説明

ブロック樹脂およびその製造方法

【課題】本発明のブロック樹脂は、光硬化性組成物として使用された場合に高い硬度を有すると共に硬化時の基材のカールを抑制し、基材との密着性などの機械的特性に優れたブロック樹脂を提供するものである。
【解決手段】(A)−(B)−(C)で表される構造を有するブロック樹脂であって、
ブロック(A)および(C)は、エチレン性不飽和基とカルボキシル基とを有するブロックであり、ブロック(B)は、エチレン性不飽和基とカルボキシル基と水酸基とを有しないブロックであるブロック樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロック樹脂およびその製造方法に関し、さらに詳しくは、これを用いた光硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン性不飽和基などの光硬化性の官能基を有するアクリル樹脂は、一般的にクリアコーティング剤などの用途に広く使われている。しかし多くの場合、一般的な熱ラジカル重合により合成される為、光硬化性部位が導入されない樹脂が生じ結果的に硬化性を低下させることがある。また硬化性部位がランダムに導入される為、硬化時に樹脂が硬化収縮を引き起こし易く、基材がカールする、密着性が低下するなどの問題があった。
【0003】
一方、リビングラジカル重合は、ラジカル重合である為に、重合の進行が水酸基などの極性官能基の影響を受けにくく、一般的なラジカル重合に起こる副反応が抑制され、さらには重合の成長が均一に起こる為、容易にブロックポリマーや分子量の揃った樹脂を合成できることが報告され近年工業的な応用が広く検討され始めている(非特許文献1〜4、特許文献1〜2)。
【0004】
このような中、リビングラジカル重合によりエチレン性不飽和基を有するブロック樹脂を粘着剤組成物等として使用する提案がなされている(特許文献3)。しかし、前記方法により合成されるブロック樹脂は、架橋が有効に行われ、塗膜の機械的特性に優れるものであったが、充分な耐性を得ることが困難であった。またカルボキシル基を有しないことから現像性を有さずレジストへの応用が困難であった。
【非特許文献1】Fukudaら、Prog.Polym.Sci. 2004,29, 329
【非特許文献2】Matyjaszewskiら、Chem.R e v.2001,10 1,2921
【非特許文献3】Matyjaszewskiら、J.Am.Chem.Soc.1995,117,5614
【非特許文献4】Macromolecules 1995,28,7901,Science 1996,272,866
【特許文献1】国際公開第96/30421号パンフレット
【特許文献2】国際公開第97/18247号パンフレット
【特許文献3】特開2004−26911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、現像性と高い硬度を有すると共に硬化時のカールが抑制され、密着性および機械的特性に優れた光硬化性を有するブロック樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(A)−(B)−(C)で表される構造を有するブロック樹脂であって、
ブロック(A)および(C)は、エチレン性不飽和基とカルボキシル基とを有するブロックであり、ブロック(B)は、エチレン性不飽和基とカルボキシル基と水酸基とを有しないブロックであるブロック樹脂に関する。
【0007】
さらに本発明は、ブロック(A)および(C)が、エチレン性不飽和基とカルボキシル基とアルコキシシリル基とを有するブロックである上記ブロック樹脂に関する。
【0008】
さらに本発明は、ブロック(A)とブロック(B)とブロック(C)との重量割合が、(A)1〜50重量%、(B)48〜95重量%、(C)1〜50重量%である上記ブロック樹脂に関する。
【0009】
さらに本発明は、ブロック樹脂の重量平均分子量が、1000〜500000である上記ブロック樹脂に関する。
【0010】
さらに本発明は、ブロック樹脂の分子量の多分散度が、1.05〜2.5である上記ブロック樹脂に関する。
【0011】
さらに本発明は、水酸基を有するエチレン性不飽和モノマーを含むモノマーをリビングラジカル重合してブロック(A’)を製造する第一の工程、
水酸基を有しないエチレン性不飽和モノマーのみを含むモノマーをリビングラジカル重合してブロック(B)を製造する第二の工程、
水酸基を有するエチレン性不飽和モノマーを含むモノマーをリビングラジカル重合してブロック(C’)を製造する第三の工程、
ブロック(A’)およびブロック(C’)中の水酸基と、
エチレン性不飽和基および、水酸基と反応しうる官能基を有する化合物(a)中の水酸基と反応しうる官能基と、
水酸基と反応しうる官能基を有し、かつ、水酸基と反応することでブロック樹脂中にカルボキシル基を存在させうる化合物(b)中の水酸基と反応しうる官能基と、
を反応させてエチレン性不飽和基とカルボキシル基とを有する、ブロック(A)およびブロック(C)を製造する第四の工程、
を含むことを特徴とするブロック樹脂の製造方法に関する。
【0012】
さらに本発明は、水酸基を有するエチレン性不飽和モノマーを含むモノマーをリビングラジカル重合してブロック(A’)を製造する第一の工程、
水酸基を有しないエチレン性不飽和モノマーのみを含むモノマーをリビングラジカル重合してブロック(B)を製造する第二の工程、
水酸基を有するエチレン性不飽和モノマーを含むモノマーをリビングラジカル重合してブロック(C’)を製造する第三の工程、
ブロック(A’)およびブロック(C’)中の水酸基と、
水酸基と反応しうる官能基を有し、かつ、水酸基と反応することでブロック樹脂中にカルボキシル基を存在させうる化合物(b)中の水酸基と反応しうる官能基と、
を反応させてカルボキシル基を有するブロック(A’’)およびブロック(C’’)を製造する第四の工程、
ブロック(A’’)およびブロック(C’’)中のカルボキシル基または水酸基と、
エチレン性不飽和基および、カルボキシル基と反応しうる官能基を有する化合物(c)中のカルボキシル基と反応しうる官能基、
または、エチレン性不飽和基および、水酸基と反応しうる官能基を有する化合物(a)中の水酸基と反応しうる官能基と、
を反応させてエチレン性不飽和基とカルボキシル基とを有する、ブロック(A)およびブロック(C)を製造する第五の工程、を含むことを特徴とするブロック樹脂の製造方法に関する。
【0013】
さらに本発明は、上記ブロック樹脂の製造方法で得られたブロック樹脂中の水酸基またはカルボキシル基またはエチレン性不飽和基と、
アルコキシシリル基および、水酸基またはカルボキシル基またはエチレン性不飽和基と反応しうる官能基を有する化合物(d)中の水酸基またはカルボキシル基またはエチレン性不飽和基と、
を反応させることを特徴とするエチレン性不飽和基とカルボキシル基とアルコキシシリル基とを有するブロック樹脂の製造方法に関する。
【0014】
さらに本発明は、リビングラジカル重合が、原子移動ラジカル重合法である上記ブロック樹脂の製造方法に関する。
【0015】
さらに本発明は、原子移動ラジカル重合が、ケトン系溶媒中で、ハロゲン化銅とテトラメチルエチレンジアミンとを触媒として行われることを特徴とする上記ブロック樹脂の製造方法に関する。
【0016】
さらに本発明は、上記ブロック樹脂を含む光硬化性組成物に関する。
【0017】
さらに本発明は、熱硬化剤を含む上記光硬化性組成物に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、現像性と高い硬度を有すると共に硬化時のカールが抑制され、密着性および機械的特性に優れた光硬化性を有するブロック樹脂を提供することができた。さらに、光学特性にも優れ、光学部材からなる積層体に適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(ブロック樹脂)
本発明のブロック樹脂は、(A)−(B)−(C)で表される構造を有するブロック樹脂であって、ブロック(A)および(C)は、エチレン性不飽和基とカルボキシル基とを有するブロックであり、ブロック(B)は、エチレン性不飽和基とカルボキシル基と水酸基を有しないブロックであるブロック樹脂である。本発明のブロック樹脂の合成には、リビング重合、特に原子移動ラジカル重合を用いることが好ましい。さらに、ブロック(A)および(C)中に存在する水酸基またはカルボキシル基またはエチレン性不飽和基を変性することにより、ブロック(A)および(C)中にアルコキシシリル基を導入することができる。
【0020】
本発明のブロック樹脂は、エチレン性不飽和基、カルボキシル基、アルコキシシリル基を有するブロック(A)および(C)が、現像性に寄与すると共に光硬化反応や硬化剤との架橋反応または自己架橋反応により塗膜の硬度を発現し、エチレン性不飽和基、カルボキシル基、アルコキシシリル基、水酸基を有しないブロック(B)が、硬化塗膜の柔軟性などの機械的物性に寄与するものである。
【0021】
本発明のブロック樹脂は、水酸基を有するエチレン性不飽和モノマーを含むモノマーを重合してなるブロック(A’)および(C’)と、水酸基を有しないエチレン性不飽和モノマーのみからなるモノマーを重合してなるブロック(B)からなる、(A’)−(B)−(C’)で表されるブロック樹脂のブロック(A’)および(C’)中の水酸基をエチレン性不飽和基、カルボキシル基、アルコキシシリル基に変性することで得られる。
【0022】
(A’)−(B)−(C’)で表されるブロック樹脂の合成は周知の方法によって行うことが出来るが、リビング重合、特に原子移動ラジカル重合によるモノマーの逐次添加により合成されることが好ましい。この場合、重合の活性末端の失活を考慮し、ブロック(A’)を形成するモノマーを重合し、重合収率が85%〜99%を超えた後、重合系にブロック(B)を形成するモノマーの混合物を添加して重合を行い、さらに重合収率が85%〜99%を超えた後、重合系にブロック(C’)を形成するモノマーを添加して重合を行うことが好ましい。この場合、得られる樹脂はグラジエント構造をとるブロック樹脂となり、従って本発明のブロック樹脂はグラジエント構造を含むものである。
【0023】
このような方法で合成したポリマーは、リビング重合の特性上、樹脂中に水酸基を有するブロック(A’)および(C’)と、水酸基を有しないブロック(B)を持つ。
【0024】
また、ブロック(A’)は水酸基を有するエチレン性不飽和モノマーのみによって構成されても良いが、水酸基を有するエチレン性不飽和モノマーのみを重合した場合、樹脂の一般的な重合溶媒への溶解性が不足し樹脂が析出する場合があり、水酸基を有するエチレン性不飽和モノマーと、樹脂の溶解性を保つ水酸基を有しないエチレン性不飽和モノマーを共重合してブロック(A’)を形成した後、水酸基を有しないエチレン性不飽和モノマーのみを添加し重合することでブロック(B)を形成し、さらに水酸基を有するエチレン性不飽和モノマーを含むモノマーを添加してブロック(C’)を合成することが好ましい。
【0025】
(水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー)
