説明

ブロックアーティファクトの検出

ビデオ信号中のブロックアーティファクトを検出するブロックアーティファクト検出装置(100)が開示される。ブロックアーティファクト検出装置(100)は、前記ビデオ信号に基づいて傾斜信号を計算する計算手段(102)と、前記傾斜信号のそれぞれの局所的な最大値に対応するサンプルのリストを確立する確立手段(104)と、 サンプル間距離のヒストグラムを決定するヒストグラム決定手段と(106)を有し、前記サンプル間距離の第1のものは、前記サンプルの第1のものと前記サンプルの第1のものに後続する前記サンプルの第2のものとの間の第1の距離に対応し、前記サンプル間距離の第2のものは、前記サンプルの第1のものと前記サンプルの第2のものに後続する前記サンプルの第3のものとの間の第2の距離に対応し、前記ブロックアーティファクト検出装置は更に、前記サンプル間距離のヒストグラムを解析し、前記ヒストグラムに基づいてブロックアーティファクト・インジケータを生成する解析手段(108)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビデオ信号中のブロックアーティファクトを検出するブロックアーティファクト検出装置に関する。
【0002】
本発明は更に、
入力画像のシーケンスに対応するビデオ信号を受信する受信手段と、
かようなブロックアーティファクト検出装置と、
前記入力画像のシーケンスに基づいて出力画像のシーケンスを算出する画像処理ユニットであって、前記ブロックアーティファクト検出装置によって制御される画像処理ユニットと、
を有する画像処理機器に関する。
【0003】
本発明は更に、ビデオ信号中のブロックアーティファクトを検出する方法に関する。
【0004】
本発明は更に、コンピュータ装置によってロードされるコンピュータプログラムであって、ビデオ信号中のブロックアーティファクトを検出するための命令を有し、前記コンピュータ装置は処理手段とメモリとを有するコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0005】
例えばMPEG2又はH.264のようなディジタルのブロックベースのエンコード方式によって引き起こされる、ビデオフレーム中の所謂ブロッキングアーティファクト(blocking artifact)又はブロックアーティファクト(block artifact)の出現は、ビデオ処理の分野において次第に増大している問題となっている。特に高画質表示装置においては、知覚される画像の質は、これらのアーティファクトによってかなり劣化させられ得る。更に悪いことに、画像強調ユニットが、元のマテリアル(material)のエッジ(edge)を強調するだけでなく、これらのブロック−エッジ・アーティファクトを増大させ、画像品質を更に劣化させ得る。
【0006】
ブロックアーティファクトは、例えばテレビジョンのような消費者装置による受信の前の伝送回路においてもたらされる。ブロックアーティファクトの出現は、個々の画素のブロックを独立して処理する、不完全で損失の大きい圧縮方式によって引き起こされる。これらのディジタルコーディングのアーティファクトは、例えば衛星伝送の前の損失の大きな圧縮において出現し得、その後にビデオ信号が更にアナログ手段によって放送され得る。かような典型的な場合においては、ブロックの位置及びサイズに関する情報、又はディジタル圧縮からの他のいずれのパラメータもが、アナログビデオ信号において直接には利用可能ではない。ブロックアーティファクトの存在及び視認性を推定するためには、ビデオ信号から当該情報を抽出し、アーティファクトを位置特定し、該アーティファクトの視認性を測定する装置及び方法が必要とされる。
【0007】
ブロックアーティファクト・インジケータは、該タイプの情報を表す。ブロックアーティファクト・インジケータは、更なる画像処理を制御するために利用されることができる。例えば、比較的多くのブロックアーティファクトを伴うビデオ信号に遭遇した場合に、鮮明化(sharpening)ユニットを制御する(又はオフにする)ために利用されることができる。代替として、例えば平滑化(smoothing)のような処理が、これらのブロックアーティファクトを低減するために利用されることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
最初のパラグラフにおいて記載された種類の方法の実施例は、国際特許出願公開WO01/20912より知られている。この既知の方法は、傾斜(gradient)フィルタにより入力信号をフィルタリングしてフィルタリングされた信号を供給するステップと、前記フィルタリングされた信号を処理してブロッキングアーティファクトをグリッド中の位置の関数として識別及び計数するためのアーティファクトブロックレベル基準即ちブロックアーティファクト・インジケータを算出するステップとを有する。この既知の方法は、所定のブロックグリッドサイズの限られたセットに対しては適切に動作する。不運にも、受信されたビデオ信号のブロックアーティファクトの実際の空間的なサイズはしばしば、前記所定のブロックグリッドサイズの限られたセットのサイズとは異なる。このことは、伝送から受信までの回路のどこかにおける、ビデオ信号により表される画像データの空間的なスケーリングによる。
