説明

プッシュボタンの構造

【課題】 操作部と機器ケースとの間に砂等が侵入しても確実に押圧操作することができるプッシュボタンの構造を提供することにある。
【解決手段】 機器ケース26に摺動自在に取り付けられるプッシュボタン20の操作部22はその内面22aに凹部22bを有している。プッシュボタン20を押圧操作すると、内面22aはプッシュボタン取付部26aの端面26dに接近する。操作部22を押し込むと、プッシュボタン取付部26aの端面26dと操作部22の内面22aとの間に凹部22bによる所定の空間が形成される。内面22aと端面26dとの間に砂等が侵入すると、その侵入物は凹部22bによる空間内に収められる。その結果、操作部22を充分押し込むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計、携帯テレビ、携帯電話、パソコン、ゲーム機等の電子機器における機器ケースに取り付けられるプッシュボタンに関するものであり、特に、プッシュボタンの操作部と機器ケースとの間に砂等が侵入しても確実な操作が可能なプッシュボタンの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にプッシュボタンは、図8及び図9に示すように、押圧操作する操作部2と、この操作部2から突出する軸部4とを有しており、この軸部4を機器ケース6の貫通孔6aに直接又はパイプ8等を介して挿通する構造となっている。このプッシュボタンは、機器ケース6の内方に向かって押し込まれると、機器ケース6内の接点部10のバネ力又は操作部2と機器ケース6との間に設けられたバネ12の力によって元の位置に復帰するものとなっている。このような基本構造を有するプッシュボタンにおいて、操作部2と機器ケース6との間に砂等が侵入すると、砂等の侵入物が挟まって操作部2を充分押し込むことができなくなることがあった。図8に示すプッシュボタンでは、機器ケース6(図8においてはパイプ8)に水抜き用の孔8aを設けていたので、水を排出する際に砂等の侵入物が排出される可能性があった(特許文献1参照)。また、図9に示すプッシュボタンでは、操作部2と機器ケース6(図9においてはパイプ8)との間にリング状の防砂シーリング14を設けて、操作部2とパイプ8との間に砂等の侵入物が入ることを防いでいた(特許文献2参照)。
【0003】
しかしながら、水抜き用の孔8aを設けると、かえって孔8aから水と共に砂等が侵入することがあった。また、防砂シーリング14を設けても、操作部2の移動時に防砂シーリング14が変形し、このときに砂等が侵入することがあり、押圧操作できなくなることがあった。
【特許文献1】実開昭56−164186号公報
【特許文献2】実開昭63−150391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点を解決し、操作部と機器ケースとの間に砂等が侵入しても確実に押圧操作することができるプッシュボタンの構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のプッシュボタンの構造は、機器ケースの内部に設けられた接点部を押圧するため前記機器ケースに摺動自在に取り付けられるプッシュボタンの構造であって、押圧操作すると前記機器ケースに接近する操作部の内面に凹部を設け、前記操作部を押し込んだ状態で前記機器ケースと前記操作部の内面との間に空間を形成するものである。このプッシュボタンの構造における前記凹部は、押圧方向に開口すると共に押圧方向に直交する方向にも開口する。また、前記凹部は、複数形成されている。また、前記凹部の間に形成される仕切部は、先端が曲面、細線状面及び稜線の内の一つ又はそれらの組み合わせからなる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、操作部の内面に凹部を設けているので、操作部を押し込んだときに、機器ケースと操作部の内面との間に空間が生じる。これにより、砂等の侵入物が操作部と
機器ケースとの間に侵入しても砂等の侵入物が凹部による空間内に収まって操作部を充分押し込んで確実な操作をすることができる。
【0007】
また、凹部は、押圧方向だけでなく、それに直交する方向にも開口しているので、細かい侵入物を側方の開口部分から押し出して凹部内に溜まることを防ぐことができる。
【0008】
また、凹部を複数設けているので、一部分に片寄って侵入物が溜まることにより大きな固まりができることを防ぐことができ、プッシュボタンのストロークを常に充分確保することができる。
【0009】
また、凹部の間に形成される仕切部の先端を曲面、細線状面、稜線等に設定しているので、この先端によって砂等の侵入物を凹部内に押し退けることができ、押圧操作をスムーズに行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のプッシュボタンの構造においては、機器ケースに摺動自在に取り付けられるプッシュボタンの操作部の内面に凹部を設けている。この操作部の内面は、押圧操作すると、機器ケースにおけるプッシュボタン取付部の端面に接近する。このため、この操作部の内面に凹部を設けると、操作部を押し込んだ状態で、機器ケースのプッシュボタン取付部の端面と操作部の内面との間に凹部による所定の空間が形成される。このように空間が形成されると、操作部の内面とプッシュボタン取付部の端面との間に砂等が侵入しても、その侵入物は空間内に収められることになる。その結果、操作部を通常と同様に充分押し込むことができ、操作不能になることを防ぐことができる。
