説明

プラガブル光トランシーバ

【課題】光トランシーバと該トランシーバを挿脱して装着するホスト装置のケージとの間の新たな挿脱機構を提供する。
【解決手段】光トランシーバ1は、光ケーブルが着脱自在に装着されるレセプタクル30と、ホスト装置のケージの係合孔に挿脱自在に係合する係合突起23aを有するアクチュエータ20と、レセプタクル30に回動可能に装着されるベール10を有し、ベール10を回動して係合突起23aを前記係合孔に挿脱させて光トランシーバ1をホスト装置のケージに挿脱する。ベール10の脚部先端はアクチュエータ20に接触し、ベール10が回動運動するときに、該接触部分の係合によりアクチュエータ20がシーソー運動し、ケージの係合孔に係合突起23aが挿脱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光トランシーバと該光トランシーバを挿脱して装着するホスト装置のケージとの間の挿脱機構に関する。
【背景技術】
【0002】
プラガブル光トランシーバはホスト装置(ホストシステム)のケージに挿入されて用いられる。ケージは一端が開放された金属製の箱型部品であり、ホスト装置に搭載され、ホスト装置の基板に結線される電気コネクタを奥端に有し、その開放端はホスト装置のフェースパネルに開口される。プラガブル光トランシーバは、この様にホスト装置に搭載されたケージに挿入され、その後端に搭載されたプラグがケージ内の電気コネクタに挿入されて用いられる。特に、ホスト装置の電源を遮断すること無しに、電気コネクタにプラグを挿入/抜取可能な形態を有するものをホットプラガブル光トランシーバと呼んでいる。
【0003】
プラガブル光トランシーバは、ホスト装置のケージに挿脱するための挿脱機構を設けなければならない。特に、光トランシーバの光レセプタクルに光伝送ケーブルの端部(光コネクタ)が挿入されている際には、光トランシーバのケージからの抜取りを禁止し、光レセプタクルに光伝送ケーブルの端部が挿入されていない際にのみ、光トランシーバとケージとの係合を外すことのできる挿脱機構が必要とされている。その光トランシーバとケージとの挿脱機構については種々の提案がされている。
【0004】
図8は、特許文献1に記載の、ケージとの挿脱機構を備えた光トランシーバを示す図で、光トランシーバ500は、ワイヤーフレーム状のベール510と、ピボットブロック(アクチュエータ)520の組み合わせにより、ピボットブロック520の先端に形成されたロックピン521を上下動させ、このロックピン521とケージとの間の係合関係を解除するメカニズムを備えている。
【0005】
ベール510は把持可能なグリップ部511、ピボットブロック520に埋め込まれる肩部512、及び両者を連結する本体部513がワイヤーフレームで構成されている。肩部512の中央にはワイヤーを折り曲げてカム514が形成されており、このカム514ともども肩部512がピボットブロック520のピボット溝522に埋め込まれている。ピボットブロック520はピボットアーム523を中心にしてシーソー運動を行う。ベール510を回動させると、カム514がピボット溝522内で回動し、カム514の先端が、ピボットブロック520のピボットアーム523より前方の部分を、レセプタクル530に対して外方に押し出そうとする。
【0006】
ピボットブロック520はシーソー運動を行うので、ピボットブロック520の後方に形成されているロックピン521はレセプタクル530側に引き込まれ、ロックピン521とケージとのラッチが解除される。この光トランシーバ500には、ピボットブロック520がレセプタクル530から分離するのを防ぐために、ケース540の先端(レセプタクル530側先端)に支持片550が付属しており、この支持片550でピボットブロック520を常に下方から支えるためにピボットブロック520が外れることはない。
【0007】
図9は、特許文献2に記載の、ケージとの挿脱機構を備えた光トランシーバを示す図で、この挿脱機構も、ベール610とアクチュエータ620を有するが、ベール610は単にアクチュエータ620を前後に動かす際のグリップの役割を果たすのみで、その回動運動がアクチュエータ620の前後運動、あるいはケージ700に形成された係合孔711と係合する係合突起630の上下運動に変換されることはない。アクチュエータ620の先端には楔621が形成されており、この楔621は光トランシーバ600がケージ700と係合している状態では、光トランシーバ600に形成されたポケット640に収納されている。
【0008】
ポケット640の一側面は斜面となっていて、ベール610を摘んで光トランシーバ600を少しだけケージ700から引き出すと、楔621がポケット640の斜面を滑り、楔621の先端がケージ700のラッチ片710を押し上げる。その結果、光トランシーバ600の係合突起630とケージ700のラッチ片710の係合孔711との間の係合が解除される。アクチュエータ620にはバネ片622が形成されており、この弾性力によりその定常位置が、楔621がポケット640に収納される位置に規定されている。