水酸基を有するエチレン性不飽和モノマーの例としては、特に限定されないが、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシビニルベンゼン、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー類が挙げられる。また、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、ヒドロキシエチルスチレン等のスチレン誘導体などの水酸基を有する芳香族ビニルモノマー類が挙げられる。さらにこれらモノマーのカプロラクトン付加物なども挙げられる。これらのモノマーは、単独で用いても2種類以上を併せて使用しても良い。
【0026】
(水酸基を有しないエチレン性不飽和モノマー)
水酸基を有しないエチレン性不飽和モノマーの例としては、例えば、エチレン、ブタ−1,3−ジエン、2−メチルブタ−1,3−ジエン、2−クロロブタ−1,3−ジエンのようなジエン類;
スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン類;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ノルマルブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、イコシル(メタ)アクリレート、ヘンイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜22のアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの(メタ)アクリル酸誘導体;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル類;
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなどのビニルエーテル類;
ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルケトン類、N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾル、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニル化合物;
塩化アリル、酢酸アリル、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのアリル化合物;
フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどのフッ素アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル類などが挙げられる。
これらは単独で使用しても良いし、また2種類以上を併用しても良い。
【0027】
ブロック(B)に使用するモノマーは、樹脂の接着性や耐熱性等によって適宜選択できるが、重合反応性の面から炭素数1〜22のアルキル(メタ)アクリレートモノマーを使用するのが好ましい。
【0028】
(リビング重合)
次に、リビング重合について説明する。本発明において、ブロック樹脂(A’)−(B)−(C’)の重合は、リビングラジカル重合であれば良いが、その中でも原子移動ラジカル重合が好ましい。リビングラジカル重合において、原子移動ラジカル重合法では、レドックス触媒として銅、ルテニウム、鉄、ニッケルなどの遷移金属錯体を用いて行われる。遷移金属錯体の具体的な例としては、塩化銅(I)、臭化銅(I)などの低原子価のハロゲン化遷移金属が挙げられるが、重合速度をコントロールするために、周知の方法に従って塩化銅(II)や臭化銅(II)などの高原子価の遷移金属を重合系に添加してもよい。
【0029】
上記金属錯体には有機配位子が使用される。有機配位子は、重合溶媒への可溶性およびレドックス共役錯体の可逆的な変化を可能にするために使用される。金属の配位原子としては、窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子などが挙げられるが、好ましくは窒素原子またはリン原子である。有機配位子の具体例としては、スパルテイン、2,2’−ビピリジル及びその誘導体、1,10−フェナントロリン及びその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、トリス(ジメチルアミノエチル)アミン、ヘキサメチル(2−アミノエチル)アミン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等が挙げられる。以上の触媒の中で、ハロゲン化銅とテトラエチレンジアミンとを組み合わせて用いて重合するのが重合速度、ブロック樹脂の分子量のコントロールの点で好ましい。
【0030】
前記の遷移金属と有機配位子とは、別々に添加して重合体中で金属錯体を生成させてもよいし、予め金属錯体を合成して重合系へ添加しても良い。特に、遷移金属が銅の場合、前者の方法が好ましく、ルテニウム、鉄、ニッケルは、後者の方法が好ましい。
【0031】
予め合成されるルテニウム、鉄、ニッケル錯体の具体例としては、トリストリフェニルホスフィノニ塩化ルテニウム(Ru(Cl)2(PPh33)、ビストリスフェニルホスフィノニ塩化鉄(Fe(Cl)2(PPh32)、ビストリスフェニルホスフィノニ塩化ニッケル(Ni(Cl)2(PPh32)、ビストリブチルホスフィノニ臭化ニッケル(NiBr2(PBu32)等が挙げられる。
【0032】
原子移動ラジカル重合法に使用される開始剤としては、公知のものを使用できるが、主に反応性の高い炭素ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物、ハロゲン化スルホニル化合物等が用いられる。具体的に例示すると、ブロモイソ酪酸エチル、ブロモ酪酸エチル、クロロイソ酪酸エチル、クロロ酪酸エチル、パラトルエンスルホン酸クロライド、ブロモエチルベンゼン、クロロエチルベンゼンなどである。これらは単独または併用で用いる。
【0033】
上記原子移動ラジカル重合において、原子移動ラジカル重合の開始剤は、合成される樹脂のMwに応じて適宜選択されるが、ラジカル重合性モノマー全量に対し、0.001〜10モル%、好ましくは0.01〜1モル%の割合で用いられる。また、遷移金属の使用量は、ハロゲン化物などの形態として、開始剤1モルに対して、0.03〜3モル、好ましくは0.1〜2モルの割合で用いられる。さらに、その配位子は、上記の遷移金属(ハロゲン化物などの形態)1モルに対して、通常1〜5モル、好ましくは1.2〜3モルの割合で用いられる。上記原子移動ラジカル重合の開始剤と遷移金属と配位子とをこのような使用割合にすると、リビングラジカル重合の反応性、生成ポリマーの分子量などの点で好適となる。
【0034】
また、原子移動ラジカル重合の特性上、得られた樹脂の停止末端には活性な炭素−ハロゲン結合を有し、公知の方法でこれを変性して官能基を導入することができる。また官能基を有する重合開始剤により重合を行い、樹脂末端に官能基を導入して種々の反応に利用することができる。
【0035】
原子移動ラジカル重合は、無溶剤でも進行させることができるし、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、アニソール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどの溶剤の存在下で進行させてもよい。特に重合速度の面からケトン系溶媒が好ましく、特にメチルエチルケトンが好ましい。溶剤を用いる場合、重合速度の低下を防ぐため、重合終了後の溶剤濃度が50重量%以下となる使用量とするのがよい。無溶剤または少量の溶剤量でも、重合熱の制御などに関する安全性の問題は特に無く、むしろ溶剤削減によって経済性や環境対策などの面で好適である。
【0036】
重合条件としては、重合速度や触媒の失活の点から、60〜130℃の重合温度で、最終的な分子量や重合温度にも依存するが、約1〜100時間の重合時間とすればよい。また、重合反応に際しては、酸素による重合触媒の失活を防ぐ為、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行われるのが望ましい。
【0037】
また重合反応終了後、重合反応系を0℃以下、好ましくは−78℃程度に冷却して反応を停止させ、周知の方法に従って、残存モノマー及び/または溶剤の除去、適当な溶媒中での再沈殿、沈殿したポリマーの濾過または遠心分離、ポリマーの洗浄および乾燥を行うことができる。必要に応じて周知の方法により重合系に含まれる遷移金属などを除去した後、揮発分を蒸発させることによって本発明のブロック樹脂を得ることが出来る。除去方法としては、テトラヒドロフラン、トルエン、メチルエチルケトン等の有機溶媒で反応混合液を希釈し、水・希塩酸やアミン水溶液などで洗浄、樹脂溶液を陽イオン交換樹脂またはキレート樹脂に接触させる方法、アルミナ・シリカ若しくはクレーのカラムまたはパッドに通す方法、還元剤やハイドロタルサイト類などの吸着剤を加えた後に濾過・遠心分離する方法などがある。処理の簡便さの面から、希釈された樹脂溶液に陽イオン交換樹脂とハイドロタルサイトなどの酸吸着剤などを投入攪拌し、イオン交換樹脂と酸吸着剤を濾別して樹脂溶液を得るのが好ましい。
【0038】
精製処理により樹脂溶液に水分が混入する場合は本発明のブロック樹脂と硬化剤との反応を阻害する場合があり、水と混和する溶剤を樹脂溶液に添加し、共沸脱水するなどの処理で樹脂溶液から水分を除去するのが望ましい。
【0039】
本発明に使用する原子移動ラジカル重合では、一般的なラジカル重合中に発生する副反応を抑制するために、重合時に添加する原子移動ラジカル重合の開始剤とラジカル重合性モノマーとの仕込み比によって、樹脂の分子量やブロック(A’)または(B)または(C’)の比率を自由にコントロールできる。
【0040】
ブロック(A’)および(C’)のガラス転移温度は、ブロック(B)のガラス転移温度よりも25℃以上高いことが好ましい。ブロック(A’)および(C’)のガラス転移温度が、ブロック(B)のガラス転移温度よりも25℃以上高くない場合、硬化塗膜のカール低減などの良好な機械的物性や基材への密着性を得にくい場合がある。
【0041】
(本発明のブロック樹脂の製造方法)
本発明のブロック樹脂は、上記ブロック樹脂(A’)−(B)−(C’)のブロック(A’)および(C’)中に含まれる水酸基を変性することにより、エチレン性不飽和基、カルボキシル基およびアルコキシシリル基が導入されることを特徴とする。以下に、新たな官能基の導入方法を示す。
【0042】
ブロック(A’)および(C’)に含まれる水酸基の一部は、エチレン性不飽和基および、水酸基と反応しうる官能基を有する化合物(a)中の水酸基と反応しうる官能基と、反応することによって樹脂にエチレン性不飽和基を導入することができる。この場合、水酸基と反応しうる官能基としては、酸無水物基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸ハロゲン基、エポキシ基、イソシアネート基、カルボジイミド基、ビニルオキシ基、ハロゲン基などが挙げられ、その中でもイソシアネート基やハロゲン基が好ましい。
【0043】
[エチレン性不飽和基および、水酸基と反応しうる官能基を有する化合物(a)]
