説明

プラズマ源

本発明はプラズマ源(1)に関し、プラズマ源(1)は、ガス流を搬送する導管(3,4)とプラズマを内部発生させる電離箱(10)とを備え、電離箱(10)は、導管(3,4)と連結し、導管(3,4)内のガス流が電離箱(10)からガス粒子を運び去ることにより、電離箱(10)内の圧力を減圧する。ガスの電離性は、一般に圧力の上昇とともに低下するため、電離箱内の減圧は、プラズマ発生の効率向上に有利に作用する。従って、低温度を有するガスの中でプラズマを発生させるのが、容易かつ効率的である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ源に関し、特に、請求項1のプリアンブルによる、傷殺菌用のプラズマ源に関する。
【背景技術】
【0002】
傷の生体内殺菌用に非平衡プラズマを使用することは、http://www.phys.tue.nl.上で発行された、Stoffels,E.氏、Stoffels,W.氏共著の“The healing touch of a micro−plasma”で扱われている。しかしながら、傷の生体内殺菌は、低温プラズマ及び低電磁照射を要するため、従来のプラズマ源は傷の生体内殺菌には適していない。
【0003】
更に、国際公開第2007/031250号公報では、上述の傷の生体内殺菌に適したプラズマ源を開示している。
【0004】
高温プラズマ源は、例えば、米国特許出願公開第2007/0021748号公報、米国特許第5,573,682号公報、フランス国特許第1,376,216号公報、米国特許第6,114,649号公報、及び、米国特許第6,121,569号で開示されている。その他従来型のプラズマ源は、国際公開第2005/026650号公報及び米国特許第3,692,431号公報に開示されている。しかしながら、上記プラズマ源は、低温プラズマを要する傷の生体内殺菌には適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/031250号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0021748号公報
【特許文献3】米国特許第5,573,682号
【特許文献4】フランス国特許第1,376,216号公報
【特許文献5】米国特許第6,114,649号
【特許文献6】米国特許第6,121,569号
【特許文献5】国際公開第2005/026650号公報
【特許文献6】米国特許第3,692,431号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Stoffels、E.氏、Stoffels、W.氏共著、「The healing touch of a micro−plasma」、http://www.phys.tue.nl.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の主な目的は、傷の生体内殺菌に適したプラズマ源におけるプラズマ発生を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本目的は、請求項1で画定される、本発明のプラズマ源により達成される。
【0009】
本発明によれば、プラズマ源は、プラズマを内部発生させる電離箱を備える。更に、プラズマ源は、搬送ガス(例えば、周囲空気、アルゴン、又は窒素)のガス流を搬送する導管を備える。本発明のプラズマ源は、電離箱が導管に連結され、導管内のガス流がガス粒子(例えば、イオン、電子、原子等)を電離箱から運び去ることにより、電離箱内の圧力を減圧することを特徴とする。ガスの電離性は、一般に圧力の上昇とともに低下するため、電離箱内の減圧は、プラズマ発生の効率向上に有利に作用する。従って、低温度を有するガスの中でプラズマを発生させるのが、容易かつ効率的である。
【0010】
本発明の好適な実施例によれば、ガス流を搬送する導管はノズルを備え、電離箱はノズル下流で導管に連結されている。本実施例において、電離箱内の減圧は、ノズル下流の導管内のガス流によって発生している。
【0011】
ノズルは、ベンチュリノズル又はラバルノズルであることが好ましい。ラバルノズルを使用する場合、ノズルによって搬送ガス流内に衝撃波が発生し、電離箱を導管に連結する接続部における搬送ガス流の流速が加速され、結果として減圧となる。尚、本発明は上記種類のノズルに限定されないことに留意されたい。
