説明

プラズマ殺菌装置及びその装置を使ったプラズマ殺菌方法

【課題】殺菌処置室内に水蒸気発生用の水をセットしておき、この水を蒸発させつつ、プラズマを発生させて殺菌対象体を殺菌することで、装置のコンパクト化を図る。
【解決手段】プラズマを発生する殺菌処置室と、殺菌処置室内に配置され、殺菌対象体を支持する受台と、受台に連結され、受台に直流電圧を印加する電圧印加手段と、殺菌処置室内に接続され、殺菌処置室内を真空引き真空手段と、殺菌処置室に配置された水容器と、水容器の水分を殺菌処置室内に放出する放出部に設けられ、殺菌処置室内に向けて放出される水分の放出速度を低速にする規制部材と、真空手段及び電圧印加手段の作動を制御する制御手段とを備え、制御手段によって、真空手段を作動させて真空引きを行い、殺菌処置室が所定圧力になった時点で、電圧印加手段を作動させて所定電圧を印加して所定時間保持することで、プラズマを発生させて、受台に載置された殺菌対象体を殺菌する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを使用して、医療器具などの殺菌処理体に付着する菌を殺菌或いは滅菌(以下殺菌と称す)する装置及びその装置を使った殺菌方法に関し、特にプラズマベースのイオンを殺菌処理体に注入して医療器具などに付着する菌を殺菌する装置及びその装置のよる殺菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、病院や歯科医院等で使用される医療器具や容器等に対して、殺菌、滅菌が必要とされるようになっている。その対象器具としては、例えば、点滴用容器、薬瓶、純水封入容器のような内部で菌が繁殖してはならない容器、メスのように外部に菌が付着していてはならない医療用器具、フラスコのように内外部に菌が存在してはならない実験用器具等が挙げられる。
【0003】
また、政府要人に宛てられた郵便封筒の表面に極度に有害である毒素を放出する細菌を付着させる犯罪に対処することは、国際的テロに対抗するために緊要の課題になっている。
【0004】
このような殺菌対象体の内面を含む表面に存在する菌、又は、日常的物品に付着している菌、カビの付着数は、確実に且つ激減的に減少させられることが重要である。
【0005】
従来、このような医療器具などの殺菌対象体を殺菌する技術として、種々の方法が検討されてきている。
【0006】
例えば、高圧蒸気や乾燥した熱い空気を利用する方法が最も広く採用されているが、このような方法では、蒸気又は熱による医療器具の変形や器具表面の酸化が生じる恐れがあり、又確実に殺菌できない可能性もある。
【0007】
また、エチレンオキサイドガスやホルマリンを使用する方法では、殺菌対象体に毒性のある残存物を残す恐れがあり、殺菌対象体と接触する患者に深刻な悪影響を及ぼす恐れがある。そのために、殺菌対象体に残る毒性の残存物を取り除く追加工程が必要となり、費用又は時間が多く掛かる欠点を有する。
【0008】
このような欠点を解決する方法の1つとして、プラズマイオンを殺菌対象体に注入して殺菌するシステムが知られている。そのプラズマシステムにおいて、反応活性種の前駆体として過酸化水素を利用する方法が知られている(特許文献1)。アルゴンガスを利用して、プラズマイオン注入して殺菌する手法も知られている(特許文献2)。過酸化水素を使わないで水蒸気を利用して、プラズマイオン注入して殺菌する手法も知られている(特許文献3)。
【特許文献1】特開平2−62261号公報
【特許文献2】特許第2774193号公報
【特許文献3】特開2003−310719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1のように過酸化水素を使用するものでは、過酸化水素の購入費用が高いために殺菌処理費用が割高となる等ランニングコストの面で望ましくない。また、過酸化水素は保管および取り扱いに注意が必要で維持、管理が面倒となる。
【0010】
アルゴンガス等の不活性ガスを用いる特許文献2にあっては、取り扱いが容易な反面、殺菌作用に最も効果的な酸素原子が生成されないか、されても少なく、高い殺菌作用が得られにくい面があった。
【0011】
特許文献3においては、プラズマによるイオン注入を行うので、拡散性が高いプラズマの化学的効果のみによらずにプラズマが持つ粒子の物理的エネルギーを利用することにより殺菌効果をより高くすることができる。また、直流電極と交流電極の併用により、電子又はイオンは、加速されて殺菌対象体の細胞に打ち込まれ、ラジカルは電極の正負に係わらず熱運動的に細胞又は細胞の表層に打ち込まれる。その結果、直流電極の周囲の近傍にプラズマシースが生成され、直流電極に対するクーロン力による電子又はイオンの加速が生じるので、殺菌効果が格段に優れている。しかし、処置室の外部で多量の水蒸気を生成して、キャリアガスとともに殺菌処置室に送りこむことが必要であり、設備費が高くなると共に、設備も大掛かりとなる欠点を有する。その上、水蒸気の雰囲気では、過酸化水素に比較して殺菌できる圧力条件や電圧条件が厳しくて、殺菌処置室内で安定してプラズマを発生させて殺菌できることが難しい。
【0012】
