説明

プラスチックレンズ成形型用位置検出装置

【課題】モールド組立体のテープに形成される注入口の目標位置を速くかつ高い精度で特定する。
【解決手段】モールド組立体2と対向する検出部21と、検出部21とモールド組立体2との少なくともいずれか一方を他方に対してモールド組立体2の軸線方向に移動させる移動装置とを備える。検出部21の検出結果に基づいてテープ5の注入口6の目標位置を特定する位置特定部23を備える。モールド部材とテープ5は、光を透過可能な材料によって形成される。検出部21は、光路26がモールド組立体2を軸線方向とは直交する方向に横切る発光素子24と受光素子25とを有する。位置特定部23は、光路26がモールド部材を横切るときの光の透過率と光路26がテープ5を横切るときの光の透過率とを用いてモールド部材の端縁を検出し、この端縁の位置に基づいて目標位置を特定するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックレンズ用成形型の注入口形成位置を特定するために用いるプラスチックレンズ成形型用位置検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の眼鏡用プラスチックレンズは、一般に注型重合によって形成されている。この注型重合とは、成形型にプラスチックレンズ材料を注入し、熱あるいは紫外線等のエネルギーにより硬化させて成形物を得る方法である。注型重合に用いる成形型は、たとえば特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
特許文献1に開示されている成形型は、レンズ成形用のキャビティが内部に形成されたモールド組立体と、このモールド組立体に接着された注入補助部材とによって構成されている。前記モールド組立体は、レンズ面成形用の型となる一対の円板状モールド部材と、これらのモールド部材の外周部にコバ面成形用の型となるように巻き付けられたテープとによって構成されている。前記テープには、プラスチックレンズ材料を注入するための注入口が形成されている。
この注入口の位置は、モールド成形型毎に決められており、作業者による手作業によって形成されることが多い。この注入口には、プラスチックレンズ材料を供給するためのノズルが前記注入補助部材を通して挿入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開 WO 2010/098466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記テープに注入口を作業者が手作業で形成するにあたっては、注入口を形成する位置(以下、単に目標位置という)を特定することが難しく、作業時間が必要以上に長くなったり、注入口の位置が不正確になることがあった。注入口が正しい位置に形成されていない場合は、プラスチックレンズ材料注入用のノズルがテープに当たり易くなり、ノズルがテープに当たってしまうと、ノズルを成形型内に正しく挿入することができなくなる。
【0006】
また、注入口の位置が正しくないと、プラスチックレンズ材料をモールド組立体内に注入するときに前記ノズルと注入口との間に過度に広い隙間が形成されることがある。このような場合は、プラスチックレンズ材料内に注入口から気泡が混入し易くなる。目標位置を特定し難くなる理由としては、モールド部材やテープにいわゆる目印となるものが少ないからであると考えられる。
【0007】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、モールド組立体のテープに形成される注入口の目標位置を速くかつ高い精度で特定することが可能なプラスチックレンズ成形型用位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明に係るプラスチックレンズ成形型用位置検出装置は、互いに離間する状態で対向する一対の円板状モールド部材と、これらのモールド部材の外周部に巻き付けられたテープとによって円柱状に形成されたモールド組立体と対向する検出部と、前記検出部と前記モールド組立体との少なくともいずれか一方を他方に対して前記モールド組立体の軸線方向に相対的に移動させる移動装置と、前記検出部の検出結果に基づいて前記テープに形成される注入口の目標位置を特定する位置特定部とを備え、前記モールド部材とテープは、光を透過可能な材料によって形成され、前記検出部は、発光素子と受光素子とを有し、かつこれらの発光素子と受光素子との間の光路が前記モールド組立体を前記軸線方向とは直交する方向に横切るように位置付けられ、前記位置特定部は、前記移動装置による駆動によって前記光路が前記モールド部材を横切るときの光の透過率と、前記光路が前記テープを横切るときの光の透過率とを用いてモールド部材の端縁を検出し、この端縁の位置に基づいて前記目標位置を特定するものである。
