説明

プラズモン励起センサおよび該センサを用いたアッセイ法

【課題】本発明は、高感度かつ高精度であり、イムノアッセイに必要不可欠である特異性に優れたプラズモン励起センサおよびそれを用いたアッセイ法,アッセイ用装置ならびにアッセイ用キットを提供することを目的とする。
【解決手段】そのプラズモン励起センサは、透明支持体と;該支持体の一方の表面に形成された金属薄膜と;該薄膜の、該支持体とは接していないもう一方の表面に形成された誘電体層と;該誘電体層の、該薄膜とは接していないもう一方の表面(S)のうち、その一部の領域(Sa)に形成された誘電体からなる被覆層と;該被覆層の、該誘電体層とは接していないもう一方の表面(T)に固定化されたリガンドとを含み、該誘電体層の厚さが、5nm以上100nm以下であり、該誘電体層と該被複層との合計の厚さが、100nmを超えて1μm以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズモン励起センサ,該センサを用いたアッセイ法,アッセイ用装置およびアッセイ用のキットに関する。さらに詳しくは、本発明は、表面プラズモン励起増強蛍光分光法〔SPFS;Surface Plasmon−field enhanced Fluorescence Spectroscopy〕の原理に基づき、表面プラズモンを利用するプラズモン励起センサ,該センサを用いたアッセイ法,アッセイ用装置およびアッセイ用のキットに関する。
【背景技術】
【0002】
SPFS〔表面プラズモン励起増強蛍光分光法〕とは、照射したレーザ光が金薄膜表面で全反射減衰〔ATR〕する条件において、誘電体に接触した金属薄膜表面に粗密波(表面プラズモン)を発生させることによって、照射したレーザ光が有するフォトン量を数十倍〜数百倍に増やし(表面プラズモンの電場増強効果)、これにより金属薄膜近傍の蛍光色素を効率良く励起させることによって、極微量および/または極低濃度のアナライトを検出することができる方法である。
【0003】
このようなSPFSを利用したバイオセンサとして、特許文献1には、結合型プラズモン導波路共鳴〔Coupled Plasmon−waveguide Resonance;CPWR〕に用いられる、金などからなる金属層を、SiO2などからなる固体誘電体層で被覆することによって、さらに広範囲の電磁スペクトルにも対応できる表面プラズモン共鳴分光装置が開示されている。
【0004】
しかしながら、このような装置は、励起光の散乱光などの迷光や部材の自家蛍光などによるノイズが発生しS/Nが低減する問題があることから改良の余地が認められる。
また、特許文献2には、ガラスと、その上に被覆した反射膜と、さらに該反射膜の上に誘電体材料または半導体材料によって形成された光導波路層と、該光導波路層の表面に化学修飾することによって固定化した分子認識基とを有する光導波モードセンサが提案されている。該光導波路層に細孔などの不規則な構造を形成することで、該光導波路層内に誘起される高い電場増強効果による誘電率変化を基本測定原理とする高感度な分子認識方法へ応用することも記載されている。
【0005】
しかしながら、このようなセンサは、増強電場を大きく乱す構造、一般的には数100nm以上の構造体となった時には、構造体形状が電場増強効果に影響を与えることから、構造体サイズとして極微小であることが求められる。そのため構造体形成が極めて難しく、特別な技術・装置が必要となる。また、細孔など構造体形状によっては測定分子の補足の障害となるという問題を孕んでいる。
【0006】
特許文献3に記載の分子分析検出方法は、被分析物質を含む試料と接触する試料接触面の微小な所定領域に、所定の励起光が照射された場合に、該所定領域上において該試料接触面の他の領域上と比較して該被分析物質から生じる光を増幅させる増強場を生じさせる増強部材を備えたサンプルプレートを用い、増強場により増強された光を検出する方法が提案されている。図2において、該サンプルプレートは、ガラス板などの透明支持体(1)の一表面の微小な所定領域を含む一部領域に金属薄膜(2)が設けられており、さらに金属薄膜(2)上の微小な所定領域に対応する箇所に被覆層(4)が設けられている。被覆層(4)は消光を防止するために設け、SiO2からなっていてもよく、その膜厚は10〜100nmである。不撓性膜の表面には抗体等を配置することができる。
【0007】
また、特許文献3には、ガラス基板などの誘電体プレートの一表面上に互いに異なる大きさ(面積)の2つの所定領域にそれぞれ該所定領域に応じた大きさの増強部材(金属膜)を設けたサンプルプレートも開示されている。
【0008】
このように同一基板上に誘電体層を形成し、その膜厚・大きさ(面積)によって電場増強を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2003−533691号公報
【特許文献2】特開2007−271597号公報
