説明

プッシュオンスイッチ

【課題】各種電子機器の入力操作部に用いられるプッシュオンスイッチに関し、外側固定接点の突出部をなくしても、可動接点と外側固定接点との間が安定した電気的接続状態となる構成の小型のプッシュオンスイッチを提供することを目的とする。
【解決手段】可動接点15の形状を、上面視円形の形状から、その両端部が所定の幅をもって平行な直線で切り欠かれた直線縁部15Aと、その直線縁部15Aと、切り欠かれずに残った円形縁部15Bとの交点部を円弧状に面取りした円弧状縁部15Cを設けた略小判形状にした。そして、その可動接点15をケース11の凹部底面内に搭載して、凹部底面に露出している全面が平坦に構成されている外側固定接点13との接触範囲が可動接点15の円形縁部15Bのみとなる構成のものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器の操作部に用いられるプッシュオンスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器は、電子機器の小型、軽量化並びに薄型化とあわせて、多機能化が留まることなく進んでおり、その操作部に用いられるプッシュオンスイッチについても、小型薄型化されたものへの強い要望がある。
【0003】
このような従来のプッシュオンスイッチについて、図7〜図9を用いて説明する。
【0004】
図7は従来のプッシュオンスイッチの断面図、図8は同分解斜視図、図9は同押圧操作状態での断面図であり、同図において、1は上方開口の凹部を有した上面視略矩形状に合成樹脂から形成されたケースで、凹部底面の中央に配された中央固定接点2と、凹部底面の外周側に配された外側固定接点3とを備えている。そして、中央固定接点2に接続されている端子2Aおよび、外側固定接点3に接続されている端子3Aはケース1外方にそれぞれ導出されている。
【0005】
このケース1は、中央固定接点2と外側固定接点3及び、それらに対応する端子2Aと端子3Aをインサート成形して構成されている。
【0006】
そして、中央固定接点2は、凹部底面の樹脂面4より上面視略円形の円錐台形状で僅かに上方に突出形成されている。一方、外側固定接点3は、ケース1の凹部底面の外周縁に沿った上面視略馬蹄形状で、中央固定接点2の中心を点対称としてなる位置に、上面視略矩形で僅かに上方に突出形成された一対の突出部3Bが形成されている。なお、凹部底面の樹脂面4と外側固定接点3の突出部3B以外の境界部分は、段差のない平坦面のものに形成されている。
【0007】
5は上方凸形のドーム状に形成され、下面に良導電性の表面処理がなされた弾性金属薄板からなる可動接点で、図7に示すように、その外縁下端が外側固定接点3の突出部3B上に載せられて上記ケース1の凹部内に搭載され、その中央部下面は中央固定接点2の上面と間隔を有して対向している。
【0008】
6は下面に粘着剤(図示せず)が設けられた絶縁性フィルムからなる保護シートで、上記ケース1の凹部上を覆うように、下面の粘着剤でケース1上に粘着固定されている。
【0009】
以上のように従来のプッシュオンスイッチは構成されており、次にその動作を説明する。
【0010】
保護シート6の上方から可動接点5のドーム状の中央部分に押圧力を加えていき、その押圧力が所定の力を超えると、図9に示すように、可動接点5のドーム状の中央部分がクリック感を伴って下方凸形に弾性反転し、その中央部下面が下方に位置する中央固定接点2に接触する。これにより、可動接点5を介して外側固定接点3と中央固定接点2が導通し、対応する端子2A,3A間が導通したスイッチオン状態となる。
【0011】
そして、押圧力を解除すると、可動接点5のドーム状の中央部分がクリック感を伴って元の上方凸形に弾性復帰し、可動接点5の中央部が中央固定接点2から離れて、対応する端子2A,3A間が絶縁され、スイッチオフ状態となるものであった。
【0012】
ここで、従来のプッシュオンスイッチでは、可動接点5の外縁下端を、外側固定接点3の突出部3B上に載せて支持した構成として、上述した操作時などにおいて、可動接点5の外縁下端の接触圧力を分散させることなく、突出部3B上の範囲で集中させ、これによって可動接点5と外側固定接点3との間の電気的接続安定性を確保するようにしているものであった。