【0012】
尚、導管内のガス流が、ノズル上流で亜音速(M<1)、ノズル下流で超音速(M>1)、及び/又は、ノズル内で約(M≒1)の音速からなるように、ノズルを成形することが好ましい。導管に沿ったこのような流速分布は、周知のベルヌーイ法則によれば、導管内の超音速ガス流において所望の減圧をもたらす。
【0013】
本発明の好適な実施例では、電離箱は環状であり、導管を包囲している。本実施例では、ノズル及び包囲後の電離箱は、同一断面において配置されていてもよい。あるいは、電離箱がノズルに対して軸方向に変位してもよい。好ましくは、電離箱は、ガス流を搬送する導管のノズルに対して流れ方向の軸方向に変位している。言い換えれば、電離箱はノズルより下流に配置されているのが好ましい。従って、電離箱と導管の接続部は、上述したように圧力が減圧された場合、ノズル下流に位置している。
【0014】
本発明の他の実施例では、電離箱はカップ状で流れ方向に開口し、電離箱は導管内、特に、ノズル内に配設されている。本実施例では、カップ状の電離箱、並びに包囲後の導管(例えば、ノズル)が、同軸上に配置され、導管内のガス流が、ノズルの内壁と、カップ状の電離箱の外壁との間にある、環状の間隙に流入するのが好ましい。その後、環状間隙に流入したガス流は、電離箱を通過し、ガス粒子を電離箱内部から持ち去って、電離箱内の圧力を減圧する。
【0015】
上述の実施例では、カップ状電離箱は、電離箱の下流端部でノズルの内壁に到達し、ノズルの内壁と、カップ状電離箱の外壁との間にある、上記環状の間隙を塞ぐのが好ましい。しかしながら、カップ状電離箱は、好ましくは、電離箱と、ノズルとの間の環状接点において軸方向に配置されたノッチを備えるため、ノズルの内壁と電離箱の外壁との間にある環状の間隙に流入したガス流が、上記ノッチを通じて流れることができる。
【0016】
更に、カップ状電離箱は、好ましくは、軸方向に調整可能な軸位を有する。つまり、カップ状電離箱は、包囲後の導管に対して軸方向に調整可能である。
【0017】
更に、本発明に係るプラズマ源は、好ましくは、電離箱内にプラズマを発生させる第1電極及び第2電極を備える。しかしながら、本発明は、プラズマ発生用電極を2つ備える電極構成に限定されない。本明細書に参照により組み込まれた国際公開第2007/031250号公報に開示されているように、電極を2つ以上備える電極構成を利用することも可能である。
【0018】
本発明の好適な実施例では、第1電極はノズルによって形成される一方、第2電極は導管の円錐部によって形成されるとともに、導管の円錐部は流れ方向に先細になり、上述したように、ノズルを包囲している。本発明の本実施例では、ノズルは、導管のじょうご状円錐部内に注いでいる。
【0019】
本発明の他の実施例では、第1電極及び第2電極は、共に電離箱内に配設されている。このような電極構成は、カップ状電離箱を備えた上述の実施例において好適である。
【0020】
本実施例の更に他の実施例では、第1電極は、導管、特にノズルによって形成される一方、第2電極は、電離箱内に単独で配設されている。本実施例では、放電は、一方の導管の内壁と、他方の電離箱内の第2電極との間で行われる。従って、一方の導管と他方の電離箱内の第2電極とでは、印加される電位が異なる。例えば、導管は、電気的に接地可能であるが、電離箱内の第2電極には、正又は負の高電圧が印加される。
【0021】
電離箱内にプラズマが発生すると、通常、無線周波数(RF)放射又はマイクロ波を発生させるが、プラズマ源のRF又はマイクロ波照射を低減すべく、これらを電離箱の壁、または包囲後の導管の壁によって遮断することができる。更に、RF又はマイクロ波照射を低減すべく、プラズマ源を導電性材料で形成されたハウジングに入れることも可能である。
【0022】
更に、電離箱の内部からガス流を搬送する導管内へ至り、かつ導管の排気口を通じて直接放射路がないような様態、つまり、プラズマ源が、プラズマ発生による電磁照射、例えば、紫外線照射に実質的に生じないように、本発明によるプラズマ源を構成することもできる。
【0023】
