説明

ブロックの乾燥養生処理装置、乾燥養生処理方法及び被覆部材循環装置

【課題】 コンクリートブロック表面の空孔や水隙からの炭酸化を防ぎ、被覆部材を手作業等で載置する煩雑な手段及び被覆部材の必要以上のストックを排除し、特別な養生室を使うことなく耐久性に優れた成型ブロックを生産することを目的とする。
【解決手段】 ブロック成型機40により成形パレット32上にブロック34を成型し、成型されたブロックを往路コンベア36によって移送し、乾燥養生処理後のブロック34’を復路コンベア40によって移送し、往路コンベアと復路コンベアの上方を渡して設置する着脱装置42を懸架したレール35と脚部とを有する被覆部材循環装置によって、復路コンベア上にあるブロックの上面に載置されている被覆部材31を拾い上げた後、被覆部材を往路コンベア上に移送し、往路コンベア上のブロック34の上面に密着するように被覆部材を供給することを特徴とするブロックの乾燥養生処理方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成型されたブロックを乾燥養生するための処理装置、処理方法及び乾燥養生処理に用いられる被覆部材循環装置に関する。
【背景技術】
【0002】
成型ブロックとしては、コンクリートブロック、レンガブロック、セラミックブロック等が挙げられる。例えば、コンクリートブロックの基礎材料は、セメント、水、細骨材及び粗骨材等であり、二次材料として混合材及び混和剤等が使用される。これらの材料を調製し、下抜式成型機によって即時脱型することによってブロックを成型する。従来、成型されたブロックは、そのまま固定式の数段の棚等に段積して乾燥処理が行われていた(特許文献1乃至3参照。)。
【0003】
乾燥処理工程においては、温度条件等の管理が重要であり、寒冷地では氷結によって破損したり、破損しないまでも耐久性が大幅に減少することが知られていた。また乾燥状態や低湿では強度増進は非常に遅れ、ことに乾燥養生処理の初期における湿分不足は成型ブロックに悪影響を及ぼす。そのため、特別な養生室を設けて、温度・湿度及び圧力等の環境条件を管理する方法も一般化している。しかしながら、養生室の建設・維持には費用がかかり、成型ブロックを養生室に搬入・搬出する煩雑な作業も必要であった。
【0004】
成型ブロックの乾燥養生処理は、石材、煉瓦及び鋼材等に比較して、その表面の空孔や水隙から炭酸化が始まることが知られている。コンクリートブロックにおける炭酸化は、セメント材料中に含まれる粒子群が空気と接触して空気中の水蒸気と炭酸ガスを吸収することによって進行する。特にコンクリートブロックの上面には炭酸石灰の薄膜が生じ、強度の低下と、凝結の異状を示す時には固結して使用に耐えなくなるのである。
【特許文献1】特開2001−26009
【特許文献2】特開2001−140205
【特許文献3】特開2004−74453
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、コンクリートブロックの上面に被覆部材を密着させて、ブロック表面の空孔や水隙からの炭酸化を防ぐことを目的とする。
また同時に被覆部材を循環装置によって使いまわすことによって、被覆部材を手作業等で成型ブロック上に載置する煩雑な手段及び被覆部材の必要以上のストックを排除することを目的とする。
また少なくとも往路・復路コンベアと、積込機・降し機と、被覆部材循環装置を用いることによって、特別な養生室を使うことなく、コンクリートブロックの炭酸化を防止し、耐久性に優れたコンクリートブロックを生産する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者は、上記の問題を解決するために、以下の構成を採用した。
(1)本発明は、ブロック成型機により成形パレット上にブロックを成型した後、被覆部材をブロックの上面に密着するように載置した後、一定期間静置することによって乾燥養生処理を行うことを特徴とするブロックの乾燥養生処理方法である。
【0007】
(2)本発明は、ブロック成型機により成形パレット上にブロックを成型し、成型されたブロックを往路コンベアによって移送し、乾燥養生処理後のブロックを復路コンベアによって移送し、該往路コンベアと復路コンベアの上方を渡して設置する着脱装置を懸架したレールと脚部とを有する被覆部材循環装置によって、復路コンベア上にあるブロックの上面に載置されている被覆部材を拾い上げた後、被覆部材を往路コンベア上に移送し、往路コンベア上のブロックの上面に密着するように被覆部材を供給することを特徴とするブロックの乾燥養生処理方法である。
