説明

プラズマディスプレイパネルおよび電極を形成するペースト

【課題】本発明によれば実質的に鉛成分を含まない材料によって構成されながら、高品質および高歩留まり生産を可能とするプラズマディスプレイパネルを提供する。
【解決手段】本発明のプラズマディスプレイパネルは、複数の表示電極を配置した前面基板と、表示電極に交差するようにアドレス電極を配置しアドレス電極上に絶縁体層を配置した背面基板との間に、放電空間が形成されるように対向配置したプラズマディスプレイパネルであって、アドレス電極は、重量比で銀60〜99%、ガラスフリット1〜40%、およびクラッキング触媒0.5〜20%からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示デバイスとして知られるプラズマディスプレイパネルおよびプラズマディスプレイパネルの電極を形成するためのペーストに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、双方向情報端末として大画面、壁掛けテレビへの期待が高まっており、そのための表示デバイスとして、液晶表示パネル、フィールドエミッションディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイなどの数多くのものがある。これらの表示デバイスの中でもプラズマディスプレイパネル(以下、PDPとする)は、自発光型で美しい画像表示ができ、大画面化が容易であるなどの理由から、視認性に優れた薄型表示デバイスとして注目されており、高精細化および大画面化に向けた開発が進められている。
【0003】
PDPは表示電極、誘電体層、MgOによる保護層などの構成物を形成した前面板と、電極、隔壁、絶縁体層、蛍光体層などの構成物を形成した背面板とを、内部にR・G・Bそれぞれの微小な放電セル(以下、単にセルとする)を形成するように対向配置されるとともに、周囲を封着部材により封止されている。そして、そのセルにネオン(Ne)およびキセノン(Xe)などを混合してなる放電ガスを例えば66500Pa(約500Torr)程度の圧力で封入している。
【0004】
元来PDPは自発光型であるため各セルは非常に高い視野角を有するが、高精細化・大画面化に伴い全領域で均一なパネル特性が求められるため、材料物性・構造形成プロセスに対して対策が様々に施される。例えば、放電空間並びに蛍光体形状を定義して、同箇所に2回の塗布プロセスを用いてその構造を実現する方法を見出し、視野角の変化に対して蛍光体からの均一な発光を得る方法等が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−208057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところでPDPのアドレス電極ペーストは銀やガラスフリット、有機成分から構成されているが、アドレス電極層と絶縁体層と隔壁層の3層の同時焼成工程においてアドレス電極の脱バイが不十分となり絶縁体層との境界部分や絶縁体層中に気泡を生成してしまうことで、書き込み不良や絶縁破壊を起こすという課題がみられた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために本発明のPDPは、複数の表示電極を配置した前面基板と、前記表示電極に交差するようにアドレス電極を配置し前記アドレス電極上に絶縁体層を配置した背面基板との間に、放電空間が形成されるように対向配置したPDPであって、アドレス電極は、重量比で銀60〜99%、ガラスフリット1〜40%、およびクラッキング触媒0.5〜20%からなることを特徴とする。また本発明のペーストは、PDPの電極を形成するペーストであって、重量比で銀10〜30%、ガラスフリット1〜10%、有機成分60〜90%、およびクラッキング触媒を0.1〜5%含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように本発明によれば、少ない工程数で高品質で高信頼性なプラズマディスプレイパネルを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態におけるPDPの概略構成を示す断面斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態におけるPDPについて、図面を用いて説明する。まず、PDPの構造について図1を用いて説明する。図1に示すように、PDPは、ガラス製の前面基板1と背面基板2とを、その間に放電空間を形成するように対向配置することにより構成されている。前面基板1上には表示電極を構成する走査電極3と維持電極4とが互いに平行に対をなして複数形成されている。そして、走査電極3および維持電極4を覆うように誘電体層5が形成され、誘電体層5上には保護層6が形成されている。
【0011】
また、背面基板2上には絶縁体層7で覆われた複数のアドレス電極8が設けられ、その絶縁体層7上には井桁状の隔壁9が設けられている。また、絶縁体層7の表面および隔壁9の側面に蛍光体層10が設けられている。そして、走査電極3および維持電極4とアドレス電極8とが交差するように前面基板1と背面基板2とが対向配置されており、その間に形成される放電空間には、放電ガスとして、例えばネオンとキセノンの混合ガスが封入されている。なお、PDPの構造は上述したものに限られるわけではなく、例えばストライプ状の隔壁を備えたものであってもよい。
【0012】
上記、PDPの作製方法についての一例を以下に述べる。まず前面基板1上に電極形成用の感光性ペーストをスクリーン印刷法等により形成する。その後、露光・現像を行うことで表示電極のパターン形成を行う。表示電極のパターン形成の後、それを覆うように誘電体層5をスクリーン印刷法あるいはコート塗布を用いて形成、焼成を行う。さらにその上に蒸着法等によってMgOなどの保護層6を形成する。
