説明

プラスチックレンズ成形型用注入口形成装置

【課題】注入口を常に一定の大きさで形成することが可能なプラスチックレンズ成形型用注入口形成装置を提供する。
【解決手段】モールド組立体3を支持する支持部21と、前記テープ8に注入口を形成する切断部22とを備える。モールド組立体3は、レンズ面成形用の型となる一対の円板状モールド部材の外周部にコバ面成形用の型となるテープ8が巻き付けられたものである。切断部22は、テープ8に貫通部8aを形成するテープ貫通装置23と、移動装置24とによって構成されている。移動装置24は、前記貫通部8aがモールド組立体3の軸線方向とは直交する方向に長く形成されるようにテープ貫通装置23を移動させるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注型重合によってプラスチックレンズを成形するプラスチックレンズ用成形型に注入口を形成するプラスチックレンズ成形型用注入口形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の眼鏡用プラスチックレンズは、一般に注型重合によって形成されている。この注型重合とは、成形型にプラスチックレンズ材料を注入し、熱あるいは紫外線等のエネルギーにより硬化させて成形物を得る方法である。注型重合に用いる成形型は、たとえば特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
特許文献1に開示されている成形型は、レンズ成形用のキャビティが内部に形成されたモールド組立体と、このモールド組立体に接着された注入補助部材とによって構成されている。前記モールド組立体は、レンズ面成形用の型となる一対の円板状モールド部材と、これらのモールド部材の外周部にコバ面成形用の型となるように巻き付けられたテープとによって構成されている。前記テープには、プラスチックレンズ材料を注入するための注入口が形成されている。
【0004】
前記注入補助部材は、プラスチックレンズ材料を前記キャビティ内に導くためのものである。この注入補助部材は、プラスチックレンズ材料を供給するノズルを挿入するための筒体と、この筒体の一端部に一体に形成された板状の取付片とを備えている。前記取付片には、筒体の内外を連通する開口が形成されている。この取付片は、粘着テープや接着剤によって前記モールド組立体の外周面に接着されている。
【0005】
この取付片に形成されている前記開口は、前記テープの注入口と対向する位置に位置付けられている。注入口は、注入補助部材をモールド組立体に接着する以前に形成されたり、注入補助部材をモールド組立体に接着した後に前記開口に工具を挿入して形成される。この注入口は、作業者による手作業によって形成されている。前記ノズルは、注入補助部材から前記テープの注入口に挿入され、前記キャビティ内にプラスチックレンズ材料を注入する。
【0006】
前記注入補助部材をモールド組立体に接着するためには、先ず、作業者が注入補助部材の取付片に粘着テープを貼着したり、接着剤を塗布する。粘着テープには、取付片の開口と対向する位置に貫通孔が形成されている。次に、このように粘着テープが貼着されたり接着剤が塗布された注入保持部材を作業者が手で持ち、モールド組立体の外周面に押し付ける。テープに予め注入口が形成されている場合は、取付片の開口が注入口と対向するように接着作業を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開 WO 2010/098466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したモールド組立体の注入口は、作業者による手作業によって形成されている。このため、作業者が変わると注入口の大きさも変わってしまうおそれがあった。注入口が正しく形成されていないと、ノズルがテープに当たって注入口の中に挿入することができなくなったり、注入口が無理に拡げられてしまう。テープは、レンズのコバ面成形用の型となるものである。このため、テープにノズルから外力が加えられて変形してしまうと、この成形型によって成形されたレンズは不良品になってしまう。
【0009】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、注入口を常に一定の大きさで形成することが可能なプラスチックレンズ成形型用注入口形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、本発明に係るプラスチックレンズ成形型用注入口形成装置は、レンズ面成形用の型となる一対の円板状モールド部材の外周部にコバ面成形用の型となるテープが巻き付けられてなるモールド組立体を支持する支持部と、前記テープに注入口を形成する切断部とを備え、前記切断部は、前記テープに貫通部を形成するテープ貫通装置と、前記貫通部が前記モールド組立体の軸線方向とは直交する方向に長く形成されるように前記テープ貫通装置を移動させる移動装置とによって構成されているものである。
