説明

プラズマディスプレイパネル

【課題】低電圧駆動が可能で、輝度均一性の高いPDPを実現することを目的とする。
【解決手段】プラズマディスプレイパネルは、第1基板と、第1基板に対向配置された第2基板と、を備え、第1基板と第2基板との間に放電ガスが充填された放電空間が形成されたプラズマディスプレイパネルであって、第1基板は、基板と、基板上に形成した表示電極と、前記表示電極を覆うように形成された誘電体層と、誘電体層上に形成され、放電空間に露出する保護膜と、を有し、保護膜は、酸化マグネシウム(MgO)と酸化ストロンチウムを含み、保護膜のCO2ガスの脱離ピーク温度が480度未満であることを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示デバイスなどに用いるプラズマディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと呼ぶ)は、高精細化、大画面化の実現が可能であることから、100インチクラスのテレビなどが製品化されている。
近年、PDPにおいては、従来のNTSC方式に比べて走査線数が2倍以上の高精細テレビへの適用が進められている。そのため、エネルギー問題に対応してさらなる消費電力低減への取り組みなどへの要求なども高まっている。
PDPは、基本的に、前面板と背面板とで構成されている。前面板は、硼硅酸ナトリウム系ガラスのガラス基板と、ガラス基板の一方の主面上に形成されたストライプ状の透明電極とバス電極とで構成される表示電極と、表示電極を覆ってコンデンサとしての働きをする誘電体層と、誘電体層上に形成された酸化マグネシウム(MgO)とを含む保護膜とで構成されている。
このようなPDPにおいて、前面板の誘電体層上に形成される保護膜は、次に示す役割を有する。
それは、放電によるイオン衝撃から誘電体層を保護すること、アドレス放電を発生させるための初期電子を放出すること、放電中に二次電子を放出し放電を促進すること等である。
特許文献1または特許文献2は、保護膜の材料を変更し、二次電子放出特性を向上させることで放電電圧を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−173738号公報
【特許文献2】特開2007−323922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1または特許文献2に記載の保護膜は、ガス吸着性が高いため、プロセス中にCO2の不純ガスが面内不均一に吸着しやすくなる。
その結果、保護膜の二次電子放出能力が低下しやすいだけでなく、二次電子放出能力が面内不均一になる。
その結果、放電電圧が高く、画面の輝度均一性が低い。
本発明は上記課題を解決し、放電電圧が低く、輝度均一性の高いPDPを実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
本発明のPDPは、第1基板と、第1基板に対向配置された第2基板と、を備え、第1基板と第2基板との間に放電ガスが充填された放電空間が形成されたプラズマディスプレイパネルであって、第1基板は、基板と、基板上に形成した表示電極と、前記表示電極を覆うように形成された誘電体層と、誘電体層上に形成され、放電空間に露出する保護膜と、を有する。
このPDPにおいて、保護膜は、特定方位面におけるX線回折分析において、酸化マグネシウム(MgO)の回折ピークが発生する回折角と前記酸化ストロンチウム(SrO)の回折ピークが発生する回折角との間の回折角に、回折ピークが存在すると好ましい。
そして、保護膜は、酸化マグネシウム(MgO)と酸化ストロンチウム(SrO)を含み、保護膜のCOガスの脱離ピーク温度が480度未満である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、放電電圧が低く、画面輝度均一性の高いPDPを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施の形態におけるPDPの構造を示す斜視図
【図2】本発明の実施の形態におけるPDPの前面板の構成を示す断面図
【図3】本発明の実施の形態におけるPDP前面板からのCOガスの脱離プロファイルを表すグラフ
【図4】本発明の実施の形態におけるPDPの保護膜におけるX線回折結果を示す図
【図5】本発明の実施の形態におけるPDPの保護膜における放電電圧と画面輝度均一性の結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施の形態]
1、PDPの構成
本発明の実施の形態におけるPDPについて図1および図2を用いて説明する。
図1は、本発明の実施の形態におけるPDPの構造を示す斜視図である。
PDPの基本構造は、一般的な交流面放電型PDPと同様である。
図1に示すように、PDP1は、前面ガラス基板3等を備える前面板2と、背面ガラス基板11等を備える背面板10とが対向して配置されている。
そして、その外周部をガラスフリット等の封着材によって気密封着されている。
封着されたPDP1内部の放電空間16には、キセノン(Xe)やネオン(Ne)などの放電ガスが400Torr〜600Torrの圧力で封入されている。
前面板2の前面ガラス基板3上には、走査電極4及び維持電極5から構成される一対の帯状の表示電極6と、ブラックストライプ(遮光層)7とが交互に平行配置されている。
前面ガラス基板3上には表示電極6と遮光層7とを覆うように電荷を保持してコンデンサとしての働きをする誘電体層8が形成され、さらにその上に保護膜9が形成されている。
また、背面板10の背面ガラス基板11上には、前面板2の表示電極6及びブラックストライプ(遮光層)7に対して直交する方向に、アドレス電極12が互いに平行に配置され、これを下地誘電体層13が被覆している。
