説明

ブロー成形体

【課題】二重壁の偏平なブロー成形体の特定方向の曲げに対する剛性の低下を防止し、かつ全体的な曲げ剛性を高める。
【解決手段】二重壁のブロー成形体に、二重壁の壁1,2を連結するリブが形成され、前記リブは壁1から連続して壁2に向けて延びるリブ3と、壁2から連続して壁1に向けて延びるリブ4(4A,4B)からなる。リブ3とリブ4は共に複数列存在して平面視で互いに交差し、リブ3は長さ方向に沿った一部又は全部の領域においてその頂部が壁2の内側に溶着し、リブ4は長さ方向に沿った一部の領域においてその頂部が壁1の内側に溶着している。リブ3,4が交差する箇所では両リブが互いに溶着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強用のリブが形成された二重壁のブロー成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、二重壁の一方の壁と他方の壁を連結する複数列のリブが形成された偏平なブロー成形体が記載されている。特許文献1の図1には、(1)二重壁の一方の壁から連続して他方の壁に向けて延び、頂部が前記他方の壁の内側に溶着したリブが開示され、同文献の図5には、(2)二重壁の一方の壁及び他方の壁から連続して対抗する壁に向けて延び、それぞれの頂部が二重壁の厚さ方向中央部で出会って互いに溶着したリブが開示されている。
特許文献2にも、二重壁の一方の壁と他方の壁を連結する複数列のリブが形成されたブロー成形体が記載されている。同文献2の図7に開示されたリブは、上記(2)のタイプである。また、同文献の図11に開示されたリブは、上記(2)と同タイプだが、互いに直交するリブが二重壁の両壁から形成され、それぞれの頂部が二重壁の厚さ方向中央部で出会って互いに溶着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−165152号公報
【特許文献2】国際公開2004/101323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2に開示された二重壁のブロー成形体は、それぞれ二重壁を構成する両壁の間に形成されたリブにより剛性が高められている。しかし、このブロー成形体には次のような問題があることが分かった。
上記(1)のタイプのリブを形成する場合、ブロー成形金型の突起が最初に接触するリブの頂部が最初に冷却され,その部分が肉厚が厚いままで他方の壁の内側に溶着し、一方の壁面はブロー成形によりパリソンが引き延ばされて薄肉化する。このように二重壁の一方の壁面が相対的に薄肉化することにより、ブロー成形体の曲げ剛性が十分高められないという問題がある。また、リブの長さ方向が一方向だけに揃っているので、曲げ線がリブの長さ方向に平行な曲げに対する剛性は相対的に低く、曲げ線がリブの長さ方向に交差する曲げでもリブの倒れが生じやすい。
【0005】
上記(2)のタイプのリブを形成する場合、同じくブロー成形金型の突起が最初に接触するリブの頂部が最初に冷却され、その部分が肉厚が厚いままで二重壁の中央部で出会って互いに溶着し、両方の壁面ではブロー成形によりパリソンが引き延ばされて薄肉化する。このように二重壁の中央部に肉厚の大きい箇所が集中し、一方で二重壁の壁面が薄肉化することにより、ブロー成形体の曲げ剛性が十分高められないという問題がある。
【0006】
リブの方向が一方向だけに揃っている場合(特許文献1の図1,5、特許文献2の図7参照)、上記のとおり、曲げ線がリブの長さ方向に平行な曲げに対する剛性は相対的に低いが、リブが交差している場合(特許文献2の図11参照)は、特定方向の曲げに対して剛性が低下することを防止できる。しかし、後者の場合、互いに直交するリブを二重壁の両壁から形成している関係で、二重壁の中央部に肉厚の大きい箇所が前者の場合以上に集中し、かつ両方の壁面が前者の場合以上に薄肉化し、これによりブロー成形体の全体的な曲げ剛性が十分高められないという問題がある。
