説明

プラズマディスプレイパネルの製造方法

【課題】基板割れを抑制しつつ、単位時間あたりの処理能力を維持できるプラズマディスプレイパネルの製造方法を提供する。
【解決手段】背面ガラス基板上にアドレス電極パターンを形成するステップ2と、アドレス電極パターンをキュアするステップ3と、アドレス電極パターンを覆う下地誘電体ペースト膜を形成するステップ4と、下地誘電体ペースト膜とアドレス電極パターンとを焼成するステップ5と、を含む。アドレス電極パターンをキュアするステップ3は、背面ガラス基板を搬送しつつアドレス電極パターンに紫外線を照射するステップと、その後、背面ガラス基板の紫外線が照射された領域を冷却するステップとを少なくとも2回繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示デバイスとして用いられるプラズマディスプレイパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと称する)の電極パターンを形成する方法として、感光性樹脂と金属粒子とを含む感光性電極ペースト膜をパターニングする技術が知られている。さらに、パターニングの後工程においても電極パターンの形状を保つために、電極パターンがキュアされる。
【0003】
キュアの方法として、電極パターンを基板ごと加熱する技術や、電極パターンに紫外線を照射することにより感光性樹脂を光重合させる技術が知られている。
【0004】
紫外線によるキュアにおいては、紫外線ランプから赤外線も照射される。よって、紫外線が照射されている領域では基板温度が上昇する。一方、紫外線が照射されていない領域では、基板温度が上昇しないので温度差が生じる。結果として基板の部分的膨張により、基板が割れるという問題があった。
【0005】
紫外線ランプによる基板の温度上昇を抑制する方法として、紫外線ランプと基板との間に可視光線から赤外線にわたる波長領域の光をカットするフィルターと、フィルターを冷却する機構とを配置する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−122522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、紫外線ランプと基板との間にフィルターを配置する技術では、感光性樹脂の硬化に寄与する波長域の一部もカットされる場合がある。よって、紫外線の使用効率を低下させ、単位時間あたりの処理能力を低下させるといった課題があった。
【0008】
ここに開示された技術は、上記課題を解決するためになされたもので、基板温度の上昇による基板割れを抑制しつつ、単位時間あたりの処理能力を維持できるPDPの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のPDPの製造方法は、基板上に電極パターンを形成するステップと、電極パターンをキュアするステップと、を含む。電極パターンをキュアするステップは、基板を搬送しつつ電極パターンに紫外線を照射するステップと、その後、基板の紫外線が照射された領域を冷却するステップとを少なくとも2回繰り返す。
【0010】
上記の方法によれば、基板において紫外線照射領域が移り変わるので、基板温度の急激な上昇を抑制できる。また、紫外線ランプが発生する光をカットしないので、紫外線の使用効率が低下しない。
【発明の効果】
【0011】
上記の方法によれば、基板温度の上昇による基板割れを抑制しつつ、単位時間あたりの処理能力を維持できるPDPの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態にかかるPDPの構造を示す斜視図である。
【図2】同PDPの製造方法を示すフローチャートである。
【図3A】同PDPの背面板の製造過程を示す概略図である。
【図3B】同PDPの背面板の製造過程を示す概略図である。
【図3C】同PDPの背面板の製造過程を示す概略図である。
【図3D】同PDPの背面板の製造過程を示す概略図である。
【図3E】同PDPの背面板の製造過程を示す概略図である。
