説明

プライマーに基づく改善された増幅法

本発明は、1つまたは複数のフラッププライマーを用いて、より優れた効率および精度で標的核酸を増幅するための方法を提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、小さい核酸標的(すなわち、マイクロRNA(mRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、およびその他の小さい非コードRNA)を含む、核酸配列標的のための改善された増幅および検出システムに関する。増幅アッセイは、5'非相補的配列部分および標的に相補的な3'相補的配列部分を有する少なくとも1つのプライマーを含み、ならびに任意で検出プローブを含む。本システムは、効率および精度が増大した、標的核酸の増幅および検出方法で用いられる。
【0002】
関連出願への相互参照
本出願は、2005年6月9日に出願された米国仮特許出願第60/688,873号の恩典を主張し、その開示は、全ての目的のためにその全体が参照により組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
標的核酸配列の増幅および検出のための利用可能な方法には、PCR増幅法の使用が含まれる(米国特許第4,683,195号および同第4,683,195号)。増幅および検出の著しい改善は、TaqMan(米国特許第5,487,972号)、分子ビーコン(国際公開公報第95/13399号)、フラッププローブを利用するインベーダーアッセイ(国際公開公報第98/42873号)、およびMGB Eclipse増幅法(国際公開公報第03/062445号)である。
【0004】
2部の技術報告書において、Misuhasi(J. Clin. Lab. Anal. 10:277-284および285-93(1996))は、最適なPCRプライマーを設計するための基本的な要件を論じた。2重鎖スコーピオンプライマー(Solinas et al., Nucl. Acids Res., 29:e96(2001))、自己報告PNA/DNAプライマー(Fiandaca et al., Genome Res., 11:609-613(2001))、および波長偏移プライマー(米国特許第6,037,130号)が報告されている。
【0005】
増幅プライマーにおける共通塩基(米国特許出願第2003/0170711号;Loakes D., Nucl. Acids Res. 29:2437-47(2001))、ロックされた核酸(locked nucleic acid)(Latorra et al., Biotechniques 34:1150-1155(203))、置換および未置換ピラゾロ[3,4-d]ピリミジンならびに置換ピリミジン(Belousov et al., Human Genomics, 1:209-217(2004))、雑多(promiscuous)塩基(米国特許出願第10/954,955号)、3-ニトロピロールおよび5-ニトロインドール(Loakes et al., Nucl. Acids Res. 23:2361-2366(1995))の含有が報告されている。
【0006】
非相補的なフラップ配列またはアダプター配列またはオーバーハング配列が検出プローブにハイブリダイズする、フラッププライマーまたはアダプタープライマーまたはオーバーハングプライマーが、Becton, Dickenson and Companyによって報告されている(米国特許第6,743,582号、米国特許第6,316,200号、および米国特許出願公開第2003/016593号)。米国特許出願第2003/0207302号の中でPotterは、オーバーハング配列を有する第1のプライマーおよび付着手段を有する第2のプライマーを用いた共通プローブシステムを開示した。プライマー-アダプターを介するPCRを利用したクローニングおよび直接シークエンシングが、EspelundおよびJacobsen(Biotechniques, 13:74-81(1992))によって報告された。しかしながら、通常、そのようなフラッププライマーは、検出目的に用いられ、増幅目的には用いられていない。
【0007】
Chenは、ステムループプライマーおよび特異的TaqManプローブを用いたmiRNAのリアルタイムPCR検出について報告した(Real-time profiling of miRNAs from single cells, EM Technologies Conference and Exhibition. Emerging Technologies of Drug Discovery, San Francisco. April 5-6(2005))。miRNAおよびsiRNA用のmirVana miRNA検出キット(mirVana(商標)miRNA検出, カタログ#1552, Ambion, Austin, Texas, USA)は、1つまたは複数の放射性標識RNAプローブを用いた簡便な溶液ハイブリダイゼーションに基づいている。その後、ハイブリダイズしないRNAおよび余分なプローブは、速やかなリボヌクレアーゼ消化段階によって除去し、かつ変性ポリアクリルアミドゲル上で解析する。標的核酸に相補的な2つのライゲーションドメインを用いた約30ヌクレオチド長未満の標的核酸の量を定量するための方法が報告されている(米国特許出願第2004/02591218号)。Dahlbergらは、インベーダーアッセイによる小さい核酸の検出を開示した(米国特許出願第2005/0074788号)。マイクロRNA試料のローリングサークル増幅は、国際公開公報第2005/010159号に報告された。
【発明の開示】
【0008】
発明の概要
本発明は、小さい核酸標的(すなわち、miRNA、siRNA、およびその他の小さい非コードRNA)を含む核酸標的の増幅、検出、および特徴付けのための組成物および方法に関する。さらにとりわけ、本発明は、核酸標的の増幅、検出、および定量のための改善された方法に関する。
【0009】
第1の局面において、本発明は、試料中の標的核酸の増幅のための方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
(a)Xが、標的核酸に非相補的なフラッププライマーの5'配列部分を表し、Yが、標的核酸に相補的なフラッププライマーの3'配列部分を表し、Xが3〜40ヌクレオチドの長さである、式
5'-X-Y-3'(I)
を有する少なくとも1つのフラッププライマーを含む増幅反応混合物に、標的核酸を含むことが疑われる試料を接触させる工程;
(b)増幅条件下で反応混合物をインキュベートする工程;および
(c)任意で、増幅標的核酸を検出する工程。
【0010】
幾つかの態様において、本方法は以下の工程をさらに含む:
(c)(i)工程(b)の標的核酸に相補的な配列を含むプライマー;および
(ii)工程(b)の標的核酸に相補的な配列とマイナーグルーブバインダーとを含むプライマー
を含む反応混合物に、工程(b)の増幅標的核酸を接触させる工程;ならびに
(d)増幅条件下で工程(c)の反応混合物をインキュベートし、それによって第2の増幅標的核酸を生成する工程;ならびに
(e)工程(d)の増幅標的核酸を検出する工程。
【0011】
試料中の標的核酸の増幅のための方法であって、以下の工程を含む方法:
(a)Xが、標的核酸に非相補的なフラッププライマーの5'配列部分を表し、X'が、Xに相補的なヘルパーオリゴヌクレオチド配列を表しかつ少なくとも1つの修飾ヌクレオシド塩基を含み、およびYが、標的核酸に相補的なフラッププライマーの3'配列部分を表し、Xが3〜40ヌクレオチドの長さである、式
5'-X-Y-3'
3'-X'-5'(II)
を有しかつアニールしたヘルパーオリゴヌクレオチドを含む少なくとも1つのフラッププライマーを含む増幅反応混合物に、標的核酸を含むことが疑われる試料を接触させる工程;
(b)増幅条件下で反応混合物をインキュベートし、それによって増幅標的核酸を生成する工程;ならびに
(c)任意で、増幅標的核酸を検出する工程。
【0012】
幾つかの態様において、本方法は以下の工程をさらに含む:
(c)(i)工程(b)の標的核酸に相補的な配列を含むプライマー;および
(ii)工程(b)の標的核酸に相補的な配列とマイナーグルーブバインダーとを含むプライマー
を含む反応混合物に、工程(b)の増幅標的核酸を接触させる工程;ならびに
(d)増幅条件下で工程(c)の反応混合物をインキュベートし、それによって第2の増幅標的核酸を生成する工程;ならびに
(e)任意で、工程(d)の増幅標的核酸を検出する工程。
【0013】
本発明の別の局面は、試料中の標的核酸の増幅のための方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
(a)標的核酸に相補的な配列と、マイナーグルーブバインダーと、MGBによって消光されかつマイナーグルーブへのMGBの挿入によって消光されないフルオロフォアとを含む検出プライマーを含む増幅反応混合物に、標的核酸を含むことが疑われる試料を接触させる工程;
(b)増幅条件下で反応混合物をインキュベートし、それによって増幅標的核酸を生成する工程;ならびに
(c)任意で、増幅標的核酸を検出する工程。
【0014】
幾つかの態様において、標的核酸は30ヌクレオチド塩基未満である。幾つかの態様において、標的核酸はDNAまたはRNA(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、miRNA、もしくはsiRNA)である。
【0015】
通常、本方法は、少なくとも1つのフラッププライマーを含まない増幅反応混合物から増幅された増幅標的核酸からの検出可能シグナルと比較して、少なくとも約1.25倍〜約3倍大きい検出可能シグナルを産生する増幅標的核酸を産生する。通常、本方法は、少なくとも1つのフラッププライマーを含まない増幅反応混合物から増幅された増幅標的核酸の量と比較して、少なくとも約1.25倍〜約3倍多い量の増幅標的核酸を産生する。さらに、本方法は、検出可能シグナルの持続的モニタリングに特に適している。
【0016】
以下に続く詳細な説明により、本発明のこれらのおよびその他の態様をさらに記載する。
【0017】
定義および略語
以下の略語を本明細書において使用する。
MGB:マイナーグルーブバインダー
FL:蛍光標識またはフルオロフォア
Q:クエンチャー
CPG:(固体支持体の一例としての)制御孔ガラス(Controlled pore glass)
ODN:オリゴヌクレオチド部分または分子
【0018】
特に明記しない限り、本明細書および特許請求の範囲において使用される以下の用語は、下記に与えられる意味を有する。
【0019】
「フラッププライマー」または「オーバーハングプライマー」という用語は、標的核酸配列に非相補的である5'配列断片および標的核酸配列に相補的である3'配列断片を含むプライマーを指す。本発明のフラッププライマーは、プライマー伸長または標的核酸配列の増幅に好適である。
【0020】
「オーバーハング」配列という用語は、プライマー中の非相補的なアダプター配列、フラップ配列、またはオーバーハング配列を指す。
【0021】
「ヘルパーオリゴヌクレオチド」という用語は、フラッププライマーのオーバーハング配列の少なくとも一部に相補的なオリゴヌクレオチド配列を指す。ヘルパーオリゴヌクレオチドは、オーバーハング配列に結合し、かつ増幅反応の特異性を増加させる。幾つかの態様において、ヘルパーオリゴヌクレオチドは、フラッププライマーのオーバーハング配列の全体に相補的である。幾つかの態様において、ヘルパーオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾塩基(例えば、スーパーAまたはスーパーT)を含む。幾つかの態様において、ヘルパーオリゴヌクレオチドは、MGBをさらに含む。
【0022】
「MGB-プライマー」および「マイナーグルーブバインダー-プライマー」という用語は、関心対象の標的配列に相補的な配列を含み、かつ付着したマイナーグルーブバインダーを有するオリゴヌクレオチドを指す。幾つかの態様において、マイナーグルーブバインダーは、オリゴヌクレオチドに共有結合的に付着している。
【0023】
「検出プライマー」という用語は、関心対象の標的配列に相補的な配列を含み、かつ付着したマイナーグルーブバインダー(「MGB」)および付着したフルオロフォアの両方を有するオリゴヌクレオチドを指す。MGBおよびフルオロフォアは両方とも検出プライマーの同じ末端に付着している。検出プライマーが溶液中にある場合、すなわち、MGBが2本鎖核酸のマイナーグルーブに結合しない場合、MGBはフルオロフォアからのシグナルを消光する。MGBが2本鎖核酸のマイナーグルーブに結合する場合、フルオロフォアは消光されなくなり、フルオロフォアからのシグナルを検出することができる。幾つかの態様において、マイナーグルーブバインダーおよびフルオロフォアは両方とも、オリゴヌクレオチドに共有結合的に付着している。
【0024】
「標的核酸」という用語は、本明細書において記載された方法を用いて検出されるべき任意の核酸配列を指す。好適な標的核酸には、例えば、DNA、mRNA、tRNA、およびrRNA、miRNA、およびsiRNAが含まれる。幾つかの態様において、標的核酸は、50、45、40、36、30、25、20、15、または10ヌクレオチド未満の長さである。
【0025】
本明細書において使用される場合、「miRNA」という用語は、マイクロRNAを指す。本明細書において使用される場合、「miRNA標的配列」という用語は、(例えば、その他の核酸の存在下で)検出されるべきmiRNAを指す。幾つかの態様において、miRNA標的配列は、miRNAの変異体である。マイクロRNAは、例えば、Ambros, Nature(2004)431:350-5;Tang, Trends Biochem Sci(2005)30:106-114;およびBengert and Dandekar, Brief Bioinform(2005)6:72-85で概説されている。
【0026】
「siRNA」という用語は、低分子干渉RNAを指す。幾つかの態様において、siRNAは、2本鎖領域の各鎖が約18〜25ヌクレオチド長である、2重鎖または2本鎖領域を含み; 2本鎖領域は、16と同じ程度に短く、および29と同じ程度に長い塩基対長であってもよく、長さはアンチセンス鎖によって決定される。低分子干渉RNAは、例えば、Jones, et al., Curr Opin Pharmacol(2004)4:522-7;およびTang, 前記で概説されている。
【0027】
「試料」または「生物学的試料」には、生検(例えば、悪性であることが疑われる組織由来)および剖検試料などの組織の切片、ならびに組織学的目的のために採取された凍結切片が含まれる。そのような試料には、血液、喀痰、組織、例えば初代培養、外植片、および形質転換細胞などの培養細胞、便、尿などが含まれる。生物学的試料は典型的には、真核生物、最も好ましくは霊長類、例えば、チンパンジーまたはヒト;ウシ;イヌ;ネコ;齧歯類、例えば、モルモット、ラット、マウス;ウサギなどの哺乳類;または鳥類;爬虫類;もしくは魚類から得られる。
【0028】
「増幅反応」とは、鋳型核酸配列の複写の増加を結果的にもたらすか、または鋳型核酸の転写を結果的にもたらす、酵素的反応を含む、任意の化学的反応を指す。増幅反応には、リアルタイムPCRを含む、逆転写およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が含まれる(米国特許第4,683,195号および同第4,683,202号;PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Innis et al., eds, 1990)参照)。例示的な「増幅反応条件」または「増幅条件」は典型的には、2段階サイクルまたは3段階サイクルのいずれかを含む。2段階サイクルは、変性段階、それに続くハイブリダイゼーション/伸長段階を有する。3段階サイクルは、変性段階、それに続くハイブリダイゼーション段階、それに続く別個の伸長段階を含む。アニーリング温度はプライマーの長さによって約32℃から48℃の間で変わり得るが、約36℃の温度が低ストリンジェンシー増幅に典型的である。高ストリンジェンシー増幅について、高ストリンジェンシーアニーリング温度は、プライマーの長さおよび特異性によって、約50℃〜約65℃の範囲にまで及ぶことができるが、約62℃の温度が典型的である。高ストリンジェンシー増幅および低ストリンジェンシー増幅の両方に対する典型的なサイクル条件は、90℃〜95℃で30秒間〜2分間の変性相、10秒間〜2分間続くアニーリング相、および約76℃で10秒間〜2分間の伸長相を含む。
【0029】
「標的核酸」とは、試料中に存在する関心対象の核酸を指す。「標的核酸」はまた、逆転写反応の産物およびプライマー伸長アッセイの産物を指し、そのどちらも本明細書において記載された方法を用いてさらに増幅することができる。
【0030】
或る式において、基[A-B]nは、「n」個の塩基(B)を有し、かつ「n」個の糖、修飾糖、またはアミノ酸(A)の骨格に沿って連結されているオリゴヌクレオチド、修飾オリゴヌクレオチド、またはペプチド核酸を指すために使用される。
【0031】
「蛍光発生プローブ」という用語は、a)付着したマイナーグルーブバインダー、フルオロフォア、およびクエンチャーを有するオリゴヌクレオチドまたはb)DNA結合試薬のいずれかを指す。
【0032】
「蛍光標識」または「フルオロフォア」という用語は、約400から900nmの間に蛍光発光極大を有する化合物を指す。これらの化合物は、Cy2(商標)(506)、GFP(赤方偏移)(507)、YO-PRO(商標)-1(509)、YOYO(商標)-1(509)、カルセイン(517)、FITC(518)、FluorX(商標)(519)、Alexa(商標)(520)、ローダミン110(520)、5-FAM(522)、オレゴングリーン(商標)500(522)、オレゴングリーン(商標)488(524)、リボグリーン(商標)(525)、ローダミングリーン(商標)(527)、ローダミン123(529)、マグネシウムグリーン(商標)(531)、カルシウムグリーン(商標)(533)、TO-PRO(商標)-1(533)、TOTO(登録商標)-1(533)、JOE(548)、BODIPY(登録商標)530/550(550)、Dil(565)、BODIPY(登録商標)TMR(568)、BODIPY(登録商標)558/568(568)、BODIPY(登録商標)564/570(570)、Cy3(商標)(570)、Alexa(商標)546(570)、TRITC(572)、マグネシウムオレンジ(商標)(575)、フィコエリスリンR&B(575)、ローダミンファロイジン(575)、カルシウムオレンジ(商標)(576)、ピロニンY(580)、ローダミンB(580)、TAMRA(582)、ローダミンレッド(商標)(590)、Cy3.5(商標)(596)、ROX(608)、カルシウムクリムソン(商標)(615)、Alexa(商標)594(615)、Texas Red(登録商標)(615)、ナイルレッド(628)、YO-PRO(商標)-3(631)、YOYO(商標)-3(631)、R-フィコシアニン(642)、C-フィコシアニン(648)、TO-PRO(商標)-3(660)、TOTO(登録商標)-3(660)、DiD DilC(5)(665)、Cy5(商標)(670)、チアジカルボシアニン(671)、Cy5.5(694)を含み、これらは括弧内のnmに蛍光極大をもつ。フルオロフォアはさらに、国際公開公報第03/023357号、第06/020947号、および米国特許出願第11/202,635号に開示された蛍光誘導体を指す。
【0033】
「リンカー」という用語は、分子の様々な部分を会合させ、または分子(もしくはその部分)を固体支持体に共有結合的に付着させるために用いられる部分を指す。典型的には、リンカーまたは連結基は、本明細書において記載および使用されるコンジュゲートのリガンドまたは構成要素(例えば、フルオロフォア、オリゴヌクレオチド、マイナーグルーブバインダー、もしくはクエンチャー)の官能基と相互作用し、共有結合を形成するのに用いられる官能基を有する。(その他の構成要素との相互作用に先立つ)連結基上の官能基の例として、-NH2、-NHNH2、-ONH2、-NHC=(O)NHNH2、-OH、または-SHが含まれる。連結基は、コンジュゲートにその他の基(例えば、ホスホロアミダイト部分など)を接続する分子の部分でもある。さらに、リンカーは、線状もしくは非環状部分、環状部分、芳香環、またはその組み合わせを含みうる。
【0034】
「固体支持体」という用語は、例えば、ガラス、制御孔ガラス、ポリマー材料、ポリスチレン、ビーズ、コーティングされたガラスなどを含む、オリゴヌクレオチド合成に適合する任意の支持体を指す。
【0035】
「アルキル」という用語は、接頭辞で示された数の炭素原子を有する線状、分岐状、もしくは環状の飽和一価炭化水素ラジカルまたは環状および線状もしくは分岐状の飽和一価炭化水素ラジカルの組み合わせを指す。例えば、(C1〜C8)アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、2-プロピル、tert-ブチル、ペンチル、シクロペンチル、シクロプロピルメチルなどを含むことを意味する。本明細書における定義の各々(例えば、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アラルキルオキシ)について、アルキル部分の主鎖炭素原子の数を指すための接頭辞が含まれていない場合、ラジカルまたはその部分は、8またはそれより少ない主鎖炭素原子を有すると考えられる。
【0036】
「アルキレン」という用語は、接頭辞で示された数の炭素原子を有する線状飽和二価炭化水素ラジカルまたは分岐状飽和二価炭化水素ラジカルを指す。例えば、(C1〜C6) アルキレンは、メチレン、エチレン、プロピレン、2-メチルプロピレン、ペンチレンなどを含むことを意味する。
【0037】
「アリール」という用語は、置換されていない、または以下に与えられる群より選択される1つから4つの置換基、好ましくは1つ、2つ、もしくは3つの置換基で独立に置換された、6〜10環原子の一価または二価(例えばアリーレン)の単環式または二環式芳香族炭化水素ラジカルを指す。「アリール」という用語はまた、1つまたは複数のヘテロ原子またはヘテロ原子官能基によって環炭素が置き換えられた上記の基を含むことを意味するが、例えば、ピリジル、キノリニル、キナゾリニル、チエニルなどの芳香族特性は保持される。より具体的には、アリールという用語は、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、チエニル、およびベンゾチアゾリル、ならびにその置換型を含むが、これらに限定されない。
【0038】
アリール基に対する置換基は様々であり、ゼロから芳香族環系のオープン原子価総数までの範囲の数で、以下より選択される: -ハロゲン、-OR'、-OC(O)R'、-NR'R''、-SR'、-R'、-CN、-NO2、-CO2R'、-CONR'R''、-C(O)R'、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR''C(O)2R'、-NR'-C(O)NR''R'''、-NH-C(NH2)=NH、-NR'C(NH2)=NH、-NH-C(NH2)=NR'、-S(O)R'、-S(O)2R'、-S(O)2NR'R''、-N3、-CH(Ph)2、ペルフルオロ(C1〜C4)アルコキシ、およびペルフルオロ(C1〜C4)アルキル。式中、R'、R''、およびR'''は、水素、(C1〜C8)アルキル、およびヘテロアルキル、未置換アリールおよびヘテロアリール、(未置換アリール)-(C1〜C4)アルキル、ならびに(未置換アリール)オキシ-(C1〜C4)アルキルより独立に選択される。
【0039】
アリールまたはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基のうちの2つを任意で式-T-C(O)-(CH2)q-U-の置換基と置き換えてもよく、式中、TおよびUは、独立に-NH-、-O-、-CH2-、または単結合であり、かつqは0〜2の整数である。あるいは、アリールまたはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基のうちの2つを任意で式-A-(CH2) r-B-の置換基と置き換えてもよく、式中、AおよびBは、独立に-CH2-、-O-、-NH-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-S(O)2NR'-、または単結合であり、かつrは1〜3の整数である。そのように形成された新しい環の単結合のうちの1つを任意で二重結合と置き換えてもよい。あるいは、アリールまたはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基のうちの2つを任意で式-(CH2)s-X-(CH2)t-の置換基と置き換えてもよく、式中、sおよびtは、独立に0〜3の整数であり、かつXは、-O-、-NR'-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、または-S(O)2NR'-である。-NR'-および-S(O)2NR'-における置換基R'は、水素または未置換(C1〜C6)アルキルより選択される。またさらに、nが0〜5である、-(CR'=CR')n-および-(C≡C)n-などの基を直接的または間接的に通じて、芳香族系の共鳴能を拡張し、波長吸収極大を増加させるために、アリール環(Ar1およびAr2、下記)のうちの1つを別の置換アリール基でさらに置換することができる。
【0040】
置換基を記載するために使用される場合の「ハロ」という接頭辞および「ハロゲン」という用語は、-F、-Cl、-Br、および-Iを指す。
【0041】
本発明の或る化合物またはオリゴヌクレオチドは、塩形態で存在してもよい。そのような塩には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ、もしくはマグネシウム塩などの塩基付加塩、または類似の塩が含まれる。本発明の化合物または修飾オリゴヌクレオチドが相対的に塩基官能性を含む場合、そのような化合物の中性形態を、ニートであるかまたは好適な不活性溶媒中にあるかのいずれかの所望の酸の十分量と接触させることによって、酸付加塩を得ることができる。許容される酸付加塩の例として、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸(monohydrogencarbonic)、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヨウ化水素酸、または亜リン酸などのような無機酸から誘導された塩、ならびに、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、乳酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などのような有機酸から誘導された塩が含まれる。アルギン酸などのアミノ酸の塩およびそれらと同様の塩、ならびにグルクロン酸またはガラクツロン酸のような有機酸の塩およびそれらと同様の塩もまた含まれる(例えば、Berge, S. M., et al., “Pharmaceutical Salts”, Journal of Pharmaceutical Science, 1977, 66, 1-19参照)。本発明の或る特定の化合物は、化合物を塩基付加塩または酸付加塩のいずれかに変換する塩基官能性および酸官能性の両方を含む。
【0042】
塩基または酸と塩を接触させ、および従来の方法で親化合物を単離することによって、化合物の中性形態を再生してもよい。化合物の親形態は、極性溶媒中での溶解度などの或る物理的特性が様々な塩形態とは異なるが、そうでなければ本発明の目的にとって、塩は化合物の親形態と等価である。
【0043】
本発明の或る化合物は、非溶媒和形態、ならびに水和形態を含む溶媒和形態で存在することができる。通常、溶媒和形態は非溶媒和形態と等価であり、かつ本発明の範囲内に包含されることが意図される。本発明の或る化合物は、多重結晶または非晶形態で存在してもよい。通常、全ての物理的形態は、本発明によって企図される使用について等価であり、かつ本発明の範囲内にあることが意図される。
【0044】
本発明の或る化合物は、不斉炭素原子(光学中心)または二重結合を保有し;ラセミ化合物、ジアステレオマー、幾何異性体、および単一異性体は全て、本発明の範囲内に包含されることが意図される。立体化学の決定および異性体の分離のための方法は、当技術分野において周知である(“Advanced Organic Chemistry”, 4th edition J. March, John Wiley and Sons, New York, 1992の第4章の考察を参照されたい)。
【0045】
本発明の化合物はまた、そのような化合物を構成する1つまたは複数の原子に非天然の割合の原子同位体を含んでもよい。例えば、トリチウム(3H)、ヨード-125(125I)、または炭素-14(14C)などの放射性同位体で化合物を放射性標識してもよい。放射性であろうとなかろうと(例えば、2H)、本発明の化合物の同位体変化は全て、本発明の範囲内に包含されることが意図される。
【0046】
「保護基」または「その保護形態」という用語は、分子マスク中の反応基に付着した場合にその反応性を低下させまたは抑制する原子の集団を指す。保護基の例は、T. W. Greene and P. G. Futs, Protective Groups in Organic Chemistry,(Wiley, 2nd ed. 1991)およびHarrison and Harrison et al., Compendium of Synthetic Organic Methods, Vols.1〜8(John Wiley and Sons. 1971-1996)に見出すことができる。代表的なアミノ保護基には、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)、tert-ブトシキカルボニル(Boc)、トリメチルシリル(TMS)、2-トリメチルシリル-エタンスルホニル(SES)、トリチルおよび置換トリチル基、アリルオキシカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)、ニトロ-ベラトリルオキシカルボニル(NVOC)などが含まれる。代表的なヒドロキシ保護基には、ヒドロキシ基がアシル化されているかまたはアルキル化されているかのいずれかである、ベンジルおよびトリチルエーテル、ならびにアルキルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、トリアルキルシリルエーテル、およびアリルエーテルのような保護基も含まれる。通常、好ましい保護基は、酸条件下もしくは塩基条件下で除去することができる保護基または特定の光源の使用によって除去することができる保護基(例えば、光感受性保護基)である。さらに、保護基の取り込みまたは除去のいずれもが分子の残りの部分に干渉しないように、またはそうでなければ顕著に影響を及ぼさないように、分子内のその他の官能性を十分に考慮して、適切な保護基の選択がなされる。
【0047】
上の定義における「任意での(optional)」または「任意で(〜してもよい)(optionally)」とは、その後に記載された事象または状況が生じてもよいが、必ずしも生じる必要はないということ、ならびにその記載が、事象または状況が生じる事例およびそれが生じない事例を含むということを意味する。例えば、「任意でアルキル基で一置換または二置換されてもよいアリール」は、アルキル基が存在してもよいが、必ずしも存在する必要はないということを意味し、ならびにその記載は、アリール基がアルキル基で一置換または二置換されている状態およびアリール基がアルキル基で置換されていない状態を含む。
【0048】
本発明の実施は、特に示されない限り、有機化学、生化学、オリゴヌクレオチド合成および修飾、バイオコンジュゲート化学、核酸ハイブリダイゼーション、分子生物学、微生物学、遺伝学、組換えDNA、ならびに当技術分野の技量の範囲内にあるような関連分野における従来の技術を利用すると考えられる。これらの技術は、文献で完全に説明されている。例えば、Sambrook and Russell, MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press(2000);CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, Ausubel, et al., eds., John Wiley & Sons(1987-2005、漸増的に改訂);Gait(ed.), OLIGONUCLEOTIDE SYNTHESIS:A PRACTICAL APPROACH, IRL Press(1984);Eckstein(ed.), OLIGONUCLEOTIDES AND ANALOGUES:A PRACTICAL APPROACH, IRL Press(1991);Herdewijn, OLIGONUCLEOTIDE SYNTHESIS:METHODS AND APPLICATIONS, Humana Press(2004);およびAgrawal, PROTOCOLS FOR OLIGONUCLEOTIDES AND ANALOGS:SYNTHESIS AND PROPERTIES, Humana Press(1993)を参照されたい。
【0049】
「Eclipse(商標)プローブ」という用語は、通常、5'-MGB-Q-ODN-FLプローブを指す。対照的に、「TaqMan(登録商標)MGB(商標) プローブ」とは、3'-MGB-Q-ODN-FLプローブを指す。「プレイアデス(Pleiades)プローブ」とは、5'-MGB-FL-ODN-Qプローブを指す。Eclipse(商標)およびMGB(商標)は、Epoch Biosciences, Inc., Bothell, WAの商標であり;ならびにTaqMan(登録商標)はApplied Biosystems, Inc., Foster City, CAの登録商標である。
【0050】
詳細な説明
I. 概要
本発明は、オーバーハング配列を含むプライマーが核酸標的の効率的でかつ正確な増幅に特に有用であるという驚くべき発見に基づく。これらのプライマーは、例えば、増幅標的核酸が増幅と同時に検出される、リアルタイム増幅検出に特に有用である。さらに、本明細書において記載されたオーバーハングプライマーは、オーバーハング配列のないプライマーと比較して顕著に改善されたシグナルを示す。オーバーハング配列を含むプライマーによる増幅の概略図を図1、9、12、および19に示す。
【0051】
本発明のプライマーは、核酸の増幅およびとりわけ短い核酸標的の増幅において、既存のプライマーを超える数多くの利点を提供する。本発明のプライマーは、効率的でかつ正確な増幅を可能にするのに特に有用であり、ならびに任意で、例えば逆転写、プライマー伸長、およびPCRを用いた核酸標的の検出を可能にするのに特に有用である。
【0052】
II. 標的核酸の増幅
本発明は、フラッププライマーを用いた標的核酸の増幅のための方法を提供する。標的核酸の増幅は、逆転写(RT)の後に続く増幅標的核酸の生成、ならびに例えばPCRによる逆転写反応の産物の増幅を含む。RTおよびPCRは、2段階でまたは1段階として実施することができる。
【0053】
第1の局面において、本発明は、試料中の標的核酸の増幅のための方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
(a)Xが、標的核酸に非相補的なフラッププライマーの5'配列部分を表し、Yが、標的核酸に相補的なフラッププライマーの3'配列部分を表し、Xが3〜40ヌクレオチドの長さである、式
5'-X-Y-3'(I)
を有する少なくとも1つのフラッププライマーを含む増幅反応混合物に、標的核酸を含むことが疑われる試料を接触させる工程;
(b)増幅条件下で反応混合物をインキュベートし、それによって増幅標的核酸を生成する工程;および
(c)任意で、増幅標的核酸を検出する工程。
【0054】
幾つかの態様において、フラッププライマーはさらに、アニールしたヘルパーオリゴヌクレオチドを含み、かつ下記式を有する:
5'-X-Y-3'
3'-X'-5' (II)
式中、Xは、標的核酸に非相補的なフラッププライマーの5'配列部分を表し、X'は、Xの少なくとも一部に相補的なヘルパーオリゴヌクレオチド配列を表し、およびYは、標的核酸に相補的なフラッププライマーの3'配列部分を表す。幾つかの態様において、X'は少なくとも1つの修飾塩基(例えば、スーパーA、スーパーT、またはスーパーG)を含む。X'は、Xよりも少ない塩基、Xよりも多い塩基、またはXと同じ数の塩基を含んでもよい。幾つかの態様において、ヘルパーオリゴヌクレオチドは、約50℃yのTmを有する。
【0055】
或る態様において、標的核酸は、DNA、mRNA、tRNA、rRNA、siRNA、またはmiRNAでありうる。幾つかの態様において、標的核酸は、50、45、40、35、30、35、20、または15ヌクレオチド塩基未満である。約50ヌクレオチド塩基未満の核酸は典型的には、長さが10〜50、15〜40、または20〜25ヌクレオチドであるが、長さが約11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50ヌクレオチドであってもよい。
【0056】
通常、本方法は、少なくとも1つのフラッププライマーを含まない増幅反応混合物から増幅された増幅標的核酸の量と比較して、少なくとも1.2倍、1.25倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2.0倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍、2.5倍、2.6倍、2.7倍、2.8倍、2.9倍、または3.0倍多い量の増幅標的核酸を産生する。
【0057】
通常、本方法は、少なくとも1つのフラッププライマーを含まない増幅反応混合物から増幅された増幅標的核酸と比較して、少なくとも1.2倍、1.25倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2.0倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍、2.5倍、2.6倍、2.7倍、2.8倍、2.9倍、または3.0倍大きい検出可能シグナルを発生する増幅標的核酸を産生する。さらに、本方法は、検出可能シグナルの持続的モニタリング(「リアルタイム検出」)に特に適している。或る態様においては、蛍光発生検出プローブ、例えば、ハイブリダイゼーションに基づく蛍光プローブまたはDNA結合蛍光化合物を用いて、同時増幅を検出する。
【0058】
或る態様において、反応混合物は2つのフラッププライマーを含む:フォワードフラッププライマーおよびリバースフラッププライマー。フォワードフラッププライマーおよびリバースフラッププライマーは、等しい長さでありうるが、そうである必要はない。
【0059】
或る態様において、標的核酸(X)に非相補的なフラッププライマーの5'配列部分は、長さが約3〜40、約5〜30、約7〜20、約9〜15ヌクレオチド、または長さが約10〜14もしくは11〜13、もしくは約12ヌクレオチドである。標的核酸(X)に非相補的なフラッププライマーの5'配列部分は、長さが4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40ヌクレオチドでありうる。
【0060】
或る態様において、標的核酸(Y)に相補的なフラッププライマーの3'配列部分は、標的核酸(X)に非相補的なフラッププライマーの5'配列部分よりも多い数のヌクレオチドを含む。例えば、標的核酸(Y)に相補的なフラッププライマーの3'配列部分は、フラッププライマーの合計の長さの約55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、または90%を含むことができる。幾つかの態様において、標的核酸に相補的なフラッププライマーの3'配列部分は、長さが10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20ヌクレオチド、またはそれより長いヌクレオチドである。
【0061】
或る態様において、標的核酸(X)に非相補的なフラッププライマーの5'配列部分は、標的核酸(Y)に相補的なフラッププライマーの3'配列部分とほとんど同数のヌクレオチドを含む。例えば、XおよびY部分は各々、長さが約4〜30、6〜25、8〜20、10〜15ヌクレオチド、通例長さが約10〜14または11〜13ヌクレオチド、およびより通例としては長さが約12ヌクレオチドでありうる。XおよびY部分は各々、長さが4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチドでありうる。
【0062】
或る態様において、標的核酸(X)に非相補的なフラッププライマーの5'配列部分は、少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、90%、95%のアデニンもしくはチミンヌクレオチド塩基、またはその修飾塩基を含む。或る態様において、標的核酸(X)に非相補的なフラッププライマーの5'配列部分は、少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、90%、95%のグアニンもしくはシトシンヌクレオチド塩基、またはその修飾塩基を含む。
【0063】
或る態様において、本方法は、共有結合的に付着したマイナーグルーブバインダーと標的核酸に相補的な配列とを含む第1のプライマーおよび標的核酸に相補的な配列を含む第2のプライマーを含む反応混合物によって、増幅標的核酸を増幅する工程、ならびに結果として生じる増幅産物を検出する工程をさらに含む。幾つかの態様において、第1のプライマーは、標的核酸に相補的な約5〜20、6〜15、8〜12、または10より多い塩基の配列を含む。幾つかの態様において、第2のプライマーは、標的核酸に相補的な約5〜50、7〜40、9〜30、または11〜20塩基の配列を含む。幾つかの態様において、第2のプライマーは、式IもしくはIIのフラッププライマー、MGBプライマー(例えば、米国特許第6,312,894号参照)、または検出プライマーである。幾つかの態様において、MGBは、DPI2またはDPI3部分である。その他の好適なMGBは、米国特許第5,801,155号および米国特許出願公開第20050187383号に示されている。MGBプライマーは、共同所有された米国特許第6,312,894号に開示されている。
【0064】
当技術分野において公知の検出の方法のいずれかを用いて増幅標的核酸を検出することができる。例えば、検出は、増幅反応の終了後に(例えば、アガロースゲル中でエチジウムブロマイドを用いて)または増幅反応中に同時に(「リアルタイム検出」)実行することができる。例えば、PCR Primer:A Laboratory Manual, Dieffenbach, et al., eds., 2003, Cold Spring Harbor Laboratory Press;McPherson, et al., PCR Basics, 2000;およびRapid Cycle Real-time PCR Methods and Applications:Quantification, Wittwer, et al., 編, 2004, Springer-Verlagを参照されたい。或る態様においては、1つまたは複数の蛍光発生検出プローブを用いて増幅標的核酸を検出する。蛍光発生検出プローブには、切断されて蛍光を発光するプローブ(Taqman、ヌクレアーゼIV)、核酸結合化合物(米国特許出願第2003/026133号、米国特許第5,994,056号、米国特許第6,171,785号、Bengtsson et al. Nucl. Acids Res., 31:e45(2003)および米国特許第6,569,627号)、ハイブリダイゼーションに基づくプローブ(Eclipse、分子ビーコン、プレイアデスなど)等が含まれる。或る態様においては、1つまたは複数のDNA結合蛍光化合物(例えば、SYBR(登録商標)グリーン1(Molecular Probes, Eugene, OR)、BOXTOX、BEBO(TATAA Biocenter, Gotenborg, Sweeden))によって標的核酸を検出する。
【0065】
1つの態様においては、標的核酸および少なくとも1つのフラッププライマー配列の1つまたは複数のヌクレオチド塩基(典型的には、非相補的部分、X)にハイブリダイズする蛍光発生検出プローブを用いて、長さが約30未満のヌクレオチド塩基の標的核酸を検出する。例えば、標的核酸に、ならびにフォワードフラッププライマー配列の1つもしくは複数のヌクレオチド塩基、リバースフラッププライマー配列の1つもしくは複数のヌクレオチド塩基、または同時にフォワードおよびリバースフラッププライマー配列の1つもしくは複数のヌクレオチド塩基に、蛍光発生検出プローブをハイブリダイズさせてもよい。標的配列に、および少なくとも1つのフラッププライマー配列、特にフラッププライマーの非相補的部分Xの1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10ヌクレオチド塩基に、任意で蛍光発生検出プローブをハイブリダイズさせてもよい。
【0066】
本発明のプライマーは、プライマーの検出または固定化を可能にするが、プライマーの基本的特性、核酸合成の開始の点として機能するという特性を変化させないさらなる特色を組み入れることができる。増幅標的を固定化するために、ビオチン化プライマーが用いられている(Olsvik et al., Clin Microbiol Rev., 7:43-54(1994))。幾つかの例において、プライマーは、プライマーの相補的および非相補的配列領域のいずれか一方または両方に、1つもしくは複数の非天然塩基または修飾塩基を含む。
【0067】
或る態様においては、ポリメラーゼを用いて増幅を実行する。ポリメラーゼは、5'ヌクレアーゼ活性を有しうるが、そうである必要はない。或る態様においては、逆転写酵素を用いてプライマー伸長を実行し、およびポリメラーゼを用いて増幅を実行する。
【0068】
1つの態様において、プライマー配列は重複し、重複配列2重鎖の安定性は個々のプライマー標的2重鎖の安定性のそれよりも小さい。
【0069】
A. プライマー
1つの局面において、本発明は、最も一般的には5'-X-Y-3'プライマーと表される「オーバーハングプライマー」、「フラッププライマー」、または「アダプタープライマー」を提供する。Xは標的に非相補的なプライマーの配列部分を表し、およびYはプライマーの標的相補的配列部分を表す。
【0070】
したがって、ある基の態様において、プライマーは下記式を有する:
5'-X-Y-3' (I)
式中、Xは標的に非相補的なプライマーの5'配列を表し、Yはプライマーの相補的3'配列を表し、X-Yは核酸オリゴマープライマーを表す。或るさらなる態様において、Xは[A-B]mであり、およびYは[A-B]nであり、Aは核酸調製において用いられる糖リン酸骨格、修飾された糖リン酸骨格、ロックされた核酸骨格、またはその変異体を表し、Bは核酸塩基、塩基の修飾塩基を表し、下付き文字mは約3〜18または4〜16の、通例約8〜15、10〜14、または11〜13、およびより通例としては約12の整数である。下付き文字nは、約4〜50、通例8〜20、10〜18、または12〜16である。或る態様において、下付き文字mおよびnの値は等しく、例えば、mおよびnの両方は同時に約8〜15、10〜14、または11〜13、およびより通例としては約12の整数でありうる。
【0071】
幾つかの態様において、フラッププライマーはさらに、アニールしたヘルパーオリゴヌクレオチドを含み、かつ下記式を有する:
