プラスチックレンズ成形型用接着剤塗布装置
【課題】製造コストを低く抑え、接着剤の塗布量を容易に制御できるとともに、湾曲した取付片に接着剤を簡単に塗布できる接着剤塗布装置を提供する。
【解決手段】注入補助部材2を支持する支持部と、注入補助部材2の湾曲した取付片12に接着剤を塗布する塗布部4とを備える。塗布部4は、前記取付片12と対向するパイプからなる複数の塗布ノズル21を備える。塗布ノズル21に接着剤を供給する接着剤供給装置22を備える。取付片12と塗布ノズル21の間隔を変える駆動装置を備える。各塗布ノズル21の先端と接着面12aとの間の間隔は、全ての塗布ノズル21において均等に形成されている。
【解決手段】注入補助部材2を支持する支持部と、注入補助部材2の湾曲した取付片12に接着剤を塗布する塗布部4とを備える。塗布部4は、前記取付片12と対向するパイプからなる複数の塗布ノズル21を備える。塗布ノズル21に接着剤を供給する接着剤供給装置22を備える。取付片12と塗布ノズル21の間隔を変える駆動装置を備える。各塗布ノズル21の先端と接着面12aとの間の間隔は、全ての塗布ノズル21において均等に形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックレンズを成形する型に接着される注入補助部材に接着剤を塗布するためのプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の眼鏡用プラスチックレンズは、一般に注型重合によって形成されている。この注型重合とは、成形型にプラスチックレンズ材料を注入し、熱あるいは紫外線等のエネルギーにより硬化させて成形物を得る方法である。注型重合に用いる成形型は、たとえば特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
特許文献1に開示されている成形型は、レンズ成形用のキャビティが内部に形成されたモールド組立体と、このモールド組立体に接着された注入補助部材とによって構成されている。前記モールド組立体は、レンズ面成形用の型となる一対の円板状モールド部材と、これらのモールド部材の外周部にコバ面成形用の型となるように巻き付けられたテープとによって構成されている。前記テープには、プラスチックレンズ材料を注入するための注入口が形成されている。
【0004】
前記注入補助部材は、プラスチックレンズ材料を前記キャビティ内に導くためのものである。この注入補助部材は、プラスチックレンズ材料を供給するノズルを挿入するための筒体と、この筒体の一端部に一体に形成された板状の取付片とを備えている。前記取付片は、前記モールド組立体の外周面に沿うような形状に形成されている。この取付片には、前記筒体の内外を連通する開口が形成されている。この取付片は、粘着テープや接着剤によって前記モールド組立体の外周面に接着されている。
【0005】
この取付片に形成されている前記開口は、前記テープの注入口と対向する位置に位置付けられている。前記ノズルは、注入補助部材から前記テープの注入口に挿入され、前記キャビティ内にプラスチックレンズ材料を注入する。
【0006】
前記注入補助部材をモールド組立体に接着するためには、先ず、作業者が注入補助部材の取付片に粘着テープを貼着したり、接着剤を塗布する。粘着テープには、取付片の開口と対向する位置に貫通孔が形成されている。そして、このように粘着テープが貼着されたり接着剤が塗布された注入保持部材を作業者が手で持ち、モールド組立体の外周面に押し付けることによって、注入補助部材がモールド組立体に接着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開 WO 2010/098466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明者は、上述した注入補助部材の取付片に液状の接着剤を塗布する接着剤塗布装置を用いて接着剤を供給する工程の自動化を図ることを考えている。しかし、これを実現できる接着剤塗布装置は、後述する二つの問題点があることが分かった。
【0009】
第1の問題点は、接着剤の塗布量を正確に制御できる構成を採らなければならないからである。接着剤の塗布量が少ない場合は、注入補助部材をモールド組立体に正しく接着することができない。一方、接着剤の塗布量が多い場合には、接着剤が溢れて取付片の前記開口から注入補助部材の内部に流入するおそれがある。前記開口の内側に接着剤が入ると、プラスチックレンズ材料を注入補助部材からモールド組立体のキャビティに注入するときに接着剤がプラスチックレンズ材料とともにキャビティ内に混入するおそれがある。このように接着剤が混入したプラスチックレンズは不良品になる。
【0010】
第2の問題点は、注入補助部材の取付片がモールド組立体の外周面に沿うように湾曲しているからである。すなわち、塗布ノズルを移動させて接着剤を湾曲面に塗布するためには、塗布ノズルを移動させる機構が複雑になる。
【0011】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、製造コストを低く抑えながら、接着剤の塗布量を制御できるとともに、湾曲した取付片に接着剤を簡単に塗布できるプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するために、本発明に係るプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布装置は、プラスチックレンズを成形する中空の円柱状を呈する型の周壁に接着される取付片を有しかつ前記周壁に開口する注入口と連通するレンズ材料供給用の穴が形成された注入補助部材を支持する支持部と、前記支持部に支持された前記注入補助部材の取付片に接着剤を塗布する塗布部とを備え、前記取付片の接着面は、前記周壁の外周面に沿うような形状に形成され、前記塗布部は、前記取付片と対向するパイプからなる複数の塗布ノズルと、前記塗布ノズルに接着剤を供給する接着剤供給装置と、前記塗布ノズルと前記取付片との間隔を変える駆動装置とを備え、前記各塗布ノズルの先端と前記接着面との間の間隔が全ての塗布ノズルにおいて均等に形成されているものである。
【0013】
本発明は、前記発明において、前記接着剤供給装置は、全ての前記塗布ノズルを支持するホルダーを備え、前記ホルダーには、各塗布ノズルに連通されるとともに接着剤供給源から接着剤が供給される接着剤用貯留室が形成され、前記接着剤用貯留室の容積は、接着剤が全ての塗布ノズルに分配されるように形成されているものである。
【0014】
本発明は、前記発明において、前記塗布ノズルは、前記取付片の前記穴を囲むように配置されているものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、接着剤の供給量は、パイプからなる塗布ノズルから吐出される接着剤の体積に相当するから、簡単に測ることができる。
また、接着剤の塗布は、取付片と複数の塗布ノズルとの間隔を変えていわゆるスタンプ式に行うことができるから、簡単な機構で実現することができる。
したがって、本発明によれば、製造コストを低く抑えながら、接着剤の塗布量を制御できるとともに、湾曲した取付片に接着剤を簡単に塗布可能なプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布装置の概略構成を示す側面図である。
【図2】プラスチックレンズ用成形型の分解斜視図である。
【図3】プラスチックレンズ用成形型の断面図で、同図(A)は成形型の全体を破断して示す縦断面図、同図(B)は要部を拡大して示す断面図である。
【図4】接着剤塗布装置の具体的な構成を示す正面図である。
【図5】接着剤塗布装置の具体的な構成を示す側面図である。
【図6】接着剤塗布装置の具体的な構成を示す平面図である。
【図7】塗布ノズルとホルダーの底面図である。
【図8】図7におけるVIII−VIII線断面図である。
【図9】図7におけるIX−IX線断面図である。
【図10】塗布方法を説明するための要部の側面図で、同図(A)は接着剤の液滴を塗布ノズルに保持させた状態を示し、同図(B)は接着剤を取付片に付着させた状態を示し、同図(C)は塗布ノズルを所定距離だけ上昇させた状態を示す。
【図11】塗布方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布装置の一実施の形態を図1〜図11によって詳細に説明する。先ず、本発明に係る接着剤塗布装置の概略の構成を図1によって説明する。
【0018】
図1に示す接着剤塗布装置11は、接着剤(図示せず)が塗布される部材である注入補助部材2を支持する支持部3と、注入補助部材2に接着剤を塗布する塗布部4とを備えている。