【特許文献1】米国特許第6,439,918号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/142917号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、これらプラガブル光トランシーバを3次元的に密に配置し、光通信用のハブを構築することが提案されている。例えば、断面積が1cm角の光トランシーバを、横に16個、縦に2〜4個並べ、32〜64チャンネルを有する光通信用のハブを構成することができる。この様な装置では、隣接するプラガブル光トランシーバに光伝送ケーブルが挿入されている状態では、光トランシーバをケージから引き抜く際に、隣接する光トランシーバ及び光伝送ケーブルが障害となって、光トランシーバのベールを回動させることができず、容易に光トランシーバを外すことができないという問題があった。
また、前述のような挿脱機構では、挿脱機構を構成する構成部品同士が互いに外れやすく、ケースの先端にアクチュエータの支持片などを設けるなどして部品が外れるのを防止する必要がある。
【0010】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、光トランシーバとケージとの間の新規な挿脱機構を有する光トランシーバ、特に光トランシーバが密に配置されたホスト装置においてもケージへの挿脱が可能であり、また、構成部品同士が外れにくい挿脱機構を有する光トランシーバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、ホスト装置のケージに挿脱可能な光トランシーバであって、該光トランシーバは、光伝送ケーブルの端部が着脱自在に装着されるレセプタクルと、前記ケージの底部に形成された係合孔に挿脱自在に係合する係合突起を有するアクチュエータと、前記レセプタクルに回動可能に装着され、回動動作によって前記アクチュエータの前記係合突起を前記ケージの係合孔に挿脱させるベールと、を備え、前記レセプタクルは、前記ベールが回動可能に取り付けられる取付軸を有し、前記ベールは、一対の脚部を備え、該脚部は、前記取付軸が挿通される挿通孔を有し、前記取付軸を中心とする回動運動が可能であり、かつ、前記挿通孔より延長する延長部を有し、前記アクチュエータは、前記ベールの延長部が接する接触部を有し、前記ベールが回動運動するときに、前記アクチュエータの前記接触部と前記ベールの前記延長部との係合により前記アクチュエータがシーソー運動し、該シーソー運動により前記ケージの前記係合孔に前記アクチュエータの前記係合突起が挿脱される。
【0012】
前記ベールの回動は、少なくとも、前記アクチュエータの前記係合突起が最も下に位置して前記ケージの前記係合孔に係合する位置と前記係合突起が前記係合孔から離脱される係合解除位置との間で、前記アクチュエータをシーソー運動させるものである。
前記アクチュエータの前記接触部に、前記ベールの延長部先端が接触して摺動する接触面が構成され、該接触面は凹部を含み、該凹部に前記延長部先端が係合することで前記ベールを所定の位置に保持可能とした。
また、前記接触面は溝と縁を含み、前記ベールの延長部先端は前記溝に係合する凸部と、前記縁を収納する凹部を含む。
【0013】
光伝送ケーブルの端部が着脱自在に装着されるレセプタクルと、ホスト装置のケージの底部に形成された係合孔に挿脱自在に係合する係合突起を有するアクチュエータとを有し、前記レセプタクルは、該レセプタクルの下部に前記アクチュエータをシーソー運動可能に軸支して有し、該シーソー運動により前記ケージに形成された前記係合孔に前記アクチュエータの前記係合突起が挿脱され、これによって光トランシーバをホスト装置のケージ内に挿脱可能とした光トランシーバであって、前記アクチュエータは、該アクチュエータが前記係合突起を前記係合孔から離脱させる方向にシーソー運動させる時に、該シーソー運動に抗する板バネ部を一体的に有し、該板バネ部により、前記係合突起を前記係合孔に向けて付勢するようにした。
【0014】
前記アクチュエータの前記板バネ部を前記レセプタクルに固定し、前記アクチュエータを前記レセプタクルに軸支している軸支部の係合が外れるのを防止するようにした。