5'-X-Y-3'
3'-X'-5' (II)
式中、Xは、標的核酸に非相補的なフラッププライマーの5'配列部分を表し、X'は、Xの少なくとも一部に相補的なヘルパーオリゴヌクレオチド配列を表し、およびYは、標的核酸に相補的なフラッププライマーの3'配列部分を表す。
【0072】
別の態様において、本発明は、標的核酸に相補的な配列、MGB、およびフルオロフォアを含む検出プライマーを提供する。MGBおよびフルオロフォアは、プライマーの同じ末端に(例えば、共有結合的に)付着している。MGBおよびフルオロフォアが互いに適切に近接している場合、MGBはフルオロフォアからのシグナルを消光し、すなわちMGBはフルオロフォアからのシグナルを少なくとも約40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%低下させる。MGBが2本鎖核酸(例えば、増幅標的配列)のマイナーグルーブに結合する場合、フルオロフォアは消光されず、シグナルが放出される。シグナルの検出によって、2本鎖核酸の存在が検出される。
【0073】
本発明のプライマーは通常、当業者に公知の固相法を用いて調製する。一般に、出発材料は市販されているか、または例えば、March, et al., ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY-Reactions, Mechanisms and Structures, 4th ed., John Wiley & Sons, New York,(1992)に記載されたような好適な官能基操作を用いて、市販の出発材料から直接的方法で調製することができる。
【0074】
本発明のプライマーは、当技術分野において公知のいかなる天然のヌクレオチド、非天然のヌクレオチド、または修飾ヌクレオチドも含むことができる。
【0075】
B. オリゴヌクレオチドおよび修飾オリゴヌクレオチド
オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、および核酸という用語は、修飾されたもしくは非天然のヌクレオチドを含むポリマーを含むDNAもしくはRNA(もしくは両方)の1本鎖もしくは2本鎖ポリマーを指すか、またはNielsen et al. Science 254:1497-1500(1991)によって開示されているペプチド核酸;ビシクロDNAオリゴマー(Bolli et al., Nucleic Acids Res. 24:4660-4667(1996))および関連構造を含むが、これに限定されないDNAもしくはRNAと安定な塩基対形成が可能である任意のその他の種類のポリマーを指すよう互換的に使用される。本発明のプライマーは、ポリメラーゼ酵素の存在下でプライマーが標的核酸配列の増幅を開始することができる限り、非天然ヌクレオチド塩基または修飾ヌクレオチド塩基によるオリゴマー内の1つまたは複数の天然ヌクレオチド塩基の置換を含むことができる。
【0076】
例えば、オリゴヌクレオチドプライマーはまた、天然塩基のアデニン、シトシン、グアニン、チミン、およびウラシルに加えて、1つまたは複数の修飾塩基を含んでもよい。修飾塩基は、1つもしくは複数の官能基の付加もしくは欠失、複素環式の環構造の相違(すなわち、炭素のヘテロ原子への置換、もしくはその逆)、および/または塩基への1つもしくは複数のリンカーアーム構造の付着によって、天然塩基とは異なる塩基であると考えられる。好ましい修飾ヌクレオチドは、例えば、7-デアザプリンおよびそれらの誘導体ならびにピラゾロピリミジン(例えば、国際公開公報第90/14353号、米国特許第7,045,610号、および米国特許第6,127,121号に記載)などの、ピリミジン構造またはプリン構造に基づくヌクレオチドである。
【0077】
本発明における使用のための例示的な修飾塩基(B)には、グアニン類似体6-アミノ-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4(5H)-オン(ppGまたはPPG、さらにスーパーG)およびアデニン類似体4-アミノ-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン(ppAまたはPPA)が含まれる。キサンテン類似体1H-ピラゾロ[5,4-d]ピリミジン-4(5H)-6(7H)-ジオン(ppX)を用いることもできる。オリゴヌクレオチド中に存在する場合、これらの塩基類似体はハイブリダイゼーションを強化し、および不一致(mismatch)識別を改善する。天然塩基、修飾塩基、および塩基類似体の全ての互変異性型を本発明のオリゴヌクレオチドコンジュゲートに含めてもよい。本発明において有用なその他の修飾塩基には、6-アミノ-3-プロプ-1-イニル-5-ヒドロピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-オン、PPPG;6-アミノ-3-(3-ヒドロキシプロプ-1-イニル)-5-ヒドロピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-オン、HOPPPG;6-アミノ-3-(3-アミノプロプ-1-イニル)-5-ヒドロピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-オン、NH2PPPG;4-アミノ-3-(プロプ-1-イニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン、PPPA;4-アミノ-3-(ヒドロキシプロプ-1-イニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン、HOPPPA;4-アミノ-3-(3-アミノプロプ-1-イニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン、NH2PPPA;3-プロプ-1-イニルピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミノ、(NH2)2PPPA;2-(4,6-ジアミノピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-イル)エチン-1-オール、(NH2)2PPPAOH;3-(2-アミノエチニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン、(NH2)2PPPANH2;5-プロプ-1-イニル-1,3-ジヒドロピリミジン-2,4-ジオン、PU;5-(3-ヒドロキシプロプ-1-イニル)-1,3-ジヒドロピリミジン-2,4-ジオン、HOPU;6-アミノ-5-プロプ-1-イニル-3-ジヒドロピリミジン-2-オン、PC;6-アミノ-5-(3-ヒドロキシプロプ-1-イニル)-1,3-ジヒドロピリミジン-2-オン、HOPC;および6-アミノ-5-(3-アミノプロプ-1-イニル)-1,3-ジヒドロピリミジン-2-オン、NH2PC;5-[4-アミノ-3-(3-メトキシプロプ-1-イニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジニル]-2-(ヒドロキシメチル)オキソラン-3-オール、CH3OPPPA;6-アミノ-1-[4-ヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル]-3-(3-メトキシプロプ-1-イニル)-5-ヒドロキシピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-オン、CH3OPPPG;4,(4,6-ジアミノ-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-イル)-ブタ-3-イン-1-オール、スーパーA;6-アミノ-3-(4-ヒドロキシ-ブタ-1-イニル)-1,5-ジヒドロ-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-オン;5-(4-ヒドロキシ-ブタ-1-イニル)-1H-ピリミジン-2,4-ジオン、スーパーT;3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン((NH2)2PPAI);3-ブロモ-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン((NH2)2PPABr);3-クロロ-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジアミン((NH2)2PPACl);3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イルアミン(PPAI);3-ブロモ-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イルアミン(PPABr);および3-クロロ-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イルアミン(PPACl)が含まれる。
【0078】
上述の修飾塩基(B)に加えて、本発明のオリゴヌクレオチドは、糖またはグリコシド部分(A)、好ましくは2-デオキシリボフラノシドの骨格を有してもよく、全てのヌクレオチド間結合は天然のホスホジエステル結合である。しかしながら、代わりの態様においては、2-デオキシ-β-D-リボフラノース基をその他の糖、例えば、β-D-リボフラノースに置き換える。さらには、リボース部分の2-OHがC1〜6アルキル基(2-(O-C1〜6アルキル)リボース)でもしくはC2〜6アルケニル基(2-(O-C2〜6アルケニル)リボース)でアルキル化されているか、またはフルオロ基(2-フルオロリボース)によって置き換えられている、β-D-リボフラノースが存在してもよい。本発明において有用な関連オリゴマー形成糖は、「ロックされた」、すなわち、C-4'とC-2'の酸素原子との間にメチレン架橋を含む糖である。α-D-アラビノフラノシド、α-2'-デオキシリボフラノシド、または2',3'-ジデオキシ-3'-アミノリボフラノシドを含むが、これらに限定されない、オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションに適合するその他の糖部分が用いられてもよく、当業者に公知である。米国特許第5,177,196号に記載されたように、α-D-アラビノフラノシドを含むオリゴヌクレオチドを調製することができる。2',3'-ジデオキシ-3'-アミノリボフラノシドを含むオリゴヌクレオチドは、Chen et al. Nucleic Acids Res. 23:2661-2668(1995)に記載されている。ロックされた核酸(Singh et al, Chem. Comm., 455-456(1998);Wengel J., Acc. Chem. Res., 32:301-310(1998))および2'-ハロゲン-2'-デオキシリボフラノシドを含むオリゴヌクレオチド(Palissa et al., Z. Chem., 27:216(1987))用の合成手順も記載されている。オリゴヌクレオチドがホスホロチオエート結合および/またはメチルホスホネートおよび/またはホスホロアミデートを含むように、本明細書において記載された修飾オリゴヌクレオチドのリン酸骨格を修飾することもできる(Chen et al., Nucl. Acids Res., 23;2662-2668(1995))。オリゴヌクレオチド結合の組み合わせもまた本発明の範囲内である。さらにその他の骨格修飾が当業者に公知である。オリゴヌクレオチド合成中の修飾塩基の取り込みは当業者に公知であり、反応基が保護基で適切に遮断されているシアノエチルホスホロアミダイト修飾塩基の使用を必要とする(国際公開公報第90/14353号、米国特許第7,045,610号、および米国特許第6,127,121号)。
【0079】
それらの熱力学的特性に基づいて、修飾塩基、マイナーグルーブバインダー、フルオロフォア、および/またはクエンチャーの使用または取り込みを導くことができるアルゴリズムを用いて、予測可能な方法でプローブおよびプライマーを設計することができることが、米国特許出願公開第20030224359号に記載されている。したがって、修飾核酸とハイブリダイズした産物のTmの平衡を(例えば、約5〜8℃以内に)保つために、通常の塩基、未置換ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン塩基(例えば、PPGおよびPPA)、3-置換ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン、修飾プリン、修飾ピリミジン、5-置換ピリミジン、共通塩基、糖修飾、骨格修飾、またはマイナーグルーブバインダーの任意の組み合わせの使用が、本発明によって企図されている。
【0080】
C. 蛍光発生プローブ
オーバーハングプライマーで増幅された本発明の核酸標的は、蛍光発生プローブによって適宜検出することができる。様々な蛍光に基づく検出プローブが当技術分野において公知である。
【0081】
1. ハイブリダイゼーションに基づくプローブ
5'-マイナーグルーブバインダー-クエンチャーオリゴヌクレオチド-フルオロフォア-3'プローブ(国際公開公報第03/062445号およびAfonina et al., Biotechniques 32;940-949(2002))、5'-マイナーグルーブバインダー-フルオロフォア-オリゴヌクレオチド-クエンチャー-3'プローブ(米国特許出願第10/976,365号)、分子ビーコン(米国特許第5,118,801号)、およびPNA分子ビーコン(国際公開公報第99/22018号)は、ハイブリダイゼーションに基づく蛍光発生によって増幅核酸標的を検出する。好ましいMGBリガンドは、ジヒドロピロロインドールトリペプチド(DPI3)である。マイナーグルーブバインダー技術は米国特許第5,801,155号;同第6,312,894号;および同第6,492,346号に開示され、ならびにEclipseダーククエンチャーの技術は米国特許第6,727,356号および同第6,790,945号に開示されている。異なるオリゴヌクレオチドコンジュゲートの構築はリンカー分子の使用を必要とする。好ましいリンカー分子は、米国特許第5,419,966号および同第5,512,667号に開示されている。マイナーグルーブバインダー技術は米国特許第5,801,155号;同第6,312,894号;および同第6,492,346号に開示され、ならびにEclipseダーククエンチャーの技術は米国特許第6,727,356号および同第6,790,945号に開示されている。この段落に列挙された参照の各々の開示は、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0082】
2. 切断プローブ
蛍光を放出するために、ポリメラーゼの5'ヌクレアーゼ活性によって、3'-マイナーグルーブバインダー-クエンチャー-オリゴヌクレオチド-フルオロフォア-5'プローブ(Kutyavin et al, Nucl. Acids Res., 28:655-661(2000))を切断する。国際公開公報第04/018626号は、クエンチャー-オリゴヌクレオチド-フルオロフォアプローブのエンドヌクレアーゼIV切断による増幅標的の検出を開示する。
【0083】
3. DNA結合薬剤
核酸結合試薬による増幅核酸検出のためのホモジニアス法が開示されている(米国特許第5,994,056号、米国特許第6,171,785号、およびBengtsson et al. Nucl. Acids Res., 31:e45(2003))。DNA結合薬剤であるSYBR(登録商標)グリーンIは、増幅をモニターするために用いられている(米国特許第6,569,627号)。
【0084】
III. フラッププライマーを用いた増幅
本発明の方法は、本発明のフラッププライマーを用いたプライマーに基づく増幅を実行する工程を含む。一般に、本発明のフラッププライマーは、プライマーに基づく増幅において増幅反応条件を全くまたはほとんど変化させずに、同じヌクレオチド配列を含む通常のプライマーの代替となることができる。幾つかの態様において、フラッププライマーの相補配列部分は、対応する非フラッププライマーの相補配列部分よりも短いものであってもよい。反応条件の慣例的な小さな再最適化が、或る増幅反応において有益であり得るということを、当業者は認識すると考えられる。
【0085】
好ましい態様においては、PCRと共に本発明のフラッププライマーを用いる。しかしながら、本発明は、いかなる特定の増幅系、例えば、逆転写酵素にも制限されない。上で記載されかつ下の実施例で例証されたような異なる増幅方法でフラッププライマーを用いることができる。
【0086】
本発明は、非特異的増幅を低下させる方法と適合する。例えば、本発明のプライマーを可逆的に遮断してもよく(米国特許第6,509,157号)、かつ可逆的に不活性化した酵素と共に用いてもよく(米国特許第5,677,152号および米国特許第5,773,258号)、かつ可逆的に不活性化したポリメラーゼ酵素は市販されている。
【0087】
本発明のプライマーは、オリゴヌクレオチドの別の核酸へのハイブリダイゼーションが関わるその他の技術において有用である。これらには、オリゴヌクレオチドの標的核酸へのハイブリダイゼーションが終点である技術;1つまたは複数のオリゴヌクレオチドの標的核酸へのハイブリダイゼーションが、オリゴヌクレオチドをプライマーとしておよび標的核酸を鋳型として用いる1つまたは複数のポリメラーゼを介する伸長段階より先に起こる技術;オリゴヌクレオチドの標的核酸へのハイブリダイゼーションが別のプライマーの伸長を遮断するのに用いられる技術;ならびに2つまたはそれより多くのオリゴヌクレオチドが標的核酸にハイブリダイズし、および複数のオリゴヌクレオチド間の相互作用が測定される技術が含まれるが、これらに限定されない。オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションのための条件、ならびに温度、イオン強度、および溶媒組成などの、ハイブリダイゼーションの程度および特異性の決定は、当業者に周知である。例えば、Sambrook et al., 前記;Ausubel, et al., 前記;M. A. Innis et al.(eds.)PCR Protocols, Academic Press, San Diego, 1990;B. D. Hames et al.(eds.)Nucleic Acid Hybridisation:A Practical Approach, IRL Press, Oxford, 1985;およびvan Ness et al.(1991)Nucleic Acids Res. 19:5143-5151を参照されたい。また別の方法において、代わりの標的部位領域を検出するために(例えば、難しい配列を同定するためにまたは標的の種および亜種を区別するために)、複数のプローブを用いることができる。
【0088】
アデニンがチミンまたはウラシルと塩基対を成し、およびグアニンがシトシンと塩基対を形成するように、周知でかつ当技術分野において認識されている塩基対形成特性に従って、プライマーまたはオリゴヌクレオチドプローブの標的配列へのハイブリダイゼーションが先に起こる。ヌクレオチドが第2のヌクレオチドと塩基対を形成することを可能にするヌクレオチドの特性を相補性と呼ぶ。したがって、アデニンはチミンおよびウラシルの両方と相補的で、かつ逆もまた同じであり;同様に、グアニンはシトシンと相補的で、かつ逆もまた同じである。その全長に沿って標的配列と相補的であるオリゴヌクレオチドは、標的配列と完璧に相補的であるか、完璧に一致するか、または完全に相補的であると言われ、かつ逆もまた同じである。オリゴヌクレオチドおよびその標的配列は、2つの配列中の大部分の塩基は相補的であるが、1つまたは複数の塩基が非相補的または不一致である、関連配列を有してもよい。そのような場合、配列は互いに実質的に相補的であると言うことができる。オリゴヌクレオチドおよび標的の配列が、1つを除く全ての位置でそれらが相補的であるようなものである場合、オリゴヌクレオチドおよび標的の配列は互いに対して単一ヌクレオチド不一致を有する。本発明の目的にとって、完全に相補的および実質的に相補的な配列は相補的であるとみなされる。
【0089】
修飾塩基を取り込んでいるプライマーおよびオリゴヌクレオチドプローブについて、修飾塩基はそれらの天然の類似体の塩基対形成特異性を保持すると理解される。例えば、PPPA類似体がチミンおよびウラシルに相補的である一方、PPPG類似体はシトシンに相補的である。PPPGおよびPPPA類似体は、グアニンおよびアデニンと比較して、非相補的な塩基とのいわゆる「ゆらぎ」対形成の低下した傾向を有するだけでなく、3-置換基によって2重鎖における結合親和性も増加する。同様に、修飾ピリミジンは、それらの天然のカウンターパートナーに特異的にハイブリダイズする。
【0090】
ハイブリダイゼーションのための条件は当業者に周知であり、および比較的広い範囲内で変わることができる。ハイブリダイゼーションストリンジェンシーとは、ハイブリダイゼーション条件が、不一致のヌクレオチドを含むハイブリッドの形成に不利に働き、それによって完璧に一致したハイブリッドまたはより少ない不一致を含むハイブリッドの形成を促進する程度を指し;より高いストリンジェンシーは、不一致のハイブリッドに対するより低い寛容性と相関する。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響を及ぼす因子には、温度、pH、イオン強度、ホルムアミドおよびジメチルスルホキシドなどの有機溶媒ならびにカオトロープの濃度が含まれるが、これらに限定されない。
【0091】
ハイブリダイゼーション強度としても公知の、オリゴヌクレオチドの標的配列へのハイブリダイゼーションの程度は、当技術分野において周知である方法によって決定する。好ましい方法は、ハイブリッド2重鎖のTmを決定することである。これは、溶液中の2重鎖を、徐々に増加する温度に供し、かつ例えば、変性に付随する塩基対のアンスタッキングと共に増加する紫外線の吸収によって、2重鎖の変性をモニターすることによって遂行する。Tmは通常、変性に付随する紫外線吸収の推移の温度中間点と定義される。あるいは、(固定されたイオン強度、pH、および溶媒濃度における)ハイブリダイゼーション温度は、Tmが公知である場合、所望の2重鎖のTmを下回り、かつ非所望の2重鎖のTmを上回るように、選ぶことができる。この場合、ハイブリダイゼーションの程度の決定は、単にハイブリダイズしたプローブの存在を検査することによって遂行される。
【0092】
幾つかの態様において、本発明のプライマーおよびプライマーのハイブリダイゼーションの程度は、プライマーの伸長産物のレベルを測定することによって決定することもできる。この態様においては、プライマーが標識されうるか、または重合のための前駆体(通例、ヌクレオシド3リン酸)の1つもしくは複数が標識されうるかのいずれかである。例えば、サイズによって(例えば、ゲル電気泳動)、リアルタイムPCRと同様のハイブリダイゼーションプローブによる親和性法によって、または当業者に公知の任意のその他の技術によって、伸長産物を検出することができる。
【0093】
マイクロRNA配列の増幅
1つの態様においては、本発明の方法と同時に、生物の公知のmiRNAまたは生物のmiRNAのサブセットを決定する。好ましい態様において、miRNAは、例えば、96、192、384、768、または1536ウェルのプレートを用いた、マイクロタイタープレートフォーマットで解析する。多くの生物についてのマイクロRNA配列は、miRNAレジストリに掲載され、かつ定期的に改訂され、sanger.ac.uk/Software/Rfam/mirna/help/summary.shtmlのワールドワイドウェブ上で入手可能である。このデータベースは現在、数多くの生物由来のmiRNAを掲載しており、表1に例示する。
【0094】
(表1)2006年6月5日のmiRNAレジストリに掲載されている公知の生物およびmiRNAの数のリスト