【0009】
本発明の目的は、比較的頑強な、最初のパラグラフに記載された種類のブロックアーティファクト検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の本目的は、
前記ビデオ信号に基づいて傾斜信号を計算する計算手段と、
前記傾斜信号のそれぞれの局所的な最大値に対応するサンプルのリストを確立する確立手段と、
サンプル間距離のヒストグラムを決定するヒストグラム決定手段と、
を有し、前記サンプル間距離の第1のものは、前記サンプルの第1のものと前記サンプルの第1のものに後続する前記サンプルの第2のものとの間の第1の距離に対応し、前記サンプル間距離の第2のものは、前記サンプルの第1のものと前記サンプルの第2のものに後続する前記サンプルの第3のものとの間の第2の距離に対応し、前記ブロックアーティファクト検出装置は更に、
前記サンプル間距離のヒストグラムを解析し、前記ヒストグラムに基づいてブロックアーティファクト・インジケータを生成する解析手段を有するブロックアーティファクト検出装置により達成される。
【0011】
本発明の重要な側面は、サンプル間距離のヒストグラムが、スライドするウィンドウ内で、傾斜信号のそれぞれの局所的な最大値に対応するサンプルの群のサンプル間の全ての距離に基づいて作成される点である。このことは、サンプルのリストの一部に位置する移動する開口内のサンプル間の全ての距離を意味する。それ故、隣接するサンプル間の距離のみではなく、空間的に近接するサンプル間の全ての相互距離が考慮に入れられる。加えて、前記ヒストグラムを確立する間に、適用される先験的な距離、即ち考慮される所定の数の画素距離はない。このことは、例えば8個の画素のサンプルの間の距離のみではなく、整数個の画素によって表現される開口の範囲内のサンプル間の全ての距離が計数されることを意味する。全ての距離の情報を有するヒストグラムの適切な解析により、ブロックアーティファクト・インジケータが提供される。前記解析は、前記ヒストグラムからの、特定のサンプル間距離に対応する優位なビン(bin)の選択を有し、任意に当該ビンの値と隣接するビンの値との組み合わせをも有する。
【0012】
本発明によるブロックアーティファクト検出装置の実施例においては、ブロックアーティファクト・インジケータは、ブロックアーティファクトの空間的なサイズに対応し、ブロックアーティファクト・インジケータは、特定のサンプル間距離に関連する。ブロックアーティファクトの空間的なサイズは、選択されたビン、即ちサンプル間距離を直接適用することにより、比較的容易に決定され得る。ブロックアーティファクト・インジケータは好ましくは、隣接するビンの値と共に当該ビンの値に基づき計算される。このことは、サブ画素(sub-pixel)の精度でブロックアーティファクトの空間的なサイズを計算することを可能とする。ビデオデータの空間的なスケーリングのため、ブロックサイズは例えば10+2/3画素のようになり得る。
【0013】
本発明によるブロックアーティファクト検出装置の実施例においては、ブロックアーティファクト・インジケータが、ブロックアーティファクトの視認性の尺度に対応し、ブロックアーティファクト・インジケータは特定のサンプル間距離の出現の頻度に関連する。特定のサンプル間距離の出現の頻度又は相対的な出現の頻度は、ブロックアーティファクトの視認性の優れたインジケータであることが分かっている。任意に、ブロックアーティファクトの視認性の尺度に対応するブロックアーティファクト・インジケータの計算のため、選択されたビンの2つの隣接するビンの値もが考慮に入れられる。
【0014】
本発明によるブロックアーティファクト検出装置の実施例においては、サンプル間距離のヒストグラムは重み付けされたヒストグラムである。このことは、距離が計数されるだけではなく、各距離のヒストグラムへの寄与がそれぞれの重みに基づくことを意味する。例えば、第1の距離の重み付けは、サンプルの第1のものの局所的な最大値に基づく。任意に、第1の距離の重み付けは、サンプルの第2のものの局所的な最大値にも基づく。好ましくは、第1の距離の重み付けは、前記サンプルの第1のものに対応するサブ部分を有する傾斜信号の一部に基づく。換言すれば、前記局所的な最大値の周りの傾斜信号の値が、前記重み付けのために考慮される。重み付けされたヒストグラムの適用の利点は、ノイズに対する頑強さが更に増大させられる点である。
【0015】
本発明によるブロックアーティファクト検出装置の実施例においては、傾斜信号は、ビデオの信号の幾つかのビデオ線のそれぞれの画素値の合計によって計算される第1の中間信号に基づいて計算される。該合計は、ローパスフィルタリングの一種である。本実施例の利点は、ノイズに対する頑強さが更に増大させられる点である。
【0016】
本発明によるブロックアーティファクト検出装置の実施例においては、ビデオ信号の連続する画素値間の絶対差の計算に基づく、第1の中間信号のハイパスフィルタリングによって、傾斜信号が計算される。該ハイパスフィルタリングは、有意な局所的な最大値のリストを生成するために、頑強な閾値法を適用することを可能とする。このことは、所定の閾値を下回る値を持つ有意でない局所的な最大値が無視されることを意味する。
【0017】
