説明

プラスチック製ボトルの洗浄方法

【課題】洗浄剤すべてを食品添加物として認められたものを使用して、洗浄作業を安全に行うことができ、また洗浄効果としても優れていると共に、洗浄後は食品用ボトルとして再利用することができるプラスチック製ボトルの洗浄方法を提供する。
【解決手段】プラスチック製ボトルを非イオン界面活性剤を0.01〜0.1重量%含有するpH11.5〜12.5のアルカリ性溶液に接触させることにより、素材に損傷を与えることなく、使用済みプラスチック製ボトルを再利用可能に洗浄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清涼飲料水等の容器として用いられるPETボトル等を、素材に損傷を与えることなく、効果的に洗浄して再利用可能にすることができることの外に、未使用のプラスチック製ボトルに付着した汚れをも洗浄することができるプラスチック製ボトルの洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのプラスチック材料は、種々の用途で使用されている。例えば、PETは清涼飲料水、液状食品、酒類、調味料用のボトル素材として、我々の日常生活に欠かせない材料の一つとなっている。現在、使用済みPETボトルのうち、61%が自治体や小売店で回収されリサイクルされており、39%がゴミとなっている。従来、再生されたPETは、ミネラルウォーター等の食品用ボトルへの利用はできず、もっぱら、繊維、シート、非食品用ボトル等の用途に利用されてきた。更に、再生PETは平均分子量が低下するため、ブロー成形性に劣ることから、バージンPETに20〜30%程度ブレンドして使用される程度のものであった。
【0003】
そして、最近になり、ヨーロッパ諸国を中心に使用済みPETボトルから高純度のPETを再生する技術が開発され、再生PETから食品用PETボトル(米国FDA認可)を製造するプラントが稼働し始めている。
【0004】
一方、ヨーロッパ諸国では、ミネラルウォーターや清涼飲料水用の容器に対し、リターナブルプラスチックボトル等の導入が急速に進められている。例えば、ドイツのリターナブルPETボトルでは、繰り返し使用回数が12回にも及んでいる。回収されたPETボトルの洗浄・再充填ラインは、ラベルの切り離し工程、キャップの除去工程、残留異物の臭気検査工程、付着内容物を除去する洗浄工程、透明度や表面傷を検査する光学的検査工程、充填・キャッピング・ラベリング工程、抜き取り検査工程、そしてパッケージング工程から構成されている。一方、清浄度の回復にもっとも貢献する洗浄工程は、その重要性にもかかわらず、従来のガラス製びん類の洗浄方法に基づいて経験的に操作条件が設定されており、プラスチック表面とガラス製ビン類に対する汚れの付着相互作用を比較検討した科学的根拠に基づいて最適化された方法を採用されているわけではない。
【0005】
ところで、ガラスは優れた耐食性、対薬品性、耐熱性を有することから、ガラス製びん類の洗浄には、一般にpH13以上の強アルカリ洗浄剤が使用されている。さらに、内壁に付着した有機物汚れの除去効率を向上させるために、通常は強アルカリ剤と熱を併用した高温アルカリ洗浄が行われている。
【0006】
PETは、テレフタル酸(あるいはテレフタル酸ジメチル)とエチレングリコールを重縮合して得られる熱可塑性ポリエステルである。PETはエステル結合を有するため、耐熱水性と耐アルカリ性に劣ることから、ガラス製びん類の洗浄に適用される強アルカリ剤や熱の利用はおのずと制約されることになる。
【0007】
また、プラスチックに共通する特徴は、表面の撥水性が高いという特性であり、通常のアルカリ剤を添加した洗浄水はプラスチックの表面ではじかれて表面の付着汚れを除去しにくいという状況があった。特に、PET等のポリエステル系プラスチックではその傾向が強い。そのため、PET素材等に損傷を与えることなく、効率的に汚れを除去する洗浄要素の選定が必要となる。
【0008】
使用済みプラスチックボトルの再生利用を目的とするプラスチックボトルの洗浄方法につき、過去の特許文献を遡及検索したところ、特開2002−1021813号に開示された「プラスチックボトルの殺菌洗浄方法および装置」が公知である。また、特開2004−351328号に開示された「ペットボトルの自動洗浄殺菌装置」が公知であり、更に、特開2001−163311号に開示された「ペットボトルの殺菌・洗浄システム」が公知である。
【0009】
