説明

プラスチック物品の製造方法

【課題】プラスチック材料への密着性に優れ、かつ硬度に優れる硬化膜が形成されたプラスチック物品の製造方法の提供。
【解決手段】プラスチック材料に活性エネルギー線硬化型組成物を塗工した後、活性エネルギー線を照射して前記組成物を硬化させる製造方法であって、前記組成物として組成物全体の(メタ)アクリロイル基当量が6meq/g以上を有するものを使用し、かつ活性エネルギー線照射前又は照射時に塗工膜の温度を50℃以上とするプラスチック物品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プラスチック物品の製造方法に関するものであり、本発明の製造方法によれば、密着性及び硬度に優れるハードコートを有するプラスチック物品を製造することができ、プラスチック物品の製造の技術分野において賞用され得るものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、プラスチック材料は種々の用途に使用されている。例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びトリアセチルセルロース等の透明性に優れるプラスチックは、各種光学用材料に使用され、又、ポリスチレン及びABS樹脂等のプラスチックは、各種電子機器の筐体として使用されている。これらのプラスチック材料は、表面硬度が充分でないために、製品の輸送中、組立て作業中及び使用中等にその表面が損傷し、製品歩留まりの低下や商品価値の低下を招く等の問題があった。この問題を改良するために、近年では、これら材料の表面に、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する(メタ)アクリレート〔以下多官能(メタ)アクリレートという〕を主成分とする活性エネルギー線硬化型組成物を塗布・硬化させ、通常ハードコートと称される硬化膜を形成させ、その表面を保護している。
【0003】しかしながら、従来の活性エネルギー線硬化型組成物によるハードコートは、基材への密着性が充分でないことが多かった。これを改良するために、組成物に、ポリ(メタ)アクリレート系、ポリスチレン系及びポリエステル系等のポリマーを混合することが多かったが、これらポリマーを配合すると、組成物の粘度が極端に上昇してしまうため、通常は溶剤系の活性エネルギー線硬化型組成物で使用されている。
【0004】しかしながら、近年の環境問題の関係から、溶剤系の活性エネルギー線硬化型組成物は敬遠されることが多くなり、低粘度でかつ密着性に優れる無用剤系の活性エネルギー線硬化型組成物が要求されてきている。一方、従来知られている無溶剤系でかつ低粘度の活性エネルギー線硬化型組成物は、プラスチック材料への密着性が不充分な場合が多く、密着性が十分な場合でも、その硬化物が軟らかく、硬度が不充分であるという欠点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、プラスチック材料への密着性に優れ、かつ硬度に優れる硬化膜が形成されたプラスチック物品の製造方法を見出すため、鋭意検討を行ったのである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題を解決するため種々の検討を重ねた結果、活性エネルギー線硬化型組成物として、特定(メタ)アクリロイル基当量を有する組成物を使用し、さらにプラスチック材料に塗工した後、活性エネルギー線照射前又は照射時に、塗工膜の温度を特定温度以上にすることでプラスチック材料への密着性を大きく向上させることができることを見出し、本発明を完成した。以下、本発明を詳細に説明する。尚、本明細書においては、アクリレート又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと表す。
【0007】
【発明の実施の形態】1.プラスチック材料本発明で使用可能なプラスチック材料としては、種々のものが使用可能であり、熱可塑性樹脂に好ましく適用できる。熱可塑性樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル及びポリアミド等が挙げられる。
【0008】2.活性エネルギー線硬化型組成物本発明で使用される活性エネルギー線硬化型組成物としては、組成物全体の(メタ)アクリロイル基当量が6meq/g以上を有するものを使用する。これにより、プラスチック材料に塗工した後、活性エネルギー線照射時に重合熱による温度上昇をより高くすることができ、組成物の硬化膜の密着性を優れたものとすることができる。組成物の(メタ)アクリロイル基当量が6meq/gに満たない場合は、硬化膜の密着性が乏しくなる。組成物全体の(メタ)アクリロイル基当量の上限としては、11meq/g以下であることが好ましい。アクリロイル基当量が11meq/gを超えると、硬化物にひび割れが発生する場合がある。
【0009】本発明で使用される組成物としては、前記(メタ)アクリロイル基当量が6meq/g以上を有するものであれば種々のものが使用可能であるが、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートを含むものが好ましく、より好ましくは3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートであって、分子量250〜1000のもの〔以下単に3官能以上(メタ)アクリレートという〕である。
【0010】3官能以上(メタ)アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールのトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのペンタ又はヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、イソシアヌール酸のエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート及びウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。ウレタン(メタ)アクリレートとしては、ポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応物等が挙げられ、ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネート等が挙げられ、水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、イソシアヌール酸のエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド3モル付加物のジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0011】3官能以上(メタ)アクリレートの割合としては、組成物の硬化性成分合計量に対して30〜100質量%含むことが、組成物の硬化物が硬度に優れたものとなるため好ましい。