【特許文献3】特開2009−79970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、SPFSによる蛍光シグナルを向上させることができる高感度かつ高精度なプラズモン励起センサおよびそれを用いたアッセイ法,アッセイ用装置ならびにアッセイ用のキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意研究した結果、(i)金属薄膜の表面の一部に誘電体からなる被覆層をパターニングすることによって、該被覆層内に均一な電場増強場を制御することができ、その結果、SPFS測定の際にノイズを低減することができること,(ii)誘電体からなる被覆層がパターニングされている領域と該領域以外の金属薄膜とでは電場増強度が異なるため、該領域の電場増強度が著しく向上し、検出シグナルを増幅すること,(iii)誘電体層を2層設けた場合、電場増強度を制御し、よりシグナル向上・ノイズ低減ができること,(iv)誘電体からなる被覆層をパターニングした領域と金属薄膜領域とで異なるリガンドを使用することで、特異性が向上し、かつ測定対象物外のノイズが低減することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明のプラズモン励起センサは、透明支持体と;該支持体の一方の表面に形成された金属薄膜と;該薄膜の、該支持体とは接していないもう一方の表面に形成された誘電体層と;該誘電体層の、該薄膜とは接していないもう一方の表面(S)のうち、その一部の領域(Sa)に形成された誘電体からなる被覆層と;該被覆層の、該誘電体層とは接していないもう一方の表面(T)に固定化されたリガンドとを含み、該誘電体層の厚さが、5nm以上100nm以下であり、該誘電体層と該被複層との合計の厚さが、100nmを超えて1μm以下であることを特徴とする。
【0013】
本発明のプラズモン励起センサ(I),(II)において、上記被覆層は、二酸化ケイ素〔SiO2〕,二酸化チタン〔TiO2〕または酸化アルミニウム〔Al23〕を含むものが好ましい。
【0014】
本発明のプラズモン励起センサ(II)において、上記誘電体層は、二酸化ケイ素〔SiO2〕,二酸化チタン〔TiO2〕または酸化アルミニウム〔Al23〕を含むものが好ましい。
【0015】
本発明のプラズモン励起センサ(I),(II)において、上記金属薄膜は、金,銀,アルミニウム,銅および白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属から形成されていることが好ましく、該金属は、金からなることが好ましい。
【0016】
本発明のアッセイ法は、下記工程(a)〜(d)を含むことを特徴とする。
工程(a):本発明のプラズモン励起センサに、検体を接触させる工程,
工程(b):該工程(a)を経て得られたプラズモン励起センサに、さらに、該プラズモン励起センサに含まれるリガンドとは同じであっても異なっていてもよいリガンドと蛍光色素とのコンジュゲートを反応させる工程,
工程(c):該工程(b)を経て得られたプラズモン励起センサに、透明支持体の、上記金属薄膜を形成していないもう一方の表面から、プリズムを経由してレーザ光を照射し、励起された蛍光色素から発光された蛍光量を測定する工程,および
工程(d):該工程(c)で得られた測定結果から、検体中に含有されるアナライトの量を算出する工程。
【0017】
上記アナライトとは異なるアナライトであって、上記アナライトと競合するアナライトが、上記コンジュゲートと予め結合していてもよい。
上記検体は、血液,血清,血漿,尿,鼻孔液および唾液からなる群から選択される少なくとも1種の体液であることが好ましい。
【0018】
上記アナライトは、腫瘍マーカーまたはがん胎児性抗原であってもよい。
また、本発明のアッセイ用装置は、少なくとも、上記工程(b)を経て得られたプラズモン励起センサ,レーザ光の光源,光学フィルタ,プリズム,カットフィルタ,集光レンズおよび表面プラズモン励起増強蛍光検出部を含み、上記工程(c)に用いられることを特徴とする。
【0019】
そして、本発明のアッセイ用のキットは、少なくとも、透明支持体と上記金属薄膜と上記の誘電体からなる被覆層とを含むセンサおよび蛍光色素を含み、本発明のアッセイ法に用いられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、
(A)誘電体層〔誘電体層(1)〕の表面(S:例えば2mm×14mm;SaとSbとの和)に、数百μm2程度の一部の領域(Sa)に渡って誘電体からなる被覆層〔誘電体層(2)〕をパターニングすることによって、誘電体層(2)からなる領域(T;SaとTとの面積は等しい。)内に均一な電場増強場を設けることができ、その結果、SPFS測定の際にノイズを低減することができる;
(B)誘電体層(2)がパターニングされている領域(T)と、該領域(T)以外の誘電体層(1)(Sb)とでは電場増強度が著しく異なるため、該領域(T)の電場増強度が著しく向上し、検出シグナルを増幅することができる;
(C)同一の誘電体層(1)の表面(S)に、誘電体層(2)がパターニングされている領域(T)を1個または複数個形成し、それら領域(T)の総面積および誘電体層(2)の厚さ(屈折率〔nD〕)をそれぞれ制御すること(すなわち、電場増強度を適宜選択すること)によって、検出シグナルの強度をコントロールでき、測定のダイナミックレンジの調整が可能となる;
(D)領域(T)の誘電体の厚さが100nmを超えて1μm以下であり、領域(Sb)の誘電体の厚さが5〜100nmであるから、領域(T)では電場増強効果が著しく向上しているのに対して、領域(Sb)では電場増強度が抑制されているため、測定のダイナミックレンジが広がり(すなわち、アナライト濃度の低い検体にも対応でき)、シグナル増幅・ノイズ低減により優れる;ならびに