しかしながら、いくつかのプラズマ源の用途、例えば、傷の殺菌用又は表面除菌用の用途において、紫外線照射が望ましい場合もある。従って、電離箱内部からガス流を搬送する導管内へ至り、かつ導管の排気口を通じて直接放射路があり、プラズマ源がプラズマ発生による電磁照射を行うように、本発明によるプラズマ源を構成することもできる。
【0024】
更に、電離箱は、少なくとも部分的に透明であり、電離箱内のプラズマ発生の目視管理を可能にする壁を備えていてもよい。窓を介して電離箱内のプラズマ発生を目視監視することができるように、例えば、電離箱の壁内、及び/又は、包囲後の導管の壁内に窓を配設することが可能である。従って、この窓は可視光線を透過し、紫外線を非透過にするのが好ましい。更に、窓を介してプラズマ発生を監視するため、光ダイオード、CCDカメラ(CCD:電荷結合素子)など他のいかなる光センサーを使用することも可能である。
【0025】
更に留意すべきは、電離箱は、真空計等と連結するための連結部を備えてもよい。
【0026】
本発明の他の実施例では、プラズマ源は、電離箱内、及び/又は、導管内の電離箱の下流に、磁界を発生させる磁石を備え、磁界によりプラズマ発生を促進させる。これが当てはまるのは、プラズマの電荷担体(つまり、電子)の平均自由工程が、ローレンツ力によって磁界が電荷担体に相当な作用を及ぼすのに十分である場合である。
【0027】
更に言及すべきは、搬送ガス流を搬送する導管は、導管内にガス流を導入するための吸気口と、混合プラズマが混ざったガス流をプラズマ処理の対象に供給するための排気口と、を備える。
【0028】
更に、電離箱内の真空圧範囲は、好ましくは5mbarから900mbarまで、より好ましくは400mbarから600mbarまでである。しかしながら、本発明は上記圧力範囲に限定されない。
【0029】
更に留意すべきは、導管内に導入されたガス流は、周囲空気、窒素、希ガス(例えばアルゴン)、又は、添加物、特に二酸化炭素を有する上記ガスのうちのいずれかで構成されるのが好ましい。
【0030】
更に、導管内のガス流量は、501/min.,401/min.,301/min.,201/min.,又は、101/min.,未満である。しかしながら、本発明は、導管内ガス流の上記限度量に限定されない。
【0031】
更に、本発明に係るプラズマ源は、電離箱内の電極を駆動するプラズマ発生器を備えるのが好ましい。本発明のある実施例において、プラズマ発生器は、電離箱内に直流(DC)励起を生成する。他の実施例において、プラズマ発生器は、電離箱内に交流(AC)励起、特に、無線周波数(RF)励起を生成する。
【0032】
更に留意すべきは、本発明に係るプラズマ源は、低温の非熱的プラズマを発生させ、プラズマを傷口や他の温度に敏感な表面を処理すべく使用できることが好ましい。従って、プラズマ源が発生させたプラズマについては、プラズマ源の排気口において測定された温度が100℃,75℃,50℃,40℃,又は30℃未満であることが好ましい。
【0033】
導管内のガス流がガス粒子を電離箱から運び去ることにより電離箱内を減圧することが既に言及されている。本発明の好適な実施例において、異なる種類のガス粒子、例えば、ガス分子、ガス原子、ガスイオン、及び/又は、電子等が、電離箱から持ち去られる。
【0034】
更に留意すべきは、本発明は、上述したプラズマ源を備える医療機器にも適合するものである。例えば、殺菌器や焼灼器が、本発明のプラズマ源を搭載していてもよい。
【0035】
更に、本発明は、プラズマによって殺菌又は焼灼される対象の処理を目的とする、本発明のプラズマ源の非治療的用法にも適合するものである。
【0036】
各対象の非破壊的除染は、例えば、地球帰還後の宇宙船の部品を除染する際など、宇宙航行術において重要である。従って、本発明に係るプラズマ源は、電子回路、電気又は電子部品、宇宙船の部分組立部品、又は宇宙服の表面を除染すべく使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】ラバルノズルとじょうご状対電極とを備えた、本発明に係るプラズマ源の断面図である。
【図2】ノズルとノズル内のカップ状電離箱とを備えた、本発明に係るプラズマ源の他の実施例の断面図である。
【図3】図3に係る実施例の変形例を示し、図中、ノズルは円錐状に広がった排気口を備える。