また、過酸化水素、アルゴンガス、水分を使用してプラズマイオンを殺菌対象体に注入する方法は、殺菌対象体の殺菌技術として注目されているが、過酸化水素、アルゴンガス、水分を使用するいずれの方法においても、多量の反応ガスを外部で生成させて、殺菌処置室内に供給・排出する構成となっている。そのために、従来のものでは、設備が大掛かりとなり、コストが嵩む結果となっている。
【0013】
本発明では、低コスト化を図ると安全性を考慮して、処理ガスとして過酸化水素やエチレンガス等を使うのではなくて、水を使うことを前提として、研究を重ねていた。特に、水を使用して殺菌処理結果の高いプラズマベースのイオン注入法を利用することにより、殺菌対象体の周りにプラズマを多く発生させて、プラズマイオンを殺菌対象体に打ち込むことでき、殺菌対象体全体にプラズマ発生させる必要はないことに着目した。
【0014】
この着目に基づいて、本発明では、殺菌処置室全体に多量の水蒸気を殺菌処置室に供給せずに、殺菌対象体の周囲に僅かな水分を存在させ、それを水蒸気にして殺菌対象体の周囲に水蒸気からのプラズマを発生させることで殺菌できないかと発想し、外部から水蒸気を供給するのではなく、殺菌処置室内に水蒸気発生用の水をセットしておき、この水を蒸発させつつ、プラズマを発生させて殺菌対象体を殺菌することで、装置のコンパクト化を図ることを目的とする。
【0015】
具体的には、本発明は、例えば、水を僅かに入れたコップを殺菌処理室に入れて、真空引きした際にコップの水が一度に多量に蒸発しないように規制して、プラズマが発生する圧力になった際にも安定して僅かな水蒸気が供給され続けている状態を作り、その状態で電圧を印加して水蒸気から生成されたイオンを殺菌対象体に注入して殺菌するようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
具体的には、請求項1の発明は、
プラズマを発生する殺菌処置室と、
該殺菌処置室内に配置され、殺菌対象体を支持する受台と、
該受台に連結され、該受台に直流電圧を印加する電圧印加手段と、
該殺菌処置室内に接続され、該殺菌処置室内を真空引き真空手段と、
該殺菌処置室に配置され、所定量の水を収容する水容器と、
該水容器の水分が該殺菌処置室内に放出される放出部に設けられ、該殺菌処置室内に向けて放出される水分の放出速度を低速にする規制部材と、
該真空手段及び該電圧印加手段に接続され、該真空手段及び該電圧印加手段の作動を制御する制御手段とを備え、
該制御手段によって、該真空手段を作動させて所定の圧力に真空引きを行い、該殺菌処置室が所定圧力になった時点で、電圧印加手段を作動させて所定電圧を印加して所定時間保持することで、プラズマを発生させて、該受台に載置された殺菌対象体を殺菌するようにしたことを特徴とする。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1記載のプラズマ殺菌装置において、該規制部材が、多孔質フィルターからなることを特徴とする。
【0018】
請求項3の発明は、請求項1または2記載のプラズマ殺菌装置において、該制御手段によって、該真空手段を制御して、該殺菌処置室内の圧力及び該殺菌処置室からの排出量を制御することによって、該水容器の放出部からの水分放出量が所定の範囲で安定して規制されるようになっていることを特徴とする。
【0019】
請求項4の発明は、請求項3記載のプラズマ殺菌装置において、該制御手段によって、該殺菌処置室内の圧力PがP=0.1Pa〜50Paの範囲で、且つ該殺菌処置室からの気体の排気量SがS=50L/min〜3,000L/minの範囲になるように該真空手段が制御されることによって、該水容器からの水分放出量Qが
Q(g/min)=0.0008*10−2*P(Pa)*S(L/min)になるように規制されることを特徴とする。
【0020】
請求項5の発明は、請求項4記載のプラズマ殺菌装置において、該制御手段によって、該受台に印加される直流の印加電圧が、3kV〜20kVの範囲に制御されていることを特徴とする。
【0021】
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれか1つに記載のプラズマ殺菌装置において、
該電圧印加手段が、パルス電圧を印加する手段であることを特徴とする。
【0022】
請求項7の発明は、請求項6記載のプラズマ殺菌装置において、該電圧印加手段がさらに、交流を印加する高周波電源を備えることを特徴とする。
【0023】
請求項8の発明は、プラズマを発生する殺菌処置室内に、殺菌対象体を載置すると共に直流電極として形成された受台を備え、該殺菌処置室内に水を放出する水容器を備え、該水容器の放出部に水放出量を規制する規制部材を備え、
該殺菌処置室内を真空手段で減圧して所定圧力にすると共に該殺菌処置室内からの排気量を所定排気量に制御することによって、水容器から該殺菌処置室への水の放出量を所定範囲に規制し、
この状態において、該直流電極に所定のパルス電圧を所定時間印加して所定時間保持し、
殺菌対象体の周囲に静電気に起因するプラズマを形成し、
該プラズマの中のイオンは殺菌対象体に向けて打ち込まれ、殺菌対象体を殺菌することを特徴とする。
