説明

プッシャー・バージ・システム、バージ・ユニットおよびタグ・ユニット

【課題】プッシャー・バージ・システムを有するLNG運搬システムを提供する。
【解決手段】積荷運搬設備を備えたバージ・ユニット2と、推進システム5を備えたタグ・ユニット4とを有するプッシャー・バージ・システムが提供される。順応性のある効果的なLNG運搬システムを可能にするために、バージ・ユニット2はLNG容器21と、少なくとも部分的にLNGのボイルオフ・ガスにより駆動される第1の動力手段3とを備えている。タグ・ユニット4は、推進システム5と、推進システムに動力を供給するための第2の動力手段6とを備えている。バージ・ユニット2とタグ・ユニット4が互いに接続された第1のモードでは、推進システム5は少なくとも部分的に第1の動力手段3から動力を供給される。このために、タグ・ユニット4上の第2の電力接続要素58に接続可能な第1の電力接続要素34を有するバージ・ユニット2を提供することが有利である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積荷運搬設備を備えたバージ・ユニットと推進システムを備えたタグ・ユニットとを有する請求項1の前段部分に記載のプッシャー・バージ・システムであって、バージ・ユニットが、タグ・ユニットの前端を受け入れるために船尾にリセスを有しているプッシャー・バージ・システムに関する。
【背景技術】
【0002】
タグ・ユニットがバージ・ユニットを押すそのようなプッシャー・バージ・システムは既に周知である。より一般的なプッシャー・バージ・システムは、牽引用のタグ・ユニットを有している。タグ・ユニットは通常、独立した推進システムを備えており、それによってバージ・ユニットは積荷の運搬のみに供される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、特定のタイプの積荷を運搬するための新しい概念を展開することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1に記載のプッシャー・バージ・システム、請求項10に記載のバージ・ユニット、および請求項12に記載のタグ・ユニットによって達成される。
【0005】
本発明の基本的な観念は、プッシャー・バージ・システムを有するLNG運搬システムであって、バージ・ユニットが、少なくとも1つのLNG容器(基本的にはタンク)と、少なくとも部分的にLNGのボイルオフ・ガスによって駆動される第1の動力手段(power generating means)とを備えているLNG運搬システムを提供することである。この第1の動力手段は、バージ・ユニットの荷降ろしに関連して、ガス蒸発および/またはガス供給に動力を供給することもできる。タグ・ユニットは、推進システムと、プッシャー・バージ・システムの第2のモードにおいてタグ・ユニットがバージなしで自由に動作するときに推進システムに動力を供給するための第2の動力手段とを備えている。バージを運搬するためにバージ・ユニットとタグ・ユニットが互いに接続されているプッシャー・バージ・システムの第1のモードにおいて、タグ・ユニットの推進システムは、少なくとも部分的に第1の動力手段から動力を供給されるようになっており、したがってボイルオフ・ガスによって生成されたエネルギーを利用している。
【0006】
この運搬システムは、いくつかの利点を有している。
【0007】
まず第1に、推進システムを有するタグ・ユニットは、港での積載および荷揚のための無駄時間が不要であるため、常に運転していることができる。設置された機関の動力を様々な動作モードで様々な目的のために用いることができ、したがって機関の利用率を高くすることが可能になる。タグ・ユニットは、例えばユーザのガス・ネットワークなどの適当な目的区域で荷揚するために、満載のバージ・ユニットを運搬し、そこから離れることが可能であり、また、例えばガス田などの供給ターミナルでガスを積載するために空のバージを運搬し、そこから離れることが可能である。運搬システムにおける独立したタグ・ユニットおよびバージ・ユニットの数は、主な必要性に応じて最適化することができる。
【0008】
第2に、これは、ボイルオフ・ガスから生成されるエネルギーを、タグ・ユニットによるバージ・ユニットの実際の運搬または推進のため、およびバージ・ユニット船上でのLNG処理のためのエネルギー源として利用することを可能にする。加えて、すべてのガス設置をバージ・ユニット上に残すことができる。
【0009】
最後に、本発明によるプッシャー・バージ・システムによってコスト低減が可能になる。バージ・ユニットをガス・ターミナルとして使用することが可能であり、そのため資本コストは、独立した地上ベースのガス・ターミナルのコストより低い。一般的なLNGタンカーと比べてもプッシャー・バージ・システムのコストは低い。これはさらに、運搬システムにおけるタグ・ユニットおよびバージ・ユニットの相対数に影響されることがあり、そのため乗組員や職員のコストさえも通常のLNGタンカーの場合より低く抑えることができる。また既に示したように、運搬システムの動作には無駄時間がない。こうした特徴も、全体として運搬システムの順応性を高めることを可能にしている。