【0007】
本発明は、以上述べた従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、二重壁のブロー成形体、主として二重壁の偏平なブロー成形体の特定方向の曲げに対する剛性の低下を防止し、かつブロー成形体の全体的な曲げ剛性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るブロー成形体は、二重壁のブロー成形体に、二重壁の一方の壁と他方の壁を連結するリブが形成され、前記リブは前記一方の壁から連続して前記他方の壁に向けて延びる第1リブと、前記他方の壁から連続して前記一方の壁に向けて延びる第2リブからなり、前記第1リブと第2リブは共に複数列存在して平面視で互いに交差し、前記第1リブは長さ方向に沿った一部又は全部の領域においてその頂部が前記他方の壁の内側に溶着し、前記第2リブは長さ方向に沿った一部の領域においてその頂部が前記一方の壁の内側に溶着していることを特徴とする。ここで一部とは全部ではないことを意味する。
【0009】
前記第1,第2リブは例えばそれぞれの列が互いに平行であり、又は/及び、前記第1,第2リブは例えば互いに直交するように交差することが望ましい。また、第1リブと第2リブが交差する箇所では、両リブは互いに溶着していることが望ましい。しかし、これらのことは必須ではない。
前記第1,第2リブは、上記に記載した要件を満たすのであれば、種々の断面形態(長さ方向に垂直な面における断面形態)を取り得る。例えば、それぞれ両側面部と頂部で構成される断面略台形状をなすリブ(特許文献1の図7のリブ3参照)、全体が互いに溶着して板状となった隠しリブ(特許文献1の図10のリブ4参照)、断面略台形状をなす部分と頂部側が互いに溶着して板状となった部分からなるリブ(特許文献1の図1のリブ115参照)、又は長手方向に沿って以上の形態を組み合わせたリブ(特許文献1の図1のリブ14と15参照)等が考えられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1リブ及び第2リブが平面視で互いに交差し、かつ第1リブ及び第2リブはそれぞれの頂部が、その長さ方向の一部又は全部の領域において対向壁の内側に溶着し、一方の壁及び他方の壁とも強化している。これにより、二重壁の特に偏平なブロー成形体の特定方向の曲げに対する剛性の低下を防止し、かつ全体的な曲げ剛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る第1ブロー成形体の一部切り欠き斜視断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】図1のC−C断面図である。
【図5】第1ブロー成形体を製造する一対のブロー成形金型の一部斜視図(a),(b)である。
【図6】本発明に係る第2ブロー成形体の一部切り欠き斜視断面図である。
【図7】第2ブロー成形体を製造する一対のブロー成形金型のうち、一方の金型の一部斜視図(a),(b)、及び他方の金型の一部斜視図(c)である。
【図8】本発明に係る第3ブロー成形体の斜視図である。
【図9】第3ブロー成形体を製造する一対のブロー成形金型のうち、一方の金型の一部斜視図(a),(b)、及び他方の金型の一部斜視図(c),(d)である。
【図10】本発明に係る第4ブロー成形体の斜視図である。
【図11】第4ブロー成形体を製造する一対のブロー成形金型のうち、一方の金型の一部斜視図(a)、及び他方の金型の一部斜視図(b),(c)である。
【図12】本発明に係る第5ブロー成形体の斜視図である。
【図13】第5ブロー成形体を製造する一対のブロー成形金型の一部斜視図(a),(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1〜図13を参照して、本発明に係るブロー成形体についてより具体的に説明する。