【0009】
本発明は、上記発明において、前記モールド組立体は、前記検出部と、前記テープに注入口を形成する注入口形成装置とを結ぶ搬送路を有する搬送装置に支持され、前記移動装置は、前記検出部に対して前記搬送装置上のモールド組立体を前記目標位置が前記軸線方向において前記注入口形成装置の加工部の位置と一致するように移動させるものである。
【0010】
本発明は、上記発明において、前記検出部の前記光路が前記モールド組立体を横切る検出位置と、前記光路が前記モールド組立体の外に位置する後退位置との間で前記検出部を往復させる往復移動装置を備えているものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、モールド部材の端縁が光学的に検出されるから、前記端縁の位置に基づいて前記目標位置を高い精度で特定することができる。また、前記端縁を光学的に検出するときの走査は、移動装置による駆動によって行われるから、途中で停止することなく一定の時間内で実施することができる。
したがって、本発明によれば、モールド組立体のテープに形成される注入口の目標位置を速くかつ高い精度で特定することが可能なプラスチックレンズ成形型用位置検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るプラスチックレンズ成形型用位置検出装置の概略の構成を示す図で、同図(A)は平面図、同図(B)は側面図である。
【図2】モールド組立体と注入補助部材を示す斜視図である。
【図3】プラスチックレンズ用成形型の断面図で、同図(A)は成形型の全体を破断して示す縦断面図、同図(B)は要部を拡大して示す断面図である。
【図4】透過率の変化を説明するための側面図である。
【図5】目標位置を特定する原理を説明するための側面図である。
【図6】プラスチックレンズ成形型用位置検出装置の具体的な構成を示す図で、同図(A)は平面図、同図(B)は側面図である。
【図7】クランプ装置の構成を示す図で、同図(A)は平面図、同図(B)は側面図である。
【図8】注入口形成装置の概略の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るプラスチックレンズ成形型用位置検出装置の一実施の形態を図1〜図8によって詳細に説明する。
先ず、本発明に係るプラスチックレンズ成形型用位置検出装置の概略の構成を図1によって説明する。
図1に示すプラスチックレンズ成形型用位置検出装置1は、同図(A)に示す平面視において円形を呈するモールド組立体2に後述する注入口を形成する位置を特定するためのものである。
【0014】
前記モールド組立体2は、図2および図3に示すように、一対の円板状のモールド部材(第1のモールド部材3と第2のモールド部材4)と、これらのモールド部材3,4の外周面に巻き付けられたテープ5とによって構成されている。本発明に係るプラスチックレンズ成形型用位置検出装置1は、予め組み立てられたモールド組立体2を使用する。
このモールド組立体2は、テープ5に注入口6(図2参照)が形成された後に同図中に符号7で示す注入補助部材が接着される。モールド組立体2に注入補助部材7が接着されることによって、図3に示すように、プラスチックレンズ成形型8が形成される。
【0015】
前記モールド部材3,4は、光を透過可能なガラス材料によって所定の形状に形成されており、レンズ面を成形するための型を構成している。図3において上側に位置する第1のモールド部材3の下面3aは、上方に向けて凸になる凹曲面であり、他方の第2のモールド部材4の上面4aは、上方に向けて凸になる凸曲面である。
前記テープ5は、レンズのコバ面を成形するための型を構成している。このテープ5は、光を透過可能な材料によって形成された、いわゆる粘着テープである。このテープ5は、第1、第2のモールド部材3,4の外周面に1周以上巻回されて貼り付けられている。
【0016】
前記テープ5は、第1、第2のモールド部材3,4の外周面の全域を覆っている。また、テープ5は、第2のモールド部材4の非使用面から突出することがないように第1、第2のモールド部材3,4に巻き付けられている。前記非使用面とは、第2のモールド部材4における上面4aとは反対側の凹面である。なお、テープ5の幅は、第1、第2のモールド部材3,4間の間隙を密閉する幅であれば適宜変更することができる。