本発明の更なる目的は、最初のパラグラフに記載された種類の画像処理機器であって、比較的頑強なブロックアーティファクト検出装置を有する機器を提供することにある。
【0018】
本発明の本目的は、
前記ビデオ信号に基づいて傾斜信号を計算する計算手段と、
前記傾斜信号のそれぞれの局所的な最大値に対応するサンプルのリストを確立する確立手段と、
サンプル間距離のヒストグラムを決定するヒストグラム決定手段と、
を有し、前記サンプル間距離の第1のものは、前記サンプルの第1のものと前記サンプルの第1のものに後続する前記サンプルの第2のものとの間の第1の距離に対応し、前記サンプル間距離の第2のものは、前記サンプルの第1のものと前記サンプルの第2のものに後続する前記サンプルの第3のものとの間の第2の距離に対応し、前記ブロックアーティファクト検出装置は更に、
前記サンプル間距離のヒストグラムを解析し、前記ヒストグラムに基づいてブロックアーティファクト・インジケータを生成する解析手段を有するブロックアーティファクト検出装置によって達成される。
【0019】
前記画像処理機器は、例えば出力画像を表示するための表示装置のような、付加的な構成要素を有しても良い。前記画像処理ユニットは、以下の画像処理のタイプのうち1以上をサポートしても良い。
−ビデオ圧縮、即ち例えばMPEG規格によるエンコード又はデコード。
−デインタレーシング。インタレーシングは、奇数番目又は偶数番目の画像線を交互に送信する、一般的なビデオ放送手順である。デインタレーシングは、完全な垂直方向の解像度を復元することを試みる。即ち、各画像について奇数番目の線と偶数番目の線とを同時に利用可能とすることを試みる。
−画像レート変換。一連の元の入力画像から、より大きな一連の出力画像が算出される。出力画像は、時間的に2つの元の入力画像の間に配置される。
−時間ノイズ削減。空間的な処理を含んでも良く、空間−時間ノイズ削減に帰着しても良い。
前記画像処理機器は、例えばTV、セットトップボックス、VCR(Video Cassette Recorder)プレイヤ、衛星チューナ、DVD(Digital Versatile Disk)プレイヤ又はレコーダであっても良い。
【0020】
本発明の更なる目的は、比較的頑強な、最初のパラグラフに記載された種類の方法を提供することにある。
【0021】
本発明の本目的は、
前記ビデオ信号に基づいて傾斜信号を計算するステップと、
前記傾斜信号のそれぞれの局所的な最大値に対応するサンプルのリストを確立するステップと、
サンプル間距離のヒストグラムを決定するステップと、
を有し、前記サンプル間距離の第1のものは、前記サンプルの第1のものと前記サンプルの第1のものに後続する前記サンプルの第2のものとの間の第1の距離に対応し、前記サンプル間距離の第2のものは、前記サンプルの第1のものと前記サンプルの第2のものに後続する前記サンプルの第3のものとの間の第2の距離に対応し、前記方法は更に、
前記サンプル間距離のヒストグラムを解析し、前記ヒストグラムに基づいてブロックアーティファクト・インジケータを生成するステップを有する方法によって達成される。
【0022】
本発明の更なる目的は、最初のパラグラフに記載された種類のコンピュータプログラムであって、比較的頑強なコンピュータプログラムを提供することにある。
【0023】
本発明の本目的は、前記ビデオ信号に基づいて傾斜信号を計算するステップと、
前記傾斜信号のそれぞれの局所的な最大値に対応するサンプルのリストを確立するステップと、
サンプル間距離のヒストグラムを決定するステップと、
を実行する機能を前記処理手段に備えさせ、ここで前記サンプル間距離の第1のものは、前記サンプルの第1のものと前記サンプルの第1のものに後続する前記サンプルの第2のものとの間の第1の距離に対応し、前記サンプル間距離の第2のものは、前記サンプルの第1のものと前記サンプルの第2のものに後続する前記サンプルの第3のものとの間の第2の距離に対応し、前記コンピュータプログラムは更に、ロードされた後に、
前記サンプル間距離のヒストグラムを解析し、前記ヒストグラムに基づいてブロックアーティファクト・インジケータを生成するステップを実行する機能を前記処理手段に備えさせるコンピュータプログラムによって達成される。
【0024】
前記ブロックアーティファクト検出装置の変更及び変形は、記載される画像処理機器、方法及びコンピュータプログラムの変更及び変形に対応しても良い。
【0025】
本発明によるブロックアーティファクト検出装置、画像処理機器、方法及びコンピュータプログラムのこれらの及び他の態様は、以下に説明される実装及び実施例に関して、及び添付する図を参照しながら説明され、明らかとなるであろう。
【0026】
図を通して、同一の参照番号が類似の部分を示すために利用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は、本発明によるブロックアーティファクト検出装置100の実施例を模式的に示す。ブロックアーティファクト検出装置100は、入力コネクタ110においてビデオ信号を供給され、出力コネクタ112において、検出されたブロックアーティファクトを表す制御信号を供給するように構成される。前記制御信号は、前記検出されたブロックアーティファクトに関連する。ブロックアーティファクト検出装置100は、
−前記ビデオ信号に基づき傾斜信号
【数1】