前記注入補助部材2は、図2および図3に示すように、プラスチックレンズ成形型5の一部を構成するものである。プラスチックレンズ成形型5は、プラスチックレンズを成形するためのものである。この実施の形態によるプラスチックレンズ成形型5は、図2および図3(A)に示すように、中空の円柱状を呈するモールド組立体6と、このモールド組立体6の外周面に接着された前記注入補助部材2とによって構成されている。
【0019】
前記モールド組立体6は、一対の円板状のモールド部材(第1のモールド部材7と第2のモールド部材8)と、これらのモールド部材7,8の外周面に巻き付けられたテープ98とによって構成されている。
このモールド組立体6において、注入補助部材2は、テープ9に注入口10が形成された後に接着される。
【0020】
前記モールド部材7,8は、光を透過可能なガラス材料によって所定の形状に形成されており、レンズ面を成形するための型を構成している。図3において上側に位置する第1のモールド部材7の下面7aは、上方に向けて凸になる凹曲面であり、他方の第2のモールド部材8の上面8aは、上方に向けて凸になる凸曲面である。
前記テープ9は、レンズのコバ面を成形するための型を構成している。このテープ9は、光を透過可能な材料によって形成された、いわゆる粘着テープである。このテープ9は、第1、第2のモールド部材7,8の外周面に1周以上巻回されて貼り付けられている。すなわち、プラスチックレンズ成形型5の周壁は、このテープ9によって構成されている。
【0021】
前記テープ9は、第1、第2のモールド部材7,8の外周面の全域を覆っている。また、テープ9は、第2のモールド部材8の非使用面から突出することがないように第1、第2のモールド部材7,8に巻き付けられている。前記非使用面とは、第2のモールド部材8における上面8aとは反対側の凹面である。なお、テープ7の幅は、第1、第2のモールド部材7,8間の間隙を密閉する幅であれば適宜変更することができる。
【0022】
前記テープ9は、図示してはいないが帯状の基材と、この基材の片面(モールド部材7,8と対向する面)に形成された粘着層とによって構成されている。前記基材としては、たとえばポリエステルを挙げることができる。前記粘着層を形成する材料は、プラスチックレンズ材料に溶け出したり、重合を阻害したりしないものが望ましく、たとえばシリコーン系の粘着剤などを挙げることができる。
【0023】
このテープ9を一対のモールド部材7,8に巻き付けることによって、内部にレンズ成形用のキャビティ11(図3参照)を有するモールド組立体6が組み立てられる。
テープ9に形成された注入口10は、プラスチックレンズ材料をキャビティ11内に注入するためのものである。この注入口10は、第1、第2のモールド部材7,8に巻き付けられたテープ9にたとえばカッター(図示せず)によって形成される。
【0024】
前記注入補助部材2は、図2および図3に示すように、前記モールド組立体6の外周部に重ねることが可能な形状に形成された取付片12と、この取付片12に一体に形成された補助部材本体13とによって構成されている。この注入補助部材2は、プラスチック材料によって形成されている。前記取付片12は、モールド組立体6の外周面に沿うような曲率で湾曲した板状に形成されている。図3に示す組立状態においては、取付片12は接着剤14によってモールド組立体6に接着されている。
【0025】
前記補助部材本体13は、断面形状が四角形の筒体であって、前記取付片12からモールド組立体6とは反対側に延びるように形成されている。この実施の形態による補助部材本体13は、図3に示すように、モールド組立体6の径方向と平行に延びる平板部13aと、この平板部13aと対向する傾斜部13bとを有している。前記傾斜部13bは、取付片12に向かうにしたがって漸次平板部13aに接近するように傾斜している。また、補助部材本体13における取付片12とは反対側の端部には、フランジ15が設けられている。
【0026】
この補助部材本体13の内部は、溶融状態のプラスチックレンズ材料(図示せず)が流れる通路16になる。前記取付片12には、前記通路16の一端の開口となるスリット状の穴17(図3参照)が形成されている。この穴17は、取付片12をモールド組立体6側から見た状態において、前記平板部13aと平行に延びるように形成されている。この実施の形態においては、この穴17によって、本発明でいう「レンズ材料供給用の穴」が構成されている。
注入補助部材2は、テープ9に注入口10が形成された後、前記穴17が前記注入口10と対向する状態でモールド組立体6に接着される。
【0027】
前記接着剤塗布装置1の前記支持部3は、図1に示すように、注入補助部材2を取付片12が露出する状態で支持するように構成されている。図1に示す支持部3は、取付片12の接着面12aが上方を指向する状態で取付片12を支持している。なお、支持部3は、図示してはいないが、前記接着面12aが水平方向や下方を指向するように注入補助部材2を支持する構成を採ることができる。
【0028】
接着剤塗布装置1の前記塗布部4は、前記取付片12と対向する複数の塗布ノズル21と、接着剤供給装置22および駆動装置23とを備えている。
前記各塗布ノズル21は、パイプによって形成されている。図1に示す塗布ノズル21は、上下方向に延びる状態で前記取付片12の上方に位置付けられている。塗布ノズル21の下端は、下方に向けて開口している。各塗布ノズル21の先端(下端)と前記取付片12の接着面12a(図1においては上面)との間の間隔Dは、全ての塗布ノズル21において均等に形成されている。
【0029】
前記接着剤供給装置22は、前記塗布ノズル21に液状の接着剤14を供給するものである。また、この接着剤供給装置22は、図10に示すように、塗布ノズル21の先端に接着剤14が液滴14aとなって保持される状態を保つことができるように構成されている。この実施の形態で使用する接着剤14は、紫外線硬化型のもので、所定の粘度を有するものが用いられている。なお、接着剤14は、紫外線硬化型のものに限定することはなく、適宜変更することが可能である。
【0030】
前記駆動装置23は、前記塗布ノズル21と前記取付片12との間隔を変えることができるように構成されている。図1に示す駆動装置23は、塗布ノズル21を昇降させる構成のものである。前記接着剤供給装置22によって塗布ノズル21の先端に保持された接着剤14の液滴14aは、塗布ノズル21が図1に示す初期位置から下降することによって、取付片12の接着面12aに付着する。なお、前記取付片12の接着面12aが水平方向を指向する場合の駆動装置23は、塗布ノズル21が水平方向に移動するように構成される。また、前記取付片12が下方を指向する場合の駆動装置23は、塗布ノズル21が接着剤塗布時に取付片12に向けて上昇するように構成される。
【0031】
図1に示す接着剤塗布装置1においては、塗布ノズル21の先端に接着剤14の液滴14が形成された状態で塗布ノズル21が下降することによって、注入補助部材2の取付片12に接着剤14が塗布される。このため、接着剤14の供給量は、塗布ノズル21の先端に形成される液滴14aの体積と等しい一定量とすることができる。
また、接着剤14の塗布は、取付片12と複数の塗布ノズル21との間隔を変えていわゆるスタンプ式に行うことができるから、昇降機構のような簡単な機構で実現することができる。
したがって、この実施の形態によれば、装置そのものに複雑な機構を設けることなく、接着剤14の塗布量を制御できるとともに、湾曲した取付片12に接着剤14を簡単に塗布可能なプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布装置を提供することができる。
【0032】
次に、接着剤塗布装置1の具体的な構成を図4〜図11によって詳細に説明する。これらの図において、前記図1によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図4〜図6に示す接着剤塗布装置1は、一つの基台31の上に設けられた支持部3と塗布部4とによって構成されている。
【0033】
前記支持部3は、注入補助部材2を水平方向に挟んで保持する構成が採られている。この支持部3は、注入補助部材2を支持する支持用ステージ32と、この支持用ステージ32と協働して注入補助部材2を保持する保持装置33とによって構成されている。
前記支持用ステージ32の上面には、上方に向けて開口する凹溝34(図6参照)が形成されている。この凹溝34は、注入補助部材2の前記フランジ15が移動自在に嵌合する形状に形成されている。注入補助部材2は、作業者または自動投入装置(図示せず)によって前記フランジ15が前記凹溝34に嵌合する状態で支持用ステージ32に装填される。
【0034】
前記凹溝34の底には、支持用ステージ32と基台31とを上下方向に貫通する長穴35(図4および図6参照)が開口している。この長穴35には、下方からピン状の押圧部材36が挿入されている。