【図4】図3の変形例の断面図であり、図中、単一の電極が電離箱内に供給されている。
【図5】図4に係る実施例の変形例の断面図であり、図中、ノズルは円錐状に広がった排気口を備える。
【図6】図4に係る実施例の変形例の断面図であり、図中、磁石がノズルを包囲し、ノズル内に磁界を発生させる。
【図7】図6に係る実施例の変形例を示し、図中、ノズルは円錐状に広がった排気口を備える。
【図8】図6に係る実施例の変形例を示し、図中、プラズマ発生用の中空陰極を備える。
【図9】図8に係る実施例の変形例の断面図であり、ノズルは円錐状に広がった排気口を備える。
【図10】プラズマ発生用の中空陰極の拡大断面図である。
【図11】図2のA−A線に沿った電離箱の断面図である。
【図12】プラズマを用いた患者治療用の医療機器の概略図である。
【図13】燃灼器としてプラズマ源を使用している外科医を示す概略図である。
【図14】図1のプラズマ源と同様であるが、電極構成が異なるプラズマ源を示す概略図である。
【図15】図14に係る実施例の変形例を示し、図中、プラズマ発生用の2つの直流源を備える。
【図16】図14に係る実施例の変形例を示し、図中、非安定のパルスプラズマ励起を含む。
【図17】図15のプラズマ源と同様であるが、追加の磁石を有するプラズマ源を示す概略図である。
【図18】図17に係る実施例の変形例を示し、図中、プラズマ発生用の2つの直流源を備える。
【図19】図17に係る実施例の変形例を示し、図中、非安定のパルスプラズマ励起を含む。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明、並びにその特徴及び利点は、添付図面を参照した以下の詳細な記述からより明らかになる。
【0039】
図1は、本発明に係るプラズマ源1の実施例の断面図であり、図中、プラズマ源1は、殺菌対象2、例えば傷口等のプラズマ処理のために使用できる。
【0040】
プラズマ源1はガス流を搬送する導管を備え、該導管は、変形ラバルノズル3と、コンジットパイプ4とで構成されている。
【0041】
ラバルノズル3は上流に配置され、搬送ガス流をプラズマ源1内に導入するための吸気口5を備える。更に、ラバルノズル3は、ラバルノズル3内の搬送ガス流の速度が、吸気口5において亜音速(M<1)、ラバルノズル3の排気口7において超音速(M>1)、及び、ラバルノズル3内のボトルネックにおいて約(M≒1)の音速から成るように成形された内壁6を備える。従って、ラバルノズル3の排気口7においてガス圧が減圧されることによって、後に詳述されるプラズマ発生が促進される。
【0042】
コンジットパイプ4は、ラバルノズル3の背後下流に配置され、じょうご状の上流部と、円筒状の下流部と、対象2の表面にプラズマをあてるための排気口8とからなる。
【0043】
更に留意すべきは、ラバルノズル3と、コンジットパイプ4との間には軸方向変位があるため、ラバルノズル3とコンジットパイプ4との間に間隙があり、間隙内にガス噴射を円滑に流入させて真空状態を発生させることである。
【0044】
更に、ラバルノズル3とコンジットパイプ4はハウジング9に収容されることより、内部でのラバルノズル3と、コンジットパイプ4との間で電離箱10の輪郭が画定されるとともに、外部でのハウジング9の壁の輪郭が画定される。
【0045】
ラバルノズル3は、ハウジング9の雌ネジによって留められた雄ネジを備える。
【0046】
更に、コンジットパイプ4の円筒状の下流部は、ハウジング9の雌ネジによって留められた雄ネジを備える。
【0047】
本実施例において、ラバルノズル3及びコンジットパイプ4は、共に導電性材料から構成され、ハウジング9は非導電性材料から構成されている。
【0048】
プラズマ源1はプラズマ発生器11を更に備え、プラズマ発生器11は、プラズマ発生用の励起機構に応じて交流電源、直流電源、又は無線周波数電源であってもよい。プラズマ発生器11はラバルノズル3とコンジットパイプ4とに接続され、図中矢印によって示されているように、ラバルノズル3の下流端と、コンジットパイプ4の上流端との間の電離箱内で放電が行われる。
【0049】
ラバルノズル3の排気口7における超音速(M>1)の搬送ガス流によってラバルノズル3の排気口7におけるガス圧が減圧されることは既に上述されている。従って、搬送ガス流が、ガス粒子(例えば、イオン、電子、分子等)を電離箱10から運び去ることによって電離箱内を減圧し、プラズマ発生の効率を向上させる。