エチレン性不飽和基および、水酸基と反応しうる官能基を有する化合物(a)は、特に限定されるものではないが、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)、アクリロイルオキシエチルイソシアネート(AOI)、メタクリロイルオキシエチルイソチオシアネート、アクリロイルオキシエチルイソチオシアネート、メタクリロイルイソチオシアネート、アクリロイルイソチオシアネート、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート(MAI)、イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート(TMI)等がある。また、ジイソシアネート化合物と水酸基、カルボキシル基、アミド基含有ビニルモノマーとを等モルで反応せしめた化合物も使用することができる。さらには、エチレン性不飽和基およびハロゲン基を有する化合物も使用することができ、例えば、(メタ)アクリル酸の酸ハロゲン化物、ハロプロピオン酸類またはその酸ハロゲン化物などが使用できる。
【0044】
例えば、水酸基とイソシアネート基との反応は、公知の条件に従って行うことができる。反応温度は、50℃〜200℃が好ましく、更に好ましくは80℃〜150℃が好ましい。反応温度50℃未満であると反応速度が遅くなる場合があり、200℃を超える温度で行うと、ゲル化を起こしてしまう場合がある。反応の停止は、赤外吸収でイソシアネート基の吸収がなくなるまで反応させることで確認できる。触媒としては、例えば3級アミン系化合物、有機金属系化合物等が挙げられる。3級アミン系化合物としては、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等が挙げられる。有機金属系化合物としては錫系化合物、非錫系化合物を挙げることができる。錫系化合物としては、例えばジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエ−ト、ジブチル錫ジラウレ−ト、ジブチル錫ジアセテ−ト、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキサイド、トリブチル錫アセテ−ト、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキサイド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテ−ト、2−エチルヘキサン酸錫等が挙げられる。非錫系化合物としては、例えばジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネ−ト、ブトキシチタニウムトリクロライドなどのチタン系、オレイン酸鉛、2−エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、ナフテン酸鉛などの鉛系、2−エチルヘキサン酸鉄、鉄アセチルアセトネ−トなどの鉄系、安息香酸コバルト、2−エチルヘキサン酸コバルトなどのコバルト系、ナフテン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛などの亜鉛系、ナフテン酸ジルコニウムなどが挙げられる。これらは単独使用、もしくは併用することもできる。
【0045】
また、水酸基とハロゲン基との反応は、公知の条件に従って行うことができる。
【0046】
[水酸基と反応しうる官能基を有し、かつ、水酸基と反応することでブロック樹脂中にカルボキシル基を存在させうる化合物(b)]
さらに、ブロック(A’)および(C’)に含まれる水酸基の全部または一部は、水酸基と反応しうる官能基を有し、かつ、水酸基と反応することでブロック樹脂中にカルボキシル基を存在させうる化合物(b)中の水酸基と反応しうる官能基と反応させることによりカルボキシル基へ変換することができる。この反応により、ブロック樹脂中にカルボキシル基を導入できる。
【0047】
水酸基と反応しうる官能基としては、酸無水物基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸ハロゲン基、エポキシ基、イソシアネート基、カルボジイミド基、ビニルオキシ基、ハロゲン基などが挙げられる。
【0048】
本発明の化合物(b)は、4つのタイプに大別される。
【0049】
1つ目のタイプとしては、ポリカルボン酸(b1)が挙げられる。ポリカルボン酸の一部のカルボキシル基が、ブロック(A’)および(C’)中の水酸基と反応して、カルボキシル基を有するブロック樹脂となる。
【0050】
2つ目のタイプとしては、カルボキシル基以外の水酸基と反応する官能基と、カルボキシル基とを有する化合物(b2)が挙げられる。2つ目のタイプの化合物(b2)としては、カルボキシル基を有するエポキシ化合物類、カルボキシル基を有するカルボニルクロリド類、カルボキシル基を有するスルホニルクロライド類、カルボキシル基を有するイソシアネート類、カルボキシル基を有するクロロトリアジン類などが挙げられる。
【0051】
3つ目のタイプとしては、環状酸無水物基を有する化合物(b3)が挙げられる。環状酸無水物基が、水酸基と反応することで環状酸無水物基が、開環してカルボキシル基が発生する。環状酸無水物基を有する化合物(b3)としては、環状ポリカルボン酸無水物が挙げられる。
【0052】
4つ目のタイプとしては、水酸基と反応する官能基と、加水分解によりカルボキシル基を生成する官能基とを有する化合物(b4)が挙げられる。加水分解によりカルボキシル基を生成する官能基としては、t−ブチルエステル基が挙げられる。化合物(b4)の具体的な例としては、t−ブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0053】
本発明では、環状酸無水物基を有する化合物(b3)を用いるのが好ましく、酸無水物基を有するポリカルボン酸無水物を用いるのがより好ましい。
【0054】
ポリカルボン酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水琥珀酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、無水ヘット酸、テトラブロモ無水フタル酸、無水ハイミック酸およびその誘導体等が挙げられ、これらを単独で用いても併用して用いても良い。また、水酸基とポリカルボン酸無水物中の酸無水物基との反応は、公知の条件に従って行うことができる。反応温度は50℃〜200℃が好ましく、更に好ましくは80℃〜150℃が好ましい。反応温度50℃未満であると反応速度が遅くなる場合があり、200℃を超える温度で行うと、カルボキシル基が水酸基と反応してしまい、ゲル化を起こしてしまう場合がある。反応の停止は、赤外吸収で酸無水物の吸収がなくなるまで反応させるのが好ましいが、目的とする酸価に入ったときに反応を止めてもよい。触媒としては3級アミン系化合物が好ましく、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等が挙げられる。
【0055】
また、エチレン性不飽和基とカルボキシル基とを有するブロックを得るもう一つの方法として、(A’)−(B)−(C’)で表される構造を有するブロック樹脂のブロック(A’)および(C’)中に含まれる水酸基を、水酸基と反応しうる官能基を有し、かつ、水酸基と反応することでブロック樹脂中にカルボキシル基を存在させうる化合物(b)中の水酸基と反応しうる官能基と反応することにより、カルボキシル基を有するブロック(A’’)および(C’’)に変換することができる。さらに、ブロック(A’’)および(C’’)中のカルボキシル基の一部と、エチレン性不飽和基および、カルボキシル基と反応しうる官能基を有する化合物(c)とを反応させることにより、本発明のブロック樹脂を得ることができる。この場合、カルボキシル基と反応しうる官能基としては、エポキシ基、酸無水物基などが挙げられる。また、ブロック(A’’)および(C’’)中に残っている水酸基と、エチレン性不飽和基および、水酸基と反応しうる官能基を有する化合物(a)とを反応させることもできる。
【0056】
エチレン性不飽和基および、カルボキシル基と反応しうる官能基を有する化合物(c)は、限定されるものではないが、グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、グリシジルアリルエーテル、2,3−エポキシ−2−メチルプロピル(メタ)アクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、4−ビニル−1−シクロヘキセン1,2エポキシド、グリシジルシンナメート、1,3−ブタジエンモノエポキサイド、セロキサイド2000(ダイセル化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0057】
ブロック樹脂中の水酸基またはカルボキシル基と、エチレン性不飽和基および、水酸基と反応しうる官能基を有する化合物(a)、またはエチレン性不飽和基および、カルボキシル基と反応しうる官能基を有する化合物(c)との反応は、公知の条件に従って行うことができるが、エチレン性不飽和基の重合を抑制する為に少量の重合禁止剤を加えた上、空気気流下で行われるのが望ましい。
【0058】
また、ブロック(A)および(C)に含まれる水酸基またはカルボキシル基またはエチレン性不飽和基の一部は、アルコキシシリル基および、水酸基またはカルボキシル基またはエチレン性不飽和基と反応しうる官能基を有する化合物(d)中の水酸基またはカルボキシル基またはエチレン性不飽和基と反応しうる官能基、と反応させることによりアルコキシシリル基へ変換される。この変性により、ブロック樹脂中にアルコキシシリル基を導入できる。ここで水酸基と反応しうる官能基として好適な官能基は、例えばイソシアネート基、酸無水物基、ハロゲン基などが挙げられる。
【0059】
さらに、前述した、ブロック(A)および(C)に含まれる水酸基の全部または一部がカルボキシル基に変換されたブロック樹脂を用いて反応することもできる。すなわち、ブロック(A)および(C)に含まれる水酸基またはカルボキシル基の全部または一部を、アルコキシシリル基および、水酸基またはカルボキシル基と反応しうる官能基を有する化合物中の水酸基またはカルボキシル基と反応しうる官能基、と反応させることにより、アルコキシシリル基を有するブロック樹脂を得ることができる。ここで、水酸基と反応しうる官能基としては、前述した官能基が挙げられ、カルボキシル基と反応しうる官能基としては、例えばイソシアネート基、エポキシ基、ビニルエーテル基、カルボジイミド基、アジリジン基、ハロゲン基などが挙げられる。
【0060】
さらに、ブロック(A)および(C)に含まれるエチレン性不飽和基の一部を、アルコキシシリル基および、エチレン性不飽和基と反応しうる官能基を有する化合物中のエチレン性不飽和基と反応しうる官能基、と反応させることにより、アルコキシシリル基を有するブロック樹脂を得ることができる。ここで、エチレン性不飽和基と反応しうる官能基としては、アミノ基、チオール基などが挙げられる。
【0061】