さらに、アドレス電極12間の下地誘電体層13上には放電空間16を区切る所定の高さの隔壁14が形成されている。
隔壁14間の溝に、紫外線によって赤色、緑色及び青色にそれぞれ発光する蛍光体層15が形成されている。
表示電極6とアドレス電極12とが交差する位置に放電空間が形成され、表示電極6方向に並んだ赤色、緑色、青色の蛍光体層15を有する放電空間がカラー表示のための画素になる。
次に、図2を用いて説明する。
図2は、本発明の実施の形態におけるPDP1の前面板2の構成を示す断面図である。
なお、説明の便宜上、図2は図1の前面板2に相当する箇所を上下反転して示している。
図2に示すように、前面ガラス基板3に、走査電極4と維持電極5から構成される表示電極6と遮光層7がパターン形成されている。
走査電極4と維持電極5はそれぞれインジウムスズ酸化物(ITO)や酸化スズ(SnO)などからなる透明電極4a、5aと、透明電極4a、5a上に形成された金属バス電極4b、5bとにより構成されている。
金属バス電極4b、5bは透明電極4a、5aの長手方向に導電性を付与する目的として用いられ、銀(Ag)等の材料を主成分とする導電性材料によって形成されている。
誘電体層8は、第1誘電体層81と、第2誘電体層82との少なくとも2層を有する。
第1誘電体層81は、前面ガラス基板3上に形成されたこれらの透明電極4a、5aと金属バス電極4b、5bと遮光層7を覆っている。
そして、第2誘電体層82は、第1誘電体層81上に形成される。
さらに、第2誘電体層82上に保護膜9が形成されている。
本実施の形態の保護膜9は、酸化マグネシウム(MgO)と酸化ストロンチウム(SrO)とを原材料として、電子ビーム蒸着法で形成した金属酸化物で構成している。
より具体的に説明すると、この金属酸化物が各々単体で集合したのが混合粉末である。
この混合粉末を電子ビーム蒸着法等で形成してできたのが酸化マグネシウム(MgO)と酸化ストロンチウム(SrO)から成る混晶である。
この混晶は、マグネシウム(Mg)とストロンチウム(Sr)と酸素(O)が配列してできた結晶体の一種である。
この混晶が、薄膜として保護膜9を形成する。
さらに、保護膜9上に、酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子92aが複数個凝集した凝集粒子92が付着している。
【0009】
2、PDPの製造方法
次に、本発明の実施の形態におけるPDP1の製造方法について説明する。
【0010】
2−1、前面板の製造方法
前面板2は次のようにして形成される。
まず、前面基板3上に、走査電極4及び維持電極5から構成される表示電極6と、遮光層7とを形成する。
走査電極4と維持電極5とを構成する透明電極4a、5aと金属バス電極4b、5bは、フォトリソグラフィ法などを用いてパターニングして形成される。
透明電極4a、5aは薄膜プロセスなどを用いて形成され、金属バス電極4b、5bは銀(Ag)材料を含むペーストを所定の温度で焼成して固化している。
また、遮光層7も同様に、黒色顔料を含むペーストをスクリーン印刷する方法や黒色顔料をガラス基板の全面に形成した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングし、焼成することにより形成される。
次に、表示電極6及び遮光層7を覆うように前面ガラス基板3上に誘電体ペーストをダイコート法などにより塗布して誘電体ペースト(誘電体材料)層を形成する。
誘電体ペーストを塗布した後、所定の時間放置することによって塗布された誘電体ペースト表面がレベリングされて平坦な表面になる。
その後、誘電体ペースト層を焼成固化することにより、走査電極4、維持電極5及び遮光層7を覆う誘電体層8が形成される。
なお、誘電体ペーストはガラス粉末などの誘電体材料、バインダ及び溶剤を含む塗料である。
次に、誘電体層8上に保護膜9を形成する。
本発明における実施の形態においては、保護膜9は酸化マグネシウム(MgO)と酸化ストロンチウム(SrO)とを含む金属酸化物を原材料としている。
そして、酸化マグネシウム(MgO)や酸化ストロンチウム(SrO)の材料を混合した蒸着源を用いて薄膜成膜方法によって保護膜9が形成される。
薄膜成膜方法としては、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの公知の方法が適用できる。
本発明における実施形態の場合、電子ビーム蒸着法が最も安価に製造できる。
また、電子ビーム蒸着法における蒸着源は、平均粒径2mm以下の酸化マグネシウム(MgO)と平均粒径2mm以下の酸化ストロンチウム(SrO)を混合させた粒子混合物、もしくは混合後に焼結させた焼結体を用いることが好ましい。
平均粒径が2mm以上の粒子混合物では、蒸着源へ電子ビームが当たる位置により保護膜9内での酸化ストロンチウム(SrO)含有量が変化しやすくなってしまう。その結果、酸化ストロンチウム(SrO)の偏析を生じて、保護膜9のCOガスの脱離ピーク温度が上昇してしまう。
また、保護膜9を成膜する時の雰囲気は、水分付着や不純物の吸着を防止するために外部と遮断された密閉状態で成膜時の雰囲気を調整する。
その結果、所定の電子放出能力を有する金属酸化物から形成される保護膜9ができる。
次に、保護膜9上に付着形成する酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子92aの凝集粒子92について述べる。
これらの結晶粒子92aは、気相合成法または前駆体焼成法のいずれかで製造することができる。
