説明

プッシュスイッチ

【課題】各種電子機器の入力操作部に用いられるプッシュスイッチに関し、簡素な管理で製造できる操作用の突起部付きのものを提供する。
【解決手段】ケース1の上方開口凹部内に可動接点5が収容状態で配され、その凹部を覆うように保護シート20がケース1に装着されたプッシュスイッチにおいて、可動接点5の中央部に応じた保護シート20の下面位置に突起用部材25を溶着で固定させると共に、その突起用部材25を可動接点5上に載せた構成とすることによって、保護シート20の中央部分が突起用部材25の径で高い位置に持ち上げられて略円錐台形状となった突起部30を有するものに構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器の入力操作部に用いられるプッシュスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器に搭載されるプッシュスイッチにおいては、操作箇所に突起部付きのものが多く用いられるようになってきた。
【0003】
このような従来のプッシュスイッチについて、図5および図6を用いて説明する。図5は従来のプッシュスイッチの断面図、図6は同外観斜視図である。
【0004】
同図において、1は上面開口の凹部を有した成形樹脂製のケースで、その凹部の内底面には中央接点2と外側接点4が露出状態で固定されている。中央接点2はケース1から導出された第一端子2Aに繋がり、外側接点4はケース1から導出された第二端子4Aに繋がっている。
【0005】
ケース1の凹部内には、円形ドーム状で中央部が上方に突出した金属薄板製の可動接点5が収容状態で配されている。
【0006】
そして、7は、下面全面に粘着剤8を有する絶縁フィルム製の保護シートであり、ケース1の上端に上記粘着剤8によって貼り付け装着されてケース1の凹部を覆っている。
【0007】
10は、可動接点5の中央位置に対応する箇所に設けられた操作用の突起部であり、この突起部10は、略円柱状に加工形成された収容部材11が保護シート7の下面側から押し込まれて、その保護シート7の箇所が上方凸状に塑性変形されて形成されている。収容部材11の上面部分と周囲部分は粘着剤8により粘着固定されている。
【0008】
以上のように従来のプッシュスイッチは構成されている。
【0009】
次に動作について説明する。機器側の操作ボタン(図示せず)を押し下げ操作すると、操作ボタン下面で突起部10が押し下げられて、突起部10を介してその力が可動接点5に加わり、その力が所定の大きさを超えると可動接点5の中央部が節度感をもって反転し可動接点5の中央部下面が中央接点2に接触する。これによって、可動接点5を介して中央接点2と外側接点4との間が電気的に接続され、端子2Aと4Aとの間が導通する。そして、その操作力を除くと、可動接点5が自らの復元力で元の形状に自己復帰して端子2Aと4Aとの間が電気的に独立した操作前の状態に戻るものであった。
【0010】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−135151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来のプッシュスイッチは、突起部10への押し下げ操作で、可動接点5の中央位置が常に押圧される構成だったため、良好な操作感触が得られるものであったが、突起部10においては、その中の収容部材11を粘着剤8により粘着させていたため、繰り返しての押圧操作時等に、その粘着力が弱まってしまうことも推測され、収容部材11の外形に合う突起部10形状に保護シート7を確実に塑性変形させておき、その管理をしなければならなかった。
【0013】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、簡素な管理で製造できる操作用の突起部付きのプッシュスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0015】
本発明の請求項1に記載の発明は、凹部を備えた成形樹脂製のケースと、凹部内に露出して固定された第一固定接点および第二固定接点と、凹部内に配され、操作時に上記固定接点どうしを導通させる可動接点と、凹部を覆うように上記ケースに装着された保護シートとを備えたプッシュスイッチであって、上記可動接点の中央部に応じた上記保護シートの上面または下面位置に突起用部材が溶着で固定され、その箇所が操作用の突起部として形成されていることを特徴とするプッシュスイッチとしたものである。突起用部材の保護シートへの固定を溶着固定で行うと、従来のものよりも保護シートに突起用部材が強固に固定されるようになる。このために、従来品のように保護シートの下面に突起用部材を位置させる場合にも突起部の外形形状に合わせて保護シートを塑性変形させる必要がなく、これによって突起部に纏わる管理などを簡素化することができるという作用を有する。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、保護シートの下面位置に溶着された突起用部材の下面が可動接点の上に載せられて操作用の突起部が形成されているものであり、請求項1の発明による作用と同様の作用を有する。