【0050】
更にハウジング9は、真空計等と連結するための連結部12を備える。
【0051】
図2は、本発明に係るプラズマ源13の他の実施例の断面図を示す。
【0052】
プラズマ源13は、ラバルノズル14と、ラバルノズル14内に同軸上に配設されたカップ状の電離箱15とを備える。
【0053】
更にプラズマ源13は、ラバルノズル14の上方前面に留められたカバープレート16を備える。カバープレート16には、プラズマ発生器に接続可能な高電圧接点17,18用のダクトがある。更に、カバープレート16は、電離箱15を支えるロッド19用のダクトを備える。ロッド19はネジによって固定され、ラバルノズル14内で電離箱15の軸位を調整するために矢印方向で軸調整することができる。
【0054】
更にラバルノズル14は、搬送ガス流をラバルノズル14内に導入するための吸気口20を備える。
【0055】
搬送ガスは、電離箱15の外壁と、ラバルノズル14の内壁との間にある環状間隙に流入し、当該電離箱がラバルノズル14の内壁に接触する、電離箱15の下流端に到達する。
【0056】
従って、電離箱15はノッチ21〜24(図11参照)を備え、ノッチ21〜24は電離箱15の下流端で電離箱の外壁15内に配置されるため、搬送ガスが、ノッチ21〜24を通じて流れることができる。
【0057】
更に、電離箱15は、高電圧接点17,18に接続された2つの電極25,26を備えるため、矢印に示されるように、電極25,26の間に励起が生じる。
【0058】
更に留意すべきは、ノッチ21〜24に流入する搬送ガスは、電離箱15の下流端で減圧を生じさせ、更に搬送ガス流によってガス粒子が電離箱15内から持ち去られることによって、電離箱15内のガス圧を減圧させると同時に、プラズマ効率が向上する。
【0059】
更に、プラズマ源13は、対象2の表面にプラズマを印加するための排気口27を下流端に備える。
【0060】
図3は、ラバルノズル14の代わりにコンジットパイプ14’を備えるプラズマ源13の変形例を示す。コンジットパイプ14’は、円筒状の上流部と、円錐状に広がる下流部と、先細りの中間部と、を備える。
【0061】
図4は、図2の実施例の変形例を示す。図中、電離箱15内にあるのは、単一の電極25だけであり、ラバルノズル14が、対電極として機能するため、導電性材料で形成されていることを特徴とする。
【0062】
更に留意すべきは、プラズマは電離箱15内で発生する。
【0063】
図5は、図4に係る実施例の変形例を示す。図中、ラバルノズル14の代わりに、図3に示すようにコンジットパイプ14’が用いられていることを特徴とする。
【0064】
図6は、図5に係る実施例の変形例を示す。図中、ラバルノズル14のボトルネック内において同軸上に配列された磁界を生じさせ、プラズマ発生を促進させる磁石28がラバルノズル14を包囲していることを特徴とする。
【0065】
図7は、図6に係る実施例の変形例を示す。図中、ラバルノズル14の代わりに、上述されたようにコンジットパイプ14’が用いられていることを特徴とする。
【0066】
図8は、図6に係る実施例の変形例を示す。図中、単一の中空陰極29が電離箱15内に配設されることによって、プラズマ発生が促進されていることを特徴とする。
【0067】
図9は、図8の実施例の変形例を示す。図中、排気口は、円錐状に広がっていることを特徴とする。
【0068】
図10は、中空陰極を形成する電離箱30の他の実施例の断面図である。図中、電離箱30は、導電性材料で構成され、絶縁性ハウジング31を備える。
【0069】
図11は、上述した図面に図示されているように、A−A線に沿った電離箱15の断面図である。図中、電離箱15は、その下流端にノッチ21〜24を備えることが示されている。
【0070】
図12は、非熱的プラズマを用いた患者33の治療用の医療機器32を示す。本実施例では、患者33の周りに配置されたプラズマ源が数個あり、様々な方角から患者33へ、プラズマを印加することができる。
【0071】
更に、図13は、手術部位36における組織を焼灼するための焼灼器を操作する外科医34を示す。本実施例では、上述のように、焼灼器35はプラズマ源を備える。