【0010】
扱いやすい動力、すなわちバージ・ユニットからタグ・ユニットへ伝達される動力を提供するためには、第1の動力手段が、第1の燃焼機関と、この燃焼機関によって駆動される第1の発電機とを有していることが好ましい。この第1の発電機は、電力をバージ・ユニット上の第1の送電網に送るように構成される。LNG容器から天然ガスを取り出すために、バージ・ユニットはガス蒸発手段およびガス供給手段を備えており、そのうちガス蒸発手段またはガス供給手段のいずれか一方、或いはその両方に、第1の送電網によって動力を供給できることが有利である。タグ・ユニットに動力を伝達できるようにするために、バージ・ユニットは、第1の送電網に接続された第1の電力接続手段を有している。
【0011】
タグ・ユニットは、様々なタイプの推進システム、および第2の動力手段を備えていてもよい。
【0012】
推進システムは、機械による推進ユニットと電気による推進ユニットとを有していてもよい。機械推進ユニットは、第2の燃焼機関を有する第2の動力手段によって駆動することができる。電気推進ユニットは、バージ・ユニット上で生成された電力で駆動することが可能であり、そのためタグ・ユニットは、電気による推進ユニットに接続された第2の電力接続手段を有している。
【0013】
第2の動力手段はまた、タグ・ユニット上の第2の送電網を有していてもよく、それによって第2の電力接続手段が電気推進ユニットまたは第2の送電網に接続される。有利には、電気推進ユニットが第2の送電網に接続されてもよい。
【0014】
或いは、推進システムは機械と電気を組み合わせた推進ユニットを有していてもよく、それによって第2の動力手段は、第2の燃焼機関とこの推進ユニットに接続される電動機とを有している。この電動機はバージ・ユニット上で生成された電力で駆動することが可能であり、そのためタグ・ユニットは、電動機に接続された第2の電力接続手段を有している。
【0015】
第2の動力手段はまた、タグ・ユニット上の第2の送電網を有することが可能であり、そのため第2の電力接続手段を、電動機またはその第2の送電網に接続することができる。有利には、電動機を第2の送電網に接続してもよい。
【0016】
有利には、第3の燃焼機関および第3の発電機を有する第3の動力手段を、タグ・ユニット上にそのホテル負荷(hotel load)用に設けると有利である。タグ・ユニットが第2の電気網を備えている場合、第3の発電機がタグ・ユニット上の第2の送電網に電力を送るように構成されると有利である。このようにバージ装置での電力の調整および分配を、バージ・ユニットとタグ・ユニットが係合されたその第1のモード、ならびにタグ・ユニットが自由に動作するその第2のモードの両方で最適化することができる。
【0017】
さらに、推進システムは、電気による推進ユニットを有していてもよく、そのため第2の動力手段は第2の燃焼機関および第2の発電機を有し、この第2の発電機はタグ・ユニット上の第2の送電網に接続される。電気推進ユニットは、その第2の送電網に接続される。タグ・ユニットがバージ・ユニットを押しているとき、電気推進ユニットをバージ・ユニットで生成された電力で駆動することが可能であり、そのためタグ・ユニットは、タグ・ユニット上の第2の送電網に接続された第2の電力接続手段を有している。
【0018】
プッシャー・バージ・システムの有利な実施例を請求項2から請求項9までに明示する。
本発明はまた、請求項10に記載のバージ・ユニットに関する。このバージ・ユニットは、本発明の他の目的、すなわち順応性のあるLNG運搬システムにおいて、その設計に応じてシステム内で数量を変えることができる独立した構成要素を提供することを実現する。バージ・ユニット自体は、LNG運搬用としても、目的区域でのターミナルとしても使用することができる。バージ・ユニットは、タグ・ユニットとは無関係に積載作業および荷揚作業を行う。有利な実施例を請求項11に明示する。
【0019】
本発明はさらに、請求項12に記載のタグ・ユニットに関する。このタグ・ユニットは、本発明の他の目的、すなわち順応性のあるLNG運搬システムにおいて、その設計に応じてシステム内で数量を変えることができる独立した構成要素を提供することを実現する。タグ・ユニット自体は、バージ・ユニット運搬のために、また必要であれば単独で使用することができる。有利な実施例を請求項13から請求項19までに明示する。
【0020】
以下、添付の概略図を参照して、例示のみの目的で本発明をさらに詳しく記述する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】プッシャー・バージ・システムの第1の実施例を示す図である。
【図2】プッシャー・バージ・システムの第2の実施例を示す図である。