より具体的に説明すると、気相合成法では、不活性ガスが満たされた雰囲気下で純度が99.9%以上のマグネシウム(Mg)を加熱する。そして、さらに、雰囲気に酸素を少量導入することによって、マグネシウム(Mg)を直接酸化させ、酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子92aを作製することができる。
また、前駆体焼成法では、以下の方法によって結晶粒子92aを作製することができる。
前駆体焼成法では、酸化マグネシウム(MgO)の前駆体を700℃以上の高温で均一に焼成し、これを徐冷して酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子92aを得ることができる。
前駆体としては、例えば、マグネシウムアルコキシド(Mg(OR)2)、マグネシウムアセチルアセトン(Mg(acac)2)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、炭酸マグネシウム(MgCO2)、塩化マグネシウム(MgCl2)、硫酸マグネシウム(MgSO4)、硝酸マグネシウム(Mg(NO3)2)、シュウ酸マグネシウム(MgC2O4)の内のいずれか1種以上の化合物を選択することができる。
なお選択した化合物によっては、通常、水和物の形態をとることもあるが、このような水和物を用いてもよい。
これらの化合物は、焼成後に得られる酸化マグネシウム(MgO)の純度が前駆体を構成する化合物の99.95%以上、望ましくは99.98%以上になるように調整する。
なぜなら、これらの化合物中に、各種アルカリ金属、B、Si、Fe、Alなどの不純物元素が一定量以上混じっていると、熱処理時に不要な粒子間癒着や焼結を生じ、高結晶性の酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子を得にくいためである。
このため、不純物元素を除去して予め前駆体を調整することが必要となる。
気相合成法又は前駆体焼成法のいずれかで得られた酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子92aを、溶媒に分散させ、その分散液をスプレー法やスクリーン印刷法、静電塗布法などによって保護膜9の表面に分散散布させる。
その後、乾燥・焼成工程を経て溶媒を除去し、酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子92aを保護膜9の表面に定着させることができる。
以上の工程により前面ガラス基板3上に所定の構成物(走査電極4、維持電極5、遮光層7、誘電体層8、保護膜9が形成されて前面板2が完成する。
【0011】
2−2、背面板の製造方法
一方、背面板10は次のようにして形成される。
まず、背面ガラス基板11上に、銀(Ag)材料を含むペーストをスクリーン印刷する方法や、金属膜を全面に形成した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングする方法などによりアドレス電極12用の構成物となる材料層を形成する。
その後、所定の温度で焼成することによりアドレス電極12を形成する。
次に、アドレス電極12が形成された背面ガラス基板11上にダイコート法などにより、アドレス電極12を覆うように誘電体ペーストを塗布して誘電体ペースト層を形成する。
その後、誘電体ペースト層を焼成することにより下地誘電体層13を形成する。
なお、誘電体ペーストはガラス粉末などの誘電体材料とバインダ及び溶剤を含んだ塗料である。
次に、下地誘電体層13上に隔壁材料を含む隔壁形成用ペーストを塗布し、所定の形状にパターニングすることにより隔壁材料層を形成する。
その後、所定の温度で焼成することにより隔壁14を形成する。
ここで、下地誘電体層13上に塗布した隔壁用ペーストをパターニングする方法としては、フォトリソグラフィ法やサンドブラスト法を用いることができる。
そして、隣接する隔壁14間の下地誘電体層13上及び隔壁14の側面に蛍光体材料を含む蛍光体ペーストを塗布し、焼成することにより蛍光体層15が形成される。
以上の工程により、背面ガラス基板11上に所定の構成部材を有する背面板10が完成する。
【0012】
2−3、PDPの完成
所定の構成部材を備えた前面板2と背面板10とを走査電極4とアドレス電極12とが直交するように対向配置し、その周囲をガラスフリットで封着して放電空間16にキセノン(Xe)とネオン(Ne)などを含む放電ガスを封入してPDP1が完成する。
【0013】
3、誘電体層の詳細
ここで、前面板2の誘電体層8を構成する第1誘電体層81と第2誘電体層82について詳細に説明する。
【0014】
3−1、第1誘電体層
第1誘電体層81の誘電体材料は、酸化ビスマス(Bi)と、酸化カルシウム(CaO)と酸化ストロンチウム(SrO)と酸化バリウム(BaO)とから選ばれる少なくとも1種類の化合物と、酸化モリブデン(MoO)と酸化タングステン(WO)と酸化セリウム(CeO)と二酸化マンガン(MnO)とから選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含有する。
より具体的には、酸化ビスマス(Bi)の重量含有率は20wt%以上40wt%以下、酸化カルシウム(CaO)と酸化ストロンチウム(SrO)と酸化バリウム(BaO)とから選ばれる少なくとも1種類の化合物の重量含有率は0.5wt%以上12wt%以下、酸化モリブデン(MoO)と酸化タングステン(WO)と酸化セリウム(CeO)と二酸化マンガン(MnO)とから選ばれる少なくとも1種の重量含有率は0.1wt%以上7wt%以下であることが好ましい。
なお、酸化モリブデン(MoO)、酸化タングステン(WO)、酸化セリウム(CeO)、二酸化マンガン(MnO)に代えて、酸化銅(CuO)、酸化クロム(Cr)、酸化コバルト(Co)、酸化バナジウム(V)、酸化アンチモン(Sb)から選ばれる少なくとも1種類の化合物の重量含有率は0.1wt%以上7wt%以下であってもよい。