【0024】
請求項9の発明は、請求項8記載のプラズマ殺菌方法において、
該殺菌処理室内の圧力が0.1Pa〜50Paの範囲になるように制御され、該殺菌処理室の排気量が50L/min〜3,000L/minの範囲になるように制御されることによって、該水容器からの水分の放出量QがQ(g/min)=0.0008*10−2*P(Pa)*S(L/min)として算出される値になるように規制され、印加電圧が3kV〜20kVの範囲で印加されるようになっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
請求項1によれば、本発明では、殺菌処置室内に水容器を配置し、規制部材によって水容器の水から水蒸気が僅かずつ放出されるようにしたので、外部から雰囲気ガスを導入しなくても、適切な圧力に保持できると共に高電圧を印加でき、その結果、殺菌処置室内で高密度なプラズマを生成でき、殺菌対象体を効果的に殺菌できる。
【0026】
請求項2によれば、簡単な構造で、確実に水の放出量を規制できる。特に、別段放出量を規制する制御バルブなどの部材及びその部材を制御する制御機構などを必要としないので、水容器とこの規制部材を殺菌処置室内に置くだけでよく、簡単な構成とすることができる。
【0027】
請求項3によれば、圧力、排気量を制御することで、確実で簡単に水蒸気の発生量を規制することができるので、効果的にプラズマを生成でき、且つ殺菌できる圧力とすることができ、高機能に殺菌できる。
【0028】
請求項4によれば、圧力、排気量を適切な範囲とすることで、確実で簡単に水蒸気の発生量を適正な範囲とすることができるので、効果的にプラズマを生成でき、且つ殺菌できる圧力とすることができ、高機能に殺菌できる。
【0029】
請求項5によれば、印加電圧を高電圧で印加できるので、効果的にプラズマを生成でき、殺菌できる機能に優れる。
【0030】
請求項6によれば、殺菌対象体に効果的にプラズマイオンを注入できる。
【0031】
請求項7によれば、プラズマを高密度で生成でき、殺菌機能に優れる。
【0032】
請求項8によれば、本発明では、殺菌処置室内に水容器を配置し、規制部材によって水容器の水から水蒸気が僅かずつ放出されるようにしたので、外部から雰囲気ガスを導入しなくても、適切な圧力に保持できると共に高電圧を印加でき、その結果、殺菌処置室内で高密度なプラズマを生成でき、殺菌対象体を効果的に殺菌できる。
【0033】
また、従来技術では、殺菌処置室内を、例えば真空ポンプを使って一旦7.0*10−4Paの真空圧力に減圧し、それから反応ガスを導入しながら、2.0〜7.0Paに圧力になるように真空ポンプ等を調整するようにしている。
【0034】
それに対して、本発明では、一旦、真空ポンプを使って一旦7.0*10−4Paの真空圧力まで減圧する必要が無く、大気圧の状態から、真空ポンプを使って減圧していく際に、上記のような圧力、即ち2.0〜7.0Paになった時点で、水容器内の水分が僅かずつ蒸発していくので、上記圧力範囲で保持できる。この状態で高電圧を印加することによって、殺菌対象体を効果的に殺菌できるので、方法的にも従来に比較して、簡素化できる。
【0035】
請求項9の発明によれば、殺菌処置室内で更に高密度なプラズマを生成でき、殺菌対象体を効果的に殺菌できる。
【0036】
本発明において、用語「殺菌」は、微生物の全ての生体形成を破壊又は殺菌対象体から除去する処理を意味する。実際上は、用語「生存確率」で殺菌度(或いは滅菌度)が慣用的に定義される。特定の滅菌量を示す表現として、例えば、10−3、10−6、10−12として測定することが、殺菌処理の実用上の殺菌或いは滅菌目標として慣用的に使用されており、本発明でも、このような表現を使用することとし、説明の簡略化のために殺菌という表現で殺菌或いは滅菌を代表させて使用する。
【0037】
本発明において、殺菌処理室内の圧力は、減圧しすぎてこう真空になるとプラズマが生成し難くなり、また減圧が不足してもプラズマが生成できないので、0.1Pa〜50Paの範囲とすることが好ましく、特に、0.2Pa〜10Paの範囲とすることが好ましい。
【0038】
また、印加電圧は高いほど滅菌できる効果が期待できるが、圧力との関係であまり高くできないので、3kV〜20kVの範囲とすることが好ましく、特に、6kV〜15kVの範囲とすることが好ましい。
【0039】
排出量Sは、設備の大小によって大きく異なるが、現在では実現性の高いものとしては、50〜3,000(L/min)の範囲とすることが好ましく、特に、100〜500(L/min)の範囲とすることが好ましい。
【0040】
特に、水容器からの水分の放出量が多すぎる(又は速すぎる)とプラズマ生成圧力に保持することが困難であり、放出量が少なすぎると水蒸気量が不足して十分なプラズマイオンの生成が得られないので、水の放出量を適正な範囲になるように規制することが好ましい。
【0041】
水の放出量Qは、
Q(g/min)=0.0008*10−2*P(Pa)*S(L/min)として算出される値
とすることが好ましく、