【0011】
本発明は、上記発明において、前記テープ貫通装置は、刃を有するカッターと、前記刃を前記テープに刺さる切断位置と前記テープから離間する待機位置との間で往復させるカッター駆動装置とによって構成され、前記移動装置は、前記テープ貫通装置を前記モールド組立体と同一軸線上に位置する円弧に沿って移動させるものである。
【0012】
本発明は、上記発明において、前記カッターは、前記刃を超音波で振動させる加振装置を備えているものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るプラスチックレンズ成形型用注入口形成装置によれば、モールド組立体のテープにモールド組立体の軸線方向とは直交する方向に長い注入口が形成される。この注入口の長さは、移動装置の動作を制御することによって規定することができる。したがって、本発明によれば、注入口を常に一定の大きさで形成することが可能なプラスチックレンズ成形型用注入口形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るプラスチックレンズ成型用注入口形成装置の概略構成を示す側面図である。
【図2】プラスチックレンズ成形型を示す斜視図である。
【図3】プラスチックレンズ成形型の断面図で、同図(A)は成形型の全体を破断して示す縦断面図、同図(B)は要部を拡大して示す断面図である。
【図4】プラスチックレンズ成形型用製造装置の構成を示す斜視図である。
【図5】クランプ装置の構成を示す図で、同図(A)は平面図、同図(B)は側面図である。
【図6】プラスチックレンズ成型用注入口形成装置の具体的な構成を示す平面図である。
【図7】プラスチックレンズ成型用注入口形成装置の具体的な構成を示す側面図である。
【図8】レーザー光によってテープを切断するプラスチックレンズ成型用注入口形成装置を示す平面図である。
【図9】レーザー光によってテープを切断するプラスチックレンズ成型用注入口形成装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係るプラスチックレンズ成形型用注入口形成装置の一実施の形態を図1〜図7によって詳細に説明する。
先ず、本発明に係るプラスチックレンズ成形型用注入口形成装置の概略の構成を図1によって説明する。
【0016】
図1に示すプラスチックレンズ成形型用注入口形成装置1は、プラスチックレンズ成形型2(図2参照)を形成するためのモールド組立体3に注入口4を形成するものである。
前記プラスチックレンズ成形型2は、図2および図3(A)に示すように、円柱状を呈するモールド組立体3と、このモールド組立体3の外周面に接着された注入補助部材5とによって構成されている。
【0017】
前記モールド組立体3は、一対の円板状のモールド部材(第1のモールド部材6と第2のモールド部材7)と、これらのモールド部材6,7の外周面に巻き付けられたテープ8とによって構成されている。本発明に係るプラスチックレンズ成形型用注入口形成装置1は、予め組み立てられたモールド組立体3を使用する。
このモールド組立体3において、注入補助部材5は、テープ8に注入口4が形成された後に接着される。
【0018】
前記モールド部材6,7は、光を透過可能なガラス材料によって所定の形状に形成されており、レンズ面を成形するための型を構成している。図3において上側に位置する第1のモールド部材6の下面6aは、上方に向けて凸になる凹曲面であり、他方の第2のモールド部材7の上面7aは、上方に向けて凸になる凸曲面である。
前記テープ8は、レンズのコバ面を成形するための型を構成している。このテープ8は、光を透過可能な材料によって形成された、いわゆる粘着テープである。このテープ8は、第1、第2のモールド部材6,7の外周面に1周以上巻回されて貼り付けられている。
【0019】
前記テープ8は、第1、第2のモールド部材6,7の外周面の全域を覆っている。また、テープ8は、第2のモールド部材7の非使用面から突出することがないように第1、第2のモールド部材6,7に巻き付けられている。前記非使用面とは、第2のモールド部材7における上面7aとは反対側の凹面である。なお、テープ8の幅は、第1、第2のモールド部材6,7間の間隙を密閉する幅であれば適宜変更することができる。
【0020】
前記テープ8は、図示してはいないが帯状の基材と、この基材の片面(モールド部材6,7と対向する面)に形成された粘着層とによって構成されている。前記基材としては、たとえばポリエステルを挙げることができる。前記粘着層を形成する材料は、プラスチックレンズ材料に溶け出したり、重合を阻害したりしないものが望ましく、たとえばシリコーン系の粘着剤などを挙げることができる。このテープ8を一対のモールド部材6,7に巻き付けることによって、内部にレンズ成形用のキャビティ9が形成されたモールド組立体3が組み立てられる。
【0021】