【0015】
また、上記以外の成分として、酸化亜鉛(ZnO)の重量含有率を0wt%以上40wt%以下、酸化硼素(B)の重量含有率を0wt%以上35wt%以下、酸化硅素(SiO)の重量含有率を0wt%以上15wt%以下、酸化アルミニウム(Al)の重量含有率を0wt%以上10wt%以下など、鉛(Pb)を含まない材料組成であってもよい。
これらの化合物からなる誘電体材料を、湿式ジェットミルやボールミルで粒径が0.5μm以上2.5μm以下となるように粉砕して、誘電体材料粉末を作製する。
次に、この誘電体材料粉末の重量含有率55wt%以上70wt%以下と、バインダ成分の重量含有率30wt%以上45wt%以下とを三本ロールでよく混練して、ダイコート用または印刷用の第1誘電体層81用ペーストを作製する。
バインダ成分はエチルセルロース、またはアクリル樹脂を重量含有率1wt%以上20wt%以下含むターピネオール、またはブチルカルビトールアセテートである。
また、ペースト中には、必要に応じて可塑剤としてフタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリブチルを添加し、分散剤としてグリセロールモノオレート、ソルビタンセスキオレヘート、ホモゲノール(Kaoコーポレーション社製品名)、アルキルアリル基のリン酸エステルなどを添加してペーストとして印刷特性を向上させてもよい。
次に、この第1誘電体層用ペーストを用い、表示電極6を覆うように前面ガラス基板3にダイコート法あるいはスクリーン印刷法で印刷して乾燥させ、その後、誘電体材料の軟化点より少し高い温度の575℃〜590℃で焼成して第1誘電体層81を形成する。
【0016】
3−2、第2誘電体層
次に、第2誘電体層82について説明する。
第2誘電体層82の誘電体材料は、次の化合物より構成されている。すなわち、酸化ビスマス(Bi)の重量含有率を11wt%以上20wt%以下と、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)から選ばれる少なくとも1種類の化合物の重量含有率を1.6wt%以上21wt%以下と、酸化モリブデン(MoO)、酸化タングステン(WO)、酸化セリウム(CeO)から選ばれる少なくとも1種類の化合物の重量含有率を0.1wt%以上7wt%以下と、を含んでいる。
なお、酸化モリブデン(MoO)、酸化タングステン(WO)、酸化セリウム(CeO)の代わりに、酸化銅(CuO)、酸化クロム(Cr)、酸化コバルト(Co)、酸化バナジウム(V)、酸化アンチモン(Sb)、酸化マンガン(MnO)から選ばれる少なくとも1種類の化合物の重量含有率を0.1wt%以上7wt%以下含んでいてもよい。
【0017】
さらに、酸化亜鉛(ZnO)の重量含有率を0wt%以上40wt%以下と、酸化硼素(B)の重量含有率を0wt%以上35wt%以下と、酸化硅素(SiO)の重量含有率を0wt%以上15wt%以下と、酸化アルミニウム(Al)の重量含有率を0wt%以上10wt%以下などと、鉛(Pb)を含まない化合物が含まれていてもよい。
これらの化合物からなる誘電体材料を、湿式ジェットミルやボールミルで粒径が0.5μm以上2.5μm以下となるように粉砕して誘電体材料粉末を作製する。
次にこの誘電体材料粉末の重量含有率55wt%以上70wt%以下と、バインダ成分の重量含有率30wt%以上45wt%以下とを三本ロールでよく混練してダイコート用、または印刷用の第2誘電体層用ペーストを作製する。
バインダ成分はエチルセルロース、またはアクリル樹脂の重量含有率1wt%以上20wt%以下を含むターピネオール、またはブチルカルビトールアセテートなどである。
また、ペースト中には、必要に応じて可塑剤としてフタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリブチルを添加し、分散剤としてグリセロールモノオレート、ソルビタンセスキオレヘート、ホモゲノール(Kaoコーポレーション社製品名)、アルキルアリル基のリン酸エステルなどを添加して印刷性を向上させてもよい。
次にこの第2誘電体層用ペーストを用いて第1誘電体層81上にスクリーン印刷法あるいはダイコート法で印刷して乾燥させ、その後、誘電体材料の軟化点より少し高い温度の550℃以上590℃以下で焼成する。
なお、誘電体層8の膜厚としては、可視光透過率を確保するために第1誘電体層81と第2誘電体層82とを合わせ41μm以下とすることが好ましい。
また、第1誘電体層81は、金属バス電極4b、5bの銀(Ag)との反応を抑制するために酸化ビスマス(Bi)の重量含有率を第2誘電体層82の酸化ビスマス(Bi)の重量含有率よりも多く、20wt%以上40wt%以下としている。
そのため、第1誘電体層81の可視光透過率が第2誘電体層82の可視光透過率よりも低くなるので、第1誘電体層81の膜厚を第2誘電体層82の膜厚よりも薄くしている。
なお、第2誘電体層82においては、酸化ビスマス(Bi)の重量含有率が11wt%以下であると着色は生じにくくなるが、第2誘電体層82中に気泡が発生しやすくなるため好ましくない。
一方、重量含有率が40wt%を超えると着色が生じやすくなるために透過率が低下する。
また、誘電体層8の膜厚が小さいほど輝度の向上と放電電圧を低減するという効果は顕著になるので、絶縁耐圧が低下しない範囲内であればできるだけ膜厚を小さく設定するのが望ましい。
このような観点から、本発明における実施の形態では、誘電体層8の膜厚を41μm以下に設定し、第1誘電体層81を5μm以上15μm以下、第2誘電体層82を20μm以上36μm以下としている。