【0017】
前記テープ5は、図示してはいないが帯状の基材と、この基材の片面(モールド部材3,4と対向する面)に形成された粘着層とによって構成されている。前記基材としては、たとえばポリエステルを挙げることができる。前記粘着層を形成する材料は、プラスチックレンズ材料に溶け出したり、重合を阻害したりしないものが望ましく、たとえばシリコーン系の粘着剤などを挙げることができる。このテープ5を一対のモールド部材3,4に巻き付けることによって、内部にレンズ成形用のキャビティ9が形成されたモールド組立体2が組み立てられる。
【0018】
テープ5には、プラスチックレンズ材料をキャビティ9内に注入するために注入口6が形成されている。この注入口6は、第1、第2のモールド部材4に巻き付けられたテープ5に注入口形成装置11(図8参照)によって形成される。本発明に係るプラスチックレンズ成形型用位置検出装置1は、注入口形成装置11が注入口6を形成する際の注入口形成位置(以下単に目標位置という)を特定するためのものである。注入口形成装置11は、モールド組立体2のテープ5をたとえばカッター12でモールド組立体2の周方向に所定の長さだけ切断する構成のものが用いられる。
【0019】
前記目標位置は、モールド組立体2毎に決められている。注入口6の位置(モールド組立体2の軸線方向に対する位置)としては、第1のモールド部材3と第2のモールド部材4との間の中央に設定することができる。この場合の目標位置は、第1のモールド部材3のキャビティ9側の端縁と第2のモールド部材4のキャビティ9側の端縁との間の距離の1/2だけ一方のモールド部材の前記端縁から離間した位置になる。
前記注入補助部材7は、図2および図3に示すように、前記モールド組立体2の外周部に重ねることが可能な形状に形成された取付片13と、この取付片13に一体に形成された補助部材本体14とによって構成されている。この注入補助部材7は、プラスチック材料によって形成されている。前記取付片13は、モールド組立体2の外周面に沿うような曲率で湾曲した板状に形成されている。図3に示す組立状態においては、取付片13は接着剤15によってモールド組立体2に接着されている。
【0020】
前記補助部材本体14は、断面形状が四角形の筒体であって、前記取付片13からモールド組立体2とは反対側に延びるように形成されている。この実施の形態による補助部材本体14は、図3に示すように、モールド組立体2の径方向と平行に延びる平板部14aと、この平板部14aと対向する傾斜部14bとを有している。前記傾斜部14bは、取付片13に向かうにしたがって漸次平板部14aに接近するように傾斜している。また、補助部材本体14における取付片13とは反対側の端部には、フランジ16が設けられている。
【0021】
この補助部材本体14の内部は、溶融状態のプラスチックレンズ材料(図示せず)が流れる通路17になる。前記取付片13には、前記通路17の一端の開口となるスリット状の穴18(図3参照)が形成されている。この穴18は、取付片13をモールド組立体2側から見た状態において、前記平板部14aと平行に延びるように形成されている。
注入補助部材7は、テープ5に注入口6が形成された後、前記穴18が前記注入口6と対向する状態でモールド組立体2に接着される。
【0022】
この実施の形態によるプラスチックレンズ成形型用位置検出装置1は、図1に示すように、前記モールド組立体2と対向する検出部21と、前記モールド組立体2と前記検出部21とのうち少なくともいずれか一方に連結された移動装置22と、前記検出部21に接続された位置特定部23とを備えている。
前記検出部21は、発光素子24と受光素子25とを有している。また、この検出部21は、発光素子24と受光素子25との間の光路26が前記モールド組立体2を軸線方向とは直交する方向{図1(A)おいては上下方向}に横切るように位置付けられている。この実施の形態による検出部21は、受光素子25に入射された光の量に相当する検出データを後述する位置特定部23に送る構成が採られている。
【0023】
前記移動装置22は、モールド組立体2と検出部21とのうち少なくともいずれか一方を他方に対してモールド組立体2の軸線方向に相対的に移動させるものである。すなわち、図1(B)中に実線で示すように、モールド組立体2を検出部21に対して移動させる場合と、同図中に二点鎖線で示すように、検出部21をモールド組立体2に対して移動させる場合と、モールド組立体2と検出部21とをそれぞれ他方に対して移動させる場合とがある。