前記板バネ部は、前記アクチュエータを前記レセプタクルに固定した時に、前記シーソー運動の軸を中心として、前記アクチュエータの前記係合突起が形成されている側に対して反対の側を前記レセプタクルに押し付ける付勢力を与えるようにした。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光トランシーバによれば、光トランシーバが密に配置された場合であっても、目的の光トランシーバを容易にホスト装置のケージに挿脱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明のプラガブル光トランシーバ(以後単にトランシーバとする)の全体を下方から俯瞰した図で、トランシーバ1は、ベール10、アクチュエータ20、レセプタクル30、カバー40、基板50、フレーム60、及び接地フィンガー70で構成される。以後、レセプタクル30の備わる方向をトランシーバの前方側とし、その反対の方であって、基板50上にプラグ51が形成されている側を後方とする。また、図1で見えている側、アクチュエータ20が取り付けられている側をトランシーバの下方とし、その反対側、図1では隠されている側を上方とする。この上下方向は、トランシーバ1がケージ(図示せず)に挿入される際の上下方向を踏襲するものである。
【0017】
ケージには後方側が挿入され、トランシーバ1の後端に形成されているプラグ51がケージ内の電気コネクタと係合する。これにより、ホスト装置の電子回路とトランシーバ1の基板50上の回路とが電気的に接続される。トランシーバ1の前方側のレセプタクル正面2は、ホスト装置のフェースパネルに開口し、当該開口を通して光伝送ケーブル(光ケーブル)の端部がトランシーバ1のレセプタクル30に着脱自在に装着される。
【0018】
レセプタクル30にはベール10とアクチュエータ20とが取り付けられている。アクチュエータ20は、ホスト装置のケージの底部に形成された係合孔に挿脱自在に係合する係合突起23aを有する。また、ベール10は、レセプタクル30に回動可能に装着され、回動動作によってアクチュエータ20の係合突起23aをケージの係合孔に挿脱させる。なお、レセプタクル30はカバー40の前方に取り付けられている。
【0019】
カバー40は、プラグ51を有する基板50を保持するフレーム60に取り付けられる。カバー40の前方端からは、アクチュエータ20の係合突起23a、および接地フィンガー70が突き出ている。係合突起23aがケージに形成された係合孔に係合されることにより、トランシーバ1はケージ内に保持される。一方、接地フィンガー70はトランシーバ1をケージに挿入した際に、ケージ内面と電気的に接触し接地電位を強化しつつ、ケージに対して1つの放熱経路を確保する。
【0020】
本発明では、アクチュエータ20、レセプタクル30は樹脂モールドにより形成され、また、ベールについては樹脂製のベール10と、金属製ベール110(図5参照)の二つの形態を開示し、さらに、カバー40、フレーム60については、一枚の金属板を切断、折曲、タッピング加工により形成された形態を採用し、溶接、接着等は用いていない構造を有する。以下、本発明に係るベール10、110、アクチュエータ20、及びレセプタクル30の構成について説明する。
【0021】
a.アクチュエータ
図2(A)は本発明に係るアクチュエータの下方俯瞰図、図2(B)は同上方俯瞰図、及び図2(C)は側面図である。アクチュエータ20は本体部21、支点部22、及び係合部23の大概三つの部分から成る。本体部21は、両側に接触部21a、これら接触部21aを連結する連結部21dを備え、また、この連結部21dから後方に向かって延び出す板バネ部24を一体的に有する。
【0022】
接触部21aにはそれぞれその上面に互いに滑らかに接続する複数の面を有し、外方に向かって二段に形成された接触面を有する。ここでは、内側の溝部分を溝21b、外方の盛り上がった部分をガイド縁21eとする。接触面には、第1の凹部21f、第2の凹部21gが形成されている。当該凹部21gにベール10の脚部の突起(図4参照)を収納しベール10の動きを一時的に保持することができる。
【0023】
連結部21dの前方は緩く窪んでおり、下に位置する他のトランシーバのレセプタクルとの間の隙間を広げることで、トランシーバを密に配したときのベール10を把持することの容易性を向上させている。板バネ部24は本体部21に対して角度をもって形成されている。すなわち、板バネ部24は、本体部21のレセプタクル30の下面に対する基準面21kに対して、その後端側が約3.5°の角度をもって浮き上がって形成されている。このアクチュエータ20を図3に示すレセプタクル30にセットする場合、板バネ部24が撓みながらセットされる。この撓みに反発する応力は、アクチュエータ20のシーソー運動の軸22aを受けるレセプタクル30の軸支部で吸収される(軸22a、軸支部については後述する)が、軸22aと板バネ部24の後端位置がオフセットされているので、その結果、この応力によりアクチュエータ20の先端側を上に押し上げる力、すなわち、先端側をレセプタクル30に押し付ける力となって作用する。この上方への押し付け力により、アクチュエータ20の基準面21kに形成されている突起21jがレセプタクル30の下面に点接触する。
【0024】