前記押圧部材36は、前記凹溝34の上に載せられた注入補助部材2を押して水平に移動させるためのものである。支持用ステージ32の一端部には、注入補助部材2を前記押圧部材36と協働して挟むためのストッパー32aが設けられている。
【0035】
前記押圧部材36は、図4および図5に示すように、基台31と支持用ステージ32とを上下方向に貫通する状態で基台31の下方のシリンダ装置37に支持されている。前記シリンダ装置37は、前記押圧部材36を図4中に実線で示す保持位置と、同図中に二点鎖線で示す待機位置との間で往復させるように構成されている。このシリンダ装置37と前記押圧部材36とによって、上述した保持装置33が構成されている。
【0036】
支持用ステージ32上に装填された注入補助部材2は、押圧部材36が前記保持位置に移動することにより前記ストッパー32aと押圧部材36とによって挟まれて保持される。このように注入補助部材2が支持用ステージ32上で保持された状態においては、取付片12の接着面12aが上方を指向する。
【0037】
この実施の形態による塗布部4は、接着剤14を塗布した後に塗布ノズル21を取付片12の上方から側方に移動させることができるように、水平移動装置41(図5および図6参照)の上に設けられている。接着剤塗布後に塗布ノズル21を側方に移動させる理由は、注入補助部材2を支持用ステージ32から取り出すときに、注入補助部材用移載装置(図示せず)や、注入補助部材2を持ち上げる作業者の腕が塗布ノズル21に接触することを避けるためである。
【0038】
前記水平移動装置41は、図5に示すように、水平方向に配置したエアシリンダ42を動力源として構成されている。この水平移動装置41は、塗布部4の駆動装置23を図5中に実線で示す待機位置と、同図中に二点鎖線Aで示す後退位置との間で往復させる。駆動装置23が前記待機位置に位置している状態においては、後述する塗布ノズル21が前記取付片12と対向する。また、駆動装置23が前記後退位置に位置している状態においては、塗布ノズル21が取付片12の上方から側方に離れる。
【0039】
前記駆動装置23は、図5に示すように、動力源としてモータ43を備えており、このモータ43の回転を往復運動に変えて駆動部材44を昇降させるものである。駆動部材44は、支持用ステー45を介して後述する接着剤供給装置22と塗布ノズル21とを支持している。
【0040】
この駆動装置23の動作は、図示していない制御装置によって制御される。この制御装置は、注入補助部材2に自動で接着剤14が塗布されるように、上述したシリンダ装置37、水平移動装置41および後述する接着剤供給装置22の動作を制御する。
前記駆動装置23は、制御装置による制御によって、接着剤14の塗布時に塗布ノズル21および接着剤供給装置22を図5おいて実線で示す塗布位置に下降させる。
【0041】
また、駆動装置23は、詳細は後述するが、制御装置による制御によって、接着剤14の塗布後に塗布ノズル21と接着剤供給装置22とを2回に分けて同図中に二点鎖線Bで示す待機位置に上昇させる。塗布ノズル21が前記待機位置に上昇することによって、塗布ノズル21と取付片12との間に隙間が広く形成される。この状態においては、水平移動装置41による駆動によって駆動装置23が待機位置と後退位置との間で水平方向に移動したとしても、塗布ノズル21が取付片12に接触することはない。
【0042】
この実施の形態による接着剤供給装置22は、図4および図5に示すように、前記支持用ステー45に固定されたハウジング51と、このハウジング51の内部に設けられた弁52と、ハウジング51の下端部から下方に延びるパイプ53とを備えている。前記ハウジング51の上端部には、接着剤14をハウジング51内に補充するためのホース54が接続されている。このホース54は、ハウジング51の昇降動作を妨げることがないように、可撓性を有するものが用いられている。このホース54におけるハウジング51とは反対側の端部は、接着剤用タンク(図示せず)に接続されている。接着剤は、前記接着剤用タンクから空気圧によってホース54内に押し出され、ホース54内と通ってハウジング51内に供給される。
【0043】
前記ハウジング51の内部には接着剤用通路55が形成されている。この接着剤用通路55は、前記ホース54と前記パイプ53とを接続し、パイプ53の内部を経て後述する塗布ノズル21まで延びている。この実施の形態においては、前記ハウジング51によって本発明でいう「接着剤供給源」が構成されている。
【0044】
前記弁52は、前記接着剤用通路55の中間部を開閉するもので、詳細には図示してはいないが、たとえばソレノイドで駆動されるスプール弁によって構成することができる。前記接着剤用通路55は、この弁52が閉じている状態においては、接着剤14が流れることができないように形成されている。弁52が閉じている状態においては、弁52より上流側の接着剤用通路55の圧力が上昇する。前記弁52が開いている状態においては、接着剤14が接着剤用通路55を通してハウジング51内から塗布ノズル21に供給される。
【0045】
塗布ノズル21の下端を含めて接着剤用通路55が接着剤14で満たされている場合は、前記弁52が開いたときに塗布ノズル21から接着剤14が流出する。この実施の形態による弁52は、予め定めた供給時間だけ開いた後に閉じるように構成されている。前記供給時間は、接着剤14が塗布ノズル21の先端から流れ出た後に塗布ノズル21の先端に液滴14aとなって溜まるまでの時間に設定されている。前記弁52が前記供給時間だけ開いた後に閉じることによって、図10(A)に示すように、塗布ノズル21の先端に接着剤14の液滴14aが表面張力で略球状に形成される。
【0046】
この実施の形態による塗布ノズル21は、図7〜図9に示すように、一つのホルダー56に支持されている。塗布ノズル21の本数は、図7〜図9はあくまで例示に過ぎず、特に限定されることはない。前記ホルダー56は、上方に向けて開口する箱状の本体57と、この本体57の開口部を閉塞する蓋体58とによって構成されている。
前記蓋体58は、前記パイプ53の下端部に取付けられている。パイプ53の下端は、ホルダー56の内部に形成された接着剤用貯留室59に開口している。すなわち、この接着剤用貯留室59は、前記パイプ53の内部に連通されており、上述した接着剤用通路55の一部を構成している。
【0047】
前記塗布ノズル21は、図8および図9に示すように、前記本体57の下壁57aを貫通する状態で下壁57aに取付けられている。すなわち、接着剤用貯留室59は、各塗布ノズル21に連通されている。この接着剤用貯留室59の容積は、接着剤用貯留室59に供給された接着剤14が全ての塗布ノズル21に分配されるように、接着剤14を予め定めた量だけ貯留できる大きさに設定されている。
【0048】
この実施の形態による塗布ノズル21の長さは、前記下壁57aが水平方向に延びるように形成されているために、各塗布ノズル21の水平方向の位置に対応させて変えられている。すなわち、取付片12の長手方向の中央と対応する塗布ノズル21が最も長くなり、取付片12の長手方向の両端と対応する塗布ノズル21が最も短くなる。これらの塗布ノズル21の先端(下端)と取付片12の接着面12aとの間隔は、この実施の形態においても全ての塗布ノズル21において等しくなるように形成されている。
【0049】
これらの塗布ノズル21は、図7に示すように、下方から見て長方形状に並ぶように配置されている。これらの塗布ノズル21が並ぶことによって形成される長方形は、取付片12を上方から見たときに取付片12の前記穴17を囲むような大きさに形成されている。すなわち、複数の塗布ノズル21は、上方から見て前記穴17を囲むように配置されている。
【0050】
次に、この実施の形態による接着剤塗布装置1を用いた接着剤塗布方法を図10(A)〜(C)と図11に示すフローチャートとによって説明する。
この実施の形態による接着剤塗布装置1は、接着剤14を塗布する動作を開始する以前に予め準備動作を行う。この準備動作は、前記駆動装置23が前記後退位置に移動する動作と、塗布ノズル21と接着剤供給装置22とが前記待機位置に上昇する動作である。この準備動作は、接着剤14の塗布が終了した直後に実施することができる。
【0051】
接着剤14を塗布するためには、先ず、作業者または自動投入装置が注入補助部材2を支持用ステージ32の凹溝34にフランジ15が嵌合する状態で載せる。作業者が注入補助部材2を支持用ステージ32に装填した場合は、作業者がたとえばスタートスイッチ(図示せず)をON操作し、保持装置33を動作させる。なお、自動投入装置を使用する場合は、注入補助部材2が支持用ステージ32上に載置された後に自動で保持装置33が動作を開始する構成を採ることができる。
【0052】
保持装置33は、押圧部材36を前記長穴35に沿って水平方向に移動させ、押圧部材36と前記ストッパー32aとによって注入補助部材2を挟んで保持する。このように保持装置33が注入補助部材2を保持することによって、図11に示すフローチャートの支持ステップS1が終了する。
