説明

プラズマディスプレイパネル及びこれを用いたプラズマディスプレイ装置

【課題】本発明は、各色間の色ずれを低減でき、緑色発光の減衰時間を短くできるとともに、赤色発光の色純度を向上させる等、色再現範囲を自由に変えることができるプラズマディスプレイパネルを提供することを目的とする。
【解決手段】異なる色に発光する複数種類の放電セル160〜162を有するプラズマディスプレイパネルであって、
各放電セルには、紫外線の照射により特定色に発光する蛍光体130が共通に設けられ、
前記特定色と異なる色に発光する前記放電セル160、161には、前記特定色を各発光色に変換する色変換手段20、21が設けられたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル及びこれを用いたプラズマディスプレイ装置に関し、特に、異なる色に発光する複数種類の放電セルを有するプラズマディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、フルカラー表示を行うために、各画素に青、緑、赤の蛍光体をそれぞれ塗布したプラズマディスプレイパネルが知られている(例えば、特許文献1参照)。それぞれの蛍光体は、プラズマ放電によって発生させた147nmの紫外線を照射することによって発光する。青、緑、赤の蛍光体は、147nmの紫外線を青、緑、赤のそれぞれの中心波長450nm(2.75eV)、525nm(2.36eV)、610nm(2.03eV)に変換する。この場合にストークスシフトが大きく、エネルギー変換効率は著しく低い。青、緑、赤の蛍光体の量子効率が各々0.67、0.51、0.57であるため、エネルギー効率は各々22%、14.3%、10.7%(カラーフィルター特性を考慮)となり、低い水準となっている。
【0003】
従来のプラズマディスプレイパネルでは、青の蛍光体としては、BAM蛍光体(BaMgAl1017:Eu2+からなる蛍光体)が用いられている(例えば、非特許文献1参照)。この蛍光体の発光中心は2価Euイオンであり、発光の遷移が許容遷移の5d−4f遷移のため、数十μsとかなり早い発光の減衰時間である。動画像を表示する場合には、速やかに発光が減衰するために青色の色ずれを発生しにくい。緑の蛍光体には、ZnSiO:Mn2+が用いられている。この発光中心は2価Mnイオンであり、禁制遷移の3d−3d電子遷移のため、発光の減衰が10ms以上と非常に遅い。緑色の蛍光体による発光は、青色と赤色の減衰に比べて遅い減衰のため、動画像表示において緑色の残像を発生する。赤の蛍光体には、(Y,Gd)BO:Eu3+が用いられている。発光中心は3価Euイオンで、4f−4f電子遷移による発光である。発光の減衰は数msであり,発光の減衰としては動画表示を行う上で問題無いレベルである。
【0004】
このように、従来の青、緑、赤の各色の蛍光体は、発光の減衰時間が異なる。また、輝度、寿命も各色で異なる。各色の蛍光体は、無制約下では種々のものが存在するが、プラズマディスプレイパネルにおいては、高エネルギーの放電が高速で多回数行われるため、これに耐え得る蛍光体を用いる必要がある。そして、上述の蛍光体の代替品は未だ殆ど存在していないのが現状である。よって、各色で種々の特性が異なっていても、上述の蛍光体が従来から使用されており、かかる制約下でプラズマディスプレイパネルの色再現性の向上が試みられてきた。
【0005】
例えば、多くのプラズマディスプレイ装置では、色のバランスをとり、できるだけ自然な色再現を行うために、電気的な信号処理回路を用いて補正を行っている。また、プラズマディスプレイパネルはホールド型の表示方式であり、発光の減衰が遅いと、上述のような残像による疑似輪郭が発生してしまうので、この防止のためにも、サブフィールド毎に駆動パルスの重み付けを工夫して、各色間の差や疑似輪郭を目立たなくしている場合もある。
【0006】
更に、緑色蛍光体の残像に対しては、緑色蛍光体の2価Mnイオン濃度を輝度・効率の最適値よりも大幅に増加させて、発光の減衰時間を早くするという防止策が講じられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−351239号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】金光義彦・岡本信治共編、「発光材料の基礎と新しい展開」、オーム社、2008年9月発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述のように、緑色蛍光体のMn2+の濃度を最適値よりも大幅に増加させて発光の減衰時間を早めると、最適値からずれた状態で発光を行うことになるため、輝度及び効率が低下するという問題があった。