モールド組立体2が検出部21に対して移動する場合は、図4(A)〜(D)に示すように、モールド組立体2に対する前記光路26の位置が前記軸線方向に変化する。図4(A)は、光路26がモールド組立体2から軸線方向の外側に位置している状態を示している。この場合、光路26を遮るものが何もないために、受光素子25に入射される光量が最大になり、光の透過率が最大になる。同図(B)は、モールド組立体2の最も外側に位置するテープ5を光路26が横切る状態を示している。この場合は、光路26がテープ5によって遮られるために前記光量が減少し、これに伴って透過率も低下する。
【0024】
同図(C)は、モールド部材(図においては第1のモールド部材3)を光路26が横切る状態を示している。この場合は、光路26がモールド部材によって遮られるために、前記光量がさらに減少し、透過率がさらに低下する。同図(D)は、一対のモールド部材どうしの間に位置するテープ5を光路26が横切る状態を示している。この場合は、光路26がテープ5によって遮られるために、前記光量が増大し、透過率が上昇する。このような光の透過率の変化は、モールド組立体2が検出部21に対して移動する方向が上記とは逆方向であったとしても、同様に起こる。
【0025】
前記位置特定部23は、前記検出部21から送られた検出データを用いて図4に示す透過率を求め、この透過率に基づいて前記目標位置を特定するものである。詳述すると、位置特定部23は、前記移動装置22による駆動によってモールド組立体2と検出部21との一方が他方に対して前記軸線方向に移動するときの前記透過率を求める。前記光路26が前記モールド部材2,3を横切るときの光の透過率は、前記光路26が前記テープ5を横切るときの光の透過率に較べると明らかに小さくなる。位置特定部23は、前記光路26が前記モールド部材2,3を横切るときの光の透過率と、前記光路26が前記テープ5を横切るときの光の透過率とを用いて一方のモールド部材の軸線方向の端縁を検出し、この端縁の位置に基づいて前記目標位置を特定する。
【0026】
位置特定部23によって検出される端縁は、モールド部材3,4におけるキャビティ9の内側に位置する端縁またはキャビティ9の外側の端縁である。この端縁と目標位置との間隔は、モールド組立体2毎に予め決められている。このため、端縁が検出されることによって、目標位置を特定することができる。この実施の形態による注入口6は、注入口形成装置11によって形成される。このため、前記目標位置を特定するにあたっては、前記注入口形成装置11の加工部分(たとえばカッター12)の位置と関連付けて行う必要がある。
【0027】
これを実現するためには、たとえば図5に示すように行うことができる。図5において、前記光路26の位置と、注入口形成装置11の加工部分の位置との間の距離L1は、モールド組立体2とは無関係であるから容易に求めることができる。また、モールド部材3,4の端縁A(図5においてはキャビティ側端縁を示す)と目標位置Bとの間の距離L2は、モールド組立体2毎に決められている。図5に示す例においては、距離L1から距離L2を減算した値である距離L3だけ同図においてモールド組立体2が検出部21より下に移動することによって、目標位置Bが注入口形成装置11の加工部分と対応した位置に位置付けられる。すなわち、位置特定部23は、前記端縁Aが検出されたときのモールド組立体2を前記距離L3だけ図5において下に移動させた状態を想定し、この状態で端縁から距離L2だけ離間した位置を目標位置Bとして特定する。
【0028】
本発明に係るプラスチックレンズ成形型用位置検出装置1を形成するにあたっては、モールド組立体2をその軸線が上下方向を指向するように移動装置22に支持させ、モールド組立体2のみを移動装置22による駆動によって上下方向に移動させることが望ましい。また、前記光路26は、モールド組立体2の軸線方向(上下方向)において、注入口形成装置11の加工部分と同じ位置に位置するように構成することが望ましい。このように構成する理由は、上記構成を採ることによって動作が単純になり、実行速度を上昇させることができるからである。
【0029】
次に、プラスチックレンズ成形型用位置検出装置1の具体的な構成を図6および図7によって詳細に説明する。
この実施の形態において、モールド組立体2は、図6において符号31で示すクランプ装置によって保持されている。