(第1ブロー成形体)
図1〜図4に示すブロー成形体(第1ブロー成形体)は、二重壁(互いに平行に配置された壁1及び壁2)の間に、複数個の互いに平行なリブ3と、平面視でリブ3に直角に交差する複数個の互いに平行なリブ4(4A,4B)を有する。リブ3は壁1から連続して壁2に向けて延びるリブであり、リブ4は壁2から連続して壁1に向けて延びるリブである。なお、図1において、2点鎖線は破断線である。
【0013】
リブ3は、対向する側壁5,6間のほぼ全長にわたる長さを有し、壁1から連続して壁2に向けて延び、その頂部が長さ方向の領域X1において壁2の内側に溶着し、その他の領域(長さ方向の領域X2)において壁1,2の中間でリブ4の頂部に溶着している(図2参照)。この例では領域X1がリブ3の長さの大部分を占めている。
リブ3は、長さ方向に垂直な断面をみると、前記第1の領域X1では、壁1から壁2に向けて延びる両側辺部3a,3bと、やや狭くなった頂辺部3c(頂部)で構成され、全体として略台形状に窪んだ形態をなし、頂辺部3c(頂部)が壁2の内側に溶着している。また、前記第2の領域X2では、壁1から壁2に向けて延びる両側辺部3a,3bと、頂辺部3d、及び頂片部3dの上に形成された板状部3eで構成され、全体として略台形状に窪んだ部分に板状部3eが乗った形態をなす。板状部3eの頂部が二重壁(壁1,2)の厚さ方向の中間位置で第2リブ4の頂部に溶着している。
【0014】
リブ4は、長さ方向に垂直な方向において交互に形成された2種のリブ(リブ4Aとリブ4B)により構成される。両者とも、対向する側壁(いずれも図示せず)間のほぼ全長にわたる長さを有し、壁2から連続して壁1に向けて延びている。
リブ4Aは、その頂部が長さ方向の第1の領域Y1において壁1の内側に溶着し、その他の領域(長さ方向の第2の領域Y2)において二重壁(壁1,2)の厚さ方向の中間位置でリブ3の頂部(板状部3eの頂部)に溶着している。この例では、第1の領域Y1がリブ4Aの長さの大部分を占めている。リブ4Aは、長さ方向に垂直な断面をみると、前記第1の領域Y1では、壁2から壁1に向けて延びる両側辺部4Aa,4Abと、やや狭くなった頂辺部4Ac(頂部)で構成され、全体として略台形状に窪んだ形態をなす。頂片部4Ac(頂部)が壁1の内側に溶着している。また、前記第2の領域Y2では、壁2から壁1に向けて延びる両側辺部4Aa,4Abと、中間頂片部4Ad、及び中間頂片部4Adの上に形成された板状部4Aeで構成され、全体として略台形状に窪んだ部分に板状部4Aeが乗った形態をなす。板状部4Aeの頂部がリブ3の頂部(板状部3eの頂部)に溶着している。
【0015】
リブ4Bは、その頂部が長さ方向の第1の領域Z1において壁1の内側に溶着し、長さ方向の第2の領域Z2において壁1の内側から少し距離を置き、その他の領域(長さ方向の第3の領域Z3)においてリブ3により分断されている。この例では、第1の領域Z1がリブ4Bの長さの略半分を占めている。リブ4Bは、長さ方向に垂直な断面をみると、前記第1の領域Z1では、壁2から壁1に向けて延びる両側辺部4Ba,4Bbと、やや狭くなった頂辺部4Bc(頂部)で構成され、全体として略台形状に窪んだ形態をなす。頂辺部4Bc(頂部)が壁1の内側に溶着している。前記第2の領域Z2では、壁2から壁1に向けて延びる両側辺部4Ba,4Bbと、中間頂片部4Bd、及び中間頂片部4Bdの上に形成された板状部4Beで構成され、全体として略台形状に窪んだ部分に板状部4Beが乗った形態をなす。板状部4Beの頂部は壁1の内側から少し距離を置いている。前記第3の領域Z3では、第2リブ4Bはリブ3により分断(リブが立ち上がっていない)された形となり、交差箇所では全体的にリブ3に密着している。
【0016】