このようにして製造されたPDPは、表示電極6にAg材料を用いても、前面ガラス基板3の着色現象(黄変)が少なくて、なおかつ、誘電体層8中に気泡の発生などがなく、絶縁耐圧性能に優れた誘電体層8を実現することを確認している。
【0018】
3−3、誘電体層
次に、本発明における実施の形態におけるPDPにおいて、これらの誘電体材料によって第1誘電体層81において黄変や気泡の発生が抑制される理由について考察する。
すなわち、酸化ビスマス(Bi)を含む誘電体ガラスに酸化モリブデン(MoO)、または酸化タングステン(WO)を添加することによって、AgMoO、AgMo、AgMo13、AgWO、Ag、Ag13といった化合物が580℃以下の低温で生成しやすいことが知られている。
本発明における実施の形態では、誘電体層8の焼成温度が550℃以上590℃以下であることから、焼成中に誘電体層8中に拡散した銀イオン(Ag+)は、誘電体層8中の酸化モリブデン(MoO)、酸化タングステン(WO)、酸化セリウム(CeO)、酸化マンガン(MnO2)と反応し、安定な化合物を生成して安定化する。
すなわち、銀イオン(Ag)が還元されることなく安定化されるために、凝集してコロイドを生成することがない。
したがって、銀イオン(Ag)が安定化することによって、銀(Ag)のコロイド化に伴う酸素の発生も少なくなるため、誘電体層8中への気泡の発生も少なくなる。
一方、これらの効果を有効にするためには、酸化ビスマス(Bi)を含む誘電体ガラス中に酸化モリブデン(MoO)、酸化タングステン(WO)、酸化セリウム(CeO)、酸化マンガン(MnO)の重量含有率を0.1wt%以上にすることが好ましく、0.1wt%以上7wt%以下がさらに好ましい。
特に、0.1wt%未満では黄変を抑制する効果が少なく、7wt%を超えるとガラスに着色が起こり好ましくない。
すなわち、本発明における実施の形態におけるPDPの誘電体層8は、Ag材料よりなる金属バス電極4b、5bと接する第1誘電体層81では黄変現象と気泡発生を抑制し、第1誘電体層81上に設けた第2誘電体層82によって高い光透過率を実現している。
その結果、誘電体層8全体として、気泡や黄変の発生が極めて少なく透過率の高いPDPを実現することが可能となる。
【0019】
4、保護膜の詳細
次に、本発明における実施の形態における保護膜9の詳細について図3および図4を用いて説明する。
【0020】
4−1、COガスの脱離ピーク温度
図3に示すグラフは、保護膜9におけるCOガスの脱離の様子を示している。
図3に示すグラフの横軸は基板の温度を、縦軸は保護膜9におけるCOガスの脱離量を示している。
本発明における実施の形態では、保護膜9におけるCOガスの脱離の様子を測定するために、次の測定方法で行う。
まず、保護膜9が蒸着された前面板2を大気に暴露させる。
その後、前面板2を昇温脱離ガス分析装置((電子科学株式会社製 EMD−WA1000S/W)に入れ、1×10−4Pa以下の真空中で昇温させる。
昇温脱離ガス分析装置の温度を上昇させると、保護膜9からCOガスの脱離が進行する。
本発明における実施の形態では、COガスの脱離を基板が50度に到達した時点から測定している。
ここで、COガスの脱離ピーク温度を昇温脱離ガス分析装置の基板温度を200℃以上にしたときにおいて、最もCOガスが保護膜9から脱離した時の温度とする。
なお、図3示すグラフは、後述で説明する実施例2に相当するPDPを用いて測定を行った結果である。
図3に示すように、本発明における実施の形態における保護膜9は、COガスの脱離ピーク温度が約400度だということがわかる。
一般的に、酸化マグネシウム(MgO)や酸化ストロンチウム(SrO)の各々の金属酸化物単体は、大気中に暴露すると、大気中に存在する二酸化炭素(CO)等と反応する。
すると、単体の酸化マグネシウム(MgO)からは、炭酸マグネシウム(MgCO)が生成する。また、単体の酸化ストロンチウム(SrO)からは、炭酸ストロンチウム(SrCO)が生成する。
COガスが金属酸化物に付着すると、保護膜9へのガスの吸着は画面内で均一ではないため、保護膜9の二次電子放出能力が画面内で不均一となる。
その結果、二次電子放出が画面内で不均一となり、画面の輝度も不均一の原因となる。
そこで保護膜9に熱を与えて余分なCOガスを排気する。
その結果、保護膜の二次電子放出能力が高くなり、輝度が面内均一になる。
そこで、COガスを排気するにはCOガスが脱離する脱離温度以上の熱を与えなければならない。
しかし、480度以上の熱を与えるとPDP1を構成する前面ガラス基板3、背面ガラス基板11、誘電体層8等が損傷を受けやすい。
COガスをPDP1から排気するためのCOガスの脱離ピーク温度は、保護膜の材料である金属酸化物によって異なる。
特に、本発明における実施形態における酸化ストロンチウム(SrO)は、酸化マグネシウム(MgO)などを保護膜9の材料とするときよりもさらに高い温度で排気しなければCOガスを十分に除去することができない。
そこで、本発明における実施形態のPDP1は、酸化マグネシウム(MgO)と酸化ストロンチウム(SrO)からなる2種類の金属酸化物により形成されていた保護膜9を備えている。
そのため、図4に示すように、酸化マグネシウム(MgO)と酸化ストロンチウム(SrO)からなる2種類の金属酸化物により形成されていた保護膜9を備えた前面板2から、COガスの脱離するピーク温度が480度未満である。
この結果、ガスの脱離ピーク温度の高い酸化ストロンチウム(SrO)を保護膜に含有しても、480度未満の焼成プロセスでCOガスの吸着を除去できる。
なお、酸化ストロンチウム(SrO)の重量含有率は、5%以上25%未満が望ましい。
酸化マグネシウム(MgO)に対する酸化ストロンチウム(SrO)の重量含有率が5%未満の場合、PDPの放電電圧の低減効果が低い。