クランプ装置31は、モールド組立体2をレンズ面が上下方向を指向する状態で保持するものである。このクランプ装置31によるモールド組立体2の保持は、モールド組立体2の外周部を複数の保持部材32により径方向の外側から挟むことによって行われる。
【0030】
クランプ装置31は、図7に示すように、4本の保持部材32と、これらの保持部材32を駆動するアクチュエータ33とを備えている。この実施の形態による保持部材32は、円柱状に形成されている。なお、保持部材32の形状や数量は適宜変更することができる。アクチュエータ33は、水平方向に並ぶ2個のスライダ33a,33bを互いに接近させたり離間させる構成のものである。これらのスライダ33a,33bには、前記保持部材32が2本ずつ取付けられている。
【0031】
このクランプ装置31は、図7(A)に示すように、上方から見てモールド組立体2の軸心Cが予め定めた基準位置Aと一致するようにモールド組立体2を保持する。
また、前記クランプ装置31は、検出部21や注入口形成装置11と隣接する装置にモールド組立体2を送ることができるように、搬送装置34(図6参照)に支持されている。
この搬送装置34は、クランプ装置31を3方向に移動できるように支持している。前記3方向とは、検出部21や注入口形成装置11の近傍を通る搬送路34a{図6(A)参照}に沿う搬送方向と、前記搬送路34aと検出部21や注入口形成装置11との間で往復する方向である前後方向と、上下方向とである。
【0032】
このような搬送装置34は、たとえば図6(B)に示すように、ターンテーブル35を用いて構成することができる。
前記ターンテーブル35は、基台36の上で上下方向を軸線方向として回転するテーブル37を備えている。基台36には、検出部21や注入口形成装置11なども設置されている。前記テーブル37は、クランプ装置31に保持されたモールド組立体2が検出部21や注入口形成装置11に搬送されるように、所定の角度ずつ間欠的に回転する。なお、このターンテーブル35は、図示してはいないが、テーブル37と一体に回転する各装置に空気圧を供給する空気通路がテーブル37の中心部分で基台36に対して回転できる構成が採られている。
【0033】
前記テーブル37は、前記基台36に回転自在に支持されている。このテーブル37には、図示してはいないが、複数のクランプ装置31が設けられている。これらのクランプ装置31は、テーブル37の回転方向に等間隔で並ぶ状態で後述するスライド機構41{図6(B)参照}を介してテーブル37に支持されている。この場合の搬送方向は、テーブル37の回転方向になる。このように搬送装置34をターンテーブル35によって構成する場合は、検出部21と注入口形成装置11とがターンテーブル35の径方向の外側に配置される。
【0034】
前記スライド機構41は、図6(B)に示すように、前記ターンテーブル35に上下方向へ移動自在に支持された上下方向スライダ42と、この上下方向スライダ42に前記前後方向へ移動自在に支持された前後方向スライダ43とを備えている。前記前後方向スライダ43は、テーブル37からターンテーブル35の径方向の外側に延びるように形成されている。前記クランプ装置31は、前後方向スライダ43の上に装着されている。
【0035】
前記上下方向スライダ42には、この上下方向スライダ42を上下方向に移動させるためのアクチュエータ44が接続されている。このアクチュエータ44は、詳細には図示してはいないが、モータあるいはエアシリンダを動力源として上下方向スライダ42を駆動する構成のものである。このアクチュエータ44は、前記テーブル37または基台36に支持させることができる。また、この上下方向スライダ42と前後方向スライダ43とには、それぞれ移動を規制するためのブレーキ45,46が設けられている。これらのブレーキ45,46は、上下方向スライダ42や前後方向スライダ43をスライドさせるときにのみ制動状態が解除される。これらのブレーキ45,46の動作や、上述したクランプ装置、搬送装置34、アクチュエータ44などの動作は、図示していない制御装置によって制御される。この実施の形態においては、前記上下方向スライダ42とアクチュエータ44とによって、本発明でいう「検出部とモールド組立体との少なくともいずれか一方を他方に対してモールド組立体の軸線方向に相対的に移動させる移動装置」が構成されている。
【0036】