を計算する計算ユニット102と、
−前記傾斜信号のそれぞれの局所的な最大値402乃至408に対応するサンプルのリストを確立する最大検出ユニット104と、
−サンプル間距離のヒストグラムを決定するヒストグラム決定ユニット106と、
を有する。ここで前記サンプル間距離の第1のものは、前記サンプルのうちの第1のものと前記サンプルのうちの第2のものとの間の第1の距離に対応する。前記サンプルのうちの第2のものは、前記サンプルのうちの第1のものに後続するものである。ブロックアーティファクト検出装置100は、更に、
−前記サンプル間距離のヒストグラムを解析し、該ヒストグラムに基づいてブロックアーティファクト・インジケータを生成する解析ユニット108を有する。
【0028】
好ましくは、ヒストグラム決定ユニット106は、図5に関連して示される重み付けされたヒストグラムを生成するように構成される。本手段は、別個の発明として見ることができる。好ましくは、スライドするウィンドウ内の全てのサンプル間距離が決定される。ブロックアーティファクト検出装置100の動作は、図2乃至7と共に説明される。
【0029】
計算ユニット102、最大検出ユニット104、ヒストグラム決定ユニット106及び解析ユニット108は、1つのプロセッサを用いて実装されても良い。通常、これらの機能はソフトウェアプログラムの制御下で実行される。実行の間、通常前記ソフトウェアプログラムはRAMのようなメモリにロードされ、該メモリから実行される。前記プログラムは、ROM、ハードディスク又は磁気及び/又は光記憶装置のようなバックグラウンドメモリからロードされても良いし、又はインターネットのようなネットワークを介してロードされても良い。任意に、特定用途向け集積回路が、開示される機能を提供する。
【0030】
図2は、「National Geographic Channel」から取り込まれた入力画像、とりわけ輝度フィールドを示す。高い圧縮率の結果としての通常のブロックの様相に注意されたい。本例においては、10+2/3画素の周期でブロックアーティファクトが出現している。画像形式は標準画質(Standard Definition、DS)即ちそれぞれ720画素の288個の線である。以下、ブロックアーティファクト・インジケータがどのように計算されるかが説明される。該計算は、垂直なエッジの検出に基づく。次いで同様なアプローチが水平のエッジに対しても適用される。
【0031】
要素Iijを持つM×Nの画像
【数2】

を定義する。ここで、i及びjは整数のグリッド位置である。最初のステップは、傾斜信号の計算である。該計算は、要素が以下の式1によって規定される、水平傾斜ベクトル
【数3】

の絶対値の計算を有する。
ij=|Ii+1,j−Iij| (1)
【0032】
次いで、全ての有意な遷移、換言すればエッジ上に位置するいずれの画素もが計数される。かくして、y方向に沿って、絶対値の傾斜が第1の所定の閾値θを超える回数が計数される。θの典型的な値は2に等しく、
【数4】

の値は0から255に亘る。このことは、以下の要素Sを持つベクトル
【数5】

に導く。
【数6】

ここでj=1、2、・・・、N及びT(x)は、以下の式3のように規定されるステップ関数である。
【数7】

図2の画像に基づく
【数8】

の例が、図3に示される。
【0033】
画像
【数9】

が顕著なMPEGブロックアーティファクトを含む場合、
【数10】

が規則的な間隔でピーク即ち局所的な最大値を持つ信号であることが予期される。次のステップは、これらのピークの繰り返し周期を検出することである。式2は、絶対値の傾斜
【数11】

の行方向の合計のみよりも、元の画像エッジの影響、即ちMPEGブロックアーティファクトではないものに対して、より頑強である多ピーク信号を提供することが分かっている。このことは、比較的小さな傾斜と同様に、大きな傾斜も単純に計数されるという概念から理解され得る。このことは、平均Sに対する、比較的大きな傾斜の相対的な寄与を低減する。典型的なMPEGブロックアーティファクトは、非常に大きな傾斜を生成することは予期されないが、明らかに視認可能となるのに十分に大きくなることが予期される。それ故目的は、平均のエッジサイズを見出すことよりも、垂直な画像の列にどれだけ頻繁にエッジが見つかるかを見出すことである。後者の場合においては、元のマテリアルにおける大きなエッジが、より中程度のMPEGブロックエッジではなく、
【数12】

における優位ピークに帰着し得る。
【0034】
【数13】

におけるいずれの顕著なピークも、疑わしいブロックエッジ即ちブロックアーティファクトの結果であると考えられる。疑わしいブロックエッジを見出すため、
【数14】

におけるピークの検出が必要とされる。どのピークが第2の所定の閾値αを超えており、有意なピークとして考えられるかを決定する前に、
【数15】

の低周波トレンド(trend)が
【数16】

から除去される。このことは実質的にハイパスフィルタリングであり、各値Sから、直接の2n+1のサイズの隣接点j−n、j−n+1、・・・、j+nの平均を減算することにより達成される。nの典型的な値はn=4である。トレンド除去(detrend)されたエッジの計数sは、以下の式4に規定される。
【数17】

図4は、図3のエッジ計数信号
【数18】

に基づく、トレンド除去されたエッジ計数
【数19】

を示す。点線400は、第2の所定の閾値αに対応する。点402乃至408は、第2の所定の閾値αを超える検出されたピークを示す。
【数20】

をトレンド除去することは実質的に、直接に隣接する点に対してSを正規化すること、又は換言すれば、jにおいて見出されたエッジの量をjの隣で見出されたエッジの量と比較することに帰着する。このことは、細かいテクスチャを持つ細かい領域において、概して多くのエッジが検出されると考えられるため、意味をなす。それ故、エッジが絶対値の意味で高いだけでなく、相対値の意味でも高い場合に、該エッジが考慮に入れられる。
【0035】
次のステップは、有意なピーク即ち局所的な最大値の検出である。第2の所定の閾値αを超える
【数21】

の部分がNedge個あると仮定する。このことは、前記傾斜信号のそれぞれの局所的な最大値に対応するサンプルのリストが、Nedge個のサンプルを有することを意味する。k番目のピーク504の先頭及び末尾の位置は、以下のように定義される。
≦j≦nである場合、s≧α(k=1,2,・・・,Nedge) (5)
k番目のピーク504の位置pは、
【数22】

の局所的な最大値が出現するインデクスjである。
【数23】

本ピーク検出は、図4に示されたトレンド除去されたエッジ計数
【数24】

の一部について、図5に示される。m502は、点線400によって示される第2の所定の閾値αを超える最初の画素にあり、n506は第2の所定の閾値αを超える最後の画素にある。このときk番目のピークのボリューム(volume)Vは、以下のように定義される。
【数25】