(E)領域(T)および領域(Sb)においてそれぞれ異なるリガンドを用いる(例えば、領域(T)にアナライト(標的抗原)に対する抗体を固定化し、領域(Sb)に夾雑物に対する抗体を固定化する)ことで、特異性が向上し、かつ測定対象物外に起因するノイズが低減する、
プラズモン励起センサおよびそれを用いたアッセイ法、アッセイ用装置ならびにアッセイ用のキットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1(a)〜(c)は、リガンドを固定化していない本発明のプラズモン励起センサの縦断面図を模式的に示す。
【図2】図2は、従来用いられている、リガンドを固定化していないセンサ縦断面図を模式的に示したものであって、ガラス板などの透明支持体(1)上にAu膜などの金属薄膜(2)が形成され、その上の一部分の領域に増強部材として誘電体などの被覆層(4)が設けられている。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明のプラズモン励起センサ,該センサを用いたアッセイ法,アッセイ用装置およびアッセイ用のキットについて、詳細に説明する。
<プラズモン励起センサ>
本発明のプラズモン励起センサは、透明支持体と;該支持体の一方の表面に形成された金属薄膜と;該薄膜の、該支持体とは接していないもう一方の表面に形成された誘電体層と;該誘電体層の、該薄膜とは接していないもう一方の表面(S)のうち、その一部の領域(Sa)に形成された誘電体からなる被覆層と;該被覆層の、該誘電体層とは接していないもう一方の表面(T)に固定化されたリガンドとを含み、該誘電体層の厚さが、5〜100nmであり、該誘電体層と該被複層との合計の厚さが、100nmを超えて1μmであることを特徴とする。例えば、リガンドを固定化する前のプラズモン励起センサとしては、図1(a)に示すように、透明支持体(1)と金属薄膜(2)と誘電体層(3)とがこの順序で積層し、誘電体層(3)の、金属薄膜(2)とは接していない一方の表面の一部に、誘電体からなる被覆層(4)が形成されている態様であってもよい。
【0023】
なお、SはSaとSbとの和に相当し、SaとTとは同じ大きさの面積を有する。また、「誘電体層」および「誘電体からなる被覆層」を、それぞれ「誘電体層(1)」および「誘電体層(2)」ともいう。
すなわち、本発明のプラズモン励起センサは、少なくとも、透明支持体,金属薄膜,誘電体層(1),誘電体層(2)およびリガンドを含むものである。
【0024】
〔透明支持体〕
本発明において、プラズモン励起センサの構造を支持する基板として透明支持体が用いられる。本発明において、基板として透明支持体を用いるのは、後述する金属薄膜への光照射をこの透明支持体を通じて行うからである。
【0025】
本発明で用いられる透明支持体について、本発明の目的が達せられる限り、材質に特に制限はない。例えば、この透明支持体が、ガラス製であってもよく、また、ポリカーボネート〔PC〕,シクロオレフィンポリマー〔COP〕などのプラスチック製であってもよい。
【0026】
また、d線(588nm)における屈折率〔nd〕が好ましくは1.40〜2.20であり、厚さが好ましくは0.01〜10mm、より好ましくは0.5〜5mmであれば、大きさ(縦×横)は特に限定されない。
【0027】
なお、ガラス製の透明支持体は、市販品として、ショット日本(株)製の「BK7」(屈折率〔nd〕1.52)および「LaSFN9」(屈折率〔nd〕1.85),(株)住田光学ガラス製の「K−PSFn3」(屈折率〔nd〕1.84),「K−LaSFn17」(屈折率〔nd〕1.88)および「K−LaSFn22」(屈折率〔nd〕1.90),ならびに(株)オハラ製の「S−LAL10」(屈折率〔nd〕1.72)などが、光学的特性と洗浄性との観点から好ましい。
【0028】
透明支持体は、その表面に金属薄膜を形成する前に、その表面を酸および/またはプラズマにより洗浄することが好ましい。
酸による洗浄処理としては、0.001〜1Nの塩酸中に、1〜3時間浸漬することが好ましい。
プラズマによる洗浄処理としては、例えば、プラズマドライクリーナー(ヤマト科学(株)製の「PDC200」)中に、0.1〜30分間浸漬させる方法が挙げられる。
【0029】
〔金属薄膜〕
本発明のプラズモン励起センサでは、上記透明支持体の一方の表面に金属薄膜を形成する。この金属薄膜は、光源からの照射光により表面プラズモン励起を生じ、電場を発生させ、蛍光色素の発光をもたらす役割を有する。
【0030】
上記透明支持体の一方の表面に形成された金属薄膜としては、金,銀,アルミニウム,銅および白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属からなることが好ましく、金からなることがより好ましい。これらの金属は、その合金の形態であってもよい。このような金属種は、酸化に対して安定であり、かつ表面プラズモンによる電場増強が大きくなることから好適である。
【0031】
なお、透明支持体としてガラス製の支持体を用いる場合には、ガラスと上記金属薄膜とをより強固に接着するため、あらかじめクロム,ニッケルクロム合金またはチタンの薄膜を形成することが好ましい。
【0032】
透明支持体上に金属薄膜を形成する方法としては、例えば、スパッタリング法,蒸着法(抵抗加熱蒸着法,電子線蒸着法等),電解メッキ,無電解メッキ法などが挙げられる。薄膜形成条件の調整が容易なことから、スパッタリング法または蒸着法によりクロムの薄膜および/または金属薄膜を形成することが好ましい。