【0072】
図14は、図1に係る実施例の変形例を示す。説明については、図1に関連する上述の記載を参照されたい。
【0073】
しかしながら、ラバルノズル3とコンジットパイプ4はプラズマ発生器11に連結していない。代わりに、電離箱10内には、プラズマ励起用の電極37,38が2つある。
【0074】
電極37,38は、放射状に配列されるとともに、ラバルノズル3と、コンジットパイプ4との間のガス流に対して垂直な平面上に配置されている。
【0075】
電極37は接地され、電極38は交流/直流電源であるプラズマ発生器11に連結されている。
【0076】
図15は、図14に係る実施例の変形例を示す。説明については、図14に関連する上述の記載を参照されたい。
【0077】
しかしながら、電極37,38に連結される、直流電源であるプラズマ発生器11が2つある。
【0078】
図16は、図14に係る実施例の変形例を示す。説明については、図14に関連する上述の記載を参照されたい。
【0079】
しかしながら、非安定のパルスプラズマ励起がある。従って、直流電源であるプラズマ発生器11が、Rv1≒1MΩ,Rv2≒1Ω―100kΩの2つのレジスタと、接地されたC=1nFのコンデンサとを介して電極38に接続されている。プラズマ発生器11は、約U≒6kVの高電圧を発生させ、τCHARGE≒1ns−1msの充電時と、fDISCHARGE≒1kHzの放電周波数と、τPULSE≒1ns−10msのパルス持続時間とをもたらす。
【0080】
図17は、図14に係る実施例の変形例を示す。説明については、図14に関連する上述の記載を参照されたい。
【0081】
本実施例の格別な特徴の1つとして、電極37,38に組み込まれた永久磁石39,40があることが挙げられる。永久磁石39,40は、電離箱10内に磁界を発生させ、プラズマ発生を促進させる。
【0082】
図18は、図17に係る実施例の変形例を示す。説明については、図17に関連する上述の記載を参照されたい。
【0083】
しかしながら、電極37,38に連結した、直流電源であるプラズマ発生器11が2つある。
【0084】
最後に、図19は、図17に係る実施例の変形例を示す。説明については、図17に関連する上述の記載を参照されたい。
【0085】
しかしながら、非安定のパルスプラズマ励起がある。従って、直流電源であるプラズマ発生器11は、2つのレジスタRv1,Rv2と、接地されたコンデンサCと、を介して電極38に接続されている。
【0086】
以上、本発明は、各部の特定の構成、並びに特徴等に関連して記述されてきたが、これらは、各特徴部分の考えうる構成全てを意図するものではなく、当業者が他の多くの変形例や変更例を確認できることは明らかである。
【符号の説明】
【0087】
1 プラズマ源
2 対象
3 ラバルノズル
4 コンジットパイプ
5 吸気口
6 内壁
7 排気口
8 排気口
9 ハウジング
10 電離箱
11 プラズマ発生器
12 連結部
13 プラズマ源
14 ラバルノズル
14’ コンジットパイプ
15 電離箱
16 カバープレート
17,18 高電圧接点
19 ロッド
20 吸気口
21〜24 ノッチ
25,26 電極
27 排気口
28 磁石
29 中空陰極
30 電離箱
31 ハウジング
32 医療機器
33 患者
34 外科医
35 焼灼器
36 手術部位
37 電極
38 電極
39 永久磁石
40 永久磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ源(1;13)であり、特に傷の生体内殺菌に適した低温プラズマ発生用プラズマ源であって、
a)ガス流を搬送する導管(3,4;14;14’)と、
b)プラズマを内部発生させる電離箱(10;15;30)と、を備え、
c)前記電離箱(10;15;30)は、前記導管(3,4;14;14’)と連結し、該導管(3,4;14;14’)内のガス流が該電離箱(10;15;30)からガス粒子を運び去ることにより、該電離箱(10;15;30)内の圧力を減圧する、
ことを特徴とするプラズマ源(1;13)。
【請求項2】
a)前記導管(3,4)は、ノズル(3)を備え、
b)前記電離箱(10)は、前記ノズル(3)の上流で前記導管(3,4)と連結する、ことを特徴とする請求項1に記載のプラズマ源(1;13)。
