説明

プラズマディスプレイパネルの駆動方法

【課題】十分な電圧設定マージンを確保しつつ安定した書込み放電を発生させて、表示品質の高い画像を実現する。
【解決手段】走査電極と維持電極とデータ電極とを有する放電セルを複数備えたプラズマディスプレイパネルを駆動する方法であって、初期化期間では、直前のサブフィールドの動作にかかわらず初期化放電を発生させる強制初期化動作と、直前の書込み期間で書込み放電を発生した放電セルのみで初期化放電を発生させる選択初期化動作とのいずれかを行い、選択初期化動作は、維持電極に第1の電圧を印加するとともに、走査電極に上り傾斜波形電圧を印加し、その後、走査電極に下り傾斜波形電圧を印加し、その後、走査電極に正の矩形状電圧を印加し、その後、走査電極に下り傾斜波形電圧を印加し、その後、維持電極に第1の電圧よりも高い第2の電圧を印加するとともに走査電極に下り傾斜波形電圧を印加して行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネルの駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
交流面放電型のプラズマディスプレイパネル(以下、「パネル」と略記する)は、走査電極と維持電極とデータ電極とを有する放電セルを複数備え、放電セル内でガス放電により発生させた紫外線で赤色、緑色および青色の各色の蛍光体を励起発光させてカラー表示を行っている。
【0003】
パネルを駆動する方法としてはサブフィールド法、すなわち初期化期間と書込み期間と維持期間とを有するサブフィールドを複数用いて1つのフィールドを構成し、発光させるサブフィールドの組み合わせによって階調表示を行う方法が一般的である。各サブフィールドの初期化期間には初期化動作、書込み期間には書込み動作、維持期間には維持動作を行う。初期化動作は初期化放電を発生し、続く書込み動作に必要な壁電荷を形成する動作である。初期化動作には、直前のサブフィールドの動作にかかわらず初期化放電を発生させる強制初期化動作と、直前のサブフィールドで書込み放電を行った放電セルのみで初期化放電を発生させる選択初期化動作とがある。書込み動作は表示する画像に応じて放電セルで選択的に書込み放電を発生し壁電荷を形成する動作であり、維持動作は表示電極対に交互に維持パルスを印加して維持放電を発生させ、対応する放電セルの蛍光体層を発光させる動作である。
【0004】
サブフィールド法の中でも最も低い階調である黒を表示する際の輝度(以下、「黒輝度」と略記する)を下げ、階調表示に関係しない発光を極力減らしてコントラストを向上させる駆動方法が検討されている。例えば特許文献1には、強制初期化動作を行うサブフィールドを1フィールドに1つとし、他のサブフィールドでは選択初期化動作を行うサブフィールドで構成する駆動方法が開示されている。
【0005】
また特許文献2には、維持期間の最後において走査電極に上り傾斜波形電圧を印加し、その次の初期化期間において走査電極に下り傾斜波形電圧を印加して選択初期化動作を行う駆動方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−242224号公報
【特許文献2】特開2008−256774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載されているように、駆動電圧波形に傾斜波形電圧を用いるとリンギング等の波形ひずみが抑えられるので、各放電セルの各電極に駆動電圧波形を精度よく印加することができる。このため、初期化期間の駆動電圧に傾斜波形電圧を用いると、次の書込み期間では安定した書込み放電を発生させることができる。しかしながら、傾斜波形電圧を用いた放電は微弱な放電であり、また選択初期化動作を行うために各電極に印加できる電圧範囲は限られるので、それ以前の放電セルの壁電荷の履歴を完全に消去するだけの放電を発生させることが難しいという課題があった。そのために直前のサブフィールドで書込み放電を行った放電セルと書込み放電を行なわなかった放電セルとの駆動条件が異なり、その結果、駆動電圧波形の電圧設定マージンが狭くなるという課題があった。