アルコキシシリル基、および水酸基と反応しうる官能基を有する化合物は特に限定されないが、信越化学工業製「KBE−9007」、GE東芝シリコーン株式会社製「SILQUEST A−LINK25 SILANE」、「SILQUEST A−LINK35 SILANE」、「SILQUEST Y−5187 SILANE」などが挙げられる。また、アルコキシシリル基、およびカルボキシル基と反応しうる官能基を有する化合物は特に限定されないが、信越化学工業製「KBE−9007」、「KBM−303」、「KBM−403」、「KBE−402」、「KBE−403」、チッソ株式会社製「サイラエースS−510」、「サイラエースS−520」、「サイラエースS−530」、GE東芝シリコーン株式会社製「SILQUEST A−LINK25 SILANE」、「SILQUEST A−LINK35 SILANE」、「SILQUEST Y−5187 SILANE」「SILQUEST WETLINK78 SILANE」、「TSL 8350」、「TSL 8355」などが挙げられる。また、アルコキシシリル基、およびエチレン性不飽和基と反応しうる官能基を有する化合物は特に限定されないが、信越化学工業製「KBM−602」、「KBM−603」、「KBM−903」、「KBM−573」、「KBE−603」、「KBE−903」、チッソ株式会社製「サイラエースS−310」、「サイラエースS−311」、「サイラエースS−320」、「サイラエースS−321」、「サイラエースS−330」、「サイラエースS−3」などが挙げられる。これら化合物を単独でまたは2種類以上を併用して用いることができる。また、ブロック樹脂とこれら化合物との反応は、公知の方法に従って行うことができる。また上記化合物は硬化剤として使用することができる。
【0062】
本発明のブロック樹脂のブロック(A)とブロック(B)とブロック(C)との重量割合は、(A)1〜50重量%、(B)48〜95重量%、(C)1〜50重量%であることが好ましい。ブロック(A)またはブロック(C)の重量割合が1重量%未満である場合、光硬化反応、硬化剤との架橋反応さらには自己架橋反応が不充分であり、硬化塗膜の強度や保持力などが維持できない場合がある。またブロック(B)の重量割合が48重量%未満である場合、硬化塗膜の柔軟性などの機械的特性を発現することが困難となる場合がある。従ってブロック樹脂が(A)−(B)で表されるブロック樹脂である場合は、硬化塗膜の機械的特性を発現することが困難となる。
【0063】
本発明のブロック樹脂の酸価は、塗膜の硬化性や現像性などを考慮し適宜選択されるが、 5〜200mgKOH/gが好ましく、より好ましくは20〜150mgKOH/gである。5mgKOH/g未満であるとレジストとして使用した際の現像性が不足したり、樹脂の凝集力や熱硬化性などが不足する場合があり、200mgKOH/gを超えると、樹脂中の二重結合量が不足し充分な硬化性が得られないばかりか、各種溶剤への溶解性が不足したり、ワニスの粘度上昇を引き起こしハンドリングの低下を引き起こす場合がある。
【0064】
本発明のブロック樹脂のエチレン性不飽和基1つあたりの分子量(二重結合当量)は、光硬化性組成物の硬度と塗膜の機械的特性によって適宜選択されるが、100〜3000が好ましい。3000を超えると塗膜の充分な強度を発現することが困難となる場合があり、100未満であると低カール性などの機械的特性を発現することが困難となる場合がある。
【0065】
本発明のブロック樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、1000〜500000が好ましく、特に10000〜200000がさらに好ましい。Mwが1000未満であると、硬化塗膜として充分な耐性を得られない場合がある。またMwが500000を超えると、合成に多大な時間を要するばかりでなく、樹脂が高粘度となりハンドリングが悪化する場合がある。
【0066】
本発明におけるブロック樹脂の分子量の多分散度[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)]は、1.05〜2.5、好ましくは1.3〜2.3である。分子量の多分散度が2.5を超えると、実質的に低分子量の重合物が増え、さらには(A)−(B)−(C)構造でないブロック樹脂が混入することとなり、塗膜物性に悪影響をおよぼす場合がある。
【0067】
また、得られたブロック樹脂の溶液粘度は特に制限はなく、樹脂の用途により選択されるが、好ましくは、100〜50000mP・s(25℃)であり、粘着剤として使用する場合には、500〜50000mP・s(25℃)である。粘度が50000mP・s(25℃)を超えると塗加工が困難になり、粘度が10mP・s(25℃)より低いと塗工時に樹脂が流れてしまい、塗工が困難になる場合がある。
【0068】
本発明のブロック樹脂は、必要に応じて、バインダー樹脂、光硬化性オリゴマー、エチレン性不飽和モノマー、光重合開始剤、増感剤などを添加して光硬化性組成物とすることができる。バインダー樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ビニル樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、エチレン性不飽和基が導入されていてもよい。エチレン性不飽和基の導入方法はどのようなものであっても構わない。これらの樹脂を単独で添加しても良いし、他の樹脂を含む、複数の樹脂を混合して添加しても良い。またこれらの樹脂は用途の必要に応じ熱硬化させて架橋させてもよく、その場合には、必要に応じ従来既知の熱硬化触媒を添加して用いても良い。また、本発明のブロック樹脂中に存在するカルボキシル基や水酸基やアルコキシシリル基と反応しうる官能基を有するバインダー樹脂や硬化剤を添加して、本発明のブロック樹脂を架橋して使用することも可能である。
【0069】
光硬化性オリゴマーとしては、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビス(アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、ビス(メタクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、エピクロルヒドリン変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート:日本化薬製カヤラッドR−167、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート:日本化薬製カヤラッドHXシリーズなどのアルキル型(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性エチレングリコールジ(メタ)アクリレート:長瀬産業デナコールDA(M)−811、エピクロルヒドリン変性ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート:長瀬産業デナコールDA(M)−851、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性プロレングリコールジ(メタ)アクリレート:長瀬産業デナコールDA(M)−911などのアルキレングリコール型(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート:日本化薬製カヤラッドR−604、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート:サートマーSR−454、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート:日本化薬製TPA−310、エピクロルヒドリン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート:長瀬産業DA(M)−321などのトリメチロールプロパン型(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート:東亜合成アロニックスM−233、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート類:日本化薬製カヤラッドD−310,320,330など、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート類:日本化薬製カヤラッドDPCA−20,30,60,120などのペンタエリスリトール型(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート:長瀬産業デナコールDA(M)−314、トリグリセロールジ(メタ)アクリレートなどのグリセロール型(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート:山陽国策パルプCAM−200などの脂環式(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート:東亜合成アロニックスM−315、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレートなどのイソシアヌレート型(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0070】
さらに、硫黄原子を分子内に含有する光硬化性オリゴマーを例示する。1,3−プロパンジオールジチオ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジチオ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジチオ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジチオ(メタ)アクリレート、ビス(チオアクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、ビス(チオメタクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、エピクロルヒドリン変性1,6−ヘキサンジオールジチオ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジチオ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジチオ(メタ)アクリレートなどのアルキル型チオ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジチオ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジチオ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジチオ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジチオ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジチオ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性エチレングリコールジチオ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性ジエチレングリコールジチオ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジチオ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジチオ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジチオ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジチオ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジチオ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性プロレングリコールジチオ(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコール型チオ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリチオ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリチオ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジチオ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリチオ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリチオ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性トリメチロールプロパントリチオ(メタ)アクリレートなどのトリメチロールプロパン型チオ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリチオ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラチオ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジチオ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサチオ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタチオ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールポリチオ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールポリチオ(メタ)アクリレート類などペンタエリスリトール型チオ(メタ)アクリレート、グリセロールジチオ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性グリセロールトリチオ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジチオ(メタ)アクリレートなどのグリセロール型チオ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジチオ(メタ)アクリレート、トリシクロペンタニルジチオ(メタ)アクリレート、シクロヘキシルジチオ(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジチオ(メタ)アクリレートなどの脂環式チオ(メタ)アクリレート、トリス(チオアクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(チオメタクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(チオアクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(チオメタクリロキシエチル)イソシアヌレートなどのイソシアヌレート型チオ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは単独あるいは複数混合して用いても良い。
【0071】
さらに、芳香族ポリヒドロキシ化合物としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシン、カテコール、ピロガロール等のジあるいはポリ(メタ)アクリレート化合物、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチ(プロピ)レンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、エチ(プロピ)レンオキサイド変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、エチ(プロピ)レンオキサイド変性ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性フタル酸ジ(メタ)アクリレートなどの芳香族基を有する(メタ)アクリレート化合物、テトラクロロビスフェノールSエチ(プロピ)レンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールSエチ(プロピ)レンオキシド変性ジ(メタ)アクリレートなどの塩素以上の原子量を持つハロゲン原子で置換された芳香族基を有するスチレン類および(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。
【0072】
さらに、ウレタンアクリレートとしては、例えば、フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー:共栄社化学AH−600、フェニルグリシジルエーテルアクリレートトリレンジイソシアネートウレタンプレポリマー:共栄社化学AT−600、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー:共栄社化学UA―306H、フェニルグリシジルエーテルアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー:共栄社化学AI−600、グリセリンジメタクリレートトリレンジイソシアネートウレタンプレポリマー:共栄社化学UA−101T、グリセリンジメタクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー:共栄社化学UA−101I、ペンタエリスリトールトリアクリレートトリレンジイソシアネートウレタンプレポリマー:共栄社化学UA―306T、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー:共栄社化学UA―306Iなどが挙げられる。
【0073】
光重合開始剤は、紫外線により感光性組成物を硬化させる場合に添加される。なお、電子線により硬化させる場合には開始剤は特に必要ではない。光重合開始剤としては、光励起によってビニル重合を開始できる機能を有するものであれば特に限定はなく、例えばモノカルボニル化合物、ジカルボニル化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾインエーテル化合物、アシルフォスフィンオキシド化合物、アミノカルボニル化合物等が使用できる。
【0074】
具体的にモノカルボニル化合物としては、ベンゾフェノン、4−メチル−ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、4−(4−メチルフェニルチオ)フェニル−エネタノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4−(1,3−アクリロイル−1,4,7,10,13−ペンタオキソトリデシル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N,N−トリメチルベンゼンメタアンモニウムクロリド、2−ヒドロキシ−3−(4−ベンゾイル−フェノキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミン塩酸塩、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−n−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシエチル)]メタアンモニウム臭酸塩、2−/4−iso−プロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9Hチオキサントン−2−イロキシ))−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミン塩酸塩、ベンゾイルメチレン−3−メチルナフト(1,2−d)チアゾリン等が挙げられる。
【0075】
ジカルボニル化合物としては、1,7,7−トリメチル-ビシクロ[2.1.1]ヘプタン−2,3−ジオン、ベンザイル、2−エチルアントラキノン、9,10−フェナントレンキノン、メチル−α−オキソベンゼンアセテート、4−フェニルベンザイル等が挙げられる。
【0076】
アセトフェノン化合物としては、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)2−ヒドロキシ−ジ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−スチリルプロパン−1−オン重合物、ジエトキシアセトフェノン、ジブトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,2−ジエトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノ−フェニル)ブタン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノ−プロパノニル)−9−ブチルカルバゾール等が挙げられる。
【0077】
ベンゾインエーテル化合物としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインノルマルブチルエーテル等が挙げられる。
【0078】
アシルフォスフィンオキシド化合物としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、4−n−プロピルフェニル-ジ(2,6−ジクロロベンゾイル)ホスフィンオキシド等が挙げられる。
【0079】
アミノカルボニル化合物としては、メチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、イソアミル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、4,4’−ビス−4−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス−4−ジエチルアミノベンゾフェノン、2,5’−ビス−(4−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン等が挙げられる。
【0080】
これらは上記化合物に限定されず、紫外線により重合を開始させる能力があればどのようなものでも構わない。これらは単独使用または併用することができ、使用量に制限はないが、被硬化物の乾燥重量の合計100重量部に対して1〜20重量部の範囲で添加されるのが好ましい。また、増感剤として公知の有機アミンを加えることもできる。
【0081】
さらに上記光硬化性組成物に、水酸基またはカルボキシル基またはアルコキシシリル基と反応することができる官能基を少なくとも2個有する化合物、さらに必要に応じて硬化触媒が、配合されて熱硬化させることもできる。この時、塗工時の粘度を調整する為に適宜溶剤を添加しても良い。
【0082】
この場合、本発明の光硬化性組成物を光硬化させた後、アルカリ現像してパターン形成し、露光部をさらに熱硬化させて硬化塗膜の耐性を向上することができる。