【実施例】
【0011】
図1は本発明の一実施例に係るプッシュボタンの構造を示す要部断面図、図2は図1に示すプッシュボタンを押し込んだ状態を示す要部断面図、図3は図1に示すプッシュボタンの斜視図である。20はプッシュボタンであり、26はこのプッシュボタン20が摺動自在に取り付けられる機器ケースである。プッシュボタン20は、押圧操作する操作部22と、この操作部22に植設される等により一体に形成された軸部24とから構成されている。機器ケース26には、機器ケース26を貫通する貫通孔26bと、この貫通孔26bの外方開口部の周縁に設けられた凹状部26cと、からなるプッシュボタン取付部26aが設けられている。
【0012】
本実施例における操作部22は、角部が曲面をなす略直方体形状に形成されている。この操作部22の内面22aの中央に軸部24が突設されており、軸部24を貫通孔26bに挿通させると、この内面22aは凹状部26cの底部となるプッシュボタン取付部26aの端面26dに対面する。また、この内面22aには、図3に示すように、その中央に幅が広い凹部22bが設けられ、その図中左右側方に幅が狭い凹部22c,22dが設けられている。この凹部22b〜22dは、操作部22が押圧される方向に向かって開口すると共に、その押圧方向に直交する方向、本実施例においては図中上下方向にも開口するものとなっている。この中央の凹部22bと側方の凹部22c,22dとの間には、本来の操作部22の肉厚が残って軸部24と同方向に盛り上がった畝(うね)となる仕切部22f,22gが設けられている。この仕切部22f,22gの先端は、緩やかな曲面をなすように形成されている。
【0013】
また、本実施例における軸部24には、その中央付近に環状溝24aが設けられており、ここにリング状のパッキン28が取り付けられている。また、軸部24の先端付近には、幅が狭い取付溝24bが設けられており、ここに抜け止め用のCリング30が取り付けられている。尚、パッキン28の位置や数、あるいはプッシュボタン20の抜け止め構造
に関しては適宜他の公知の構造を採用しても良い。
【0014】
上記構成からなるプッシュボタンの構造においては、プッシュボタン20の軸部24を機器ケース26の貫通孔26bに挿通することで摺動自在にプッシュボタン20を機器ケース26に取り付けている。本実施例におけるプッシュボタン20は、機器ケース26内の接点部32のバネ力によって押し戻され、通常、図1に示すように、操作部22がプッシュボタン取付部26aの凹状部26cから突出した状態となっている。尚、コイルバネ等を用いてプッシュボタン20を押し戻すような他の公知の構造を採用した場合も同様である。また、貫通孔26b又はこの貫通孔26b及び凹状部26cに適合するパイプを取り付け、そのパイプ内に軸部24を挿通させるような他の公知の構造を用いて摺動自在に取り付けることも可能であり、その場合にも同様に初期位置が設定される。
【0015】
図1に示す状態において、操作部22の外方端面となる操作面22hを押圧してプッシュボタン20を押し込むと、図2に示すように、軸部24の先端にて接点部32が押圧される。このときに、操作部22の内面22aがプッシュボタン取付部26aの端面26dに接近する。プッシュボタン20を最も奥まで押し込むと、本来の操作部22の肉厚が残った仕切部22f,22gと端面26dとの間隔は極めて狭くなるか又はほぼ接触した状態になる。一方、押部22b〜22dと端面26dとの間には、常に所定の空間が形成される。ここで、内面22aと端面26dとの間に砂等の侵入物があり、更にその侵入物が仕切部22f,22gの先端と端面26dとの間隔より大きいと、一般には、操作部22を奥まで押し込むことができなくなる。しかし、本実施例においては、侵入物が凹部22b〜22dと端面26dとの間の空間に収まることで、操作部22を奥まで押し込むことが可能となる。
【0016】
また、本実施例においては、仕切部22f,22gの先端が曲面となっており、この曲面により侵入物を凹部22b〜22dの方向へ押し退けている。これにより、仕切部22f,22gと端面26dとの間に侵入物が挟まることがなくなる。また、凹部22b〜22dが図中上下方向に開口していることから、細かい侵入物がその開口方向に排出され、凹部22b〜22d内に細かい侵入物が溜まって大きな固まりになることを防ぐことができる。
【0017】
図4乃至図7は図3に示す操作部の内面に設けられた凹部と仕切部の形状を変更した例を示すプッシュボタンの斜視図である。図4に示すプッシュボタン20には、ほぼ同じ幅で図中上下方向に形成された複数の溝状部分からなる凹部22iが設けられている。この凹部22iの間に設けられている仕切部22jは、その先端が細長い線状の細線状面で構成されている。このように凹部22iを多数且つ細かく分割して設けることで、砂等の侵入物を分散して凹部22i内に収めることができる。これにより、侵入物が一箇所にまとまって大きな固まりになることを防ぐことができる。
【0018】