第1ブロー成形体の壁1,2の間に第1リブ3及び第2リブ4A,4Bを形成するための一対の金型(コーナー部近傍)を図5に示す。一方の金型8のキャビティ面9には、キャビティ内に突出する複数列の板状の突起列11が、列の方向をピンチオフ部12の一辺12aに対し垂直方向に向けて形成されている。各突起列11には長さ方向に沿って等間隔に、溝11aが形成されている。各突起列11における溝11aの位置は、各突起列11を列の方向に垂直にみたとき、一列に揃っている。この突起列11はリブ3を形成するためのものである。
【0017】
他方の金型13のキャビティ面14には、キャビティ内に突出するそれぞれ複数列の板状の突起列15,16が、列の方向をピンチオフ部17の一辺17aに対し垂直方向に向けて交互に形成されている。突起列15には長さ方向に沿って等間隔に、溝15aが形成されている。突起列16は複数の板条突起16Aが長さ方向に等間隔に、列をなして形成されたもので、各板状突起16Aの中央部に溝16aが形成され、かつ各板状突起16A,16A間には所定の隙間16bがある。各突起列15,16を列の方向に垂直にみたとき、溝15a、溝16a及び隙間16bはそれぞれが一列に揃い、かつ溝15aと隙間16bは同じ列上に位置する。この突起列15,16はリブ4A,4Bを形成するためのものである。
金型8,13が閉じたとき、突起列11と突起列15,16は互いに垂直に交差し、突起列11が突起列15の溝15aと突起列16の隙間16bに嵌り込む。すなわち、突起列11の突起部11bが突起列16の隙間16bに、突起列11の溝11aが突起列15の溝15aに嵌り込む。
【0018】
金型8,13の突起列11,15,16とリブ3及びリブ4A、4Bの位置関係を図2〜4を参照して説明すると、次のようになる。金型8に形成された突起列11のうち、突起部11bによりリブ3の第1の領域X1が形成され、溝11a(突起部11bに挟まれた箇所)に対応してリブ3の第2の領域X2が形成される。金型13に形成された突起列15のうち、突起部15bによりリブ4Aの第1の領域Y1が形成され、溝15a(突起部15bに挟まれた箇所)に対応してリブ4Aの第2の領域Y2が形成される。金型13に形成された突起列16のうち、突起部16cによりリブ4Bの第1の領域Z1が形成され、溝16a(突起部16cに挟まれた箇所)に対応してリブ4Bの第2の領域Z2が形成され、隙間16b(突起部16cに挟まれた箇所)に対応して第2リブ4Bの第3の領域Z3(リブが立ち上がっていない箇所)が形成される。
【0019】
なお、リブ3の第2の領域X2、リブ4Aの第2の領域Y2、及びリブ4Bの第2の領域Z2では、それぞれ略台形状に窪んだ部分に板状部が乗った形態のリブが形成されている。この形態のリブ(特に板状部)は、特許文献1に記載されたリブ(同文献の番号で15)と同様のメカニズムで形成される。
例えばリブ4Bの板状部4Beは、突起列16の溝16a(突起部16cに挟まれた箇所)に形成されるが、この箇所では、パリソンは型締め時に両側の高い突起部16c間に張設された形になり、大部分が低い溝16aに密着し切れないまま折り返され、それがエア圧により圧着して図1,4に示すように少し垂れ下がったような板状部4Beが形成される。リブ3の板状部3eとリブ4Aの板状部4Aeも同様であるが、それぞれリブ3とリブ4Aの交差箇所に形成されるため、互いに押し合って垂れ下がりが大きくなっている。
【0020】
(第2ブロー成形体)
図6に示すブロー成形体(第2ブロー成形体)は、二重壁(互いに平行に配置された壁1及び壁2)の間に、複数個の互いに平行なリブ3と、平面視でリブ3に直角に交差する複数個の互いに平行なリブ4(4A,4B)を有する。リブ3は壁1から連続して壁2に向けて延びるリブであり、リブ4(4A,4B)は壁2から連続して壁1に向けて延びるリブである。なお、図6において、2点鎖線は同じく破断線である。
【0021】