【0010】
また、このMn2+の濃度を最適値よりも大幅に増加させた緑色蛍光体によって、放電電圧が青や赤の蛍光体を塗布した画素よりも高くなることが知られており、他の緑色蛍光体をわずかに混合してこの電圧上昇を抑制する必要があった。更に、駆動電圧の制御回路が必要となり、回路の複雑化を招くという問題もあった。
【0011】
また、赤の蛍光体は、三価Euイオンの4f−4f電子遷移のため、600nm以上の赤の成分に加えて、580nm付近の橙色の成分を含むが、人の視感度は赤成分よりも橙色のほうが高いため、橙色の成分が目立ち、色純度のよい赤色を表現できないという問題があった。更に、プラズマ放電によって595nm付近に橙色の発光が発生するが、これも赤の色純度を低下させる要因となり、赤色の純度を高めるためにカラーフィルターを使用しても、NTSC規格にある赤色の色調を満たすことができないという問題があった。また、カラーフィルターの使用が輝度・効率の低下に繋がり、消費電力の増加やコスト高を招くという問題があった。
【0012】
そこで、本発明は、各色間の色ずれを低減でき、緑色発光の減衰時間を短くできるとともに、赤色発光の色純度を向上させる等、色再現範囲を自由に変えることができるプラズマディスプレイパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、第1の発明に係るプラズマディスプレイパネルは、異なる色に発光する複数種類の放電セルを有するプラズマディスプレイパネルであって、
各放電セルには、紫外線の照射により特定色に発光する蛍光体が共通に設けられ、
前記特定色と異なる色に発光する前記放電セルには、前記特定色を各発光色に変換する色変換手段が設けられたことを特徴とする。
【0014】
これにより、共通の蛍光体を用いて、各色の放電セルの輝度、寿命等を統一できるとともに、色変換手段により所望の複数の発光色を得ることができ、色再現範囲を自由に設定することが可能となる。
【0015】
第2の発明は、第1の発明に係るプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記特定色は、前記複数種類の放電セルの発光色の一つであることを特徴とする。
【0016】
これにより、特定色の発光をそのまま放電セルの発光として利用することができ、構成を簡素にすることができるとともに、エネルギー効率も高めることができる。
【0017】
第3の発明は、第2の発明に係るプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記複数種類の放電セルは、赤色発光放電セルと、緑色発光放電セルと、青色発光放電セルとを含み、
前記特定色に発光する蛍光体は、青色に発光する青色蛍光体であることを特徴とする。
【0018】
これにより、赤色発光放電セルには色純度の高い色変換手段を用い、緑色発光放電セルには発光減衰時間の短い色変換材料を用いることが可能となり、色純度の向上、残像の低減、色再現範囲の拡大等が可能となる。
【0019】
第4の発明は、第3の発明に係るプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記青色蛍光体は、BaMgAl1017:Eu2+を含むことを特徴とする。
【0020】
これにより、従来から用いられている青色蛍光体を用いつつ、色再現性の拡大等、種々の画質の向上を図ることができる。
【0021】
第5の発明は、第3又は第4の発明に係るプラズマディスプレイパネルにおいて、
青色発光を赤色発光に変換する前記色変換手段は、窒化カルシウムアルミニウムシリコンに2価のユーロピウムイオンを添加した材料を含むことを特徴とする。
【0022】
これにより、橙色を帯びていない高純度の赤色発光を得ることができ、深い赤色を再現することができる。
【0023】
第6の発明は、第3〜5のいずれかの発明に係るプラズマディスプレイパネルにおいて、
青色発光を緑色発光に変換する前記色変換手段は、アルカリ土類チオレガートに2価のユーロピウムイオンを添加した材料を含むことを特徴とする。
【0024】
これにより、緑色発光の減衰時間を画像表示に適した時間の長さに短縮することができ、残像の少ない画像を表示することができ、画質を向上させることができる。
【0025】