好ましくは、該ボリュームVは、ピーク間のヒストグラム、即ちサンプル間距離のヒストグラムにおける重みとして利用される。
【0036】
トレンド除去されたエッジ計数
【数26】

が、繰り返しのピーク即ち有意なサンプル間距離を有するか否かを決定するため、限られた近傍即ちウィンドウ又は開口内のピーク間の距離のヒストグラムを計算することにより、解析を開始しても良い。この隣接するNhistの制限は、スケーリング因子を考慮に入れ、予期される最大のブロックサイズによって決定される。典型的な値は、Nhist=38個の画素である。ピーク間距離ヒストグラム
【数27】

は、以下のCコードによって計算されても良い。
for (k = 1;
k < Nedge: k++){
i = 1;
while(((d = p[k + i] - p[ k ]) < Nhist) && (k + i <= Nedge)){
H[d] += 1; /* ヒストグラムに1を追加*/
i += 1;
}
}
【0037】
上述の計算において、
【数28】

はいずれのエッジ視認性を明確に考慮に入れておらず、単にピーク間距離のみを計数している。従って、ブロックエッジの程度にかかわらず、繰り返し出現するエッジを計数している。好ましくは、重み付けされたピーク間距離ヒストグラム
【数29】

が計算される。図6は、重み付けされたピーク間距離ヒストグラム
【数30】

を示す。基本周期、即ちブロックアーティファクトのグリッドサイズは整数でなく、10+2/3であることに留意されたい。このことは、ヒストグラムのボリュームが単一のビンに集中させられておらず、例えばビンd=10とd=11と、及びビンd=21とd=22と、のようなビンの対に集中させられているという事実に起因する。エッジ視認性を重みとしてヒストグラム
【数31】

において考慮に入れるため、式7において定義されるようなエッジのボリュームの尺度Vが、重みとして利用される。本方法においては、2つのサンプルの間の距離は、両方のサンプルのボリュームを用いて重み付けされる。重み付けされたピーク間距離ヒストグラム
【数32】

は、以下のCコードにより計算されても良い。
for (k = 1;
k < Nedge: k++){
i = 1;
while(((d = p[k + 1] - p[ k ]) < Nhist) && (k + 1 <= Nedge)){
H[d] += (V[k] + V[k + i]) / 2; /* ヒストグラムに重みとしてボリュームを追加*/
i += 1;
}
}
ここでV[k]は、式7において定義されたVに対応する。
【0038】
次いで、繰り返しのピークを決定するために、重み付けられたピーク間距離ヒストグラム
【数33】