前記特許文献1に開示されたプラスチックボトルの洗浄方法は、プラスチックボトル内に挿入した螺旋ノズルにより殺菌洗浄液に旋回力を付与しながら、殺菌洗浄液を円錐状に噴霧し、プラスチックボトルの底面および内側面の全面に霧滴を直接当てて洗浄するようにしたものである。そして、殺菌洗浄液として、ボトルの内面を洗浄する場合は、無菌水、洗浄水を使用すること、またボトルの内面を殺菌する場合は、熱水、温水、オゾン水、過酸化水素水等を使用することが開示されている。
【0010】
また、特許文献2には、ペットボトルの自動洗浄殺菌装置において、強酸性水と強アルカリ性水を時間的に前後させて噴射させることにより、ペットボトル内壁を洗浄殺菌する方法が開示されている。
【0011】
更に、特許文献3には、pH5〜8の電解水を殺菌水としてペットボトルの内部に噴射する殺菌工程と、界面活性力のある機能水を無菌ろ過した無菌水を洗浄水として殺菌後のペットボトルの内部に噴射する洗浄工程からなるペットボトルの殺菌・洗浄システムが提案されている。
【0012】
【特許文献1】特開2002−102813号公報
【特許文献2】特開2004−351328号公報
【特許文献3】特開2001−163311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、前記特許文献1に開示された発明においては、単に容器の内面を洗浄する場合は、無菌水と、洗浄水を使用する旨記載されているのみで、具体的にどのような洗浄水を使用するのかが開示されておらず、果たして再利用できる程度に使用済みプラスチック製容器を洗浄できるか否かを確認することができないという課題があった。
【0014】
また、前記特許文献2に開示された洗浄殺菌に用いられる強酸性水と強アルカリ性水は、表面張力が著しく大きいため撥水性のペットボトルの表面に対しては有効な有機性付着物の除去が行えないという課題がある。そして、特許文献2には、アルカリ性水と界面活性剤または次亜塩素酸ナトリウムとの併用については記載されていない。
【0015】
更に、特許文献3に開示されたものを、洗浄という観点から見ると、pH5〜8の電解水は水酸化物イオン(OH)濃度と次亜塩素酸濃度が不十分であるため有機物汚れに対する洗浄効果が低い上、ここで使用されている無菌水の界面活性力という記述は、表面張力の低下とは無関係な作用力であり、また、アルカリ性水と界面活性剤または次亜塩素酸ナトリウムとの併用については記載されていない。
【0016】
そこで、本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、たとえ洗浄除去が困難なタンパク質、ポリフェノール、多糖類等の有機物汚れが、例えば、飲料容器として使用した後のプラスチック製ボトル、または、未使用のプラスチック製ボトルに付着していたとしても、このプラスチック製ボトルの汚染面に所定の非イオン界面活性剤濃度を含有する、所定のpHに調整されたアルカリ性溶液を接触させることにより、プラスチック素材に損傷を与えることなく、付着有機物汚れを効果的に除去できることを見出し、本発明を完成した。
【0017】
本発明は、従来のガラス製びん類よりも穏和な条件の洗浄方法であって、洗浄剤すべてを食品添加物として認められたものを使用することにより、洗浄作業を安全に行うことができ、素材に優しく、飲料用容器として再利用することが可能で、また洗浄効果としても優れているプラスチック製ボトルの洗浄方法、または、未使用のプラスチック製ボトルに付着した汚れをも洗浄することができるプラスチック製ボトルの洗浄方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、プラスチック製ボトルを、非イオン界面活性剤を0.01〜0.1重量%含有するpH11.5〜12.5のアルカリ性溶液に接触させることにより、上記課題を解決した。
【0019】
本発明において、洗浄の対象となるプラスチック製ボトルの材質としては、清涼飲料水、液状食品、酒類、調味料等に使用される材質がよく、好ましくはPET、PC、PEN等のエステル結合を有する高分子ポリマーがよい。また、プラスチック製ボトルの形状については、特に制限されるものではないが、洗浄液との接触効率の観点から、角(直方体)型、丸(円柱)型、楕円型の汎用的な形状であることが好ましい。更に、プラスチック製ボトルの容量については、市販用から業務用に使用されている200ml〜18lの範囲内で制限なく適用することができる。
【0020】
そして、本発明のアルカリ性溶液の調製においては、有機物汚れに対する溶解力、酸化分解力、コストの観点から、次亜塩素酸ナトリウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選ばれた1種又は2種以上の薬剤で構成される溶液であるのがよい。