第7の発明は、第1〜6のいずれかの発明に係るプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記特定色に発光する前記放電セルには、前記特定色と異なる色に発光する前記放電セルの前記色変換手段が設けられた位置と対応する位置に、光を透過する無色のスペーサが設けられたことを特徴とする。
【0026】
これにより、色変換手段を設けない放電セルも色変換手段を設けた放電セルとほぼ同様の構成にすることができ、加工を容易にすることができるとともに、放電セルを全体で均一に構成することができる。
【0027】
第8の発明に係るプラズマディスプレイ装置は、第1〜7のいずれかの発明に係るプラズマディスプレイパネルと、
該プラズマディスプレイパネルを駆動する駆動回路と、を有することを特徴とする。
【0028】
これにより、色再現範囲が広く、色再現性が高い高画質の画像を表示できる表示装置を構成することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、色再現性範囲を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態1に係るプラズマディスプレイパネルの一例を示した断面構成図である。
【図2】実施例1に係るプラズマディスプレイパネルの特性を示した色度図である。
【図3】実施形態2に係るプラズマディスプレイパネルの一例を示した断面構成図である。
【図4】実施形態3に係るプラズマディスプレイ装置の一例の全体構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0032】
〔実施形態1〕
図1は、本発明の実施形態1に係るプラズマディスプレイパネルの一例を示した断面構成図である。図1において、実施形態1に係るプラズマディスプレイパネルは、前面板80と、背面板140とを備える。前面板80は、前面ガラス基板10と、色変換手段20、21と、スペーサ30と、ブラックフィルム40と、表示電極50と、誘電体層60と、保護層70とを備える。また、背面板140は、背面ガラス基板90と、アドレス電極100と、誘電体層110と、隔壁(リブ)120と、蛍光体130とを備える。前面板80と、背面板140とは、対向して配置され、対向面に放電空間150が形成されている。放電空間150は、蛍光体130と保護層70とで囲まれた空間に形成され、横方向は隔壁120で仕切られている。横方向には隔壁120で仕切られ、縦方向には各放電空間150を含む前面板80と背面板140とで挟まれた部分全体が、1つの放電セル160〜162を構成する。なお、図示されていないが、放電空間150を含むパネル内部には、キセノン(Xe)を含む放電ガスが封入されている。
【0033】
放電セル160〜162は、所定の色に発光する1単位である。1つの放電セル160〜162が、表示画面の1つのサブピクセル(副画素)を構成する。一般的には、赤、緑、青の三原色で1画素を構成し、3つの放電セル160〜162で1画素を構成する。図1においても、赤色発光放電セル160と、緑色発光放電セル161と、青色発光放電セル162の3個の放電セル160〜162が示されており、これで1個の画素を構成する。
【0034】
放電セル160〜162は、放電空間150内における放電により紫外線を発生させ、紫外線が蛍光体130に照射されたときに、蛍光体130が励起し、励起状態から基底状態に遷移する際に発光する。従来、蛍光体130は、放電セル160〜162が発光させる色に応じて、異なる種類の蛍光体130が用いられていた。しかしながら、本実施形態に係るプラズマディスプレイパネルにおいては、総て青色に発光する青色蛍光体130が総ての放電セル160〜162に共通して設けられている。
【0035】
青色発光放電セル162においては、青色蛍光体130による青色発光をそのまま出力する。一方、赤色発光放電セル160においては、前面板10側に放電空間150を覆うように色変換手段20を設け、青色発光を赤色発光に変換して出力する。赤色発光放電セル160の色変換手段20は、青色発光を赤色発光に変換する色変換材料で構成されている。同様に、緑色発光放電セル161においても、前面板10側に、放電空間150を覆うように色変換手段21が設けられている。色変換手段21は、青色発光を緑色発光に変換する材料から構成されており、最終的に緑色発光を出力することができる。なお、青色発光放電セル162においては、色変換手段20、21は設けられておらず、青色発光をそのまま透過する無色で透光性のスペーサ30が放電空間150を覆った構成となっている。
【0036】