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、十分な電圧設定マージンを確保しつつ安定した書込み放電を発生させて、表示品質の高い画像を表示することが可能なパネルの駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、初期化期間と書込み期間と維持期間とを有するサブフィールドを複数用いて1つのフィールドを構成し、走査電極と維持電極とデータ電極とを有する放電セルを複数備えたプラズマディスプレイパネルを駆動するプラズマディスプレイパネルの駆動方法であって、前記初期化期間では、直前のサブフィールドの動作にかかわらず初期化放電を発生させる強制初期化動作と、直前の書込み期間で書込み放電を発生した放電セルのみで初期化放電を発生させる選択初期化動作とのいずれかを行い、前記選択初期化動作は、前記維持電極に第1の電圧を印加するとともに、前記走査電極に上り傾斜波形電圧を印加し、その後、前記走査電極に下り傾斜波形電圧を印加し、その後、前記走査電極に正の矩形状電圧を印加し、その後、前記走査電極に下り傾斜波形電圧を印加し、その後、前記維持電極に第1の電圧よりも高い第2の電圧を印加するとともに前記走査電極に下り傾斜波形電圧を印加して行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、パネルにおいて十分な電圧設定マージンを確保しつつ安定した書込み放電を発生させて、表示品質の高い画像を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置に用いるパネルの分解斜視図
【図2】同プラズマディスプレイ装置に用いるパネルの電極配列図
【図3】同プラズマディスプレイ装置に用いるパネルの各電極に印加する駆動電圧波形図
【図4】(A)は維持パルスのパルス波高値である電圧の設定範囲を示す図、(B)は書込みパルスのパルス波高値である電圧の設定範囲を示す図
【図5】同プラズマディスプレイ装置の回路ブロック図
【図6】同プラズマディスプレイ装置の走査電極駆動回路の回路図
【図7】同プラズマディスプレイ装置の維持電極駆動回路の回路図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置について、図面を用いて説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置に用いるパネル10の分解斜視図である。ガラス製の前面基板21上には、走査電極22と維持電極23とからなる表示電極対24が複数形成されている。そして表示電極対24を覆うように誘電体層25が形成され、その誘電体層25上に保護層26が形成されている。保護層26は、放電を発生しやすくするために、電子放出性能の高い材料である酸化マグネシウムを用いて形成されている。背面基板31上にはデータ電極32が複数形成され、データ電極32を覆うように誘電体層33が形成され、さらにその上に井桁状の隔壁34が形成されている。そして、隔壁34の側面および誘電体層33上には赤色、緑色および青色の各色に発光する蛍光体層35が設けられている。
【0014】
これら前面基板21と背面基板31とは、微小な放電空間を挟んで表示電極対24とデータ電極32とが交差するように対向配置され、その外周部をガラスフリット等の封着材によって封着されている。そして放電空間には、放電ガスとして、例えばネオンとキセノンとの混合ガスが封入されている。放電空間は隔壁34によって複数の区画に仕切られており、表示電極対24とデータ電極32とが交差する部分に放電セルが形成されている。そしてこれらの放電セルが放電、発光することにより画像が表示される。
【0015】
なお、パネル10の構造は上述したものに限られるわけではなく、例えばストライプ状の隔壁を備えたものであってもよい。
【0016】
図2は、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置に用いるパネル10の電極配列図である。パネル10には、行方向に長いn本の走査電極SC1〜SCn(図1の走査電極22)およびn本の維持電極SU1〜SUn(図1の維持電極23)が配列され、列方向に長いm本のデータ電極D1〜Dm(図1のデータ電極32)が配列されている。そして、1対の走査電極SCi(i=1〜n)および維持電極SUi(i=1〜n)と1つのデータ電極Dj(j=1〜m)とが交差した部分に放電セルが形成され、放電セルは放電空間内にm×n個形成されている。
【0017】
次に、パネル10を駆動するための駆動電圧波形とその動作について説明する。プラズマディスプレイ装置は、サブフィールド法、すなわち1フィールドを複数のサブフィールドに分割し、サブフィールド毎に各放電セルの発光・非発光を制御することによって画像を表示する。