テープ8に形成された注入口4は、プラスチックレンズ材料をキャビティ9内に注入するためのものである。この注入口4は、第1、第2のモールド部材6,7に巻き付けられたテープ8に本発明に係る注入口形成装置1(図1参照)によって形成される。
【0022】
前記注入補助部材5は、図2および図3に示すように、前記モールド組立体3の外周部に重ねることが可能な形状に形成された取付片11と、この取付片11に一体に形成された補助部材本体12とによって構成されている。この注入補助部材5は、プラスチック材料によって形成されている。前記取付片11は、モールド組立体3の外周面に沿うような曲率で湾曲した板状に形成されている。図3に示す組立状態においては、取付片11は接着剤13によってモールド組立体3に接着されている。
【0023】
前記補助部材本体12は、断面形状が四角形の筒体であって、前記取付片11からモールド組立体3とは反対側に延びるように形成されている。この実施の形態による補助部材本体12は、図3に示すように、モールド組立体3の径方向と平行に延びる平板部12aと、この平板部12aと対向する傾斜部12bとを有している。前記傾斜部12bは、取付片11に向かうにしたがって漸次平板部12aに接近するように傾斜している。また、補助部材本体12における取付片11とは反対側の端部には、フランジ14が設けられている。
【0024】
この補助部材本体12の内部は、溶融状態のプラスチックレンズ材料(図示せず)が流れる通路15になる。前記取付片11には、前記通路15の一端の開口となるスリット状の穴16(図3参照)が形成されている。この穴16は、取付片11をモールド組立体3側から見た状態において、前記平板部12aと平行に延びるように形成されている。
注入補助部材5は、テープ8に注入口4が形成された後、前記穴16が前記注入口4と対向する状態でモールド組立体3に接着される。
【0025】
本発明に係る注入口形成装置1は、図1に示すように、前記モールド組立体3を支持する支持部21と、前記モールド組立体3のテープ8に注入口4を形成する切断部22とを備えている。この注入口形成装置1は、モールド組立体3のテープ8をたとえばカッターの刃で切断したりレーザー光のエネルギーで溶かしたりしてモールド組立体3の周方向に所定の長さだけ切断する構成のものである。
【0026】
前記切断部22は、前記テープ8に貫通部8aを形成するテープ貫通装置23と、このテープ貫通装置23を移動させる移動装置24とを備えている。前記テープ貫通装置23は、刃を有するカッターや、レーザー光切断装置などによって構成される。すなわち、前記貫通部8aは、カッターの刃がテープ8に刺さったり、レーザー光のエネルギーでテープ8が部分的に溶かされることによって形成される。
【0027】
前記移動装置24は、前記貫通部8aが前記モールド組立体3の軸線方向とは直交する方向に長く形成されるように、前記テープ貫通装置23を移動させる構成が採られている。注入口4は、このように貫通部8aが長く形成されたものである。
テープ貫通装置23がカッターによって構成される場合の移動装置24は、カッターの刃をモールド組立体3の周方向に移動させる。この周方向とは、モールド組立体3と同一軸線上に位置する円弧に沿って移動するような方向である。
【0028】
テープ貫通装置23がレーザー光切断装置によって構成される場合の移動装置24は、次の2通りの構成を採ることができる。すなわち、移動装置24は、レーザー光切断装置を前記カッターと同様に前記周方向に移動させる構成と、レーザー光切断装置を予め定めた角度だけ回転させる構成とのいずれか一方の構成を採ることができる。レーザー光切断装置を回転させるにあたっては、レーザー光がテープ8を貫通する部位が前記周方向に移動するように行う。
【0029】
次に、プラスチックレンズ成形型用注入口形成装置1の具体的な構成を図4〜図7によって詳細に説明する。
この実施の形態によるプラスチックレンズ成形型用注入口形成装置1は、図4に示す成形型製造装置31の一部を構成するものであり、この成形型製造装置31の基台31aの上に装備されている。
【0030】
成形型製造装置31は、上述したモールド組立体3に注入補助部材5を接着してプラスチックレンズ成形型2を製造するものである。
この実施の形態による成形型製造装置31は、図4に示すように、ターンテーブルからなる搬送装置32の周囲に各種の処理装置を配置した構成が採られている。モールド組立体3は、搬送装置32に設けられているクランプ装置33に保持され、各種の装置に搬送させられる。各種の処理装置とは、前後方向位置決め装置34と、上下方向位置決め装置35と、注入口形成装置1と、接着装置36などである。
【0031】
クランプ装置33は、モールド組立体3をレンズ面が上下方向を指向する状態で保持するものである。このクランプ装置33によるモールド組立体3の保持は、モールド組立体3の外周部を複数の保持部材37により径方向の外側から挟むことによって行われる。
【0032】
