度で切断された部分を含む領域を、ポリウレタンで処理することにより、達成される。従って、この処理工程は、ブレードの端部をシールし、外来粒子又は異物がブレードの表面に導入されるのを低減し、ブレードがベルトの表面を引っ掻く可能性を低減し、究極的にシートのマーキングを低減する。さらに、角度を有するブレードの所望の部分のみを、ポリウレタンで処理してもよい。従来のものよりもより柔軟にするとともに異物に耐性を有するドクターを達成するため、ブレードの上部分、又はブレードが細工される表面と接触若しくは相互作用する部分のみに、ポリウレタンを処理する。
【００２５】
図１は、本発明により作製されたブレード１０の斜視図を示すものであって、製紙及びパルプの製造機に使用され得るものである。ブレード１０は、本体部分１３２を有する。このブレードは、例えば水を除去する細工の目的用のベルト又はその他の表面と典型的に接触する上部表面１３１と、ブレード１０を取り付け装置若しくはガイドアーム又はその他の支持構造（図示せず）に固定するのに典型的に使用される下部分１３３とを有する。
【００２６】
図２は、本発明によるブレード本体１０を作製するためのウェブ層１１５を示す。ブレード１０は、複数のウェブ層１０２、１０４、１０６、１０８及び１１０から作製される。図２に示すように、ウェブ層１０６、１０８及び１１０は、上部表面及び下部表面にそれぞれ適用されるウェブ層１０２及び１０４と既に組み立てられる。
【００２７】
図３は、厚フェルト１３０を形成するニードリング工程を示す。ウェブ層１０２、１０４、１０６、１０８及び１１０は、ウェブ層のスタック１４０を形成するように、組み立てられる。スタック１４０は、厚フェルト１３０を形成するように、それぞれ上部表面及び下部表面上に材料１２０及び１２２でニードリングされる。（例えば、材料１２２は、ウェブ層１０４と接触し、材料１２０は、ウェブ層１０２と接触する）。
【００２８】
図４は、厚フェルト１３０の熱カレンダリング工程（ｈｏｔ ｃａｌｅｎｄａｒｉｎｇ ｐｒｏｃｅｓｓ）を示す。厚フェルト１３０（図３に由来のもの）は、ローラー１３４（ａ）及び１３４（ｂ）を用いて、カレンダリングされる。図４に示すように、部分１３０（ａ）は、カレンダリング動作の前の厚フェルトを示し、部分１３０（ｂ）は、カレンダリング動作の後の厚フェルトを示す。
【００２９】
図５は、厚フェルト１３０の端部領域のポリウレタン処理を示す。図４に示すようにカレンダリングされる厚フェルト１３０の部分１４０は、ポリウレタンや上記の目的に適したその他の材料などの材料１３６で、コーティング又は処理される。このコーティング又は処理工程は、スタック１４０を処理化合物で浸すことにより、典型的に達成される。図５に示すように、処理材料１３６は、要素１３８で示すように、部分１４０に吸収され、又は付着される。
【００３０】
図６は、一定の角度で切断される端部領域１４０を示す。図６に示すように、処理部分１４０を有する厚フェルト１３０は、部材１３０の軸１４１に相対して、典型的に約２５°〜８０°である角度αで切断される。好ましくは、角度αは、部材１３０の軸１４１に相対して、約３５°〜５５°であり、最も好ましくは、角度αは、部材１３０の軸１４１に相対して、約４５°である。厚フェルト１３０の処理端部を切断することにより、ブレード１０が得られる。
【００３１】
図７は、本発明によるブレード１０の寸法の例を示す。ブレード１０は、処理領域１５０と；処理領域１４０を有する第１端部分１５４と；第２端部分１５６とを含む上部外側面１５２を有する。このブレードは、約１０ｃｍ〜２０ｃｍの第１端部分１５４の長さ；約０．２５ｃｍ〜３ｃｍの第１端部分１５４の高さ；及び約２ｍ〜１２ｍの第２端部分１５６の長さなどの寸法を有してもよい。ブレードの在庫は、種々の長さで製造されてもよく、且つ所望の長さの複数のブレードに切断されてもよい。
【００３２】
図８は、本発明によるブレード１０が導入された例を示す。ドクターブレード１０は、ローラー１８０と接触するベルト１８２に相対して、配置される。ドクターブレード１０は、上述のように、一定の角度の表面を有し、ベルト１８２から、水及び／又はその他の材料を除去するように、ベルト１８２と接触する。