該殺菌処理室内の圧力が0.1Pa〜50Paの範囲になるように制御され、該殺菌処理室の排気量が50L/min〜3,000L/minの範囲になるように制御されることによって、水容器からの水分の放出量QがQ(g/min)=0.0008*10−2*P(Pa)*S(L/min)として算出される値になるように規制され、印加電圧が3kV〜20kVの範囲で印加されるようになっていることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0043】
(実施形態1)
図1及び図2は、本発明の実施形態1を示す。図1に示されるように、真空容器となっている殺菌処置室1内にプラズマ発生器2が配置されている。プラズマ発生器2は、拡散が抑制されるプラズマを生成する非拡散的プラズマ生成器3を有する。非拡散的プラズマ生成器3は、電圧印加手段である直流パルス電源41と殺菌対象体Tに電気的に接合して殺菌対象体Tを載置して処理対象そのものを電極化する受台(直流電極)5とから形成されている。直流電極5は、殺菌処置室1の中に配置され、殺菌処置室1の壁に装着されている電流導入端子6を介して殺菌処置室1の外側に配置されている直流パルス電源41に接続している。
【0044】
殺菌処置室1には、排気口7が設けられ、真空ポンプ8に接続されている。排気口7には細菌付着塵埃粒子を殺菌処置室1の中に侵入させないフィルター(図示されず)が介設されることが望ましい。
【0045】
殺菌処置室1の受台5には、殺菌対象体Tが載置されると共に、水容器10が載置されるようになっている。この水容器10は、図2に示すように、水Wが収納される容器からなり、その放出部11には、セラミック製の多孔質フィルターからなる規制部材12が設置されている。この規制部材12によって、水容器10内の水が水蒸気となって蒸発する際の蒸発量(あるいは蒸発速度)が緩やかになるように規制されている。その理由は、後で説明する。
【0046】
制御手段20は、真空ポンプ8の作動及びパルス電圧印加手段41の印加電圧及び印加時間を制御する。
【0047】
図6は直流パルス電源41の好ましい電力波形を示している。直流パルス電源41の直流パルス42は、これ自体の自己放電により、殺菌対象体Tの表面の近傍領域にプラズマを生成する電気的能力を有している。図6に示されるように、直流パルス電源41は、直流負電圧がVでありそのパルス幅がt1である直流パルス42を周期(充電時間)t2で生成する。周期t2のパルスの繰り返し数により定められるduty比を調整することにより、単位時間に殺菌対象体Tに入射されるイオンフラックスである殺菌処理速度を更に有効に制御することができる。
【0048】
直流パルス42の負電圧に代えられて正電圧が用いられるようにしても良く、この場合にも概ね負電圧と同等の殺菌効果が得られる。
【0049】
このようなパラメータの大きさは、直流パルス42のパルス幅t1に影響を与える殺菌対象体T(この場合は絶縁体)の表面上の電荷移動速度、殺菌対象体Tとプラズマ中の粒子との衝突に起因する電荷解消速度が考慮されて定められる。直流パルス42の幅は数μs〜数msのオーダーであることが好ましく、その電圧は数kV〜数十kV程度であることが好ましい。但し、その電流のピーク値は、回路構成要素の設定値以下になるように調整されることが好ましい。直流パルス42の繰り返し幅t2は、数百pps〜数千ppsの程度であることが好ましい。
【0050】
実施形態1の作動状態を説明する。
【0051】
殺菌処置室1の中に水容器10がセットされ、殺菌対象体Tが受台5の上に載置された後、制御手段20からの信号に基づいて、真空ポンプ8が作動し、排気口7から殺菌処置室1内の空気が排出される。そして、殺菌処置室1内が所定圧力に減圧された時点で、ほぼこの所定圧力に維持されるように真空ポンプ8の作動が制御される。この状態において、制御手段20からの信号に基づいて、直流パルス電源41からパルス電圧印加手段5に直流パルス電力42が既述の印加条件で投入される。
【0052】
上記作動状態において、殺菌機能からすれば、一般的には印加圧力は高ければ高いほど殺菌効果に優れる。しかし、印加電圧を高くして、プラズマを発生するためには、その条件として、殺菌処置室1内の圧力の影響も受けるので、圧力を適正な値に維持することが重要である。殺菌処置室1内の圧力と印加電圧との関係は、図8からわかるように1.0Pa〜50Pa(特に2.0〜10Pa)の圧力範囲で、特に3kV〜20kVの範囲の電圧が印加された際に効果的に滅菌できる。なお、1.0Pa以下では、急激に電流値が下がっているので、電力値が急激に下がるが、この場合には、磁場を形成する等によってプラズマ生成領域の電圧(或いは電力)を高く保つようにすることによって、滅菌可能である。
【0053】
その場合には、0.1Pa〜10Pa(特に0.2Pa〜10Pa)の範囲が好適である。
【0054】
真空ポンプ8で減圧しながら殺菌処置室1を上記圧力範囲に維持するためには、殺菌処置室1に放出される水蒸気量及び殺菌処置室1から排出される排気量を適正に制御する必要がある。
【0055】
例えば、
殺菌処置室内の圧力 :P(Pa:パスカル)
殺菌処置室内の体積 :V(L:リットル)