クランプ装置33は、図5に示すように、4本の保持部材37と、これらの保持部材37を駆動するアクチュエータ38とを備えている。この実施の形態による保持部材37は、円柱状に形成されている。なお、保持部材37の形状や数量は適宜変更することができる。アクチュエータ38は、水平方向に並ぶ2個のスライダ38a,38bを互いに接近させたり離間させる構成のものである。これらのスライダ38a,38bには、前記保持部材37が2本ずつ取付けられている。
【0033】
このクランプ装置33は、図5(A)に示すように、上方から見てモールド組立体3の軸心Cが予め定めた基準位置Aと一致するようにモールド組立体3を保持する。
このクランプ装置33を有する前記搬送装置32は、クランプ装置33を3方向に移動できるように支持している。前記3方向とは、注入口形成装置1の近傍を通る搬送路39(図6参照)に沿う搬送方向と、ターンテーブルの径方向である前後方向と、上下方向とである。
【0034】
搬送装置32は、図4に示すように、基台31aの上で上下方向を軸線方向として回転するテーブル41を備えている。前記テーブル41は、クランプ装置33に保持されたモールド組立体3が各種の処理装置に搬送されるように、所定の角度ずつ間欠的に回転する。なお、搬送装置32を構成するターンテーブルは、図示してはいないが、テーブル41と一体に回転する各装置に空気圧を供給する空気通路がテーブル41の中心部分で基台31aに対して回転できる構成が採られている。
【0035】
前記テーブル41には、図4に示すように、複数のクランプ装置33が設けられている。これらのクランプ装置33は、図4に示すように、テーブル41の回転方向に等間隔で並ぶ状態で、後述するスライド機構42(図7参照)を介してテーブル41に支持されている。
【0036】
前記スライド機構42は、前記テーブル41に上下方向へ移動自在に支持された上下方向スライダ43と、この上下方向スライダ43に前記前後方向へ移動自在に支持された前後方向スライダ44とを備えている。前記前後方向スライダ44は、テーブル41からテーブル41の径方向の外側に延びるように形成されている。前記クランプ装置33は、前後方向スライダ44の上に装着されている。
【0037】
前記上下方向スライダ43には、この上下方向スライダ43を上下方向に移動させるためのアクチュエータ45が接続されている。このアクチュエータ45は、詳細には図示してはいないが、モータあるいはエアシリンダを動力源として上下方向スライダ43を駆動する構成のものである。このアクチュエータ45は、前記テーブル41または基台31aに支持させることができる。また、この上下方向スライダ43と前後方向スライダ44とには、それぞれ移動を規制するためのブレーキ46,47が設けられている。これらのブレーキ46,47は、上下方向スライダ43や前後方向スライダ44をスライドさせるときにのみ制動状態が解除される。
【0038】
上述した各種の処理装置のうち、上下方向位置決め装置35は、前記アクチュエータ45を動作させてモールド組立体3を上下方向において位置決めするものである。モールド組立体3の上下方向の位置は、テープ8の予め定めた目標位置が注入口形成装置1の切断部22と同じ高さになるように設定されている。この目標位置は、テープ8における第1のモールド部材6と第2のモールド部材7との間の略中央となる位置に設定されている。アクチュータ44の動作や、前記ブレーキ46,47および上述した搬送装置32、クランプ装置33、各種の処理装置などの動作は、図示していない制御装置によって制御される。
【0039】
前記前後方向スライダ44の一端部(テーブル41の径方向において外側に位置する端部)には、下方に延びる受圧片44aが設けられている。この受圧片44aは、前後方向位置決め装置34によって前後方向に押されるものである。前記前後方向位置決め装置34は、受圧片44aとともに前後方向スライダ44を前後方向に移動させ、モールド組立体3を前後方向の所定位置に位置決めする。この所定位置とは、モールド組立体3が搬送装置32によって注入口形成装置1と対向する位置に送られたときに、モールド組立体3と注入口形成装置1の切断部22との間隔が予め定めた間隔となるような位置である。
【0040】
すなわち、モールド組立体3は、前後方向位置決め装置34によって前後方向において位置決めされ、さらに、上下方向位置決め装置35によって上下方向に位置決めされた状態で、搬送装置32によって前記切断部22と対向する位置に搬送される。
前記各種の処理装置のうち、接着装置36は、モールド組立体3のテープ8に注入補助部材5を接着するためのものである。この接着装置36は、詳細には図示してはいないが、注入補助部材5の取付片11に接着剤13を塗布し、この取付片11をテープ8に押し付ける構成が採られている。
【0041】
この実施の形態によるプラスチックレンズ成形型用注入口形成装置1は、図6および図7に示すように、前記搬送装置32とクランプ装置33とからなる支持部21と、カッター51を用いて構成された切断部22とによって構成されている。