次に、水平移動装置41が駆動装置23を前記後退位置から前記待機位置に移動させる。このとき、接着剤供給装置22の接着剤用通路55が接着剤14で満たされていない場合は、弁52を開き、接着剤14を塗布ノズル21に供給する。弁52は、全ての塗布ノズル21から接着剤14が流出する状態で閉じられる。
【0053】
駆動装置23が前記待機位置に移動した後、接着剤供給装置22の弁52が予め定めた供給時間だけ開いてから閉じる。このように弁52が開閉することによって、図10(A)に示すように、塗布ノズル21の下端に接着剤14の液滴14aが形成され、図11に示すフローチャートの接着剤供給ステップS2が終了する。
【0054】
次いで、図11に示すフローチャートの塗布ステップS3において、駆動装置23が接着剤供給装置22と塗布ノズル21とを下降位置まで下降させる。この実施の形態でいう前記下降位置とは、図10(B)に示すように、接着剤14の液滴14aが取付片12の上面(接着面12a)に付着するときの塗布ノズル21および接着剤供給装置22の上下方向の位置である。
【0055】
すなわち、塗布ステップS3を実施することにより、接着剤14の液滴14aが取付片12の接着面12aに付着する。この接着剤14は、複数の塗布ノズル21によっていわゆるスタンプ式に取付片12の穴17を囲む位置に塗布される。
接着剤14が取付片12に付着した後、図11に示すフローチャートの接着剤分離ステップS4において、駆動装置23が塗布ノズル21から接着剤14を分離させる動作を行う。
【0056】
塗布ノズル21の下端が接着剤14を介して取付片12に接続されている状態で塗布ノズル21が上昇すると、接着剤14が糸を引いて上方に伸びるようになる。この糸は、伸びた後に粘性が低下して切れる。長く伸びた糸が上端(塗布ノズル21との接続部)で切れて倒れると、取付片12の前記穴17に入るおそれがある。
このように接着剤14からなる糸が穴17に入ることを防ぐために、前記駆動装置23は、先ず、図10(C)に示すように、塗布ノズル21と接着剤供給装置22とを前記糸が短く伸びる程度の長さL1だけ上昇させる。
【0057】
この上昇行程において、長さL1に相当する長さの接着剤14からなる糸61が形成される。前記長さL1は、前記取付片12における接着剤14が塗布された位置と前記穴17との距離L2(図7参照)より短く設定されている。このため、長さL1の前記糸61が上端で切れて倒れたとしても、糸61が前記穴17に入ることはない。
駆動装置23は、塗布ノズル21と接着剤供給装置22とを前記上昇行程で上昇させた後に前記糸61の粘性が失われて糸61が切れるまで停止させる。
【0058】
前記糸61が切れたか否かの判定は、上昇後の経過時間に基づいて行われる。すなわち、駆動装置23は、第1回目の上昇行程が終了した後に糸61が切れるために必要な時間が経過するまで待機する。この待機動作が終了することによって接着剤分離ステップS4が終了する。
その後、駆動装置23は、図11に示すフローチャートの復帰ステップS5において、塗布ノズル21と接着剤供給装置22とを図5中に二点鎖線Bで示す待機位置に上昇させる。また、この復帰ステップS5においては、前記水平移動装置41が前記駆動装置23を図5中に二点鎖線Aで示す後退位置に移動させ、支持部3の保持装置33が押圧部材36を初期の位置に戻す。
【0059】
上述したように接着剤14が塗布された注入補助部材2は、復帰ステップS5で各部材が初期の位置に戻された後、注入補助部材用移載装置(図示せず)や作業者によって支持用ステージ32から取出され、次の工程に送られる。注入補助部材2は、次の工程において、モールド組立体6の所定の位置に接着させられる。
【0060】
この実施の形態を採る場合であっても、前記液滴14aの体積と等しい一定量だけ接着剤14が供給されるから、接着剤14の供給量を制御することができる。
また、接着剤14の塗布は、取付片12に対して複数の塗布ノズル21を下降させていわゆるスタンプ式に行うことができるから、簡単な機構で実現することができる。
したがって、この実施の形態を採る場合であっても、製造コストを低く抑えながら、接着剤14の塗布量を制御できるとともに、湾曲した取付片12に接着剤14を簡単に塗布可能なプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布装置を提供することができる。
【0061】
この実施の形態による接着剤供給装置22は、全ての塗布ノズル21を支持するホルダー56を備えている。前記ホルダー56には、各塗布ノズル21に連通されるとともに接着剤供給源(ハウジング51)から接着剤14が供給される接着剤用貯留室59が形成されている。この接着剤用貯留室59の容積は、接着剤14が全ての塗布ノズル21に分配されるように形成されているものである。
【0062】
このため、この実施の形態による接着剤塗布装置1は、接着剤14が全ての塗布ノズル21に均等に供給されるから、各塗布ノズル21の先端に保持される液滴14aの大きさが略一定になる。この結果、この実施の形態による接着剤供給装置22により注入補助部材2を接着剤14を塗布することによって、プラスチックレンズの成形時に接着剤14がプラスチックレンズ材料中に混入することを確実に防ぐことができる。したがって、この実施の形態による接着剤塗布装置1を使用することによって、より一層品質が高いプラスチックレンズを製造することが可能になる。
【0063】
この実施の形態による複数の塗布ノズル21は、前記取付片12の前記穴17を囲むように配置されている。このため、取付片12の接着面12aの全域がプラスチックレンズ成形用の型に接着されるから、注入補助部材2が前記型に強固に接着される。この結果、注入補助部材2を介してプラスチックレンズ成形用の型を支持することが可能になるから、プラスチックレンズ成形用の型の搬送、位置決めなどを容易に行うことが可能になる。したがって、この実施の形態による接着剤塗布装置1を使用することによって、プラスチックレンズ成形用の型にプラスチックレンズ材料を注入する工程を自動化することが可能になり、プラスチックレンズをより一層低いコストで製造することができるようになる。
【0064】
塗布ノズル21に接着剤14を供給するための接着剤供給装置22は、上述した実施の形態で示した構造のものに限定されることはない。接着剤供給装置22としては、接着剤14を重力で流下させて供給する構造のものを使用することができる。
【0065】
上述した実施の形態においては、塗布ノズル21が下降位置に下降する以前に接着剤供給ステップS2が実施される例を示した。しかし、接着剤供給ステップS2は、塗布ノズル21が図10(B)に示す下降位置まで下降した後に実施することができるし、塗布ノズル21が下降している途中であっても実施することができる。この構成を採る場合であっても、接着剤14の供給量は、パイプからなる塗布ノズル21から吐出される接着剤14の体積に相当するから、簡単に測ることができる。
【符号の説明】
【0066】
1…接着剤塗布装置、2…注入補助部材、5…プラスチックレンズ成形型、6…モールド組立体、9…テープ、12…取付片、14…接着剤、14a…液滴、17…穴、21…塗布ノズル、22…接着剤供給装置、32…支持用ステージ、33…保持装置、41…水平移動装置、56…ホルダー、59…接着剤用貯留室。
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックレンズを成形する型に接着される注入補助部材に接着剤を塗布するためのプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の眼鏡用プラスチックレンズは、一般に注型重合によって形成されている。この注型重合とは、成形型にプラスチックレンズ材料を注入し、熱あるいは紫外線等のエネルギーにより硬化させて成形物を得る方法である。注型重合に用いる成形型は、たとえば特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
特許文献1に開示されている成形型は、レンズ成形用のキャビティが内部に形成されたモールド組立体と、このモールド組立体に接着された注入補助部材とによって構成されている。前記モールド組立体は、レンズ面成形用の型となる一対の円板状モールド部材と、これらのモールド部材の外周部にコバ面成形用の型となるように巻き付けられたテープとによって構成されている。前記テープには、プラスチックレンズ材料を注入するための注入口が形成されている。
【0004】