【0095】
1つの態様においては、本発明のプライマーおよび方法を用いて、同時にまたは連続的に、1つまたは複数の生物由来の1つまたは複数のmiRNA配列を増幅し、測定し、および検出する。
【0096】
実施例
実施例1
この実施例は、(標的配列に非相補的な)フラップ配列の両方のプライマーへの付着によって、増幅効率が実質的に改善されることを例証する。増幅効率は、フラップ配列長が12塩基まで増加するにつれて改善する。12塩基対よりも長い配列では、ほとんどまたは全く改善が観察されなかった。両方のプライマー中のフラップ配列は、1つのプライマーのみがフラップ配列を含むプライマー対よりも好ましいということも示された。
【0097】
材料および方法
1.1 オリゴヌクレオチド
標準的なホスホロアミダイト化学を用いてPCRプライマーを合成した。全ての目的のためにその全体が参照によって本明細書に組み入れられる米国特許出願第10/227,001号に記載されたような、5'→3'方向でのオリゴヌクレオチドセグメントの合成のために設計された5'-β-シアノエチルホスホロアミダイト(Glen Research, VA)を用いてマイナーグルーブバインダーで修飾したポリスチレン支持体上で自動DNA合成によって、MGB-FL-5'-ODN-Qプローブを調製した。オリゴヌクレオチド合成は、0.02Mヨード溶液を用いて、製造元によって供給されたプロトコルに従ってABI3900シンセサイザーで実施した。修飾塩基ホスホロアミダイトは、以前に開示された方法に基づいて合成した(国際公開公報第03/022859号および第01/64958号)。MGB Eclipseプローブは、以前に記載されたように合成した(Afonina et al, Biotechniques, 32, 940-949(2002))。6-カルボキシフルオレセイン(FAM)、Yakima Yellow(商標)レポーティング色素は、対応するホスホロアミダイト(Glen Research, Sterling, VA)を用いたMGB Eclipseプローブ合成の最終段階で導入した。米国特許出願第01/227,001号に記載されたフルオレセインホスホロアミダイトを用いた。オリゴヌクレオチドは全て、逆相HPLCで精製した。実施例1で用いたオリゴヌクレオチドの配列を表1に示す。
【0098】
(表2)プライマーおよびプローブ配列