このように、異なる色に発光する複数種類の放電セル160〜162に対し、蛍光体130は特定色に発光する共通の蛍光体130を用い、放電セル160、161の発光色が特定色と異なる場合には、色変換手段20、21により所望の色に変換することにより、異なる発光色を出力することができる。ここで、蛍光体130は共通であるので、各色の放電セル160〜162で寿命、色ずれの度合い等が共通となる。また、青色を各色に変換する色変換手段20、21は、各色に発光する蛍光体と比較して多くの種類、色特性を有する材料が存在する。よって、色変換手段20、21に用いる色変換材料を適切に選択することにより、赤色発光の純度を高めたり、緑色発光の減衰時間を短くしたりすることが可能となる。更に、色再現範囲を自由に設定し、色再現範囲を拡大することも可能となる。構成自体は、色変換が必要な放電セル160、161に、色変換手段20、21を設けただけであるので、簡素な構成で、かつ低コストで自由度の高いプラズマディスプレイパネルを構成することができる。
【0037】
以上が、実施形態1に係るプラズマディスプレイの概要であるが、以下に、より詳細に個々の構成要素について説明する。
【0038】
前面ガラス基板10は、プラズマディスプレイパネルの表示面を構成する基板であり、例えば、耐熱性ガラス等が用いられてよい。
【0039】
色変換手段20、21は、特定色を放電セル160、161で発光すべき色に変換する手段である。本実施形態においては、赤色発光放電セル160においては、青色発光を赤色発光に変換する色変換材料が用いられ、緑色発光放電セル161においては、青色発光を緑色発光に変換する色変換材料が用いられている。
【0040】
色変換手段20、21に用いられる色変換材料は、青色発光を吸収して効率良く赤色発光、緑色発光に変換できる材料であれば、特に制限は無く、種々の材料を用いることができる。但し、プラズマディスプレイパネルの製造工程では、500℃程度の温度プロセスを必要とするために、耐熱性のある材料であることが必要である。例えば、有機系材料よりも無機系材料が高い耐熱性を持ち好適であるので、無機系材料を用いるようにしてもよい。具体的には、例えば、赤の変換材料として、窒化カルシウムアルミニウムイオンに2価のユーロピウムイオンを添加したCaAlSiN:Eu2+(x、y、zは任意の数)を含む材料を用いてもよい。また、緑の変換材料として、アルカリ土類チオガレートに2価のユーロピウムイオンを添加したSrGa:Eu2+を含む材料を用いてもよい。これらの材料を用いた具体的な実施例は後述するが、その他、種々の色変換材料を用いることができる。色変換材料は、赤の変換材料、緑の変換材料の両者とも、赤の蛍光体及び緑の蛍光体よりも種類が豊富であり、種々の色特性を有する材料が存在する。よって、赤の変換材料には色純度がより高い赤色発光への変換が可能な材料を用いることにより、従来のプラズマディスプレイパネルの赤の色純度が低いという問題を解決することができる。また、緑色の変換材料には、発光減衰時間が短い色変換材料を用いることにより、緑色発光の残像が発生し易いという従来のプラズマディスプレイパネルの問題点を解消することができる。
【0041】
なお、色変換手段20、21は、例えば、前面ガラス基板10の表面に、色変換材料を塗布して形成されてよい。その際、放電セル160、161の発光色に合わせて、色変換材料の変換色を塗り分けておき、サブピクセルを構成する各放電セル160、161から所定の色発光がなされるように構成する。
【0042】
スペーサ30は、青色蛍光体130から発生した青色の光を、何ら変換せずに透過させる部材である。スペーサ30は、例えば、透明なガラスから構成されてよい。スペーサ30は、前面ガラス基板10との間に段差が生じないように、色変換手段20、21と同様の厚さで構成される。スペーサ30は、蛍光体130からの発光を変色させることなく透過でき、前面ガラス基板10との間隔を保つことができればよいので、透過性を有する無色の種々の材料から構成されてよく、例えば、耐久性に問題が無ければ、透明な樹脂等から構成してもよい。
【0043】
ブラックマトリックス40は、画像をくっきりと表示させるために、サブピクセル間に設けられた遮光膜である。ブラックマトリクス40は、例えば、カーボン系の材料が塗布され、印刷法や転写法等により形成される。なお、ブラックマトリックス40は、必要に応じられて設けられてよく、スペーサ30を延長して置き換えることも可能である。
【0044】
