説明

プラズマディスプレイ装置

【課題】3.0msec未満の短い残光特性を有し、立体画像表示装置に好適なプラズマディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】プラズマディスプレイ装置の緑色蛍光体層35Gは、1/10残光時間が5msec以下のZn2SiO4:Mn2+と、Y3Al512:Ce3+と、Y2SiO5:Ce3+とを含む緑色蛍光体を備え、Y2SiO5:Ce3+の配合比率は1wt%以上80wt%以下、より好ましくは1wt%以上20wt%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイ装置に関し、特には、立体画像表示に好適な短残光、高輝度で長寿命かつ色画質に優れた蛍光体を備えるプラズマディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと呼ぶ)を用いたプラズマディスプレイ装置(以下、PDP装置と呼ぶ)は、高精細化や大画面化の実現が可能であることから、100インチクラスのテレビジョン受像機などの製品化が進んでいる。PDPは、表示電極対に映像信号電圧を選択的に印加させて放電ガスを放電させ、その放電によって発生した紫外線が各色蛍光体を励起して赤色、緑色、青色の発光をさせてカラー画像表示を実現している。また、近年はPDPを用いたテレビなどの大画面化とともに、フルスペックハイビジョンなどの高精細化や立体画像表示への応用などが進んでいる。特に、PDPは液晶パネルに比べて高速駆動が容易であり、そのためにPDPと液晶シャッター眼鏡とを組み合わせた立体画像表示などの開発が活発化している。PDPと液晶シャッター眼鏡とを組み合わせた立体画像表示装置では、液晶シャッター眼鏡の応答時間から画像が二重に見えるクロストークの発生を抑制するために、蛍光体の残光時間である1/10残光(以下、断りがない限り、残光時間は1/10残光時間を指す)が3.5msec以下、望ましくは3.0msec以下であることが必要とされる。
【0003】
PDPに用いられる蛍光体のうち、緑色蛍光体については、通常使用されているZn2SiO4:Mn(以後、ZSM蛍光体と呼ぶ)の残光時間は3〜14msecであり、合成方法によって短くすることも可能である。しかし、残光時間を短くするには、発光中心であるMn濃度を高める手法が知られているが、弊害として発光中心のイオンスパッタレートが上昇し、パネル輝度寿命が悪化するとともに初期輝度が低下する。そのため、例えばY3(Al,Ga)512:Tb3+を使用することで、残光時間を5.7msまで短くし、ZSM蛍光体より高輝度かつ長寿命化が実現している(特許文献1)。また、同じく残光時間が5.7msecと短いY2SiO5:Tb3+とZSM蛍光体を混合することで、高輝度で色純度がよく短残光で長寿命な緑色蛍光体が調整可能である(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−121551号公報
【特許文献2】特開2008−262927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の蛍光体ではY3(Al,Ga)512:Tb3+の発光中心がテルビウム(Tb)であり、高輝度、長寿命であるが、発光スペクトルが輝線で複数あるため緑の色域が狭いといった課題を有している。また、Y3(Al,Ga)512:Tb3+の残光は5.7msecと長く、3.0msec以下を達成できない。また、特許文献2の蛍光体についても、Y2SiO5:Tb3+の残光が約5.7msecであるため、ZSM蛍光体と組み合わせても、3.0msec以下を達成することは困難であるといった課題を有していた。
【0006】
本発明は、このような課題を解決して、緑色発光の残光時間が3.0msec未満の発光特性を有するとともに輝度および色純度に優れ、かつ長寿命な立体画像表示装置などに好適なプラズマディスプレイを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のプラズマディスプレイ装置は、少なくとも前面側が透明な一対の基板を基板間に放電空間が形成されるように対向配置するとともに放電空間を複数に仕切るための隔壁を少なくとも一方の基板に配置し、かつ隔壁により仕切られた放電空間で放電が発生するように基板に電極群を配置するとともに放電により発光する緑色蛍光体層を設けたPDPを有するプラズマディスプレイ装置であって、緑色蛍光体層の緑色蛍光体が、1/10残光時間が2msec以上5msec以下のZSM蛍光体と、490nm以上560nm未満の波長領域に発光ピークを持つCe3+付活緑色蛍光体Y3Al512:Ce3+と、350nm以上450nm未満に発光ピークを持つCe3+付活紫外発光蛍光体Y2SiO5:Ce3+と、を含む蛍光体である。
【0008】
このような構成によれば、高輝度、長寿命かつ緑色の色画質に優れ、なおかつ残光時間が3.0ms以下により、動画応答性に優れたクロストークの無い立体画像表示装置などに好適なプラズマディスプレイを提供できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高輝度、長寿命かつ色画質に優れ、短残光でクロストークの無い立体画像表示装置などに好適なプラズマディスプレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態におけるPDP装置を構成するPDPの構成を示す断面斜視図
【図2】本発明の実施の形態におけるPDPを用いたPDP装置の構成を示す図
【図3】本発明の実施の形態におけるPDPの背面板の構成を示す断面図
【図4】(A)本発明の実施の形態におけるPDP装置を用いた立体画像表示装置の一例を示す斜視図、(B)本発明の実施の形態における立体画像表示装置が表示した映像を視聴する際に用いる映像視聴用眼鏡の外観を示す斜視図
【図5】ZSM蛍光体におけるMn付活量に対する輝度と残光時間との関係を示す図
【図6】本発明の実施の形態における蛍光体にマグネシウムを被覆させた場合の評価を示す図
【図7】本発明の実施の形態における蛍光体を備えた実施品としてのPDPと比較品としてのPDPとを評価して比較した図
【図8】図7をもとに簡略評価して比較した図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
<実施の形態>
1、プラズマディスプレイの構成
図1は、実施の形態におけるPDP装置100(図4(A)に図示)を構成するPDP10の構成を示す断面斜視図である。図3は、実施の形態におけるPDPの背面板の構成を示す断面図である。PDP10は前面板20と背面板30とで構成されている。前面板20は前面ガラス基板21を有し、前面ガラス基板21上には平行に配置された走査電極22と維持電極23とからなる表示電極対24が複数形成されている。そして、走査電極22と維持電極23とを覆うように誘電体層25が形成され、その誘電体層25上に保護層26が形成されている。
【0013】
一方、背面板30は背面ガラス基板31を有し、背面ガラス基板31上には、平行に配列されたアドレス電極32が複数形成されている。さらに、アドレス電極32を覆うように下地誘電体層33が形成され、その上に隔壁34が形成されている。そして、隔壁34の側面および下地誘電体層33上には、アドレス電極32に対応して順次、赤色、緑色および青色の各色に発光する赤色蛍光体層35R、緑色蛍光体層35G、青色蛍光体層35Bが設けられている。これらの前面板20と背面板30とは、微小な放電空間を挟んで表示電極対24とアドレス電極32とが交差するように対向配置され、その外周部がガラスフリットなどの封着部材によって封着されている。そして、放電空間には、例えばネオン(Ne)とキセノン(Xe)などの混合ガスが、放電ガスとして55kPa〜80kPaの圧力で封入されている。放電空間は隔壁34によって、複数の区画に仕切られ、表示電極対24とアドレス電極32とが交差する部分に放電セル36が形成される。そして、上記の電極間に放電電圧を印加すると、これらの放電セル36内で放電が起こり、その放電により発生した紫外線によってそれぞれの赤色蛍光体層35R、緑色蛍光体層35G、青色蛍光体層35Bの蛍光体が励起されて発光しカラー画像が表示される。なお、PDP10の構造は上述したものに限られるわけではなく、隔壁34の構造として、例えば井桁状の隔壁を備えた構造であってもよい。
【0014】
2、プラズマディスプレイの製造方法
2−1、前面板の製造方法