【0013】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2003−297175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記従来のプッシュオンスイッチにおいては、可動接点5と外側固定接点3との間の電気的接続安定性を確保するために、外側固定接点3に突出部3Bを設けた構成としていた。これであれば、突出部3Bを形成するための加工が必要である上、その分、プッシュオンスイッチの高さが高くなってしまうという課題があった。
【0016】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、外側固定接点の突出部をなくしても、可動接点と外側固定接点との間が安定した電気的接続状態となる構成のプッシュオンスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために本発明は、上方開口の凹部を備えたケースと、上記凹部内の中央に配された中央固定接点と、上記凹部内の外側に配された外側固定接点と、上記凹部内に配されて、上記中央固定接点と上記外側固定接点との間を電気的に接離させる上方凸形に形成された可動接点と、を備えたプッシュオンスイッチであって、上記可動接点の外縁下端は、最下部となる最下方外縁部と、上記最下方外縁部に対して上方に位置する上方外縁部とから構成されており、その最下方外縁部が、上記外側固定接点上に載せられていると共に、上記外側固定接点の上面箇所が、全面で、平坦面に構成されているプッシュオンスイッチとしたものである。
【0018】
これであれば、可動接点の外側固定接点への接触範囲を最下方外縁部に限定することができ、それにより、接触圧力を当該接触範囲に集中させたものを実現することができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ケースの凹部内に配する可動接点として、支持される最下方外縁部位置に、配置状態での圧力が集中する形状の可動接点を用いたため、外側固定接点の載置箇所が突出部のない全面で平坦なものであっても、可動接点と外側固定接点との間が安定した電気的接続状態となるものを実現できる。また、外側固定接点の突出部がなくせる分、高さ方向の低背化なども可能になる構成としてなるプッシュオンスイッチを実現することができるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態によるプッシュオンスイッチの分解斜視図
【図2】同可動接点の正面図
【図3】同ケースの正面図
【図4】同円形縁部の中央位置での断面図
【図5】同直線縁部の中央位置での断面図
【図6】同押圧操作状態で円形縁部の中央位置での断面図
【図7】従来のプッシュオンスイッチの断面図
【図8】同分解斜視図
【図9】同押圧操作状態での断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図6を用いて説明する。
【0022】
(実施の形態)
図1は本発明の実施の形態によるプッシュオンスイッチの分解斜視図、図2は同可動接点の正面図、図3は同ケースの正面図、図4は同円形縁部の中央位置での断面図、図5は同直線縁部の中央位置での断面図、図6は同押圧操作状態で円形縁部の中央位置での断面図である。
【0023】
同図に示すように、当該構成のものも、従来同様に合成樹脂製のケース11には上方開口の凹部が設けられ、その凹部内に、可動接点15が収容状態に配されたものとなっている。
【0024】
この可動接点15は、上方凸形で、下面には良導電性の表面処理がなされた弾性金属薄板から形成されていることは従来と同じであるが、その外形形状が異なっている。つまり、その外形形状は、図2などに示すように、上面視円形の形状のものから、その両端部が平行な直線で切り欠かれて中心線に対称な直線縁部15Aを有するものに形成されていると共に、その直線縁部15Aと、切り欠かれずに残った円形縁部15Bとの交点部を円弧状に面取りした円弧状縁部15Cが形成された、所謂略小判形状に形成されたものとなっている。
【0025】
そして、上記ケース11の凹部の上面視形状も、この可動接点15に応じた略相似形状に形成されている。すなわち、凹部は上面視略小判形状で、所定の幅で平行関係に位置する一対の直線状の直線側面部と、その直線側面部の対向する端部位置どうしを円弧状に各々繋いだ円弧側面部とによって形成されている。そして、これに応じてケース11は直方体状で細幅の外形となっている。
【0026】