【請求項3】
前記ノズル(3,14)は、ベンチュリノズル又はラバルノズルである、ことを特徴とする請求項2に記載のプラズマ源(1;13)。
【請求項4】
a)前記ノズル(3)の上流にある前記導管(3,4)内のガス流が亜音速(M<1)及び/又は、
b)前記ノズル(3)の下流にある前記導管(3,4)内のガス流が超音速(M>1)及び/又は、
c)前記ノズル(3)内のガス流が約(M≒1)の音速である、ことを特徴とする請求項2又は3に記載のプラズマ源(1)。
【請求項5】
前記電離箱(10)は環状であり、前記導管(3,4)を包囲する、ことを特徴とする前記請求項いずれか1項に記載のプラズマ源(1)。
【請求項6】
前記電離箱(10)内でのプラズマ放出が環状であり、該プラズマ放出が前記導管(3,4)を包囲する、ことを特徴とする請求項5に記載のプラズマ源(1)。
【請求項7】
a)前記電離箱(15;30)はカップ状であって流れ方向に開口するとともに、
b)前記電離箱(15;30)は前記導管(14;14’)の内部であり、特に前記ノズル(14)の内部に配設されている、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプラズマ源(13)。
【請求項8】
前記カップ状の電離箱(15;30)は軸方向に調整可能な軸位を有する、ことを特徴とする請求項8に記載のプラズマ源(13)。
【請求項9】
第1電極(26)及び第2電極(25)は、前記電離箱(15)内にプラズマを発生させるために設けられている、ことを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載のプラズマ源(13)。
【請求項10】
a)前記第1電極は前記ノズル(3)によって形成されており、
b)前記第2電極は前記導管(4)の円錐部によって形成され、該円錐部は流れ方向に先細であり該ノズル(3)を包囲している、
ことを特徴とする請求項9に記載のプラズマ源(13)。
【請求項11】
前記第1電極(26)及び前記第2電極(25)の双方は前記電離箱(15)内に配設される、ことを特徴とする請求項9に記載のプラズマ源(13)。
【請求項12】
a)前記第1電極(26)は、前記導管(14’)により特に前記ノズルによって形成されており、
b)前記第2電極(25)は、前記電離箱(10;15;30)内に単独で配設される、
ことを特徴とする請求項9に記載のプラズマ源(1;13)。
【請求項13】
a)マイクロ波が前記プラズマ発生によって前記電離箱(10)内に発生し、
b)前記電離箱(10)内で発生した前記マイクロ波は、プラズマ源(1)のマイクロ波照射を低減するように、前記電離箱(10)又は導電性材料からなるハウジングによって遮断されている、
ことを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載のプラズマ源(1)。
【請求項14】
前記電離箱(10)の内部から前記導管(3,4)の内部へ至り、かつ該導管(3,4)の前記排気口を通じて直接放射路がなく、前記プラズマ源(1)にプラズマ発生による電磁照射が実質的に生じない、
ことを特徴とする請求項13に記載のプラズマ源(1)。
【請求項15】
前記電離箱の内部から前記導管(14;14’)の内部に至り、かつ該導管(14;14’)の前記排気口を通る直接放射路があり、前記プラズマ源(13)が、プラズマ発生による電磁照射を行う、
ことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載のプラズマ源(13)。
【請求項16】
前記電離箱(10;15;30)は、少なくとも部分的に透明であり、該電離箱(10;15;30)内プラズマ発生の目視管理を可能にする壁を備える、ことを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載のプラズマ源(1;13)。
【請求項17】
前記電離箱(10;15;30)は、可視光線を透過すると共に紫外線を非透過にする材料からなる窓を備える、ことを特徴とする請求項16に記載のプラズマ源(1;13)。
【請求項18】
前記電離箱(10;15;30)は、真空計等と連結するための連結部(12)を備える、ことを特徴とする前記請求項いずれか1項に記載のプラズマ源(1;13)。