フォトリソグラフィ法によって、前面ガラス基板21上に、走査電極22および維持電極23が形成される。走査電極22は、インジウム錫酸化物(ITO)などの透明電極と、透明電極に積層された銀(Ag)などからなるバス電極とから構成されている。維持電極23は、ITOなどの透明電極と、透明電極に積層されたAgなどからなるバス電極とから構成されている。バス電極の材料には、銀(Ag)と銀を結着させるためのガラスフリットと感光性樹脂と溶剤などを含む電極ペーストが用いられる。まず、スクリーン印刷法などによって、電極ペーストが、透明電極が形成された前面ガラス基板21に塗布される。次に、乾燥炉によって、電極ペースト中の溶剤が除去される。次に、所定のパターンのフォトマスクを介して、電極ペーストが露光される。次に、電極ペーストが現像され、バス電極パターンが形成される。最後に、焼成炉によって、バス電極パターンが所定の温度で焼成される。つまり、電極パターン中の感光性樹脂が除去される。また、電極パターン中のガラスフリットが溶融する。その後、室温まで冷却することにより、溶融していたガラスフリットが、ガラス化する。以上の工程によって、バス電極が形成される。ここで、電極ペーストをスクリーン印刷する方法以外にも、スパッタ法、蒸着法などを用いることができる。
【0015】
次に、誘電体層25が形成される。誘電体層25の材料には、誘電体ガラスフリットと樹脂と溶剤などを含む誘電体ペーストが用いられる。たとえば、誘電体層25は、膜厚が約40μmの酸化ビスマス(Bi23)系低融点ガラスまたは酸化亜鉛(ZnO)系低融点ガラスで形成されている。まずダイコート法などによって、誘電体ペーストが所定の厚みで走査電極22、維持電極23を覆うように前面ガラス基板21上に塗布される。次に、乾燥炉によって、誘電体ペースト中の溶剤が除去される。最後に、焼成炉によって、誘電体ペーストが所定の温度で焼成される。つまり、誘電体ペースト中の樹脂が除去される。また、誘電体ガラスフリットが溶融する。その後、室温まで冷却することにより、溶融していた誘電体ガラスフリットが、ガラス化する。以上の工程によって、誘電体層25が形成される。ここで、誘電体ペーストをダイコートする方法以外にも、スクリーン印刷法、スピンコート法などを用いることができる。また、誘電体ペーストを用いずに、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などによって、誘電体層25となる膜を形成することもできる。次に、誘電体層25上に保護層26が形成される。
【0016】
保護層26は、膜厚が約0.8μmの酸化マグネシウム(MgO)を主体とするアルカリ土類金属酸化物からなる薄膜層であり、誘電体層25をイオンスパッタから保護するとともに放電開始電圧などの放電特性を安定させるために設けられている。
【0017】
以上の工程により前面ガラス基板21上に走査電極22、維持電極23、誘電体層25および保護層26を有する前面板20が完成する。
【0018】
2−2、背面板の製造方法
フォトリソグラフィ法によって、背面ガラス基板31上に、アドレス電極32が形成される。アドレス電極32の材料には、導電性を確保するための銀(Ag)と銀を結着させるためのガラスフリットと感光性樹脂と溶剤などを含むアドレス電極ペーストが用いられる。まず、スクリーン印刷法などによって、アドレス電極ペーストが所定の厚みで背面ガラス基板31上に塗布される。次に、乾燥炉によって、アドレス電極ペースト中の溶剤が除去される。次に、所定のパターンのフォトマスクを介して、アドレス電極ペーストが露光される。次に、アドレス電極ペーストが現像され、アドレス電極パターンが形成される。最後に、焼成炉によって、アドレス電極パターンが所定の温度で焼成される。つまり、アドレス電極パターン中の感光性樹脂が除去される。また、アドレス電極パターン中のガラスフリットが溶融する。その後、室温まで冷却することにより、溶融していたガラスフリットが、ガラス化する。以上の工程によって、アドレス電極32が形成される。ここで、アドレス電極ペーストをスクリーン印刷する方法以外にも、スパッタ法、蒸着法などを用いることができる。
【0019】
次に、下地誘電体層33が形成される。下地誘電体層33の材料には、絶縁体ガラスフリットと樹脂と溶剤などを含む絶縁体ペーストが用いられる。例えば、下地誘電体層33は、誘電体層25と同様の酸化ビスマス(Bi23)系低融点ガラスなどであってもよいが、可視光反射層としての働きも兼ねるように酸化チタン(TiO2)粒子を混合した材料であってもよい。まず、スクリーン印刷法などによって、絶縁体ペーストが所定の厚みでアドレス電極32が形成された背面ガラス基板31上にアドレス電極32を覆うように塗布される。次に、乾燥炉によって、絶縁体ペースト中の溶剤が除去される。最後に、焼成炉によって、絶縁体ペーストが所定の温度で焼成される。つまり、絶縁体ペースト中の樹脂が除去される。また、絶縁体ガラスフリットが溶融する。その後、室温まで冷却することにより、溶融していた絶縁体ガラスフリットが、ガラス化する。以上の工程によって、下地誘電体層33が形成される。ここで、絶縁体ペーストをスクリーン印刷する方法以外にも、ダイコート法、スピンコート法などを用いることができる。また、絶縁体ペーストを用いずに、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などによって、下地誘電体層33となる膜を形成することもできる。
【0020】
次に、フォトリソグラフィ法によって、隔壁34が形成される。隔壁34の材料には、フィラーと、フィラーを結着させるためのガラスフリットと、感光性樹脂と、溶剤などを含む隔壁ペーストが用いられる。まず、ダイコート法などによって、隔壁ペーストが所定の厚みで下地誘電体層33上に塗布される。次に、乾燥炉によって、隔壁ペースト中の溶剤が除去される。次に、所定のパターンのフォトマスクを介して、隔壁ペーストが露光される。次に、隔壁ペーストが現像され、隔壁パターンが形成される。最後に、焼成炉によって、隔壁パターンが所定の温度で焼成される。つまり、隔壁パターン中の感光性樹脂が除去される。また、隔壁パターン中のガラスフリットが溶融する。その後、室温まで冷却することにより、溶融していたガラスフリットが、ガラス化する。以上の工程によって、隔壁34が形成される。ここで、フォトリソグラフィ法以外にも、サンドブラスト法などを用いることができる。隔壁34は、例えば低融点ガラス材料を用いて約0.12mmの高さに形成されている。また、実施の形態では、画面サイズが42インチクラスのフルハイビジョンテレビに合わせて、隔壁34の高さは0.1mm〜0.15mm、また隣接する隔壁34のピッチは0.15mmとしている。なお、PDPの構造は上述したものに限られるわけではなく、隔壁34の形状がストライプ状であってもよい。
【0021】
次に、蛍光体層35が形成される。蛍光体層35の材料には、後に詳細に説明する蛍光体粒子とバインダと溶剤などとを含む蛍光体ペーストが用いられる。まず、ディスペンス法などによって、蛍光体ペーストが所定の厚みで隣接する複数の隔壁34間の下地誘電体層33上および隔壁34の側面に塗布される。次に、乾燥炉によって、蛍光体ペースト中の溶剤が除去される。最後に、焼成炉によって、蛍光体ペーストが所定の温度で焼成される。つまり、蛍光体ペースト中の樹脂が除去される。以上の工程によって、蛍光体層35が形成される。ここで、ディスペンス法以外にも、スクリーン印刷法などを用いることができる。
【0022】
以上の工程により、背面ガラス基板31上に、アドレス電極32、下地誘電体層33、隔壁34および蛍光体層35を有する背面板30が完成する。
【0023】
2−3、前面板と背面板との組立方法
まず、ディスペンス法などによって、背面板30の周囲に封着ペーストが塗布される。塗布された封着ペーストは、封着ペースト層(図示せず)を形成する。次に乾燥炉によって、封着ペースト層中の溶剤が除去される。その後、封着ペースト層は、約350℃の温度で仮焼成される。仮焼成によって、封着ペースト層中の樹脂成分などが除去される。次に、表示電極対24とアドレス電極32とが直交するように、前面板20と背面板30とが対向配置される。さらに、前面板20と背面板30の周縁部が、クリップなどにより押圧した状態で保持される。この状態で、所定の温度で焼成することにより、低融点ガラス材料が溶融する。その後、室温まで冷却することにより、溶融していた低融点ガラス材料がガラス化する。これにより、前面板20と背面板30とが気密封着される。最後に、放電空間にNe、Xeなどを含む放電ガスが封入される。封入する放電ガスの組成は、従来から用いられているNe−Xe系であるが、Xeの含有量を5体積%以上に設定し、封入圧力は55kPa〜80kPaの範囲に設定する。これによりPDP10が完成する。