MGBリガンドはDPI3である。QはEclipseダーククエンチャーである。G*はPPGであり;A*はスーパーAである。Fはフラップを指し、およびそれに続く数字はフラップ配列の長さを示す。太字の下線が付された配列はフラップ配列を示す。FAMはフルオレセインである。
【0099】
1.2 Tm予測
プローブおよびプライマーを設計するために、MGB Eclipse(商標)設計ソフトウェア(Epoch Biosciences, Bothell, WA)を用いた。本ソフトウェアの特色の1つは、G:G自己会合のために不良な検出プローブであることが公知であり、かつPPGによるGの適切な置換を示す、3個より多くの連続するGを含むプライマーまたはプローブを設計することができることである。さらに、本ソフトウェアは現在、2重鎖安定性を改善するために、ATリッチ配列にスーパーAおよびスーパーT修飾塩基を取り込むプローブを設計することができる。
【0100】
1.3 リアルタイムPCR
いずれもABI Prism(登録商標)7900装置(Applied Biosystems, Foster City, CA)でリアルタイムPCRを行なった。50℃で2分間および95℃で2分間の後、40サイクルの3段階PCR(95℃で5秒間、56℃で20秒間、および76℃で20秒間)を実施した。反応には、1×PCR緩衝剤(20mM Tris-HCl pH 8.7、40mM NaCl、5mM MgCl2)を含む15μL反応中に0.2μM MGB-FL-ODN-QまたはMGB Eclipse(商標)プローブ、100nMのプローブと同じ鎖に相補的なプライマー、1μM 反対鎖プライマー、125μM dATP、125μM dCTP、125μM TTP、250μM dUTP、0.25UジャンプスタートDNAポリメラーゼ(Sigma)、0.15UのAmpEraseウラシルN-グシコシラーゼ(Applied Biosystems)が含まれた。反応のアニーリング期の間に蛍光シグナルの増加を記録した。
【0101】
1.4 プライマーにおけるフラップ長の増幅効率に対する影響
図2は、フラップ長の増幅効率に対する影響を示す。MGB Eclipseプローブおよびプレイアデスプローブによる増幅標的の検出を、それぞれ図2 a)およびb)に示す。示された通り、プローブ種類とは無関係に、12-merフラップを有するプライマー対によって最大のシグナルが産生された。
【0102】
1.5 片方または両方のプライマーにおけるフラップの存在の増幅シグナルに対する影響
図3 a)およびb)は、12-merフラップを有するプライマー対が、1つのプライマーのみが12-merフラップを含む増幅よりも良い増幅シグナルを提供することを示す。増幅標的は、図3a)および3b)におけるMGB Eclipseプローブ(MGB-Q-ODN-FL)およびプレイアデスプローブ(MGB-FL-ODN-Q)でそれぞれ検出する。
【0103】
実施例2
この実施例は、両方のプライマーに12-merフラップを含むプライマーによる増幅が、1つのプライマーのみにおけるフラップによる増幅よりも効率的であることを例証する。
【0104】
PCR増幅は、実施例1に記載した通りに実施する。増幅標的は、MGB-Q-ODN-FL(MGB Eclipseプローブ)またはMGB-FL-ODN-Q(MGBプレイアデスプローブ)のいずれかによって検出する。MGB Eclipseおよびプレイアデスアッセイについて示したプライマー、プローブ、および増幅標的配列を表3に示す。
【0105】
(表3)プライマーおよびプローブ配列