一方、酸化ストロンチウム(SrO)の重量含有率が25%以上の場合、酸化マグネシウム(MgO)と酸化ストロンチウム(SrO)のマグネシウム原子(Mg)とストロンチウム原子(Sr)と酸素原子(O)とが規則正しく配列した混晶を形成しにくく、パネルからCOガスが脱離されにくくなる。その結果、COガスの脱離ピーク温度が480度を超えてしまう。
【0021】
4−2、X線回折ピーク分析
さらに、図4を用いて、本発明における実施の形態における保護膜9について説明する。
【0022】
図4は、本発明における実施の形態において、保護膜9のX線回折分析の結果と、酸化マグネシウム(MgO)の単体と酸化カルシウム(SrO)の単体におけるX線回折分析の結果を示す図である。
図4において、横軸はブラッグの回折角(2θ)であり、縦軸はX線回折波の強度である。
回折角の単位は1周を360度とする度で示し、強度は任意単位(arbitrary unit)で示している。
また、図4には、それぞれの結晶方位面を括弧付けで示している。
図4に示すように、例えば、結晶方位面が(111)面の場合、酸化カルシウム(SrO)単体は、回折角が30.0度の位置に回折ピークを有し、また、酸化マグネシウム(MgO)単体は、回折角が36.9度の位置に回折ピークを有していることがわかる。
同様に、例えば結晶方位面が(200)面の場合、酸化ストロンチウム(SrO)単体は、回折角が34.7度度の位置に回折ピークを有し、また、酸化マグネシウム(MgO)単体は、回折角が42.8度の位置に回折ピークを有していることがわかる。
一方、本発明における実施の形態における保護膜9のX線回折結果は、A点とB点に示す位置にピークが表れた。
より具体的に説明すると、保護膜9のX線回折結果は、結晶方位面が(111)面の場合、酸化マグネシウム(MgO)の単体と酸化ストロンチウム(SrO)の単体との回折角の間に位置するA点にピークが表れた。
つまり、回折角36.1度にピークが存在することがわかった。
さらに、結晶方位面が(200)面の場合、酸化マグネシウム(MgO)の単体と酸化ストロンチウム(SrO)の単体との回折角の間に位置するB点にピークが表れた。
つまり、回折角41.1度にピークが存在することがわかった。
なお、保護膜9の結晶方位面は、成膜条件や酸化マグネシウム(MgO)と酸化ストロンチウム(SrO)の割合、酸化マグネシウム(MgO)と酸化ストロンチウム(SrO)の結晶配列等によって決定されるが、いずれにしても本発明における実施の形態の保護膜9において、酸化マグネシウム(MgO)の単体と酸化ストロンチウム(SrO)の単体との間に1本のピークが存在する。
この1本のピークは、保護膜9の材料である酸化ストロンチウム(SrO)と酸化マグネシウム(MgO)のマグネシウム原子(Mg)とストロンチウム原子(Sr)と酸素原子(O)の結晶が規則正しく配列した混晶を形成している時に現れる。また、この混晶は、1つのピークだけが存在するため、不純物の混入や酸素欠損の少ない混晶である。すなわち、保護膜9の材料である酸化ストロンチウム(SrO)単体にCOガスが吸着しにくい。その結果CO2も低温で脱離しやすくなる。
【0023】
4−3、エネルギーと準位
このような回折ピークの特性を有する金属酸化物のエネルギー準位も酸化マグネシウム(MgO)単体と酸化ストロンチウム(SrO)単体との間に存在する。
その結果、保護膜9は、酸化マグネシウム(MgO)単体と比較して、良好な二次電子放出特性を発揮する。
その結果、放電維持電圧が低くなる。
さらに、輝度を高めるために放電ガスのキセノン(Xe)分圧が大きい場合、放電電圧を低減し、低電圧で高輝度のPDPを実現することが可能となる。
例えば、放電ガスとしてキセノン(Xe)とネオン(Ne)の混合ガスを用いた場合、キセノン(Xe)の分圧を10%から15%とした場合には、輝度が約30%上昇する。
しかし、酸化マグネシウム(MgO)単体の保護膜9を用いた場合には、同時に放電維持電圧が約10%上昇する。
一方、本発明における実施の形態では、上述した回折ピークの特性を有する保護膜9を有することにより、放電維持電圧を約10%減少させることが可能となる。
さらに、放電ガスとして全てキセノン(Xe)とした場合、すなわちキセノン(Xe)分圧を100%とした場合、酸化マグネシウム(MgO)単体の保護膜9を用いると、輝度が180%程度上昇するが、同時に放電維持電圧は35%程度上昇して、通常の動作電圧範囲を超える。
しかし、本発明における実施の形態における保護膜9を用いると、放電維持電圧を約20%減少させることができる。
そのため、通常動作範囲内の放電維持電圧を維持することができる。
その結果、高輝度で低電圧駆動のPDPを実現することができる。
【0024】
4−4、バンド構造
また、本発明における実施形態における保護膜9が放電維持電圧を低減できる理由は、それぞれの金属酸化物のバンド構造によると考えられる。
すなわち、酸化ストロンチウム(SrO)の価電子帯の真空準位からの深さは酸化マグネシウム(MgO)と比較して浅い領域に存在する。
そのため、PDPを駆動する場合において、酸化ストロンチウム(SrO)のエネルギー準位に存在する電子がキセノン(Xe)イオンの基底状態に遷移する際に、オージェ効果により放出される電子数が酸化マグネシウム(MgO)の場合と比較して多くなると考えられる。
また、本発明における実施の形態における保護膜9は、酸化マグネシウム(MgO)と酸化ストロンチウム(SrO)とを主成分とし、かつ、X線回折分析において、酸化マグネシウム(MgO)単体と酸化ストロンチウム(SrO)単体の回折角の間にピークが存在するものである。
【0025】
上記金属酸化物のエネルギー準位に関しては酸化マグネシウムと(MgO)と酸化ストロンチウム(SrO)との合成された性質を有することとなる。