さらに、その凹部底面には、中央固定接点12と外側固定接点13が、それぞれ固定されており、中央固定接点12に接続されている端子12A、および外側固定接点13に接続されている端子13Aは、ケース11の側面部から外方に向かってそれぞれ導出されている。なお、このケース11も、中央固定接点12と外側固定接点13などをインサート成形して形成されていることは従来のものと同様である。
【0027】
中央固定接点12は、凹部の中央位置に固定されており、凹部底面の樹脂面14より僅かに上方に突出する上面視略円形の円錐台形状に構成されている。
【0028】
外側固定接点13は、図3などから判るように、その上面視形状は略馬蹄形状で、凹部の直線側面部の一方に、馬蹄形状の開口側が対応して位置するように凹部底面に露出状態で固定されている。その露出している部分は、凹部底面の樹脂面14と段差なく同一高さとなるように設定されている。つまり、ケース11の凹部底面より露出している外側固定接点13の上面部分は全面に亘って平坦であると共に、樹脂面14とも段差が無く平坦に構成されたものとなっている。
【0029】
そして、この凹部内に可動接点15が配され、中央部下面が中央固定接点12の上面と間隔を有して対向している。
【0030】
ここで、可動接点15は、上述説明や図2などからも判るように、上面視円形状のものから略小判形状のものに形成されているため、直線縁部15Aと円弧状縁部15Cの端部は、上記円形状の外形位置よりも内側で、それらの下端高さ位置は円形縁部15Bの下端よりも上方に位置している。つまり、直線縁部15Aと円弧状縁部15Cが請求項1の上方外縁部に、円形縁部15Bが請求項1の最下方外縁部に相当する。
【0031】
このため、凹部内に配された可動接点15は、図4及び図5に示すように、可動接点15の円形縁部15Bのみが、外側固定接点13上面に当接した支持状態になり、直線縁部15Aと円弧状縁部15Cは凹部底面から僅かに間隔を空けた状態で配置されている。
【0032】
16は下面に粘着剤(図示しない)が設けられた絶縁フィルムからなる保護シートで、ケース11の凹部上面を覆うように、下面の粘着剤でケース11上に粘着固定されている。
【0033】
以上のように本実施の形態のプッシュオンスイッチは構成されており、次にその動作を説明する。
【0034】
保護シート16の上方から可動接点15のドーム状の頂点部に加えた押圧力が所定の力を超えると、図6に示すように、可動接点15はクリック感を伴ってドーム状中央部が下方凸形に弾性反転して、中央部に設けられた中央固定接点12と接触する。これにより外側固定接点13と中央固定接点12が導通して、それぞれに対応する端子12A,13A間がスイッチオン状態となる。そして、押圧力を解除すると、可動接点15がクリック感を伴って元の上方凸形に弾性復帰して、スイッチオフ状態となる。
【0035】
ここで、この可動接点15としては、上記の押圧による弾性反転から解除による弾性復帰までの全ての動作中で、常に円形縁部15Bの下端のみが凹部底面の外側固定接点13と接触し、直線縁部15Aと円弧状縁部15Cは凹部底面から僅かに間隔を空くものを用いている。つまり、当該構成品では、可動接点15と外側固定接点13との接触範囲が円形縁部15Bの下端のみとなる設定のものとなっており、このために、外側固定接点13との接触圧力を当該範囲に集中させることができて、従来の突出部3Bを設けることなく、可動接点15と外側固定接点13との間の電気的接触安定性を確保したものとしている。なお、外側固定接点13は、可動接点15の円形縁部15Bの下端が載せられている上面箇所が、少なくとも、全面で、平坦面に構成されていればよい。
【0036】
また、円弧状縁部15Cを形成している円弧の寸法を大きく設定すれば、可動接点15の幅寸法を変更することなく、円形縁部15Bの長さ寸法が小さく設定でき、接触圧力をより集中させるようにできる。
【0037】
以上のように、本実施の形態によれば、可動接点15の形状を上述した略小判形状のものとすることで、外側固定接点13が突出部を有しない全面で平坦なものであっても、可動接点15と外側固定接点13との接触圧力が円形縁部15Bに集中するため、可動接点15と外側固定接点13との間が安定した電気的接続状態となる構成のプッシュオンスイッチとして実現することができ、外側固定接点13に突出部3Bを設ける加工工数などを削減でき、少ない加工工数で構成することができる。
【0038】