MGBリガンドはDPI3である。QはEclipseダーククエンチャーである。G*はPPGであり;A*はスーパーAである。Fはフラップを指し、およびそれに続く数字はフラップ配列の長さを示す。FAMはフルオレセインである。プライマーは、下線が付されたフラップ配列と共に太字の小文字で示されている。プローブ配列は、イタリック体の大文字で示されている。プローブは、センスプライマーと1塩基重複する。プレイアデスプローブは、センスプライマーと1塩基重複する。
【0106】
図4に示したように、2つの12塩基フラップを有するプライマー対(5F-12/6F-12)は、1つの5F-12/6を有するまたはフラップが存在しない(5/6)プライマー対に対して改善されたリアルタイム増幅を示した。
【0107】
実施例3
この実施例は、両方のプライマーに12-merフラップを含むプライマーによる増幅が、1つのプライマーのみにおけるフラップによる増幅よりも効率的であることをさらに例証する。
【0108】
PCR増幅は、実施例1に記載した通りに実施する。増幅標的は、MGB-Q-ODN-FL(MGB Eclipseプローブ)またはMGB-FL-ODN-Q(プレイアデスプローブ)コンジュゲートのいずれかによって検出する。プライマー、プローブ、および増幅標的配列を表4に示す。
【0109】
(表4)プライマーおよびプローブ配列

MGBリガンドはDPI3である。QはEclipseダーククエンチャーである。G*はPPGであり;A*はスーパーAである。Fはフラップを指し、およびそれに続く数字はフラップ配列の長さを示す。プライマーは、下線が付されたフラップ配列と共に太字の小文字で示されている。FAMはフルオレセインである。
【0110】
図5に示したように、2つの12塩基フラップを有するプライマー対(9F-12/10F-12)は、1つの9F-12/10、9/10F-12を有するまたはフラップが存在しない(9/10)プライマー対に対して改善されたリアルタイム増幅を示した。
【0111】
実施例4
この実施例は、RT-PCRでフラッププライマーによって観察された改善を例示する。それはまた、修飾塩基およびフラッププライマーの増幅を改善する能力を例証する。
【0112】
QIAGEN(Valencia, CA)ワンステップRT-PCRキットを用いて、反応当たり異なる量のヒトパラインフルエンザRNA(105〜100コピー)で、1チューブ反応を実施した。本発明者らは、些細な例外はあるが、製造元によって勧められたプロトコルに従った。推奨された1.0μMの各遺伝子特異的プライマーの代わりに、プレイアデスプローブを0.2μMの最終濃度まで添加し、リアルタイム検出を可能にした。RNアーゼ阻害剤(Ambion, Austin, Texas)を反応当たり15ユニットで用いた。サーマルサイクラー条件は推奨された範囲内であり、ならびに逆転写について60℃で30分間、最初のPCR活性化段階について95℃で15分間、および変性(95℃で50秒間)、アニーリング(56℃で20秒間)、伸長(76℃で20秒間)という3段階を50サイクル含んだ。PCRのアニーリング段階で蛍光読み取りを取得した。
【0113】
プライマー、プローブ、および標的アンプリコン配列を表5に示す。
【0114】
(表5)プライマーおよびプローブ配列

ヒトパラインフルエンザRNAアンプリコン(82bp;13/17プライマー)

MGBリガンドはDPI3である。QはEclipseダーククエンチャーである。G*はPPGである。A*はスーパーAである。Fはフラップを指し、およびそれに続く数字はフラップ配列の長さを示す。太字の下線が付された配列はフラップ配列を示す。FAMはフルオレセインである。
【0115】
64.0℃および69.0℃という算出されたTmを有する非フラッププライマー対(13/17)はそれぞれ、6 logの滴定曲線を示した(図6a)およびb))。プライマー13および17をそれぞれ、8および15塩基短縮し、かつ12塩基フラップをこれらの短縮プライマーの各々に付加した。結果として生じるプローブ14F-12およびプローブ18F-12のTmは、図6c)に示したように、63.7および65.0℃であり、シグナルは、図6a)に示した非フラッププライマーよりも約25%高い。図6d)は、これらの2つのフラッププライマーによる6 log滴定曲線をさらに示す。これらの2つのフラッププライマーにおける1つまたは2つのAをスーパーAと置換した場合、 結果として生じる16F-12および19F-12プライマー対はそれぞれ、63.7および65.0℃ Tmを示した。このプライマー対は増幅シグナルを増加させ、図6e)およびf)に示したような7 logを超える増幅標的を検出した。
【0116】
実施例5
この実施例は、フラッププライマーが、遺伝子発現アッセイで用いられるシングルプレックス(singleplex)およびバイプレックス(biplex)アッセイの両方における増幅検出を改善できることを例証する。この場合、β-2-ミクログロブリン(B2MG)をハウスキーピング遺伝子として用い、および関心対象の遺伝子(GI)である、ヒト(Homo sapiens)マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ3(MAP2K3)遺伝子とバイプレックス形成させた。
【0117】
B2MGおよびGIのプライマーおよびプローブ配列を表6に示す。B2MG増幅のためのプライマー濃度が、余剰プライマー(excess primer)については1μM、および制限プライマー(limiting primer)については0.040μMであることを除いては、実施例1に記載された通りに、PCRを実施した。
【0118】
(表6)バイプレックス増幅のプライマーおよびプローブ配列

【0119】
図7a)で示したように、B2MGのシングルプレックス増幅における12塩基フラップの導入は改善された増幅を示す。同様に、関心対象のGIのシングルプレックス増幅は、フラッププライマーの導入によって利益を得た(図7b))。図7c)およびd)の比較により、B2MGおよびGIの増幅がバイプレックス形成した場合でも、フラッププライマーによって改善された増幅が見られるということが示されている。
【0120】
実施例6
この実施例は、フラッププライマーによる短い標的の増幅および特にmiRNA hsa-miR-139標的のDNAまたはcDNAの増幅を例証する。このmiRNAは18塩基長である。プライマー、プローブ、およびmiRNA配列を表7に示す。
【0121】
(表7)hsa-miR-139 DNA標的の検出に用いられるプライマーおよび標的配列

【0122】
製造元のプロトコルを用いて、増幅標的をSybrグリーン(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)で検出するという違いのみを伴い、1×107コピーという標的濃度で、実施例1に記載した通りに、リアルタイムPCRを実施した。10%の温度勾配ランプ速度で、製造元の取扱説明書に従って、ABI Prism(登録商標)装置で増幅後融解曲線解析を実施した。
【0123】
データは示さないが、プライマー対22/24によるまたはプライマー対23/24においてスーパーAおよびTで修飾された場合の18-mer miRNA標的の増幅および検出は観察されなかった。プライマー対22F-12/24F-12は、融解曲線解析で確認される増幅を示し(図8a))、期待されたTmを有する融解曲線が観察されている図8b)で示したデータは、プライマー対(23/25)による増幅ではあるが、融解曲線解析で産物を示さなかった。鋳型なしの対照は、約44サイクルというCtを有する何らかの増幅シグナルを示した。1×107コピーよりも低い濃度を解析した場合、NTCのその増幅は少なく、および典型的に解析されるサイクルの数である、40サイクルよりも大きいCtを有すると予想される。
【0124】
実施例7
この実施例は、フラッププライマーをRTプライマーとして用い、およびDPI2またはDPI3マイナーグルーブバインダーのいずれかに共有結合的に付着したプライマーを増幅プライマー(すなわち、PCRプライマー)として用いて、hsa-miR-142-3P標的をさらに増幅および検出する、図9に示した方法を用いた標的核酸の増幅を示す。
【0125】
(表8)hsa-miR-142-3P RNA標的

の検出に用いられるプライマー、プローブ、および標的配列
非相補的配列には下線が付されている。

【0126】
逆転写
TAKARA BIOからのCLONTECHアドバンテージRT-for-PCRキットを用いて逆転写を実施した。各反応は20μLの最終容量を有し、および以下のものを最終濃度で含んだ:50mM Tris-HCl pH 8.3、75mM KCl、3mM MgCl2、dNTP Mix 各0.5mM、RNアーゼ阻害剤 1ユニット/μL、MMLV逆転写酵素 ≧200ユニット/μg RNA、50nm RTプライマー、および適切な濃度の合成RNA鋳型 1μL。反応混合物を0.2μLの壁の薄いPCRチューブ中に置き、その後MJリサーチPTC-200サーマルサイクラーの中に置いた。試料を16℃で30分間、その後42℃で30分間、その後94℃で5分間、保持した。
【0127】
リアルタイムPCR
ABI Prism(登録商標)リアルタイム(Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いてリアルタイムPCRを行なった。試料を95℃で2分間保持し、続いて40サイクルの3段階PCR(95℃で5秒間、56℃で20秒間、および76℃で20秒間)を実施した。その後、試料は、95℃で15秒間、35℃で15秒間、その後90℃で15秒間という融解プロファイルを経た。反応は、以下のものを最終濃度で含む、SNP用のMGB Eclipse(商標)PCR試薬キット(Nanogen, Bothell, WA)を用いて準備した:20mM Tris-HCl pH 8.7、40mM NaCl、2.5mM MgCl2、0.5Mベタイン、0.25mM dUTP、0.125mM dATP、0.125mM dCTP、0.125mM dGTP、およびジャンプスタートTaqポリメラーゼ 0.075ユニット/μL。
【0128】
図10に示したように、DPI2およびDPI3共役プライマーの両方が、hsa-miR-142-3P RNA標的の検出において満足に機能する。図10は、a)5'末端に付着したDPI2部分を含む限定プライマー#1およびb)5'末端に付着したDPI3部分を含む限定プライマー#2による合成hsa-miR-142-3P標的の滴定のリアルタイム増幅を示す。
【0129】
実施例8
この実施例は、フラッププライマーおよびヘルパープライマーを含むプライマー複合体をRTプライマーとして用いて標的核酸を増幅し、ならびにいずれかのDPI3マイナーグルーブバインダーに共有結合的に付着したプライマーを増幅プライマー(すなわち、PCRプライマー)として用いてさらに増幅および検出し、hsa-miR-142-3P標的を検出する、図9に示した方法を用いた標的核酸の増幅を示す。ヘルパーオリゴヌクレオチドの配列を表9に示す。
【0130】
(表9)hsa-miR-142-3P RNA標的