前記注入補助部材は、プラスチックレンズ材料を前記キャビティ内に導くためのものである。この注入補助部材は、プラスチックレンズ材料を供給するノズルを挿入するための筒体と、この筒体の一端部に一体に形成された板状の取付片とを備えている。前記取付片は、前記モールド組立体の外周面に沿うような形状に形成されている。この取付片には、前記筒体の内外を連通する開口が形成されている。この取付片は、粘着テープや接着剤によって前記モールド組立体の外周面に接着されている。
【0005】
この取付片に形成されている前記開口は、前記テープの注入口と対向する位置に位置付けられている。前記ノズルは、注入補助部材から前記テープの注入口に挿入され、前記キャビティ内にプラスチックレンズ材料を注入する。
【0006】
前記注入補助部材をモールド組立体に接着するためには、先ず、作業者が注入補助部材の取付片に粘着テープを貼着したり、接着剤を塗布する。粘着テープには、取付片の開口と対向する位置に貫通孔が形成されている。そして、このように粘着テープが貼着されたり接着剤が塗布された注入保持部材を作業者が手で持ち、モールド組立体の外周面に押し付けることによって、注入補助部材がモールド組立体に接着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開 WO 2010/098466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明者は、上述した注入補助部材の取付片に液状の接着剤を塗布する接着剤塗布装置を用いて接着剤を供給する工程の自動化を図ることを考えている。しかし、これを実現できる接着剤塗布装置は、後述する二つの問題点があることが分かった。
【0009】
第1の問題点は、接着剤の塗布量を正確に制御できる構成を採らなければならないからである。接着剤の塗布量が少ない場合は、注入補助部材をモールド組立体に正しく接着することができない。一方、接着剤の塗布量が多い場合には、接着剤が溢れて取付片の前記開口から注入補助部材の内部に流入するおそれがある。前記開口の内側に接着剤が入ると、プラスチックレンズ材料を注入補助部材からモールド組立体のキャビティに注入するときに接着剤がプラスチックレンズ材料とともにキャビティ内に混入するおそれがある。このように接着剤が混入したプラスチックレンズは不良品になる。
【0010】
第2の問題点は、注入補助部材の取付片がモールド組立体の外周面に沿うように湾曲しているからである。すなわち、塗布ノズルを移動させて接着剤を湾曲面に塗布するためには、塗布ノズルを移動させる機構が複雑になる。
【0011】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、製造コストを低く抑えながら、接着剤の塗布量を制御できるとともに、湾曲した取付片に接着剤を簡単に塗布できるプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するために、本発明に係るプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布装置は、プラスチックレンズを成形する中空の円柱状を呈する型の周壁に接着される取付片を有しかつ前記周壁に開口する注入口と連通するレンズ材料供給用の穴が形成された注入補助部材を支持する支持部と、前記支持部に支持された前記注入補助部材の取付片に接着剤を塗布する塗布部とを備え、前記取付片の接着面は、前記周壁の外周面に沿うような形状に形成され、前記塗布部は、前記取付片と対向するパイプからなる複数の塗布ノズルと、前記塗布ノズルに接着剤を供給する接着剤供給装置と、前記塗布ノズルと前記取付片との間隔を変える駆動装置とを備え、前記各塗布ノズルの先端と前記接着面との間の間隔が全ての塗布ノズルにおいて均等に形成されているものである。
【0013】
本発明は、前記発明において、前記接着剤供給装置は、全ての前記塗布ノズルを支持するホルダーを備え、前記ホルダーには、各塗布ノズルに連通されるとともに接着剤供給源から接着剤が供給される接着剤用貯留室が形成され、前記接着剤用貯留室の容積は、接着剤が全ての塗布ノズルに分配されるように形成されているものである。
【0014】
本発明は、前記発明において、前記塗布ノズルは、前記取付片の前記穴を囲むように配置されているものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、接着剤の供給量は、パイプからなる塗布ノズルから吐出される接着剤の体積に相当するから、簡単に測ることができる。
また、接着剤の塗布は、取付片と複数の塗布ノズルとの間隔を変えていわゆるスタンプ式に行うことができるから、簡単な機構で実現することができる。
したがって、本発明によれば、製造コストを低く抑えながら、接着剤の塗布量を制御できるとともに、湾曲した取付片に接着剤を簡単に塗布可能なプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布装置の概略構成を示す側面図である。
【図2】プラスチックレンズ用成形型の分解斜視図である。
【図3】プラスチックレンズ用成形型の断面図で、同図(A)は成形型の全体を破断して示す縦断面図、同図(B)は要部を拡大して示す断面図である。
【図4】接着剤塗布装置の具体的な構成を示す正面図である。
【図5】接着剤塗布装置の具体的な構成を示す側面図である。
【図6】接着剤塗布装置の具体的な構成を示す平面図である。
【図7】塗布ノズルとホルダーの底面図である。
【図8】図7におけるVIII−VIII線断面図である。
【図9】図7におけるIX−IX線断面図である。
【図10】塗布方法を説明するための要部の側面図で、同図(A)は接着剤の液滴を塗布ノズルに保持させた状態を示し、同図(B)は接着剤を取付片に付着させた状態を示し、同図(C)は塗布ノズルを所定距離だけ上昇させた状態を示す。
【図11】塗布方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布装置の一実施の形態を図1〜図11によって詳細に説明する。先ず、本発明に係る接着剤塗布装置の概略の構成を図1によって説明する。
【0018】
図1に示す接着剤塗布装置11は、接着剤(図示せず)が塗布される部材である注入補助部材2を支持する支持部3と、注入補助部材2に接着剤を塗布する塗布部4とを備えている。
前記注入補助部材2は、図2および図3に示すように、プラスチックレンズ成形型5の一部を構成するものである。プラスチックレンズ成形型5は、プラスチックレンズを成形するためのものである。この実施の形態によるプラスチックレンズ成形型5は、図2および図3(A)に示すように、中空の円柱状を呈するモールド組立体6と、このモールド組立体6の外周面に接着された前記注入補助部材2とによって構成されている。
【0019】
前記モールド組立体6は、一対の円板状のモールド部材(第1のモールド部材7と第2のモールド部材8)と、これらのモールド部材7,8の外周面に巻き付けられたテープ98とによって構成されている。
このモールド組立体6において、注入補助部材2は、テープ9に注入口10が形成された後に接着される。
【0020】
前記モールド部材7,8は、光を透過可能なガラス材料によって所定の形状に形成されており、レンズ面を成形するための型を構成している。図3において上側に位置する第1のモールド部材7の下面7aは、上方に向けて凸になる凹曲面であり、他方の第2のモールド部材8の上面8aは、上方に向けて凸になる凸曲面である。
前記テープ9は、レンズのコバ面を成形するための型を構成している。このテープ9は、光を透過可能な材料によって形成された、いわゆる粘着テープである。このテープ9は、第1、第2のモールド部材7,8の外周面に1周以上巻回されて貼り付けられている。すなわち、プラスチックレンズ成形型5の周壁は、このテープ9によって構成されている。
【0021】
前記テープ9は、第1、第2のモールド部材7,8の外周面の全域を覆っている。また、テープ9は、第2のモールド部材8の非使用面から突出することがないように第1、第2のモールド部材7,8に巻き付けられている。前記非使用面とは、第2のモールド部材8における上面8aとは反対側の凹面である。なお、テープ7の幅は、第1、第2のモールド部材7,8間の間隙を密閉する幅であれば適宜変更することができる。
【0022】
前記テープ9は、図示してはいないが帯状の基材と、この基材の片面(モールド部材7,8と対向する面)に形成された粘着層とによって構成されている。前記基材としては、たとえばポリエステルを挙げることができる。前記粘着層を形成する材料は、プラスチックレンズ材料に溶け出したり、重合を阻害したりしないものが望ましく、たとえばシリコーン系の粘着剤などを挙げることができる。
【0023】
このテープ9を一対のモールド部材7,8に巻き付けることによって、内部にレンズ成形用のキャビティ11(図3参照)を有するモールド組立体6が組み立てられる。