表示電極50は、画像を表示させる維持放電を発生させるための電極である。表示電極50は、画面の横方向に平行に延在した走査電極と維持電極が、画面の縦方向に交互に配置された構成を有する。1つの放電セル160〜162に、1本の走査電極と1本の維持電極が対となって設けられ、表示電極対を構成する。よって、走査電極及び維持電極の双方とも、表示電極50に含まれる。図1においては、1本の表示電極50の断面が示されているが、紙面に垂直な方向に、走査電極と維持電極が交互に配置されることになる。図1には、走査電極か維持電極のいずれか一方の表示電極50が示されていることになる。
【0045】
表示電極50は、走査電極と維持電極の一方に交互に200V程度の高電圧が印加されることにより、両電極間で前面板80の内面に沿った面放電を発生させる。この面放電が、維持放電又は表示放電と呼ばれる画像表示を行うための発光放電である。放電空間150には、キセノンを含む放電ガスが封入され、放電が発生すると、紫外線を発生するようになっている。維持放電により放電ガスから発生した紫外線が、青色蛍光体130に照射されると、青色蛍光体130が励起し、励起状態から基底状態に遷移する際に、青色に発光する。そして、維持放電により発生した青色発光が、赤色放電セル160では赤色変換手段20により赤色発光に変換され、緑色放電セル161では緑色変換手段21により緑色発光に変換され、青色放電セル162ではスペーサ30を透過してそのまま前面ガラス基板10から出力されることになる。
【0046】
また、表示電極50は、ITO(Indium Tin Oxide、酸化インジウムスズ)等の透明電極に、金属母線が設けられて構成されてよい。
【0047】
誘電体層60は、表示電極50を覆うとともに、コンデンサの誘電体の役割を果たす部材である。保護層70は、誘電体60を放電から保護する部材であり、例えば、MgO層として構成されてもよい。
【0048】
なお、表示電極50、誘電体層60及び保護層70は、いずれも印刷法、蒸着法等により形成されてよい。
【0049】
以上の構成要素で、前面板80が構成される。次に、背面板140の各構成要素について説明する。
【0050】
背面ガラス基板90は、背面板140の基材となるガラス基板であり、背面ガラス基板90上に背面板140の種々の構成要素が形成される。なお、背面ガラス基板90も、耐熱性ガラス等の種々のガラスから構成されてよい。
【0051】
アドレス電極100は、アドレス放電を発生させるために設けられた電極である。アドレス電極100は、画面の縦方向に延在し、表示電極50と直交するように平行に設けられる。各放電セル160〜162に、1本のアドレス電極100が設けられるように配置される。図1においては、アドレス電極100は、紙面に垂直な方向に延在して設けられることになる。プラズマディスプレイパネルでは、1画面分の表示の1フィールドを分割したサブフィールド法により駆動を行うが、各サブフィールドにおいて、発光セルと非発光セルを選択するため、アドレス放電を行う。アドレス放電においては、アドレス選択を行う行の走査電極に走査パルスを印加し、アドレス電極100に、発光させる放電セル160〜162にはアドレスパルスを印加してアドレス放電を発生させ、発光させない放電セル160〜162にはアドレスパルスを印加せずにアドレス放電を発生させない、という駆動によりアドレス選択を行う。アドレス電極100は、そのようなアドレス放電を行うために設けられている。
【0052】
誘電体層110は、アドレス電極100を覆うともに、コンデンサの誘電体の役割を果たす手段であり、前面板80の誘電体層60とほぼ同様の機能を有する。隔壁120は、放電空間150を放電セル160〜162毎に仕切る壁である。これにより、各色の放電セル160〜162において、干渉が生じなくなる。
【0053】
蛍光体130は、紫外線の照射により発光する部材である。上述のように、放電ガスから発生した紫外線の照射により励起され、励起状態から基底状態に遷移するときに発光する。蛍光体130は、種々の色に発光する蛍光体130が存在するが、本実施形態においては、青色に発光する青色発光体130を総ての放電セル160〜162に共通に用いている。これにより、各放電セル160〜162において、経年劣化の程度、寿命等を共通にすることができる。また、発光の減衰時間も、蛍光体依存の範囲では共通にすることができるので、緑色発光においても発光の減衰時間を、他の放電セル160、161と同様に短縮することができる。これにより、従来のプラズマディスプレイパネルでの残像の問題を解決することができる。
【0054】
このように、実施形態1に係るプラズマディスプレイでは、青色発光する単色パネルによって赤と緑の色変換手段20、21を励起することができるので、フルカラー表示が可能になる。
【0055】