連結部21dから後方に延びる板バネ部24の先端は支点部22を超え係合部23にまで達している。そして、その先端に上方に向かって延び出す水平断面がT字状の突起24aを備える。この板バネ部24の突起24aは、後述する様に、レセプタクル30の中央隔壁に形成されたポケット部に収まることで、アクチュエータ20の前後方向の移動を規制する。また、板バネ部24はレセプタクル30に密に接触固定されることで、アクチュエータ20の残余の部分が支点部22を中心にシーソー運動する際に、シーソー運動に抗する力をアクチュエータ20に与える。この板バネ部24により、アクチュエータ20の係合突起23aはケージの係合孔に向けて付勢されている。したがって、ベール10を動作させてアクチュエータ20にシーソー運動を行わせても、ベール10を解放するとアクチュエータ20はその板バネ部24の有する弾性力により自動的に図2(A)、図2(B)の状態に回復する。
【0025】
支点部22には略半円柱状の形状を有する軸22aが形成されている。この軸22aをレセプタクル30の軸支部にセットする。軸支部の内部も略半円柱状に加工されており、軸22aが軸支部内部でスムーズに回動することで、アクチュエータ20のシーソー運動を可能にする。
【0026】
係合部23の先端には、ケージの係合孔に係合する係合突起23aが形成されている。この係合突起23aの後方側の側面が傾斜面に、前方側の側面は係合部23本体に対し急峻(本体からほぼ垂直に立ち上がる)な面に形成されている。トランシーバ1をケージに挿入する際には、この傾斜面によりケージのラッチ片を跳ね上げつつ挿入され、一旦挿入された場合には、急峻面とラッチ片内の係合孔とが確実に噛み合って容易に解除されない構造、本発明の様な挿脱機構を介することが無ければ容易に解除されない機構を提供している。さらに、係合部23の後端部上面には斜面を有する溝23bが形成されている。これは、このアクチュエータ20にシーソー運動を誘起させた場合に、係合部23の後端がレセプタクル30側に引き込まれることになるが、引き込まれた際に、レセプタクル30の中央隔壁がこの溝23b内に収納されることでシーソー運動の動作幅を大きくしている。
【0027】
図2(C)はアクチュエータ20の側面図である。接触部21aには前方側から第1の凹部21f、第2の凹部21g、平坦部21h、及び円弧部21iが連続的に形成されており、後述する様に、これらが有する複数の面をベール10の脚部の突起が接触して摺動することで、ベール10の回動に連動してアクチュエータ20にシーソー運動を誘起することができる。円弧部21iはベール10の回動中心に対して凹となる面を形成している。
【0028】
b.レセプタクル
図3(A)はレセプタクル30の前方俯瞰図、図3(B)は同後方俯瞰図である。レセプタクル30は樹脂のモールド成型により形成されている。レセプタクル30は前方から順にレセプタクル部31、搭載部32、接続部33に分けられる。レセプタクル部31は、前方に送信/受信用の二つの開口31a、31bを有し、当該開口に光ケーブルの端部(光コネクタ)が挿入される。開口の内寸(幅、奥行き)および開口間の間隔は光コネクタの規格により規定されている。
【0029】
レセプタクル部31の外側面には、取付軸31c(例えば、略円柱状の突起)を有し、これがベール10の回動中心となる。さらに、下面には、アクチュエータ20のシーソー運動の回動軸となる軸22aを支持する軸支部31dが形成され、その内面形状は、アクチュエータ20の軸22aの外面形状をトレースする様に半円柱状に加工されている。レセプタクル部31の後方端には、他より高さが一段高い段差部31eが形成されており、当該段差部31eにベール10の側面が突き当たりベール10の回動運動を制限している。段差部31eはベール10に対する回動ストッパの機能を提供している。
【0030】
搭載部32は、二つの空間32a、32bを有し、当該空間に送信サブアセンブリ(Transmitting Optical Sub-Assembly:TOSA)、受信サブアセンブリ(Receiving Optical Sub-Assembly:ROSA)を搭載する。空間32a、32bは側壁32cと中央隔壁32dにより形成され、空間内部には形状をTOSA/ROSAを搭載するための凹面、突起が複数形成されている。中央隔壁32dには、その前方端にポケット32eが形成されている。当該ポケット32eにアクチュエータ20の板バネ部24の後端に形成されている突起24aが収まる。この突起24aの断面形状にあわせ、ポケット32eの内面形状は、その深さが前方に向かって次第に浅くなり、レセプタクル部31の底面にスムーズに接続する形状である。
【0031】