【図3】プッシャー・バージ・システムの第3の実施例を示す図である。
【図4】プッシャー・バージ・システムの第4の実施例を示す図である。
【図5】プッシャー・バージ・システムの第5の実施例を示す図である。
【図6】本発明によるバージ・ユニットおよびタグ・ユニットを備えたプッシャー・バージ・システムを使用した運搬システムの作業の実施例を示す図である。
【図7】本発明によるバージ・ユニットおよびタグ・ユニットを備えたプッシャー・バージ・システムを使用した運搬システムの作業の実施例を示す図である。
【図8】本発明によるバージ・ユニットおよびタグ・ユニットを備えたプッシャー・バージ・システムを使用した運搬システムの作業の実施例を示す図である。
【図9】本発明によるバージ・ユニットおよびタグ・ユニットを備えたプッシャー・バージ・システムを使用した運搬システムの作業の実施例を示す図である。
【図10】本発明によるバージ・ユニットおよびタグ・ユニットを備えたプッシャー・バージ・システムを使用した運搬システムの作業の実施例を示す図である。
【実施例】
【0022】
図1では、プッシャー・バージ・システムを参照番号1で示している。このプッシャー・バージ・システム1は、LNG容器21またはタンクの形態の積荷運搬設備、および第1の動力手段3を備えたバージ・ユニット2、ならびに推進システム5および第2の動力手段6を備えたタグ・ユニット4を有している。
【0023】
このプッシャー・バージ・システムにおいて、バージ・ユニット2はタグ・ユニット4の前端41を受け入れるために、船尾にリセス25を有している。例えば牽引用のタグ・ユニットを有するバージ装置の他の形も使用できることは明らかである。
【0024】
バージ・ユニット2上の第1の動力手段3は、第1の発電機32のそれぞれに連結された4つ1組の第1の燃焼機関31を有している。第1の発電機32は、電力を第1の送電網33へ送る。燃焼機関は、ガスによって駆動される機関、またはボイルオフ・ガス若しくはLNG容器21からの強制的なボイルオフ・ガスによって駆動される二元燃料機関であることが好ましい。バージ・ユニット2が荷揚のために目的区域にあるとき、ガス蒸発手段22および/またはガス供給手段23に動力を供給するために、第1の送電網33から電力が取り出される。図では、適当な電力接続を線で示してある。
【0025】
タグ・ユニット4上の第2の動力手段6は、2つ1組の第2の燃焼機関61、例えばディーゼル機関を有している。推進システム5は、第2の動力手段6に連結された機械による推進ユニット51、および電気による推進ユニット56、例えばプロペラ57を有する回転可能な推進ポッド(pod)を有している。機械による推進ユニット51は一般に、歯車53、軸54およびプロペラ55を有している。
【0026】
(図1に示すように)バージ・ユニット2とタグ・ユニット4が互いに接続または係合され、タグ・ユニット4がバージ・ユニット2を運搬または推進するプッシャー・バージ・システム1の第1のモードでは、タグ・ユニット4は電気による推進ユニット56によって推進されるように構成され、その場合、タグ・ユニット4はバージ・ユニット2上で生成された電力によって動力を供給される。これは実質的に、タグ・ユニット4がバージ・ユニット2に接続されているとき、例えばタグ・ユニット4上の第2の電力接続要素58に接続可能な第1の電力接続要素34をバージ・ユニット上に有することにより、電力がバージ・ユニット2上の送電網33からタグ・ユニット4上の電気による推進ユニット56へ取り出されることを意味している。これらの要素は、例えば図1に示すように、バージ・ユニット2の船尾のリセス25、およびタグ・ユニット4の前端41に配置することができる。図では、第1の電力接続要素34と、第1の送電網33と、第2の電力接続要素58と、電気による推進ユニット56との間の適当な電力接続を線で示している。
【0027】
タグ・ユニット4がバージ・ユニット2なしで自由に動作するプッシャー・バージ・システム1の第2のモードでは、タグ・ユニット4は第2の動力手段6で駆動される機械による推進ユニット51によって推進される。
【0028】
タグ・ユニット4はさらに、例えばタグ・ユニット4のホテル負荷のために、第3の燃焼機関71および第3の発電機72を有する第3の動力手段7により、それ自体で発電する能力をある程度備えることができる。
【0029】
図2は、基本的には図1に示した実施例に対応するプッシャー・バージ・システム1を示している。そのため対応する構成要素には同じ参照番号を用い、またそれらについてこの実施例に関連してさらに論じることはしない。
【0030】
この実施例では、タグ・ユニット4上の第2の動力手段6は、第2の送電網64をさらに有している。バージ・ユニット2で生成された電力をバージ・ユニット2上の第1の電力接続手段34を経由して第2の電力接続手段58へ伝達し、次いでそれを電気による推進ユニット56および/または第2の送電網64に接続することができる。電気による推進ユニット56を、第2の送電網64に接続しても好ましいであろう。
