説明

ブロック共重合体−クレイナノコンポジットの高配向膜およびその製造方法

【課題】 ブロック共重合体にクレイを複合化して、クレイとナノドメインを高秩序に配列制御することにより新規な秩序構造を有するフィルム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
ラメラ構造を有するポリ(エチレンオキシド−スチレン)ブロック共重合体(PEO-b-PS)−クレイナノコンポジットからなり、
1.Mw/Mn= 1.1以下、 PEO/PS = 65/35〜35/65(重量比)でラメラ構造を形成し、
2.ブロック共重合体のラメラがフィルム面に高度に配向し、
3.ラメラ構造の中でPEOの結晶が高度に配向し、
4.クレイの重量分率:2〜20%
5.クレイの層間にブロック共重合体がインターカレートしていることを特徴とする高配向フィルム及びその製造方法。

【採用図面】 図1

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロック共重合体−クレイナノコンポジットによる、新規な性状を有する配向フィルム、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、せん断流動、電場、ゾーン熱処理などにより、高配向膜を作製することが知られている。また、低分子量のPEO-b-PS(PEOブロックおよびPSブロックのMn、それぞれ8,700および9,200)の結晶化による結晶配向に関する報告がある(非特許文献1)。
【0003】
【非特許文献1】Zhu etal., J. Am. Chem. Soc., 2000, 122, 5957.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブロック共重合体は、数十ナノメートルのナノ構造を形成するが、機能材料として利用する場合には、ナノ構造の配列制御と脆さの克服が課題である。本発明は、ブロック共重合体にクレイを複合化して、クレイとナノドメインを高秩序に配列制御することにより新規な秩序構造を有するフィルムを作成する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明は、
ラメラ構造を有するポリ(エチレンオキシド−スチレン)ブロック共重合体(PEO-b-PS)−クレイナノコンポジットからなり、
1.Mw/Mn= 1.1以下、 PEO/PS = 65/35〜35/65(重量比)でラメラ構造を形成し、
2.ブロック共重合体のラメラがフィルム面に高度に配向し、
3.ラメラ構造の中でPEOの結晶が高度に配向し、
4.クレイの重量分率:2〜20%
5.クレイの層間にブロック共重合体がインターカレートしていることを特徴とする高配向フィルムとする。
また、本発明の高配向フィルムは、ブロック共重合体のラメラとクレイの層がフィルム面に平行に配向し、かつ、ブロック共重合体の両成分にクレイを存在させることができる。
さらに、本発明は、Mw/Mn = 1.1以下、 PEO/PS =
65/35〜35/65(重量比)でラメラ構造を有する分子量(Mn)30,000以上のポリ(エチレンオキシド−スチレン)ブロック共重合体を作成し、ブロック共重合体とクレイを溶液中で均一分散し、溶媒を徐々に蒸発することによりキャスト膜を作製し、さらに、フィルムを真空下、高温で長時間熱処理することを特徴とするPEO-b-PS−クレイナノコンポジットフィルムの製造方法でもある。
クレイとブロック共重合体を配列制御する温度は、160〜200℃であり、時間は10時間以上必要である。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、ブロック共重合体のナノドメインの利用に向けた基盤技術でもあり、
ガスバリア膜などの機能性プラスチックフィルムとして広範な用途に応用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の高配向フィルムに用いるラメラ構造を有するポリ(エチレンオキシド−スチレン)ブロック共重合体(PEO-b-PS)は、少なくとも数平均分子量(Mn)が約30,000以上のもの、好ましくは50,000以上であり、かつ、ラメラ構造を有するポリ(エチレンオキシド−スチレン)ブロック共重合体(PEO-b-PS)であって、
1.Mw/Mn= 1.1以下、 PEO/PS = 65/35〜35/65(重量比)でラメラ構造を形成し、
2.ブロック共重合体のラメラがフィルム面に高度に配向し、かつ、
3.ラメラ構造の中でPEOの結晶が高度に配向したことを特徴とする。
また、本発明で用いるクレイは、代表的には有機化クレーであるが、これは、クレーをアルキルアンモニウム塩と反応させて得たものであり、好ましく用いることが出来る。
【0008】
本発明の高配向フィルムは、Mw/Mn = 1.1以下、 PEO/PS = 65/35〜35/65(重量比)でラメラ構造を有する数平均分子量(Mn)が少なくとも30,000以上、好ましくは50,000以上のポリ(エチレンオキシド−スチレン)ブロック共重合体を真空下、160〜200℃の温度で10時間以上熱処理することにより得られる。
