説明

プッシャー付き接点保持シート

【課題】樹脂突起付きの透明フィルムの使用をなくし、部品点数を減少させ、コストダウンを図るとともに、透明な樹脂突起に代えて不透明な着色樹脂を使用しすることによって光の反射強度を抑え、照度むらをなくする。
【解決手段】保持シート2の基板3側の接着面4にドーム状の可動接点5を基板3の固定接点6に対向させて取付けるとともに、保持シート2のキー操作部7側の面8で可動接点5の中心位置に半球状のプッシャー9を設け、プッシャー9の頂部を可動接点5のキー操作部7に対向させて、プッシャー付き接点保持シート1を構成している。プッシャー9は紫外線硬化タイプで柔軟な印刷用遮光性着色樹脂材料により構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として携帯電話機やその他の携帯用電子機器に組み込む小さなスイッチ用の接点保持シートに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機や携帯用電子機器組み込み用の小さなスイッチは、直径3〜4mm前後のドーム状の可動接点とこの可動接点に対向する固定接点とで構成されている。複数の可動接点は、保持シートに保持され、固定接点は、基板に組み込まれて、それぞれの可動接点に対向している。
【0003】
機器に対するスイッチの組み込み状態で、スイッチ操作は、キー操作部によって行われるが、キー操作部の変位は、通常、透明フィルムと一体の樹脂突起に伝えられ、樹脂突起を可動接点の中心部に押し当て、その可動接点を固定接点に電気的に接触させる。このために、透明フィルムは、スイッチ操作部と保持シートとの間に介在している。
【0004】
樹脂突起付きの透明フィルムの製作に当たって、金型に所定の配列で複数の穴を形成しておき、その中に樹脂を埋め込み、それらの上に透明フィルムを貼り、透明フィルムと樹脂突起とを所定の位置に接着させていた。
【0005】
上記の構成によると、保持シートとは別に樹脂突起付きの透明フィルムが必要となり、そのため部品点数が増えてコストアップにつながっている。また、樹脂が透明なものであると、透明な樹脂がキー操作部に対する照明用のLEDの光りを拡散して、キー操作部のキートップ面を強く発光させてしまうため、キートップ面に明るさのばらつき(照度むら)が出ていた。
【特許文献1】特開2001−028220号公報
【特許文献2】特開2007−073301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の解決課題は、樹脂突起付きの透明フィルムの使用をなくし、部品点数を減少させ、コストダウンを図るとともに、透明な樹脂突起に代えて不透明な着色樹脂を使用することによって、光の拡散を抑え、キートップ面での照度むらをなくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明は、保持シート(2)の基板(3)側の粘着面(4)にドーム状の可動接点(5)を基板(3)の固定接点(6)に対向させて取付けるとともに、保持シート(2)のキー操作部(7)側の面(8)で可動接点(5)の中心位置に半球状のプッシャー(9)を設け、このプッシャー(9)の頂部を可動接点(5)のキー操作部(7)に対向させることによって、プッシャー付き接点保持シート(1)を構成している。
【0008】
上記のプッシャー(9)は、紫外線硬化タイプで柔軟な印刷用遮光性着色樹脂材料によりにより構成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、保持シート(2)の一方の面に可動接点(5)が取付けられ、かつ保持シート(2)の他方の面(8)に半球状のプッシャー(9)が設けられているから、従来必要とされたプッシャーシートが不要となり、その分、部品数の削減が可能となり、全体的な構造も単純化できる。
【0010】
プッシャー(9)構成用の樹脂材料が紫外線硬化タイプで印刷技術を利用して形成できるため、印刷後の硬化が早く製作も容易である。保持シート(2)に対して形成後のプッシャー(9)は柔軟に変形可能な状態であり、キー操作部(7)はプッシャー(9)の頂部に対して多点もしくは平面で当たるから、キー操作部(7)による衝撃的な操作のときでも、保持シート(2)の寿命試験での耐久性がアップし、キー操作のときの適度なストロークおよび適切な操作性が確保できる。さらに、プッシャー(9)が柔軟な遮光性の着色樹脂材料により構成されているから、プッシャー(9)の部分で必要以上に乱反射が起きず、キー操作部(7)から見たとき、キー操作部(7)に対する照明用の光源(10)からの光むらが少なくり、夜間など暗い空間でのキー操作が違和感なくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1および図2は、本発明に係るプッシャー付き接点保持シート1を一例として携帯電話機のキー操作の部分に組み込むときの態様を示しており、図3は、プッシャー付き接点保持シート1を携帯電話機の基板3に取付けた状態を示している。
【0012】
図1ないし図3において、本発明に係るプッシャー付き接点保持シート1は、保持シート2によって構成されており、保持シート2は、基板3側の粘着面4に、複数のドーム状の可動接点5を基板3の一または二以上の固定接点6に対向させて保持するとともに、キー操作部7側の面8において、可動接点5の中心位置に半球状のプッシャー9を形成している。ここで、可動接点5とこれに対向する固定接点6とは、キー操作部7によってオンオフ操作可能なスイッチを構成している。
【0013】
保持シート2は、例えばPET粘着テープであり、複数の可動接点5は、テンキーや各種のファンクションキーに対応する位置で、PET粘着テープ基材のアクリル系粘着剤による粘着面4に取付けられている。各可動接点5は、ドーム状(皿状)でクリックアクション付きのものであり、凹面を基板3の固定接点6に対向する状態で、凸面により保持シート2の粘着面4に取付けられている。可動接点5の直径は、組み込み対象の機器の全体の大きさによっても変化するが、概ね2.5〜4.5mm程度である。固定接点6は、それぞれの可動接点5に対応位置で、基板3の面にプリント印刷などの技術により形成されている。なお、保持シート2には、基板3に対する位置規制のために例えば3つの位置決め孔11が設けられている。