【0021】
また、非イオン界面活性剤については、安全性の観点から食品に適用可能な界面活性剤がよく、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン高級脂肪酸アルコール等を例示することができ、好ましくは親水性が高く、低気泡性で、水の表面張力の低下能に優れたものを選定するのがよい。
【0022】
このようなプラスチック製ボトルを洗浄する際の処理条件については、アルカリ性溶液のpHを11.5以上12.5以下、好ましくは11.8以上12.3以下に調整し、該アルカリ性溶液に含まれる非イオン界面活性剤の濃度は0.01重量%以上0.1重量%以下、好ましくは0.02重量%以上0.04重量%以下とする必要がある。また、該アルカリ性溶液の成分の一つに次亜塩素酸ナトリウムが選ばれる場合には、有効塩素濃度は重量比で50ppm以上1,000ppm以下、好ましくは200ppm以上400ppm以下とする必要がある。アルカリ性溶液のpHが11.5より低いと洗浄力が不足し、反対に、12.5より高くなるとプラスチック素材の損傷の問題が生じ、また、非イオン界面活性剤の濃度が0.01重量%より低いとアルカリ溶液がプラスチック表面ではじかれてしまい均一に濡らすことができず、反対に、0.1重量%より高くても洗浄効果の向上がみられないほか、水洗浄によるすすぎ性の悪化を生じ、更に、次亜塩素酸ナトリウムの有効塩素濃度が重量比で50ppmより低いと酸化分解効果が不十分であり、反対に、1,000ppmより高くても酸化分解による洗浄効果の向上が期待できない。
【0023】
本発明の洗浄に用いるアルカリ性溶液は、次亜塩素酸ナトリウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムのほかに、界面活性作用を増強させる塩素イオン(Cl)、硫酸イオン(SO2−)、リン酸イオン(PO3−)等の陰イオンを、金属イオン封鎖作用を有するクエン酸やグルコン酸等の有機酸を、過剰の起泡を抑制する食品添加物に指定されたシリコーン系消泡剤を含有することにより、洗浄効率を一層高めることが可能となる。また、次亜塩素酸ナトリウム溶液は、市販品の試薬を使用してもよく、また、食塩水を原料として電気分解で生成した、食品への適用が認められた電解次亜水を使用してもよい。
【0024】
尚、本発明の洗浄温度は、各プラスチック製ボトルの耐熱温度(ガラス転位点)よりも低く設定することが必要であるが、プラスチック素材の劣化温度に至らない範囲内であれば可能な限り温度が高い方が洗浄に有効であることはいうまでもない。また、洗浄液をプラスチック製ボトルに接触させる方法として、静置浸漬、攪拌浸漬、高圧噴射のいずれかを選択することができる。更に、洗浄時間については特に制限されるものではないが、10分から2時間の間で最適な条件を設定すればよい。
【0025】
本発明の作用は、次のように説明することができる。例えば、タンパク質、ポリフェノール等の有機物汚れが付着したプラスチック製ボトルに適用した場合を例にすると、非イオン界面活性剤がプラスチック製ボトルに対するアルカリ溶液の濡れ性を増加させ、洗浄液成分が有機物汚れと容器表面の間に浸透することを促進させる。汚れとボトル表面の間に浸透したアルカリ(OH)は、タンパク質、ポリフェノール類、多糖類、油脂類等の広範囲の有機性汚れに対して優れた溶解作用を発揮する。また、次亜塩素酸ナトリウムは汚れを酸化分解(低分子化)し脱離性を向上させる作用を示す。更に、本発明者等の最近の研究により、タンパク質等の有機物汚れに対する洗浄力は、解離型の次亜塩素酸イオン(OCl)の濃度に依存することが明らかとなっている。このように、非イオン界面活性剤、OH及びOClの作用を相加的あるいは相乗的に発現させることにより、たとえアルカリ剤の濃度が低くても、有機物汚れが効率的に除去されるのである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、穏和なアルカリ性条件下で洗浄を実施するためプラスチック素材にも優しく、また、洗浄剤すべてを食品添加物として認められたものを使用するので、洗浄作業が安全にでき、更には、洗浄効果としても優れており、更にまた、洗浄後は飲料用として再利用することできる。そして、本発明は、未使用のプラスチック製ボトルに付着した汚れをも洗浄することができる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明の実施の形態を具体的に説明する。なお、本発明実施例においては、飲料容器等として使用された使用済みプラスチック製ボトルを洗浄する場合につき説明しているが、本発明は、未使用のプラスチック製ボトルに付着した汚れを洗浄する場合にも適用される。