【図4】キュアステップを示すフローチャートである。
【図5】電極パターンキュア装置の概略を示す斜視図である。
【図6】紫外線被照射領域の移り変わりを示す図である。
【図7】背面ガラス基板における基板搬送方向側端部の温度の時間変化を示す図である。
【図8】アドレス電極パターンにおける基板搬送方向側端部の積算光量の時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施の形態)
ここに開示されたPDP1は、交流面放電型PDPである。図1に示すように、PDP1は前面ガラス基板3などよりなる前面板2と、背面ガラス基板11などよりなる背面板10とが対向して配置される。前面板2と背面板10の外周部がガラスフリットなどからなる封着材によって気密封着されている。封着されたPDP1内部の放電空間16には、ネオン(Ne)およびキセノン(Xe)などの放電ガスが55kPa〜80kPaの圧力で封入される。
【0014】
前面ガラス基板3上には、走査電極4および維持電極5よりなる一対のストライプ状の表示電極6とブラックストライプ(遮光層)7が互いに平行にそれぞれ複数列配置される。前面ガラス基板3上には、表示電極6と遮光層7とを覆うようにコンデンサとしての働きをする誘電体層8が形成される。さらに、誘電体層8の表面に酸化マグネシウム(MgO)などからなる保護層9が形成される。
【0015】
また、背面ガラス基板11上には、前面板2の表示電極6と直交する方向に、複数のストライプ状のアドレス電極12が互いに平行に配置される。さらに、アドレス電極12を覆うように下地誘電体層13が形成される。さらに、アドレス電極12の間に形成された下地誘電体層13上には放電空間16を区切る所定の高さの隔壁14が形成される。隔壁14の間には、紫外線によって赤色に発光する蛍光体層15と、青色に発光する蛍光体層15および緑色に発光する蛍光体層15が順番に形成される。
【0016】
表示電極6とアドレス電極12とが交差する位置に放電セルが形成される。赤色に発光する蛍光体層15を有する放電セルと、青色に発光する蛍光体層15を有する放電セルと、緑色に発光する蛍光体層15を有する放電セルとによりカラー表示をする画素が形成される。
【0017】
次にPDP1の製造方法について説明する。図1に示す前面板2は、以下のように製造される。前面ガラス基板3上に、走査電極4および維持電極5と遮光層7とが形成される。表示電極6は、走査電極4および維持電極5を有する。走査電極4および維持電極5は、導電性を確保するための銀(Ag)を含む白色電極(図示せず)を有する。また、走査電極4および維持電極5は、画像表示面のコントラストを向上するため黒色顔料を含む黒色電極(図示せず)を有する。白色電極(図示せず)は、黒色電極(図示せず)に積層される。
【0018】
次に、走査電極4、維持電極5および遮光層7を覆うように前面ガラス基板3上に誘電体ペーストがダイコート法などにより塗布される。これにより、誘電体ペースト層(図示せず)が形成される。その後、所定の時間が経過すると、誘電体ペースト層(図示せず)の表面が平坦になる。その後、誘電体ペースト層が焼成されることにより、走査電極4、維持電極5および遮光層7を覆う誘電体層8が形成される。
【0019】
なお、誘電体ペーストは、ガラス粉末などの誘電体ガラス、バインダおよび溶剤を含む塗料である。
【0020】
次に、誘電体層8上に酸化マグネシウム(MgO)などからなる保護層9が真空蒸着法により形成される。
【0021】
以上の工程により前面ガラス基板3上に走査電極4、維持電極5、遮光層7、誘電体層8、保護層9が形成され、前面板2が完成する。
【0022】
図1に示す背面板10は、以下のように形成される。背面ガラス基板11上に、アドレス電極12が形成される。次に、背面ガラス基板11上にアドレス電極12を覆うように下地誘電体層13が形成される。次に、下地誘電体層13上に隔壁14が形成される。次に、隣接する隔壁14間の下地誘電体層13上および隔壁14の側面に蛍光体層15が形成される。
【0023】