殺菌処置室からの排出量 :S(L/min)
殺菌処置室内に放出される水蒸気量 :Q(g/min)
とすると、
殺菌が効果的に行われるためには、図8からわかるように、電圧値及び電流値が高く維持され、且つ圧力を所定範囲に保持することが大事である。例えば、圧力P=4Paとすると、図8からわかるように、電圧値及び電流値が高く維持できる。そのために、仮にこの圧力4Paを維持するとすれば、殺菌処置室1内に放出されるガスの量(水蒸気の放出量)Qと排出量Sを所定の値に規制することが必要である。ここでは、簡単にするために、排出量Sを一定値として、殺菌処置室内の圧力Pと殺菌処置室内に放出される水蒸気量の関係を算出する。
【0056】
具体的には、水の放出量Qは、
Q=P*S
の関係にある。
【0057】
従って、例えば、P=4Paで、S=300(L/min)の場合に、Q(g/min)を算出すると、以下のようになる。
Q(g/min)=9.87*10−6*4(Pa) *300(L/min)*18/22.4
=0.0095(g/min)
Q(g/min)=0.95*10−2(g/min)
として、算出される。
【0058】
なお、1モルの水が気化したときの体積は22.4であり、水の分子量は18であり、この場合水の圧力は1気圧であるとしている。
【0059】
したがって、水容器10からの水蒸気の放出量を、0.95*10−2(g/min)になるように、規制部材12で規制すれば良い。
【0060】
即ち、水の蒸発量Qを(g/min)とし、圧力Pを(Pa)、排気量Sを(L/min)とすると、以下の関係式になる。
Q(g/min)=0.0008*10−2*P(Pa)*S(L/min)となる。
【0061】
したがって、排出量Sは、設備の大小によって大きく異なるが、実現性の高いものとしては、現在では50〜3,000(L/min)の範囲のものが使用されており、排気量Sをこの範囲とすると、殺菌処置室の圧力範囲を0.1Pa〜50Paとすると、図9aに示すように、それに合うような水の放出量Qとなるように、上記関係式から算出して、規制部材を設けると良い。
【0062】
特に、排出量Sとしては、100〜500(L/min)の範囲のものが特に好ましく、この範囲で、殺菌処置室の圧力範囲を0.2Pa〜10Paとすると、水の放出量Q(g/min)は、図9bに示すように、A点〔10Pa、6.67*10−2(g/min)〕、B点〔0.2Pa、0.12*10−2(g/min)〕、C点〔0.2Pa、0.03*10−2(g/min)〕、D点〔10Pa、1.33*10−2(g/min)〕で囲まれた範囲とすることが好ましい。
【0063】
本発明では、上述したように、水容器に入れた水の蒸発量を規制部材でゆっくり蒸発するように制御するので、殺菌処置室1内の圧力を適正な値に維持できる。その結果、プラズマが効果的に発生できて、且つ、実際の殺菌テストの結果は後で実施例1として説明するが、高い確率で殺菌できた。
【0064】
(実施形態2)
実施形態2を図3に基づいて説明する。実施形態2は、実施形態1に比較して、水容器10aを別構造としただけであり、他の構成は実施形態1と同じである。実施形態2において、実施形態1と同じ部分の説明は省略し、異なる部分のみ説明する。水容器10aの上部の放出部を絞った形状とし、多孔質フィルター12aを円柱状とし、水容器10内の水Waの中に突っ込んだ状態とした。
【0065】
この実施形態2でも、実施形態1と同様に優れた殺菌機能を発揮できた。
【0066】
(実施形態3)
実施形態3を図4に基づいて説明する。実施形態3は、実施形態1に比較して、水容器10bを別構造としただけであり、他の構成は実施形態1と同じである。実施形態3において、実施形態1と同じ部分の説明は省略し、異なる部分のみ説明する。
【0067】
実施形態3では、実施形態2の水容器10aと同様な水容器10bとし、水容器10bの配置位置を変更したものである。実施形態3では、実施形態1と異なって、水容器10b全体を殺菌処置室1の内部に配置するのではなく、円柱状の多孔質フィルター12bの上部先端が殺菌処置室1内に位置するように設けられたものである。
【0068】
本発明では、この実施形態3のように、水容器内の水の蒸発部分のみが殺菌処置室内に位置して設けられたものも、殺菌処置室内に水容器を配置したと言う表現で含むものとして、定義する。
【0069】
(実施形態4)
実施形態4を図5に基づいて説明する。実施形態4は、実施形態1に比較して、電圧印加手段として、直流パルス印加手段41に更に交流印加手段45を追加して設けただけであり、他の構成は実施形態1と同じである。実施形態4において、実施形態1と同じ部分の説明は省略し、異なる部分のみ説明する。
【0070】
プラズマ発生器2は、拡散が抑制されるプラズマを生成する非拡散的プラズマ生成器3(41)と、そのプラズマの非拡散領域でプラズマの生成を補助して、そのプラズマの励起種・ラジカルの量を増大させる補助的プラズマ生成器3aとから構成されている。