は、それぞれのとり得る基本周期dの整数k倍、即ちk・dでサンプリングされる。
【数34】

基礎を成す基本周期がdであれば、ヒストグラムは整数倍のk・dでピークをつくるであろう。それ故、g(d)は、実際の基礎を成す基本周期dについて、最大値に達するであろう。g(d)の明確な最初の最大値の位置が、このとき前記基礎を成す基本周期のインジケータとして考えられる。g(d)の最初のピークを見出すことは、最初の顕著なヒストグラムのビンHの検出よりも、基礎を成す基本周期dの安定した推定に導くことが分かっている。その理由は、実際的な場合においては、1×dにおけるヒストグラムが常に顕著であるというわけではないように見えるからである。例えば、基本周期が実際にはd=8であると仮定すると、幾つかの場合においてHはそれ程顕著ではなく、一方H16及びH24は明らかに顕著であるように見える。かような場合は、最初のピークがHではなくg(d)において検索される場合には、必ずしも問題をもたらさない。g(d)の例として図7を参照されたい。本図7においては、ピーク間距離dは0.2の間隔でサンプリングされる。
【0039】
本発明の一態様は、ブロックアーティファクト検出装置が、処理回路において以前に利用されたコーディングパラメータに関する情報の更なる必要なしに、ブロッキングアーティファクトの視認性を示す制御信号を生成するように構成される点である。テレビジョンセット、及び例えばDVD+RW及びハードディスクレコーダのようなビデオ記録装置における処理は、かなりの量のブロッキングエッジが検出されるこれらの場合に適合させられても良い。第1のブロックアーティファクト・インジケータは、ブロックアーティファクトの視認性の尺度に対応する。前記第1のブロックアーティファクト・インジケータは、特定のサンプル間距離の出現の頻度に関連し、好ましくは前記特定のサンプル間距離の出現の相対的な頻度を含む、幾つかの値の平均に等しい。
【0040】
本発明の他の態様は、ブロックアーティファクト検出装置が、アナログビデオ信号中に明確に存在にしない情報の必要なしに、ブロッキンググリッドの1以上の大きさを示す制御信号を供給するように構成される点である。適用されたコーディング方式が8画素の幅及び高さを持つブロックを利用すると仮定すると、この情報はスケーリング操作が適用されたか否かを示すため、処理によって利用されることもできる。ブロックアーティファクトの空間的なサイズに対応する第2のブロックアーティファクト・インジケータdは、特定のサンプル間距離に関連する。しかしながら、第2のブロックアーティファクト・インジケータdは、整数値を持つ特定のサンプル間距離に必ずしも等しくない。
【0041】
図8は、本発明による画像処理機器400の実施例を模式的に示す。該機器は、
入力画像のシーケンスに対応するビデオ信号を受信する受信手段802と、
図1に関連して説明されたような、ビデオ信号におけるブロックアーティファクトを検出するブロックアーティファクト検出装置100と、
前記入力画像のシーケンスに基づき出力画像のシーケンスを算出する画像処理ユニットであって、前記ブロックアーティファクト検出装置によって制御される画像処理ユニット804と、
画像処理ユニット804の出力画像を表示する表示装置806と、
を有する。前記信号は、アンテナ又はケーブルを介して受信される放送信号であっても良いが、VCR(Video Cassette Recorder)又はディジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)のような記憶装置からの信号であっても良い。前記信号は、入力コネクタ810において供給される。画像処理機器800は、例えばTVであっても良い。代替として、画像処理機器800は、任意の表示装置を有しないが、表示装置806を有する機器に前記出力画像を供給する。このとき画像処理機器800は、例えばセットトップボックス、衛星チューナ、VCRプレイヤ、DVDプレイヤ又はレコーダであっても良い。任意に、画像処理機器800は、ハードディスクのような記憶手段、又は例えば光ディスクのような着脱可能な媒体に記憶するための手段を有する。画像処理機器800は、映画スタジオ又は放送局によって利用されるシステムであっても良い。
【0042】
上述の実施例は、本発明を限定するものではなく説明するものであって、当業者は添付される請求の範囲から逸脱することなく代替の実施例を設計することが可能であろうことは留意されるべきである。請求項において、括弧に挟まれたいずれの参照記号も、請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。「有する(comprising)」なる語は、請求項に列挙されていない要素又はステップの存在を除外するものではない。要素に先行する「1つの(a又はan)」なる語は、複数のかような要素の存在を除外するものではない。本発明は、幾つかの別個の要素を有するハードウェアによって、及び適切にプログラムされたコンピュータによって実装されても良い。幾つかの手段を列記するユニット請求項において、これらの手段の幾つかは、同一のハードウェアのアイテムによって実施化されても良い。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】ブロックアーティファクト検出装置の実施例を模式的に示す。
【図2】入力画像を示す。
【図3】図2の画像に基づく傾斜信号Sの例を示す。
【図4】図3の傾斜信号Sに基づくトレンド除去された傾斜信号sを示す。
【図5】図4に示されたトレンド除去された傾斜信号sの一部を示す。
【図6】重み付けされたピーク間距離ヒストグラムHを示す。
【図7】g(d)の例を示す。