【００３３】
図９は、従来のブレード及び本発明によるブレードを使用した一般的シュープレスベルトに関する摩耗試験の結果のグラフ９０を示す。特に、グラフ９０は、動作の日数を示す横軸１９０と、ベルトに存在する溝の百分率を示す縦軸１９２とを有する。線１９６で示すように、標準的なブレードでは、特に使用後２日以降、ベルトの劣化又は表面の分解が発生した。線１９４は、本発明に従って作製されたブレードが、ベルトに対して向上した擦り切れの特性を有し且つ他のブレードより速くベルトを分解しないこと（線１９６）を示す。
【００３４】
従って、本発明の基礎的で新規な特徴を示し、述べ且つ指摘する一方、理解されるべきことは、示した各装置の形態及び細部並びにこれらの動作において、種々の削除、置換及び変更は、本発明の精神から逸脱することなく、当業者によりなし得るものである。例えば、同様の結果を達成する実質的に同様の方式における実質的に同様の機能を実行する要素及び／又は方法のステップの全ての組み合わせが本発明の範囲に包含されるものであることは、明確に意図されるものである。さらに、種々の開示の形態又は本発明の実施例と組み合わせて示し及び／又は述べた構造及び／又は要素及び／又は方法のステップは、他の形態又は実施例に導入され得るものであることを認識されるべきである。従って、本発明は添付した特許請求の範囲によって示すもののみに限定される。
【図面の簡単な説明】
【００３５】
【図１】本発明によるブレードの斜視図であって、紙及びパルプの製造機に使用され得るものである。
【図２】ブレードを作製するためのウェブ層を示す。
【図３】ウェブ層のニードリング工程を示す。
【図４】厚フェルトの熱カレンダー工程を示す。
【図５】厚フェルトの領域のポリウレタン処理を示す。
【図６】一定の角度で切断された端部領域を示す。
【図７】本発明によるブレードの寸法の例を示す。
【図８】本発明の導入されたブレードの例を示す。
【図９】従来のブレードを使用するベルト、及び本発明によるブレードを使用した、ベルトに関する摩耗試験の比較結果を示す。
【符号の説明】
【００３６】
１０ ブレード
９０ グラフ
１０２ ウェブ層
１０４ ウェブ層
１０６ ウェブ層
１０８ ウェブ層
１１０ ウェブ層
１１５ ウェブ層
１２０ 材料
１２２ 材料
１３０ 厚フェルト
１３０（ａ） 部分
１３０（ｂ） 部分
１３１ 上部表面
１３２ 本体部分
１３３ 下部分
１３４（ａ） ローラー
１３４（ｂ） ローラー
１３６ 材料
１３８ 要素
１４０ スタック
１４１ 軸
１５０ 処理領域
１５２ 上部外側面
１５４ 第１端部分
１５６ 第２端部分
１８０ ローラー
１８２ ベルト
１９０ 横軸
１９２ 縦軸
１９４ 線
１９６ 線
α 角度
【技術分野】
【０００１】
本発明は、一般的に、製紙工程及びその他の製造工程に使用する工業用のブレード装置に関する。特に、本発明は、ポリウレタンでコートされた傾斜角を有する厚フェルト（ｔｈｉｃｋ ｆｅｌｔ）で作製されたドクターブレードに関する。
【背景技術】
【０００２】
パルプ又は紙の製造機は、パルプ又は紙の製造工程中、種々の部品を利用する。これらの部品としては、例えば、ベルト、プレスロール及び機械ロールが挙げられる。機械ロールは、パルプ又は紙の製造工程の種々の態様、例えば、形成動作、プレス動作、乾燥動作及び／又はカレンダー動作において、使用される。
【０００３】
機械ロールの動作は、ロールの表面上に形成する異物を除去する装置、及び／又はシートを機械ロールから引き剥がす装置をしばしば必要とする。異物を効果的に除去すること、又はシートを機械ロールから除去することに失敗すると、製造される製品の質に壊滅的な影響を及ぼす可能性がある。上記の事項を達成するひとつの方法は、ドクター又はドクターブレードと一般的に称される機械的な装置を使用することである。
【０００４】
また、抄紙機の動作中、及び特に例えば長尺ニッププレス及び特に溝を有するベルトを有するプレス部におけるプレスの動作中、ベルトがプレスニップに戻るにつれて、ベルトの表面及び溝が水のフィルム層を有する可能性があるため、非効率な脱水という高いリスクがある。従って、ドクターブレードは、ベルトから過剰な水を除去するのに有効であってもよい。