【0083】
また、本発明の光硬化性組成物に熱硬化性架橋剤が含まれる場合、熱硬化性組成物を粘着剤として使用し、後に光硬化させて粘着力を消失させることができる。この場合、粘着力などの面からブロック樹脂のガラス転移温度は0℃以下であることが好ましい。
【0084】
水酸基と反応することができる官能基を少なくとも2個有する化合物としては、ポリイソシアネート化合物、アミノ樹脂、フェノール樹脂、多官能ポリカルボン酸無水物が挙げられる。
【0085】
ポリイソシアネート化合物について説明する。 ポリイソシアネート化合物は、イソシアネート基を2個以上有する化合物である。ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基は、ブロック樹脂が有する反応性官能基、例えば水酸基や、カルボキシル基と反応し得る。
【0086】
ポリイソシアネート化合物は、イソシアネート基を分子内に複数有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。ポリイソシアネート化合物の例としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物、およびこれらポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、これらポリイソシアネート化合物のビュレット体やイソシアヌレート体、更にはこれらポリイソシアネート化合物と公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等とのアダクト体等が挙げられる。
【0087】
アミノ樹脂、フェノール樹脂としては、尿素、メラミン、ベンゾグアナミン、フェノール、クレゾール類、ビスフェノール類等の化合物とホルムアルデヒドとの付加化合物または、その部分縮合物が挙げられる。
【0088】
多官能ポリカルボン酸無水物は、カルボン酸無水物基を2つ以上有する化合物であり特に限定されるものではないが、テトラカルボン酸二無水物、ヘキサカルボン酸三無水物、ヘキサカルボン酸ニ無水物、無水マレイン酸共重合樹脂などの多価カルボン酸無水物類等が挙げられる。また、反応中に脱水反応を経由して無水物と成りうるポリカルボン酸、ポリカルボン酸エステル、ポリカルボン酸ハーフエステルなどは、本発明で言う2つ以上のカルボン酸無水物基を有する化合物に含まれる。
【0089】
さらに詳しく例示すると、テトラカルボン酸二無水物としては、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルフィドテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、新日本理化株式会社製「リカシッドTMTA−C」、「リカシッドMTA−10」、「リカシッドMTA−15」、「リカシッドTMEGシリーズ」、「リカシッドTDA」などが挙げられる。
【0090】
無水マレイン酸共重合樹脂としては、サートマー社製SMAレジンシリーズ、株式会社岐阜セラック製造所製GSMシリーズなどのスチレン−無水マレイン酸共重合樹脂、p−フェニルスチレン−無水マレイン酸共重合樹脂、ポリエチレン−無水マレイン酸などのα−オレフィン−無水マレイン酸共重合樹脂、ダイセル化学工業株式会社製「VEMA」(メチルビニルエ−テルと無水マレイン酸の共重合体)、無水マレイン酸アクリル変性ポリオレフィン(「アウローレンシリーズ」:日本製紙ケミカル株式会社製)、無水マレイン酸共重合アクリル樹脂などが挙げられる。
【0091】
カルボキシル基と反応することができる官能基を少なくとも2個有する化合物としては、多官能エポキシ化合物、多官能ビニルエーテル化合物、高分子量ポリカルボジイミド類、アジリジン化合物などが挙げられる。
【0092】
多官能エポキシ化合物は、エポキシ基を分子内に複数有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。該多官能エポキシ化合物としては、具体的には、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン等が挙げられる。
【0093】
多官能ビニルエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、グリセリンジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、1,4−ジヒドロキシルシクロヘキサンジビニルエーテル、1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサンジビニルエーテル、ハイドロキノンジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ハイドロキノンジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性レゾルシンジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ビスフェノールSジビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、ジペンタエリスリトールポリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンポリビニルエーテルなどが挙げられる。
【0094】
高分子量ポリカルボジイミド類としては日清紡績株式会社のカルボジライトシリーズが挙げられる。その中でもカルボジライトV−01,03,05,07,09は有機溶剤との相溶性に優れており好ましい。
【0095】
アジリジン化合物としては、例えば、2,2’−ビスヒドロキシメチルブタノールトリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、4,4’−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等が挙げられる。
【0096】
これら硬化剤は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。硬化剤の使用量は、ブロック樹脂の種類や、光硬化性組成物の用途等を考慮して決定すればよく、特に限定されるものではないが、該ブロック樹脂100重量部に対して、0.1重量部〜70重量部の範囲内がより好ましく、0.5重量部〜40重量部の範囲内がさらに好ましい。これにより、ブロック樹脂の架橋密度を適度な値に調節することができるので、光硬化性組成物の各種物性をより一層向上させることができる。架橋剤の使用量が0.1重量部よりも少ない場合には、架橋剤が不足して架橋密度が低くなり過ぎ、凝集力や耐久性が不充分となる場合がある。また、該使用量が70重量部よりも多い場合には、架橋密度が高くなり過ぎ、光硬化性組成物として使用した場合、塗工物の機械的物性を損なったりする場合がある。尚、ブロック樹脂に架橋剤を添加する添加方法は、特に限定されるものではない。
【0097】
硬化触媒は使用する硬化剤によって適宜選択され、公知の硬化触媒種および添加量が選択される。
【0098】
また、ブロック樹脂と上記硬化剤との硬化条件は使用する硬化剤によって適宜公知の条件を選択することができる。
【0099】
本発明のブロック樹脂がアルコキシシリル基を有する場合、本発明の樹脂単独で硬化塗膜を形成することができる。その際の熱硬化は公知の条件に従って行うことができるが、酸触媒・塩基性触媒・錫系触媒など公知の硬化触媒を添加するのが望ましい。錫系触媒としては日東化成株式会社製「ネオスタン U−220H」「ネオスタン U−130」「ネオスタン U−50」などが挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0100】
また本発明のブロック樹脂がアルコキシシリル基を有する場合、光硬化性組成物にシランカップリング剤などの公知の添加剤を添加しても良く、 特に本発明のブロック樹脂がアルコキシシリル基を有する場合、硬化性の良好な塗膜を得ることができる。
【0101】
また、本発明の光硬化性組成物に使用される有機溶剤としては、本発明のブロック樹脂が溶解するものであれば限定されないが、シクロヘキサン、n−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコールなどのアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチルなどの酢酸エステル類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのグリコールエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸セロソルブ、酢酸メトキシブチルなどのグリコールエステル類などが挙げられる。
【0102】
本発明の光硬化性組成物は、印刷適性や塗膜特性を向上させる目的で、有機・無機のフィラーを配合しても良い。有機フィラーは、デンプン等の天然物、ポリメチルメタアクリレートなどのアクリル系、ポリスチレン系、スチレン-アクリル系、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン6−12等のナイロン系、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、4フッ化エチレン等のオレフィン系、ポリエステル系、フェノール系、ベンゾグアナミン系の樹脂微粒子などである。
【0103】
無機フィラーは、クレー、ケイソウ土、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、タルク、カオリン、焼成カオリン、硫酸バリウム、二酸化チタン、硫酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、五酸化アンチモン、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、ポリシルセスキオキサン、アルミナ、アルミナゾル、擬ベーマタイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、モンモリナイト等である。本発明のブロック樹脂がアルコキシシリル基を有する場合、ブロック樹脂とこれら無機物との反応を行うことができる。
【0104】
また、本発明の樹脂がブロック構造を有する為、上記の硬化性組成物を乾燥し塗膜化することで、無機ドメインと有機ドメインとがラメラ構造、スフィア構造、シリンダー構造などのミクロ相分離構造をとった塗膜を形成することができる。
【0105】
フィラーとブロック樹脂との配合比率は、フィラー配合の目的により異なる。例えば、ブロッキング防止や塗膜の機械的特性の向上を目的とする場合には、ブロック樹脂の全量を基準とし、好ましくは5〜50重量%、さらに好ましくは10〜40重量%である。50重量%を超えると塗膜の機械特性、特に折り曲げ性、伸張性が低下する場合がある。また、インキの乾燥性の向上を目的とする場合には、好ましくは50〜95重量%、さらに好ましくは60〜90重量%である。50重量%未満では充分な乾燥性の向上効果が得られない場合がある。フィラーの配合率が高い場合、フィラーと樹脂をグラフトさせると、塗膜の機械特性が飛躍的に向上するため好ましい。
【0106】