図5に示すプッシュボタン20には、図4に示すものと同様に図中上下方向に形成された複数の溝状部分からなる凹部22iが設けられている。一方、このプッシュボタン20における仕切部22kは、凹部22iの傾斜する側面が突き当たることにより形成されており、断面形状が略三角形をなすものとなっている。このため、この仕切部22kの先端は斜面が突き当たる直線状の稜線となっており、この先端で侵入物を押し退けて凹部22i内へと導くものとなっている。
【0019】
図6に示すプッシュボタン20における凹部22mは断面が略V字形状をなす複数の溝状部分からなるものであり、仕切部22nは凹部22mの間に形成される断面が略逆V字形状をなす部分からなる。このような凹部22mと仕切部22nを連設してジグザグ形状を形成することにより、仕切部22nの先端が稜線となると共にそこから凹部22mの奥
へ向かって傾斜面を大きく形成することができる。この結果、侵入物を仕切部22nの先端で押し退けると共に大きな傾斜面で凹部22mの奥まで導くことができる。
【0020】
図7に示すプッシュボタン20には、図6に示す凹部22m及び仕切部22nと同様のものが設けられており、更に、仕切部22nの図中上下にある端部に面取部22pを設けている。このように仕切部22nの端部に面取部22pを設けると、この面取部22pとプッシュボタン取付部26aの端面26d(図1又は図2)との間にも空間を形成することができ、侵入物を収める空間を増やすことができる。
【0021】
尚、上記本実施例においては、略直方体形状をなす操作部22を用いているが、略円柱形状等、その他の形状のものであっても良い。また、軸部24の形状、防水性を確保する構造、復帰させるための反発力を得る構造等については適宜変更可能である。また、プッシュボタンではなく、機器ケースに凹部を設けることでも同様な効果を発揮する。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明のプッシュボタンの構造は、電子機器、特に屋外で使用されることが多い携帯用電子機器に使用することにより顕著な効果を発揮するものであるが、この他、塵やホコリ等が侵入し易い家庭用電化製品、製造機械、車両等にも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施例に係るプッシュボタンの構造を示す要部断面図である。
【図2】図1に示すプッシュボタンを押し込んだ状態を示す要部断面図である。
【図3】図1に示すプッシュボタンの斜視図である。
【図4】図3に示す操作部の内面に設けられた凹部と仕切部の形状を変更した例を示すプッシュボタンの斜視図である。
【図5】図3に示す操作部の内面に設けられた凹部と仕切部の形状を変更した例を示すプッシュボタンの斜視図である。
【図6】図3に示す操作部の内面に設けられた凹部と仕切部の形状を変更した例を示すプッシュボタンの斜視図である。
【図7】図3に示す操作部の内面に設けられた凹部と仕切部の形状を変更した例を示すプッシュボタンの斜視図である。
【図8】従来のプッシュボタンの構造を示す断面図である。
【図9】従来のプッシュボタンの構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0024】
2 操作部
4 軸部
6 機器ケース
6a 貫通孔
8 パイプ
8a 孔
10 接点部
12 バネ
14 防砂シーリング
20 プッシュボタン
22 操作部
22a 内面
22b〜22d 凹部
22f,22g 仕切部
22i 凹部
22j 仕切部
22k 仕切部
22m 凹部
22n 仕切部
22p 面取部
24 軸部
24a 環状溝
24b 取付溝
26 機器ケース
26a プッシュボタン取付部
26b 貫通孔
26c 凹状部
26d 端面
28 パッキン
30 Cリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器ケースの内部に設けられた接点部を押圧するため前記機器ケースに摺動自在に取り付けられるプッシュボタンの構造であって、
押圧操作すると前記機器ケースに接近する操作部の内面に凹部を設け、前記操作部を押し込んだ状態で前記機器ケースと前記操作部の内面との間に空間を形成することを特徴とするプッシュボタンの構造。
【請求項2】
前記凹部は、押圧方向に開口すると共に押圧方向に直交する方向にも開口することを特徴とする請求項1記載のプッシュボタンの構造。
【請求項3】
前記凹部は複数形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のプッシュボタンの構造。
【請求項4】
前記凹部の間に形成される仕切部は先端が曲面、細線状面及び稜線の内の一つ又はそれらの組み合わせからなることを特徴とする請求項3記載のプッシュボタンの構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−265773(P2007−265773A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−88583(P2006−88583)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】