【０００５】
ドクターブレードは、所望の適用に応じて、強固な設計又は柔軟な設計であってもよい。また、ドクターブレードは、典型的に取り外し可能なものであってもよく、従って、摩耗した場合、取り替え可能なものであってもよい。
【０００６】
ドクターブレードは、ブレードホルダー及びブレードが設けられた抄紙機の至るところに調節可能に支持される構造ビームに典型的に固定される。ドクターブレードは、ロール表面から、パルプ若しくは紙ウェブのシート又はこれらの一部を含む種々の異物を削り取るように、ロールの表面に直接接触する。
【０００７】
例えば、Ｔａｋｅｕｃｈｉらによる、表題”Ｄｏｃｔｏｒ Ｂｌａｄｅ”なる特許文献１は、一体の基材とバット繊維層とから作製されたドクターブレードに関する。その繊維積層体のひとつの側面に樹脂が含浸される。使用する際、樹脂の量が少ない層は、ベルトに接触する。この出願の記載事項を参照して、本願に取り込む。
【０００８】
また、Ｔａｋｅｕｃｈｉらによる、表題”Ｄｏｃｔｏｒ Ｂｌａｄｅ”なる特許文献２は、繊維積層体に含浸された樹脂を有するドクターブレードに関するものであって、この積層体は、基材と、ニードルパンチにより一体化されたバット層とを有する。この出願の記載事項を参照して、本願に取り込む。
【０００９】
第三に、Ｔａｋｅｕｃｈｉらによる、表題”Ｄｏｃｔｏｒ Ｂｌａｄｅ ｆｏｒ Ｒｅｍｏｖｉｎｇ Ｗａｔｅｒ”なる特許文献３は、溝を有するベルトから水を除去するための、積層された樹脂を含浸したドクターブレードに関する。ベルト接触層の繊維は、ベルトの進行方向に配向している。この出願の記載事項を参照して、本願に取り込む。
【００１０】
残念ながら、水及びその他の異物を除去する上記のタイプのドクターブレードを使用すると、溝を有するベルトの表面に所望しない擦り切れや摩耗を生じる。この擦り切れは、ドクターブレードに含まれる、本願においてＰＥＴとも称するポリエステル、又はガラス繊維に典型的に由来し、堅い樹脂に含浸した際、本願においてＰＵＲとも称するポリウレタン樹脂から通常なる柔軟なベルトの表面と接触する表面を研磨することとなる。
【００１１】
溝を有するベルトの表面の擦り切れの第二の原因は、ブレードの穴空け（ｐｉｔｔｉｎｇ）又は曲げにより生じるドクターブレード上の障害領域に捕捉され又は詰められる炭酸カルシウム（ＣａＣＯ３）などの異物や外来粒子である。このことは、ベルトの研磨をさらに悪化させ、ベルトの運用期間を短縮してしまう。
【００１２】
さらに、トランスファーベルトを使用することで、上記のタイプに対して、向上したドクターブレードの要求が増す。トランスファーベルトの表面は、シュープレスベルトと比較して、より柔軟で、より追従性が高い。トランスファーベルトは、紙ウェブと直接接触するので、トランスファーベルトの表面は、除去されるべきウェブから、異物／粘着物を拾う可能性がある。プレスニップに侵入する前に、トランスファーベルトの表面は、脱水の効果の損失を最小限とするため、並びに紙ウェブの初期の圧搾を阻止し及び／又は水膜を崩壊させて紙シートがトランスファーベルトから離脱するようにベルトの表面に形成される水膜の厚みを最小限とするため、相対的に乾燥される必要がある。また、トランスファーベルトの表面は、ドクターブレードの端部に埋没した異物により、均一に摩耗、又は引っ掻かれ（ｓｃｏｒｅｄ／ｓｃｒａｔｃｈｅｄ）得ない。不均一にすり減ったトランスファーベルトは、紙ウェブに不均一な圧力を印加することとなり、これは、紙の脱水及びシートの移行の両方に影響を及ぼす可能性がある。引っ掻かれたベルトは、紙シートにマークをつけることとなる。
【特許文献１】欧州特許出願第１２９５９８８号明細書
【特許文献２】欧州特許出願第１２９８２５０号明細書
【特許文献３】欧州特許出願第１３４２８４２号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【００１３】
従って、ブレードの意図する機能を満足のいくように実行しつつ、ベルト又はブレードが接触する表面の擦り切れ及び摩耗を最小限にする表面を有するドクターブレードが所望されている。
【課題を解決するための手段】
【００１４】