したがって、保護膜9のエネルギー準位も酸化マグネシウム(MgO)単体と酸化ストロンチウム(SrO)単体との間に存在し、オージェ効果により他の電子が獲得するエネルギー量が真空準位を超えて放出されるに十分な量とすることができる。
その結果、保護膜9では、酸化ストロンチウム(SrO)単体と比較して、良好な二次電子放出特性が発揮することができ、結果として、放電維持電圧を低減することができる。
【0026】
なお、酸化ストロンチウム(SrO)単体を保護膜とした場合、反応が高いために酸化ストロンチウム(SrO)が不純物と反応しやすく、そのために電子放出性能が低下してしまう。
しかし、本発明における実施の形態のように、酸化マグネシウム(MgO)と酸化ストロンチウム(SrO)との金属酸化物の構成とすることにより、反応性を低減することができる。
【0027】
5、実験
次に、本発明における実施の形態における保護膜9の実験結果について説明する。
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
実施例1では、図1に示したPDPと同様の構成を有するPDPを作製した。PDPの製造方法は、上述したPDPの製造方法と同様である。
実施例1では、保護膜9を構成する材料として、平均粒径2mmのMgO粉末に対して平均粒径2mmのSrO粉末の重量含有率を5wt%にて混合した混合粉末を蒸発源とした。
混合粉末を、電子ビームで蒸発させて保護膜9を形成した。保護膜9の厚さは800nmであった。保護膜を成膜する時、蒸着室に酸素を100sccm導入し、蒸着室の圧力は0.04Paであった。保護膜を成膜する時の基板温度は、300℃であった。この前面板と背面板をフリットガラスで封着し、封着した放電空間にNe90%,Xe10%の混合ガスを50kPaの圧力で封入してPDPを作成した。
<実施例2>
保護膜9形成のための蒸発源として、平均粒径2mmのMgO粉末に対して平均粒径2mmのSrO粉末の重量含有率を15wt%にて混合した混合粉末を用いた。
そして、実施例1と同様にしてPDPを製造した。
<実施例3>
保護膜9形成のための蒸発源として、平均粒径2mmのMgO粉末に対して平均粒径2mmのSrO粉末の重量含有率を25wt%にて混合した混合粉末を用いた。
そして、実施例1と同様にしてPDPを製造した。
<比較例1>
保護膜9形成のための蒸発源として、平均粒径2mmのMgO粉末に対して平均粒径2mmのSrO粉末の重量含有率を35wt%にて混合した混合粉末を用いた。
そして、実施例1と同様にしてPDPを製造した。
<比較例2>
保護膜9形成のための蒸発源として、平均粒径5mmのMgO粉末に対して平均粒径5mmのSrO粉末の重量含有率を5wt%にて混合した混合粉末を用いた。
そして、実施例1と同様にしてPDPを製造した。
<比較例3>
保護膜9形成のための蒸発源として、平均粒径2mmのMgO粉末に対して平均粒径2mmのSrO粉末の重量含有率を2wt%にて混合した混合粉末を用いた。そして、実施例1と同様にしてPDPを製造した。
<比較例4>
保護膜9形成のための蒸発源として、平均粒径2mmのMgO粉末を用いた。そして、実施例1と同様にしてPDPを製造した。
【0028】
6、評価
これらの実施例1〜3および比較例1〜4で製造したPDPを、100kHz矩形波にて電圧をかけて、放電維持電圧を測定した。
また、放電維持電圧でPDPを点灯させて、肉眼で輝度ムラが確認できるかを評価した。
輝度ムラが確認されなかった場合は輝度均一性の評価を○とし、輝度ムラが確認された場合は×とした。
PDPの評価後、PDPを割断し、前面板の中央部を10mmのサイズで2枚切り出した。
切り出した1枚は大気中に1時間放置の後、昇温脱離ガス分析装置(電子科学株式会社製 EMD−WA1000S/W)の中に入れ、COガスの脱離温度を測定した。
脱離温度の測定時の昇温スピードは10℃/分であった。
また、他方の一枚は、X線回折装置(パナリティカル株式会社製)にてX線回折強度を測定した。COガスの脱離温度の測定結果とX線回折強度の測定結果を表1に示した。
【0029】
7、結果
表1に示すように、実施例1、2、3のようにSrOを含んでいても、COガスの脱離ピーク温度が低いものは、放電維持電圧低減と輝度均一性の両立が図られている。
一方、比較例1のように、MgOに対するSrOの重量比が1/4を超える場合、MgOとSrOから成る混晶が形成されず、PDP1の輝度均一性が良くない。
また、比較例2のように、MgOとSrOとの平均粒径が2mmを超える場合も同様に、MgOとSrOから成る混晶が形成されず、輝度均一性が良くない。
COガスの脱離ピーク温度が低くても、比較例3が示すようにMgOに対するSrOの重量比が1/20より小さい保護膜は、放電維持電圧低減効果が小さい。
【0030】
8、実施の形態の特徴
上記本発明における実施の形態において特徴的な部分を以下に列記する。なお、上記実施の形態に含まれる発明は、以下に限定されるものではない。
なお、各構成の後ろに括弧で記載したものは、各構成の具体例である。
各構成はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0031】
(1)
実施例1、2、3の結果より、COガスの脱離ピーク温度は480度未満であった。一方比較例1、2は、COガスの脱離ピーク温度が480度を超えた。