さらに、中央隔壁32dの前方両側のレセプタクル部31の底面が傾斜面32fとなっており、このレセプタクル30に取り付けられたアクチュエータ20の軸22a周りのシーソー運動を補佐している。また、この傾斜面32fによって、アクチュエータ20のレセプタクル30への取り付けを容易にしている。側壁32cの外面には突起32gが形成されており、この突起32gがカバー40の側面の開口に係合して両者が組立てられる。
【0032】
接続部33は、レセプタクル30に接地フィンガー70を組み付ける際に使用される。接地フィンガー70は、図1に示す様に、レセプタクル30にカバー40を組み付けた後においても、両者の隙間から外方に突き出し、トランシーバ1がケージにセットされる際にはケージの内面に直接接触して接地電位を確保する。一方、トランシーバ1の内部ではTOSA/ROSAの外面に接触するため、TOSA/ROSAの外皮をケースグラウンドと等電位にさせることが可能となる。ここで、レセプタクル30は樹脂製である。一方、本トランシーバに係る構造においては、接地フィンガー70がケージに直接接触することで、これらEMIシールド、接地電位の安定性は基本的に果たされている。
【0033】
c−1.第1の形態のベール
図4(A)は第1の形態に係るベールの上前方俯瞰図、図4(B)は同下後方俯瞰図である。ベール10は一対の脚部11とこれら脚部11を接続する連結部12を有する、所謂U字状の形態を備える。この形態に係るベール10は樹脂のモールド成型により形成されている。ベール10の連結部12には二つの凹部12a、12bが形成されており、ベール10の連結部12のレセプタクル30の所定箇所にセットした際に、レセプタクル30の送信/受信用の二つの開口31a、31bに連続する形状を有する。その上面にはラベルを貼り付けるための凹部12cも設けられている。
【0034】
一対の脚部11のそれぞれには、レセプタクル30の取付軸31cが挿通される挿通孔11aが備わり、ベール10は、取付軸31cを中心とする回動運動が可能である。また、脚部11は挿通孔11aより延長する延長部11bを有する。ベール10が回動運動するときに、アクチュエータ20の接触部21aと、このベール10の延長部11bとの係合によりアクチュエータがシーソー運動し、このシーソー運動によりケージの係合孔にアクチュエータ20の係合突起23aが挿脱される。
【0035】
より具体的には、この延長部11bの先端(前端)内側には突起11cが備わっており、この突起11cはガイド縁11dと溝11eを有する複合的形状をしている。ガイド縁11dはアクチュエータ20の接触部21aの溝21b内に納まり、溝11eがアクチュエータ20のガイド縁21e上を摺動して、アクチュエータ20がシーソー運動し、ケージの係合孔にアクチュエータ20の係合突起23aが挿脱される。
また、この延長部11bの突起11cの複合形状により、ベール10はアクチュエータ20と確実に組立てられ、ベール10を回動させた場合であっても、その脚部11が外方に向かって拡がりアクチュエータ20から外れることがなくなる。すなわち、ベール10の脚部11が外方に広がろうとしても、突起11cのガイド縁11dがアクチュエータ20のガイド縁21eの内面に当接して広がるのを防止する。
【0036】
脚部11の後端11fは直線形状を有しており、レセプタクル30の段差部31eにその初期位置で突き当たる。ここで初期位置とは、ベール10の連結部12がレセプタクル30の最上方にある時に相当する。また、脚部11の延長部11bの底面11gは、ベール10を最大に回動させた時にレセプタクル30の段差部31eに突き当たり、その結果ベール10の回動運動が規制される。
【0037】
また、脚部11は、略L字形状であり、初期位置で、その短辺が前後方向に位置し、長辺が上下方向に位置する。このような形状にすることにより、ベール10の連結部12に手を触れることができない場合であっても、脚部11の短辺(延長部11b)の上面11hを押し下げて、ベール10を回動させること及びアクチュエータ20の本体部21を押し下げることができる。
【0038】
c−2.第二の形態のベール
図5(A)は第2の形態に係るベールの上前方俯瞰図、図5(B)は同下後方俯瞰図である。ベール110は、金属板材、例えばステンレスを折り曲げ加工して形成される。前述のベール10と同様に、ベール110においても、一対の脚部111、及び当該脚部を連結する連結部112を備えるU字形状の部材である。脚部110には、レセプタクル30の取付軸31cが挿通される挿通孔111aが備わり、ベール110は取付軸31cを中心とする回動運動が可能である。
【0039】
また、脚部111は挿通孔111aより延長する延長部111bを有し、この延長部111bの前端内側には突起111cが備わる。この突起111cは絞り加工(打ち出し加工)により形成されており、当該突起111cの側面がアクチュエータ20のガイド縁21e上を摺動する。本形態のベール111においてはアクチュエータ20の溝21b内に納まる構造は形成されていない。また脚部111の後端111fがレセプタクル30の段差部31eにその初期位置で当たり、脚部111の延長部111bの底面111gがベールの最大回転時に段差部31eに当たることによりベール110の回動運動が規制されることも、第1の形態のベール10と同様である。