本発明は、ドクターブレードなどの工業用ブレードに関し、これは、ブレードが接触する部品の表面の擦り切れを最小限とする表面を有し、これにより、部品の運用期間を増加させる。
【００１５】
従って、本発明の一実施例は、複数のウェブ層を有する工業用ブレードに係り、各ウェブ層は、ポリアミド及び共重合ポリエステルの混合物から形成される。ウェブ層の端部は、ポリウレタンコーティングをも有し、ブレードは、傾斜部分を有するように作製される。
【００１６】
本発明の他の実施例は、ブレードの製造方法に関する。この方法は、複数のウェブ層を設けるステップを有し、各ウェブ層は、ポリアミド及び共重合ポリエステルの混合物から形成される。この複数のウェブ層は、厚フェルトを形成するように、ニードリングされ、その後、カレンダリングされる。ポリウレタンは、この厚フェルトの端部に適用され、所定時間の後、この端部上に傾斜表面が形成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１７】
本発明を特徴付ける新規な種々の特徴は、特に添付した特許請求の範囲に指摘されており、この開示の一部を形成するものである。本発明、並びに本発明の作用効果及び使用によって得られる特定の目的をより良好の理解するため、添付の記載事項について述べ、これは、添付の図面に本発明の好適実施例が示されており、この図面において、対応する部材は、同様の参照番号を付した。
【００１８】
従って、本発明により、その目的及び利点が認識され、以下の記載は、図面とともに参照されるべきものである。
【００１９】
本発明は、向上されたドクターブレード、及び斯かるブレードの製造方法を提供する。一実施例において、本発明は、ポリウレタン（ＰＵＲ）から製造されるものなどの、柔らかいベルトと接触するドクターブレードの表面に由来するベルトの擦り切れの問題を解決する。第二に、本発明は、従来のドクターブレードの障害を受けた端部に捕捉され又は詰められる異物又は外来粒子の問題をも解決する。斯かる障害は、ブレードの穴空け又は曲げに由来して発生する可能性がある。捕捉された異物又は外来粒子は、ベルトの擦り切れを起こすばかりでなく、ベルト表面の引っ掻きをもたらす可能性もあり、究極的にシートのマーキングをもたらす。
【００２０】
Ｉ．ドクターブレードの摩擦によるベルトの擦り切れの軽減
特に、本発明は、ブレードからＰＥＴ繊維又はガラス繊維を除き、ポリアミド（ＰＡ）及び共重合ポリエステルの繊維混合物でドクターブレードを構築することにより、向上したドクターブレードを提供する。この混合物は、ベルトやロールカバーなどの細工される（ｄｏｃｔｏｒｅｄ）表面を接触する、より柔らかく摩耗の少ない表面を提供する。この繊維は、厚フェルトを形成するように、混合され且つニードリングされ、その後、長尺ストリップ（ｌｏｎｇ ｓｔｒｉｐ）に切断される。
【００２１】
このストリップは、その後、ドクターブレードを利用する製紙工程やその他の製造工程などの所望の適用例に必要な硬度及び合成を達成するのに十分高い温度（例えば、２００℃以上）で、ホットプレス又はカレンダリングされる。
【００２２】
ホットプレスの工程の後、厚フェルトの１つ以上の端部は、所望の角度に切断される。この角度は、例えば、厚フェルトの長手方向の軸に対して、約２５°〜８０°であってもよく、好ましくは約４５°である。
【００２３】
ブレードの端部を切断動作で一旦形成すると、ブレードは、ドクターブレードが所望の様式でベルトやロールカバーなどの細工される表面と、所望の様式で相互作用するように、ドクター台又はドクターバック（ｄｏｃｔｏｒ ｂａｃｋ）などに、固定又は柔軟な様式で、取り付けられてもよい。
【００２４】
ＩＩ．ドクターブレードの割れ目領域を充填する粒子
上記の実施例と組み合わせて使用してもよい本発明の他の実施例は、ブレード、特に、ベルト又はロールカバーと接触するブレードの端部が、所望しない異物又は外来粒子による侵入に耐性を有することである。この耐性の特性は、ブレードの一領域、典型的には、一定の角度で切断された部分を含む領域を、ポリウレタンで処理することにより、達成される。従って、この処理工程は、ブレードの端部をシールし、外来粒子又は異物がブレードの表面に導入されるのを低減し、ブレードがベルトの表面を引っ掻く可能性を低減し、究極的にシートのマーキングを低減する。さらに、角度を有するブレードの所望の部分のみを、ポリウレタンで処理してもよい。従来のものよりもより柔軟にするとともに異物に耐性を有するドクターを達成するため、ブレードの上部分、又はブレードが細工される表面と接触若しくは相互作用する部分のみに、ポリウレタンを処理する。