【0024】
3、プラズマディスプレイ装置の構成
図2は、PDP10を用いたPDP装置100の構成を示す図である。PDP装置100はPDP10と、それに接続された駆動回路40とから構成される。駆動回路40は、表示ドライバ回路41、表示スキャンドライバ回路42、アドレスドライバ回路43を備え、それぞれ、PDP10の維持電極23、走査電極22およびアドレス電極32に接続されている。また、コントローラ44はこれらの各種電極に印加する駆動電圧を制御している。
【0025】
次に、PDP10における放電の動作について説明する。まず、点灯させるべき放電セル36に対応する走査電極22とアドレス電極32とに所定電圧を印加することでアドレス放電を行う。これにより、表示データに対応する放電セル36に壁電荷が形成される。その後、維持電極23と走査電極22間に維持放電電圧を印加すると、壁電荷が形成された放電セル36で維持放電が起こり紫外線を発生する。この紫外線によって励起された赤色蛍光体層35R、緑色蛍光体層35G、青色蛍光体層35B中の蛍光体が発光することで放電セル36が点灯する。各色の放電セル36の点灯、非点灯の組み合わせによって画像が表示される。
【0026】
4、立体画像表示装置の構成
次に、このようなPDP装置100を立体画像表示装置200に適用する場合について説明する。図4(A)は、PDP装置100を用いた立体画像表示装置200の一例を示す斜視図であり、図4(B)は立体画像表示装置200が表示した映像を視聴する際に用いる映像視聴用眼鏡210の外観を示す斜視図である。立体画像表示装置200の表示面に表示する映像を、視聴者が、映像視聴用眼鏡210を通して見ることで、立体映像として視聴できるようにしている。すなわち、立体画像表示装置200が、その表示面に左目用の映像と右目用の映像を交互に表示する。映像視聴用眼鏡210は、立体画像表示装置200の表示面に出力される映像と同期して、映像視聴用眼鏡210の左目に入射する光と右目に入射する光を光学フィルターとしての液晶シャッターで制御するようにしている。
【0027】
立体画像表示装置200の表示面からは、立体映像(3D映像)の所定の処理を施された映像が表示され、左目用の映像と右目用の映像で視差の分だけ映像が異なる内容である。視聴者は、左目と右目で視聴する映像から視差を感知して、立体画像表示装置200が表示する映像が立体的な映像であることを知覚することができる。立体画像表示装置200の同期信号送信部220から、PDP装置100の表示面に出力される映像と同期した信号が送信され、映像視聴用眼鏡210の同期信号受信部230で受信する。映像視聴用眼鏡210は、この同期信号に基づいて、左右の目へ入射する光に所定の光学処理を施す。これにより、映像視聴用眼鏡210をつけた視聴者が、立体画像表示装置200が表示する映像を立体映像として視聴することができる。
【0028】
なお、映像視聴用眼鏡210が液晶シャッターを備える場合には、立体画像表示装置200の同期信号送信部220としては赤外線エミッターを用い、映像視聴用眼鏡210の同期信号受信部230としては赤外線センサーを用いることができる。すなわち、本実施の形態における立体画像表示装置200は、上述のPDP装置100と、120Hzの周波数で開閉する液晶シャッターを用いた映像視聴用眼鏡210とを組み合わせて構成している。このように、液晶シャッターを周波数120Hzで開閉しても、画像が二重に見える現象であるクロストークが発生しないようにする必要がある。そのためには、PDP10の各色蛍光体から発光される発光光の残光時間が3.5msec以下望ましくは3.0msec以下であれば目に優しい立体画像表示が可能になり、さらに、いっそうの迫力を伴う立体映像を視聴することができる。
【0029】
5、蛍光体材料の構成とその製造方法
以上のように、本実施の形態におけるPDP装置100は、立体画像表示装置200として適用が可能なように蛍光体からの発光の短残光化と色純度の確保を実現したPDP10であり、このような短残光時間を実現する蛍光体は以下の実験事実を根拠として採用している。
【0030】
5−1、赤色蛍光体の構成
次に本実施の形態におけるPDP装置100における赤色蛍光体について説明する。本実施の形態における赤色蛍光体は、610nm以上630nm未満の波長領域に主発光ピークを有するとともに、580nm以上600nm未満の波長領域にある橙色発光成分の最大強度が上記主発光ピークの5%以上20%未満の赤色光を発光するEu3+付活赤色蛍光体である。なお、「610nm以上630nm未満の波長領域に主発光ピークを有してEu3+を付活剤とする赤色蛍光体」とは、Eu3+を付活剤として含み、かつ、Eu3+が放つ発光成分の中で、発光強度が最も大きな発光成分が、610nm以上630nm未満の波長領域にある赤色蛍光体を意味する。このため、例えば、電子管用として知られるInBO3:Eu3+や(Y,Gd)BO3:Eu3+(以下、YGB蛍光体と呼ぶ)のように、593nm付近に主発光ピークを有する橙色/赤橙色蛍光体はこれに含まれない。
【0031】
610nm以上630nm未満の波長領域に主発光ピークを有するEu3+付活蛍光体は、590nm付近に主発光ピークを有するYGB蛍光体などとは異なり、Eu3+イオンの電子双極子遷移に基づく発光成分割合が多い。そのため、2.0msec〜5.0msec程度の比較的短残光の赤色光を放つ。
【0032】
さらに、このような赤色蛍光体からの赤色光は、580nm以上600nm未満の波長領域である橙色発光成分の最大強度が、610nm以上630nm未満の波長領域に位置する主発光ピークの20%未満、好ましくは15%未満、より好ましくは13%未満であることが好ましい。
【0033】
このような赤色光は、Eu3+イオンの磁気双極子遷移に基づく、10.0msec程度以上の長残光の橙色発光成分割合が少なく、電子双極子遷移に基づく、2.0msec〜5.0msec程度の短残光の赤色発光成分割合が多いものになる。したがって、3.0msec程度以下の短残光特性を有する赤色光を得る上で好ましいものとなる。
【0034】
なお、このような赤色光を得ることができる既存の実用赤色蛍光体としては、Y23:Eu3+(以下YOX蛍光体と呼ぶ)、(Y,Gd)23:Eu3+(以下、YGX蛍光体と呼ぶ)、および、Y(P,V)O4:Eu3+(以下、YPV蛍光体と呼ぶ)などがある。
【0035】
本実施の形態におけるPDP装置100の赤色蛍光体は、Ln23:Eu3+、および、Ln(P,V)O4:Eu3+から選ばれる少なくとも一つの蛍光体である(ただし、LnはSc、Y、およびGdから選ばれる少なくとも一つの元素である)。
【0036】
また、このような赤色光は、図1のPDP10の前面に別途設けた光学フィルターを通過する前の赤色光であってもよいが、少なくとも波長590nm〜595nm付近の橙色光成分を過剰に吸収するように光学設計した光学フィルターを通過した後の赤色光であることが好ましい。このように、赤色蛍光体と光学フィルターとを組み合わせることによって、ネオン(Ne)放電が放つ橙色光出力を低減させるだけでなく、Eu3+付活赤色蛍光体が放つ、残光時間の長い593nm付近の橙色光成分出力割合も小さくできる。その結果、カラー画像のコントラストや赤色色調が向上するだけでなく、長残光の橙色光成分割合が多い赤色蛍光体を用いた場合であっても、残光時間を短くすることが可能となる。
【0037】
例えば、YPV蛍光体では、リン割合が多く長残光の橙色光成分割合の多いYPV蛍光体ほど、真空紫外線励起下で多くの光子数を放ち得る高光子変換効率の高い蛍光体になる。したがって、このように光学フィルターと組み合わせることによって、光子変換効率は高いが長残光のYPV蛍光体などを用いて、所定の短残光高効率赤色光を得ることができるようになる。
【0038】
また、赤色の色調を重視して、YPV蛍光体の単独使用時の輝度よりも高い輝度を求める場合には、YPV蛍光体にYOX蛍光体またはYGX蛍光体の少なくとも一方を加えてなる混合赤色蛍光体として、赤色光の視感度を高めるようにしてもよい。逆に、赤色の輝度を重視する中で、YOX蛍光体またはYGX蛍光体の単独使用時の輝度よりも良好な赤色の色調が求められる場合には、YOX蛍光体またはYGX蛍光体にYPV蛍光体を加えてなる混合赤色蛍光体として、赤色光の視感度を高めるようにすればよい。
【0039】