以上の工程により、背面ガラス基板11上にアドレス電極12、下地誘電体層13、隔壁14、蛍光体層15が形成され、背面板10が完成する。
【0024】
次に、表示電極6とアドレス電極12とが直交するように、前面板2と背面板10とが対向配置される。次に、前面板2と背面板10の周囲がガラスフリットで封着される。次に、放電空間16にNe、Xeなどを含む放電ガスが封入されることによりPDP1が完成する。
【0025】
背面板10の製造方法について、図2に示すフローチャートに沿って、より詳細に説明する。
【0026】
ステップ1では、図3Aに示すように、感光性電極ペースト膜31が背面ガラス基板11上に形成される。感光性電極ペーストは、感光性樹脂を含有する有機バインダと銀などの金属粒子を主成分としガラスフリットが添加された無機物との混合物である。
【0027】
一例として、感光性電極ペーストは、平均粒径2.0μmの銀粉末を70重量部、酸化ビスマス69重量%、酸化ケイ素24重量%、酸化アルミニウム4重量%、酸化硼素3重量%の組成からなる平均粒径2.2μmのガラス粉末2重量部、アクリル酸、メチルメタクリレート、スチレンの共重合ポリマー8重量部、トリメチルアクリレート7重量部、ベンゾフェノン3重量部、ブチルカルビトールアセテート7重量部、ベンジルアルコール3重量部からなる。ここに開示された感光性電極ペーストに含まれる感光性樹脂は、紫外線などの活性光線が照射されると、光架橋、光重合、光解重合などの反応が誘起され化学構造が変化し、現像液に対して非溶解性になる。
【0028】
感光性電極ペーストは、スクリーン印刷法などにより、背面ガラス基板11上に所定の膜厚になるように塗布される。
【0029】
なお、感光性電極ペーストの塗布には、スクリーン印刷法の他にもダイコート法、ディスペンス法などが用いられる。
【0030】
次に感光性電極ペースト膜31を背面ガラス基板11ごとIR(Infra Red)乾燥炉などで処理する。具体的には、IR乾燥炉は、背面ガラス基板11を100°C〜150°Cの温度範囲で、5分〜10分加熱する。IR乾燥炉は、感光性電極ペースト膜31に含まれる溶剤成分などを蒸発させる。なお、感光性電極ペースト膜31の乾燥には、IR乾燥炉の他にも熱風乾燥炉、ホットプレートなどが用いられる。
【0031】
ステップ2では、図3Cに示すように、アドレス電極パターン33が形成される。具体的には、図3Bに示すように、所定のパターンが形成されたフォトマスク32を介して感光性電極ペースト膜31に活性光線が照射される。感光性電極ペースト膜31の所定の領域が露光される。活性光線としては、可視光線、近紫外線、紫外線、電子線、X線等が用いられるが、紫外線が最も好ましい。紫外線の光源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ等を用いることができる。
【0032】
次に、現像により感光性電極ペースト膜31の露光された部分以外が除去される。現像後に残留した領域が、アドレス電極パターン33になる。アドレス電極パターン33の幅は、20〜200μmが好ましい。アドレス電極パターン33の厚みは、1〜10μmが好ましい。
【0033】
本実施の形態においては、感光性電極ペースト膜31の露光には、超高圧水銀灯を光源とした紫外線を用いた。感光性電極ペースト膜31の現像には、炭酸ナトリウム水溶液を用いた。このようにして線幅75μm、厚み5.0μmのアドレス電極パターン33が形成された。
【0034】
ステップ3では、アドレス電極パターン33がキュアされる。具体的には、図3Dおよび図4に示すように、背面ガラス基板11を搬送しつつアドレス電極パターン33に紫外線を照射するステップ31と、その後、背面ガラス基板11を冷却するステップ32と、背面ガラス基板11を搬送しつつ電極パターンに紫外線を照射するステップ33と、その後、背面ガラス基板11を冷却するステップ34と、背面ガラス基板11を搬送しつつ電極パターンに紫外線を照射するステップ35と、その後、背面ガラス基板11冷却するステップ36とからなる。
【0035】