補助的プラズマ生成器3aは、公知装置のプラズマ生成器と物理作用的に同じであり、高周波電源が用いられる。補助的プラズマ生成器3aは、第1高周波電源(RF)43と電極5とから形成されている。補助的プラズマ生成器3aの電極5は、非拡散的プラズマ生成器3の電極5と共用され、補助的プラズマ生成器3aの電極は非拡散的プラズマ生成器3の電極に恒等的に同じである。殺菌処置室1は接地されている。第1高周波電源43は、電流導入端子6を介して受台5(電極)5に接続している。
【0071】
更に、殺菌処置室1の中で全体的に(広域的に)プラズマを生成するための広域的プラズマ生成器44が設けられている。広域的プラズマ生成器44は、第2高周波電源(RF)45と広域プラズマ生成電極46とから形成されている。広域プラズマ生成電極46は、殺菌処置室1の中に配置され、殺菌処置室1の壁に装着されている電流導入端子47を介して殺菌処置室1の外側に配置されている第2高周波電源45に接続している。
【0072】
図7(a),(b)は、直流パルス電源41と第1高周波電源43の好ましい電力波形を示している。図2(b)に示されるように、直流パルス電源41は、直流負電圧がVでありそのパルス幅がt1である直流パルス42を周期(充電時間)t2で生成する。第1高周波電源43は、交流パルス47を周期的に又は連続的に生成する。交流パルス47のrf条件として、周波数がfに設定され、ピーク電圧がKに設定され、パルス幅がt3に設定されている。
【0073】
直流パルス42は、交流パルス47の立ち上がり時刻よりΔtの時間遅れで立ち上がる。
【0074】
このような負電圧パルス条件とrf条件を構成するパラメータを調整して、イオン注入エネルギー分布、エネルギーピーク、プラズマ密度を調整することにより、規定殺菌率を得るまでの殺菌時間を制御することができる。周期t2のパルスの繰り返し数により定められるduty比を調整することにより、単位時間に殺菌処理対象Tに入射されるイオンフラックスである殺菌処理速度を更に有効に制御することができる。
【0075】
直流パルス42の負電圧に代えられて正電圧が用いられることにより、概ね同等の殺菌効果が得られる。
【0076】
このようなパラメータの大きさは、直流パルス42のパルス幅t1に影響を与える殺菌対象体T(この場合は絶縁体)の表面上の電荷移動速度、殺菌対象体Tとプラズマ中の粒子との衝突に起因する電荷解消速度が考慮されて定められる。
【0077】
直流パルス42に時間的に先行して、交流パルス47が電極5に印加される。電極5と電極5に電気的に接合する導体の殺菌対象体Tの周辺にプラズマが生成される。交流パルス47の印加に時間的にΔtの時間遅れで電極5に直流パルス42が印加される。殺菌対象体Tの周辺のプラズマPの正イオンと電子とは、静電気力を受ける。電子は殺菌対象体Tの表面又はその表面近傍から強力に反発されて殺菌対象体Tから遠ざかり、正イオンが殺菌対象体Tに吸引されて殺菌対象体Tの周囲に残存することに起因するイオンシースにより、イオン化した正イオンは殺菌対象体Tに向かって強力に加速される。このように加速される正イオンは、殺菌対象体Tの表面に存在する微生物細胞に損傷を与える。このような損傷は、物理的エネルギーである運動エネルギーを持つイオンが細胞中に又は細胞壁に打ち込まれることに起因している。電極5が正に帯電する場合は、電子が細胞中に又は細胞壁に打ち込まれる。このように微生物は、物理的効果により死滅する。
【0078】
周期t2の直流パルス42の間では、そのイオンシースが解消され、アフターグローによりプラズマPの中で活性化された励起種であり殺菌対象体Tの近傍に存在しているラジカルは、高効率に殺菌対象体Tの表面に到達して微生物を死滅させる。このような死滅は、公知装置の作用と同じである化学的効果に基づいている。
【0079】
このように、実施形態4によれば、物理的効果と化学的効果の複合効果により、細胞存在数を6桁のオーダーで減少させることができる。
【0080】
直流パルス42は、これ自体の自己放電により、殺菌対象体Tの表面の近傍領域にプラズマを生成する電気的能力を有している。交流パルス47は、直流パルス42により生成されるプラズマに励起エネルギーを更に増大させて、励起種・ラジカルの量を補助的に、且つ、広域的に増大させる。プラズマの存在下でそのプラズマを生成させる電極と同じ電極に印加される直流パルス42の自己放電により形成されるプラズマシースは、殺菌対象体Tの表層に正イオン又は電子を均一に打ち込む電気的加速場を形成する。広域プラズマ生成電極46の追加は、更に広域的に生成するプラズマの励起種を増大させ、広域的に拡散するラジカルがより多量に殺菌対象体Tに打ち込まれ、殺菌効率を高め設定される死滅率が得られるまでの処理時間を短縮することができる。
【0081】
広域プラズマ生成電極46は、光源に置換され得る。その光源は、赤外線から紫外線まで多様な波長の光を放射することが好ましい。
【0082】
(実施例)
実施形態1の構造で実際に殺菌効果を確認する実験を行った。
【0083】