【0031】
この場合、第3の燃焼機関71、および第2の送電網64に接続された第3の発電機72を有する第3の動力手段7を有していても有利であろう。
【0032】
高い効率およびエネルギー経済性を達成するために、適当な制御システム、好ましくは自動装置により、例えば推進システムおよびホテル負荷に対して、送電網からの電力を調整して分配するだけでなく、バージ・ユニットおよびタグ・ユニット上の動力手段を平行して動作させるようにすることができる。
【0033】
例えばプッシャー・バージ・システム1が第1のモードで結合体として動作しているとき、動力をバージ・ユニット2で発生させ、タグ・ユニット4上の第2の送電網64へ伝達することができる。その場合、電気による推進ユニット56とホテル負荷の両方に動力を使用することが可能になり、それによって第2の動力手段6および第3の動力手段7は待機状態となることができる。もちろん、機械による推進ユニット51および電気による推進ユニット56を平行して使用することもできる。タグ・ユニット4が自由に動作しているとき、それは一般に機械による推進ユニット51によって推進される。しかし、望ましい場合には、第2の送電網64および第3の動力手段7によって電気による推進ユニット56を使用することもできる。
【0034】
図3は、図1のプッシャー・バージ・システムとほとんど同じ構成を有するプッシャー・バージ・システム1を示している。そのため対応する構成要素には同じ参照番号を用い、またそれらについてこの実施例に関連してさらに論じることはしない。主な違いは、タグ・ユニット4の機械装置にある。
【0035】
タグ・ユニット4の推進システム5は、一般に歯車53、軸54およびプロペラ55を有する、機械と電気を組み合わせた推進ユニット52を有している。この推進ユニット52は、歯車53に連結された2つの第2の燃焼機関61、例えばディーゼル機関、または同じ歯車53に連結された2つの電動機62から動力の供給を受けることができる。
【0036】
タグ・ユニット4がバージ・ユニット2なしで自由に動作するプッシャー・バージ・システム1の第2のモードでは、機械と電気を組み合わせた推進ユニット52は、第2の燃焼機関61から動力を供給される。
【0037】
プッシャー・バージ・システム1の第1のモードにおいて、機械と電気を組み合わせた推進ユニット52は、電動機62から動力の供給を受けることができる。その場合、電動機62は、第1の電力接続要素34、第2の電力接続要素58、および図3に線で示した適当な電力接続により、バージ・ユニット2上の第1の送電網33から供給される電力によって駆動される。この別法は、タグ・ユニット4がバージ・ユニット2を運搬するとき、すなわち図1に関連して記述したように、タグ・ユニット4がバージ・ユニット2に接続または係合されているプッシャー・バージ・システム1の第1のモードで用いられる。
【0038】
タグ・ユニット4はさらに、例えばタグ・ユニット4のホテル負荷のために、燃焼機関71および第3の発電機72を有する第3の動力手段7により、それ自体で発電する能力をある程度備えることができる。
【0039】
図4は、基本的に図3に示したプッシャー・バージ・システムに対応するプッシャー・バージ・システム1の他の実施例を示している。そのため対応する構成要素には同じ参照番号を用い、またそれらについてこの実施例に関連してさらに論じることはしない。
【0040】
この実施例では、タグ・ユニット4上の第2の動力手段6は、第2の送電網64をさらに有している。バージ・ユニット2で生成された電力をバージ・ユニット2上の第1の電力接続手段34を経由して第2の電力接続手段58へ伝達し、次いでそれを電動機62および/または第2の送電網64に接続することができる。電動機62はまた、第2の送電網64に接続されていることが好ましいであろう。
【0041】
この場合、第3の燃焼機関71、および第2の送電網64に接続される第3の発電機72を有する第3の動力手段7を有していても有利であろう。
【0042】
主として図2に関連して先に論じたのと同様に、高い効率およびエネルギー経済性を達成するために、適当な制御システム、好ましくは自動装置により、例えば推進システムおよびホテル負荷に対して、送電網からの電力を調整して分配するだけでなく、バージ・ユニットおよびタグ・ユニット上の動力手段を平行して動作させるようにすることができる。
【0043】
図1〜4の実施例では、第3の燃焼機関71ならびに第2の燃焼機関61を、ディーゼル機関、またはガスによって駆動される機関、またはボイルオフ・ガス若しくはバージ・ユニット2からの強制的なボイルオフ・ガスを用いた二元燃料機関とすることができる。後者2つの機関のタイプはもちろん、タグ・ユニット4にガスを供給するための装置が用意されなければならないことを意味している。
【0044】