また、本実施形態に係るプラズマディスプレイによれば、青色蛍光体130の劣化に従って、緑、赤の発光も同じ割合で低下するので、色ずれを低減することができる。また、緑、赤の色変換手段20、21の材料を選択できるため、緑色発光では減衰時間の短い材料を用いることができ、赤色発光では色純度の高い材料を用いることができる。更に、色純度を改善するカラーフィルターに求められる特性も緩やかにすることができる。また、駆動回路による複雑な表示制御も不要となってコスト低減を図ることができる。更に、緑や赤の色変換手段20、21の材料の選択により、色再現範囲を自由に変えることができ、特に広色域表示に有効となる。
【0056】
〔実施例1〕
図2は、本発明の実施例1に係るプラズマディスプレイパネルの特性を示した色度図である。図2において、最外郭の馬蹄形の曲線Rが自然界の色範囲、大きい破線SがNTSC(National Television Standard Committee)規格の色範囲、四角点を結んだ実線Aが実施例1に係るプラズマディスプレイパネルの色再現範囲、丸い点を結んだ小さい破線Bが従来のプラズマディスプレイパネルの色特性を示している。図2において、左下側が青色の色範囲を示し、左上側が緑色の色範囲を示し、右下側が赤色の色範囲を示している。各特性線において、囲っている領域が広い程、色の再現範囲は広いことを示している。また、図2において示されている化学式は、従来のプラズマディスプレイパネルで使用している蛍光体の材料を示している。
【0057】
実施例1に係るプラズマディスプレイパネルは、実施形態1に係るプラズマディスプレイパネルとほぼ同様に構成した。実施例1において、実施形態1に対応する構成要素については、同一の参照符号を付すものとする。
【0058】
実施例1に係るプラズマディスプレイパネルにおいて、青色蛍光体130には、いわゆるBAM蛍光体と呼ばれているBaMgAl1017:Eu2+の材料を用いた。BAM蛍光体は、従来から用いられている青色蛍光体であり、147nmの波長で青色発光する。
【0059】
また、緑の色変換手段20の材料として、アルカリ土類チオガレートに2価ユーロピウムイオンを添加したSrGa:Eu2+からなる材料を用いた。この材料は、500nm以下の波長の青色発光を効率よく吸収し、中心波長540nmの緑色に変換できた。発光の減衰時間は、数十μsと動画表示に適していた。プラズマ放電によって発生した147nmから青色発光し、緑色発光までの変換効率を見積もると、14.7%と従来の効率とほぼ同じである。また、この緑色の色度座標は,x=0.23,y=0.70であり,従来の緑色のx=0.23,y=0.70とほぼ同じであった。
【0060】
赤の変換材料として,窒化カルシウムアルミニウムシリコンにニ価のユーロピウムイオンを添加したCaAlSiN:Eu2+からなる材料を用いた。この材料は、450nm付近の青色発光を効率よく吸収し、650nmの赤色発光に変換できた。上述の緑色発光と同じように変換効率を見積もると、10.7%と従来の赤色発光と同じ発光効率であった。また、この赤色発光の色度座標は、x=0.66,y=0.33と従来の赤の色度座標x=0.65,y=0.35よりも色純度が改善した。
【0061】
このように、実施例1に係るプラズマディスプレイパネルは、発光効率を従来と同程度に保ちつつ、色純度を改善することができた。図2において、実施例1に係るプラズマディスプレイパネルの色範囲を示す実線Aは、従来のプラズマディスプレイパネルの色範囲を示す破線Bよりも、赤色で色範囲が特に拡大して大きくなり、赤色の色純度が向上し、より深い赤を表示することが可能となっていることが分かる。
【0062】
〔実施形態2〕
図3は、本発明の実施形態2に係るプラズマディスプレイパネルの一例を示した断面構成図である。図3において、実施形態2に係るプラズマディスプレイパネルは、赤色発光放電セル163、緑色発光放電セル164及び青色発光放電セル164を備えている点は、実施形態1に係るプラズマディスプレイパネルと同様であるが、赤色発光放電セル163、緑色発光放電セル164及び青色発光放電セル164の総てが、前面板81に色変換手段22、23、24を備えている点で、実施形態1に係るプラズマディスプレイパネルと異なっている。また、背面板141の蛍光体131が、青色蛍光体130と異なり、黄色に発光する黄色蛍光体131となっている点で、実施形態1に係るプラズマディスプレイと異なっている。
【0063】