また、突出部3Bをなくした分、高さ方向に低背化が可能になると共に、可動接点15の外形は略小判形状であるために、一方側の幅方向の細幅化も図ることができ、細幅で小型化されたプッシュオンスイッチを実現することができる。
【0039】
なお、本実施の形態では、搭載される配線基板面に対して垂直方向に押圧されて使用される、所謂縦押し操作型のものについて説明したが、本発明の思想は、搭載される配線基板面に対して水平方向に押圧されて使用される横押し操作型のものなどにも適用することができる。
【0040】
また、可動接点15も、上記に説明した形状のもののみに限定されることはない。例えば、可動接点は、一般的に、生産時に繋ぎ桟で連結した状態で形成され、その後、繋ぎ桟から切り離されて単体品に完成させるが、各円形縁部15Bの中央位置が繋ぎ桟で繋がれたものとされ、その繋ぎ桟を円形縁部15Bよりも内側位置で切り離したものでもよい。これであれば、繋ぎ桟切断箇所も、上述した上方外縁部として構成できるため、最下方外縁部である円形縁部の範囲をより小さい範囲のものにすることができ、接触圧力をより集中させることができる。
【0041】
さらに言うと、本発明の思想は、接触圧力を集中させることができる形状の可動接点を用いて接触圧力を集中させ、外側固定接点13を平坦面で形成したものとするものであるため、用いる可動接点として、短冊状に形成された外形の可動接点などであってもよい。
【0042】
なお、当該実施の形態のように、上面視馬蹄形状に形成された外側固定接点13の開口側を、ケース11凹部の直線側面部の一方に対応するように位置させたものとすれば、可動接点15の円形縁部15Bが外側固定接点13のみに当接させたもの、つまり接触圧力を電気的に接触する箇所のみに集中させたものにでき好ましいが、これに限定されることは無い。例えば、外側固定接点の開口側をケース11凹部の円弧側面部の一方に対応するように位置させたものなどとしてもよい。さらには、その上面視形状においても、上述した可動接点を搭載したときに、最下方外縁部と当接する位置範囲のみに外側固定接点が露出して配された構成などとしてもよい。
【0043】
そして、スイッチ構成としても、可動接点15の中央位置を押圧するための突起部材を備えさせたものなどとされていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によるプッシュオンスイッチは、外側固定接点の突出部をなくしても、可動接点と外側固定接点との間が安定した電気的接続状態となることに加えて、小型化対応も可能となる構成のものにでき、主に各種電子機器の操作部用等に有用である。
【符号の説明】
【0045】
11 ケース
12 中央固定接点
12A、13A 端子
13 外側固定接点
14 樹脂面
15 可動接点
15A 直線縁部
15B 円形縁部
15C 円弧状縁部
16 保護シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方開口の凹部を備えたケースと、上記凹部内の中央に配された中央固定接点と、上記凹部内の外側に配された外側固定接点と、上記凹部内に配されて、上記中央固定接点と上記外側固定接点との間を電気的に接離させる上方凸形に形成された可動接点と、を備えたプッシュオンスイッチであって、上記可動接点の外縁下端は、最下部となる最下方外縁部と、上記最下方外縁部に対して上方に位置する上方外縁部とから構成されており、その最下方外縁部が、上記外側固定接点上に載せられていると共に、上記外側固定接点の上面箇所が、全面で、平坦面に構成されているプッシュオンスイッチ。
【請求項2】
上記可動接点は、上面視形状で、上面視円形の形状から、その両端部が所定の幅をもって平行な直線で切り欠かれて形成されると共に、上記切り欠かれた直線状の縁部と円形の縁部との交点部が円弧状に面取りされた略小判形状に形成されたものが用いられて、その残っている円形の縁部が、上記最下方外縁部としてなる、請求項1記載のプッシュオンスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−62208(P2013−62208A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201439(P2011−201439)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】