【0008】
(3)本発明は、少なくともブロック成型機により成形パレット上に成型されたブロックを移送する往路コンベアと、乾燥養生されたブロックを移送する復路コンベアと、該往路コンベアと復路コンベアの上方を渡して設置する被覆部材循環装置とから構成される乾燥養生処理装置において、当該被覆部材循環装置が着脱装置を懸架したレールと脚部とを有し、該着脱装置が往路コンベア上にあるブロックの上面に被覆部材を密着するように載置する供給手段と、復路コンベア上にあるブロックの上面に載置されている被覆部材を拾い上げる除去手段を有し、かつ往路コンベアと復路コンベア間の上方を往復するようにレールを移動するように構成されていることを特徴とするブロックの乾燥養生処理装置である。
【0009】
(4)本発明は、往路コンベアと復路コンベアの上方を渡して設置され、少なくとも着脱装置を懸架したレールと脚部とから構成される被覆部材循環装置において、当該着脱装置が往路コンベア上にあるブロックの上面に被覆部材を密着するように載置する供給手段と、復路コンベア上にあるブロックの上面に載置されている被覆部材を拾い上げる除去手段を有し、かつ往路コンベアと復路コンベア間の上方を往復するようにレールを移動するように形成されていることを特徴とする被覆部材循環装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、コンクリートブロックの上面に被覆部材を密着させて、ブロック表面の空孔や水隙からの炭酸化を防止し、また被覆部材を循環装置によって使いまわすことによって、被覆部材を手作業等で成型ブロック上に載置するという煩雑な手段及び被覆部材の必要以上のストックを排除するという効果を奏する。
また往路・復路コンベアと、被覆部材循環装置を用いることによって、特別な養生室を使用することなく、コンクリートブロックの炭酸化を防止し、耐久性に優れたコンクリートブロックを生産するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明の実施態様を図面に則して説明する。本実施態様として、各部材についての具体的な構成を記載するが、本発明は、以下の構成に限定されるものではない。
図1は、請求項1に係る乾燥養生処理方法を説明するための正面図である。成形パレット2上に成型された複数のコンクリートブロック1の上面に被覆部材3が載置された状態を示す正面図である。被覆部材3はプラスチック樹脂によって形成されている。コンクリートブロック1はブロック成型機により成型され、成形パレット2上に並置される。その後、被覆部材3を複数のコンクリートブロック1の上面に密着するように載置する。この状態のまま一定期間静置することによって乾燥養生処理を行う。
【0012】
成形パレット2上の全てのコンクリートブロック1の上面の空孔や水隙は被覆部材3によって覆われているため、成型ブロック1内からの水分の蒸散を防ぎ、大気中の水蒸気及び炭酸ガスとブロック材料の粒子との接触を防止する。このような乾燥養生処理方法によってコンクリートブロック1の空孔や水隙からの炭酸化を防止することができる。
【0013】
図2は、請求項2に係る成型ブロックの乾燥養生処理方法を説明するための斜視図である。説明の便宜上、図1と同じ部材については同じ符号を用いる。
図2中、5は下抜式のコンクリートブロック成型機であり、7は往路コンベアであり、8は復路コンベアである。ブロック成型機5で成型された複数のブロック1は、成形パレット2上に載置されたまま往路コンベア7上に取出される。そして往路コンベア7によって移送され図示しない定置場所へ向う。定置場所に移送される手前で被覆部材循環装置10の供給手段によって被覆部材3がコンクリートブロック1の上面に載置される。ここで被覆部材循環装置10は、レール4と、レール4を支える脚部5と、レール4上を移動する着脱装置12とから構成される。被覆部材3は被覆部材循環装置10によってコンクリートブロック1の上面全体に密着するように載置されるので、コンクリートブロック1内からの水分の蒸散が防止され、大気中の水蒸気や炭酸ガスがブロック材料の粒子と接触することがない。
【0014】
被覆部材3が載置されたコンクリートブロック1は、往路コンベア7によって成形パレット2ごと図示しない積込機に移送される。積込機はパレット2等を載せたまま上昇し、図示しないラックトランスポータによって、定置場所に積み込まれる。