つまり、実施形態2に係るプラズマディスプレイパネルにおいては、放電セル163〜165で発光する赤、緑、青のうちの一色ではなく、これらと異なる黄色発光を行い、黄色発光を各々の放電セル163〜165で赤、緑、青に色変換して発光している点で、実施形態1に係るプラズマディスプレイパネルと異なっている。この場合、赤の色変換手段22は、黄色発光を赤色発光に変換し、緑の色変換手段23は黄色発光をアップコンバージョン機構によって緑色発光に変換し、青の色変換手段23は、黄色発光をアップコンバージョン機構によって青色発光に変換することになる。アップコンバージョン機構とは2個のフォトンによってこのフォトンエネルギーよりも大きなエネルギーも持つ1個のフォトンを発生させる機構である。このように、蛍光体131からの発光色は、放電セル163〜165の発光色と必ずしも一致していなくてもよい。各々の放電セル163〜165に、適切な色変換手段22〜24が設けられていれば、放電セル163〜165からは適切な発光色を出力することができるからである。
【0064】
蛍光体131は、紫外線の照射により、黄色に発光する蛍光体131が、放電セル163〜165に共通に設けられる。黄色発光は、そのまま前面ガラス基板10からは出力されず、前面板81に設けられた色変換手段22〜24に総て異なる色に変換されてから出力されることになる。
【0065】
このように、実施形態2に係るプラズマディスプレイパネルにおいては、スペーサ30が設けられている放電セル162が消滅し、総ての放電セル163〜165に色変換手段22〜24が設けられた前面板81となる点で、実施形態1とは異なる。また、蛍光体131は、放電セル163〜165から出力される発光色とは異なる特定色に発光する点で実施形態1とは異なる。これに伴い、放電空間151も、紫外線の照射により黄色に発光する空間となる。かかる点で、実施形態2に係るプラズマディスプレイパネルの前面板81及び背面板141は、実施形態1に係るプラズマディスプレイパネルの前面板80及び背面板141と異なる。その他の構成要素については、実施形態1に係るプラズマディスプレイパネルと同様であるので、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0066】
実施形態2に係るプラズマディスプレイパネルによれば、発光させる蛍光体131の色の制約が無くなるので、発光色に拘らずに、自由な材料からなる蛍光体131を用いることが可能となり、プラズマディスプレイパネルの設計の自由度を高めることができる。
【0067】
特に、赤、緑、青以外の色に発光する蛍光体131で、高輝度な蛍光体材料が発見された場合には、その高輝度蛍光体を利用し、色変換手段22〜24で所望の発光色を取得することが可能となる。
【0068】
なお、本実施形態においては、黄色蛍光体131を用い、色変換手段22〜24で赤、緑、青の各色に変換する例を挙げて説明したが、蛍光体131は、種々の発光色を有する蛍光体を用いることができることは言うまでもない。
【0069】
また、実施形態1、2において、各放電セル160〜165から発光する色は、赤、緑、青の三原色である例を挙げて説明したが、この点についても、用途に応じて、異なる発光色を出力する放電セル160〜165に構成してよい。更に、広色域化のため1画素を構成するサブピクセル(放電セル)の数も、3つではなく、4つ以上であってもよい。
【0070】
このように、本実施形態に係るプラズマディスプレイパネルは、用途に応じて種々の構成とすることができる。
【0071】
〔実施形態3〕
図4は、本発明の実施形態3に係るプラズマディスプレイ装置の一例の全体構成を示した図である。図4において、実施形態3に係るプラズマディスプレイ装置は、プラズマディスプレイパネル170と、アドレス駆動回路180と、走査駆動回路190と、維持駆動回路200と、サブフィールド変換回路210と、映像信号処理回路220とを備える。
【0072】
プラズマディスプレイパネル170は、実施形態1、2及び実施例1において説明した、単色の蛍光体130、131と、色変換手段20〜24を備えたプラズマディスプレイパネル170が使用される。
【0073】
アドレス駆動回路180は、アドレス電極100を駆動するための回路であり、アドレス電極100にアドレスパルスを印加し、アドレス放電を発生させる。
【0074】
走査駆動回路190は、表示電極50の一方である走査電極を駆動するための回路であり、走査パルスを走査電極に印加し、初期放電、アドレス放電、維持放電を発生させる。なお、初期放電は、サブフィールドの開始時に放電セル160〜165内の壁電荷を均一化するための放電である。
【0075】