前記前後方向スライダ43の一端部(ターンテーブルの径方向において外側に位置する端部)には、下方に延びる受圧片43aが設けられている。この受圧片43aは、図示していない前後方向位置決め装置によって前後方向に押されるものである。前記前後方向位置決め装置は、受圧片43aとともに前後方向スライダ43を前後方向に移動させ、モールド組立体2を前後方向の所定位置に位置決めする。この所定位置とは、モールド組立体2が搬送装置34によって注入口形成装置11と対向する位置に送られたときに、モールド組立体2と注入口形成装置11との間隔が予め定めた間隔となるような位置である。前後方向位置決め装置は、検出部21より搬送装置34による搬送方向の上流側に配設されている。すなわち、モールド組立体2は、前後方向位置決め装置によって前後方向において前記所定位置に位置決めされた状態で、搬送装置34によって検出部21と対向する位置に搬送される。
【0037】
この実施の形態による検出部21は、図6および図7に示すように、発光素子24と受光素子25との間の光路26がモールド組立体2を水平方向に横切るように構成されている。前記光路26の上下方向の位置は、注入口形成装置11の加工部分(カッター12)の上下方向の位置と一致している。発光素子24と受光素子25とは、後述する往復移動装置51を介して前記基台36に支持されている。
【0038】
往復移動装置51は、発光素子24および受光素子25を図6において実線で示す検出位置と、同図中に二点鎖線で示す退避位置との間で移動させる。発光素子24と受光素子25が前記検出位置に移動することによって、図6(A)に示すように、上方から見て光路26がモールド組立体2を横切るようになる。発光素子24と受光素子25が前記退避位置に移動することによって、搬送路34aが開放され、発光素子24と受光素子25がモールド組立体2の搬送を妨げることがなくなる。なお、モールド組立体2は、検出部21と隣接する位置に搬送されるときには、発光素子24および受光素子25より低い位置に停止する。前記往復移動装置51の動作は、前記制御装置によって制御される。
【0039】
この実施の形態において前記目標位置を特定するにあたっては、先ず、発光素子24と受光素子25とを前記検出位置に移動させ、この状態で前記アクチュエータ44による駆動により上下方向スライダ42を上昇させる。すなわち、モールド組立体2は光路26を下方から横切るように上昇させられる。モールド組立体2を光路26が遮られるように下方から上方に移動させることにより、発光素子24の光は、上に位置する第1のモールド部材3に照射された後、両モールド部材3,4の間に位置するテープ5に照射される。光が第1のモールド部材3を透過するときの透過率と、光がテープ5を透過するときの透過率とは、図4に示したように、大きく異なる。
【0040】
この実施の形態においては、前記光路26の上下方向の位置と、注入口形成装置11の加工部分の上下方向の位置とは一致している。このため、この実施の形態による位置特定部23は、第1のモールド部材3のキャビティ9側の端縁A(図5参照)が検出された位置から図5に示す距離L2だけモールド組立体2が上昇したときに、上下方向スライダを42停止させ、目標位置Bを特定する。この結果、モールド組立体2は、目標位置Bが注入口形成装置11の加工部分と同じ高さとなるように、上下方向において位置決めされる。検出部21は、この位置決めが終了した後に往復移動装置51によって前記退避位置に移動させられる。
【0041】
モールド組立体2は、このように目標位置が特定された後に搬送装置34によって注入口形成装置11と対向する位置に搬送される。搬送中は、ブレーキ45,46が動作することにより、モールド組立体2は、上下方向および前後方向において、テーブル37に対する位置が一定に保たれる。しかる後、注入口形成装置11が前記目標位置Bに注入口6を形成する。
【0042】
上述したように構成されたプラスチックレンズ成形型用位置検出装置1においては、モールド部材3,4の端縁が光学的に検出されるから、前記端縁の位置に基づいて前記目標位置を高い精度で特定することができる。また、前記端縁を光学的に検出するときの走査は、移動装置22(アクチュエータ44)による駆動によって行われるから、途中で停止することなく一定の時間内で実施することができる。
したがって、この実施の形態によれば、モールド組立体2のテープ5に形成される注入口6の目標位置を速くかつ高い精度で特定することが可能なプラスチックレンズ成形型用位置検出装置を提供することができる。
【0043】