コンクリートブロック1は、定置場所において乾燥養生処理される。かかる乾燥養生処理においては、コンクリートブロック1の上面全体に被覆部材3が載置されているため、コンクリートブロック1の炭酸化が防止され、耐久性に優れたコンクリートブロック1’が生産される。
【0015】
一定期間の乾燥養生処理を終えたコンクリートブロック1’は、再びラックトランスポータによって図示しない降し機に移送される。降し機は成形パレット2ごと被覆部材3の載置されたコンクリートブロック1’を下降し、復路コンベア8上に載置する。復路コンベア8によって成形パレット等は移載装置17へ向う。移載装置17の手前で被覆部材循環装置10の除去手段によって被覆部材3が拾い上げられる。その後、コンクリートブロック1’を載せた成形パレット2は、移載装置17へ移送される。移載装置17はコンクリートブロック1’と成形パレット2とを分離する。成形パレット2は再びコンクリートブロック成型機5へ循環する。
【0016】
図3は、請求項3の乾燥養生処理装置の一例を示す平面図である。
本乾燥養生処理装置は、コンクリートブロック成型機30により成形パレット32上に成型された複数のコンクリートブロック34を、図示しない定置棚に移送する往路コンベア36と、定置棚へコンクリートブロック34を並置する積込機37と、乾燥養生されたコンクリートブロック34’を図示しない定置棚から取り出す降し機38と、取り出されたコンクリートブロック34’を移送する復路コンベア40と、往路コンベア36と復路コンベア40の上方を渡して設置される被覆部材循環装置42とから構成される。被覆部材循環装置42は、被覆部材31を往路コンベア36上にある複数のコンクリートブロック34の上面に密着するように載置する供給手段と復路コンベア40上にあるコンクリートブロック34’の上面に載置されている被覆部材31を拾い上げる除去手段とを有し、かつ往路コンベア36と復路コンベア40間の上方を往復するようにレール35を移動するように形成されている。
【0017】
乾燥養生処理を終えたコンクリートブロック34’等は、被覆部材循環装置42の除去手段によって被覆部材31が取り除かれ、移載装置37によって成形パレット32とコンクリートブロック34’に分離される。コンクリートブロック34’は、取出口39から排出され、成形パレット32は再び成型されたブロック34を載置するため、コンクリートブロック成型機30に移送される。
【0018】
図4は、請求項4の被覆部材循環装置の一実施態様を示す正面図である。
本被覆部材循環装置は、往路コンベア43と復路コンベア46の上方を渡して設置され、着脱装置44,44’(説明の便宜上本来1体である着脱装置を2体に分けて描写する。)を懸架したレール45と脚部47とから構成される。被覆部材循環装置の被覆部材52の除去手段は、B部に示す如く、複数の吸盤状の密着部材48’が設置された昇降板50’がシリンダ51’によって下降し、被覆部材52に密着部材48’を接触させた状態で、密着部材48’の吸盤内部を真空状態にし被覆部材52を完全に結着させた後、再びシリンダ51’を上昇することによって成型ブロック54’から被覆部材52を除去する手段である。
【0019】
次に被覆部材循環装置の供給手段について説明する。図中A部に示す如く、除去手段によって吸着された被覆部材52は、レール45上を移動する着脱装置(44’→44)によってA部へ運ばれる。A部は往路コンベア43の上方に位置する。B部から移動しA部で停止した着脱装置44は、シリンダ51を下降し、昇降板50の下部に設置された密着部材48に密着している被覆部材52を成型ブロック54の上面に載置する。被覆部材52の載置された成型ブロック54は、所定期間定置場所で乾燥養生処理が施され、再び復路コンベア46にて被覆部材循環装置に移送されてくる。
【0020】
図5は、請求項4の被覆部材循環装置の他の実地態様を示す正面図である。
本被覆部材循環装置60は、往路コンベア61と復路コンベア62の上方を渡して設置され、着脱装置64,64’(説明の便宜上本来1体である着脱装置を2体に分けて描写する。)を懸架したレール65と脚部67,67とから構成される。被覆部材循環装置60の被覆部材の除去手段はD部に示してある。D部において吸盤状の密着部材68’が複数設置された昇降板70’をサーボモータ71’によって駆動し下降する。図示しない被覆部材に密着部材68’が接触した状態で密着部材68’の内部を真空状態にし被覆部材を密着させた後、サーボモータ71’を駆動し昇降板70’が上昇する。かかる手段によって図示しない成型ブロックから被覆部材を除去することができる。
【0021】