切断部22のテープ貫通装置23は、前記カッター51と、このカッター51を前記前後方向に移動させるカッター駆動装置52とによって構成されている。カッター51は、いわゆる超音波カッターで、前記刃51aを超音波で振動させる加振装置51bを備えている。
【0042】
カッター駆動装置52は、詳細には図示してはいないが、モータあるいはエアシリンダを動力源として構成されており、前記カッター51を図6および図7において実線で示す切断位置と、図7中に二点鎖線で示す待機位置との間で移動させる。
前記切断位置は、カッター51の刃51aがテープ8に所定の長さだけ刺さる位置である。待機位置は、カッター51の刃51aが搬送路39を遮ることがないように退避する位置である。
切断部22の移動装置24は、テープ8に刺さった刃51aを移動させてモールド組立体3の周方向に予め定めた長さだけ切るためのものである。この移動装置24は、基台31aに支持されている。
【0043】
前記移動装置24は、前記カッター51の移動方向を規制するためのガイドレール53と、このガイドレール53に沿ってカッター51を移動させるアクチュエータ54を備えている。ガイドレール53は、図6に示すように、上方から見てモールド組立体3と同一軸線上に位置する円弧に沿う形状に形成されている。前記カッター駆動装置52は、ガイドレール53に沿って移動するようにガイドレール53に支持されている。また、カッター駆動装置52は、図6に示すように、上方から見てカッター51の刃51aがモールド組立体3の軸心部を指向するように移動装置24に取付けられている。この実施の形態による移動装置24は、注入口4を形成するときに前記カッター51およびカッター駆動装置52をガイドレール53の一端部53aから他端部53bまで移動させる。
【0044】
注入口形成装置15によってモールド組立体3に注入口4を形成するためには、先ず、カッター51およびカッター駆動装置52をガイドレール53の切断開始位置である一端部53aに移動させる。そして、刃51aが超音波で振動している状態で、カッター駆動装置52によってカッター51を前記切断位置に移動させる。カッター51がカッター駆動装置52の駆動によってモールド組立体3側に進むことによって、刃51aがテープ8に刺さる。
【0045】
このとき、刃51aは、テープ8をモールド組立体3の軸心部に向けて押すようにして切断し、貫通部8aを形成する。次に、カッター51およびカッター駆動装置52を移動装置24によってガイドレール53の切断終了位置である他端部53bまで移動させる。このように刃51aが移動することによって、テープ8に所定の長さの注入口4が形成される。その後、カッター51をカッター駆動装置52により待機位置に移動させ、移動装置24を動作させてカッター51を初期の位置に戻すことによって、注入口4を形成する工程が終了する。
【0046】
注入口4が形成されたモールド組立体3は、搬送装置32によって接着装置36に搬送させられ、接着装置36によって注入補助部材5が接着される。注入補助部材5が接着されたモールド組立体3は、搬送装置32によって所定の取出し位置に送られた後、クランプ装置33によるクランプ状態が解除されて作業者によって成形型製造装置31から搬出される。
【0047】
このように構成されたプラスチックレンズ成形型用注入口形成装置1によれば、モールド組立体3のテープ8にモールド組立体3の軸線方向とは直交する方向に長い注入口4を形成することができる。この注入口4の長さは、移動装置24の動作を制御することによって規定することができる。したがって、この実施の形態によれば、注入口4を常に一定の大きさで形成することが可能なプラスチックレンズ成形型用注入口形成装置を提供することができる。
【0048】
この実施の形態による前記テープ貫通装置23は、刃51aを有するカッター51と、前記刃51aを前記テープ8に刺さる切断位置と前記テープ8から離間する待機位置との間で往復させるカッター駆動装置52とによって構成されている。また、前記移動装置24は、前記テープ貫通装置23を前記モールド組立体3と同一軸線上に位置する円弧に沿って移動させるものである。
刃51aがテープ8を切断するときには、微細な切り屑が生じることがある。この実施の形態によれば、刃51aがテープ8を切断するときにモールド組立体3の周方向に移動する。
【0049】
このため、刃51aがテープ8を切断したときに微細な切り屑が生じたとしても、この切り屑が刃51aによってキャビティ9側に押し込まれるようなことはない。すなわち、刃51aがテープ8を切断するときに生じた切り屑がキャビティ9の内部に入り難くなる。したがって、この実施の形態によるプラスチックレンズ成形型用注入口形成装置1によって注入口4が形成された成形型2を使用することにより、高い品質のプラスチックレンズを製造することができる。
【0050】
この実施の形態による前記カッター51は、刃51aを超音波で振動させる加振装置51bを備えている。