すなわち、アドレス電極パターン33をキュアするステップ3は、背面ガラス基板11を搬送しつつアドレス電極パターン33に紫外線を照射するステップと、その後、背面ガラス基板11を冷却するステップとが少なくとも2回繰り返される。
【0036】
これによりアドレス電極パターン33中の感光性樹脂が硬化される。よって、下地誘電体層13の形成時におけるアドレス電極パターン33の膨潤や損傷を低減できる。本実施の形態では、図5に示す電極パターンキュア装置50が用いられた。電極パターンキュア装置50は、コンベアからなる搬送機構48と、搬送機構48と対向配置された第1の紫外線ランプ41と、搬送機構48に沿って第1の紫外線ランプ41と間隔をおいて、かつ、搬送機構48と対向配置された第2の紫外線ランプ42と、搬送機構48に沿って第2の紫外線ランプ42と間隔をおいて、かつ、搬送機構48と対向配置された第3の紫外線ランプ43と、を備える。
【0037】
第1の紫外線ランプ41と第2の紫外線ランプ42および第3の紫外線ランプ43は、長さが搬送機構48の幅と同程度の棒状の紫外線ランプである。また、紫外線ランプは背面ガラス基板11の搬送方向に対して直交し、かつ、背面ガラス基板11の面と平行に配置される。
【0038】
さらに、第1の紫外線ランプ41の上方には、紫外線を背面ガラス基板11側に反射する湾曲ミラー45が備えられている。また、第1の紫外線ランプ41の下方には、紫外線を背面ガラス基板11側に反射する補助ミラー46が備えられている。第2の紫外線ランプ42および第3の紫外線ランプ43にも同様に、湾曲ミラー45および補助ミラー46が備えられている。搬送機構48は、背面ガラス基板11を一定速度で搬送する。このようにすると、背面ガラス基板11の一部に紫外線が照射され、紫外線被照射領域が形成される。図5には、第1の紫外線ランプ41による紫外線被照射領域51および第2の紫外線ランプ42による紫外線被照射領域52が形成されている状態が示されている。また、紫外線被照射領域は、背面ガラス基板11の移動にともない、移り変わる。よって、アドレス電極パターン33には、断続的に紫外線が照射される。
【0039】
ここで、紫外線ランプとしては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ等を用いることができる。これらの光源からは紫外線の他にも可視光や赤外線も照射されるため紫外線被照射領域の温度は上昇する。しかし、光が照射されていない領域では温度が低下する。
【0040】
次に、ステップ3の詳細を、時間変化の過程を追って説明する。ここで、時間はt1、t2、t3、t4の順に進行する。
【0041】
図6に示すように、時間t1においては、紫外線被照射領域51が、背面ガラス基板11上の基板搬送方向側にある。時間t2においては、背面ガラス基板11が搬送されることにより、紫外線被照射領域51が、背面ガラス基板11の中央付近に移る。時間t3においては、さらに背面ガラス基板11が搬送されることにより、紫外線被照射領域51が、基板搬送方向と反対側に移る。また、紫外線被照射領域52が、基板送方向側にある。時間t4においては、さらに背面ガラス基板11が搬送されることにより、紫外線被照射領域52が、基板搬送方向と反対側に移る。また、紫外線被照射領域53が、基板搬送方向側にある。なお、紫外線被照射領域53は、第3の紫外線ランプ43によって紫外線が照射される領域である。このように、本実施の形態では、時間の経過とともに紫外線被照射領域が移り変わる。
【0042】
図7に示すように、背面ガラス基板11における基板搬送方向側端部の温度は、時間の経過とともに上昇と下降を繰り返す。すなわち時間t1においては、紫外線が照射されているので、温度が上昇する。時間t2においては、紫外線が照射されていないので、温度が下降する。時間t3においては、紫外線が照射されているので、再び温度が上昇する。時間t3と時間t4の間では、紫外線が照射されていないので、温度が下降する。時間t4においては、紫外線が照射されているので、再び温度が上昇する。ここで背面ガラス基板11における中央側の温度も同様に、時間の経過とともに上昇と下降を繰り返す。
【0043】