図5もまた、図1〜4に関連して先に記述したものに対応するプッシャー・バージ・システム1を示している。そのため対応する構成要素には同じ参照番号を用い、またそれらについてこの実施例に関連してさらに論じることはしない。主な違いは、タグ・ユニット4の機械装置にある。
【0045】
推進システム5は、2つの電気による推進ユニット56、例えばプロペラ57を有する回転可能な推進ポッドを有している。
【0046】
タグ・ユニット4とバージ・ユニット2が接続または係合されているプッシャー・バージ・システム1の第1のモードでは、(図1に関連して先に論じたように)電気による推進ユニット56は、その動力をバージ・ユニット2上の第1の送電網33から受け取ることができる。第1の送電網33からの動力は、以下で論じるように、電気による推進ユニット56へ直接伝達することも、タグ・ユニット4上の第2の送電網64を経由して伝達することもできる。
【0047】
タグ・ユニット4が自由に動作するプッシャー・バージ・システムの第2のモードでは、電気による推進ユニット56はその動力を、タグ・ユニット4に内在する発電装置から受け取る。したがってタグ・ユニット4は、タグ・ユニット4上の第2の送電網64へ電力を送る第2の発電機63のそれぞれに連結された3つの第2の燃焼機関61を備えている。実際問題としてこれは、バージ装置1が第2のモードで動作しているとき、すなわちタグ・ユニット4が自由に動作しているとき、その推進システム5はそれ自体の第2の送電網64から動力を供給されることを意味している。
【0048】
図5では、適当な電力接続を線で示している。
【0049】
タグ・ユニット4のホテル負荷は、内在する電力設備によって賄われる。
【0050】
第2の燃焼機関61は、ディーゼル機関、ガスによって駆動される機関、またはボイルオフ・ガス若しくはバージ・ユニット2からの強制的なボイルオフ・ガスを用いた二元燃料機関とすることができる。後者2つの機関のタイプはもちろん、タグ・ユニット4にガスを供給するための装置が用意されなければならないことを意味している。
【0051】
高い効率およびエネルギー経済性を達成するために、適当な制御システム、好ましくは自動装置により、例えば推進システムおよびホテル負荷に対して、送電網からの電力を調整して分配するだけでなく、バージ・ユニットおよびタグ・ユニット上の動力手段を平行して動作させるようにすることができる。
【0052】
燃焼機関(例えば、蒸気タービンが推進ユニットまたは発電機を駆動するボイラーと蒸気タービンの組合せ、またはガス・タービン)、電動機、発電機、推進ユニット、LNGタンク、ガス蒸発手段およびガス供給手段の寸法、数量、ならびにタイプは、主な状況および必要性に応じて選択することができる。
【0053】
バージ・ユニット上の第1の動力手段の寸法設計は、生成される電力、ならびに実行可能なタグ・ユニットへのボイルオフ・ガスの供給を含めて、(以下で図6〜10に関連して論じるように)満載のバージ・ユニットがガス供給ターミナルから戻るとき、ボイルオフ・ガスを最大限に利用できるように実施されることが好ましい。第1の動力手段、推進システム、および第3の動力手段の寸法設計は、それに応じて行われなければならない。
【0054】
図6〜10には、本発明によるバージ・ユニット2(図1〜5)およびタグ・ユニット4(図1〜5)を備えたプッシャー・バージ・システムを使用した運搬システムの作業の実施例が示してある。この運搬システムは、第1のバージA、第2のバージB、第3のバージC、および第4のバージDの4つのバージ、ならびに第1のタグEおよび第2のタグFの2つのタグ・ユニットを使用している。バージはそれぞれ、4つのLNG容器21を備えている。他の点では、バージおよびタグは、図1〜5に関連して記述したように装備することができる。
【0055】
LNGは、LNG供給ユニット101から、(例えばガス田にある)ガス供給ターミナル100でバージに積載され、バージ上のLNG容器21への積載または充填作業は矢印Lで示してある。LNGは運搬され、天然ガス・パイプライン102を経由して(例えば目的区域にある)ローカルなガス・ネットワーク103へ供給される。天然ガス・パイプライン102への取出または供給作業は矢印Uで示してある。
【0056】
作業の第1段階にある図6では、第1のバージAが目的区域で天然ガスを、ローカルなガス・ネットワーク103で使用するために天然ガス・パイプライン102へ取り出している。第1の動力手段3(ボイルオフ・ガスによって駆動される第1の燃焼機関31、第1の発電機32、第1の送電網33)は、取出作業Uのために第1のバージA上のガス蒸発手段22および/またはガス供給手段23(図1〜5)に動力を供給する。どちらも第1の送電網から動力の供給を受けると有利であるが、他の動力源から動力の供給を受けることもできる。
【0057】