テープ9に形成された注入口10は、プラスチックレンズ材料をキャビティ11内に注入するためのものである。この注入口10は、第1、第2のモールド部材7,8に巻き付けられたテープ9にたとえばカッター(図示せず)によって形成される。
【0024】
前記注入補助部材2は、図2および図3に示すように、前記モールド組立体6の外周部に重ねることが可能な形状に形成された取付片12と、この取付片12に一体に形成された補助部材本体13とによって構成されている。この注入補助部材2は、プラスチック材料によって形成されている。前記取付片12は、モールド組立体6の外周面に沿うような曲率で湾曲した板状に形成されている。図3に示す組立状態においては、取付片12は接着剤14によってモールド組立体6に接着されている。
【0025】
前記補助部材本体13は、断面形状が四角形の筒体であって、前記取付片12からモールド組立体6とは反対側に延びるように形成されている。この実施の形態による補助部材本体13は、図3に示すように、モールド組立体6の径方向と平行に延びる平板部13aと、この平板部13aと対向する傾斜部13bとを有している。前記傾斜部13bは、取付片12に向かうにしたがって漸次平板部13aに接近するように傾斜している。また、補助部材本体13における取付片12とは反対側の端部には、フランジ15が設けられている。
【0026】
この補助部材本体13の内部は、溶融状態のプラスチックレンズ材料(図示せず)が流れる通路16になる。前記取付片12には、前記通路16の一端の開口となるスリット状の穴17(図3参照)が形成されている。この穴17は、取付片12をモールド組立体6側から見た状態において、前記平板部13aと平行に延びるように形成されている。この実施の形態においては、この穴17によって、本発明でいう「レンズ材料供給用の穴」が構成されている。
注入補助部材2は、テープ9に注入口10が形成された後、前記穴17が前記注入口10と対向する状態でモールド組立体6に接着される。
【0027】
前記接着剤塗布装置1の前記支持部3は、図1に示すように、注入補助部材2を取付片12が露出する状態で支持するように構成されている。図1に示す支持部3は、取付片12の接着面12aが上方を指向する状態で取付片12を支持している。なお、支持部3は、図示してはいないが、前記接着面12aが水平方向や下方を指向するように注入補助部材2を支持する構成を採ることができる。
【0028】
接着剤塗布装置1の前記塗布部4は、前記取付片12と対向する複数の塗布ノズル21と、接着剤供給装置22および駆動装置23とを備えている。
前記各塗布ノズル21は、パイプによって形成されている。図1に示す塗布ノズル21は、上下方向に延びる状態で前記取付片12の上方に位置付けられている。塗布ノズル21の下端は、下方に向けて開口している。各塗布ノズル21の先端(下端)と前記取付片12の接着面12a(図1においては上面)との間の間隔Dは、全ての塗布ノズル21において均等に形成されている。
【0029】
前記接着剤供給装置22は、前記塗布ノズル21に液状の接着剤14を供給するものである。また、この接着剤供給装置22は、図10に示すように、塗布ノズル21の先端に接着剤14が液滴14aとなって保持される状態を保つことができるように構成されている。この実施の形態で使用する接着剤14は、紫外線硬化型のもので、所定の粘度を有するものが用いられている。なお、接着剤14は、紫外線硬化型のものに限定することはなく、適宜変更することが可能である。
【0030】
前記駆動装置23は、前記塗布ノズル21と前記取付片12との間隔を変えることができるように構成されている。図1に示す駆動装置23は、塗布ノズル21を昇降させる構成のものである。前記接着剤供給装置22によって塗布ノズル21の先端に保持された接着剤14の液滴14aは、塗布ノズル21が図1に示す初期位置から下降することによって、取付片12の接着面12aに付着する。なお、前記取付片12の接着面12aが水平方向を指向する場合の駆動装置23は、塗布ノズル21が水平方向に移動するように構成される。また、前記取付片12が下方を指向する場合の駆動装置23は、塗布ノズル21が接着剤塗布時に取付片12に向けて上昇するように構成される。
【0031】
図1に示す接着剤塗布装置1においては、塗布ノズル21の先端に接着剤14の液滴14が形成された状態で塗布ノズル21が下降することによって、注入補助部材2の取付片12に接着剤14が塗布される。このため、接着剤14の供給量は、塗布ノズル21の先端に形成される液滴14aの体積と等しい一定量とすることができる。
また、接着剤14の塗布は、取付片12と複数の塗布ノズル21との間隔を変えていわゆるスタンプ式に行うことができるから、昇降機構のような簡単な機構で実現することができる。
したがって、この実施の形態によれば、装置そのものに複雑な機構を設けることなく、接着剤14の塗布量を制御できるとともに、湾曲した取付片12に接着剤14を簡単に塗布可能なプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布装置を提供することができる。
【0032】
次に、接着剤塗布装置1の具体的な構成を図4〜図11によって詳細に説明する。これらの図において、前記図1によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図4〜図6に示す接着剤塗布装置1は、一つの基台31の上に設けられた支持部3と塗布部4とによって構成されている。
【0033】
前記支持部3は、注入補助部材2を水平方向に挟んで保持する構成が採られている。この支持部3は、注入補助部材2を支持する支持用ステージ32と、この支持用ステージ32と協働して注入補助部材2を保持する保持装置33とによって構成されている。
前記支持用ステージ32の上面には、上方に向けて開口する凹溝34(図6参照)が形成されている。この凹溝34は、注入補助部材2の前記フランジ15が移動自在に嵌合する形状に形成されている。注入補助部材2は、作業者または自動投入装置(図示せず)によって前記フランジ15が前記凹溝34に嵌合する状態で支持用ステージ32に装填される。
【0034】
前記凹溝34の底には、支持用ステージ32と基台31とを上下方向に貫通する長穴35(図4および図6参照)が開口している。この長穴35には、下方からピン状の押圧部材36が挿入されている。
前記押圧部材36は、前記凹溝34の上に載せられた注入補助部材2を押して水平に移動させるためのものである。支持用ステージ32の一端部には、注入補助部材2を前記押圧部材36と協働して挟むためのストッパー32aが設けられている。
【0035】
前記押圧部材36は、図4および図5に示すように、基台31と支持用ステージ32とを上下方向に貫通する状態で基台31の下方のシリンダ装置37に支持されている。前記シリンダ装置37は、前記押圧部材36を図4中に実線で示す保持位置と、同図中に二点鎖線で示す待機位置との間で往復させるように構成されている。このシリンダ装置37と前記押圧部材36とによって、上述した保持装置33が構成されている。
【0036】
支持用ステージ32上に装填された注入補助部材2は、押圧部材36が前記保持位置に移動することにより前記ストッパー32aと押圧部材36とによって挟まれて保持される。このように注入補助部材2が支持用ステージ32上で保持された状態においては、取付片12の接着面12aが上方を指向する。
【0037】
この実施の形態による塗布部4は、接着剤14を塗布した後に塗布ノズル21を取付片12の上方から側方に移動させることができるように、水平移動装置41(図5および図6参照)の上に設けられている。接着剤塗布後に塗布ノズル21を側方に移動させる理由は、注入補助部材2を支持用ステージ32から取り出すときに、注入補助部材用移載装置(図示せず)や、注入補助部材2を持ち上げる作業者の腕が塗布ノズル21に接触することを避けるためである。
【0038】
前記水平移動装置41は、図5に示すように、水平方向に配置したエアシリンダ42を動力源として構成されている。この水平移動装置41は、塗布部4の駆動装置23を図5中に実線で示す待機位置と、同図中に二点鎖線Aで示す後退位置との間で往復させる。駆動装置23が前記待機位置に位置している状態においては、後述する塗布ノズル21が前記取付片12と対向する。また、駆動装置23が前記後退位置に位置している状態においては、塗布ノズル21が取付片12の上方から側方に離れる。
【0039】
前記駆動装置23は、図5に示すように、動力源としてモータ43を備えており、このモータ43の回転を往復運動に変えて駆動部材44を昇降させるものである。駆動部材44は、支持用ステー45を介して後述する接着剤供給装置22と塗布ノズル21とを支持している。
【0040】
この駆動装置23の動作は、図示していない制御装置によって制御される。この制御装置は、注入補助部材2に自動で接着剤14が塗布されるように、上述したシリンダ装置37、水平移動装置41および後述する接着剤供給装置22の動作を制御する。