本発明の光硬化性組成物には、必要に応じて紫外線吸収剤、蛍光増白剤等の蛍光染料、着色染料、着色剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、クレーター防止剤、沈降防止剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、ワックス、熱安定剤等の添加剤も、適宜1種または2種以上添加することができる。
【0107】
本発明の光硬化性組成物は、公知のラジエーション硬化方法により硬化させ硬化物とすることができ、活性エネルギー線としては、電子線、紫外線、400〜500nmの可視光を使用することができる。照射する電子線の線源には熱電子放射銃、電界放射銃等が使用できる。また、紫外線および400〜500nmの可視光の線源(光源)には、例えば、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ガリウムランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ等を使用することができる。具体的には、点光源であること、輝度の安定性から、超高圧水銀ランプ、キセノン水銀ランプが用いられることが多い。照射する活性エネルギー線量は、5〜2000mJ/cm2の範囲で適時設定できるが、工程上管理しやすい50〜1000mJ/cm2の範囲であることが好ましい。また、これら紫外線または電子線と、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱等による熱の併用も可能である。
【0108】
本発明の光硬化性組成物は、基材に塗工後、自然または強制乾燥後にラジエーション硬化を行っても良いし、塗工に続いてラジエーション硬化させた後に自然または強制乾燥しても構わないが、自然または強制乾燥後にラジエーション硬化した方が好ましい。電子線で硬化させる場合は、水による硬化阻害又は有機溶剤の残留による塗膜の強度低下を防ぐため、自然または強制乾燥後にラジエーション硬化を行うのが好ましい。ラジエーション硬化のタイミングは塗工と同時でも構わないし、塗工後でも構わない。
【0109】
本発明のブロック樹脂は、耐溶剤性、耐薬品性、耐熱性に優れ、塗料、接着剤、粘着剤、印刷用版材料、封止剤、集積回路用レジスト、プリント配線板用レジスト、カラーフィルター用着色ペースト、立体成形材料、光学用クリアコーティング剤等に好適に用いられる光硬化性組成物として提供することができる。
【実施例】
【0110】
以下、実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の部は、重量部、%は、重量%を示す。また、樹脂の重量平均分子量MwはGPC測定により求めたポリスチレン換算の値である。
【0111】
合成例1
温度計、攪拌装置、還流冷却管、窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、メチルエチルケトン50部、メチルメタクリレート12部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート 10部、ブロモイソ酪酸エチル0.6部、テトラメチルエチレンジアミン1.5部を仕込み、40℃に昇温して30分窒素を導入した。塩化第一銅0.6部を投入し、窒素気流下で70℃まで昇温して重合を開始した。2時間重合後、重合溶液をサンプリングし、溶液の乾燥固形分から重合収率が95%以上であることを確認した[ブロック(A’)、Mw=6800、Mw/Mn=1.3]。次にノルマルブチルメタクリレート56部を投入した。さらに4時間重合後、重合溶液をサンプリングし、溶液の乾燥固形分から重合収率が90%以上であることを確認した[ブロック(A’)−(B)、Mw=26500、Mw/Mn=1.5]。さらにメチルメタクリレート12部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部を投入し2時間重合を行った[ブロック(A’)−(B)−(C’)、Mw=33300、Mw/Mn=1.7]。溶液の乾燥固形分から算出した最終の重合収率は98%であった。
【0112】
重合溶液にメチルエチルケトン300部を加え20℃に冷却し、陽イオン交換樹脂 ダイアイオンPK280LH(三菱化学製)60部を投入して室温で2時間攪拌した後、酸吸着剤としてキョーワード500(協和化学製)15部を添加し1時間攪拌した。濾過により陽イオン交換樹脂、酸吸着剤を除去し、さらに重合溶液から溶剤等の揮発分を除去し、淡黄色の透明なブロック樹脂(a)を得た。
【0113】
合成例2
温度計、攪拌装置、還流冷却管、エア導入管を備えた四つ口フラスコに、上記合成例1で得られた樹脂(a)100部、シクロヘキサノン200部を仕込んだ。続いて無水琥珀酸6.3部、イソシアネートエチルメタクリレート9.8部、メトキノン0.5部を仕込み空気気流下で90℃まで昇温した。DBU0.5部を添加し4時間反応を行った。反応生成物のIR測定において酸無水物およびイソシアネート基に由来する特性吸収が消失していることを確認して反応を停止した。さらに重合溶液から溶剤等の揮発分を除去し、ブロック樹脂(b)を得た(酸価30mgKOH/g、Mw=36500、Mw/Mn=1.8)。
DBU:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(反応触媒)
【0114】
合成例3
温度計、攪拌装置、還流冷却管、エア導入管を備えた四つ口フラスコに、上記合成例1で得られた樹脂(a)100部、シクロヘキサノン200部を仕込んだ。続いて無水琥珀酸13部、DBU0.5部を仕込み、空気気流下で90℃に昇温して4時間反応を行った。さらにグリシジルメタクリレート8.9部、メトキノン0.5部を仕込み空気気流下で4時間反応を行った。反応生成物のIR測定において酸無水物およびエポキシ基に由来する特性吸収が消失していることを確認して反応を停止した。さらに重合溶液から溶剤等の揮発分を除去し、ブロック樹脂(c)を得た(酸価29mgKOH/g、Mw=34800、Mw/Mn=1.8)。
【0115】
合成例4
温度計、攪拌装置、還流冷却管、エア導入管を備えた四つ口フラスコに、上記合成例2で得られた樹脂(b)100部、シクロヘキサノン200部を仕込んだ。続いて信越化学製「KBE−9007」6.7部、メトキノン0.2部を仕込み、空気気流下で60℃に昇温して4時間反応を行った。反応生成物のIR測定においてイソシアネート基に由来する特性吸収が消失していることを確認して反応を停止した。さらに重合溶液から溶剤等の揮発分を除去し、ブロック樹脂(d)を得た(酸価27mgKOH/g、Mw=39300、Mw/Mn=1.9)。
【0116】
合成例5
合成例1のブロック樹脂のブロック(A’)の合成にメチルメタクリレート17部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート34部、ブロック(B)の合成にメチルメタクリレート26部、ブロック(C’)の合成に2−ヒドロキシエチルメタクリレート23部を使用した以外は同様の方法でブロック樹脂(e)を得た(Mw=24200、Mw/Mn=1.7)。
【0117】
合成例6
温度計、攪拌装置、還流冷却管、エア導入管を備えた四つ口フラスコに、上記合成例5で得られた樹脂(e)100部、続いて無水琥珀酸13部、DBU0.5部、イソシアネートエチルメタクリレート40部、メトキノン0.5部を仕込み、上記合成例2と同様の方法でブロック樹脂(f)を得た(酸価48mgKOH/g、Mw=26700、Mw/Mn=1.8)。
【0118】
合成例7
温度計、攪拌装置、還流冷却管、エア導入管を備えた四つ口フラスコに、上記合成例5で得られた樹脂(e)100部を仕込み、続いて無水琥珀酸39部、DBU0.5部を仕込み、空気気流下で90℃に昇温して4時間反応を行った後さらにグリシジルメタクリレート34部、メトキノン0.5部を仕込み空気気流下で4時間反応を行い上記合成例3と同様の方法でブロック樹脂(g)を得た(酸価50mgKOH/g、Mw=27600、Mw/Mn=1.8)。
【0119】
合成例8
温度計、攪拌装置、還流冷却管、窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、メチルエチルケトン50部、メチルメタクリレート24部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート 20部、ノルマルブチルメタクリレート56部、ブロモイソ酪酸エチル0.6部、テトラメチルエチレンジアミン1.5部を仕込み、40℃に昇温して30分窒素を導入した。塩化第一銅0.6部を投入し、窒素気流下で70℃まで昇温して重合を開始した。6時間重合後、重合溶液をサンプリングし、溶液の乾燥固形分から重合収率が98%以上であることを確認し冷却して重合を停止した。合成例1と同様の方法で重合触媒および溶剤等の揮発分を除去し、樹脂(h)得た(Mw=30400、Mw/Mn=1.4)。
【0120】
合成例9
温度計、攪拌装置、還流冷却管、エア導入管を備えた四つ口フラスコに、上記合成例8得られた樹脂(h)100部、シクロヘキサノン200部、無水琥珀酸7.9部、イソシアネートエチルメタクリレート12部、メトキノン0.5部、DBU0.5部を仕込み、上記合成例2と同様の方法で、樹脂(i)を得た(酸価30mgKOH/g、Mw=32500、Mw/Mn=1.6)。
【0121】
合成例10
温度計、攪拌装置、還流冷却管、エア導入管を備えた四つ口フラスコに、上記合成例8で得られた樹脂(h)100部、シクロヘキサノン200部、無水琥珀酸13部、DBU0.5部を仕込み90℃で4時間反応を行った後、さらにグリシジルメタクリレート8.9部、メトキノン0.5部を仕込み、上記合成例3と同様の方法で、樹脂(j)を得た(酸価30mgKOH/g、Mw=33900、Mw/Mn=1.6)。
【0122】
合成例11
温度計、攪拌装置、還流冷却管、エア導入管を備えた四つ口フラスコに、上記合成例9で得られた樹脂(i)100部、シクロヘキサノン200部を仕込んだ。続いて信越化学製「KBE−9007」6.7部、メトキノン0.2部を仕込み、上記合成例4と同様の方法で、樹脂(k)を得た(酸価28mgKOH/g、Mw=37300、Mw/Mn=1.7)。
【0123】
合成例12
温度計、攪拌装置、還流冷却管、エア導入管を備えた四つ口フラスコに、上記合成例1で得られた樹脂(a)100部、シクロヘキサノン200部を仕込んだ。イソシアネートエチルメタクリレート10部、メトキノン0.5部を仕込み、空気気流下で70℃まで昇温し4時間反応を行った。反応生成物のIR測定においてイソシアネート基に由来する特性吸収が消失していることを確認して反応を停止した。さらに重合溶液から溶剤等の揮発分を除去し、ブロック樹脂(l)を得た(Mw=36500、Mw/Mn=1.8)。
【0124】
合成例13
温度計、攪拌装置、還流冷却管、エア導入管を備えた四つ口フラスコに、上記合成例1で得られた樹脂(a)100部、シクロヘキサノン200部、無水琥珀酸6.3部、DBU0.5部を仕込み、空気気流下で90℃まで昇温し4時間反応を行った。反応生成物のIR測定において酸無水物基に由来する特性吸収が消失していることを確認して反応を停止した。さらに重合溶液から溶剤等の揮発分を除去し、ブロック樹脂(m)を得た(酸価33mgKOH/g、Mw=34400、Mw/Mn=1.8)。
【0125】
合成例14