【0018】
それぞれのサブフィールドは、初期化期間、書込み期間、維持期間を有する。初期化期間では、それ以前の放電セルの壁電荷の履歴を消去し、続く書込み放電に必要な壁電荷を各電極上に形成する初期化動作を行う。書込み期間では、発光させるべき放電セルで選択的に書込み放電を発生し、壁電荷を形成する書込み動作を行う。維持期間では、サブフィールド毎にあらかじめ決められた輝度重みに応じた数の維持パルスを走査電極と維持電極に交互に印加して、書込み放電を発生した放電セルで維持放電を発生させて発光させる維持動作を行う。なお、発光輝度を低く抑えるために維持期間を省略してもよい。
【0019】
サブフィールド構成としては、例えば、1フィールドを10のサブフィールド(SF1、SF2、・・・、SF10)に分割し、各サブフィールドはそれぞれ、(1、2、3、6、11、18、30、44、60、80)の輝度重みを持つものとする。そしてサブフィールドSF1の初期化期間で強制初期化動作を行い、サブフィールドSF2〜SF10の初期化期間で選択初期化動作を行う。しかし本発明は上記のサブフィールド数、輝度重み等のサブフィールド構成に限定されるものではない。
【0020】
図3は、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の各電極に印加する駆動電圧波形図である。
【0021】
サブフィールドSF1の初期化期間では、まずデータ電極D1〜Dmに電圧0(V)を印加し、維持電極SU1〜SUnにも電圧0(V)を印加する。そして走査電極SC1〜SCnに、維持電極SU1〜SUnに対する放電開始電圧以下の電圧Vi1から放電開始電圧を超える電圧Vi2に向かって緩やかに上昇する上り傾斜波形電圧を印加する。すると走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとの間、走査電極SC1〜SCnとデータ電極D1〜Dmとの間でそれぞれ微弱な初期化放電が起こり、走査電極SC1〜SCn上に負の壁電圧が蓄積されるとともにデータ電極D1〜Dm上および維持電極SU1〜SUn上に正の壁電圧が蓄積される。ここで電極上の壁電圧とは、電極を覆う誘電体層上、保護層上、蛍光体層上等に蓄積された壁電荷により生じる電圧を表す。
【0022】
次に、維持電極SU1〜SUnに電圧Veを印加し、走査電極SC1〜SCnに電圧Vi3から電圧Vi4に向かって緩やかに下降する下り傾斜波形電圧を印加する。すると再び微弱な初期化放電が発生し、走査電極SC1〜SCn上および維持電極SU1〜SUn上の壁電圧が弱められる。またデータ電極D1〜Dmの壁電圧の過剰な部分が放電され、書込み動作に適した壁電圧に調整される。このようにして、全ての放電セルで初期化放電が発生する強制初期化動作が完了する。
【0023】
サブフィールドSF1の書込み期間では、データ電極D1〜Dmに電圧0(V)を、維持電極SU1〜SUnには電圧Veを引き続き印加し、走査電極SC1〜SCnに電圧Vcを印加する。
【0024】
次に、1行目の走査電極SC1に電圧Vaの走査パルスを印加するとともに発光すべき放電セルに対応するデータ電極Dkに電圧Vdの書込みパルスを印加する。するとデータ電極Dk上と走査電極SC1上との交差部の電圧差は、外部印加電圧の差(Vd−Va)にデータ電極Dk上の正の壁電圧が加算され放電開始電圧を超える。そしてデータ電極Dkと走査電極SC1との間で放電が発生し、これが走査電極SC1と維持電極SU1との間の放電に伸展して書込み放電が起こる。そして走査電極SC1上に正の壁電圧が蓄積され、維持電極SU1上に負の壁電圧が蓄積され、データ電極Dk上にも負の壁電圧が蓄積される。このようにして、1行目に発光させるべき放電セルで書込み放電を起こして各電極上に壁電圧を蓄積する書込み動作が行われる。一方、書込みパルスを印加しなかったデータ電極と走査電極SC1との交差部の電圧は放電開始電圧を超えないので、書込み放電は発生しない。
【0025】
次に、2行目の走査電極SC2に走査パルスを印加するとともに、発光すべき放電セルに対応するデータ電極Dkに書込みパルスを印加する。するとデータ電極Dkと走査電極SC2との間および維持電極SU2と走査電極SC2との間で書込み放電が起こり、走査電極SC2上に正の壁電圧が蓄積され、維持電極SU2上に負の壁電圧が蓄積され、データ電極Dk上にも負の壁電圧が蓄積される。このようにして、2行目に発光させるべき放電セルで書込み放電を起こして各電極上に壁電圧を蓄積する書込み動作が行われる。一方、書込みパルスを印加しなかったデータ電極と走査電極SC2との交差部の電圧は放電開始電圧を超えないので、書込み放電は発生しない。