【図8】本発明による画像処理機器400の実施例を模式的に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビデオ信号中のブロックアーティファクトを検出するブロックアーティファクト検出装置であって、前記ブロックアーティファクト検出装置は、
前記ビデオ信号に基づいて傾斜信号を計算する計算手段と、
前記傾斜信号のそれぞれの局所的な最大値に対応するサンプルのリストを確立する確立手段と、
サンプル間距離のヒストグラムを決定するヒストグラム決定手段と、
を有し、前記サンプル間距離の第1のものは、前記サンプルの第1のものと前記サンプルの第1のものに後続する前記サンプルの第2のものとの間の第1の距離に対応し、前記サンプル間距離の第2のものは、前記サンプルの第1のものと前記サンプルの第2のものに後続する前記サンプルの第3のものとの間の第2の距離に対応し、前記ブロックアーティファクト検出装置は更に、
前記サンプル間距離のヒストグラムを解析し、前記ヒストグラムに基づいてブロックアーティファクト・インジケータを生成する解析手段を有するブロックアーティファクト検出装置。
【請求項2】
前記ブロックアーティファクト・インジケータは、前記ブロックアーティファクトの空間的なサイズに対応し、前記ブロックアーティファクト・インジケータは、特定のサンプル間距離に関連する、請求項1に記載のブロックアーティファクト検出装置。
【請求項3】
前記ブロックアーティファクト・インジケータは、前記ブロックアーティファクトの視認性の尺度に対応し、前記ブロックアーティファクト・インジケータは、特定のサンプル間距離の出現の頻度に関連する、請求項1に記載のブロックアーティファクト検出装置。
【請求項4】
前記サンプル間距離のヒストグラムは、重み付けされたヒストグラムである、請求項1に記載のブロックアーティファクト検出装置。
【請求項5】
前記第1の距離の重み付けは、前記サンプルの第1のものの局所的な最大値に基づく、請求項4に記載のブロックアーティファクト検出装置。
【請求項6】
前記第1の距離の重み付けは、前記サンプルの第1のものに対応するサブ部分を有する傾斜信号の一部に基づく、請求項5に記載のブロックアーティファクト検出装置。
【請求項7】
前記傾斜信号は、前記ビデオ信号の幾つかのビデオ線のそれぞれの画素値の合計によって計算された、第1の中間信号に基づいて計算される、請求項1に記載のブロックアーティファクト検出装置。
【請求項8】
前記傾斜信号は、前記ビデオ信号の連続する画素値間の絶対差の計算に基づく第1の中間信号のハイパスフィルタリングによって計算される、請求項1に記載のブロックアーティファクト検出装置。
【請求項9】
入力画像のシーケンスに対応するビデオ信号を受信する受信手段と、
請求項1に記載の、ビデオ信号中のブロックアーティファクトを検出するブロックアーティファクト検出装置と、
前記入力画像のシーケンスに基づいて出力画像のシーケンスを算出する画像処理ユニットであって、前記ブロックアーティファクト検出装置によって制御される画像処理ユニットと、
を有する画像処理機器。
【請求項10】
前記出力画像を表示する表示装置を更に有することを特徴とする、請求項9に記載の画像処理機器。
【請求項11】
ビデオ信号中のブロックアーティファクトを検出する方法であって、前記方法は、
前記ビデオ信号に基づいて傾斜信号を計算するステップと、
前記傾斜信号のそれぞれの局所的な最大値に対応するサンプルのリストを確立するステップと、
サンプル間距離のヒストグラムを決定するステップと、
を有し、前記サンプル間距離の第1のものは、前記サンプルの第1のものと前記サンプルの第1のものに後続する前記サンプルの第2のものとの間の第1の距離に対応し、前記サンプル間距離の第2のものは、前記サンプルの第1のものと前記サンプルの第2のものに後続する前記サンプルの第3のものとの間の第2の距離に対応し、前記方法は更に、
前記サンプル間距離のヒストグラムを解析し、前記ヒストグラムに基づいてブロックアーティファクト・インジケータを生成するステップを有する方法。
【請求項12】
ビデオ信号中のブロックアーティファクトを検出する命令を有する、コンピュータ装置によってロードされるコンピュータプログラムであって、前記コンピュータ装置は処理手段及びメモリを有し、前記コンピュータプログラムは、ロードされた後に、
前記ビデオ信号に基づいて傾斜信号を計算するステップと、
前記傾斜信号のそれぞれの局所的な最大値に対応するサンプルのリストを確立するステップと、
サンプル間距離のヒストグラムを決定するステップと、
を実行する機能を前記処理手段に備えさせ、ここで前記サンプル間距離の第1のものは、前記サンプルの第1のものと前記サンプルの第1のものに後続する前記サンプルの第2のものとの間の第1の距離に対応し、前記サンプル間距離の第2のものは、前記サンプルの第1のものと前記サンプルの第2のものに後続する前記サンプルの第3のものとの間の第2の距離に対応し、前記コンピュータプログラムは更に、ロードされた後に、
前記サンプル間距離のヒストグラムを解析し、前記ヒストグラムに基づいてブロックアーティファクト・インジケータを生成するステップを実行する機能を前記処理手段に備えさせるコンピュータプログラム。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−501561(P2007−501561A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522464(P2006−522464)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【国際出願番号】PCT/IB2004/051322
【国際公開番号】WO2005/015915
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】