次に被覆部材循環装置60の供給手段について説明する。供給手段は図中C部に示してある。除去手段D部によって吸着された被覆部材は、レール65上を移動する着脱装置64’→64によってC部へ運ばれる。C部は往路コンベア61の上方に位置する。C部で停止した着脱装置64は、サーボモータ71によって複数の密着部材68が設置された昇降板70を下降し、被覆部材を図示しない成型ブロックの上面に載置する。被覆部材の載置された成型ブロックは、往路コンベア61によって図示しない定置場所へ移送され、所定期間定置場所で乾燥養生処理が施され、再び復路コンベア62にて被覆部材循環装置60に移送されてくる。
【0022】
図6は、定置場所に乾燥養生処理のために定置された被覆部材80と、成型ブロック84と、成形パレット82の状態を示す上面図である。
定置場所は都合二箇所の仕切レール85によって三箇所に区分され、一箇所には48体のコンクリートブロック84が収納されている。このように密集した状態でコンクリートブロック84を収納しても、コンクリートブロックの上面全体に被覆部材が載置されているので、コンクリートブロックからの水分の蒸散等が生じないため、特別な養生室による環境条件の管理は不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】請求項1に係る乾燥養生処理方法を説明するための正面図である。
【図2】請求項2に係るコンクリートブロックの乾燥養生処理方法を説明するための斜視図である。
【図3】請求項3の乾燥養生処理装置の一例を示す平面図である。
【図4】請求項4の被覆部材循環装置の一実施態様を示す正面図である。
【図5】請求項4の被覆部材循環装置の他の実地態様を示す正面図である。
【図6】被覆部材、コンクリートブロック、成形パレットの状態を示す上面図である
【符号の説明】
【0024】
1,1’,34,34’,84 コンクリートブロック
54,54’ 成型ブロック
2,32,82 成形パレット
3,31,52,80 被覆部材
5,30 下抜式のコンクリートブロック成型機
7,36,43,61 往路コンベア
8,40,46,62 復路コンベア
10,42,60 被覆部材循環装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロック成型機により成形パレット上にブロックを成型した後、被覆部材をブロックの上面に密着するように載置した後、一定期間静置することによって乾燥養生処理を行うことを特徴とするブロックの乾燥養生処理方法。
【請求項2】
ブロック成型機により成形パレット上にブロックを成型し、成型されたブロックを往路コンベアによって移送し、乾燥養生処理後のブロックを復路コンベアによって移送し、該往路コンベアと復路コンベアの上方を渡して設置する着脱装置を懸架したレールと脚部とを有する被覆部材循環装置によって、復路コンベア上にあるブロックの上面に載置されている被覆部材を拾い上げた後、被覆部材を往路コンベア上に移送し、往路コンベア上のブロックの上面に密着するように被覆部材を供給することを特徴とするブロックの乾燥養生処理方法。
【請求項3】
少なくともブロック成型機により成形パレット上に成型されたブロックを移送する往路コンベアと、乾燥養生されたブロックを移送する復路コンベアと、該往路コンベアと復路コンベアの上方を渡して設置する被覆部材循環装置とから構成される乾燥養生処理装置において、当該被覆部材循環装置が着脱装置を懸架したレールと脚部とを有し、該着脱装置が往路コンベア上にあるブロックの上面に被覆部材を密着するように載置する供給手段と、復路コンベア上にあるブロックの上面に載置されている被覆部材を拾い上げる除去手段を有し、かつ往路コンベアと復路コンベア間の上方を往復するようにレールを移動するように構成されていることを特徴とするブロックの乾燥養生処理装置。
【請求項4】
往路コンベアと復路コンベアの上方を渡して設置され、少なくとも着脱装置を懸架したレールと脚部とから構成される被覆部材循環装置において、当該着脱装置が往路コンベア上にあるブロックの上面に被覆部材を密着するように載置する供給手段と、復路コンベア上にあるブロックの上面に載置されている被覆部材を拾い上げる除去手段を有し、かつ往路コンベアと復路コンベア間の上方を往復するようにレールを移動するように形成されていることを特徴とする被覆部材循環装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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