【0026】
以下、n行目の走査電極SCnに至るまで同様の書込み動作を行い、続く維持放電に必要な壁電荷を形成する。
【0027】
サブフィールドSF1の維持期間では、維持電極SU1〜SUnに電圧0(V)を印加するとともに走査電極SC1〜SCnに電圧Vsの維持パルスを印加する。すると書込み放電を起こした放電セルでは、走査電極SCi上と維持電極SUi上との電圧差が電圧Vsに走査電極SCi上の壁電圧と維持電極SUi上の壁電圧との差を加算したものとなり走査電極SCiと維持電極SUiとの間の放電開始電圧を超える。そして、走査電極SCiと維持電極SUiとの間に維持放電が起こり、このとき発生した紫外線により蛍光体層35が発光する。そして走査電極SCi上に負の壁電圧が蓄積され、維持電極SUi上に正の壁電圧が蓄積される。さらにデータ電極Dk上にも正の壁電圧が蓄積される。一方、書込み放電が起きなかった放電セルでは維持放電は発生せず、初期化動作の終了時における壁電圧が保たれる。
【0028】
続いて、走査電極SC1〜SCnに電圧0(V)を印加するとともに維持電極SU1〜SUnに電圧Vsの維持パルスを印加する。すると、維持放電を起こした放電セルでは再び維持放電が起こり、蛍光体層35が発光する。そして維持電極SUi上に負の壁電圧が蓄積され走査電極SCi上に正の壁電圧が蓄積される。
【0029】
以降同様に、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとに交互に輝度重みに応じた数の維持パルスを印加し、書込み放電を起こした放電セルで維持放電を継続して発生させる。
【0030】
続くサブフィールドSF2の初期化期間では、維持電極SU1〜SUnに第1の電圧である電圧0(V)を印加するとともに走査電極SC1〜SCnには電圧0(V)から正の電圧Vrまで緩やかに上昇する上り傾斜波形電圧を印加する。なお本実施の形態においては、電圧Vrは電圧Vsと同じ電圧に設定されている。すると維持放電を行った放電セル(維持期間が省略されている場合は書込み放電を行った放電セル)では走査電極SCiを陽極とし維持電極SUiを陰極とする1回目の微弱な消去放電が発生する。そして走査電極SCi上および維持電極SUi上の壁電圧が弱められる。
【0031】
次に、維持電極SU1〜SUnに電圧0(V)を印加したまま、走査電極SC1〜SCnには電圧0(V)から負の電圧Vi4に向かって緩やかに下降する下り傾斜波形電圧を印加する。すると微弱な消去放電を発生した放電セルで再び微弱な放電が発生する。このときの微弱放電は走査電極を陰極としデータ電極を陽極とする1回目の放電である。なお電圧Vi4は、走査パルスの電圧Vaと等しいか電圧Vaよりわずかに高い電圧に設定されている。
【0032】
その後、走査電極SC1〜SCnに電圧Vrの矩形電圧を時間Teの間印加する。すると微弱な消去放電を発生した放電セルで3度目の放電が発生する。このときの放電は走査電極を陽極とし維持電極を陰極とする2回目の放電であり、弱い放電である。
【0033】
その後、維持電極SU1〜SUnに電圧0(V)を印加したまま、走査電極SC1〜SCnには電圧0(V)から電圧Vi4に向かって緩やかに下降する下り傾斜波形電圧を印加する。すると微弱な消去放電を発生した放電セルで4度目の放電が発生する。このときの放電は微弱な放電となり、この微弱放電は走査電極を陰極としデータ電極を陽極とする2回目の放電である。なお電圧Vi4は、走査パルスの電圧Vaと等しいか電圧Vaよりわずかに高い電圧に設定されている。
【0034】
さらにその後、維持電極SU1〜SUnに第1の電圧よりも高い第2の電圧である電圧Veを印加し、走査電極SC1〜SCnには電圧0(V)から電圧Vi4に向かって緩やかに下降する下り傾斜波形電圧を印加する。すると放電を発生した放電セルで5度目の放電が発生する。このときの放電は走査電極を陰極としデータ電極を陽極とする3回目の放電である。そしてこの微弱放電により走査電極SCi上、維持電極SUi上の壁電圧、およびデータ電極Dk上の壁電圧の過剰な部分が放電され、書込み動作に適した壁電圧に調整される。このようにして初期化動作が完了する。