赤色蛍光体であるYPV蛍光体またはYOX蛍光体の合成方法について説明する。酸化イットリウム(Y23)、酸化ガドリウム(Gd23)、酸化バナジウム(V25)、5酸化リン(P25)と酸化ユーロピウム(EuO2)とを蛍光体組成に合うように混合する。この混合物を空気中において600〜800℃で焼成し、さらに混合して酸素と窒素を含む混合ガス雰囲気中において1000〜1200℃で焼成し作成する。
【0040】
5−2、青色蛍光体の構成
本実施の形態におけるPDP装置100における青色蛍光体について説明する。本実施の形態における青色蛍光体は、420nm以上500nm未満の波長領域に主発光ピークを有するEu2+付活青色蛍光体である。なお、「420nm以上500nm未満の波長領域に主発光ピークを有してEu3+を付活剤とする青色蛍光体」とは、Eu3+を付活剤として含み、かつ、Eu3+が放つ発光成分の中で、発光強度が最も大きな発光成分が、420nm以上500nm未満の波長領域にある青色蛍光体を意味する。このようなEu2+を付活剤とする青色蛍光体は、Eu2+イオンの4f65d1→4f7電子エネルギー遷移に基づいて発光する。そのために、1.0msec未満の短残光の青色発光を実現させることができる。
【0041】
より具体的な青色蛍光体としては、BaMgAl1017:Eu2+(以下、BAM蛍光体と呼ぶ)、CaMgSi26:Eu2+、Sr3MgSi28:Eu2+などを適用できる。これらの残光は全て1.0msec以下であり、立体画像表示装置に最適である。
【0042】
代表的な青色蛍光体であるBAM蛍光体の合成方法について説明する。炭酸バリウム(BaCO3)と炭酸マグネシウム(MgCO3)と酸化アルミニウム(Al23)と酸化ユーロピウム(Eu23)とを蛍光体組成に合うように混合する。この混合物を空気中において800℃〜1200℃で焼成し、さらに水素と窒素を含む混合ガスにおいて1200℃〜1400℃で焼成して作成する。
【0043】
5−3、緑色蛍光体の構成および製造方法
5−3−1、緑色蛍光体について
本実施の形態におけるPDP装置100における緑色蛍光体について説明する。本実施の形態では、緑色蛍光体は、Mn2+付活短残光緑色蛍光体と、490nm以上560nm未満の波長領域に発光ピークを持つCe3+付活緑色蛍光体と350nm以上450nm未満に発光ピークを持つCe3+付活紫外発光蛍光体を含む蛍光体である。さらに、具体的には、Mn付活量を調整して残光時間を2.0msec以上5.0msec未満としたZSM蛍光体に、残光時間が1.0msec未満である緑色発光のYAG蛍光体を混合し、さらに残光時間が1.0msec以下である紫外発光蛍光体のY2SiO5:Ce3+を所定量混合した構成としている。
【0044】
図5は、ZSM蛍光体におけるMn付活量に対する輝度と残光時間との関係を示す図である。ここで、Mn付活量とは、ZSM蛍光体のZn原子に対するMn原子の置換割合(Mn/(Zn+Mn))を原子%で示している。また、図5において黒塗りつぶし(●および◆)で示す結果は、ZSM蛍光体粉末の真空紫外線(147nm)励起条件下における評価結果であり、白抜き(○および◇)がPDP10による評価結果である。図5の結果より、蛍光体粉末の結果とPDP10による評価結果とに大差のないことが判る。図5に示すように、Mn付活量の増加とともに残光時間と輝度とが減少する。残光時間はMn付活量が4原子%を超えると急激に減少し、輝度はMn付活量が8原子%を超えると急激に減少する。また、Mn付活量が10原子%を超える高Mn付活量の領域では、輝度低下が大きすぎて、残光時間の評価が不可能となる。図5から、Mn付活量を6.5原子%以上10原子%未満に制御することによって、残光時間を2.0msec以上5.0msec未満に制御できる。したがって、本実施の形態では、このようにMn付活量を6.5原子%以上10原子%未満に制御した、短残光のZSM蛍光体を、Mn2+付活短残光緑色蛍光体と定義し、以降、短残光ZSM蛍光体と呼ぶ。しかし、Mn付活量は7原子%以上9原子%以下がさらに望ましい。
【0045】
さらに、本実施の形態では、Ce3+付活イットリウムアルミニウムガーネット蛍光体であるY3Al512:Ce3+蛍光体(以下YAG:Ce蛍光体と呼ぶ)に着目した。このYAG:Ce蛍光体の真空紫外線励起下における発光特性とPDP10としての特性を調べた。その結果、YAG:Ce蛍光体は、PDP10に適用した輝度が、文献などで報告される結果や蛍光体粉末単体での評価結果から予想される値以上に高く、かつ、PDP10の電圧パルスに対する残光時間が1.0msec以下と極めて良好であることを見出した。しかし、YAG:Ce蛍光体はその色純度が低いため、短残光ZSM蛍光体と組み合わせる場合、緑の色純度を確保するためには、短残光ZSM蛍光体の配合率を高めなければならない。短残光ZSM蛍光体の配合率を高めることで、色純度の改善は可能となるが、輝度の低下および残光時間が増加する。
【0046】
そのため、本実施の形態では、YAG:Ce蛍光体と同じく残光時間が1.0msec以下のCe付活紫外蛍光体Y2SiO5:Ce3+が短残光ZSM蛍光体とYAG:Ce蛍光体に加えてさらに含まれることを特徴とする。Y2SiO5:Ce3+蛍光体は、350nm以上450nm未満に発光ピークを持つCe3+付活紫外発光蛍光体で、緑色蛍光体では無いが、色度xの値が低いため、YAG:Ce蛍光体を混合することで増大した色度xを低下させる効果を持つ。また、残光時間が1.0msec以下であるため、Ce付活紫外蛍光体Y2SiO5:Ce3+を混合することで残光時間の短縮を図ることが出来る。Ce付活紫外蛍光体Y2SiO5:Ce3+は、紫外発光蛍光体なのでそれ自体の輝度は低く、20wt%以上含有させるとパネル輝度は低下するが、10wt%以下であれば輝度の低下を防ぐことが出来る。
【0047】
しかしながらY2SiO5:Ce3+蛍光体はZSM蛍光体と同様に輝度寿命にさらに改善が求められる。そこで本発明に使用するY2SiO5:Ce3+蛍光体は輝度寿命の改善を図るため、蛍光体粒子の表層に金属酸化物が被膜されている。本発明は、金属酸化物の被膜によって輝度寿命を改善したY2SiO5:Ce3+蛍光体を短残光ZSM蛍光体とYAG:Ce蛍光体とを組み合わせることで、緑色蛍光体層の輝度、輝度寿命、色度および残光時間の改善を図る。
【0048】
5−3−2、緑色蛍光体の製造方法
次に緑色蛍光体材料の製造方法について説明する。短残光ZSM蛍光体は、従来の固相反応法や液相法や液体噴霧法を用いて作成される。固相法は酸化物や炭酸化物を原料として結晶成長を促進させるためにフラックスを添加して焼成し合成する方法である。液相法は、有機金属塩や硝酸塩を水溶液中で加水分解し、必要に応じてアルカリなどを加えて沈殿させて生成した蛍光体材料の前駆体を熱処理して作成する方法である。また液体噴霧法は、蛍光体材料の原料が入った水溶液を加熱された炉中に噴霧して作成する方法である。
【0049】
本実施の形態で使用する短残光ZSM蛍光体は、特に作成方法に影響を受けるものではないが、ここでは固相反応法による製法について述べる。原料としては、酸化亜鉛(ZnO)、酸化珪素(SiO2)、炭酸マンガン(MnCO3)を用いる。これらを蛍光体組成に合うように混合し、大気雰囲気中にて1100〜1350℃で4時間焼成する。これをさらに混合して600〜900℃で焼成してもよい。また、焼成時の雰囲気は、窒素雰囲気中、水素と窒素の混合雰囲気でもよい。
【0050】
次にYAG:Ce蛍光体については以下の方法で作成する。酸化イットリウム(Y23)と酸化ガドリニウム(Gd23)と酸化アルミニウム(Al23)と酸化セリウム(CeO2)とを蛍光体組成に合うように混合する。混合物を空気中にて1000〜1200℃で焼成し、さらに酸素と窒素を含む混合ガス雰囲気にて1200〜1400℃で焼成し作成する。
【0051】
次にY2SiO5:Ce3+蛍光体の作成方法について述べる。原料としては、酸化イットリウム(Y23)と酸化珪素(SiO2)と酸化セリウム(CeO2)を用い、これらを蛍光体組成に合うように混合し、大気雰囲気中にて1200〜1400℃で焼成し作成する。焼成時の雰囲気は、窒素雰囲気中、水素と窒素の混合雰囲気でもよい。
【0052】
5−3−3、緑色蛍光体の粒子表面に酸化マグネシウム(MgO)を被覆する方法