この実施の形態による前記モールド組立体2は、前記検出部21と、前記テープ5に注入口6を形成する注入口形成装置11とを結ぶ搬送路34aを有する搬送装置34に支持されている。また、前記移動装置22は、前記検出部21に対して前記搬送装置34上のモールド組立体2を前記目標位置が前記軸線方向において前記注入口形成装置11の加工部分の位置と一致するように移動させるものである。
【0044】
このため、この実施の形態によれば、目標位置が特定されてから注入口形成装置11によって注入口6が形成されるまでの工程を自動化することが可能なプラスチックレンズ成形型用位置検出装置を提供することができる。注入口6を形成する位置である目標位置を特定してから注入口6を形成するまでの工程が自動化されると、注入口6を速くかつ高い精度で形成することができるようになる。
【0045】
この実施の形態による前記検出部21は、前記検出部21の光路26が前記モールド組立体2を横切る検出位置と、前記光路26が前記モールド組立体2の外に位置する後退位置との間で検出部21を往復させる往復移動装置51を備えている。
この実施の形態によれば、モールド組立体2に対する検出部21の位置が往復移動装置51によって決められる。このため、複数のモールド組立体2に対して順次目標位置を特定するにあたって、各モールド組立体2に対する光路26の位置が一定になる。したがって、全てのモールド組立体2の端縁を同一の条件で光学的に検出することができるから、一定の品質で目標位置を特定することが可能なプラスチックレンズ成形型用位置検出装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0046】
1…プラスチックレンズ成形用位置検出装置、2…モールド組立体、3…第1のモールド部材、4…第2のモールド部材、5…テープ、6…注入口、7…注入補助部材、11…注入口形成装置、21…検出部、24…発光素子、25…受光素子、31…クランプ装置、34…搬送装置、42…上下方向スライダ、44…アクチュエータ、51…往復移動装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離間する状態で対向する一対の円板状モールド部材と、これらのモールド部材の外周部に巻き付けられたテープとによって円柱状に形成されたモールド組立体と対向する検出部と、
前記検出部と前記モールド組立体との少なくともいずれか一方を他方に対して前記モールド組立体の軸線方向に相対的に移動させる移動装置と、
前記検出部の検出結果に基づいて前記テープに形成される注入口の目標位置を特定する位置特定部とを備え、
前記モールド部材とテープは、光を透過可能な材料によって形成され、
前記検出部は、発光素子と受光素子とを有し、かつこれらの発光素子と受光素子との間の光路が前記モールド組立体を前記軸線方向とは直交する方向に横切るように位置付けられ、
前記位置特定部は、前記移動装置による駆動によって前記光路が前記モールド部材を横切るときの光の透過率と、前記光路が前記テープを横切るときの光の透過率とを用いてモールド部材の端縁を検出し、この端縁の位置に基づいて前記目標位置を特定するものであることを特徴とするプラスチックレンズ成形型用位置検出装置。
【請求項2】
請求項1記載のプラスチックレンズ成形型用位置検出装置において、
前記モールド組立体は、前記検出部と、前記テープに注入口を形成する注入口形成装置とを結ぶ搬送路を有する搬送装置に支持され、
前記移動装置は、前記検出部に対して前記搬送装置上のモールド組立体を前記目標位置が前記軸線方向において前記注入口形成装置の加工部の位置と一致するように移動させるものであることを特徴とするプラスチックレンズ成形型用位置検出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のプラスチックレンズ成形型用位置検出装置において、前記検出部の前記光路が前記モールド組立体を横切る検出位置と、前記光路が前記モールド組立体の外に位置する後退位置との間で前記検出部を往復させる往復移動装置を備えていることを特徴とするプラスチックレンズ成形型用位置検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−201052(P2012−201052A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69457(P2011−69457)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】