【0033】
金属薄膜の厚さとしては、金:5〜500nm,銀:5〜500nm,アルミニウム:5〜500nm,銅:5〜500nm,白金:5〜500nm,およびそれらの合金:5〜500nmが好ましく、クロムの薄膜の厚さとしては、1〜20nmが好ましい。
【0034】
電場増強効果の観点から、金:20〜70nm,銀:20〜70nm,アルミニウム:10〜50nm,銅:20〜70nm,白金:20〜70nm,およびそれらの合金:10〜70nmがより好ましく、クロムの薄膜の厚さとしては、1〜3nmがより好ましい。
【0035】
金属薄膜の厚さが上記範囲内であると、表面プラズモンが発生し易いので好適である。また、このような厚さを有する金属薄膜であれば、大きさ(縦×横)は特に限定されない。
【0036】
〔誘電体層〕(=誘電体層(1))
本発明のプラズモン励起センサで用いる誘電体層(1)は、上記金属薄膜の、上記透明支持体とは接していないもう一方の表面に形成されたものである。
【0037】
誘電体層(1)の形成に用いられる誘電体としては、光学的に透明な各種無機物,天然または合成ポリマーを用いることもできる。その中で、化学的安定性,製造安定性および光学的透明性に優れていることから、二酸化ケイ素(シリカ)〔SiO2〕,二酸化チタン(チタニア)〔TiO2〕または酸化アルミニウム(アルミナ)〔Al23〕を含むことが好ましい。
【0038】
誘電体層(1)は、所定の波長で観察可能な範囲内の入射角で、または所定の入射角で観察可能な範囲内の波長で、共鳴を発生させるための屈折率および厚さの要件を満たす場合、このような誘電体層(1)は本発明の実施に用いることができる。誘電体層(1)の形成に用いられる上記誘電体以外の材料としては、例えば、フッ化マグネシウム〔MgF2〕,フッ化ランタン〔LaF3〕,氷晶石(クリオライト)〔Na3AlF6〕,硫化亜鉛〔ZnS〕,酸化ジルコニウム(ジルコニア)〔ZiO2〕,酸化イットリウム〔Y23〕,酸化ハフニウム〔HfO2〕,五酸化タンタル〔Ta35〕,酸化インジウムスズ〔ITO〕,ケイ素〔Si〕,アルミニウムの亜硝酸塩またはオキシ亜硝酸塩などが挙げられ、これらはすべて光学的用途で一般的に用いられ、誘電体層(1)の形成に用いることができる。
【0039】
誘電体層(1)の厚さは、5〜100nmであることが好ましい。誘電体層(1)の厚さが上記範囲内であると、電場増強が小さく測定エリア外の蛍光シグナルを低減できるため好適である。
【0040】
誘電体層(1)の形成方法としては、例えば、スパッタリング法,電子線蒸着法,熱蒸着法,化学反応による形成方法,またはリソグラフィー,スピンコータによる塗布などが挙げられる。これらのうち、膜厚制御の観点からスパッタリング法が好ましい。
【0041】
〔誘電体からなる被覆層〕(=誘電体層(2))
本発明のプラズモン励起センサで用いる誘電体層(2)は、誘電体層(1)の、上記金属薄膜とは接していないもう一方の表面(S)のうち、その一部の領域(Sa)に形成されたものである。
【0042】
誘電体層(1),(2)のそれぞれの屈折率は異なっていても同じであってもよい。
誘電体層(2)の形成に用いられる誘電体としては、光学的に透明な各種無機物,天然または合成ポリマーを用いることもできる。その中で、化学的安定性,製造安定性および光学的透明性に優れていることから、SiO2,TiO2またはAl23を含むことが好ましい。
【0043】
誘電体層(2)または誘電体層(1)と(2)との組み合わせが、所定の波長で観察可能な範囲内の入射角で、または所定の入射角で観察可能な範囲内の波長で、共鳴を発生させるための屈折率および厚さの要件を満たす場合、誘電体層(2)および誘電体層(1)と(2)との組み合わせは本発明の実施に用いることができる。誘電体層(2)の形成に用いられる上記誘電体以外の材料としては、例えば、誘電体層(1)の場合と同様、MgF2,LaF3,Na3AlF6,ZnS,ZiO2,Y23,HfO2,Ta35,ITO,Si,アルミニウムの亜硝酸塩またはオキシ亜硝酸塩が挙げられ、これらはすべて光学的用途で一般的に用いられ、誘電体層(2)の形成に用いることができる。
【0044】
誘電体層(2)の面積(T)は、本発明において特に限定されるものではないが、レーザ照射面積より小さく、上記金属薄膜の表面(S)が2mm×14mm=28mm2=2.8×107μm2であるとすると、1μm2〜1.5×107μm2が好ましい。誘電体層(2)の面積(T)が1μm2未満であると、誘電体層(2)上のリガンドを介して捕捉されるアナライト数が少なくなるため、シグナルを得ることが困難な場合がある。また、誘電体層(2)の面積(T)が1.5×107μm2を超えると、測定個所によるムラの影響を受けるという問題を生じることがある。
【0045】
なお、本発明において、誘電体層(1)の表面(S)は、上記金属薄膜の表面および上記透明支持体の表面と同じ面積を有し、流路の底面積と同じであっても、流路の底面積より小さくてもよい。
【0046】
誘電体層(2)の厚さは、100nmを超えることが好ましく、レーザ光の波長以上がより好ましい。誘電体層(2)の厚さが、100nm以下であると、得られる電場増強効果が小さい場合がある。
【0047】
誘電体層(2)の形成方法としては、例えば、スパッタリング法,電子線蒸着法,熱蒸着法,化学反応による形成方法,またはリソグラフィー,スピンコータによる塗布などが挙げられる。これらのうち、膜厚制御の観点からスパッタリング法が好適である。