【0028】
〔実施例1〕
容積25mlのガラス製バイアル内に、PET容器を粉砕して調製したPET粒子(平均粒子径43μm)0.7gと、10mlの水酸化ナトリウム溶液(pH9〜13.5)を入れ、40℃で2時間、攪拌浸漬した。2時間の浸漬後、水酸化ナトリウム溶液に溶出した全有機炭素(TOC)量(PETの分解量)は、図1に示すとおりである(片対数グラフ)。なお、溶出試験のブランク値は0.050mg/mである。図1から明らかなように、溶液のpHが9以上12.3以下の範囲では、溶出はほとんど起こっていないか、あるいは低レベルの範囲内であるといえる。一方、pHが12.5以上13.5以下の領域では、pHの増加とともにTOC溶出量は著しく増加した。すなわち、高濃度のアルカリ溶液はPETの分解をもたらすことが明らかとなった。PET素材の劣化を考慮すると、アルカリ溶液のpHの上限は12.5が好ましい。
【0029】
〔実施例2〕
実施例1と同様に、PET粒子(平均粒子径43μm)をpH10及び12に調整した次亜塩素酸ナトリウム溶液(50〜1,000ppm)中に、40℃で2時間、攪拌浸漬した。溶出したTOC量と次亜塩素酸ナトリウム溶液の濃度の関係を図2に示す。TOC溶出量は、pH10(○)及び12(●)のいずれにおいても、有効塩素濃度50〜1,000ppmにおいてほぼ一定の値であり、また、次亜塩素酸ナトリウム無添加(水酸化ナトリウム溶液)での溶出量と一致していた。すなわち、上記の濃度範囲内では、次亜塩素酸ナトリウムはPETに対して損傷を与えないことが判明した。
【0030】
〔実施例3〕
容積25mlのガラス製バイアル内に、タンパク質の一種である牛血清アルブミン(BSA)が均一に付着したPET粒子を0.34g入れ、続いてpH9〜13.5に調整した水酸化ナトリウム溶液を5mlを添加して、40℃で2時間、攪拌洗浄した。BSAの除去率と溶液のpHの関係は、図3に示すとおりである。弱アルカリ性のpH領域(pH9〜10)では、除去率は20〜30%と低いものの、付着BSA分子の一部が除去される現象が見られた。pH11〜13.5の領域では、pHの増加とともに除去率は徐々に増加する傾向を示したが、pH13.5の強アルカリ性溶液でも、除去率は80%以下にとどまった。すなわち、アルカリ剤を過剰に添加しても、洗浄効率の向上は期待できないことが判明した。なお、BSAの除去率は、初期付着量に対する、洗浄後のBSA脱離量の重量百分率にて算出した。また、本実験系での操作上の誤差を勘案すると、除去率が95%以上の数値をもって、ほぼ完全な除去が行えていると判断される。
【0031】
〔比較例1〕
実施例3と同様の方法で、ガラスと同様の親水性表面を有する酸化アルミニウム粒子にBSAを均一に付着させ、続いて種々のpHの水酸化ナトリウム溶液で洗浄したときのBSAの除去率を測定した。除去率とpHの関係を図4に示す。pH9〜10では、除去率は10%以下であり、BSAはほとんど除去されなかった。一方、pH11以上では、除去率はpHの増加とともに著しく向上し、pH13以上では95%以上に達した。図4の結果から明らかなように、親水性の固体表面の洗浄効率はアルカリ(OH)濃度への依存性が極めて高く、撥水性のPET表面の洗浄とは明確に異なるのである。
【0032】
〔実施例4〕
実施例3と同様の方法で、BSAが均一に付着したPET粒子を、0.002〜0.2重量%の濃度のポリオキシエチレン高級脂肪酸アルコール(非イオン界面活性剤)を含有する、pH11.0〜12.5に調整した水酸化ナトリウム溶液を用いて、40℃で2時間、攪拌洗浄した。BSAの除去率と界面活性剤の濃度は、図5に示すとおりである。いずれのpHにおいても、界面活性剤濃度の増加とともに除去率は増加した。BSAの除去率が95%以上となった界面活性剤の濃度は、pH11.5(●)では0.1重量%以上、pH12.5(▲)では0.01重量%以上であった。このように、界面活性剤を併用してアルカリ性溶液の表面張力を減少させ、濡れ性を改善することにより、たとえOH濃度が低くても良好な洗浄結果を得ることができた。なお、pH11.0(○)では、界面活性剤濃度を0.2重量%に増加させても十分な除去率を得ることはできなかった。
【0033】
〔実施例5〕