次に、Y2SiO5:Ce3+蛍光体の蛍光体粒子表面に金属酸化物を被覆する方法について説明する。金属酸化物の一例として、Y2SiO5:Ce3+蛍光体に酸化マグネシウム(MgO)を被覆する場合について述べる。硝酸マグネシウム(MgNO3)を水またはアルカリ水溶液中に溶解する。その溶解液中に被覆されていないY2SiO5:Ce3+蛍光体を投入して混合液を作成し、加熱しながら攪拌する。加熱温度は30℃未満では金属塩が溶液中に析出してしまう。また60℃を超える温度では、Y2SiO5:Ce3+蛍光体が酸やアルカリによって溶解してしまう。このため、30℃以上かつ60℃以下の温度範囲内で加熱、攪拌する。この攪拌により溶解液中のマグネシウム陽イオンが負帯電性のY2SiO5:Ce3+蛍光体に密着することで被覆が行われる。この混合液を濾過、乾燥し、その後この乾燥物を空気中において400℃〜800℃で焼成することで酸化マグネシウム(MgO)が表面に被覆されたY2SiO5:Ce3+蛍光体が完成する。なお、酸化マグネシウム(MgO)の被覆量は最初に投入する硝酸塩の量で決定される。
【0053】
被膜材料については、酸化マグネシウム(MgO)に限らず、酸化ストロンチウム(SrO)や酸化アルミニウム(Al23)、酸化バリウム(BaO)などの金属酸化物を使用してもよい。他の金属酸化物で被覆される場合も原料の硝酸塩を適宜変更して上記手法を用いる。すると、同様にY2SiO5:Ce3+蛍光体の蛍光体粒子表面に金属酸化物を被覆することができる。
【0054】
各種合成した短残光ZSM蛍光体、YAG:Ce蛍光体、Y2SiO5:Ce3+蛍光体の混合は、乾式粉体のまま混合される乾式混合、あるいは溶媒を用いる湿式混合のいずれで行われてもよい。乾式混合を行う場合は、例えばジルコニアボールをメディアに用いて、ボールミル、媒体攪拌ミル、遊星型ボールミル、ジェットミル、V型混合機等を用いて混合される。湿式混合を行う場合は、溶媒として水やアルコール等を用い、これら溶媒と蛍光体を懸濁液の状態とし、上記同様ボールミル等で混合した後、篩等でメディアを分離し、減圧乾燥や真空乾燥、スプレードライなどの乾燥法によって懸濁液から水分を除去して乾燥混合蛍光体が得られる。
【0055】
6、PDP評価試験結果
次に、上記に示した各色の蛍光体を含む蛍光体層を備えたPDPについて項目ごとに評価を行った。図6、図7、図8は評価を行った際の結果を表している。
【0056】
図6は、本発明の実施形態における緑色蛍光体のうち、酸化マグネシウム(MgO)が被膜されたY2SiO5:Ce3+蛍光体を含む緑色蛍光体層を備えたPDP10の評価結果を示している。図7は、本発明の実施形態における緑色蛍光体を含む緑色蛍光体層を備えた各PDP10の評価結果および比較例品におけるPDP10の評価結果を示している。図8は、図7の評価結果に基づいてよりわかりやすくまとめたものである。作成した緑色蛍光体の評価については、下記に説明する項目に関して評価を行った。なお、図6に示すMg残存量(ppm)とは、母体であるY2SiO5:Ce3+蛍光体の重量(g)に対してY2SiO5:Ce3+蛍光体の蛍光体粒子表面に被覆された酸化マグネシウムのマグネシウム(Mg)量(g)を重量比率(ppm)で表している。これは、酸化マグネシウム(MgO)が被膜された場合に、蛍光体粒子表面に被覆された後のマグネシウム(Mg)の量がICP発光分光分析法にて定量評価されるからである。
【0057】
6−1、輝度評価
本実施の形態において、PDP10の初期輝度(%)から相対輝度を示している。初期輝度とは、緑色の蛍光体層のみを発光させて、輝度を測定したものである。各々の比較品および実施例における輝度は、従来品である比較品1(Zn2SiO4:Mn)を100とした場合の相対値で示している。輝度については、全てコニカミノルタ製分光放射輝度計CS2000にて測定を行った。輝度については、従来品に対する相対値100以上が望ましい。図8に示すように、相対輝度が90未満を×、90以上100未満を△、100以上110未満を○、110以上を◎と評価した。
【0058】
6−2、色度評価
本実施の形態において、PDP10の色度とは、緑色の蛍光体層のみを発光させて、その色度を測定したものである。色度についても、輝度と同様コニカミノルタ製分光放射輝度計CS2000にて測定を行っている。なお緑色の色度については、ハイビジョン放送の規格(ITU−R BT.709)で定められる緑色蛍光体の色度はxが0.30、yが0.60であるため、色度xは0.300以下、色度yは0.600以上が望まれる。色度xが0.300以下、色度yが0.600以上を満たす場合、ハイビジョン放送の規格で定められる緑色蛍光体の色度の領域を満たしているからである。図8に示すように、色度xに関して0.300未満を◎、0.300を○、0.300を越える値について×と評価した。また、図8に示すように、色度yに関して0.600未満を×、0.600を○、0.600を越える値について◎と評価した。
【0059】
6−3、残光評価
本実施の形態において、PDP10の残光値(ms)とは、緑色の蛍光体層のみを発光させて、発光させるための電圧パルスを停止した後にも緑の発光が減衰しながらも続くことをいう。電圧パルスを停止する前の発光強度を100としたときに、その発光強度が10分の1まで低下するまでの時間を1/10残光といい、本実施の形態における残光値とは1/10残光のことである。残光値については、実際に作成したPDP10を駆動回路において点灯させ、検出器として光電子倍増管と、検出器からの信号を増幅するオシロスコープにて測定を行った。残光値については3.0msec以下が望ましい。図8に示すように、3.0msec以下を◎、3.0msecを越える残光時間については×と評価した。
【0060】
6−4、輝度寿命評価
本実施の形態において、PDP10の輝度維持率とは、PDPを白色で約2000時間点灯させたときの緑色の輝度と初期輝度を比較し、緑色輝度維持率を算出したものである。約2000時間点灯させたときの緑色の輝度も同様にコニカミノルタ製分光放射輝度計CS2000にて測定を行っている。焼き付きを軽減させるには、緑色の輝度維持率は85%以上が望ましい。図8に示すように、90以上を◎、85以上90未満を○、80より大きく85未満を△、80以下を×と評価した。
【0061】
6−5、総合評価
6−1から6−4の各項目を総合して評価した結果を図8の一番右の欄に示した。◎を3点、○を2点、△を1点、×を0点とし、合計した点数が12以上である場合を◎、9以上11以下である場合を○、7以上8以下である場合を△、6以下である場合を×と評価した。
【0062】
7、各試験対象品の仕様および性能評価結果
7−1、蛍光体表層に金属酸化物を被覆したY2SiO5:Ce3+蛍光体
本発明の実施形態における蛍光体表層に酸化マグネシウム(MgO)を被覆したY2SiO5:Ce3+蛍光体を備えたPDP10の評価結果を図6に示す。比較品1として蛍光体粒子表面に何も被覆されていないY2SiO5:Ce3+蛍光体を、実施例1〜5はY2SiO5:Ce3+蛍光体粒子表面に酸化マグネシウム(MgO)を被覆し、そのマグネシウム(Mg)の被覆量を100ppmから10000ppmまで変化させたPDP10のパネル評価結果を示している。マグネシウム(Mg)のコート処理量(ppm)とは、製造条件中のY2SiO5:Ce3+蛍光体の粉体における重量(wt%)に対するマグネシウムの重量(wt%)の割合をppmオーダーで示している。そして、マグネシウム(Mg)残存量はマグネシウム(Mg)元素が実際被覆された重量(wt%)の割合(ppm)を蛍光体作成後にICP発光分光分析法で定量評価したものである。つまり、マグネシウム(Mg)のコート処理量からマグネシウム(Mg)の残存量を差し引いた値は、Y2SiO5:Ce3+蛍光体の蛍光体粒子表面に被覆されなかったマグネシウム(Mg)の重量(wt%)の割合を示す。したがって、マグネシウム(Mg)残存量(ppm)の結果から、仕込み量と実際のマグネシウム(Mg)の被覆量の差が小さいことがわかる。
【0063】
7−1−0、比較品1
比較品1は、母体であるY2SiO5:Ce3+蛍光体に対してマグネシウム(Mg)をコーティングしていない蛍光体である。比較品1の輝度を100として、下記実施例1〜5を評価した。また、2000時間PDPを点灯した後の緑色の輝度維持率は80.0%であった。
【0064】
7−1−1、実施例1
実施例1は母体であるY2SiO5:Ce3+蛍光体に対してマグネシウム(Mg)を100ppmコーティング処理し、98ppmのマグネシウム(Mg)が実際被覆されている。つまり、Y2SiO5:Ce3+蛍光体に98ppmのマグネシウム(Mg)を含む酸化マグネシウム(MgO)が被覆されている。比較品1と比較して、相対輝度、輝度維持率ともにあまり変化はなかった。
【0065】
7−1−2、実施例2