【0048】
また、誘電体層(2)は同一の金属薄膜表面上に複数個所設けることが好ましい。膜厚および屈折率をそれぞれ同じ条件で複数個の誘電体層(2)を形成した場合であっても、膜厚または屈折率が異なる複数個の誘電体(2)を形成した場合であっても、同様にマルチ検出ができ、さらにダイナミックレンジを広域化(例えば、検体に含まれるアナライト濃度が高い場合に、より狭い面積の誘電体層(2)を用い、アナライト濃度が低い場合に、より広い面積の誘電体層(2)を用いることによって、低濃度から高濃度の検体に対応)できるため好適である。例えば、リガンドを固定化する前のプラズモン励起センサとしては、図1(b)に示すように、透明支持体(1)と金属薄膜(2)と誘電体層(3)とがこの順序で積層し、誘電体層(3)の、金属薄膜(2)とは接していない一方の表面の一部に、屈折率n1の誘電体からなる被覆層(4a)と屈折率n2の誘電体からなる被覆層(4b)とが形成されている態様であってもよく、図1(c)に示すように、該誘電体層(3)の、金属薄膜(2)とは接していない一方の表面の一部に、屈折率n1の誘電体からなる被覆層(4a)と、該被覆層(4b)とは厚さが異なる屈折率n2の誘電体からなる被覆層(4c)とが形成されている態様であってもよい。
【0049】
誘電体層(2)の屈折率は、誘電体層(2)を構成する誘電体の材料を適宜選択する、例えば、SiとSiO2との混合物等にすることによって屈折率を制御することができる。
【0050】
誘電体層(1)と誘電体層(2)との合計の厚さは、100nmを超えて1μmであり、好ましくは150〜1μmである。誘電体層(1)と(2)との合計の厚さが上記範囲内であると、電場増強度が極めて大きくなり、シグナル強度を大きくすることができるため好適である。
【0051】
電場増強度は誘電体層(1)+(2)の厚さに対して厳密であり、その分布はある間隔をもって電場増強のピーク(極大値)を有する。種々の材料に依存する電場増強ピークはいずれも150〜1000nmの範囲で複数点ある。誘電体層を構成する材料の屈折率条件のうち、本発明の作用効果を奏する範囲内で好適な厚さを適宜調整することができる。種々の材料を検討した結果、いずれの材料であっても100nm以下の厚さでは電場増強が極めて小さくなることがわかった。
【0052】
〔リガンド〕
本発明で用いられるリガンドは、誘電体層(1)の、金属薄膜とは接していないもう一方の表面(S)のうち、該領域(Sa)以外の領域(Sb)にリガンド(Y)が任意に固定化され、さらに上記誘電体層(2)の、誘電体層(1)とは接していないもう一方の表面(T)にリガンド(X)が固定化されている。
【0053】
本発明で用いられるリガンド(X)は、本発明のプラズモン励起センサを本発明のアッセイ法に用いた際に、検体中のアナライトを固定(捕捉)させる目的で用いられるものである。また、リガンド(Y)は、本発明のプラズモン励起センサを本発明のアッセイ法に用いた際に、検体中の特定の夾雑物を固定(捕捉)させる目的で用いられるものである。
【0054】
本明細書において、本発明のアッセイ法に用いる「リガンドと蛍光色素とのコンジュゲート」のリガンドと区別するために、本発明のプラズモン励起センサで用いるリガンド(X)を以下「第1のリガンド」とし、本発明のアッセイ法に用いるリガンドを以下「第2のリガンド」とする。なお、第1のリガンドと第2のリガンドは同じであっても異なっていてもよい。
【0055】
本発明において、第1のリガンドとは、検体中に含有されるアナライトを特異的に認識し(または、認識され)結合し得る分子または分子断片をいう。このような「分子」または「分子断片」としては、例えば、核酸(一本鎖であっても二本鎖であってもよいDNA,RNA,ポリヌクレオチド,オリゴヌクレオチド,PNA〔ペプチド核酸〕等、またはヌクレオシド,ヌクレオチドおよびそれらの修飾分子),タンパク質(ポリペプチド,オリゴペプチド等),アミノ酸(修飾アミノ酸も含む。),糖質(オリゴ糖,多糖類,糖鎖等),脂質,またはこれらの修飾分子,複合体などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
「タンパク質」としては、例えば、抗体などが挙げられ、具体的には、抗αフェトプロテイン〔AFP〕モノクローナル抗体((株)日本医学臨床検査研究所などから入手可能),抗ガン胎児性抗原〔CEA〕モノクローナル抗体,抗CA19−9モノクローナル抗体,抗PSAモノクローナル抗体などが挙げられる。
【0057】
なお、本発明において、「抗体」という用語は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体,遺伝子組換えにより得られる抗体,および抗体断片を包含する。
この第1のリガンドの固定化方法としては、例えば、カルボキシメチルデキストランなどの反応性官能基を有する高分子が有するカルボキシル基を、水溶性カルボジイミド〔WSC〕(例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩〔EDC〕等)とN−ヒドロキシコハク酸イミド〔NHS〕とにより活性エステル化し、このように活性エステル化したカルボキシル基と、第1のリガンドが有するアミノ基とを水溶性カルボジイミドを用いて脱水反応させ固定化させる方法;下記SAMが有するカルボキシル基を、上述のようにして第1のリガンドが有するアミノ基と脱水反応させ固定化させる方法などが挙げられる。