の検出に用いられるヘルパー配列
A*はスーパーAであり、T*はスーパーTである。

【0131】
上の実施例7で示した反応条件を以下の改変を伴って用いた:ヘルパーオリゴヌクレオチドを100nMの最終濃度でRT反応混合物に添加する。図11に示したように、5'末端に付着したDPI3部分を含む限定プライマー#1による合成hsa-miR-142-3P標的を増幅する。図11Aは、RTプライマー4を用いた合成hsa-miR-142-3P標的のリアルタイム増幅からの結果を示し、および図11Bは、RTプライマー4aを用いた合成hsa-miR-142-3P標的のリアルタイム増幅からの結果を示す。
【0132】
実施例9
この実施例は、フラッププライマーおよびヘルパーオリゴヌクレオチドを含むプライマー複合体をRTプライマーとして用い、ならびに2つのフラッププライマーを増幅プライマー(すなわち、PCRプライマー)として用いて、ヘルパーオリゴヌクレオチドの存在下で、hsa-miR-142-3P標的をさらに増幅および検出する、図12に示した方法を用いた標的核酸配列の増幅を示す。RTおよび増幅(すなわち、PCR)反応を実行するための反応条件は、上の実施例7および8に記載した通りであった。プライマー、プローブ、ヘルパー、および標的配列を表10に示す。
【0133】
(表10)hsa-miR-142-3P標的

の検出に用いられるプライマー、プローブ、ヘルパー、および標的配列
A*はスーパーAであり、T*はスーパーTである。非相補的配列には下線が付されている。

【0134】
図13は、hsa-miR-142-3P標的の滴定曲線(5倍希釈)を示す。
【0135】
実施例10
この実施例は、アニールしたヘルパーオリゴヌクレオチドを含むフラッププライマーをRTプライマーとして用いる、図12に示した方法を用いた標的配列(すなわち、hsa-miR-142-3P)の増幅を示す。反応条件は、上の実施例7および8に記載した通りであった。限定プライマー配列を表11に示す。
【0136】
(表11)hsa-miR-142-3Pアッセイの限定プライム配列

【0137】
図14は、hsa-miR-142-3P標的のリアルタイム増幅および検出を示す。逆転写はHL-60トータルRNAで実施した(Strategene, La Jolla, CA)。リアルタイムPCRは、限定プライマー7を限定プライマー8と置換したことを除き、実施例9と同様に実施した。
【0138】
実施例11
この実施例は、アニールしたヘルパーオリゴヌクレオチドを含むフラッププライマーをRTプライマーおよび標的核酸のリアルタイム検出として用いる、図12に示した方法を用いた標的配列(すなわち、合成miRNA-16-1前駆体分子)の増幅を示す。RTおよびPCR反応用の反応条件は、オリゴヌクレオチド9、10、11、6、および2の濃度がそれぞれ、250、1500、50、100、および200nmであることを除き、上の実施例7および8に記載した通りであった。プライマー、プローブ、ヘルパー、および標的配列を表12に示す。
【0139】
(表12)hsa-miR-16-1 DNA標的

の検出に用いられるプライマー、プローブ、および標的配列
A*はスーパーAである。T*はスーパーTである。プライマーは、下線が付されたフラップ配列と共に示す。

【0140】
図15は、hsa-miR-16-1前駆体標的の検出を示す。下の図16に示したように、前駆体miRNAは、鋳型なしの対照と区別することができる。
【0141】
実施例12
この実施例は、a)成熟hsa-miRNA-16およびb)hsa-miR-16-1前駆体分子由来のhsa-miR-16成熟配列のリアルタイム増幅を示す。RTおよびPCR反応用の反応条件は、オリゴヌクレオチド13、14、15、6、および16の濃度がそれぞれ、1500、250、50、100、および200nmであることを除き、上の実施例7および8に記載した通りであった。プライマー、プローブ、ヘルパー、および標的配列を表13に示す。
【0142】
(表13)hsa-miR-16標的.t

の検出に用いられるプライマー、プローブ、および標的配列
A*はスーパーAである。G*はスーパーGである。プライマーは、下線が付されたフラップ配列と共に示す。

【0143】
図16Aは、プライマー#15を用いたa)成熟hsa-miR-16およびb)hsa-miR-16-1前駆体分子由来のhsa-miR-16成熟配列のリアルタイム増幅からの結果を示す。図16Bは、プライマー#15aを用いたa)成熟hsa-miR-16およびb)hsa-miR-16-1前駆体分子由来のhsa-miR-16成熟配列のリアルタイム増幅からの結果を示す。図16に示したように、本アッセイを用いて前駆体分子と成熟標的配列を分別することができる。
【0144】
実施例13
この実施例は、let-7a特異的リアルタイム増幅アッセイがlet-7a、b、c、d、e合成miRNA鋳型を識別することができることを示す。RTおよびPCR反応用の反応条件は、オリゴヌクレオチド17、18、19、および20の濃度がそれぞれ、1500、2500、50、および200nmであることを除き、上の実施例7および8に記載した通りであった。let-7aについてのプライマー、プローブ、および標的配列を表14に示す。
【0145】
(表14)

【0146】
let-7aアッセイが密接に関連するlet-7b、c、d、およびe合成鋳型を識別することができることを表15に例証する。
【0147】
(表15)let-7a、b、c、d、およびe合成鋳型を用いたlet-7aアッセイについてのCtおよびΔCt

ΔCtは、示されたmiRNA標的間のCtの差である。
【0148】
実施例14
この実施例は、融解曲線解析による密接に関連するlet-7aおよびlet-7dの分別を示す。RTプライマー19を以下の配列

を有するRTプライマーと置換することを除いて、実施例7のアッセイ条件を用い、およびハイブリダイゼーションに基づくアッセイによる融解曲線解析によって標的を1つまたは複数の不一致と区別する方法は、その全体が参照により本明細書に明示的に組み入れられる米国特許出願公開第20030175728号に開示された方法であった。増幅を実施しならびに合成let-7aおよびlet-d標的についての融解曲線を作成するために、let-7aアッセイ試薬を上の実施例13に記載された通りに用いた。let7aおよびlet-7dの配列を下に示す。

let-7aに対するlet-7dの2つの不一致(太字)および1塩基欠失は、図17に図解した融解曲線によって反映されるようなより低い安定性のlet-7aプローブとのハイブリッドを結果的にもたらす。let-7aおよびlet-7dアンプリコン鋳型の融解曲線は、let-7aプローブでプロービングした。
【0149】
実施例15
この実施例は、MGB-Fl-オリゴヌクレオチドプライマープライマーによるmiRNA標的の増幅および検出を示す。RTおよびPCR反応用の反応条件は、上の、実施例7および8に記載した通りであった。プライマー、プローブ、および標的配列を表16に示す。
【0150】
(表16)hsa-miR-16 RNA標的

の検出に用いられるプライマーおよびプローブ配列

【0151】
図20は、2.3×107〜23コピーの検出を伴うhsa-miR-16標的の滴定曲線(10倍希釈)を示す。
【0152】
実施例16
この実施例は、18S RNA内部対照アッセイ用のプライマーおよびプローブと共にhsa-miR-16およびhsa-miR-21アッセイ用のプライマーおよびプローブのバイプレックスを示す。
【0153】
hsa-miR-16およびhsa-miR-21についてのプライマー、プローブ、ヘルパー、および標的配列をそれぞれ表17および表18に示す。18S rRNAアッセイ用のプライマーおよびプローブは表17に含まれている。miR-16およびmiR-21の濃度は、HL-60トータルRNA中の18S rRNA濃度に関して決定した。
【0154】
RTおよびPCR反応についての反応条件は、オリゴヌクレオチド26、35、32、および6のRT反応の濃度がそれぞれ、50、50、1500、および100nmであることを除き、上の実施例7および8に記載した通りであった。PCR反応において、オリゴヌクレオチド24、25、29、および30の濃度はそれぞれ、250、1500、60、および600nMであった。
【0155】
(表17)hsa-miR-16標的

および18sRNA標的の検出に用いられるプライマー、プローブ、および標的配列
A*はスーパーAである。T*はスーパーTである。G*はスーパーGである。プライマーは、下線が付された非相補的配列と共に示す。

【0156】
(表18)hsa-miR-21

および18S rRNA標的の検出に用いられるプライマー、プローブ、ヘルパー、および標的配列
A*はスーパーAである。T*はスーパーTである。プライマーは、下線が付された非相補的配列と共に示す。