【0013】
背面基板2上にアドレス電極8用の感光性ペーストをスクリーン印刷法により形成し、その後露光、現像によりアドレス電極8のパターン形成をする。アドレス電極8の組成等については後に詳細に説明する。そしてアドレス電極8上に絶縁体層7をスクリーン印刷法やコート塗布法によって形成し、その上に井桁状あるいはストライプ状の隔壁9を形成するために感光性のペーストを数回に分けてコート塗布法によって形成し、露光を行う。この際に、ペーストの塗布回数と露光パターンによって少なくとも2段以上の段差を持った構造を形成することができる。現像によるパターン形成後、焼成を行う。焼成後に隔壁9内部にRGBの蛍光体層10をディスペンサー法などで配置し、高温雰囲気下で乾燥を行う。
【0014】
上記方法で作製された前面基板1および背面基板2をそれぞれの膜面が向き合うように配置し、封着を実施する。この際に背面基板周辺に配置されたフリットガラス等により封止する。
【0015】
その後、背面基板2側に配置された排気孔より基板を加熱しながら排気を行い、ある一定の真空度に到達後、PDP内部にキセノンやネオンなどの希ガスを封入する。ガス封入後に排気管を封止し、PDPを完成させる。
【0016】
ここから本発明の実施の形態におけるアドレス電極層について具体的に説明する。
【0017】
一般に従来技術においてアドレス電極層を形成するためのアドレス電極材料ペーストは、重量で表される成分比で、銀10〜30%、ガラスフリット1〜5%、有機成分60〜90%からなる配合比である。これに対し、本発明の実施形態におけるアドレス電極材料ペーストは重量で表される成分比で、銀10〜30%、ガラスフリット1〜10%、有機成分60〜90%、クラッキング触媒を0.1〜5%含有することを特徴とする。クラッキング触媒とは石油精製において重油留分を触媒の作用によって分解し、低沸点の炭化水素に変換する触媒であり、石油化学の接触分解反応によって炭化水素化合物を軽質オレフィンに転換可能な、当該技術で一般に既知のものであれば特に限定されない。好ましくは、ゼオライト系化合物が使用される。
【0018】
このようなアドレス電極材料ペーストを用い、背面基板上にスクリーン印刷法またはコート法等によりアドレス電極材料層を形成する。その後、フォトリソグラフィー法等によりアドレス電極材料層の前駆体を形成する。そしてアドレス電極8上に絶縁体層7をスクリーン印刷法やコート塗布法によって形成し、その上に井桁状あるいはストライプ状の隔壁9を形成するために感光性のペーストを数回に分けてコート塗布法によって形成し、露光を行う。その後、アドレス電極8と絶縁体層7と隔壁9を焼成工程で焼結をすることで、従来材料では絶縁体層とアドレス電極との間に発生していた気泡の発生を抑制することが可能となった。また、アドレス電極材料中の銀の使用量を少なくし、ガラスフリットの量を増加させた場合、ガラスフリットが融着しやすくなり、脱バイが不十分となることがわかった。脱バイが不十分になることで、プラズマディスプレイパネルの端子部の電極単層部で火ぶくれ状のブリスターが発生し、電極の強度が悪化するという課題が発生しうる。しかしながら、本発明のアドレス電極材料ペーストを使用することで、クラッキング触媒が焼成時の電極材料からの脱バイを促進し、火ぶくれの発生を抑制することがわかった。
【0019】
このときアドレス電極の焼成工程を経た加熱残分の成分は重量比で銀60〜99%、ガラス1〜40%、クラッキング触媒0.5〜20%からなることが好ましい。
【0020】
本発明の有効な効果を保持するため、クラッキング触媒はアドレス電極の加熱残分中に0.5%以上含むことが望ましく、含有量が増加するほど効果は向上するが20%以上含有すると電極材料の抵抗値が上昇するといった課題や電極パターンの電気的な導通を保つことが困難となるといった課題が発生するため、0.5%〜20%の範囲であることが望ましい。
【0021】
また、このようなクラッキング触媒は絶縁体層7に含有させることによっても効果が期待できる。
【0022】
このようなアドレス電極材料を有するPDPとすることで、より高品質で高信頼性なPDPを高歩留まりで生産することを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明のPDPによれば、高品質で高歩留まり生産を可能とするPDPを提供する点で有用である。
【符号の説明】
【0024】
2 背面基板
7 絶縁体層
8 アドレス電極
9 隔壁
10 蛍光体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の表示電極を配置した前面基板と、前記表示電極に交差するようにアドレス電極を配置し前記アドレス電極上に絶縁体層を配置した背面基板との間に、放電空間が形成されるように対向配置したプラズマディスプレイパネルであって、前記アドレス電極は、重量比で銀60〜99%、ガラスフリット1〜40%、およびクラッキング触媒0.5〜20%からなることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
電極を有するプラズマディスプレイパネルの電極を形成するペーストであって、重量比で銀10〜30%、ガラスフリット1〜10%、有機成分60〜90%、およびクラッキング触媒を0.1〜5%含有することを特徴とするペースト。

【図1】
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【公開番号】特開2011−258363(P2011−258363A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130718(P2010−130718)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】