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1記載の発明において、保護シートの上面位置に溶着された突起用部材が剥き出し状態とされて操作用の突起部として形成されているものであり、突起用部材が保護シートの上面側に剥き出し状態で位置された当該構成であっても、突起用部材が保護シートに溶着されて強固に固定されているため、突起用部材が保護シートから不用意に剥がれることを防止でき、さらに当該構成では従来品のように突起部形状に保護シートを塑性変形させる工程や管理などを無くすことができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明によれば、簡素な管理で製造できる操作用の突起部付きのプッシュスイッチを実現できるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるプッシュスイッチの断面図
【図2】同外観斜視図
【図3】本発明の第2の実施の形態によるプッシュスイッチの断面図
【図4】同外観斜視図
【図5】従来のプッシュスイッチの断面図
【図6】同外観斜視図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図4を用いて説明する。なお、従来と同一構成部分には、同一符号を付して詳細説明は省略する。
【0021】
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態によるプッシュスイッチの断面図、図2は同外観斜視図である。
【0022】
同図に示すように、略矩形状に形成された成形樹脂製のケース1は、上面開口の凹部を備え、その凹部の内底面には中央接点2と外側接点4が露出状態でインサート成形により固定されている。中央接点2はケース1から導出された第一端子2Aに繋がり、外側接点4はケース1から導出された第二端子4Aに繋がっている。可動接点5は、外周下端が外側接点4上に載せられて凹部内に収容状態で配されている。可動接点5の中央部下面は中央接点2に所定間隔を保って対峙している。なお、この中央接点2と外側接点4とが、請求項の第一固定接点、第二固定接点に相当する。
【0023】
ケース1の上端には、絶縁フィルム製の保護シート20が装着され、凹部上は保護シート20で覆われている。保護シート20の下面には、可動接点5の中央位置に対応させて、樹脂製で略円柱状に加工形成された操作用の突起用部材25が溶着により固定されている。その溶着方法としては、レーザ溶着や超音波溶着を用いればよい。言い換えれば、その溶着方法としては、保護シート20と突起用部材25との間の界面部分が共に溶融状態となって、互いに混じって溶着される方法を用いればよく、保護シート20や突起用部材25の材質・色などは、各溶着方法で適したものを適宜選択して採用すればよい。
【0024】
例えば、レーザ溶着の場合には、一方の部材を透明または半透明なものとして、他方の部材を黒色などの暗色のものとして、一方の部材側からレーザを照射して、両者の当接箇所となった他方の部材の表面部分がレーザ照射に応じて溶融し、それと同時に両者の当接箇所となった一方の部材の表面部分も溶融して両者間の界面部分が互いに混じって溶着される材質どうしなどを選択して使用すればよい。その事例としては、保護シート20が黒色や暗色の樹脂製シートであれば、突起用部材25は、透明な樹脂製のものとして、この場合には突起用部材25の下面側からレーザ照射を行えばよい。保護シート20が透明や半透明の樹脂製シートであれば、突起用部材25は、黒色や暗色の樹脂製のものとして、この場合には保護シート20の上面側からレーザ照射を行えばよい。
【0025】
保護シート20下面に溶着された突起用部材25は、可動接点5の上面上に載せられている。このため、保護シート20の中央部分は突起用部材25の径で高い位置に持ち上げられた形状となっている。つまり、保護シート20は、持ち上げられた部分が突起用部材25の径に応じた上底となって、そこから下底側が大きい径の略円錐台形状になって周囲箇所に至り、その周囲箇所がケース1の上端に装着されたものとなっている。ここに、上記円錐台の傾斜面は若干下方に弛んでいてもよく、この円錐台部分が突起部30として形成されている。
【0026】
なお、保護シート20のケース1への装着方法は特に限定はされないが、当該構成のものでは、保護シート20下面の周囲箇所のみに粘着層23を形成し、その粘着層23で固定させる構成にしている。
【0027】
以上のように略円錐台形状に形成された突起部30であれば、突起部30への押圧操作時に、保護シート20が不用意に突っ張ったりして余分な反力が発生することも少ない。また、保護シート20の下面に突起用部材25を溶着で固定しているため、その固定状態は強固なものにでき、従来品で必要であった突起部形状への保護シート20の塑性変形加工の必要はなく、それに纏わる工数や管理などを簡素化することができる。そして、操作状態では、突起用部材25のそのものの径で直接可動接点5を押し込む構成にできるため、良好な操作感触が得られるものに実現できる。
【0028】
このように、保護シート20下面に突起用部材25上面を溶着している当該構成であれば、その溶着箇所が強固な固定状態であるため、保護シート20を塑性変形させることなく保護シート20を円錐台形状に配したものとして、その上底部分を操作用の突起部30としてなるものに構成できる。
【0029】