【請求項19】
前記電離箱(10;15;30)内、及び/又は、前記導管(3,4;14;14’)内の該電離箱(10;15;30)下流に磁界を発生させる磁石(28)を有しており、該磁界はプラズマ生成を促進させる、ことを特徴とする前記請求項いずれか1項に記載のプラズマ源(1;13)。
【請求項20】
a)前記導管(3,4;14;14’)は、前記導管(3,4;14;14’)内にガス流を導入するための吸気口(5;12)を備え、かつ、
b)前記導管(3,4;14;14’)は、混合プラズマが混ざったガス流を対象(2)に供給するための排気口(8;27)を備える、
ことを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載のプラズマ源(1;13)。
【請求項21】
前記電離箱(10;15;30)内で発生させた真空は、5mbarから900mbarの範囲である、ことを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載のプラズマ源(1;13)。
【請求項22】
前記導管(3,4;14;14’)内に導入されたガス流は、
a)周囲空気又は、
b)窒素又は、
c)希ガス、特にアルゴン又は、
d)添加物、特に二酸化炭素を有する前記ガスのうちいずれか1つ、を実質的に含む、ことを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載のプラズマ源(1;13)。
【請求項23】
前記導管(3,4;14;14’)内のガス流は、501/min.,401/min.,301/min.,201/min.,又は、101/min.未満である、ことを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載のプラズマ源(1;13)。
【請求項24】
プラズマ発生器11は、前記電離箱(10;15;30)内のプラズマの、
a)直流励起又は、
b)交流励起、特に無線周波数励起に用いられる、ことを特徴とする前記請求項いずれか1項に記載のプラズマ源(1;13)。
【請求項25】
前記プラズマは、100℃,75℃,50℃,40℃,又は、30℃未満の温度を有する、ことを特徴とする前記請求項いずれか1項に記載のプラズマ源(1;13)。
【請求項26】
前記導管(3,4;14;14’)内のガス流が、以下のガス粒子、
a)分子、
b)原子、
c)イオン、及び/又は、
d)電子を前記電離箱(10;15;30)から運び去る、ことを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載のプラズマ源(1;13)。
【請求項27】
医療機器(32;35)、特に殺菌器や焼灼器(5)であって、
前記請求項のいずれか1項に記載のプラズマ源(1;13)を備える、
ことを特徴とする医療機器(32;35)。
【請求項28】
非治療的用法であって、
対象(2)の処理のための、請求項1乃至25のいずれか1項に記載のプラズマ源(1;13)の非治療的用法。
【請求項29】
前記処理の対象(2)は、前記プラズマ源(1;13)により発生したプラズマによって除染される、ことを特徴とする請求項28に記載の用法。
【請求項30】
前記除染の対象(2)は、
a)電子回路、
b)電気部品、
c)電子部品、
d)宇宙船の部品、
e)宇宙船の部分組立部品、
f)宇宙服から成るグループから選ばれる、ことを特徴とする請求項29に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2010−530115(P2010−530115A)
【公表日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507823(P2010−507823)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【国際出願番号】PCT/EP2008/003568
【国際公開番号】WO2008/138504
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(310010782)
【Fターム(参考)】