【0012】本発明で使用する組成物としては、3官能以上(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリレートを含むものであっても良く、好ましくは分子量250未満のエチレン性不飽和化合物であり、より好ましくは分子量250未満の1個のエチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和化合物(以下低分子単官能不飽和化合物という)を含有するものが好ましい。当該低分子単官能不飽和化合物としては、さらに基材を溶解し得るものであるものが、本発明の効果が非常に大きいためより好ましい。
【0013】低分子単官能不飽和化合物としては、N−ビニルピロリドン及び(メタ)アクリレートが挙げられる。分子量250未満の(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、アクリル酸ダイマー、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチル−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0014】組成物中の分子量250未満のエチレン性不飽和化合物の割合としては、組成物の硬化性成分合計量に対して5〜40質量%含むことが好ましい。この値が5質量%より少ない場合は、配合効果が乏しく、一方40質量%を超えると硬化物の硬度が不充分となる場合がある。
【0015】本発明で使用する組成物には、粘度等の他の物性を調整するために、上記(メタ)アクリレート成分以外に、ポリマー、(メタ)アクリレートオリゴマー、無機フィラー及び無機微粒子等を所望により配合することができる。(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート及びエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。尚、ポリマー又はオリゴマーを添加することにより、硬化膜のひび割れを防ぐことができる。
【0016】本発明で使用する組成物には、耐候性の向上を目的として、紫外線吸収剤、光安定剤及び酸化防止剤から選択される1種以上の耐候性向上剤を配合することもできる。
【0017】紫外線吸収剤としては、例えば、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール及び2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0018】光安定剤としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート及び2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)等のヒンダードアミン系光安定剤、並びに2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系光安定剤等が挙げられる。
【0019】酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン等のヒンダードフェノール系、ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−4−セバケート)等のヒンダードアミン系酸化防止剤、ジラウリル−3,3’−ジチオプロピオネート等の硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。
【0020】耐候性向上剤の好ましい配合割合は、組成物100質量部に対して、0.01〜5質量部である。この割合が0.01質量部に満たないと耐候性向上の効果が得られず、5質量部を超えると、組成物の硬化性が低下する等の問題が生じる場合がある。
【0021】本発明において、活性エネルギー線が紫外線又は可視光線である場合、組成物の硬化性を充分なものにするため、一般的に使用されている光重合開始剤を配合することが好ましい。又、光重合開始剤には、必要に応じて増感剤を併用することもできる。
【0022】好ましい光重合開始剤としては、具体的には、2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパノン(チバガイギー製イルガキュアー907)、ベンジルジメチルケタール(チバガイギー製イルガキュアー651)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバガイギー製イルガキュア184)、ジエトキシアセトフェノン(ファーストケミカル製ファーストキュアーDEAP)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(チバガイギー製ダロキュアー1173)、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(チバガイギー製イルガキュアー2959)及び2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン(チバガイギー製イルガキュアー369)等のアセトフェノン系光重合開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル及びベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル系光重合開始剤;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド及び2,4,6−トリメチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系光重合開始剤;2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン及び1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド及びビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤;並びにカンファーキノン等が挙げられる。