【0058】
なお、後述する検体等がプラズモン励起センサに非特異的に吸着することを防止するため、上記リガンドを固定化させた後に、プラズモン励起センサの表面を牛血清アルブミン〔BSA〕等のブロッキング剤により処理することが好ましい。
【0059】
(SAM)
SAM〔Self−Assembled Monolayer;自己組織化単分子膜〕は、アッセイエリア(誘電体層(2)(T)に相当する。)に形成されることが望ましいが、誘電体層(1)の、金属薄膜とは接していないもう一方の表面(S)のうちの領域(Sb)に形成されていてもよい。
【0060】
このSAMが含む単分子としては、加水分解でシラノール基〔Si-OH〕を与えるエトキシ基(またはメトキシ基)を有し、他端にチオール基,アミノ基,グリシジル基,カルボキシル基などの反応基を有するシランカップリング剤であれば特に限定されず、従来公知のシランカップリング剤を用いることができる。
このようなSAMの形成方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
【0061】
<アッセイ法>
本発明のアッセイ法は、下記工程(a)〜(d)、好ましくはさらに洗浄工程を含むことを特徴とするものである。
【0062】
工程(a):本発明のプラズモン励起センサに、検体を接触させる工程;
工程(b):該工程(a)を経て得られたプラズモン励起センサに、さらに、該プラズモン励起センサに含まれるリガンドとは同じであっても異なっていてもよいリガンドと蛍光色素とのコンジュゲートを反応させる工程;
工程(c):該工程(b)を経て得られたプラズモン励起センサに、上記透明支持体の、上記金属薄膜を形成していないもう一方の表面から、プリズムを経由してレーザ光を照射し、励起された蛍光色素から発光された蛍光量を測定する工程;
工程(d):該工程(c)で得られた測定結果から、検体中に含有されるアナライトの量を算出する工程;ならびに
洗浄工程:上記工程(a)を経て得られたプラズモン励起センサの表面および/または上記工程(b)を経て得られたプラズモン励起センサの表面を洗浄する工程。
【0063】
〔工程(a)〕
工程(a)は、本発明のプラズモン励起センサに、検体を接触させる工程である。
【0064】
(検体)
検体としては、例えば、血液(血清・血漿),尿,鼻孔液,唾液,便,体腔液(髄液,腹水,胸水等)などが挙げられ、所望の溶媒、緩衝液等に適宜希釈して用いてもよい。これら検体のうち、血液,血清,血漿,尿,鼻孔液および唾液が好ましい。
【0065】
(接触)
接触としては、流路中に循環する送液に検体が含まれ、プラズモン励起センサの第1のリガンドが固定化されている片面のみが該送液中に浸漬されている状態において、プラズモン励起センサと検体とを接触させる態様が好ましい。
【0066】
「流路」の材料としては、プラズモン励起センサ部または流路天板ではメチルメタクリレート、スチレン等を原料として含有するホモポリマーまたは共重合体;ポリエチレン等のポリオレフィンなどからなり、薬液送達部ではシリコンゴム,テフロン(登録商標),ポリエチレン,ポリプロピレン等のポリマーを用いる。
【0067】
プラズモン励起センサ部においては、検体との接触効率を高め、拡散距離を短くする観点から、プラズモン励起センサ部の流路の断面として、縦×横がそれぞれ独立に100nm〜1mm程度が好ましい。
【0068】
流路にプラズモン励起センサを固定する方法としては、小規模ロット(実験室レベル)では、まず、プラズモン励起センサの金属薄膜が形成されている表面に、流路高さ0.5mmを有するポリジメチルシロキサン〔PDMS〕製シートを該プラズモン励起センサの金属薄膜が形成されている部位を囲むようにして圧着し、次に、該ポリジメチルシロキサン〔PDMS〕製シートとプラズモン励起センサとをビス等の閉め具により固定する方法が好ましい。
【0069】
工業的に製造される大規模ロット(工場レベル)では、流路にプラズモン励起センサを固定する方法としては、プラスチックの一体成形品に銀基板を形成、または別途作製した銀基板を固定し、金属薄膜表面に誘電体層(1)および誘電体層(2)または誘電体層(2)のみおよびリガンド固定化を行った後、流路天板に相当するプラスチックの一体成形品により蓋をすることで製造できる。必要に応じてプリズムを流路に一体化することもできる。
【0070】
「送液」としては、検体を希釈した溶媒または緩衝液と同じものが好ましく、例えば、リン酸緩衝生理食塩水〔PBS〕,トリス緩衝生理食塩水〔TBS〕,Hepes緩衝生理食塩水〔HBS〕などが挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0071】
送液を循環させる温度および時間としては、検体の種類などにより異なり、特に限定されるものではないが、通常20〜40℃×1〜60分間、好ましくは37℃×5〜15分間である。
【0072】
送液中の検体中に含有されるアナライトの初期濃度は、0.001pg/mL〜100μg/mLであってもよい。
送液の総量、すなわち流路の容積としては、通常0.001〜20mL、好ましくは0.1〜1mLである。
送液の流速は、通常1〜2,000μL/min、好ましくは5〜500μL/minである。
【0073】
(洗浄工程)