【００２５】
図１は、本発明により作製されたブレード１０の斜視図を示すものであって、製紙及びパルプの製造機に使用され得るものである。ブレード１０は、本体部分１３２を有する。このブレードは、例えば水を除去する細工の目的用のベルト又はその他の表面と典型的に接触する上部表面１３１と、ブレード１０を取り付け装置若しくはガイドアーム又はその他の支持構造（図示せず）に固定するのに典型的に使用される下部分１３３とを有する。
【００２６】
図２は、本発明によるブレード本体１０を作製するためのウェブ層１１５を示す。ブレード１０は、複数のウェブ層１０２、１０４、１０６、１０８及び１１０から作製される。図２に示すように、ウェブ層１０６、１０８及び１１０は、上部表面及び下部表面にそれぞれ適用されるウェブ層１０２及び１０４と既に組み立てられる。
【００２７】
図３は、厚フェルト１３０を形成するニードリング工程を示す。ウェブ層１０２、１０４、１０６、１０８及び１１０は、ウェブ層のスタック１４０を形成するように、組み立てられる。スタック１４０は、厚フェルト１３０を形成するように、それぞれ上部表面及び下部表面上に材料１２０及び１２２でニードリングされる。（例えば、材料１２２は、ウェブ層１０４と接触し、材料１２０は、ウェブ層１０２と接触する）。
【００２８】
図４は、厚フェルト１３０の熱カレンダリング工程（ｈｏｔ ｃａｌｅｎｄａｒｉｎｇ ｐｒｏｃｅｓｓ）を示す。厚フェルト１３０（図３に由来のもの）は、ローラー１３４（ａ）及び１３４（ｂ）を用いて、カレンダリングされる。図４に示すように、部分１３０（ａ）は、カレンダリング動作の前の厚フェルトを示し、部分１３０（ｂ）は、カレンダリング動作の後の厚フェルトを示す。
【００２９】
図５は、厚フェルト１３０の端部領域のポリウレタン処理を示す。図４に示すようにカレンダリングされる厚フェルト１３０の部分１４０は、ポリウレタンや上記の目的に適したその他の材料などの材料１３６で、コーティング又は処理される。このコーティング又は処理工程は、スタック１４０を処理化合物で浸すことにより、典型的に達成される。図５に示すように、処理材料１３６は、要素１３８で示すように、部分１４０に吸収され、又は付着される。
【００３０】
図６は、一定の角度で切断される端部領域１４０を示す。図６に示すように、処理部分１４０を有する厚フェルト１３０は、部材１３０の軸１４１に相対して、典型的に約２５°〜８０°である角度αで切断される。好ましくは、角度αは、部材１３０の軸１４１に相対して、約３５°〜５５°であり、最も好ましくは、角度αは、部材１３０の軸１４１に相対して、約４５°である。厚フェルト１３０の処理端部を切断することにより、ブレード１０が得られる。
【００３１】
図７は、本発明によるブレード１０の寸法の例を示す。ブレード１０は、処理領域１５０と；処理領域１４０を有する第１端部分１５４と；第２端部分１５６とを含む上部外側面１５２を有する。このブレードは、約１０ｃｍ〜２０ｃｍの第１端部分１５４の長さ；約０．２５ｃｍ〜３ｃｍの第１端部分１５４の高さ；及び約２ｍ〜１２ｍの第２端部分１５６の長さなどの寸法を有してもよい。ブレードの在庫は、種々の長さで製造されてもよく、且つ所望の長さの複数のブレードに切断されてもよい。
【００３２】
図８は、本発明によるブレード１０が導入された例を示す。ドクターブレード１０は、ローラー１８０と接触するベルト１８２に相対して、配置される。ドクターブレード１０は、上述のように、一定の角度の表面を有し、ベルト１８２から、水及び／又はその他の材料を除去するように、ベルト１８２と接触する。
【００３３】