【0023】上記光重合開始剤と併用する増感剤としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4,4−ジメチルアミノベンゾフェノン及び4,4−ジエチルアミノベンゾフェノン等が好ましい。
【0024】光重合開始剤の配合割合としては、硬化性成分の合計量100質量部に対して、0.1〜15質量部とするのが好ましく、より好ましくは、0.5〜10質量部である。0.1質量部未満では重合の開始を促進する効果が不十分になり、15質量部を越えると硬化膜に真に必要な成分を減少させて、硬化膜の目標とする特性が低下する恐れがある。
【0025】本発明の組成物を得るには、通常の混合法により上記各成分を均一に混合すればよく、各成分を混合する順序、混合装置等に特別の限定はない。但し、室温において固体の成分を混合する場合は、その成分が融解又は分散する温度まで加熱して混合を行うこともできる。
【0026】3.プラスチック物品の製造方法本発明は、プラスチック材料に前記活性エネルギー線硬化型組成物を塗工した後、活性エネルギー線を照射して前記組成物を硬化させる製造方法であって、活性エネルギー線照射前又は照射時に塗工膜の温度を50℃以上にするプラスチック物品の製造方法に関するものである。
【0027】プラスチック材料に対する組成物の塗工方法としては、常法に従えば良く、スプレー、ロールコーター、フローコーター、ディッピング及び刷毛塗り等が挙げられる。
【0028】本発明では、活性エネルギー線照射前又は照射時に、組成物を基材に塗工した後の塗工膜の温度を50℃以上とする必要があり、より好ましくは60℃以上であり、特に好ましくは80℃以上である。50℃に満たない温度では、得られる硬化膜の密着性向上に必要な加熱時間が長くなり、活性エネルギー線硬化の長所の一つである生産性の高さを損なうことになる。尚、塗工膜の温度の上限としては、温度を上げ過ぎるとプラスチック材料自体が熱によって変形するため、プラスチック材料が変形しない温度を上限とすることが好ましい。塗工膜の温度としては、50℃以上となるのであれば、使用するプラスチック材料、組成物及び加熱時間により適宜設定すれば良い。加熱時間は、使用するプラスチック材料、組成物及び加熱温度により適宜設定すれば良いが、好ましくは1分以上であり、より好ましくは3分以上であり、特に好ましくは6分以上である。
【0029】活性エネルギー線照射前に、塗工膜の温度を50℃以上とする方法としては、プラスチック材料に組成物を塗工した後、これを乾燥機や加熱炉に入れて加熱する方法や、生産ラインにおいて、活性エネルギー線照射装置の手前に熱源を置く方法等が挙げられる。使用する熱源は種々のものが使用でき、ハロゲンランプ等の赤外線ランプ及び電熱器等が挙げられる。
【0030】活性エネルギー線照射時に、塗工膜の温度を50℃以上とする方法としては、活性エネルギー線照射装置内に別途熱源を設置する方法等があり、塗膜温度が、活性エネルギー線源からの放熱により目的の温度となる場合や、組成物の重合熱により目的温度となる場合は、熱源を設置する必要がない。
【0031】本発明においては、得られる硬化膜の密着性により優れるものとなるため、活性エネルギー線照射前に塗工膜の温度を50℃以上とする方法が好ましい。
【0032】活性エネルギー線の照射方法としては常法に従えば良い。活性エネルギー線としては、紫外線、X線及び電子線等が挙げられ、安価な装置を使用できることから紫外線を使用することが好ましい。紫外線により硬化させる場合の光源としては、様々なものを使用することができ、例えば高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電ランプ及びカーボンアーク灯等が挙げられる。活性エネルギー線の照射条件も、使用する組成物に応じて常法に従い適宜設定すれば良い。
【0033】
【実施例】以下に、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。尚、以下において、「部」は質量部を意味する。又、以下において、アクリロイル基当量は、Ac当量と表し、その単位のmeq/gは記載を省略する。又、以下の表における記号は、以下の意味を示す。
M310:東亞合成(株)製アロニックスM310、トリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド3モル付加物のトリアクリレートM305:東亞合成(株)製アロニックスM305、ペンタエリスリトールトリアクリレートM450:東亞合成(株)製アロニックスM450、ペンタエリスリトールテトラアクリレートM315:東亞合成(株)製アロニックスM315、イソシアヌール酸のエチレンオキサイド3モル付加物のトリアクリレートM402:東亞合成(株)製アロニックスM402、ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレートM309:東亞合成(株)製アロニックスM309、トリメチロールプロパントリアクリレートM408:東亞合成(株)製アロニックスM408、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートM320:東亞合成(株)製アロニックスM320、トリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド6モル付加物のトリアクリレートIPDI−HPA:イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシプロピルアクリレートの反応生成物であるウレタンアクリレートNVP:N−ビニルピロリドンHEA:2−ヒドロキシエチルアクリレートHPA:2−ヒドロキシプロピルアクリレートTHF−A:テトラヒドロフルフリルアクリレートHA:2−エチル−ヘキシルアクリレートGMA−A:2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレートIrg−184:光重合開始剤、チバガイギー(株)イルガキュアー184
【0034】○実施例1−1〜同2−2、比較例1及び同2、比較例a−1〜同a−3表1に示す成分及びIrg−184の5部を常法に従い混合し、活性エネルギー線硬化型組成物を調製した。
【0035】
【表1】