洗浄工程とは、上記工程(a)を経て得られたプラズモン励起センサの表面および/または下記工程(b)を経て得られたプラズモン励起センサの表面を洗浄する工程である。
【0074】
洗浄工程に使用される洗浄液としては、例えば、工程(a)および(b)の反応で用いたものと同じ溶媒または緩衝液に、Tween20,TritonX100などの界面活性剤を溶解させ、好ましくは0.00001〜1重量%含有するもの、または塩化ナトリウムや塩化カリウムなどの塩を150〜500mM含有するものが望ましい。あるいは、低pHの緩衝液、例えば、10mM Glycine HClでpHが1.5〜4.0のものであってもよい。
【0075】
洗浄液を循環させる温度および流速は、上記工程(a)の送液を循環させる温度および流速と同じであることが好ましい。
洗浄液を循環させる時間は、通常0.5〜180分間、好ましくは5〜60分間である。
【0076】
〔工程(b)〕
工程(b)とは、上記工程(a)、好ましくは上記洗浄工程を経て得られたプラズモン励起センサに、さらに、該プラズモン励起センサに含まれるリガンド(第1のリガンド)とは同じであっても異なっていてもよいリガンド(第2のリガンド)と蛍光色素とのコンジュゲートを反応させる工程である。
【0077】
(蛍光色素)
蛍光色素とは、本発明において、所定の励起光を照射する、または電界効果を利用して励起することによって蛍光を発光する物質の総称であり、該蛍光は、燐光など各種の発光も包含する。
【0078】
本発明で用いられる蛍光色素は、金属薄膜による吸光に起因する消光を受けない限りにおいて、その種類に特に制限はなく、公知の蛍光色素のいずれであってもよい。一般に、単色比色計〔monochromometer〕よりむしろフィルタを備えた蛍光計の使用をも可能にし、かつ検出の効率を高める大きなストークス・シフトを有する蛍光色素が好ましい。
【0079】
このような蛍光色素としては、例えば、フルオレセイン・ファミリーの蛍光色素(Integrated DNA Technologies社製),ポリハロフルオレセイン・ファミリーの蛍光色素(アプライドバイオシステムズジャパン(株)製),ヘキサクロロフルオレセイン・ファミリーの蛍光色素(アプライドバイオシステムズジャパン(株)製),クマリン・ファミリーの蛍光色素(インビトロジェン(株)製),ローダミン・ファミリーの蛍光色素(GEヘルスケア バイオサイエンス(株)製),シアニン・ファミリーの蛍光色素,インドカルボシアニン・ファミリーの蛍光色素,オキサジン・ファミリーの蛍光色素,チアジン・ファミリーの蛍光色素,スクアライン・ファミリーの蛍光色素,キレート化ランタニド・ファミリーの蛍光色素,BODIPY(登録商標)・ファミリーの蛍光色素(インビトロジェン(株)製),ナフタレンスルホン酸・ファミリーの蛍光色素,ピレン・ファミリーの蛍光色素,トリフェニルメタン・ファミリーの蛍光色素,Alexa Fluor(登録商標)色素シリーズ(インビトロジェン(株)製)などが挙げられ、さらに米国特許番号第6,406,297号、同第6,221,604号、同第5,994,063号、同第5,808,044号、同第5,880,287号、同第5,556,959号および同第5,135,717号に記載の蛍光色素も本発明で用いることができる。
【0080】
これらファミリーに含まれる代表的な蛍光色素の吸収波長(nm)および発光波長(nm)を表1に示す。
【0081】
【表1】

また、蛍光色素は、上記有機蛍光色素に限られない。例えば、例えばEu,Tb等の希土類錯体系の蛍光色素も、本願発明に用いられる蛍光色素となりうる。希土類錯体は、一般的に励起波長(310〜340nm程度)と発光波長(Eu錯体で615nm付近、Tb錯体で545nm付近)との波長差が大きく、蛍光寿命が数百マイクロ秒以上と長い特徴がある。市販されている希土類錯体系の蛍光色素の一例としては、ATBTA−Eu3+が挙げられる。
【0082】
本発明においては、後述する蛍光測定を行う際に、金属薄膜に含まれる金属による吸光の少ない波長領域に最大蛍光波長を有する蛍光色素を用いることが望ましい。例えば、金属薄膜として金を用いる場合には、金薄膜による吸光による影響を最小限に抑えるため、最大蛍光波長が600nm以上である蛍光色素を使用することが望ましい。したがって、この場合には、Cy5,Alexa Fluor(登録商標)647等近赤外領域に最大蛍光波長を有する蛍光色素を用いることが特に望ましい。このような近赤外領域に最大蛍光波長を有する蛍光色素を用いることは、血液中の血球成分由来の鉄による吸光の影響を最小限に抑えることができる点で、検体として血液を用いる場合においても有用である。一方、金属薄膜として銀を用いる場合には、最大蛍光波長が400nm以上である蛍光色素を使用することが望ましい。
これら蛍光色素は1種単独でも、2種以上併用してもよい。
【0083】
(第2のリガンドと蛍光色素とのコンジュゲート)
本発明のプラズモン励起センサに含まれるリガンド(第1のリガンド)とは同じであっても異なっていてもよいリガンド(第2のリガンド)と蛍光色素とのコンジュゲートは、リガンドとして2次抗体を用いる場合、検体中に含有されるアナライト(標的抗原)を認識し結合し得る抗体であることが好ましい。
【0084】