なお、当該実施の形態によるプッシュスイッチの動作は、従来と同様であるため詳細説明は省略するが、上述したように、その動作時においては突起用部材25そのもので可動接点5の中央部に押し下げ力を加えて可動接点5を作動させるものにできるため、可動接点5上面を押し下げる突起用部材25下面の径を、搭載された可動接点5に適した所定の大きさのものとしておくのみで、良好な操作感触が得られるものとして容易に実現できる。
【0030】
なお、保護シート20を略円錐台形状に配したものとする以外に、突起用部材25の側面も保護シート20に溶着させて従来品と同様形状のものとしたり、または、その側面箇所を接着や粘着固定などして、突起用部材25の外形に保護シート20を沿わせた突起部構成のものとしてもよい。
【0031】
(実施の形態2)
図3は本発明の第2の実施の形態によるプッシュスイッチの断面図、図4は同外観斜視図である。
【0032】
当該実施の形態2によるものは、実施の形態1のものに対して樹脂製で略円柱状に加工形成された突起用部材45の配置位置が異なっている構成のものである。以下に、図3および図4を用いてその相違部分を主に説明する。
【0033】
図3や図4に示したように、可動接点5を収容したケース1の上端には、保護シート40が装着されてケース1の凹部を覆っている。ここに、保護シート40に溶着された突起用部材45は、保護シート40の上面側に溶着されており、突起用部材45は剥き出し状態になっている。突起用部材45の配設位置は、可動接点5の中央位置に上下方向で合わせて設けられている。つまり、この突起用部材45そのものが、突起部50として構成されている。
【0034】
なお、保護シート40への突起用部材45の溶着方法や、保護シート40や突起用部材45の材質などの選択方法は、実施の形態1によるものと同じであるため、説明は省略する。そして、保護シート40のケース1上端への装着方法も、特に限定はされないが、当該構成のものでは従来品同様に保護シート40の下面全面に形成された粘着層43で貼り付け装着されたものとしている。
【0035】
当該構成のプッシュスイッチの動作は、剥き出し状態になっている突起用部材45の上面つまり突起部50の上面が押し下げられると、保護シート40を介して可動接点5の中央部にその押し下げ力が加わっていき、その力が所定の力を超えると可動接点5の中央部が実施の形態1によるものと同様に節度感をもって反転して中央接点2と外側接点4との間を導通させ、押し下げ力を解除すると反転した可動接点5が元の上方凸形状に自己復元し、また保護シート40の復帰力も加わって元のスイッチオフ状態に戻る。
【0036】
以上のように、当該構成では、突起部50としてなる突起用部材45が保護シート40の上面に溶着で固定されて剥き出し状態になっているが、その固定状態は強固なものであって、突起用部材45の上面への押し下げ操作を長期に亘って繰り返し行ったとしても突起用部材45が保護シート40の上面から不用意に剥がれたりすることも防止できる。
【0037】
そして、当該構成では、従来品で必要であった突起部形状への保護シート40の塑性変形の加工形成は全く必要が無くなるため、それに纏わる工数や管理などを無くすことができる。また、突起用部材45の下面と保護シート40の上面とを溶着固定している当該品であれば、よく用いられる接着剤での固定手法に対し接着剤の塗布工程や塗布量の管理なども不要となるため、当該構成の突起部付きのプッシュスイッチは工数など少なく製造することができる。
【0038】
以上には、二つの実施の形態を用いて本発明によるものの説明をしたが、いずれのものにおいてもスイッチ接点部などは上述説明した構成のものに限定されることはない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によるプッシュスイッチは、簡素な管理で製造できる操作用の突起部付きのものに実現でき、主に各種電子機器の入力操作部等に有用である。
【符号の説明】
【0040】
1 ケース
2 中央接点
2A 第一端子
4 外側接点
4A 第二端子
5 可動接点
20、40 保護シート
23、43 粘着層
25、45 突起用部材
30、50 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を備えた成形樹脂製のケースと、凹部内に露出して固定された第一固定接点および第二固定接点と、凹部内に配され、操作時に上記固定接点どうしを導通させる可動接点と、凹部を覆うように上記ケースに装着された保護シートとを備えたプッシュスイッチであって、上記可動接点の中央部に応じた上記保護シートの上面または下面位置に突起用部材が溶着で固定され、その箇所が操作用の突起部として形成されていることを特徴とするプッシュスイッチ。
【請求項2】
保護シートの下面位置に溶着された突起用部材の下面が可動接点の上に載せられて操作用の突起部が形成されている請求項1記載のプッシュスイッチ。
【請求項3】
保護シートの上面位置に溶着された突起用部材が剥き出し状態とされて操作用の突起部として形成されている請求項1記載のプッシュスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−59432(P2012−59432A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199622(P2010−199622)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】