【0035】
続くサブフィールドSF2の書込み期間の動作はサブフィールドSF1の書込み期間の動作と同じであり、サブフィールドSF2の維持期間の動作は、維持パルス数を除きサブフィールドSF1の維持期間の動作と同じである。またサブフィールドSF3〜SF10における動作は、維持パルス数を除きサブフィールドSF2の動作と同様である。
【0036】
なお、本実施の形態においては、電圧Vi1は200(V)、電圧Vi2は400(V)、電圧Vi3は200(V)、電圧Vi4は−180(V)、電圧Vcは−55(V)、電圧Vaは−200(V)、電圧Vsは200(V)、電圧Vrは200(V)、電圧Veは150(V)、電圧Vdは60(V)である。また時間Teは50μsである。しかしこれらの電圧値は上述した値に限定されるものではなく、パネルの放電特性やプラズマディスプレイ装置の仕様にもとづき最適に設定することが望ましい。
【0037】
このように本実施の形態においては、初期化期間において、維持電極SUiを陰極とし走査電極SCiを陽極とする1回目の放電を発生させ、その後、走査電極SCiを陰極としデータ電極Djを陽極とする1回目の放電を発生させ、その後、維持電極SUiを陰極とし走査電極SCiを陽極とする2回目の放電を発生させ、その後、走査電極SCiを陰極としデータ電極Djを陽極とする2回目の放電を発生させ、その後、走査電極SCiを陰極としデータ電極Djを陽極とする3回目の放電を発生させている。さらにこれらの放電を弱い放電とし、それにともなう発光を抑えるために、維持電極SU1〜SUnに第1の電圧である0(V)を印加するとともに走査電極SC1〜SCnに上り傾斜波形電圧を印加し、その後、走査電極SC1〜SCnに下り傾斜波形電圧を印加し、その後、走査電極SC1〜SCnに正の矩形状電圧を印加し、その後、走査電極SC1〜SCnに下り傾斜波形電圧を印加し、その後、維持電極SU1〜SUnに第1の電圧よりも高い第2の電圧である電圧Veを印加するとともに走査電極SC1〜SCnに下り傾斜波形電圧を印加している。
【0038】
このように、強い放電を発生させなくても、微弱な放電を複数回繰り返し発生させることによって各電極上に十分な壁電圧を蓄積することができ、続く書込み放電を安定して発生させることができる。
【0039】
図4は、特許文献2に記載されている従来の駆動方法による電圧設定マージンと、本実施の形態における駆動方法による電圧設定マージンとを測定した実験結果であり、図4(A)は、維持パルスのパルス波高値である電圧Vsの設定範囲を、図4(B)は、書込みパルスのパルス波高値である電圧Vdの設定範囲をそれぞれ示している。
【0040】
図4(A)に示すように、従来の駆動方法による電圧Vsの設定範囲は170(V)〜183(V)であり、本実施の形態における駆動方法による電圧Vsの設定範囲は170(V)〜210(V)である。このように本実施の形態における駆動方法によれば、従来の駆動方法に比較して、電圧設定マージンが大幅に広がっていることがわかる。
【0041】
本実施の形態における駆動方法で駆動マージンが広がる理由について、例えば次のように考えることができる。維持期間において表示電極対に維持パルスを印加した後に、走査電極に電圧Vrまで上昇する上り傾斜波形電圧を印加して消去放電を発生させる。このとき、維持放電が発生した放電セルでのみ消去放電を発生させるためには、電圧Vrをあまり高く設定することができず、電圧Vsと同程度の電圧でなければならない。そしてそのときの放電では壁電圧を完全に消去することができず、維持放電で蓄積された壁電荷が残留する。従来の駆動方法によれば、この残留した壁電圧が維持パルスに加算されるため、選択初期化動作に続く書込み期間において書込み動作を行わなかった放電セルであっても、続く維持期間において維持放電が発生する確率が高くなる。そのため電圧Vsを高く設定することができない。
【0042】
しかしながら本実施の形態における駆動方法によれば、維持期間において表示電極対に維持パルスを印加した後に、維持電極を陰極とし走査電極を陽極とする放電を2回、および走査電極を陰極としデータ電極を陽極とする放電を3回発生させる。そのため維持放電で蓄積された壁電荷が残留することなく消去され、書込み期間において書込み動作を行わなかった放電セルで維持放電が発生する恐れがなく、電圧Vsを高く設定することができる。
【0043】