図8に示すように、時間t1においては、背面ガラス基板11における基板搬送方向側端部のアドレス電極パターン33が受ける紫外線の積算光量は増加する。時間t2においては、積算光量は変化しない。時間t3においては、積算光量は再度増加する。時間t3と時間t4の間では、積算光量は変化しない。時間t4においては、積算光量は再度増加し、必要積算光量を超える。
【0044】
搬送機構48を用いて背面ガラス基板11を一定速度で搬送することにより、アドレス電極パターン33には断続的に紫外線が照射される。よって、背面ガラス基板11は、急激な温度上昇をせず、許容温度上限を超えない。さらに、アドレス電極パターン33中の感光性樹脂を硬化するために必要な光量を照射することができる。ここに開示された技術においては、i線(波長365nm)の積算露光量で1000〜5000mJ/cm2が好ましい。また、本実施の形態においては、紫外線ランプは3台配置された。また、搬送機構がガラス基板を65mm/秒の速度で搬送し、i線の積算光量として3000mJ/cm2になるように紫外線が断続的に照射された。
【0045】
なお、紫外線ランプは、3台に限られるものではなく、2台でもよい。要するに複数の紫外線ランプにより、断続的に紫外線が照射できればよい。さらに、本実施の形態では、背面ガラス基板11に、複数の紫外線非照射領域が形成される構成が例示された。しかし、紫外線ランプの配置間隔を広げ、背面ガラス基板11に単一の紫外線被照射領域が形成される構成でもよい。この構成では、背面ガラス基板11の冷却効率が向上する。
【0046】
ステップ4では、図3Eに示すように、下地誘電体ペースト膜34が形成される。具体的には、アドレス電極パターン33上に、ガラス粉末と有機バインダとを主成分とするガラスペーストが塗布される。次に、乾燥炉が、下地誘電体ペースト膜34を背面ガラス基板11ごと乾燥する。これにより、下地誘電体ペースト膜34中の溶剤成分が除去される。ガラスペーストは、酸化ビスマス78重量%、酸化ケイ素14重量%、酸化アルミニウム3重量%、酸化亜鉛3重量%、酸化硼素2重量%からなる低融点ガラス粉末を60重量部、平均粒径0.3μmの酸化チタン粉末を10重量部、エチルセルロースを15重量部、テルピネオールを15重量部からなる。ガラスペーストを塗布する方法としては、スクリーン印刷法、ディスペンサー法、バーコート法等を用いることができる。下地誘電体ペースト膜34の乾燥には、IR炉、熱風乾燥炉、ホットプレート等を用いることができる。下地誘電体ペースト膜34の厚みは、3〜30μmが好ましい。
【0047】
ステップ5では、アドレス電極パターン33および下地誘電体ペースト膜34が焼成される。具体的には、焼成炉がアドレス電極パターン33および下地誘電体ペースト膜34を背面ガラス基板11ごと空気中で400〜800℃の温度範囲で加熱する。これにより、アドレス電極パターン33および下地誘電体ペースト膜34に含まれる、低軟化点ガラスが溶融する。さらにバインダが燃焼除去される。焼成炉は、バッチ処理炉や連続搬送炉などが用いられる。なお、焼成は、窒素雰囲気中または水素雰囲気中などでも行われる。
【0048】
ステップ6では、隔壁パターン(図示せず)が形成される。具体的には、低融点ガラスやセラミック等の無機成分と感光性樹脂を含有する有機バインダとを主成分とする隔壁ペーストを塗布・乾燥する。その後、フォトマスクを介して所望のパターンを露光し、未硬化部分を現像除去する。また、塗布・乾燥した隔壁ペースト上にレジスト膜を形成し、レジストの露光・現像除去後にサンドブラストを実施する手法を用いることもできる。隔壁パターンは格子状であることが好ましいが、ストライプ状であってもよい。隔壁パターン幅としては、10〜150μmで形成するのが好ましく、厚みとしては、80〜200μmで形成するのが好ましい。
【0049】
ステップ7では、隔壁パターン(図示せず)が焼成される。空気中、窒素、水素等の雰囲気中で400〜800℃で同時に焼成する。これにより隔壁14が形成される。焼成炉としては、バッチ処理式や連続搬送式の炉を使用することができる。
【0050】