図９は、従来のブレード及び本発明によるブレードを使用した一般的シュープレスベルトに関する摩耗試験の結果のグラフ９０を示す。特に、グラフ９０は、動作の日数を示す横軸１９０と、ベルトに存在する溝の百分率を示す縦軸１９２とを有する。線１９６で示すように、標準的なブレードでは、特に使用後２日以降、ベルトの劣化又は表面の分解が発生した。線１９４は、本発明に従って作製されたブレードが、ベルトに対して向上した擦り切れの特性を有し且つ他のブレードより速くベルトを分解しないこと（線１９６）を示す。
【００３４】
従って、本発明の基礎的で新規な特徴を示し、述べ且つ指摘する一方、理解されるべきことは、示した各装置の形態及び細部並びにこれらの動作において、種々の削除、置換及び変更は、本発明の精神から逸脱することなく、当業者によりなし得るものである。例えば、同様の結果を達成する実質的に同様の方式における実質的に同様の機能を実行する要素及び／又は方法のステップの全ての組み合わせが本発明の範囲に包含されるものであることは、明確に意図されるものである。さらに、種々の開示の形態又は本発明の実施例と組み合わせて示し及び／又は述べた構造及び／又は要素及び／又は方法のステップは、他の形態又は実施例に導入され得るものであることを認識されるべきである。従って、本発明は添付した特許請求の範囲によって示すもののみに限定される。
【図面の簡単な説明】
【００３５】
【図１】本発明によるブレードの斜視図であって、紙及びパルプの製造機に使用され得るものである。
【図２】ブレードを作製するためのウェブ層を示す。
【図３】ウェブ層のニードリング工程を示す。
【図４】厚フェルトの熱カレンダー工程を示す。
【図５】厚フェルトの領域のポリウレタン処理を示す。
【図６】一定の角度で切断された端部領域を示す。
【図７】本発明によるブレードの寸法の例を示す。
【図８】本発明の導入されたブレードの例を示す。
【図９】従来のブレードを使用するベルト、及び本発明によるブレードを使用した、ベルトに関する摩耗試験の比較結果を示す。
【符号の説明】
【００３６】
１０ ブレード
９０ グラフ
１０２ ウェブ層
１０４ ウェブ層
１０６ ウェブ層
１０８ ウェブ層
１１０ ウェブ層
１１５ ウェブ層
１２０ 材料
１２２ 材料
１３０ 厚フェルト
１３０（ａ） 部分
１３０（ｂ） 部分
１３１ 上部表面
１３２ 本体部分
１３３ 下部分
１３４（ａ） ローラー
１３４（ｂ） ローラー
１３６ 材料
１３８ 要素
１４０ スタック
１４１ 軸
１５０ 処理領域
１５２ 上部外側面
１５４ 第１端部分
１５６ 第２端部分
１８０ ローラー
１８２ ベルト
１９０ 横軸
１９２ 縦軸
１９４ 線
１９６ 線
α 角度
【特許請求の範囲】
【請求項１】
複数のウェブ層を設けるステップであって、各ウェブ層は、ポリアミド及び共重合ポリエステルの混合物から形成される、ステップと；
厚フェルトを形成するように、前記の複数のウェブ層をニードリングするステップと；
前記厚フェルトをカレンダリングするステップと；
ポリウレタンを、前記厚フェルトの端部の所望の部分に適用するステップと；
前記端部に一定の角度の表面を形成するステップと；
を有することを特徴とするブレードの製造方法。
【請求項２】
前記の一定の角度の表面は、約２５°〜８０°の角度で形成されることを特徴とする請求項１に記載の方法。
【請求項３】
前記の一定の角度の表面は、約４５°の角度で形成されることを特徴とする請求項１に記載の方法。
【請求項４】
前記のカレンダリングするステップは、高温で実行されることを特徴とする請求項１に記載の方法。
【請求項５】
前記の所望の部分は、細工される表面と相互作用する前記ブレードの上部表面であることを特徴とする請求項１に記載の方法。
【請求項６】
ポリアミド及び共重合ポリエステルの混合物からそれぞれ形成された複数のウェブ層と；
前記の複数のウェブ層の端部の所望の部分上のポリウレタンのコーティングと；
前記のコーティングされた領域の一定の角度を有する表面と；
を有することを特徴とする工業用ブレード。
【請求項７】
前記の一定の角度の表面は、約２５°〜８０°の角度で形成されることを特徴とする請求項６に記載の工業用ブレード。
【請求項８】
前記の一定の角度の表面は、約４５°の角度で形成されることを特徴とする請求項７に記載の工業用ブレード。