また、 図4(B)に示すように、従来の駆動方法による電圧Vdの設定範囲の下限が58(V)であり、本実施の形態における駆動方法による電圧Vdの設定範囲の下限は、時間Te=40μsの場合に55(V)、時間Te=55μsの場合に52(V)である。このように本実施の形態における駆動方法によれば、従来の駆動方法に比較して、電圧Vdの電圧設定マージンも広がっていることがわかる。
【0044】
このように、本発明の実施の形態におけるパネルの駆動方法によれば、従来のパネルの駆動方法に比較して、電圧Vsおよび電圧Vdの電圧設定マージンを広げることができる。上記以外にも、走査パルスのパルス波高値等についても電圧設定マージンを広げることができる。なお、電圧Vdの設定範囲、および走査パルスのパルス波高値の設定範囲は走査電極に電圧Vrの矩形電圧を印加する時間Teの依存性があり、時間Teを長く設定すると電圧設定マージンも広がる傾向がある。しかし実用上は時間Teを50μs程度に設定すれば十分な電圧設定マージンを確保することができる。
【0045】
次に、パネル10を駆動するための駆動回路について説明する。図5は、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置40の回路ブロック図である。プラズマディスプレイ装置40は、パネル10とその駆動回路とを備え、駆動回路は、画像信号処理回路41、データ電極駆動回路42、走査電極駆動回路43、維持電極駆動回路44、タイミング発生回路45および各回路ブロックに必要な電源を供給する電源回路(図示せず)を備えている。
【0046】
画像信号処理回路41は、入力された画像信号をサブフィールド毎の発光・非発光を示す画像データに変換する。データ電極駆動回路42はサブフィールド毎の画像データを各データ電極D1〜Dmに対応する書込みパルスに変換し各データ電極D1〜Dmに印加する。タイミング発生回路45は水平同期信号Hおよび垂直同期信号Vをもとにして各回路ブロックの動作を制御する各種のタイミング信号を発生し、それぞれの回路ブロックへ供給する。走査電極駆動回路43は、タイミング信号にもとづいて上述した駆動電圧波形を発生し各走査電極SC1〜SCnのそれぞれに印加する。維持電極駆動回路44は、タイミング信号にもとづいて上述した駆動電圧波形を発生し維持電極SU1〜SUnに印加する。
【0047】
図6は、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置40の走査電極駆動回路43の回路図である。走査電極駆動回路43は、維持パルス発生回路50と、傾斜波形電圧発生回路60と、走査パルス発生回路70とを備えている。
【0048】
維持パルス発生回路50は、電力回収回路51と、スイッチング素子Q55と、スイッチング素子Q56と、スイッチング素子Q59とを有し、走査電極SC1〜SCnに印加する維持パルスを発生する。電力回収回路51は走査電極SC1〜SCnを駆動するときの電力を回収して再利用する。スイッチング素子Q55は走査電極SC1〜SCnを電圧Vsにクランプし、スイッチング素子Q56は走査電極SC1〜SCnを電圧0(V)にクランプする。スイッチング素子Q59は分離スイッチであり、走査電極駆動回路43を構成するスイッチング素子の寄生ダイオード等を介して電流が逆流するのを防止するために設けられている。
【0049】
走査パルス発生回路70は、スイッチング素子Q71H1〜Q71Hn、Q71L1〜Q71Ln、スイッチング素子Q72を有する。そして電圧Vaの電源、および走査パルス発生回路70の基準電位(図6に示した節点Aの電位)に重畳された電圧(Vc−Va)の電源E71をもとにして走査パルスを発生し、走査電極SC1〜SCnのそれぞれに、図3に示したタイミングで走査パルスを順次印加する。なお、走査パルス発生回路70は、維持動作時には維持パルス発生回路50の出力電圧をそのまま出力する。すなわち、節点Aの電圧を走査電極SC1〜SCnへ出力する。
【0050】
傾斜波形電圧発生回路60は、ミラー積分回路61、62、63を備え、図3に示した傾斜波形電圧を発生させる。ミラー積分回路61は、トランジスタQ61とコンデンサC61と抵抗R61とを有し、入力端子IN61に一定の電圧を印加することにより、電圧Vi2に向かって緩やかに上昇する上り傾斜波形電圧を発生する。ミラー積分回路62は、トランジスタQ62とコンデンサC62と抵抗R62と逆流防止用のダイオードD62とを有し、入力端子IN62に一定の電圧を印加することにより、電圧Vrに向かって緩やかに上昇する上り傾斜波形電圧を発生する。ミラー積分回路63は、トランジスタQ63とコンデンサC63と抵抗R63とを有し、入力端子IN63に一定の電圧を印加することにより、電圧Vi4に向かって緩やかに低下する下り傾斜波形電圧を発生する。なおスイッチング素子Q69も分離スイッチであり、走査電極駆動回路43を構成するスイッチング素子の寄生ダイオード等を介して電流が逆流するのを防止するために設けられている。