【0014】
また、半球状のプッシャー9は、保持シート2の面8でそれぞれの可動接点5の中心位置毎に樹脂材料によって、可動接点5と同じ方向に凸の状態として構成されている。図1でプッシャー9は、斜線部分により表されている。プッシャー9の樹脂材料は、紫外線硬化タイプで、印刷用の遮光性着色材料により構成されている。このため、プッシャー9は、遮光性着色材料を保持シート2の面8に印刷技術を利用して形成される。印刷後に、樹脂材料は、紫外線の照射によって短時間のうちに硬化し、柔軟な半楕円体ないし半球体となる。樹脂材料が紫外線硬化タイプで印刷技術を利用して形成できるため、印刷後の樹脂材料の硬化が早く、プッシャー9の形成も1または2以上の保持シート2について1度にかつ容易にできる。なお、プッシャー9の高さは0.05〜0.3mm程度とし、その直径は1.5mm程度とする。
【0015】
上記のように、保持シート2の一方の側の接着面4に可動接点5が取付けられ、かつ保持シート2の他方の側の面8に半球状のプッシャー9が設けられているから、従来、必要とされたプッシャー保持用のプッシャーシートが不要となり、その分、部品数の削減が可能となるため、全体的な構造も単純化できる。
【0016】
それぞれのプッシャー9の頂部は、可動接点5のキー操作部7に直接に対向するか、またはライトガイド12を介してスイッチ操作部7に間接的に対向する。このライトガイド10は、導光性の透明フィルムであり、その透明フィルムの端面でLEDなどの光源10からの照明光を受け、透明フィルム内に案内し、透明フィルム外への拡散により、キー操作部7に均一に照射する。キー操作部7は、各可動接点5毎にケース13に支えられた独立のキートップ7aにより構成されているか、または図示しないが、引用文献2のように、すべての可動接点5に共通で一体の変形可能なキーパッド(キートップ)により構成されている。
【0017】
プッシャー付き接点保持シート1が例えば携帯電話機に組み込まれた状態で、携帯電話機の利用者が携帯電話機をキー操作可能なモードに設定してから、キー操作部7をドーム状の可動接点5の方向に押すと、キー操作部7は、その底面で、ライトガイド10を介してプッシャー9の頂部に間接的に接触するか、またはプッシャー9の頂部に直接に接触し、プッシャー9、これと一体の保持シート2およびドーム状の可動接点5を基板3の方向に変位させる。このとき、プッシャー9の頂部は、柔軟に変形し、キー操作部7に対して多点もしくは平面で当たるから、キー操作部7の強い衝撃を伴う操作のときでも、そのときの力が分散する。このため、保持シート2および可動接点5の耐久性が向上し、適度なストロークと操作性が長期間にわたって確保できる。
【0018】
可動接点5は、基板3の方向に変位する過程で、基板3の固定接点6に接し、それらの間を電気的にオンの状態とする。このオンの状態と前後して、ドーム状の可動接点5は、偏平に弾性変形して、湾曲方向を反転させ、いわゆるクリックアクションの動作をする。このため、利用者は、クリックアクションの動作によるストロークの急変からスイッチオンの状態を確認できる。利用者が押す方向の力を弱めると、可動接点5は、もとの形状に弾性復帰するため、固定接点6から離れて電気的にオフの状態となる。
【0019】
プッシャー9が柔軟な遮光性の着色樹脂材料により構成されているから、光源10からの照明光は、プッシャー9の部分で必要以上に拡散しない。このため、キー操作面から見たとき、キー操作面側で照明光のむらが少なくり、夜間など暗い空間でのキー操作が違和感なくできる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明に係るプッシャー付き接点保持シート1は、携帯電話機や携帯用電子機器に組み込むことを目的として製作されているが、その他の小型のキースイッチにも利用でき、そのときのキースイッチの構造に適合するような形態として製作される。また、既述のようにキー操作部7は、独立のキートップ7aに代えて、すべての可動接点5に共通な一体の変形可能なキーパッド(キートップ)により構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るプッシャー付き接点保持シート1の平面図である。
【図2】図1でのA−A矢印方向の断面図である。
【図3】本発明に係るプッシャー付き接点保持シート1を基板3に組み込んだ状態での要部の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 プッシャー付き接点保持シート
2 保持シート
3 基板
4 粘着面
5 可動接点
6 固定接点
7 キー操作部
7a キートップ
8 面
9 プッシャー
10 光源
11 位置決め孔
12 ライトガイド
13 ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持シート(2)の基板(3)側の粘着面(4)にドーム状の可動接点(5)を基板(3)の固定接点(6)に対向させて取付けるとともに、保持シート(2)のキー操作部(7)側の面(8)で可動接点(5)の中心位置に半球状のプッシャー(9)を設け、このプッシャー(9)の頂部を可動接点(5)のキー操作部(7)に対向させることを特徴とするプッシャー付き接点保持シート(1)。
【請求項2】
プッシャー(9)を紫外線硬化タイプで柔軟な印刷用遮光性着色樹脂材料により構成することを特徴とする請求項1記載のプッシャー付き接点保持シート(1)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−277610(P2009−277610A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130324(P2008−130324)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(391011696)不二電子工業株式会社 (23)
【Fターム(参考)】