実施例2は母体であるY2SiO5:Ce3+蛍光体に対してマグネシウム(Mg)を1000ppmコーティング処理し、987ppmのマグネシウム(Mg)が実際被覆されている。つまり、Y2SiO5:Ce3+蛍光体に987ppmのマグネシウム(Mg)を含む酸化マグネシウム(MgO)が被覆されている。比較品1と比較して輝度はあまり変化しなかったが、輝度維持率は4%上昇した。
【0066】
7−1−3、実施例3
実施例3は母体であるY2SiO5:Ce3+蛍光体に対してマグネシウム(Mg)を3000ppmコーティング処理し、2985ppmのマグネシウム(Mg)が実際被覆されている。つまり、Y2SiO5:Ce3+蛍光体に2985ppmのマグネシウム(Mg)を含む酸化マグネシウム(MgO)が被覆されている。比較品1と比較して相対輝度はあまり変化しなかったが、輝度維持率は7%上昇した。
【0067】
7−1−4、実施例4
実施例4は母体であるY2SiO5:Ce3+蛍光体に対してマグネシウム(Mg)を5000ppmコーティング処理し、4896ppmのマグネシウム(Mg)が実際被覆されている。つまり、Y2SiO5:Ce3+蛍光体に4896ppmのマグネシウム(Mg)を含む酸化マグネシウム(MgO)が被覆されている。比較品1と比較して相対輝度はあまり変化しなかったが、輝度維持率は10%上昇した。
【0068】
7−1−5、実施例5
実施例5は母体であるY2SiO5:Ce3+蛍光体に対してマグネシウム(Mg)を10000ppmコーティング処理し、9560ppmのマグネシウム(Mg)が実際被覆されている。つまり、Y2SiO5:Ce3+蛍光体に9560ppmのマグネシウム(Mg)を含む酸化マグネシウム(MgO)が被覆されている。
【0069】
7−1−6、まとめ1
以上の結果より、酸化マグネシウムの被覆についてまとめる。緑色発光の初期輝度については、実施例1〜4のマグネシウム(Mg)を100〜5000ppm処理して酸化マグネシウムを被覆した場合、比較品1に比べ輝度に大きな変化は無い。
【0070】
実施例5に示すように、相対輝度が比較品1に比べ低下したのは非発光の酸化マグネシウム(MgO)が母体である蛍光体に対して多くなったためと考えられる。PDPの輝度維持率(%)については、比較品1に比べ、実施例1〜5のいずれもが高い。特に、5000ppmで輝度維持率は最も高い値を示している。初期輝度が高く、なおかつ輝度維持率を高くするには、マグネシウム(Mg)の被覆量が100ppm以上5000ppm以下であることが望ましい。
【0071】
7−2、蛍光体組成およびその1〜3種の蛍光体を各配合比で混合した緑色蛍光体
次に、蛍光体組成およびその1〜3種の蛍光体を各配合比で混合した緑色蛍光体を用いたPDP10における各項目の評価結果を説明する。
【0072】
図7は、蛍光体組成およびその1〜3種の蛍光体を各配合比で混合した緑色蛍光体を用いたPDP10において、緑色発光の初期輝度の相対値、緑色の色度、緑色の1/10残光値を評価している。具体的には、比較品1は緑色蛍光体として短残光ZSM蛍光体のみを用いたPDP10であり、比較品2はY3Al512:Tb3+蛍光体のみ、比較品3はY2SiO5:Tb3+のみ、比較品4はYAG:Ce蛍光体のみ、比較品5は短残光ZSM蛍光体とYAG:Ce蛍光体、比較品6はY2SiO5:Ce3+蛍光体のみ、比較品7は比較品1の短残光ZSM蛍光体と比較品6のY2SiO5:Ce3+蛍光体、実施品8〜実施品13は比較品1の短残光ZSM蛍光体と比較品4のYAG:Ce蛍光体と比較品6のY2SiO5:Ce3+蛍光体とを用いたPDP10、実施品14は比較品1の短残光ZSM蛍光体と比較品4のYAG:Ce蛍光体と比較品6のY2SiO5:Ce3+蛍光体にさらにY2SiO5:Tb3+を混合した場合のPDP10、実施品15は金属酸化物として酸化マグネシウムを5000ppm被膜したY2SiO5:Ce3+蛍光体、実施品16〜22は比較品1の短残光ZSM蛍光体と比較品4のYAG:Ce蛍光体と実施品15の金属酸化物として酸化マグネシウムを5000ppm被膜したY2SiO5:Ce3+蛍光体とを用いたPDP10、実施品23は実施品15〜22の蛍光体にさらにY2SiO5:Ce3+蛍光体を混合した場合のPDP10である。
【0073】
7−2−1、比較品1について
比較品1は、発光中心であるMn濃度を調整して残光値を5.0msecとした場合の短残光ZSM蛍光体を用いたPDP10である。比較品1におけるPDP10の緑色輝度を100とし、輝度の基準値とする。比較品1における緑色の色度はx=0.240、y=0.710である。輝度維持率は80.0%であった。
【0074】
7−2−2、比較品2について
比較品2はTbを発光中心とする緑色蛍光体Y3Al512:Tb3+を用いたPDP10である。Y3Al512:Tb3+は、相対輝度が130であり、比較品1と比較して高い。しかし、色度x=0.370であり、色度y=0.565であるため緑の色域において望ましくない。また、残光値が5.7msであり、比較品1より長く、望ましい残光時間を満たしていない。輝度維持率は95.0%であった。
【0075】
7−2−3、比較品3について
比較品3は、Tbを発光中心とする緑色蛍光体Y2SiO5:Tb3+を用いたPDP10である。Y2SiO5:Tb3+は、PDPの輝度については比較品2と比較して低いが、比較品1と比較してより高い値を示している。また、色度に関して、色度x=0.317であり、色度y=0.608であるため、比較品2と比較して望ましい緑の色域により近い。しかし、残光値が5.7msecであるため、立体画像表示装置に求められる3.0msec以下を達成することが出来ない。
【0076】
7−2−4、比較品4について
比較品4は、YAG:Ce蛍光体を用いたPDP10である。発光中心をCe3+とすることで輝度は比較品1、3より高く、比較品2と同等である。残光時間においては、0.1msecの残光値を得ることが出来た。しかし、色度は、x=0.399、y=0.545であり、比較品2より悪い。輝度維持率は100%で、長時間点灯しても輝度は低下しなかった。
【0077】
7−2−5、比較品5について
比較品5は、比較品1の短残光ZSM蛍光体と比較品5のYAG:Ce蛍光体とを混合した場合のPDP10における緑色蛍光体の各々の特性を示す。相対輝度は比較品1より高く、残光値が3.5msecまで低減することが確認できた。しかし、立体画像表示装置において残光値は3.0msec以下が求められるため、好適ではない。
【0078】
7−2−6、比較品6について
比較品6は、Y2SiO5:Ce3+蛍光体を用いたPDP10における緑色蛍光体の特性を示す。比較品6のPDP10における緑色蛍光体は、350nm以上450nm未満に発光ピークを持つCe3+付活紫外発光蛍光体である。この蛍光体は、緑色蛍光体では無いため、紫外発光のため色度xが小さく、YAG:Ce蛍光体によって増大した色度xを低下させる効果を持つ。また、残光値も1.0msec以下であるため含有率を高めると、残光値を低下させる効果を持つ。しかし、緑としての輝度が他の比較品と比較して極めて低い。しかし、他の蛍光体と混合して使用する場合、例えば短残光ZSM蛍光体やYAG:Ce蛍光体を紫外発光によって再励起することで効率を高める。その結果、パネルの輝度としては、大きく低下しないことがわかった。
【0079】
7−2−7、比較品7について
比較品7は、比較品1である短残光ZSM蛍光体と比較品6のY2SiO5:Ce3+蛍光体とを混合した場合のPDP10における緑色蛍光体の特性を示す。Y2SiO5:Ce3+蛍光体の配合比を40wt%にすると、残光値は3.0msec以下を達成できるが、輝度が比較品1より低く、また色度yも0.600以下となり、この組み合わせでは充分な特性を得ることが出来ない。
【0080】
7−2−8、実施品8〜16について
実施品8〜16は、短残光ZSM蛍光体と、YAG:Ce蛍光体とY2SiO5:Ce3+蛍光体とを用いたPDP10であり、それぞれの蛍光体の配合比を変化させている。
【0081】
7−2−8−1、実施品8について
実施品8は、短残光ZSM蛍光体とYAG:Ce蛍光体とY2SiO5:Ce3+蛍光体とをそれぞれ60wt%、32wt%、8wt%混合した緑色蛍光体を用いてPDP10の評価を行った。相対輝度は119で100以上を満たし、色度はx=0.300、y=0.655で望ましい色域を満たしている。また、残光値は3.0msecで立体画像表示装置において残光値は3.0msec以下が求められるため、好適範囲を満たしている。さらに輝度維持率は、86.4%で好適な範囲を満たしている。
【0082】
7−2−8−2、実施品9について