前記駆動装置23は、制御装置による制御によって、接着剤14の塗布時に塗布ノズル21および接着剤供給装置22を図5おいて実線で示す塗布位置に下降させる。
【0041】
また、駆動装置23は、詳細は後述するが、制御装置による制御によって、接着剤14の塗布後に塗布ノズル21と接着剤供給装置22とを2回に分けて同図中に二点鎖線Bで示す待機位置に上昇させる。塗布ノズル21が前記待機位置に上昇することによって、塗布ノズル21と取付片12との間に隙間が広く形成される。この状態においては、水平移動装置41による駆動によって駆動装置23が待機位置と後退位置との間で水平方向に移動したとしても、塗布ノズル21が取付片12に接触することはない。
【0042】
この実施の形態による接着剤供給装置22は、図4および図5に示すように、前記支持用ステー45に固定されたハウジング51と、このハウジング51の内部に設けられた弁52と、ハウジング51の下端部から下方に延びるパイプ53とを備えている。前記ハウジング51の上端部には、接着剤14をハウジング51内に補充するためのホース54が接続されている。このホース54は、ハウジング51の昇降動作を妨げることがないように、可撓性を有するものが用いられている。このホース54におけるハウジング51とは反対側の端部は、接着剤用タンク(図示せず)に接続されている。接着剤は、前記接着剤用タンクから空気圧によってホース54内に押し出され、ホース54内と通ってハウジング51内に供給される。
【0043】
前記ハウジング51の内部には接着剤用通路55が形成されている。この接着剤用通路55は、前記ホース54と前記パイプ53とを接続し、パイプ53の内部を経て後述する塗布ノズル21まで延びている。この実施の形態においては、前記ハウジング51によって本発明でいう「接着剤供給源」が構成されている。
【0044】
前記弁52は、前記接着剤用通路55の中間部を開閉するもので、詳細には図示してはいないが、たとえばソレノイドで駆動されるスプール弁によって構成することができる。前記接着剤用通路55は、この弁52が閉じている状態においては、接着剤14が流れることができないように形成されている。弁52が閉じている状態においては、弁52より上流側の接着剤用通路55の圧力が上昇する。前記弁52が開いている状態においては、接着剤14が接着剤用通路55を通してハウジング51内から塗布ノズル21に供給される。
【0045】
塗布ノズル21の下端を含めて接着剤用通路55が接着剤14で満たされている場合は、前記弁52が開いたときに塗布ノズル21から接着剤14が流出する。この実施の形態による弁52は、予め定めた供給時間だけ開いた後に閉じるように構成されている。前記供給時間は、接着剤14が塗布ノズル21の先端から流れ出た後に塗布ノズル21の先端に液滴14aとなって溜まるまでの時間に設定されている。前記弁52が前記供給時間だけ開いた後に閉じることによって、図10(A)に示すように、塗布ノズル21の先端に接着剤14の液滴14aが表面張力で略球状に形成される。
【0046】
この実施の形態による塗布ノズル21は、図7〜図9に示すように、一つのホルダー56に支持されている。塗布ノズル21の本数は、図7〜図9はあくまで例示に過ぎず、特に限定されることはない。前記ホルダー56は、上方に向けて開口する箱状の本体57と、この本体57の開口部を閉塞する蓋体58とによって構成されている。
前記蓋体58は、前記パイプ53の下端部に取付けられている。パイプ53の下端は、ホルダー56の内部に形成された接着剤用貯留室59に開口している。すなわち、この接着剤用貯留室59は、前記パイプ53の内部に連通されており、上述した接着剤用通路55の一部を構成している。
【0047】
前記塗布ノズル21は、図8および図9に示すように、前記本体57の下壁57aを貫通する状態で下壁57aに取付けられている。すなわち、接着剤用貯留室59は、各塗布ノズル21に連通されている。この接着剤用貯留室59の容積は、接着剤用貯留室59に供給された接着剤14が全ての塗布ノズル21に分配されるように、接着剤14を予め定めた量だけ貯留できる大きさに設定されている。
【0048】
この実施の形態による塗布ノズル21の長さは、前記下壁57aが水平方向に延びるように形成されているために、各塗布ノズル21の水平方向の位置に対応させて変えられている。すなわち、取付片12の長手方向の中央と対応する塗布ノズル21が最も長くなり、取付片12の長手方向の両端と対応する塗布ノズル21が最も短くなる。これらの塗布ノズル21の先端(下端)と取付片12の接着面12aとの間隔は、この実施の形態においても全ての塗布ノズル21において等しくなるように形成されている。
【0049】
これらの塗布ノズル21は、図7に示すように、下方から見て長方形状に並ぶように配置されている。これらの塗布ノズル21が並ぶことによって形成される長方形は、取付片12を上方から見たときに取付片12の前記穴17を囲むような大きさに形成されている。すなわち、複数の塗布ノズル21は、上方から見て前記穴17を囲むように配置されている。
【0050】
次に、この実施の形態による接着剤塗布装置1を用いた接着剤塗布方法を図10(A)〜(C)と図11に示すフローチャートとによって説明する。
この実施の形態による接着剤塗布装置1は、接着剤14を塗布する動作を開始する以前に予め準備動作を行う。この準備動作は、前記駆動装置23が前記後退位置に移動する動作と、塗布ノズル21と接着剤供給装置22とが前記待機位置に上昇する動作である。この準備動作は、接着剤14の塗布が終了した直後に実施することができる。
【0051】
接着剤14を塗布するためには、先ず、作業者または自動投入装置が注入補助部材2を支持用ステージ32の凹溝34にフランジ15が嵌合する状態で載せる。作業者が注入補助部材2を支持用ステージ32に装填した場合は、作業者がたとえばスタートスイッチ(図示せず)をON操作し、保持装置33を動作させる。なお、自動投入装置を使用する場合は、注入補助部材2が支持用ステージ32上に載置された後に自動で保持装置33が動作を開始する構成を採ることができる。
【0052】
保持装置33は、押圧部材36を前記長穴35に沿って水平方向に移動させ、押圧部材36と前記ストッパー32aとによって注入補助部材2を挟んで保持する。このように保持装置33が注入補助部材2を保持することによって、図11に示すフローチャートの支持ステップS1が終了する。
次に、水平移動装置41が駆動装置23を前記後退位置から前記待機位置に移動させる。このとき、接着剤供給装置22の接着剤用通路55が接着剤14で満たされていない場合は、弁52を開き、接着剤14を塗布ノズル21に供給する。弁52は、全ての塗布ノズル21から接着剤14が流出する状態で閉じられる。
【0053】
駆動装置23が前記待機位置に移動した後、接着剤供給装置22の弁52が予め定めた供給時間だけ開いてから閉じる。このように弁52が開閉することによって、図10(A)に示すように、塗布ノズル21の下端に接着剤14の液滴14aが形成され、図11に示すフローチャートの接着剤供給ステップS2が終了する。
【0054】
次いで、図11に示すフローチャートの塗布ステップS3において、駆動装置23が接着剤供給装置22と塗布ノズル21とを下降位置まで下降させる。この実施の形態でいう前記下降位置とは、図10(B)に示すように、接着剤14の液滴14aが取付片12の上面(接着面12a)に付着するときの塗布ノズル21および接着剤供給装置22の上下方向の位置である。
【0055】
すなわち、塗布ステップS3を実施することにより、接着剤14の液滴14aが取付片12の接着面12aに付着する。この接着剤14は、複数の塗布ノズル21によっていわゆるスタンプ式に取付片12の穴17を囲む位置に塗布される。
接着剤14が取付片12に付着した後、図11に示すフローチャートの接着剤分離ステップS4において、駆動装置23が塗布ノズル21から接着剤14を分離させる動作を行う。
【0056】
塗布ノズル21の下端が接着剤14を介して取付片12に接続されている状態で塗布ノズル21が上昇すると、接着剤14が糸を引いて上方に伸びるようになる。この糸は、伸びた後に粘性が低下して切れる。長く伸びた糸が上端(塗布ノズル21との接続部)で切れて倒れると、取付片12の前記穴17に入るおそれがある。
このように接着剤14からなる糸が穴17に入ることを防ぐために、前記駆動装置23は、先ず、図10(C)に示すように、塗布ノズル21と接着剤供給装置22とを前記糸が短く伸びる程度の長さL1だけ上昇させる。
【0057】
この上昇行程において、長さL1に相当する長さの接着剤14からなる糸61が形成される。前記長さL1は、前記取付片12における接着剤14が塗布された位置と前記穴17との距離L2(図7参照)より短く設定されている。このため、長さL1の前記糸61が上端で切れて倒れたとしても、糸61が前記穴17に入ることはない。