第2ブロー成形体を第1ブロー成形体と比較すると、リブ3が板状のいわゆる隠しリブである点で異なる。このような隠しリブ自体は例えば特開平06−71738号公報に記載されたように周知のものである。リブ4A,4Bの形状は第1ブロー成形体のものと同じであり、リブ3との交差箇所も第1ブロー成形体のものと同じである。また、第1ブロー成形体と同様の領域において、リブ3の頂部が壁2の内側と溶着し、リブ4A,4Bの頂部が壁1の内側と溶着し、リブ3とリブ4Aの交差箇所では両者の頂部が二重壁(壁1,2)の厚さ方向の中間位置で互いに溶着し、リブ3とリブ4Bの交差箇所ではリブ3によりリブ4Bが分断された形になっている。
【0022】
第2ブロー成形体の壁1,2の間にリブ3(隠しリブ)及びリブ4A,4Bを形成するための一対の金型(コーナー部近傍)を図7に示す。
図7において、一方の金型8には、キャビティ内に突出可能な複数列のスライド板列11が、列の方向をピンチオフ部12の一辺12aに対し垂直方向に向けて設置されている。スライド板列11は複数のスライド板11Aが列の長さ方向に所定間隔を置いて設置されたものであり、突出したとき(図7(b)参照)他方の金型13のキャビティ面近傍に達し、後退したとき(図7(a)参照)、その先端が金型8のキャビティ面の一部を構成する。他方の金型13は、図5に示す金型13と基本的に同じ構造の突起列15,16を有する。
【0023】
金型8,13が閉じてスライド板列11が突出したとき、スライド板列11と突起列15,16は互いに垂直に交差し、スライド板列11の各スライド板11Aが突起列16の隙間16bに嵌り込む。隣接するスライド板11A,11A間の隙間11aが、突起列15の溝15aの位置にくる。この型締めにより、突起列15,16の先端と金型8のキャビティ面の間に挟まれたパリソンが互いに溶着し、かつスライド板列11の先端と金型13のキャビティ面の間に挟まれたパリソンが互いに溶着する。スライド板列11は、例えばキャビティ内へのエア吹き込み開始と同時又は開始前後の適宜のタイミングで後退させる。
【0024】
(第3ブロー成形体)
図8に示すブロー成形体(第3ブロー成形体)は、二重壁(互いに平行に配置された壁1及び壁2)の間に、複数個の互いに平行なリブ3と、平面視でリブ3に直角に交差する複数個の互いに平行なリブ4を有する。リブ3は壁1から連続して壁2に向けて延びるリブであり、リブ4は壁2から連続して壁1に向けて延びるリブである。なお、図8において、2点鎖線は同じく破断線である。
【0025】
第3ブロー成形体は、リブ3が隠しリブである点は第2ブロー成形体と同じであるが、リブ4が1種類でかつこれも板状の隠しリブである点で第2ブロー成形体と異なる。リブ3の頂部が壁2の内側と溶着し、リブ4の頂部が壁1の内側と溶着しているが、リブ3とリブ4の交差箇所では、リブ3によりリブ4Bが分断された形になっている。
【0026】
第3ブロー成形体の壁1,2の間に、共に隠しリブであるリブ3及びリブ4を形成するための一対の金型(コーナー部近傍)を図9に示す。
図9において、一方の金型8には、キャビティ内に突出可能な複数列のスライド板列11が、列の方向をピンチオフ部12の一辺12aに対し垂直方向に向けて設置されている。スライド板列11は複数のスライド板11Aが列の長さ方向に所定の小間隔を置いて設置されたものであるが、図9では、1つのスライド板列11につき1つのスライド板11Aのみが描かれている。スライド板列11は、突出したとき(図9(b)参照)他方の金型13のキャビティ面近傍に達し、後退したとき(図9(a)参照)、その先端が金型8のキャビティ面の一部を構成する。なお、スライド板列11を複数のスライド板11Aで構成したが、列の全長さにわたり1つのスライド板で構成することもできる。
【0027】