温度計、攪拌装置、還流冷却管、窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、メチルエチルケトン50部、メチルメタクリレート24部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート 20部、ブロモイソ酪酸エチル0.6部、テトラメチルエチレンジアミン1.5部を仕込み、40℃に昇温して30分窒素を導入した。塩化第一銅0.6部を投入し、窒素気流下で70℃まで昇温して重合を開始した。4時間重合後、重合溶液をサンプリングし、溶液の乾燥固形分から重合収率が95%以上であることを確認した[ブロック(A’)、Mw=13800、Mw/Mn=1.3]。次にノルマルブチルメタクリレート56部を投入した。さらに4時間重合後、重合溶液をサンプリングし、溶液の乾燥固形分から重合収率が98%以上であることを確認し重合を停止した[ブロック(A’)−(B)、Mw=32500、Mw/Mn=1.6]。さらに合成例1と同様の方法で重合触媒および溶剤等の揮発分を除去した。
【0126】
さらに温度計、攪拌装置、還流冷却管、エア導入管を備えた四つ口フラスコに、上記樹脂100部、シクロヘキサノン200部を仕込んだ。続いて無水琥珀酸6.3部、イソシアネートエチルメタクリレート9.8部、メトキノン0.5部を仕込み空気気流下で90℃まで昇温した。DBU0.5部を添加し4時間反応を行った。反応生成物のIR測定において酸無水物およびイソシアネート基に由来する特性吸収が消失している事を確認して反応を停止した。溶液を濃縮してブロック樹脂(n)を得た(酸価30mgKOH/g、Mw=37600、Mw/Mn=1.7)。
【0127】
上記で合成した樹脂の一覧を表1に示す。
【0128】
【表1】

MOI:メタクリロイルオキシエチルイソシアネート
GMA:グリシジルメタクリレート
KBE−9007:信越化学工業(株)製
【0129】
実施例1〜8
合成例2〜4、6、7の樹脂ワニス(合成例で得られた樹脂をメチルエチルケトンで樹脂固形分30%に調整)100部、光重合開始剤(チバ・ガイギー社、イルガキュア907)2.5部、さらに熱硬化剤10部および硬化触媒1.0部を表2のように配合し、光硬化性組成物の溶液を調整した。上記溶液を、バーコーターを用いて50μm厚のPETフィルムに膜厚が4μmになるように塗工した後、80℃で5分間乾燥後、120W/cm2メタルハライドランプを用いて400mJの紫外線を照射し、塗工物を作製した。この塗工物を100℃で1時間加熱した後、40℃で1週間経過したものを以下の測定に用いた。
【0130】
比較例1〜9
合成例9〜14の樹脂ワニス(合成例で得られた樹脂をメチルエチルケトンで樹脂固形分30%に調整)を変えた以外は、実施例と同様にして光硬化性組成物の塗工物を調整した。
【0131】
光硬化性組成物の光硬化性および現像性の評価は、次の方法で行った。
(評価方法)
(1)MEKラビング試験
実施例1〜8および比較例1〜9で調整した塗工物を、メチルエチルケトンを滲み込ませた綿棒でラビング(一往復擦る)し、塗膜が剥がれて下地のPETフィルムが露出した時のラビング回数をカウントした。この値が大きいほど、より強固に塗膜が硬化していることを示し、光硬化性が優れていることが言える。実用的な照射光量を考慮し、ラビング回数を以下のように判定した。試験結果を表2に示す。なお、○以上が実用レベルを示す。
100回以上・・・◎
50回以上100回未満・・・○
10回以上50回未満・・・△
10回未満・・・×
【0132】
(2)鉛筆硬度
鉛筆硬度試験機(HEIDON社製Scratching Tester HEIDON−14)を用い、鉛筆の芯の堅さを選定して、荷重500gにて5回試験をした。5回中、1回も傷が付かない、もしくは1回のみ傷が付く時の芯の硬さを、その塗工物の鉛筆硬度とした。
【0133】
(3) 耐擦傷性
塗工物を、がく震型耐摩擦試験機にセットし、スチールウールのNo.0000を用いて、荷重250gで10回、がく震させた。取り出した塗工物について、キズの付き具合を以下のような5段階評価で目視判断した。数値が大きいほど、耐擦傷性が良好であることを示す。
5 ・・・ キズが全く無い
4 ・・・ わずかにキズが付いている
3 ・・・ キズは付いているが、基材は見えていない
2 ・・・ キズが付き、一部塗工物が剥がれている
1 ・・・ 塗工物が剥がれてしまい、基材が剥き出しの状態
【0134】
(4)密着性
JIS K 5400に従い、硬化皮膜の表面に1mm間隔で縦、横11本の切れ目を入れて100個の碁盤目を作る。セロハンテープをその表面に密着させた後、一気に剥がした時に剥離せず残存したマス目の個数を表示した。
【0135】
(5)カール
測定する硬化皮膜を有するPETフィルムを5cm×5cmにカットし、80℃の乾燥炉中に1時間放置した後、室温まで戻した。水平な台上で、塗工物の4辺の浮き上がりを目視で、5(浮き上がり無し)〜1(浮き上がり有り)で評した。この時、基材自身のカールは観測されなかった。
【0136】
(6)現像性評価
アルカリ現像液として1重量%炭酸ナトリウム水溶液を用い、ベルトコンベア搬送型(現像液をスプレー噴霧する方式のもの)の現像装置を用いて、現像液温30℃、現像液噴霧圧2kg/cm2の条件下にて、塗工物の未硬化部分の現像性を、下記の基準でそれぞれ目視評価した。
◎:未硬化部分の現像残り無し(実用可能レベル)
○:未硬化部分の現像残りがわずか(実用可能レベル)
×:未硬化部分の現像残り多い、または露光部も溶解(実用不可能レベル)
【0137】
評価結果を下記表2に示した。
【0138】
【表2】

【0139】
硬化剤X:サイメル−303(日本サイテック製)
硬化剤Y:デナコールEX−421(ナガセ化成工業(株)製)
硬化触媒I:キャタリスト602(日本サイテック製)
硬化触媒II:ジメチルベンジルアミン
硬化触媒III:ネオスタンU−220H(日東化成製)
【0140】
表2に示すように、実施例1〜8の光硬化性組成物は、硬化性、硬度、耐擦傷性に優れていると共にカール、密着性も良好である。さらにアルカリ溶液による現像性に優れており、フォトレジスト等の用途に適応しうることがわかった。一方、比較例1〜9では、それぞれの評価項目すべてを満足しうる硬化性組成物が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明のブロック樹脂を含む光硬化性組成物による硬化塗膜は、硬度、低カール性、基材との密着性に優れるため、光学用物品、主に液晶ディスプレイ用パネル等の表示装置や光学フィルム保護用等のクリアコーティング剤、粘着剤、あるいはレジスト下層膜として有用である。また親水性基と非親水性基を有することから、界面活性剤、相間移動物質、表面改質剤、分散剤などにも利用が期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)−(B)−(C)で表される構造を有するブロック樹脂であって、
ブロック(A)および(C)は、エチレン性不飽和基とカルボキシル基とを有するブロックであり、ブロック(B)は、エチレン性不飽和基とカルボキシル基と水酸基とを有しないブロックであるブロック樹脂。
【請求項2】
ブロック(A)および(C)が、エチレン性不飽和基とカルボキシル基とアルコキシシリル基とを有するブロックである請求項1記載のブロック樹脂。
【請求項3】
ブロック(A)とブロック(B)とブロック(C)との重量割合が、(A)1〜50重量%、(B)48〜95重量%、(C)1〜50重量%である請求項1または2記載のブロック樹脂。
【請求項4】
ブロック樹脂の重量平均分子量が、1000〜500000である請求項1〜3いずれか記載のブロック樹脂。
【請求項5】
ブロック樹脂の分子量の多分散度が、1.05〜2.5である請求項1〜4いずれか記載のブロック樹脂。
【請求項6】
水酸基を有するエチレン性不飽和モノマーを含むモノマーをリビングラジカル重合してブロック(A’)を製造する第一の工程、
水酸基を有しないエチレン性不飽和モノマーのみを含むモノマーをリビングラジカル重合してブロック(B)を製造する第二の工程、
水酸基を有するエチレン性不飽和モノマーを含むモノマーをリビングラジカル重合してブロック(C’)を製造する第三の工程、
ブロック(A’)およびブロック(C’)中の水酸基と、
エチレン性不飽和基および、水酸基と反応しうる官能基を有する化合物(a)中の水酸基と反応しうる官能基と、
水酸基と反応しうる官能基を有し、かつ、水酸基と反応することでブロック樹脂中にカルボキシル基を存在させうる化合物(b)中の水酸基と反応しうる官能基と、
を反応させてエチレン性不飽和基とカルボキシル基とを有する、ブロック(A)およびブロック(C)を製造する第四の工程、を含むことを特徴とするブロック樹脂の製造方法。
【請求項7】
水酸基を有するエチレン性不飽和モノマーを含むモノマーをリビングラジカル重合してブロック(A’)を製造する第一の工程、
水酸基を有しないエチレン性不飽和モノマーのみを含むモノマーをリビングラジカル重合してブロック(B)を製造する第二の工程、
水酸基を有するエチレン性不飽和モノマーを含むモノマーをリビングラジカル重合してブロック(C’)を製造する第三の工程、
ブロック(A’)およびブロック(C’)中の水酸基と、
水酸基と反応しうる官能基を有し、かつ、水酸基と反応することでブロック樹脂中にカルボキシル基を存在させうる化合物(b)中の水酸基と反応しうる官能基と、
を反応させてカルボキシル基を有するブロック(A’’)およびブロック(C’’)を製造する第四の工程、
ブロック(A’’)およびブロック(C’’)中のカルボキシル基または水酸基と、
エチレン性不飽和基および、カルボキシル基と反応しうる官能基を有する化合物(c)中のカルボキシル基と反応しうる官能基、
または、エチレン性不飽和基および、水酸基と反応しうる官能基を有する化合物(a)中の水酸基と反応しうる官能基と、
を反応させてエチレン性不飽和基とカルボキシル基とを有する、ブロック(A)およびブロック(C)を製造する第五の工程、を含むことを特徴とするブロック樹脂の製造方法。
【請求項8】
請求項6または7記載のブロック樹脂の製造方法で得られたブロック樹脂中の水酸基またはカルボキシル基またはエチレン性不飽和基と、
アルコキシシリル基および、水酸基またはカルボキシル基またはエチレン性不飽和基と反応しうる官能基を有する化合物(d)中の水酸基またはカルボキシル基またはエチレン性不飽和基と、
を反応させることを特徴とするエチレン性不飽和基とカルボキシル基とアルコキシシリル基とを有するブロック樹脂の製造方法。
【請求項9】
リビングラジカル重合が、原子移動ラジカル重合法である請求項6〜8いずれか記載のブロック樹脂の製造方法。
【請求項10】
原子移動ラジカル重合が、ケトン系溶媒中で、ハロゲン化銅とテトラメチルエチレンジアミンとを触媒として行われることを特徴とする請求項9記載のブロック樹脂の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜5いずれか記載のブロック樹脂を含む光硬化性組成物。
【請求項12】
さらに、熱硬化剤を含む請求項11記載の光硬化性組成物。

【公開番号】特開2008−81692(P2008−81692A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−266322(P2006−266322)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】