このため、この注入口形成装置1は、刃51aがテープ8を切断するときにテープ8に加えられる力が相対的に小さくなるから、テープ8を変形させることなく注入口4を形成することできるものである。したがって、この実施の形態によるプラスチックレンズ成形型用注入口形成装置1によって注入口4が形成された成形型2を使用することにより、より一層高い品質のプラスチックレンズを製造することができるようになる。
【0051】
(第2の実施の形態)
本発明に係るプラスチックレンズ成形型用注入口形成装置は、図8および図9に示すように、テープをレーザー光のエネルギーで溶かすことにより注入口を形成する構成を採ることができる。図8および図9において、前記図1〜図7によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
【0052】
図8および図9に示すプラスチックレンズ成形型用注入口形成装置61のテープ貫通装置23は、レーザー光切断装置62によって構成されている。このレーザー光切断装置62は、レーザー光63をモールド組立体3のテープ8に向けて照射し、レーザー光63のエネルギーでテープ8に貫通部8aを形成するものである。このレーザー光切断装置62は、図6および図7に示したものと同一の構造の移動装置24に取付けられている。
【0053】
この実施の形態による注入口形成装置61によって注入口4を形成するためには、先ず、レーザー光切断装置62をガイドレール53の切断開始位置である一端部53aに移動させる。そして、この状態でレーザー光切断装置62を作動させる。レーザー光切断装置62が作動することにより、レーザー光63がテープ8に照射され、レーザー光63のエネルギーでテープ8が溶かされてテープ8に貫通部8aが形成される。
次に、レーザー光切断装置62を動作させた状態で移動装置24によってガイドレール53の切断終了位置である他端部53bまで移動させる。このようレーザー光切断装置62が移動することによって、テープ8に所定の長さの注入口4が形成される。その後、レーザー光切断装置62を停止させて、移動装置24によって初期の位置に戻すことによって、注入口4を形成する工程が終了する。
【0054】
この実施の形態を採ることにより、切り屑が生じることなく注入口4を形成することができるから、さらに高い品質のレンズを形成することが可能になる。
なお、レーザー光切断装置62を使用する場合は、上述した移動装置24とは異なる構成の移動装置24を使用することができる。たとえば、移動装置24としては、レーザー光切断装置62を回転させる構成のものを用いることができる。この場合は、レーザー光切断装置62がモールド組立体3の軸線と平行な軸線を中心として所定の角度だけ回転することによって、テープ8に所定の長さの注入口4が形成される。
【符号の説明】
【0055】
1,61…プラスチックレンズ成形型用注入口形成装置、2…プラスチックレンズ成形型、3…モールド組立体、5…注入補助部材、8…テープ、21…支持部、22…切断部、23…テープ貫通装置、24…移動装置、32…搬送装置、33…クランプ装置、51…カッター、51a…刃、51b…加振装置、52…カッター駆動装置、62…レーザー光切断装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ面成形用の型となる一対の円板状モールド部材の外周部にコバ面成形用の型となるテープが巻き付けられてなるモールド組立体を支持する支持部と、
前記テープに注入口を形成する切断部とを備え、
前記切断部は、前記テープに貫通部を形成するテープ貫通装置と、
前記貫通部が前記モールド組立体の軸線方向とは直交する方向に長く形成されるように前記テープ貫通装置を移動させる移動装置とによって構成されていることを特徴とするプラスチックレンズ成形型用注入口形成装置。
【請求項2】
請求項1記載のプラスチックレンズ成形型用注入口形成装置において、前記テープ貫通装置は、刃を有するカッターと、
前記刃を前記テープに刺さる切断位置と前記テープから離間する待機位置との間で往復させるカッター駆動装置とによって構成され、
前記移動装置は、前記テープ貫通装置を前記モールド組立体と同一軸線上に位置する円弧に沿って移動させるものであることを特徴とするプラスチックレンズ成形型用注入口形成装置。
【請求項3】
請求項2記載のプラスチックレンズ成形型用注入口形成装置において、前記カッターは、前記刃を超音波で振動させる加振装置を備えていることを特徴とするプラスチックレンズ成形型用注入口形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−201053(P2012−201053A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69460(P2011−69460)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】