実施形態1の殺菌処置室の底部付近に直流電源のマイナス極に接続された受台を設置し、その上に殺菌処置体を載置できるようにした。種々の殺菌処置で生き残る可能性が高いバチルス菌で芽胞を形成する菌(Bacillus pumilus)を指標菌として用い、殺菌性能を評価することとした。殺菌処理後のバチルス菌を希釈培養し、発生コロニー数から生き残り菌数を測定した。この芽胞細菌が10の7乗のオーダで付着した殺菌処置体をこの殺菌処理室の受台に乗せて、水容器として筒状コップ(高さ:10mm、上面の開口径:80mm)に1ccの水を入れて、この筒状コップも一緒に受台の上に乗せた。この筒状コップの上の放出部である開口部分を、放出量Q=0.01(g/min)となるように多孔質が形成されたセラミックス製フィルタを被せた。このことによって、真空ポンプ8で真空引きした際の排気量S=300(L/min)として、真空引きした際に、殺菌処置室内の圧力P=約4Paに減圧した時点で安定して保持できた。この時に、直流電源に印加電圧をV=10kvとして、周波数:t2=500pps、パルス幅:t1=5μsecのパルスを与えて、1分、5分、10分間維持した。また、電圧を5kVにして同じように処理した。これらの実験結果をサンプル1〜6として、表1に示す。
【0084】
(比較例)
実施例1と同様な殺菌処置室及び筒状コップを用意した。実施例と異なる点は、筒状コップの上面の開口部に何も設けないで、この比較例では、筒状コップの上面の開口径:80mmに何も規制部材を設けないで、そのまま開口した状態とした。
【0085】
そして、実施例と同様に10kvの直流電圧を印加して、周波数:500pps、パルス幅:5μsecのパルスを与えて、1分、5分、10分間ほど維持するようにした。それを比較例1〜6とした。なお、比較例では、上記時間が安定せずにばらついたので、その値を下記に記載した。
【0086】
実施例(サンプル1〜6及び比較例1〜6)の殺菌結果下記表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
本発明の実施例(サンプル1〜6)では、いずれも殺菌できた。特に、10kVと印加電圧が高く、処理時間が長い方がより殺菌できるという結果が見られた。これらのことから、水を殺菌処置室内に配置し、計算された僅かな量で蒸発するようにすれば、プラズマが安定して生成でき、その間に高電圧を印加できるので、高能力で殺菌できることがわかった。
【0089】
一方、比較例では、10kVのもので、1桁分殺菌できただけで、5kVのものではいずれも10の7乗のオーダーのままであり、殺菌できなかった。これらは、殺菌処置室内を真空にするために減圧していった際に、コップ内の水が一度に蒸発して直に排出されるので、プラズマが発生可能な圧力に減圧できた時点では水蒸気が殆ど存在せずに、この圧力状態で電圧を印加しても、殺菌処理体表面のイオン等の電力値は殺菌できる電力値が得られずに、被処理体にイオン注入できてなく殺菌されないと推測される。また、場合によっては、プラズマが生成できてもその間は一瞬であり、殺菌できる状態を維持できなかったものもあった。即ち、比較例では、殺菌効果は得られず、又、プラズマを生成する電圧が安定せずにばらついた結果となった。
【0090】
なお、本発明では、水容器中の水は適切な量を入れておけば良く、殺菌処置を行うたびに入れるようにしてもよく、数回の殺菌処置を行ってから補充・交換するようにしても良い。
【0091】
水放出量を規制する規制部材としては、蒸発量をできるだけ一定値とし、僅かに蒸発できるようにしたものであれば、どんなものであってもよく、例えば、セラミックフィルター、高分子ポリマーフィルター、多孔質セラミックスなどの透過量を簡単に規制できるフィルター類、多孔質体が使用可能である。また、水容器全体を殺菌処置室内に入れると、殺菌装置自体を変更する必要が無く、簡単にセット、交換できる点で優れる。しかし、フィルターのみを殺菌処置室内に置いて、水容器事態は殺菌処置室の外に置いても良い。
水容器の配置位置は、殺菌処置室のどの位置に配置しても良い。ただ、殺菌対象体に近接している方が、殺菌対象体周囲のイオン密度を高くする上に効果的であり、受台に殺菌対象体と一緒に配置することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上説明したように、本発明に関わるプラズマ殺菌装置及びその方法は、病院や歯科医院等で使用される医療器具、例えば、点滴用容器、薬瓶、純水封入容器のような内部で菌が繁殖してはならない容器、メスのように外部に菌が付着していてはならない医療用器具、フラスコのように内外部に菌が存在してはならない実験用器具、政府要人に宛てられた郵便封筒の安全処置等に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の実施形態1に関わるプラズマ殺菌装置の概略図を示す。
【図2】実施形態1の水容器の断面図を示す。
【図3】実施形態2に関わり、図2と同様な図を示す。
【図4】実施形態3に関わり、図1と同様な図を示す。
【図5】実施形態4に関わり、図1と同様な図を示す。
【図6】実施形態1に関わり、印加電圧の電力波を示す波形図である。
【図7】図7(a)、図7(b)は実施形態4に関わり、印加電圧の電力波を示す波形図である。
【図8】本発明において、印加電圧と殺菌処置室の圧力との関係を示すグラフである。