維持駆動回路200は、表示電極50の一方である維持電極を駆動するための回路であり、維持電極に維持パルスを印加し、維持放電を発生させる。
【0076】
サブフィールド変換回路は、1フィールドの映像信号を分割したサブフィールドに変換するための回路であり、プラズマディスプレイパネル170の駆動のために必要な回路である。
【0077】
映像信号処理回路220は、入力された映像信号について、必要な画像処理を行う回路であり、γ補正、白バランス調整等、画質の調整及び向上のために設けられる回路である。
【0078】
実施形態1、2及び実施例1に係るプラズマディスプレイパネル170に、これを駆動する駆動回路180〜200を設けることにより、プラズマディスプレイ装置として駆動し、色の再現範囲の広い高画質の画像表示を行うことができる。
【0079】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、プラズマディスプレイパネル及びこれを用いて画像表示を行なうプラズマディスプレイ装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0081】
10 前面ガラス基板
20〜24 色変換手段
30 スペーサ
40 ブラックマトリックス
50 表示電極
60、110 誘電体層
70 保護層
80、81 前面板
90 背面ガラス基板
100 アドレス電極
120 隔壁
130、131 蛍光体
140、141 背面板
150、151 放電空間
160〜165 放電セル
170 プラズマディスプレイパネル
180 アドレス駆動回路
190 走査駆動回路
200 維持駆動回路
210 サブフィールド変換回路
220 映像信号処理回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる色に発光する複数種類の放電セルを有するプラズマディスプレイパネルであって、
各放電セルには、紫外線の照射により特定色に発光する蛍光体が共通に設けられ、
前記特定色と異なる色に発光する前記放電セルには、前記特定色を各発光色に変換する色変換手段が設けられたことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
前記特定色は、前記複数種類の放電セルの発光色の一つであることを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
前記複数種類の放電セルは、赤色発光放電セルと、緑色発光放電セルと、青色発光放電セルとを含み、
前記特定色に発光する蛍光体は、青色に発光する青色蛍光体であることを特徴とする請求項2に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項4】
前記青色蛍光体は、BaMgAl1017:Eu2+を含むことを特徴とする請求項3に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項5】
青色発光を赤色発光に変換する前記色変換手段は、窒化カルシウムアルミニウムシリコンに2価のユーロピウムイオンを添加した材料を含むことを特徴とする請求項3又は4に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項6】
青色発光を緑色発光に変換する前記色変換手段は、アルカリ土類チオレガートに2価のユーロピウムイオンを添加した材料を含むことを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一項に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項7】
前記特定色に発光する前記放電セルには、前記特定色と異なる色に発光する前記放電セルの前記色変換手段が設けられた位置と対応する位置に、光を透過する無色のスペーサが設けられたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のプラズマディスプレイパネルと、
該プラズマディスプレイパネルを駆動する駆動回路と、を有することを特徴とするプラズマディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−104419(P2012−104419A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253294(P2010−253294)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】