また、他方の金型13には、キャビティ内に突出可能な複数列のスライド板列16が、列の方向をピンチオフ部17の一辺17aに対し垂直方向に向けて設置されている。スライド板列16は複数のスライド板16Aが列の長さ方向に所定間隔を置いて設置されたものである。各スライド板列16における隙間16bの位置は、各スライド板列16を列の方向に垂直にみたとき、一列に揃っている。また、1つのスライド板16Aの長さはスライド板11Aに比べて短く設定されている。スライド板列16は、突出したとき(図9(d)参照)他方の金型8のキャビティ面近傍に達し、後退したとき(図9(c)参照)、その先端が金型13のキャビティ面の一部を構成する。
【0028】
金型8,13が閉じてスライド板列11,16が突出したとき、スライド板列11,16は互いに垂直に交差し、スライド板列11の各スライド板11Aがスライド板列16の各スライド板16Aの隙間16bに嵌り込む。この型締めにより、スライド板列11の先端と金型13のキャビティ面の間に挟まれたパリソンが互いに溶着し、かつスライド板列16の先端と金型8のキャビティ面の間に挟まれたパリソンが互いに溶着する。スライド板列11,16は、例えばキャビティ内へのエア吹き込み開始と同時又は開始前後の適宜のタイミングで後退させる。
【0029】
(第4ブロー成形体)
図10に示すブロー成形体(第4ブロー成形体)は、二重壁(互いに平行に配置された壁1及び壁2)の間に、複数個の互いに平行なリブ3と、平面視でリブ3に直角に交差する複数個の互いに平行なリブ4を有する。リブ3は壁1から連続して壁2に向けて延びるリブであり、リブ4は壁2から連続して壁1に向けて延びるリブである。なお、図10において、2点鎖線は同じく破断線である。
【0030】
第4ブロー成形体において、リブ3は、長さ方向に垂直な断面を見ると、壁1から壁2に向けて延びる両側辺部3a,3bと、やや狭くなった頂辺部3c(頂部)で構成され、略台形状に窪んだ形態をなし、リブ4は壁2から壁1に向けて延びる板状の隠しリブである。リブ3の頂辺部3c(頂部)が壁2の内側と溶着し、リブ4の頂部が壁1の内側と溶着しているが、リブ3とリブ4の交差箇所では、リブ4によりリブ3が分断された形になっている。
【0031】
第4ブロー成形体の壁1,2の間に第1リブ3及び第2リブ4を形成するための一対の金型(コーナー部近傍)を図11に示す。
図11において、一方の金型8には、キャビティ内に突出可能な複数列の突起列11が、列の方向をピンチオフ部12の一辺12aに対し垂直方向に向けて設置されている。突起列11は複数の突起11Aが列の長さ方向に所定間隔を置いて設置されたものである。各突起列11における隙間11aの位置は、各突起列11を列の方向に垂直にみたとき、一列に揃っている。
【0032】
また、他方の金型13には、キャビティ内に突出可能な複数列のスライド板列16が、
列の方向をピンチオフ部17の一辺17aに対し垂直方向に向けて設置されている。スライド板列16は複数のスライド板16Aが列の長さ方向に所定の小間隔を置いて設置されたものであるが、図11では、1つのスライド板列16につき1つのスライド板16Aのみが描かれている。スライド板列16は、突出したとき(図11(b)参照)他方の金型8のキャビティ面近傍に達し、後退したとき(図11(c)参照)、その先端が金型13のキャビティ面の一部を構成する。なお、スライド板列16を複数のスライド板16Aで構成したが、列の全長さにわたり1つのスライド板で構成することもできる。
【0033】
金型8,13が閉じてスライド板列16が突出したとき、突起列11とスライド板列16は互いに垂直に交差し、スライド板列16の各スライド板16Aが突起列11の各突起11A間の隙間11aに嵌り込む。この型締めにより、突起列11の先端と金型13のキャビティ面の間に挟まれたパリソンが互いに溶着し、かつスライド板列16の先端と金型8のキャビティ面の間に挟まれたパリソンが互いに溶着する。突起列11とスライド板列16は、例えばキャビティ内へのエア吹き込み開始と同時又は開始前後のタイミングで後退させる。
【0034】
(第5ブロー成形体)