【0036】ポリメチルメタクリレート(以下PMMAと略す)基材に、得られた組成物を膜厚30μmで塗工し、室温のまま、又は乾燥機中で表2に示す条件で加熱した後、試験体を直ちに取り出し、下記の条件で紫外線を照射し、組成物を硬化させた。得られた硬化物を、下記の方法に従い密着性及び硬度を評価した。それらの結果を表2に示す。尚、実施例で得られた硬化膜は、いずれの場合も鉛筆硬度でH以上を有する硬度に優れたものであった。
【0037】1)紫外線照射条件160W/cm集光型高圧水銀灯(1灯)、水銀灯高さ10cm、コンベアスピード10m/分の条件にて1パスで硬化させた後、さらに2パス通過させた。
【0038】2)評価(密着性)得られた硬化膜について、JISK−5400の試験法に従って、セロハンテープ剥離にて、10升中の残存した升目により以下のように評価した。
○:90以上、△:10〜90、×:10以下。
(硬度)得られた硬化膜について、鉛筆硬度をJISK−5400の試験法に従って、手かき法で行った。
【0039】
【表2】


【0040】○実施例3−1〜同11−3、比較例3〜同11表3に示す成分及びIrg−184の5部を使用し、実施例1〜4と同様の方法により活性エネルギー線硬化型組成物を調製した。
【0041】
【表3】


【0042】得られた組成物を使用し、実施例1〜4と同様の方法で、室温のまま、又は下記条件で加熱した後、紫外線照射し、実施例1〜4と同様に評価した。得られた結果を表4に示す。尚、実施例で得られた硬化膜は、いずれの場合も鉛筆硬度でH以上を有する硬度に優れたものであった。
【0043】
【表4】


【0044】○実施例12−1〜同17−2、比較例12〜同17、比較例b−1〜同c−3表5に示す成分及びIrg−184の5部を使用し、実施例1〜4と同様の方法により活性エネルギー線硬化型組成物を調製した。
【0045】
【表5】


【0046】得られた組成物を使用し、実施例1〜4と同様の方法で、室温のまま、又は下記条件で加熱した後、紫外線照射し、実施例1〜4と同様に評価した。得られた結果を表6に示す。尚、実施例で得られた硬化膜は、いずれの場合も鉛筆硬度でH以上を有する硬度に優れたものであった。
【0047】
【表6】


【0048】
【発明の効果】本発明のプラスチック物品の製造方法によれば、活性エネルギー線硬化型組成物により形成された、密着性及び硬度に優れるハードコートを有するプラスチック物品を製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】プラスチック材料に活性エネルギー線硬化型組成物を塗工した後、活性エネルギー線を照射して前記組成物を硬化させる製造方法であって、前記組成物として組成物全体の(メタ)アクリロイル基当量が6meq/g以上を有するものを使用し、かつ活性エネルギー線照射前又は照射時に塗工膜の温度を50℃以上とすることを特徴とするプラスチック物品の製造方法。
【請求項2】前記活性エネルギー線硬化型組成物が、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有し分子量250〜1000である(メタ)アクリレートを含むものであることを特徴とする請求項1記載のプラスチック物品の製造方法。
【請求項3】前記活性エネルギー線硬化型組成物が、さらに分子量250未満のエチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和化合物を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプラスチック物品の製造方法。

【公開番号】特開2003−49010(P2003−49010A)
【公開日】平成15年2月21日(2003.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−239089(P2001−239089)
【出願日】平成13年8月7日(2001.8.7)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】