同時に満載のLNG容器21を有する第2のバージBは、第1のバージAが中身を空け始めたとき、ローカルなガス・ネットワーク103への天然ガスの供給を継続するために、ガス供給ターミナル100から目的区域へ戻りつつある。第2のバージBは第1のタグEに押され、このタグEは図1〜5に関連して先に記述したように、少なくとも一部は第2のバージB上の第1の動力手段3から動力を供給される、その推進システム5によって推進されている。次に第2のバージBがその取出作業Uを終了しつつあるときにそれと交替できるようにするために、第3のバージCはガス供給ターミナル100で既に積載作業Lを行っている。第4のバージDは、既にガス供給ターミナル100へ向けて目的区域の港を離れ、(第2のバージBおよび第1のタグEを有するバージ装置と同じ方法で)第2のタグFによって押されており、したがって第4のバージDは、前のバージ、すなわち第3のバージCがその積載作業Lを終え目的区域へ出発する準備をしているとき、LNG積載作業を開始することができるようになっている。
【0058】
第2段階にある図7では、第1段階によって予想される状況にある。第2のバージBは目的区域の港で既に波止場につけており、取出の準備が行われる。第1のバージAは天然ガスによって低速で走っており、第2のバージBと一緒に港に到着した第1のタグEによってガス供給ターミナル100へ走り出すように準備している。
【0059】
ガス供給ターミナル100でも、やはり対応する切り替えが行われている。第4のバージDは到着して波止場につけており、第3のバージCは満載され、第2のタグFが第4のバージDから開放され、運搬のために第3のバージCと係合できるとすぐに目的区域の港へ出発する状態にある。
【0060】
第3段階の図8は、目的区域で第1のタグEが、ここではほとんど空の第1のバージAと係合するために、第2のバージBからどのように離れるかを示している。ガス供給ターミナル100では第2のタグFが、第2のバージBがその取出作業Uを終了した後、天然ガス・ネットワーク103への天然ガスの供給を継続するために、充填されて目的区域へ向かう準備ができている第3のバージCと係合するため、積載の準備ができている第4のバージDを離れる同様の動きを行っている。
【0061】
バージ装置のこのモードでは、第1のタグEおよび第2のタグFは自由に動作し、そのためそれらの推進システム5(図1〜5)は、それぞれのタグ・ユニット4(図1〜5)上の第2の動力手段6によって、または第3の動力手段7の助けによって駆動される。
【0062】
第4段階の図9では、第1のタグEがほとんど空の第1のバージAに係合され、第2のタグFが満載された第3のバージCに係合されており、第5段階(図10)の作業を開始することが可能になっている。第1のタグEが第1のバージAに係合されているとき、第1のタグAはバージ・ユニット2(図1〜5)の船尾のリセス25に入り、それによってタグ・ユニット4の前端41にある第2の電力接続手段58が、バージ・ユニット2(図1〜5)の船尾のリセス25にある第1の電力接続手段34に接続する。同じことが第2のタグFおよび第3のバージCにもあてはまる。
【0063】
これは一般に、係合時のタグおよびバージにあてはまることである。
【0064】
図10に示した第5段階では、ほとんど空の第1のバージAは、第1のタグEによりガス供給ターミナル100に向かって押され、満載された第3のバージCは、第2のタグFによって港へ戻される。
【0065】
上述の実施例は、本発明のプッシャー・バージ・システム1によって可能となる運搬システムによる作業の順応性を、一実施例として示すものにすぎない。本発明によるバージ・ユニット2およびタグ・ユニット4自体の異なる構成を、本発明の基本的な考え方に従った運搬システムに使用できることは明らかである。運搬システムの要点はプッシャー・バージ・システム1である。しかし、こうしたバージ・ユニット2およびタグ・ユニット4自体にも、その独立した役割がある。これらを別々の運営者によって製造すること、および取り扱うことが可能であることも明らかである。
【0066】
これらに関連する図面および記述は、本発明の基本的な考え方を説明するためのものにすぎない。本発明は添付の特許請求の範囲の範囲内において、細かな点で変更することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 プッシャー・バージ・システム
2 バージ・ユニット
3 第1の動力手段
4 タグ・ユニット
5 推進システム
6 第2の動力手段
7 第3の動力手段
21 LNG容器
22 ガス蒸発手段
23 ガス供給手段
25 リセス
31 第1の燃焼機関
32 第1の発電機
33 第1の送電網
34 第1の電力接続要素
41 前端
51 機械による推進ユニット
52 機械と電気を組み合わせた推進ユニット
53 歯車
54 軸
55 プロペラ
56 電気による推進ユニット
57 プロペラ
58 第2の電力接続要素
61 第2の燃焼機関
62 電動機
63 第2の発電機
64 第2の送電網
71 第3の燃焼機関
72 第3の発電機
100 ガス供給ターミナル
101 LNG供給ユニット