駆動装置23は、塗布ノズル21と接着剤供給装置22とを前記上昇行程で上昇させた後に前記糸61の粘性が失われて糸61が切れるまで停止させる。
【0058】
前記糸61が切れたか否かの判定は、上昇後の経過時間に基づいて行われる。すなわち、駆動装置23は、第1回目の上昇行程が終了した後に糸61が切れるために必要な時間が経過するまで待機する。この待機動作が終了することによって接着剤分離ステップS4が終了する。
その後、駆動装置23は、図11に示すフローチャートの復帰ステップS5において、塗布ノズル21と接着剤供給装置22とを図5中に二点鎖線Bで示す待機位置に上昇させる。また、この復帰ステップS5においては、前記水平移動装置41が前記駆動装置23を図5中に二点鎖線Aで示す後退位置に移動させ、支持部3の保持装置33が押圧部材36を初期の位置に戻す。
【0059】
上述したように接着剤14が塗布された注入補助部材2は、復帰ステップS5で各部材が初期の位置に戻された後、注入補助部材用移載装置(図示せず)や作業者によって支持用ステージ32から取出され、次の工程に送られる。注入補助部材2は、次の工程において、モールド組立体6の所定の位置に接着させられる。
【0060】
この実施の形態を採る場合であっても、前記液滴14aの体積と等しい一定量だけ接着剤14が供給されるから、接着剤14の供給量を制御することができる。
また、接着剤14の塗布は、取付片12に対して複数の塗布ノズル21を下降させていわゆるスタンプ式に行うことができるから、簡単な機構で実現することができる。
したがって、この実施の形態を採る場合であっても、製造コストを低く抑えながら、接着剤14の塗布量を制御できるとともに、湾曲した取付片12に接着剤14を簡単に塗布可能なプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布装置を提供することができる。
【0061】
この実施の形態による接着剤供給装置22は、全ての塗布ノズル21を支持するホルダー56を備えている。前記ホルダー56には、各塗布ノズル21に連通されるとともに接着剤供給源(ハウジング51)から接着剤14が供給される接着剤用貯留室59が形成されている。この接着剤用貯留室59の容積は、接着剤14が全ての塗布ノズル21に分配されるように形成されているものである。
【0062】
このため、この実施の形態による接着剤塗布装置1は、接着剤14が全ての塗布ノズル21に均等に供給されるから、各塗布ノズル21の先端に保持される液滴14aの大きさが略一定になる。この結果、この実施の形態による接着剤供給装置22により注入補助部材2を接着剤14を塗布することによって、プラスチックレンズの成形時に接着剤14がプラスチックレンズ材料中に混入することを確実に防ぐことができる。したがって、この実施の形態による接着剤塗布装置1を使用することによって、より一層品質が高いプラスチックレンズを製造することが可能になる。
【0063】
この実施の形態による複数の塗布ノズル21は、前記取付片12の前記穴17を囲むように配置されている。このため、取付片12の接着面12aの全域がプラスチックレンズ成形用の型に接着されるから、注入補助部材2が前記型に強固に接着される。この結果、注入補助部材2を介してプラスチックレンズ成形用の型を支持することが可能になるから、プラスチックレンズ成形用の型の搬送、位置決めなどを容易に行うことが可能になる。したがって、この実施の形態による接着剤塗布装置1を使用することによって、プラスチックレンズ成形用の型にプラスチックレンズ材料を注入する工程を自動化することが可能になり、プラスチックレンズをより一層低いコストで製造することができるようになる。
【0064】
塗布ノズル21に接着剤14を供給するための接着剤供給装置22は、上述した実施の形態で示した構造のものに限定されることはない。接着剤供給装置22としては、接着剤14を重力で流下させて供給する構造のものを使用することができる。
【0065】
上述した実施の形態においては、塗布ノズル21が下降位置に下降する以前に接着剤供給ステップS2が実施される例を示した。しかし、接着剤供給ステップS2は、塗布ノズル21が図10(B)に示す下降位置まで下降した後に実施することができるし、塗布ノズル21が下降している途中であっても実施することができる。この構成を採る場合であっても、接着剤14の供給量は、パイプからなる塗布ノズル21から吐出される接着剤14の体積に相当するから、簡単に測ることができる。
【符号の説明】
【0066】
1…接着剤塗布装置、2…注入補助部材、5…プラスチックレンズ成形型、6…モールド組立体、9…テープ、12…取付片、14…接着剤、14a…液滴、17…穴、21…塗布ノズル、22…接着剤供給装置、32…支持用ステージ、33…保持装置、41…水平移動装置、56…ホルダー、59…接着剤用貯留室。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックレンズを成形する中空の円柱状を呈する型の周壁に接着される取付片を有しかつ前記周壁に開口する注入口と連通するレンズ材料供給用の穴が形成された注入補助部材を支持する支持部と、
前記支持部に支持された前記注入補助部材の取付片に接着剤を塗布する塗布部とを備え、
前記取付片の接着面は、前記周壁の外周面に沿うような形状に形成され、
前記塗布部は、前記取付片と対向するパイプからなる複数の塗布ノズルと、
前記塗布ノズルに接着剤を供給する接着剤供給装置と、
前記塗布ノズルと前記取付片との間隔を変える駆動装置とを備え、
前記各塗布ノズルの先端と前記接着面との間の間隔が全ての塗布ノズルにおいて均等に形成されていることを特徴とするプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布装置。
【請求項2】
請求項1記載のプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布装置において、前記接着剤供給装置は、全ての前記塗布ノズルを支持するホルダーを備え、
前記ホルダーには、各塗布ノズルに連通されるとともに接着剤供給源から接着剤が供給される接着剤用貯留室が形成され、
前記接着剤用貯留室の容積は、接着剤が全ての塗布ノズルに分配されるように形成されていることを特徴とするプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布装置において、前記塗布ノズルは、前記取付片の前記穴を囲むように配置されていることを特徴とするプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布装置。
【請求項1】
プラスチックレンズを成形する中空の円柱状を呈する型の周壁に接着される取付片を有しかつ前記周壁に開口する注入口と連通するレンズ材料供給用の穴が形成された注入補助部材を支持する支持部と、
前記支持部に支持された前記注入補助部材の取付片に接着剤を塗布する塗布部とを備え、
前記取付片の接着面は、前記周壁の外周面に沿うような形状に形成され、
前記塗布部は、前記取付片と対向するパイプからなる複数の塗布ノズルと、
前記塗布ノズルに接着剤を供給する接着剤供給装置と、
前記塗布ノズルと前記取付片との間隔を変える駆動装置とを備え、
前記各塗布ノズルの先端と前記接着面との間の間隔が全ての塗布ノズルにおいて均等に形成されていることを特徴とするプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布装置。
【請求項2】
請求項1記載のプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布装置において、前記接着剤供給装置は、全ての前記塗布ノズルを支持するホルダーを備え、
前記ホルダーには、各塗布ノズルに連通されるとともに接着剤供給源から接着剤が供給される接着剤用貯留室が形成され、
前記接着剤用貯留室の容積は、接着剤が全ての塗布ノズルに分配されるように形成されていることを特徴とするプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布装置において、前記塗布ノズルは、前記取付片の前記穴を囲むように配置されていることを特徴とするプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−201054(P2012−201054A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69462(P2011−69462)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】
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