実施品9は、短残光ZSM蛍光体とYAG:Ce蛍光体とY2SiO5:Ce3+蛍光体とをそれぞれ60wt%、30wt%、10wt%混合した緑色蛍光体を用いてPDP10の評価を行った。相対輝度は117で100以上を満たし、色度はx=0.295、y=0.647で望ましい色域を満たしている。また、残光値は3.0msecで立体画像表示装置において残光値は3.0msec以下が求められるため、好適範囲を満たしている。さらに輝度維持率は、86.0%で好適な範囲を満たしている。
【0083】
7−2−8−3、実施品10について
実施品10は、短残光ZSM蛍光体とYAG:Ce蛍光体とY2SiO5:Ce3+蛍光体とをそれぞれ60wt%、25wt%、15wt%混合した緑色蛍光体を用いてPDP10の評価を行った。相対輝度は110で100以上を満たし、色度はx=0.284、y=0.627で望ましい色域を満たしている。また、残光値は3.0msecで立体画像表示装置において残光値は3.0msec以下が求められるため、好適範囲を満たしている。さらに輝度維持率は、85.0%で好適な範囲を満たしている。
【0084】
7−2−8−4、実施品11について
実施品11は、短残光ZSM蛍光体とYAG:Ce蛍光体とY2SiO5:Ce3+蛍光体とをそれぞれ60wt%、20wt%、20wt%混合した緑色蛍光体を用いてPDP10の評価を行った。相対輝度は104で100以上を満たし、色度はx=0.273、y=0.607で望ましい色域を満たしている。また、残光値は3.0msecで立体画像表示装置において残光値は3.0msec以下が求められるため、好適範囲を満たしている。さらに輝度維持率は、84.0%で好適な範囲を若干下回る値となった。
【0085】
7−2−8−5、実施品12について
実施品12は、短残光ZSM蛍光体とYAG:Ce蛍光体とY2SiO5:Ce3+蛍光体とをそれぞれ60wt%、15wt%、25wt%混合した緑色蛍光体を用いてPDP10の評価を行った。相対輝度は98で100を若干下回る値となった。また、色度はx=0.262、y=0.587で望ましい色域を満たしている。また、残光値は3.0msecで立体画像表示装置において残光値は3.0msec以下が求められるため、好適範囲を満たしている。さらに輝度維持率は、83.0%で好適な範囲を若干下回る値となった。
【0086】
7−2−8−6、実施品13について
実施品13は、短残光ZSM蛍光体とYAG:Ce蛍光体とY2SiO5:Ce3+蛍光体とをそれぞれ10wt%、10wt%、80wt%混合した緑色蛍光体を用いてPDP10の評価を行った。相対輝度は40で100を大きく下回る値となった。また、色度はx=0.205、y=0.250でyの値が望ましい色域を満たしていない。また、残光値は0.6msecで立体画像表示装置において残光値は3.0msec以下が求められるため、好適範囲を満たしている。さらに輝度維持率は、82.0%で好適な範囲を若干下回る値となった。
【0087】
7−2−8−7、実施品8〜13について
実施品8〜実施品13についてまとめる。PDP10の輝度において、Y2SiO5:Ce3+蛍光体の含有率が20wt%以下である場合、PDP10の輝度は比較品1より高い。また、残光値において、実施品8〜13は、全て3.0msec以下のパネル残光値を得ることが出来た。また、Y2SiO5:Ce3+蛍光体の含有率を8wt%以上とすることで、短残光化を実現しながら、色度x=0.300以下、かつ、y=0.600以上を満たす。しかし、実施品12に示すようにY2SiO5:Ce3+蛍光体の含有率が25wt%以上の場合、PDP10の相対輝度が100を下回る。実施品13では、実施品12よりもさらにPDP10の相対輝度が小さい。したがって、より好ましいY2SiO5:Ce3+蛍光体の含有率は、8wt%以上20wt%以下が望ましい。
【0088】
7−2−9、実施品14について
実施品14は、短残光ZSM蛍光体とYAG:Ce蛍光体とY2SiO5:Ce3+蛍光体とを組み合わせた緑色蛍光体に、さらにY2SiO5:Tb3+蛍光体を混合した場合のPDP10における緑色蛍光体の特性を示す。残光値は3.0msec以上であるが、5.0msec以下と短く、これまでの実施品よりさらに高輝度で、高色域な緑色蛍光体を得ることが出来た。
【0089】
7−2−10、実施品15について
実施品15は、酸化マグネシウム(MgO)を5000ppm被覆したY2SiO5:Ce3+蛍光体を用いたPDP10について、評価を行った。相対輝度は25で極めて低い値となった。色度はx=0.193、y=0.163でy値が望ましい色域を満たしていない。また、残光値は0.1msecで極めて残光時間が短く、立体画像表示装置において好適範囲を満たしている。さらに輝度維持率は、90.0%で好適な範囲を満たしており、酸化マグネシウム(MgO)を被覆していない比較品6よりも高い値を示した。
【0090】
7−2−11、実施品16について
実施品16は、短残光ZSM蛍光体と、酸化マグネシウム(MgO)を5000ppm被覆したY2SiO5:Ce3+蛍光体を用いたPDP10について、評価を行った。相対輝度は79で低い値となった。色度はx=0.228、y=0.527でy値が望ましい色域を満たしていない。また、残光値は3.0msecで残光時間が短く、立体画像表示装置において好適範囲を満たしている。さらに輝度維持率は、84.0%で好適な範囲を満たしていないものの、酸化マグネシウム(MgO)を被覆していない比較品7よりも高い値を示した。
【0091】
7−2−12、実施品17〜22について
実施品17〜22は、輝度維持率を改善するため金属酸化物として酸化マグネシウム(MgO)を5000ppm被覆したY2SiO5:Ce3+蛍光体と、短残光ZSM蛍光体と、YAG:Ce蛍光体とを用いたPDP10であり、それぞれの蛍光体の配合比を実施品8〜13と同様にしている。
【0092】
7−2−12−1、実施品17について
実施品17は、短残光ZSM蛍光体と、YAG:Ce蛍光体と、酸化マグネシウム(MgO)を5000ppm被覆したY2SiO5:Ce3+蛍光体とをそれぞれ60wt%、32wt%、8wt%混合した緑色蛍光体を用いてPDP10の評価を行った。相対輝度は119で100以上を満たし、色度はx=0.300、y=0.655で望ましい色域を満たしている。また、残光値は3.0msecで立体画像表示装置において残光値は3.0msec以下が求められるため、好適範囲を満たしている。さらに輝度維持率は、87.2%で好適な範囲を満たしており、酸化マグネシウム(MgO)を被覆していない実施品8よりも高い。
【0093】
7−2−12−2、実施品18について
実施品18は、短残光ZSM蛍光体とYAG:Ce蛍光体とY2SiO5:Ce3+蛍光体とをそれぞれ60wt%、30wt%、10wt%混合した緑色蛍光体を用いてPDP10の評価を行った。相対輝度は117で100以上を満たし、色度はx=0.295、y=0.647で望ましい色域を満たしている。また、残光値は3.0msecで立体画像表示装置において残光値は3.0msec以下が求められるため、好適範囲を満たしている。さらに輝度維持率は、87.0%で好適な範囲を満たしており、酸化マグネシウム(MgO)を被覆していない実施品9よりも高い。
【0094】
7−2−12−3、実施品19について
実施品19は、短残光ZSM蛍光体とYAG:Ce蛍光体とY2SiO5:Ce3+蛍光体とをそれぞれ60wt%、25wt%、15wt%混合した緑色蛍光体を用いてPDP10の評価を行った。相対輝度は110で100以上を満たし、色度はx=0.284、y=0.627で望ましい色域を満たしている。また、残光値は3.0msecで立体画像表示装置において残光値は3.0msec以下が求められるため、好適範囲を満たしている。さらに輝度維持率は、86.5%で好適な範囲を満たしており、酸化マグネシウム(MgO)を被覆していない実施品10よりも高い。
【0095】
7−2−12−4、実施品20について
実施品20は、短残光ZSM蛍光体とYAG:Ce蛍光体とY2SiO5:Ce3+蛍光体とをそれぞれ60wt%、20wt%、20wt%混合した緑色蛍光体を用いてPDP10の評価を行った。相対輝度は104で100以上を満たし、色度はx=0.273、y=0.607で望ましい色域を満たしている。また、残光値は3.0msecで立体画像表示装置において残光値は3.0msec以下が求められるため、好適範囲を満たしている。さらに輝度維持率は、86.0%で好適な範囲を満たしており、酸化マグネシウム(MgO)を被覆していない実施品11よりも高い。
【0096】
7−2−12−5、実施品21について