すなわち、前面板(2)と、前面板(2)に対向配置された背面板(10)と、前面板(2)と背面板(10)との間に放電ガスが充填された放電空間とを有するプラズマディスプレイパネル(1)であって、前面板(2)は、前面ガラス基板(3)と、前面ガラス基板上の放電空間側に形成した表示電極(6)と、表示電極(6)を覆う誘電体層(8)と、誘電体層(8)を覆う保護膜(9)と、を有し、背面板(2)は、背面ガラス基板(11)と、背面ガラス基板上の放電空間側に表示電極(6)の方向と交差する方向に形成されたアドレス電極(12)と、アドレス電極(12)を覆い、放電空間(16)を区画する隔壁(14)と、を有し、保護膜(9)は、酸化マグネシウム(MgO)と酸化ストロンチウムを含み、保護膜(9)のCOガスの脱離ピーク温度が480度未満であることを特徴とするプラズマディスプレイパネル(PDP1)は、画面均一性を実現することがわかった。
【0032】
(2)
実施例1、2、3及び比較例3、4が示すように、X線回折ピークが1つであった場合、PDPの輝度ムラは発生せず、輝度均一性は良好であった。
一方、比較例1及び比較例2が示すように、X線回折ピークがない場合、PDPにおいて輝度ムラが発生した。
すなわち、(1)のプラズマディスプレイパネルにおいて、保護膜(9)は、特定方位面におけるX線回折分析において、酸化マグネシウム(MgO)の回折ピークが発生する回折角と酸化ストロンチウム(SrO)の回折ピークが発生する回折角との間の回折角に、回折ピークが存在するとき、プラズマディスプレイパネル(PDP1)は、画面均一性を実現することがわかった。
【0033】
(3)
実施例1、2、3及び比較例1、2より酸化マグネシウム(MgO)に対する酸化ストロンチウム(SrO)の重量含有率が5wt%以上25wt%以下であるとき、PDPの放電維持電圧が約200度未満であった。
【0034】
一方、比較例3及び比較例4の場合、放電維持電圧が200Vを超えた。
【0035】
すなわち、(1)のプラズマディスプレイパネルにおいて、保護膜(9)は、酸化ストロンチウム(SrO)の保護膜(9)に対する重量含有率が5wt%以上25wt%未満であるとき、プラズマディスプレイパネルは(PDP1)は、画面均一性を実現するだけでなく、低電圧駆動が可能になることがわかった。
【0036】
(4)
実施例1,2,3のように平均粒径2mmの酸化マグネシウム(MgO)と平均粒径2mmの酸化ストロンチウムを(SrO)保護膜(9)の材料とする場合、輝度ムラがなく、放電維持電圧がより低い。
【0037】
一方、比較例2のように平均粒径5mmの酸化マグネシウム(MgO)と酸化ストロンチウム(SrO)を保護膜(9)の材料とする場合、放電維持電圧はより低いが、COガスの脱離ピーク温度が高く、輝度ムラが発生する。
【0038】
すなわち、平均粒系2mm以下の酸化マグネシウム(MgO)と、平均粒径2mm以下の酸化ストロンチウム(SrO)と、が混合された粉体、または、混合された後焼結された焼結体を電子ビーム蒸着法で蒸着されるとき、プラズマディスプレイパネルは(PDP1)は、画面均一性を実現するだけでなく、低電圧駆動が可能になることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように本発明は、低電圧駆動であり、輝度均一性の高いPDPを実現する上で有用な発明である。
【符号の説明】
【0040】
1 PDP
2 前面板
3 前面ガラス基板
4 走査電極
4a,5a 透明電極
4b,5b 金属バス電極
5 維持電極
6 表示電極
7 ブラックストライプ(遮光層)
8 誘電体層
9 保護膜
10 背面板
11 背面ガラス基板
12 アドレス電極
13 下地誘電体層
14 隔壁
15 蛍光体層
16 放電空間
81 第1誘電体層
82 第2誘電体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面板と、前記前面板に対向配置された背面板と、前記前面板と前記背面板との間に放電ガスが充填された放電空間とを有するプラズマディスプレイパネルであって、
前記前面板は、前面ガラス基板と、前記前面ガラス基板上に取り付けられた表示電極と、前記表示電極を覆う誘電体層と、前記誘電体層を覆う保護膜と、を有し、
前記背面板は、背面ガラス基板と、前記表示電極の方向と交差する方向に取り付けられたれたアドレス電極と、前記放電空間を区画する隔壁と、を有し、
前記保護膜は、酸化マグネシウム(MgO)と酸化ストロンチウム(SrO)とを含み、前記保護膜のCOガスの脱離ピーク温度が480度未満である
ことを特徴とするプラズマディスプレイパネル
【請求項2】
前記保護膜は、
特定方位面におけるX線回折分析において、
前記酸化マグネシウム(MgO)の回折ピークが発生する回折角と前記酸化ストロンチウム(SrO)の回折ピークが発生する回折角との間の回折角に、回折ピークが存在する
ことを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル
【請求項3】
前記特定方位面は(200)又は(111)のいずれかである
ことを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル
【請求項4】
前記保護膜は、
酸化ストロンチウム(SrO)の前記保護膜に対する重量含有率が5wt%以上25wt%未満であることを特徴とする請求項1または2のプラズマディスプレイパネル
【請求項5】
前記保護膜は、
平均粒径2mm以下の酸化マグネシウム(MgO)と、平均粒径2mm以下の酸化ストロンチウム(SrO)と、が混合された粉体、または、混合された後焼結された焼結体を電子ビーム蒸着法で蒸着されることを特徴とする請求項1〜3に記載のプラズマディスプレイパネル


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−192501(P2011−192501A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57051(P2010−57051)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】