【図9】図9a、図9bは、本発明において、水の蒸発量と殺菌処置室の圧力との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0094】
T 殺菌対象体
1 殺菌処置室
2 プラズマ発生器
3 プラズマ生成器
4 電圧印加手段
41 パルス電圧印加手段
42 直流パルス
43 交流印加手段(高周波電源)
5 受台(直流電極)
6 電流導入端子
7 排気口
8 真空手段
10 水容器
11 放出部
12 規制部材
20 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマを発生する殺菌処置室と、
該殺菌処置室内に配置され、殺菌対象体を支持する受台と、
該受台に連結され、該受台に直流電圧を印加する電圧印加手段と、
該殺菌処置室内に接続され、該殺菌処置室内を真空引き真空手段と、
該殺菌処置室に配置され、所定量の水を収容する水容器と、
該水容器の水分が該殺菌処置室内に放出される放出部に設けられ、該殺菌処置室内に向けて放出される水分の放出速度を低速にする規制部材と、
該真空手段及び該電圧印加手段に接続され、該真空手段及び該電圧印加手段の作動を制御する制御手段とを備え、
該制御手段によって、該真空手段を作動させて所定の圧力に真空引きを行い、該殺菌処置室が所定圧力になった時点で、電圧印加手段を作動させて所定電圧を印加して所定時間保持することで、プラズマを発生させて、該受台に載置された殺菌対象体を殺菌するようにしたことを特徴とするプラズマ殺菌装置。
【請求項2】
請求項1記載のプラズマ殺菌装置において、
該規制部材が、多孔質フィルターからなることを特徴とするプラズマ殺菌装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のプラズマ殺菌装置において、
該制御手段によって、該真空手段を制御して、該殺菌処置室内の圧力及び該殺菌処置室からの排出量を制御することによって、該水容器の放出部からの水分放出量が所定の範囲で安定して規制されるようになっていることを特徴とするプラズマ殺菌装置。
【請求項4】
請求項3記載のプラズマ殺菌装置において、
該制御手段によって、該殺菌処置室内の圧力PがP=0.1Pa〜50Paの範囲で、且つ該殺菌処置室からの気体の排気量SがS=50L/min〜3,000L/minの範囲になるように該真空手段が制御されることによって、該水容器からの水分放出量QがQ(g/min)=0.0008*10−2*P(Pa)*S(L/min)になるように規制されることを特徴とするプラズマ殺菌装置。
【請求項5】
請求項4記載のプラズマ殺菌装置において、
該制御手段によって、該受台に印加される直流の印加電圧が、3kV〜20kVの範囲に制御されていることを特徴とするプラズマ殺菌装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つに記載のプラズマ殺菌装置において、
該電圧印加手段が、パルス電圧を印加する手段であることを特徴とするプラズマ殺菌装置。
【請求項7】
請求項6記載のプラズマ殺菌装置において、
該電圧印加手段がさらに、交流を印加する高周波電源を備えることを特徴とするプラズマ殺菌装置。
【請求項8】
プラズマを発生する殺菌処置室内に、殺菌対象体を載置すると共に直流電極として形成された受台を備え、該殺菌処置室内に水を放出する水容器を備え、該水容器の放出部に水放出量を規制する規制部材を備え、
該殺菌処置室内を真空手段で減圧して所定圧力にすると共に該殺菌処置室内からの排気量を所定排気量に制御することによって、水容器から該殺菌処置室への水の放出量を所定範囲に規制し、
この状態において、該直流電極に所定のパルス電圧を所定時間印加して所定時間保持し、
殺菌対象体の周囲に静電気に起因するプラズマを形成し、
該プラズマの中のイオンは殺菌対象体に向けて打ち込まれ、殺菌対象体を殺菌することを特徴とするプラズマ殺菌方法。
【請求項9】
請求項8記載のプラズマ殺菌方法において、
該殺菌処理室内の圧力が0.1Pa〜50Paの範囲になるように制御され、該殺菌処理室の排気量が50L/min〜3,000L/minの範囲になるように制御されることによって、該水容器からの水分の放出量QがQ(g/min)=0.0008*10−2*P(Pa)*S(L/min)として算出される値になるように規制され、印加電圧が3kV〜20kVの範囲で印加されるようになっていることを特徴とするプラズマ殺菌方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−188032(P2008−188032A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−22131(P2007−22131)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(595115592)学校法人鶴学園 (39)
【出願人】(503328193)株式会社ツーセル (24)
【出願人】(000236104)MHIソリューションテクノロジーズ株式会社 (33)
【Fターム(参考)】