【請求項９】
前記ウェブ層は、作製工程中、カレンダリングされることを特徴とする請求項６に記載の工業用ブレード。
【請求項１０】
前記ウェブ層は、高温でカレンダリングされることを特徴とする請求項９に記載の工業用ブレード。
【請求項１１】
前記の所望の部分は、細工される表面と相互作用する前記ブレードの上部表面であることを特徴とする請求項６に記載の工業用ブレード。
【請求項１】
複数のウェブ層を設けるステップであって、各ウェブ層は、ポリアミド及び共重合ポリエステルの混合物から形成される、ステップと；
厚フェルトを形成するように、前記の複数のウェブ層をニードリングするステップと；
前記厚フェルトをカレンダリングするステップと；
ポリウレタンを、前記厚フェルトの端部の所望の部分に適用するステップと；
前記端部に一定の角度の表面を形成するステップと；
を有することを特徴とするブレードの製造方法。
【請求項２】
前記の一定の角度の表面は、約２５°〜８０°の角度で形成されることを特徴とする請求項１に記載の方法。
【請求項３】
前記の一定の角度の表面は、約４５°の角度で形成されることを特徴とする請求項１に記載の方法。
【請求項４】
前記のカレンダリングするステップは、高温で実行されることを特徴とする請求項１に記載の方法。
【請求項５】
前記の所望の部分は、細工される表面と相互作用する前記ブレードの上部表面であることを特徴とする請求項１に記載の方法。
【請求項６】
ポリアミド及び共重合ポリエステルの混合物からそれぞれ形成された複数のウェブ層と；
前記の複数のウェブ層の端部の所望の部分上のポリウレタンのコーティングと；
前記のコーティングされた領域の一定の角度を有する表面と；
を有することを特徴とする工業用ブレード。
【請求項７】
前記の一定の角度の表面は、約２５°〜８０°の角度で形成されることを特徴とする請求項６に記載の工業用ブレード。
【請求項８】
前記の一定の角度の表面は、約４５°の角度で形成されることを特徴とする請求項７に記載の工業用ブレード。
【請求項９】
前記ウェブ層は、作製工程中、カレンダリングされることを特徴とする請求項６に記載の工業用ブレード。
【請求項１０】
前記ウェブ層は、高温でカレンダリングされることを特徴とする請求項９に記載の工業用ブレード。
【請求項１１】
前記の所望の部分は、細工される表面と相互作用する前記ブレードの上部表面であることを特徴とする請求項６に記載の工業用ブレード。
【図３】
【図９】
【図１】
【図２】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１】
【図２】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【公表番号】特表２００８−５３４７９９（Ｐ２００８−５３４７９９Ａ）
【公表日】平成２０年８月２８日（２００８．８．２８）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−５０４０００（Ｐ２００８−５０４０００）
【出願日】平成１７年３月３１日（２００５．３．３１）
【国際出願番号】ＰＣＴ／ＵＳ２００５／０１０６１３
【国際公開番号】ＷＯ２００６／１１８５５６
【国際公開日】平成１８年１１月９日（２００６．１１．９）
【出願人】（５９１０９７４１４）アルバニー インターナショナル コーポレイション (110)
【氏名又は名称原語表記】ＡＬＢＡＮＹ ＩＮＴＥＲＮＡＴＩＯＮＡＬ ＣＯＲＰＯＲＡＴＩＯＮ
【Ｆターム（参考）】
【公表日】平成２０年８月２８日（２００８．８．２８）
【国際特許分類】
【出願日】平成１７年３月３１日（２００５．３．３１）
【国際出願番号】ＰＣＴ／ＵＳ２００５／０１０６１３
【国際公開番号】ＷＯ２００６／１１８５５６
【国際公開日】平成１８年１１月９日（２００６．１１．９）
【出願人】（５９１０９７４１４）アルバニー インターナショナル コーポレイション (110)
【氏名又は名称原語表記】ＡＬＢＡＮＹ ＩＮＴＥＲＮＡＴＩＯＮＡＬ ＣＯＲＰＯＲＡＴＩＯＮ
【Ｆターム（参考）】
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