【0157】
それぞれ、図22a)および図22b)に示した、HL-60トータルRNA中の18S rRNAに関して、miR-16およびmiR-21標的の濃度を決定した。これら2つの図に示したように、バイプレックスアッセイ曲線は非常に類似し、効率的なバイプレックス形成を示している。miR-16/18S rRNAのCt比は約1.7であり、およびmiR-21/18S rRNAについてのCt比は約1.9である。これらの実験に基づき、HL-60トータルRNA中のmiR-16およびmiR-21濃度は類似していると思われる。
【0158】
本明細書において記載された実施例および態様は例証目的のみのためであるということ、ならびにそれを考慮に入れた様々な改変または変更が当業者に提案され、かつ本出願および付随する特許請求の範囲内の精神および範囲に含まれるべきであると考えられるということが理解される。本明細書において引用された全ての刊行物、特許、および特許出願は、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】オーバーハングプライマーによる核酸標的の図式的増幅。Xは標的非相補的な配列部分であり、およびYは標的相補的な配列である。
【図2】a)MGB Eclipseプローブで検出される、増幅シグナルに対するフラッププライマー配列長の影響。b)プレイアデスプローブで検出される、増幅シグナルに対するフラッププライマー配列長の影響。Fはフラップを表し、およびその後に続く数はフラップ配列の長さを示す。MGBは、DPI3リガンドである。
【図3】a)MGB Eclipseプローブで検出される単一のまたは両方のプライマーにおける増幅に対するフラップ配列の存在の影響の比較。b)プレイアデスプローブで検出される単一のまたは両方のプライマーにおける増幅に対するフラップ配列の存在の影響の比較。
【図4】a)通常のプライマーおよび/またはフラッププライマーを用いたMGB EclipseリアルタイムPCRアッセイ。b)通常のプライマーおよび/またはフラッププライマーを用いたプレイアデスリアルタイムPCRアッセイ。アンプリコン標的、プライマー、およびプローブの配列を表3に示す。
【図5】a)通常のプライマーおよび/またはフラッププライマーを用いたMGB EclipseリアルタイムPCRアッセイ。b)通常のプライマーおよび/またはフラッププライマーを用いたプレイアデスリアルタイムPCRアッセイ。アンプリコン標的、プライマー、およびプローブの配列を表4に示す。
【図6】異なるプライマー対によるヒトパラインフルエンザウイルス(1×105〜1×100コピーのウイルスRNA)のMGB Eclipse RT-PCR増幅滴定。プライマー対13/17、14F-12/18F-12、および16F-12/19F-12のリアルタイム曲線をそれぞれa)、c)、およびe)に示す。対応する線形滴定曲線をb)、d)、およびf)に示す。プライマー、プローブ、およびアンプリコン配列を表5に示す。Fはフラップを表し、およびその後に続く数はフラップ配列の長さを示す。
【図7】a)通常のプライマーおよびフラッププライマーによるB2MGのシングルプレックス増幅。b)通常のプライマーおよびフラッププライマーによるGIのシングルプレックス増幅。c)フラッププライマーによらないB2MGおよびGIのバイプレックス増幅。d)フラッププライマーによるB2MGおよびGIのバイプレックス増幅。
【図8】a)SYBRグリーン検出によるhsa-miR-139 DNA標的のリアルタイム増幅検出。b)増幅標的の融解曲線解析。
【図9】1つのMGB含有プライマーを含む、3つの異なるプライマーを用いた逆転写およびPCR増幅を図解する。
【図10】a)5'末端に付着したDPI2部分を含むプライマー限定プライマー#1およびb)5'末端に付着したDPI3部分を含む限定プライマー#2による合成hsa-miR-142-3P標的の滴定のリアルタイム増幅。
【図11】5'末端に付着したDPI3部分を含む限定プライマー#1によるおよびヘルパーxの存在下における合成hsa-miR-142-3P標的の滴定のリアルタイム増幅を示す。図11Aは、RTプライマー4を用いた合成hsa-miR-142-3P標的のリアルタイム増幅からの結果を示し、および図11Bは、RTプライマー4aを用いた合成hsa-miR-142-3P標的のリアルタイム増幅からの結果を示す。
【図12】1つのMGB含有プライマーを含む、3つの異なるプライマーを用いた短いRNA標的の逆転写酵素およびPCR増幅を図解する。
【図13】hsa-miR-142-3P標的のリアルタイム増幅を示す。HL-60トータルRNA(Strategene, La Jolla, CA)によって実施された逆転写。4つの5倍希釈のcDNAはリアルタイムPCR増幅を受けた。限定プライマーオリゴヌクレオチド7は、5'末端に12bpの非相補的配列を含む。
【図14】hsa-miR-142-3P標的の検出を示す。
【図15】合成hsa-miR-16-1前駆体分子のリアルタイム増幅を示す。
【図16】a)合成成熟hsa-miR-16およびb)合成hsa-miR-16-1前駆体分子由来のhsa-miR-16成熟配列のリアルタイム増幅を示す。図16Aは、プライマー#15を用いたリアルタイム増幅からの結果を示し、および図16Bは、プライマー15aを用いたリアルタイム増幅からの結果を示す。
【図17】let-7aプローブで探査したlet-7aおよびlet-7dの融解曲線を示す。
【図18】MGB-Fl-オリゴヌクレオチドプライマーが検出部分として機能する方法を図解する。図18に示されたように、ハイブリダイズしない場合、MGB-Fl-オリゴヌクレオチドプライマーの蛍光は、MGBによって消光される。しかしながら、ひとたびMGBが増幅産物のマイナーグルーブに結合すると、フルオロフォアは消光されず、蛍光を発する。
【図19】MGB-Fl-オリゴヌクレオチドプライマーを検出部分として用いた逆転写およびPCR増幅を図解する。
【図20】2.3×107〜23コピーの検出によるhsa-miR-16標的の滴定曲線(10倍希釈)を示す。
【図21】a)50ng/反応のHL-60トータルRNAにおける18S rRNAハウスキーピング遺伝子用のYakima Yellow標識プローブとのバイプレックスを形成したmiR-16標的用のFAM標識プローブについてのリアルタイムプロット。b)50ng/反応のHL-60トータルRNAにおける18S rRNAハウスキーピング遺伝子用のYakima Yellow標識プローブとのバイプレックスを形成したmiR-21標的用のFAM標識プローブについてのリアルタイムプロット。miR-16およびmiR-21標的についてのリアルタイムデータはFAMチャンネル中で、および18S標的についてのリアルタイムデータはYYチャンネル中で測定した。「s」はシングルプレックスおよび「b」はバイプレックスである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の標的核酸の増幅のための方法であって、以下の工程を含む方法:
(a)Xが、標的核酸に非相補的なフラッププライマーの5'配列部分を表し、Yが、標的核酸に相補的なフラッププライマーの3'配列部分を表し、Xが3〜40ヌクレオチドの長さである、式
5'-X-Y-3'(I)
を有する少なくとも1つのフラッププライマーを含む増幅反応混合物に、標的核酸を含むことが疑われる試料を接触させる工程;
(b)増幅条件下で反応混合物をインキュベートし、それによって増幅標的核酸を生成する工程;および
(c)任意で、増幅標的核酸を検出する工程。
【請求項2】
少なくとも1つのフラッププライマーを含まない増幅反応混合物中で増幅された増幅標的核酸からのシグナルと比較して、増幅標的核酸からのシグナルが少なくとも約1.25〜約3倍大きい、請求項1記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つのフラッププライマーを含まない増幅反応混合物中で増幅された増幅標的核酸の量と比較して、増幅標的核酸の量が少なくとも約1.25〜約3倍多い、請求項1記載の方法。
【請求項4】
反応混合物がフォワードフラッププライマーおよびリバースフラッププライマーを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
Yが、Xよりも多い数のヌクレオチドを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
XおよびYが、ほぼ同数のヌクレオチドの長さである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
Yが10ヌクレオチドを上回る長さである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
Xが9〜15ヌクレオチドの長さである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
Xが10〜14ヌクレオチドの長さである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
Xが11〜13ヌクレオチドの長さである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
Xが12ヌクレオチドの長さである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
Xが、少なくとも70%のアデニンもしくはチミンヌクレオチド塩基、またはその修飾塩基を含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
Xが、少なくとも80%のアデニンもしくはチミンヌクレオチド塩基、またはその修飾塩基を含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
Xが、少なくとも90%のアデニンもしくはチミンヌクレオチド塩基、またはその修飾塩基を含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
標的核酸配列の増幅を持続的にモニターする、請求項1記載の方法。
【請求項16】
蛍光発生プローブを介して増幅標的核酸を検出する、請求項1記載の方法。
【請求項17】
ハイブリダイゼーションに基づく蛍光プローブを介して増幅標的核酸を検出する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
DNA結合蛍光化合物を介して増幅標的核酸を検出する、請求項16記載の方法。
【請求項19】
標的核酸が、DNA、mRNA、tRNA、およびrRNAからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項20】
標的核酸が30ヌクレオチド未満の長さである、請求項1記載の方法。
【請求項21】
標的核酸が、miRNAまたはsiRNAである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
(c)(i)工程(b)の標的核酸に相補的な配列を含むプライマー;および
(ii)工程(b)の標的核酸に相補的な配列とマイナーグルーブバインダーとを含むプライマー
を含む反応混合物に、工程(b)の増幅標的核酸を接触させる工程;ならびに
(d)増幅条件下で工程(c)の反応混合物をインキュベートし、それによって第2の増幅標的核酸を生成する工程;ならびに
(e)任意で、工程(d)の増幅標的核酸を検出する工程
をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項23】
工程(c)(i)のプライマーが式Iの第2のフラッププライマーである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
式Iの第1のプライマーおよび式Iの第2のフラッププライマーが同じである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
工程(c)(i)のプライマーがMGB-プライマーである、請求項22記載の方法。
【請求項26】
工程(c)(ii)のプライマーが、MGBによって消光されかつマイナーグルーブへのMGBの挿入によって消光されないフルオロフォアをさらに含む検出プライマーである、請求項22記載の方法。
【請求項27】
試料中の標的核酸の増幅のための方法であって、以下の工程を含む方法:
(a)Xが、標的核酸に非相補的なフラッププライマーの5'配列部分を表し、X'が、Xに相補的なヘルパーオリゴヌクレオチド配列を表しかつ少なくとも1つの修飾ヌクレオシド塩基を含み、およびYが、標的核酸に相補的なフラッププライマーの3'配列部分を表し、Xが3〜40ヌクレオチドの長さである、式
5'-X-Y-3'
3'-X'-5' (II)
を有しかつアニールしたヘルパーオリゴヌクレオチドを含む少なくとも1つのフラッププライマーを含む増幅反応混合物に、標的核酸を含むことが疑われる試料を接触させる工程;
(b)増幅条件下で反応混合物をインキュベートし、それによって増幅標的核酸を生成する工程;ならびに
(c)任意で、増幅標的核酸を検出する工程。
【請求項28】
X'が、Xよりも少ない数のヌクレオシドを含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
X'が、4-(4,6-ジアミノ-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-イル)-ブタ-3-イン--1-オール(スーパーA);6-アミノ-3-(4-ヒドロキシ-ブタ-1-イニル)-1,5-ジヒドロ-ピラゾロ[3,4-d-]ピリミジン-4-オン;5-(4-ヒドロキシ-ブタ-1-イニル)-1H-ピリミジン-2,4-ジオン(スーパーT)、およびその組み合わせからなる群より選択されるヌクレオシド塩基を含む、請求項27記載の方法。
【請求項30】
反応混合物がフォワードフラッププライマーおよびリバースフラッププライマーを含む、請求項27記載の方法。
【請求項31】
フォワードフラッププライマーおよびリバースフラッププライマーが、式Iおよび式IIからなる群より独立に選択される、請求項27記載の方法。
【請求項32】
Yが、Xよりも多い数のヌクレオチドを含む、請求項27記載の方法。
【請求項33】
XおよびYが、ほぼ同数のヌクレオチドの長さである、請求項27記載の方法。
【請求項34】
Yが10ヌクレオチドを上回る長さである、請求項27記載の方法。
【請求項35】
Xが9〜15ヌクレオチドの長さである、請求項27記載の方法。
【請求項36】
Xが10〜14ヌクレオチドの長さである、請求項35記載の方法。
【請求項37】
Xが11〜13ヌクレオチドの長さである、請求項36記載の方法。
【請求項38】
Xが12ヌクレオチドの長さである、請求項37記載の方法。
【請求項39】
Xが、少なくとも70%のアデニンもしくはチミンヌクレオチド塩基、またはその修飾塩基を含む、請求項27記載の方法。
【請求項40】
Xが、少なくとも80%のアデニンもしくはチミンヌクレオチド塩基、またはその修飾塩基を含む、請求項39記載の方法。
【請求項41】
Xが、少なくとも90%のアデニンもしくはチミンヌクレオチド塩基、またはその修飾塩基を含む、請求項40記載の方法。
【請求項42】
標的核酸配列の増幅を持続的にモニターする、請求項27記載の方法。
【請求項43】
蛍光発生プローブを介して増幅標的核酸を検出する、請求項27記載の方法。
【請求項44】
ハイブリダイゼーションに基づく蛍光プローブを介して増幅標的核酸を検出する、請求項43記載の方法。
【請求項45】
DNA結合蛍光化合物を介して増幅標的核酸を検出する、請求項43記載の方法。
【請求項46】
標的核酸が、DNA、mRNA、tRNA、およびrRNAからなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項47】
標的核酸が30ヌクレオチド未満の長さである、請求項27記載の方法。
【請求項48】
標的核酸がsiRNAおよびmiRNAからなる群より選択される、請求項47記載の方法。
【請求項49】
(c)(i)工程(b)の標的核酸に相補的な配列を含むプライマー;および
(ii)工程(b)の標的核酸に相補的な配列とマイナーグルーブバインダーとを含むプライマー
を含む反応混合物に、工程(b)の増幅標的核酸を接触させる工程;ならびに
(d)増幅条件下で工程(c)の反応混合物をインキュベートし、それによって第2の増幅標的核酸を生成する工程;ならびに
(e)任意で、工程(d)の増幅標的核酸を検出する工程
をさらに含む、請求項27記載の方法。
【請求項50】
工程(c)(i)のプライマーが式Iの第2のフラッププライマーである、請求項49記載の方法。
【請求項51】
式Iの第1のフラッププライマーおよび式Iの第2のフラッププライマーが同じである、請求項50記載の方法。
【請求項52】
工程(c)(i)のプライマーがMGB-プライマーである、請求項49記載の方法。
【請求項53】
工程(c)(ii)のプライマーが、MGBによって消光されかつマイナーグルーブへのMGBの挿入によって消光されないフルオロフォアをさらに含む検出プライマーである、請求項49記載の方法。
【請求項54】
試料中の標的核酸の増幅のための方法であって、以下の工程を含む方法:
(a)標的核酸に相補的な配列と、マイナーグルーブバインダーと、MGBによって消光されかつマイナーグルーブへのMGBの挿入によって消光されないフルオロフォアとを含む検出プライマーを含む増幅反応混合物に、標的核酸を含むことが疑われる試料を接触させる工程;
(b)増幅条件下で反応混合物をインキュベートし、それによって増幅標的核酸を生成する工程;ならびに
(c)任意で、増幅標的核酸を検出する工程。
【請求項55】
標的核酸が、DNA、mRNA、tRNA、およびrRNAからなる群より選択される、請求項54記載の方法。
【請求項56】
標的核酸が30ヌクレオチド未満の長さである、請求項54記載の方法。
【請求項57】
標的核酸がsiRNAおよびmiRNAからなる群より選択される、請求項56記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2008−543288(P2008−543288A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−515978(P2008−515978)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/022518
【国際公開番号】WO2006/135765
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(507046554)エポック バイオサイエンシズ インコーポレーティッド (5)
【Fターム(参考)】