【0040】
図5(A)に示すベール10の脚部11は、略L字形状であり、初期位置で、その短辺が前後方向に位置し、長辺が上下方向に位置する。このような形状にすることにより、ベール10の連結部12に手を触れることができない場合であっても、ベールの短辺(延長部11b)の上面11hを押し下げて、ベール10を回動させること及びアクチュエータ20の本体部21を押し下げることができる。
なお、図5(B)に示すベール110の脚部111も前述と同様に、略L字形状であるが、脚部111の短辺(延長部111b)の上面111hに、脚部の短辺の上面が内側に折り曲げられて形成された折り曲げ部111iを備えても良い。折り曲げ部111iを設けることにより、短辺上面111hの面積が増え、短辺上面111hを押下げることが容易になる。また、この折り曲げ部111iは必ずしも両方の脚部111に設ける必要はない。本発明に係る光トランシーバ1を高密度で実装されたケージに挿入して用いる際に、両方の脚部111にこの折り曲げ部111iを設けた場合に、隣接するトランシーバの脚部に触れてしまう場合が想定される。いずれか一方にのみ設けることでこの事態を避けることができる。
【0041】
d.ベールの回動とアクチュエータのシーソー運動
図6(A)〜図6(E)は第1の形態のベール10の回動運動とアクチュエータ20のシーソー運動との関係を説明する一連の図である。図6(A)においてベール10は初期状態にある。すなわち、ベール10の連結部12はレセプタクル30の上方にあって、また、レセプタクル30の二つの開口31a、31bを解放している。この時ベール10の延長部11bの突起11cはアクチュエータ20の接触面の最先端にあって、第1の凹部21iに納まり、保持されている。また、係合突起23aは最も外側に突き出された状態にあって、ケージの係合孔に納まっている。
【0042】
この状態から、ベールの短辺上面11hを押し下げるなどして、ベール10を前方側に回動させると、図6(B)の位置においてベール10の延長部11bの突起11cは一旦アクチュエータ20の第2の凹部21gに納まる。これにより、ベール10を所定の位置に保持することが可能であり、ベール10をいわゆるダブルデッカー対応とすることができる。この位置では、係合突起23aは、図6(A)の位置よりはレセプタクル30側に引き寄せられている。
【0043】
さらにベール10を回動させると、延長部11bの突起11cはアクチュエータ20の接触面のうちの平坦部21hを接触して摺動することとなる(図6(C))。延長部11bの突起11cと平坦部21hとの接触点からアクチュエータ20の回動中心(取付軸31c)までの距離は、ベール10の回動に連動して次第に短くなる。従って、延長部11bの突起11cはそれだけアクチュエータ20の本体部21を外方に押し出すことになり、シーソー運動により係合突起23aが次第にレセプタクル30側に引き寄せられ、最終的にケージのラッチ片内の係合孔との係合状態が解除される(図6(D))。
【0044】
この位置からさらにベール10を回動したとしても、ベール10の回動中心である取付軸31cに対して円弧を描く円弧部21iを、延長部11bの突起11cが接触して摺動するだけになるので、アクチュエータ20がそれ以上に大幅に押し出されることはない。最後に図6(E)に示す様に、延長部11bの底面11gがレセプタクル30の段差部31eに突き当たることでベール10の回動が規制される。
【0045】
ケージは金属薄板により形成されているので、個々の寸法バラツキは大きい。また、例え当初は規定通りの寸法で形成されたケージであっても、トランシーバの挿入/抜取を繰り返すことにより、その外形寸法に歪みが生じてきてしまう。従って、ベールの延長部の突起がアクチュエータの接触面のどの位置にあるときに係合状態が解除されるかは厳密に規定できないが、少なくとも、接触面の平坦部21hのうち最後方の部分、すなわち、円弧部21iとの接続部分において、係合突起23aは、当該係合突起23aがケージの係合孔から離脱される係合解除位置に位置しなければならない。
【0046】
さらに、アクチュエータ20の係合部23がこの様にベール10の回動に合わせて一連の動作を行ったとしても、その板バネ部24はリジッドにレセプタクル30に固定された状態を維持している。従って、この板バネ部24の有する弾性力により、ベール10を図6(E)の位置から初期状態である図6(A)の位置に戻す際の力が、係合を解除する際の図6(A)から図6(E)までの力に比較して軽くなる。特に、延長部11bの突起11cが円弧部21iにある時には、板バネ部24の弾性力によりベール10は図6(D)の位置を自動的に回復する。
【0047】