102 天然ガス・パイプライン
103 ローカルなガス・ネットワーク
A 第1のバージ
B 第2のバージ
C 第3のバージ
D 第4のバージ
E 第1のタグ
F 第2のタグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LNG容器(21)を備えたバージ・ユニット(2)と、推進システム(5)および該推進システム(5)に動力を供給するための第2の動力手段(6)を備えたタグ・ユニット(4)とを有し、前記バージ・ユニット(2)が、前記タグ・ユニット(4)の前端(41)を受け入れるために船尾にリセス(25)を有しているプッシャー・バージ・システムであって、
前記バージ・ユニット(2)が、少なくとも部分的にLNGのボイルオフ・ガスによって駆動される第1の動力手段(3)を備え、該第1の動力手段が、第1の燃焼機関(31)と、該燃焼機関によって駆動され且つ第1の送電網(33)に接続された第1の発電機(32)とを有していること、
前記バージ・ユニット(2)と前記タグ・ユニット(4)とが前記リセス(25)および前記前端(41)によって互いに接続されたプッシャー・バージ・システム(1)の第1のモードにおいて、前記タグ・ユニット(4)の前記推進システム(5)が、少なくとも部分的に前記バージ・ユニット(2)の前記第1の動力手段(3)の前記第1の発電機(32)から動力を供給されるように構成されていること、および
前記プッシャー・バージ・システム(1)の前記第1のモードにおいて、前記バージ・ユニット(2)上の前記第1の送電網(33)に接続された第1の電力接続要素(34)が、前記タグ・ユニット(4)上の第2の電力接続要素(58)に接続されていること
を特徴とするプッシャー・バージ・システム。
【請求項2】
前記バージ・ユニット(2)が、ガス蒸発手段(22)およびガス供給手段(23)を備え、前記ガス蒸発手段(22)および/または前記ガス供給手段(23)が、前記第1の送電網(33)から動力を供給されることを特徴とする請求項1に記載のプッシャー・バージ・システム。
【請求項3】
前記タグ・ユニット(4)の前記第2の動力手段(6)が第2の燃焼機関(61)を有し、前記推進システム(5)が機械による推進ユニット(51)と電気による推進ユニット(56)とを有し、前記第2の電力接続要素(58)が前記電気による推進ユニット(56)に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のプッシャー・バージ・システム。
【請求項4】
前記タグ・ユニット(4)の前記第2の動力手段(6)が第2の送電網(64)をさらに有し、前記第2の電力接続要素(58)が、前記第2の送電網(64)および/または前記電気による推進ユニット(56)に接続されていることを特徴とする請求項5に記載のプッシャー・バージ・システム。
【請求項5】
前記タグ・ユニット(4)の前記第2の動力手段(6)が第2の燃焼機関(61)と電動機(62)とを有し、前記推進システム(5)が、機械と電気を組み合わせた推進ユニット(52)を有し、前記タグ・ユニット(4)が、前記電動機(62)に接続された第2の電力接続要素(58)を有していることを特徴とする請求項1に記載のプッシャー・バージ・システム。
【請求項6】
前記タグ・ユニット(4)の前記第2の動力手段(6)が第2の送電網(64)をさらに有し、前記第2の電力接続要素(58)が、前記第2の送電網(64)および/または前記電動機(62)に接続されていることを特徴とする請求項5に記載のプッシャー・バージ・システム。
【請求項7】
前記タグ・ユニット(4)が第3の動力手段(7)をさらに有し、該第3の動力手段(7)が、第3の燃焼機関(71)および第3の発電機(72)を有することを特徴とする請求項3または請求項5に記載のプッシャー・バージ・システム。
【請求項8】
前記タグ・ユニット(4)が第3の動力手段(7)をさらに有し、該第3の動力手段(7)が、第3の燃焼機関(71)および第3の発電機(72)を有し、該第3の発電機(72)は前記第2の送電網(64)に接続されていることを特徴とする請求項4または請求項6に記載のプッシャー・バージ・システム。
【請求項9】
前記タグ・ユニット(4)の前記第2の動力手段(6)が、第2の燃焼機関(61)と、該燃焼機関によって駆動される第2の発電機(63)と、第2の送電網(64)とを有し、前記第2の発電機(63)が前記第2の送電網(64)に接続されており、前記推進システム(5)が、電気による推進ユニット(56)を有し、前記タグ・ユニット(4)が、前記第2の送電網(64)および/または前記電気による推進ユニット(56)に接続された第2の電力接続要素(58)を有していることを特徴とする請求項1に記載のプッシャー・バージ・システム。
【請求項10】
推進システム(5)と第2の動力手段(6)とを備えたタグ・ユニット(4)をも有するプッシャー・バージ・システムで使用するための、LNG容器(21)を備えたバージ・ユニット(2)であって、前記タグ・ユニット(4)の前端(41)を受け入れるために船尾にリセス(25)を有しているバージ・ユニット(2)において、