【0051】
なお、これらのスイッチング素子およびトランジスタは、MOSFETやIGBT等の一般に知られた素子を用いて構成することができる。またこれらのスイッチング素子およびトランジスタは、タイミング発生回路45で発生したそれぞれのスイッチング素子およびトランジスタに対応するタイミング信号により制御される。
【0052】
図7は、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置40の維持電極駆動回路44の回路図である。維持電極駆動回路44は、維持パルス発生回路80と、一定電圧発生回路85とを備えている。
【0053】
維持パルス発生回路80は、電力回収回路81と、スイッチング素子Q83と、スイッチング素子Q84とを有し、維持電極SU1〜SUnに印加する維持パルスを発生する。電力回収回路81は維持電極SU1〜SUnを駆動するときの電力を回収して再利用する。スイッチング素子Q83は維持電極SU1〜SUnを電圧Vsにクランプし、スイッチング素子Q84は維持電極SU1〜SUnを電圧0(V)にクランプする。
【0054】
一定電圧発生回路85は、スイッチング素子Q86、Q87を有し、維持電極SU1〜SUnに電圧Veを印加する。
【0055】
なお、これらのスイッチング素子も、MOSFETやIGBT等の一般に知られた素子を用いて構成することができる。またこれらのスイッチング素子も、タイミング発生回路45で発生したそれぞれのスイッチング素子に対応するタイミング信号により制御される。
【0056】
図6に示した走査電極駆動回路43および図7に示した維持電極駆動回路44を用いて、サブフィールドSF2の初期化期間において走査電極SC1〜SCnおよび維持電極SU1〜SUnに印加する駆動電圧波形を発生する方法について説明する。なおここでも電圧Vrは電圧Vsと同じ電圧に設定されているものとする。
【0057】
維持電極SU1〜SUnに電圧0(V)を印加するには、スイッチング素子Q84をオンにする。走査電極SC1〜SCnに電圧Vrまで緩やかに上昇する上り傾斜波形電圧を印加するには、スイッチング素子Q71L1〜Q71Ln、スイッチング素子Q69をオンにし、入力端子IN62に電圧を印加してミラー積分回路62を動作させる。
【0058】
次に、走査電極SC1〜SCnに電圧0(V)から電圧Vi4に向かって緩やかに下降する下り傾斜波形電圧を印加するには、ミラー積分回路62のトランジスタQ62をオフにし、スイッチング素子Q56をオンにして、走査電極SC1〜SCnに電圧0(V)を印加する。そしてスイッチング素子Q56、Q69をオフにし、入力端子IN63に電圧を印加してミラー積分回路63を動作させる。
【0059】
その後、走査電極SC1〜SCnに電圧Vrの矩形電圧を印加するには、ミラー積分回路63のトランジスタQ63をオフにし、スイッチング素子Q69、Q59、Q55をオンにする。
【0060】
その後、走査電極SC1〜SCnに電圧0(V)から電圧Vi4に向かって緩やかに下降する下り傾斜波形電圧を印加するには、ミラー積分回路62のトランジスタQ62をオフにし、スイッチング素子Q56をオンにして、走査電極SC1〜SCnに電圧0(V)を印加する。そしてスイッチング素子Q56、Q69をオフにし、入力端子IN63に電圧を印加してミラー積分回路63を動作させる。
【0061】
さらにその後、維持電極SU1〜SUnに電圧Veを印加するには、スイッチング素子Q84をオフにし、スイッチング素子Q86、Q87をオンにする。
【0062】
走査電極SC1〜SCnに電圧0(V)から電圧Vi4に向かって緩やかに下降する下り傾斜波形電圧を印加するには、ミラー積分回路62のトランジスタQ62をオフにし、スイッチング素子Q56をオンにして、走査電極SC1〜SCnに電圧0(V)を印加する。そしてスイッチング素子Q56、Q69をオフにし、入力端子IN63に電圧を印加してミラー積分回路63を動作させる。
【0063】