また、本発明に係るアクチュエータ20の構造においては、アクチュエータ20の前端21cを押し下げる動作を規制する構造は形成されていない。板バネ部24はアクチュエータ20の本体部21を常にレセプタクル30側に押し付ける作用を生じさせるけれども、アクチュエータ前端21cを操作してアクチュエータ20にシーソー運動を行わせることが可能である。
【0048】
これは次の様な場合に非常に効果的である。すなわち、ケージがホスト装置に密に装着されていて、目的とするケージの周辺のケージにトランシーバが光コネクタ/光ケーブルを装備した状態で挿入されている場合、これら光コネクタ/光ケーブルが障害となって、目的のトランシーバのベールを操作できない場合がある。トランシーバをケージから外す場合は、ベール10はレセプタクル30の上方(図6(A)の初期状態)に位置している。目的トランシーバの直上に他のケージが装備されている場合であって、真上のケージにトランシーバが挿入されている場合に、このベール10を操作することができない。
【0049】
その様な場合であっても、レセプタクル30の前面は光コネクタが取り外されて開放されている状態であり、アクチュエータ20の前端21cを操作するのに十分な隙間が確保されている。前端21cの下方を押し下げることで、アクチュエータ20のシーソー運動をおこさせ、アクチュエータ20の後端にある係合突起23aをトランシーバ本体側に引き込むことが可能となって、目的トランシーバをケージから取り外すことができる。
【0050】
e.レセプタクルとベール、アクチュエータの組立て
次に、本発明のトランシーバのベール、アクチュエータをレセプタクルに対して組み付ける方法を図7(A)〜図7(D)を参照して説明する。
【0051】
まず、レセプタクル30、TOSA/ROSA、基板50、フレーム60、カバー40接地フィンガー70を組立てたトランシーバ本体にベール10を装着する(図7(A)、(B))。ベール10の両脚部11は連結部12の有する弾性力により容易に押し広げることができるので、脚部11を押し広げつつその挿通孔11aにレセプタクル30の取付軸31cを係合させる(図7(B))。
【0052】
図7(C)に示すように、ついでアクチュエータ20をレセプタクル30の前方側からその底面上をスライドさせて、アクチュエータ20の軸22aをレセプタクル30の軸支部31dにセットする。この時アクチュエータ20の板バネ部24の先端の突起24aがレセプタクル30の中央隔壁に形成されたポケット32eに収まる。アクチュエータ20の後方側への動きは軸支部31dにより、前方側への動きは板バネ部24の突起24aとレセプタクル30のポケット32eとの係合によりそれぞれ規制されるので、アクチュエータ20はレセプタクル30に対して水平方向に(その底面と平行な方向)にスライドすることはない。したがって、軸支部31dの係合が外れるのを防止できる。
【0053】
さらに、アクチュエータ20の上下方向の動きについては、軸支部31dが軸22aを覆っていることに加え(図7(D))、アクチュエータ20の本体部21上面の突起21j(図2(B))により常に板バネ部24が僅かに撓んだ状態にあり、アクチュエータ20の本体部21を板バネ部24の有する弾性力により押し上げる力が作用している。従って、アクチュエータ20は上下方向にもスライドすることが規制されている。軸22aを中心としたシーソー運動のみが許容される状態にある。以上の手順によりベール10及びアクチュエータ20はレセプタクル30に対して組立てられ、図6(A)〜図6(E)を参照して説明した様に、ベール10の回動運動によりアクチュエータ20の先端に形成された係合突起23aを上下運動させて、ケージからトランシーバを挿脱できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る光トランシーバの下方斜視図である。
【図2】図2(A)は本発明に係るアクチュエータの下方斜視図であり、図2(B)は同上方斜視図、図2(C)は同側面図である。
【図3】図3(A)は本発明に係るレセプタクルの下方斜視図であり、図3(B)は同上方斜視図である。
【図4】図4(A)は本発明に係るベールの一例の上方斜視図であり、図4(B)は同下方斜視図である。
【図5】図5(A)は本発明に係るベールの他の例の上方斜視図であり、図5(B)は同下方斜視図である。
【図6】本発明に係るベールとアクチュエータの運動の様子を連続的に示す側面図である。
【図7】本発明に係るベール及びアクチュエータをレセプタクルに対して組み付けるときの様子を示す下方斜視図である。
【図8】特許文献1(米国特許第6,439,918号明細書)に記載の光トランシーバの挿脱機構を説明するための斜視図である。
【図9】特許文献2(米国特許出願公開第2003/142917号明細書)に記載の光トランシーバの挿脱機構を説明するための図である。
【符号の説明】