前記バージ・ユニット(2)が、少なくとも部分的にLNGのボイルオフ・ガスによって駆動される第1の動力手段(3)を備え、該第1の動力手段が、第1の燃焼機関(31)と、該燃焼機関によって駆動される、第1の送電網(33)に接続された第1の発電機(32)とを有し、該第1の送電網(33)には、タグ・ユニット(4)上の第2の電力接続要素(58)に接続可能なバージ・ユニット(2)上の第1の電力接続要素(34)が接続され、それによって前記バージ・ユニット(2)の前記第1の動力手段(3)の前記第1の発電機(32)から前記タグ・ユニット(4)の前記推進システム(5)へ動力が提供されることを特徴とするバージ・ユニット。
【請求項11】
前記バージ・ユニット(2)が、ガス蒸発手段(22)およびガス供給手段(23)を備え、前記ガス蒸発手段(22)および/または前記ガス供給手段(23)が、前記第1の送電網(33)から動力を供給されることを特徴とする請求項10に記載のバージ・ユニット。
【請求項12】
推進システム(5)と、該推進システムに動力を供給するための第2の動力手段(6)とを備えたタグ・ユニット(4)であって、LNG容器(21)を備えたバージ・ユニット(2)をも有するプッシャー・バージ・システム(1)で使用されるよう意図されており、また前記タグ・ユニット(4)の前端(41)を受け入れるために船尾にリセス(25)を有しているタグ・ユニット(4)において、
前記タグ・ユニット(4)は、バージ・ユニット(2)上の第1の送電網(33)から動力を受け取るために、前記バージ・ユニット(2)上の第1の電力接続要素(34)に接続可能な第2の電力接続要素(58)を備え、前記動力は、前記バージ・ユニット(2)上のLNGのボイルオフ・ガスによって少なくとも部分的に駆動される第1の動力手段(3)の第1の発電機(32)によって生成されたものであることを特徴とするタグ・ユニット。
【請求項13】
前記推進システム(5)が、機械による推進ユニット(51)および電気による推進ユニット(56)を有し、前記第2の動力手段(6)が第2の燃焼機関(61)を有し、前記第2の電力接続要素(58)が、前記電気による推進ユニット(56)に接続されていることを特徴とする請求項12に記載のタグ・ユニット。
【請求項14】
前記第2の動力手段(6)が第2の送電網(64)をさらに有し、前記タグ・ユニット(4)上の前記第2の電力接続要素(58)が、前記第2の送電網(64)および/または前記電気による推進ユニット(56)に接続されていることを特徴とする請求項13に記載のタグ・ユニット。
【請求項15】
前記推進システム(5)が、機械と電気を組み合わせた推進ユニット(52)を有し、前記第2の動力手段(6)が第2の燃焼機関(61)および電動機(62)を有し、前記タグ・ユニット(4)上の前記第2の電力接続要素(58)が前記電動機(62)に接続されていることを特徴とする請求項12に記載のタグ・ユニット。
【請求項16】
前記第2の動力手段(6)が第2の送電網(64)をさらに有し、前記タグ・ユニット(4)上の前記第2の電力接続要素(58)が、前記第2の送電網(64)および/または前記電動機(62)に接続されていることを特徴とする請求項15に記載のタグ・ユニット。
【請求項17】
前記タグ・ユニット(4)が、第3の燃焼機関(71)と第3の発電機(72)とを有する第3の動力手段(7)をさらに有していることを特徴とする請求項13または請求項15に記載のタグ・ユニット。
【請求項18】
前記タグ・ユニット(4)が、第3の燃焼機関(71)と第3の発電機(71)とを備えた第3の動力手段(7)をさらに有し、前記第3の発電機(72)が前記第2の送電網(64)に接続されていることを特徴とする請求項14または請求項16に記載のタグ・ユニット。
【請求項19】
前記推進システム(5)が電気による推進システム(56)を有し、前記第2の動力手段(6)が、第2の燃焼機関(61)と第2の発電機(63)と第2の送電網(64)とを有し、前記第2の電力接続要素(58)が前記第2の送電網(64)に接続されていることを特徴とする請求項13に記載のタグ・ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−207478(P2011−207478A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108966(P2011−108966)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【分割の表示】特願2005−31187(P2005−31187)の分割
【原出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【出願人】(503129903)ワルトシラ フィンランド オサケユキチュア (73)