実施品21は、短残光ZSM蛍光体とYAG:Ce蛍光体とY2SiO5:Ce3+蛍光体とをそれぞれ60wt%、15wt%、25wt%混合した緑色蛍光体を用いてPDP10の評価を行った。相対輝度は98で100を若干下回る値となった。また、色度はx=0.262、y=0.587で望ましい色域を満たしている。また、残光値は3.0msecで立体画像表示装置において残光値は3.0msec以下が求められるため、好適範囲を満たしている。さらに輝度維持率は、85.5%で好適な範囲を満たしており、酸化マグネシウム(MgO)を被覆していない実施品12よりも高い。
【0097】
7−2−12−6、実施品22について
実施品22は、短残光ZSM蛍光体とYAG:Ce蛍光体とY2SiO5:Ce3+蛍光体とをそれぞれ10wt%、10wt%、80wt%混合した緑色蛍光体を用いてPDP10の評価を行った。相対輝度は40で100を大きく下回る値となった。また、色度はx=0.205、y=0.250でyの値が望ましい色域を満たしていない。また、残光値は0.6msecで立体画像表示装置において残光値は3.0msec以下が求められるため、好適範囲を満たしている。さらに輝度維持率は、90.0%で好適な範囲を満たしており、酸化マグネシウム(MgO)を被覆していない実施品13よりも高い。
【0098】
7−2−12−7、実施品18〜22のまとめ
実施品18〜22についてまとめる。実施品18〜22のPDP10は実施品8〜13に比べ、輝度、色度、残光が同等で、輝度維持率が高い結果が得られた。以上により、短残光ZSM蛍光体とYAG:Ce蛍光体+と酸化マグネシウム(MgO)の被覆を行ったY2SiO5:Ce3+とを組み合わせた緑色蛍光体を用いることで、従来の蛍光体に比べ、輝度と色度と残光値および輝度寿命に優れる緑色蛍光体を提供することが可能になる。
【0099】
7−2−13、実施品23について
実施品23は、短残光ZSMとYAG:Ce蛍光体とY2SiO5:Ce3+蛍光体とさらにY2SiO5:Tb3+蛍光体を混合した場合のPDP10における緑色蛍光体の特性を示す。相対輝度は、残光値、色域ともに実施品14と同様の値を示した。輝度維持率においては、94.7で好適な範囲を満たしており、酸化マグネシウム(MgO)を被覆していない実施品14よりも高い値を示した。
【0100】
7−3、実施形態のまとめ
上記実施形態において特徴的な部分を以下に列記する。なお、上記実施形態に含まれる発明は、以下に限定されるものではない。なお、各構成の後ろに括弧で示した蛍光体組成は、各構成の具体例である。各構成はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0101】
(1)
少なくとも前面側が透明な一対の基板を基板間に放電空間が形成されるように対向配置するとともに放電空間を複数に仕切るための隔壁を少なくとも一方の基板に配置し、かつ隔壁により仕切られた前記放電空間で放電が発生するように前記基板に電極群を配置するプラズマディスプレイ装置(100)であって、緑色蛍光体が、1/10残光時間が5msec以下の緑色蛍光体Zn2SiO4:Mn2+と、490nm以上560nm未満の波長領域に発光ピークを持つ緑色蛍光体Y3Al512:Ce3+と、350nm以上450nm未満に発光ピークを持つ紫外発光蛍光体Y2SiO5:Ce3+と、を含む蛍光体であることを特徴とする。これにより、初期輝度が高く、色域が広く、残光時間が3.0msec以下の立体画像表示に好適なプラズマディスプレイ装置を提供することが可能となる。
【0102】
(2)
(1)に記載のプラズマディスプレイ装置(100)において、Y2SiO5:Ce3+の混合比率は1wt%以上80wt%以下の範囲であることを特徴とする。残光時間を3.0msec以下に短縮したクロストークの無い立体画像表示装置に好適なPDP装置を提供することが可能となる。
【0103】
(3)
(1)に記載のプラズマディスプレイ装置(100)において、Y2SiO5:Ce3+の混合比率は1wt%以上20wt%以下の範囲であることを特徴とする。これにより、Y3(Al,Ga)512:Ce3+によって上昇した色度xの値を適度に低減することができるため色域が広く、初期輝度が高く、かつ残光時間を3.0msec以下に短縮したクロストークの無い立体画像表示装置に好適なPDP装置を提供することが可能となる。
【0104】
(4)
(1)に記載のプラズマディスプレイ装置(100)において、Y2SiO5:Ce3+の蛍光体粒子の表層には金属酸化物(MgO、SrO、Al23、BaO)が被膜されていることを特徴とする。これにより、Y3Al512:Ce3+蛍光体の輝度寿命を改善することによって(1)〜(3)で述べた緑色蛍光体よりもさらに長寿命なPDP装置を提供することが可能になる。
【0105】
(5)
(1)に記載のプラズマディスプレイ装置(100)において、さらにY3Al512:Tb3+またはY2SiO5:Tb3+のいずれかを含む蛍光体であることを特徴とする。これにより、残光時間を5.0msec以下で(1)〜(4)で述べた緑色蛍光体よりもさらに高輝度で、色域のよいPDP装置を提供することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
以上説明したように、本発明によれば、短残光特性を有し、高輝度かつ高色域表示が可能なプラズマディスプレイ装置を実現でき、高精細画像表示装置や立体画像表示装置などに有用である。
【符号の説明】
【0107】
10 PDP
20 前面板
21 前面ガラス基板
22 走査電極
23 維持電極
24 表示電極対
25 誘電体層
26 保護層
30 背面板
31 背面ガラス基板
32 アドレス電極
33 下地誘電体層
34 隔壁
35R 赤色蛍光体層
35G 緑色蛍光体層
35B 青色蛍光体層
36 放電セル
40 駆動回路
41 表示ドライバ回路
42 表示スキャンドライバ回路
43 アドレスドライバ回路
44 コントローラ
100 プラズマディスプレイ装置
200 立体画像表示装置
210 映像視聴用眼鏡
220 同期信号送信部
230 同期信号受信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも前面側が透明な一対の基板を基板間に放電空間が形成されるように対向配置するとともに放電空間を複数に仕切るための隔壁を少なくとも一方の基板に配置し、かつ隔壁により仕切られた前記放電空間で放電が発生するように前記基板に電極群を配置するプラズマディスプレイ装置であって、1/10残光時間が5msec以下のZn2SiO4:Mn2+と、490nm以上560nm未満の波長領域に発光ピークを持つY3Al512:Ce3+と、350nm以上450nm未満に発光ピークを持つ紫外発光蛍光体Y2SiO5:Ce3+と、を含む緑色蛍光体を備えることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項2】
前記Y2SiO5:Ce3+の前記緑色蛍光体に対する混合比率は、1wt%以上80wt%以下であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイ装置。
【請求項3】
前記Y2SiO5:Ce3+の前記緑色蛍光体に対する混合比率は、1wt%以上20wt%以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイ装置。
【請求項4】
前記Y2SiO5:Ce3+は、蛍光体粒子表層が金属酸化物(MgO、SrO、Al2O3、BaO)で被膜が成されていることを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイ装置。
【請求項5】
前記緑色蛍光体は、その金属酸化物がMgOである場合、その被膜量は蛍光体に対して100ppm以上5000ppm以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイ装置。
【請求項6】
前記緑色蛍光体は、さらにY3Al512:Tb3+またはY2SiO5:Tb3+のいずれかを含むことを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−224808(P2012−224808A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95759(P2011−95759)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】