【0055】
1…トランシーバ、2…レセプタクル正面、10,110…ベール、11,111…脚部、11a,111a…挿通孔、11b,111b…延長部、11c,111c…突起、11d…ガイド縁、11e…溝、11f,111f…脚部後端、11g,111g…延長部底面、11h,111h…延長部上面、111i…折り曲げ部、12,112…連結部、12a,12b…凹部、12c…凹部、20…アクチュエータ、21…本体部、21a…接触部、21b…溝、21c…アクチュエータ前端、21d…連結部、21e…ガイド縁、21f…第1の凹部、21g…第2の凹部、21h…平坦部、21i…円弧部、21j…突起、21k…基準面、22…支点部、22a…軸、23…係合部、23a…係合突起、23b…溝、24…板バネ部、24a…突起、30…レセプタクル、31…レセプタクル部、31a,31b…開口、31c…取付軸、31d…軸支部、31e…段差部、32…搭載部、32a,32b…空間、32c…側壁、32d…中央隔壁、32e…ポケット、32f…傾斜面、32g…突起、33…接続部、40…カバー、50…基板、51…プラグ、60…フレーム、70…接地フィンガー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスト装置のケージに挿脱可能な光トランシーバであって、
該光トランシーバは、
光伝送ケーブルの端部が着脱自在に装着されるレセプタクルと、
前記ケージの底部に形成された係合孔に挿脱自在に係合する係合突起を有するアクチュエータと、
前記レセプタクルに回動可能に装着され、回動動作によって前記アクチュエータの前記係合突起を前記ケージの係合孔に挿脱させるベールと、
を備え、
前記レセプタクルは、前記ベールが回動可能に取り付けられる取付軸を有し、
前記ベールは、一対の脚部を備え、
該脚部は、前記取付軸が挿通される挿通孔を有し、前記取付軸を中心とする回動運動が可能であり、かつ、前記挿通孔より延長する延長部を有し、
前記アクチュエータは、前記ベールの延長部が接する接触部を有し、
前記ベールが回動運動するときに、前記アクチュエータの前記接触部と前記ベールの前記延長部との係合により前記アクチュエータがシーソー運動し、該シーソー運動により前記ケージの前記係合孔に前記アクチュエータの前記係合突起が挿脱される、
ことを特徴とする光トランシーバ。
【請求項2】
前記ベールの回動は、少なくとも、前記アクチュエータの前記係合突起が最も下に位置して前記ケージの前記係合孔に係合する位置と前記係合突起が前記係合孔から離脱される係合解除位置との間で、前記アクチュエータをシーソー運動させるものであることを特徴とする請求項1に記載の光トランシーバ。
【請求項3】
前記アクチュエータの前記接触部に、前記ベールの延長部先端が接触して摺動する接触面が構成され、該接触面は凹部を含み、該凹部に前記延長部先端が係合することで前記ベールを所定の位置に保持可能としたことを特徴とする請求項1または2に記載の光トランシーバ。
【請求項4】
前記接触面は溝と縁を含み、前記ベールの延長部先端は前記溝に係合する凸部と、前記縁を収納する凹部を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光トランシーバ。
【請求項5】
光伝送ケーブルの端部が着脱自在に装着されるレセプタクルと、
ホスト装置のケージの底部に形成された係合孔に挿脱自在に係合する係合突起を有するアクチュエータとを有し、
前記レセプタクルは、該レセプタクルの下部に前記アクチュエータをシーソー運動可能に軸支して有し、該シーソー運動により前記ケージに形成された前記係合孔に前記アクチュエータの前記係合突起が挿脱され、これによって光トランシーバをホスト装置のケージ内に挿脱可能とした光トランシーバであって、
前記アクチュエータは、該アクチュエータが前記係合突起を前記係合孔から離脱させる方向にシーソー運動させる時に、該シーソー運動に抗する板バネ部を一体的に有し、該板バネ部により、前記係合突起を前記係合孔に向けて付勢するようにしたことを特徴とする光トランシーバ。
【請求項6】
前記アクチュエータの前記板バネ部を前記レセプタクルに固定し、前記アクチュエータを前記レセプタクルに軸支している軸支部の係合が外れるのを防止するようにしたことを特徴とする請求項5に記載の光トランシーバ。
【請求項7】
前記板バネ部は、前記アクチュエータを前記レセプタクルに固定した時に、前記シーソー運動の軸を中心として、前記アクチュエータの前記係合突起が形成されている側に対して反対の側を前記レセプタクルに押し付ける付勢力を与えるようにしたことを特徴とする請求項5または6に記載の光トランシーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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