図12に示すブロー成形体(第5ブロー成形体)は、二重壁(互いに平行に配置された壁1及び壁2)の間に、複数個の互いに平行なリブ3と、平面視でリブ3に直角に交差する複数個の互いに平行なリブ4を有する。リブ3は壁1から連続して壁2に向けて延びるリブであり、リブ4は壁2から連続して壁1に向けて延びるリブである。なお、図12において、2点鎖線は同じく破断線である。
【0035】
第5ブロー成形体において、リブ3は、長さ方向に垂直な断面をみると、壁1から壁2に向けて延びる両側辺部3a,3bと、やや狭くなった頂辺部3c(頂部)で構成され、略台形状に窪んだ形態をなし、リブ4も同様に、長さ方向に垂直な断面をみると、壁2から壁1に向けて延びる両側辺部4a,4bと、やや狭くなった頂辺部4c(頂部)で構成され、略台形状に窪んだ形態をなす。リブ3の頂辺部3c(頂部)が壁2の内側と溶着し、リブ4の頂部が壁1の内側と溶着しているが、リブ3とリブ4の交差箇所では、リブ3の頂辺部3c(頂部)とリブ4の頂辺部4c(頂部)3が、二重壁(壁1,2)の厚さ方向の中間位置で溶着している。
【0036】
第5ブロー成形体の壁1,2の間に第1リブ3及び第2リブ4を形成するための一対の金型(コーナー部近傍)を図13に示す。
図13において、一方の金型8には、キャビティ内に突出する複数列の突起列11が、列の方向をピンチオフ部12の一辺12aに対し垂直方向に向けて設置されている。突起列11には、長さ方向に沿って等間隔に溝11aが形成されている。各突起列11における隙間11aの位置は、各突起列11を列の方向に垂直にみたとき、一列に揃っている。
また、他方の金型13にも、突起列11と同様の突起列15が設置されている。
【0037】
金型8,13が閉じたとき、突起列11と突起列15は互いに垂直に交差し、突起列11の隙間11aと突起列15の隙間15aが互いに嵌り込む。この型締めにより、突起列11の先端と金型13のキャビティ面の間に挟まれたパリソンが互いに溶着し、突起列15の先端と金型8のキャビティ面の間に挟まれたパリソンが互いに溶着し、かつ突起列11,15の交差箇所において突起列11と突起列15の間に挟まれたパリソンが互いに溶着する。
【符号の説明】
【0038】
1,2 ブロー成形体の壁
3,4,4A,4B リブ
8,13 金型
11,15,16 突起列又はスライド板列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重壁のブロー成形体に、二重壁の一方の壁と他方の壁を連結するリブが形成され、前記リブは前記一方の壁から連続して前記他方の壁に向けて延びる第1リブと、前記他方の壁から連続して前記一方の壁に向けて延びる第2リブからなり、前記第1リブと第2リブは共に複数列存在して平面視で互いに交差し、前記第1リブは長さ方向に沿った一部又は全部の領域においてその頂部が前記他方の壁の内側に溶着し、前記第2リブは長さ方向に沿った一部の領域においてその頂部が前記一方の壁の内側に溶着していることを特徴とするブロー成形体。
【請求項2】
前記第1,第2リブはそれぞれの列が互いに平行であることを特徴とする請求項1に記載されたブロー成形体。
【請求項3】
前記第1,第2リブは、それぞれ両側面部と頂部で構成される断面略台形状をなすリブか、全体が互いに溶着して板状となった隠しリブか、断面略台形状をなす部分と頂部側が互いに溶着して板状となった部分からなるリブか、又はそれらの組み合わせからなることを特徴とする請求項1又は2に記載されたブロー成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−148490(P2012−148490A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9136(P2011−9136)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(390040958)みのる化成株式会社 (36)
【Fターム(参考)】