なお走査電極SC1〜SCnの電圧が電圧Vi4に到達する直前に維持電極駆動回路44のスイッチング素子Q86、Q87をオフにして、維持電極SU1〜SUnをハイインピーダンス状態としてもよい。このように駆動することにより、続く書込み動作をさらに安定して発生させることができる。図3には、このような駆動電圧波形を示した。
【0064】
このようにして、図3に示したパネルの駆動電圧波形を発生させることができる。しかし図5〜図7に示した駆動回路は一例であって、本発明がこれらの駆動回路の回路構成に限定されるものではない。
【0065】
なお、実施の形態において示した具体的な数値等は単に一例を示したに過ぎず、パネルの特性やプラズマディスプレイ装置の仕様等にあわせて最適に設定することが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、十分な電圧設定マージンを確保しつつ安定した書込み放電を発生させて、表示品質の高い画像を表示することができるので、パネルの駆動方法として有用である。
【符号の説明】
【0067】
10 パネル
22 走査電極
23 維持電極
24 表示電極対
32 データ電極
40 プラズマディスプレイ装置
41 画像信号処理回路
42 データ電極駆動回路
43 走査電極駆動回路
44 維持電極駆動回路
45 タイミング発生回路
50、80 維持パルス発生回路
51、81 電力回収回路
60 傾斜波形電圧発生回路
61、62、63 ミラー積分回路
70 走査パルス発生回路
85 一定電圧発生回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期化期間と書込み期間と維持期間とを有するサブフィールドを複数用いて1つのフィールドを構成し、走査電極と維持電極とデータ電極とを有する放電セルを複数備えたプラズマディスプレイパネルを駆動するプラズマディスプレイパネルの駆動方法であって、
前記初期化期間では、直前のサブフィールドの動作にかかわらず初期化放電を発生させる強制初期化動作と、直前の書込み期間で書込み放電を発生した放電セルのみで初期化放電を発生させる選択初期化動作とのいずれかを行い、
前記選択初期化動作は、前記維持電極に第1の電圧を印加するとともに、前記走査電極に上り傾斜波形電圧を印加し、その後、前記走査電極に下り傾斜波形電圧を印加し、その後、前記走査電極に正の矩形状電圧を印加し、その後、前記走査電極に下り傾斜波形電圧を印加し、その後、前記維持電極に第1の電圧よりも高い第2の電圧を印加するとともに前記走査電極に下り傾斜波形電圧を印加して行われることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの駆動方法。
【請求項2】
前記上り傾斜波形電圧は正の電圧に向かって上昇し、前記下り傾斜波形電圧は負の電圧に向かって下降することを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの駆動方法。
【請求項3】
初期化期間と書込み期間と維持期間とを有するサブフィールドを複数用いて1つのフィールドを構成し、走査電極と維持電極とデータ電極とを有する放電セルを複数備えたプラズマディスプレイパネルを駆動するプラズマディスプレイパネルの駆動方法であって、
前記初期化期間では、直前のサブフィールドの動作にかかわらず初期化放電を発生させる強制初期化動作と、直前の書込み期間で書込み放電を発生した放電セルのみで初期化放電を発生させる選択初期化動作とのいずれかを行い、
前記選択初期化動作は、前記維持電極を陰極とし前記走査電極を陽極とする1回目の放電を発生させ、その後、前記走査電極を陰極とし前記データ電極を陽極とする1回目の放電を発生させ、その後、前記維持電極を陰極とし前記走査電極を陽極とする2回目の放電を発生させ、その後、前記走査電極を陰極とし前記データ電極を陽極とする2回目の放電を発生させ、その後、前記走査電極を陰極とし前記データ電極を陽極とする3回目の放電を発生させて行われることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−158871(P2011−158871A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22945(P2010−22945)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】