実施例3と同様の方法で、BSAが均一に付着したPET粒子を、100〜1,000ppmの次亜塩素酸ナトリウムを含有する、pH6.0〜12.5に調整した水酸化ナトリウム溶液を用いて、40℃で2時間、攪拌洗浄した。BSAの除去率と次亜塩素酸ナトリウムの濃度の関係は、図6に示すとおりである。BSAの除去率が95%以上となった次亜塩素酸ナトリウムの濃度は、pH11.5(●)では400ppm以上、pH12.5(▲)では200ppm以上であった。なお、pH6.0(○)では、次亜塩素酸ナトリウムが非解離型のHOClとして存在している比率が多いため、濃度を1,000ppmに増加させても十分な除去率を得ることはできなかった。
【0034】
〔実施例6〕
実施例3と同様の方法で、BSAが均一に付着したPET粒子を、0.02重量%のショ糖脂肪酸エステルと200ppmの次亜塩素酸ナトリウムを含有する、pH6.0〜12.5に調整した水酸化ナトリウム溶液を用いて、40℃で2時間、攪拌洗浄した。BSAの除去率と洗浄液のpHの関係は、図7に示すとおりである。pH11.5〜12.5の範囲では、界面活性剤による濡れ性の向上、OHの溶解力及びOClの酸化力が相乗的に作用するため、BSAの除去率はいずれも95%以上となった。なお、pH6.2、8.5、10.0では、OH及びOClの濃度が不十分なため、十分な除去率を得ることはできず、また、pH11.0でも除去率は95%に至らなかった。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によれば、プラスチック製ボトルに対して、プラスチック素材に穏和な構成となる非イオン界面活性剤を含有するアルカリ性溶液に接触させることにより、ボトルの壁面を損傷することなく、プラスチック製ボトルの清浄度を回復することができるので、例えば、PET,PC,PEN等のプラスチック製ボトルのリターナブルシステムにおいて、衛生上安全な使用済みボトルの洗浄方法として好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】PET粒子から溶出したTOC量とpHの関係を示す図である。
【図2】PET粒子から溶出したTOC量と有効塩素濃度の関係を示す図である。
【図3】PET粒子に付着したBSAの除去に及ぼす洗浄液のpHの影響を示す図である。
【図4】酸化アルミニウム粒子に付着したBSAの除去に及ぼす洗浄液のpHの影響を示す図である。
【図5】PET粒子に付着したBSAの除去に及ぼす界面活性剤の濃度の影響を示す図である。
【図6】PET粒子に付着したBSAの除去に及ぼす次亜塩素酸ナトリウムの濃度の影響を示す図である。
【図7】PET粒子に付着したBSAの除去に及ぼす種々のpHにおける界面活性剤と次亜塩素酸ナトリウムの併用効果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック製ボトルを、非イオン界面活性剤を0.01〜0.1重量%含有するpH11.5〜12.5のアルカリ性溶液に接触させることを特徴とするプラスチック製ボトルの洗浄方法。
【請求項2】
請求項1において、アルカリ性溶液が、次亜塩素酸ナトリウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選ばれた1種又は2種以上の成分を含む溶液であることを特徴とするプラスチック製ボトルの洗浄方法。
【請求項3】
請求項1において、非イオン界面活性剤が食品添加物として認められた物質であることを特徴とするプラスチック製ボトルの洗浄方法。
【請求項4】
請求項2において、次亜塩素酸ナトリウムの有効塩素濃度を重量比で50〜1,000ppmとすることを特徴とするプラスチック製ボトルの洗浄方法。
【請求項5】
請求項1において、プラスチック素材がエステル結合を有する高分子ポリマーであることを特徴とするプラスチック製ボトルの洗浄方法。
【請求項6】
請求項1において、プラスチック製ボトルが使用済みボトルであることを特徴とするプラスチック製ボトルの洗浄方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−245041(P2007−245041A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−73874(P2006−73874)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(591060980)岡山県 (96)
【出願人】(399061086)パルシステム生活協同組合連合会 (2)
【Fターム(参考)】