本発明は、ブロック共重合体とクレイを溶液中で均一分散し、溶媒を徐々に蒸発することによりキャスト膜を作製するが、ここで用いる溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、テトラヒドロフラン、クロロホルムなどが挙げられる。
【実施例】
【0009】
本発明について実施例を用いてさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
(PEO-b-PS)−クレイナノコンポジットの製造)
PEO-b-PS (PEOの数平均分子量:71,000 PSの数平均分子量:58,600、Mw/Mn = 1.04)と有機化クレーを60℃、5%トルエン溶液中で、48時間攪拌することにより、透明な溶液を作製した。溶液をテフロン(登録商標)シート上にキャストし、室温で徐々に溶媒を蒸発させた後、さらにフィルムを加圧下、180℃で、18時間熱処理した。
【0010】
(PEO-b-PS)−クレイナノコンポジットの構造解析)
広角X線回折(WAXD)、小角X線散乱(SAXS)、透過型電子顕微鏡(TEM)などにより試料の構造を解析した。
広角X線回折(WAXD)、小角X線散乱(SAXS)、透過型電子顕微鏡(TEM)などにより試料の構造を解析した。SAXSとTEMによるとクレーを含まないブロック共重合体は、60nm周期のラメラ構造(PEO層とPS層の厚さ、それぞれ31nmと29nm)を形成している。PEO-b-PS/クレーナノコンポジットのSAXSパターンは、PEO-b-PSのSAXSパターンとほぼ同様で、ナノコンポジットにおいてもラメラ構造が保たれ、かつラメラがフィルム面に平行に配向していることが示された。シリケート層の配向を調べるために、反射法と透過法によりWAXDプロフィールを測定し図1に示した。
反射法で測定したプロフィールには、00l反射が観測されているが、透過法では観測されていない。この結果は、シリケート層が、ブロック共重合体のラメラ構造と同じく、フィルム面に平行に配向していることを示している。また、有機化クレー自身は、2q=4.0°に鋭い反射を示すが、PEO-b-PS/クレーナノコンポジットでは、対応する反射が
2q=1.85°へシフトし、ブロック共重合体がクレーの層間にインターカレートされていることを示している。
以上のように、ブロック共重合体がクレーの層間に挿入し、ブロック共重合体のラメラ構造とシリケート層がいずれもフィルム面に平行に配向していることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本発明のラメラ構造を有するポリ(エチレンオキシド−スチレン)ブロック共重合体(PEO-b-PS)−クレイナノコンポジットは、ガスバリア膜などの機能性プラスチックフィルムとして広範な用途に応用可能であるばかりか、特有のナノ構造に基づく物理特性を発揮する特殊機能膜としての用途が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】反射法と透過法によりWAXDプロフィール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラメラ構造を有するポリ(エチレンオキシド−スチレン)ブロック共重合体(PEO-b-PS)−クレイナノコンポジットからなり、
1.Mw/Mn= 1.1以下、 PEO/PS = 65/35〜35/65(重量比)でラメラ構造を形成し、
2.ブロック共重合体のラメラがフィルム面に高度に配向し、
3.ラメラ構造の中でPEOの結晶が高度に配向し、
4.クレイの重量分率:2〜20%
5.クレイの層間にブロック共重合体がインターカレートしていることを特徴とする高配向フィルム。
【請求項2】
ブロック共重合体のラメラとクレイの層がフィルム面に平行に配向し、かつ、ブロック共重合体の両成分にクレイが存在することを特徴とする請求項1に記載した高配向フィルム。
【請求項3】
Mw/Mn = 1.1以下、 PEO/PS = 65/35〜35/65(重量比)でラメラ構造を有する分子量(Mn)30,000以上のポリ(エチレンオキシド−スチレン)ブロック共重合体を作成し、ブロック共重合体とクレイを溶液中で均一分散し、溶媒を徐々に蒸発することによりキャスト膜を作製し、さらに、フィルムを真空下、高温で長時間熱処理することを特徴とするPEO-b-PS−クレイナノコンポジットフィルムの製造方法。









【図1】
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【公開番号】特開2006−36923(P2006−36923A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−218865(P2004−218865)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年5月10日 社団法人高分子学会発行の「高分子学会予稿集 53巻1号〔2004〕」に発表
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】