ステップ8では、隔壁14間に蛍光体層15を形成する。蛍光体粉末と有機バインダを主成分とする蛍光体ペースト(図示せず)を、スクリーン印刷法やディスペンサー法を使用して所定の部位に塗布する。蛍光体ペースト(図示せず)の乾燥には、IR炉、熱風乾燥炉、ホットプレート等を用いることができる。蛍光体ペーストを塗布、乾燥した後400〜550℃で焼成する。これにより蛍光体層15が形成される。
【0051】
なお、ステップ5を省略し、隔壁パターンを形成後、アドレス電極パターン33、下地誘電体ペースト膜34、隔壁パターンを一括焼成してもよい。
【0052】
本実施の形態のPDPの製造方法は、基板である背面ガラス基板11上に電極ペースト膜である感光性電極ペースト膜31を形成するステップ1と、感光性電極ペースト膜31を露光および現像することにより電極パターンであるアドレス電極パターン33を形成するステップ2と、アドレス電極パターン33をキュアするステップ3と、アドレス電極パターン33を覆う誘電体膜である下地誘電体ペースト膜34を形成するステップ4と、下地誘電体ペースト膜34とアドレス電極パターン33とを一括焼成するステップ5と、を含む。アドレス電極パターン33をキュアするステップ3は、背面ガラス基板11を搬送しつつアドレス電極パターン33に紫外線を照射するステップ31と、その後、背面ガラス基板11の紫外線が照射された領域を冷却するステップ32とを少なくとも2回繰り返す。
【0053】
このような方法によれば、背面ガラス基板11において、紫外線被照射領域が移り変わるので、背面ガラス基板11の温度の急激な上昇を抑制できる。また部分的な膨張が低減される。また、紫外線ランプが発生する光をカットしないので、紫外線の使用効率が低下しない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、電極パターンをキュアする際に、基板割れを抑制しつつ、単位時間あたりの処理能力を維持できるのでPDPの製造などに有用である。
【符号の説明】
【0055】
1 PDP
2 前面板
3 前面ガラス基板
4 走査電極
5 維持電極
6 表示電極
7 ブラックストライプ(遮光層)
8 誘電体層
9 保護層
10 背面板
11 背面ガラス基板
12 アドレス電極
13 下地誘電体層
14 隔壁
15 蛍光体層
16 放電空間
31 感光性電極ペースト膜
32 フォトマスク
33 アドレス電極パターン
34 下地誘電体ペースト膜
41 第1の紫外線ランプ
42 第2の紫外線ランプ
43 第3の紫外線ランプ
45 湾曲ミラー
46 補助ミラー
48 搬送機構
50 電極パターンキュア装置
51 第1の紫外線ランプによる紫外線被照射領域
52 第2の紫外線ランプによる紫外線被照射領域
53 第3の紫外線ランプによる紫外線被照射領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に電極パターンを形成するステップと、
前記電極パターンをキュアするステップと、を含み、
前記電極パターンをキュアするステップは、前記基板を搬送しつつ前記電極パターンに紫外線を照射するステップと、その後、前記基板の前記紫外線が照射された領域を冷却するステップとを少なくとも2回繰り返す、
プラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、
前記基板上に電極パターンを形成するステップは、
前記基板上に感光性電極ペースト膜を形成するステップと、
前記感光性電極ペースト膜をリソグラフィ法によって処理するステップと、
前記感光性電極ペースト膜を現像するステップと、を有する、
プラズマディスプレイパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−38547(P2012−38547A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177223(P2010−177223)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】