本発明のアッセイ法において、第2のリガンドは、アナライトに蛍光色素による標識化を行う目的で用いられるリガンドであり、第1のリガンドと同じでもよいし、異なっていてもよい。ただし、第1のリガンドとして用いる1次抗体がポリクローナル抗体である場合、第2のリガンドとして用いる2次抗体は、モノクローナル抗体であってもポリクローナル抗体であってもよいが、該1次抗体がモノクローナル抗体である場合、2次抗体は、該1次抗体が認識しないエピトープを認識するモノクローナル抗体であるか、またはポリクローナル抗体であることが望ましい。
【0085】
さらに、検体中に含有されるアナライト(標的抗原)と競合する第2のアナライト(競合抗原;ただし、標的抗原とは異なるものである。)と2次抗体とがあらかじめ結合した複合体を用いる態様も好ましい。このような態様は、蛍光信号(蛍光シグナル)量と標的抗原量とを比例させることができるため好適である。
【0086】
第2のリガンドと蛍光色素とのコンジュゲートの作製方法としては、第2のリガンドとして2次抗体を用いる場合、例えば、まず蛍光色素にカルボキシル基を付与し、該カルボキシル基を、水溶性カルボジイミド〔WSC〕(例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩〔EDC〕等)とN−ヒドロキシコハク酸イミド〔NHS〕とにより活性エステル化し、次いで活性エステル化したカルボキシル基と2次抗体が有するアミノ基とを水溶性カルボジイミドを用いて脱水反応させ固定化させる方法;イソチオシアネートおよびアミノ基をそれぞれ有する2次抗体および蛍光色素を反応させ固定化する方法;スルホニルハライドおよびアミノ基をそれぞれ有する2次抗体および蛍光色素を反応させ固定化する方法;ヨードアセトアミドおよびチオール基をそれぞれ有する2次抗体および蛍光色素を反応させ固定化する方法;ビオチン化された蛍光色素とストレプトアビジン化された2次抗体(あるいは、ストレプトアビジン化された蛍光色素とビオチン化された2次抗体)とを反応させ固定化する方法などが挙げられる。
【0087】
このように作製された第2のリガンドと蛍光色素とのコンジュゲートの送液中の濃度は、0.001〜10,000μg/mLが好ましく、1〜1,000μg/mLがより好ましい。
送液を循環させる温度、時間および流速は、それぞれ上記工程(a)の場合と同様である。
【0088】
〔工程(c)〕
工程(c)とは、上記工程(b)を経て得られたプラズモン励起センサに、上記透明支持体の、上記金属薄膜を形成していないもう一方の表面から、プリズムを経由してレーザ光を照射し、励起された蛍光色素から発光された蛍光量を測定する工程である。
【0089】
(光学系)
本発明のアッセイ法で用いる光源は、金属薄膜にプラズモン励起を生じさせることができるものであれば、特に制限がないものの、波長分布の単一性および光エネルギーの強さの点で、レーザ光を光源として用いることが好ましい。レーザ光は、光学フィルタを通して、プリズムに入射する直前のエネルギーおよびフォトン量を調節することが望ましい。
【0090】
レーザ光の照射により、全反射減衰条件〔ATR〕において、金属薄膜の表面に表面プラズモンが発生する。表面プラズモンの電場増強効果により、照射したフォトン量の数十〜数百倍に増えたフォトンにより蛍光色素を励起する。なお、該電場増強効果によるフォトン増加量は、透明支持体の屈折率,金属薄膜の金属種およびその膜厚に依存するが、通常、金では約10〜20倍の増加量となる。
【0091】
蛍光色素は、光吸収により分子内の電子が励起され、短時間のうちに第一電子励起状態に移動し、この状態(準位)から基底状態に戻る際、そのエネルギー差に相当する波長の蛍光を発する。
【0092】
「レーザ光」としては、例えば、波長200〜900nm、0.001〜1,000mWのLD、波長230〜800nm(金属薄膜に用いる金属種によって共鳴波長が決まる。)、0.01〜100mWの半導体レーザなどが挙げられる。
【0093】
「プリズム」は、各種フィルタを介したレーザ光が、プラズモン励起センサに効率よく入射することを目的としており、屈折率が上記透明支持体と同じであることが好ましい。本発明は、全反射条件を設定できる各種プリズムを適宜選択することができることから、角度、形状に特に制限はなく、例えば、60度分散プリズムなどであってもよい。このようなプリズムの市販品としては、上述した「ガラス製の透明支持体」の市販品と同様のものが挙げられる。
【0094】
「光学フィルタ」としては、例えば、減光〔ND〕フィルタ、ダイアフラムレンズなどが挙げられる。「減光〔ND〕フィルタ」(または、中性濃度フィルタ)は、入射レーザ光量を調節することを目的とするものである。特に、ダイナミックレンジの狭い検出器を使用するときには精度の高い測定を実施する上で用いることが好ましい。
【0095】
「偏光フィルタ」は、レーザ光を、表面プラズモンを効率よく発生させるP偏光とするために用いられるものである。
「カットフィルタ」は、外光(装置外の照明光),励起光(励起光の透過成分),迷光(各所での励起光の散乱成分),プラズモンの散乱光(励起光を起源とし、プラズモン励起センサ表面上の構造体または付着物などの影響で発生する散乱光)などの光学ノイズ、および蛍光色素の自家蛍光を除去するフィルタであって、例えば、干渉フィルタ,色フィルタなどが挙げられる。
【0096】
「集光レンズ」は、検出器に蛍光シグナルを効率よく集光することを目的とするものであり、任意の集光系でよい。簡易な集光系として、顕微鏡などで使用されている、市販の対物レンズ(例えば、(株)ニコン製またはオリンパス(株)製等)を転用してもよい。対物レンズの倍率としては、10〜100倍が好ましい。
【0097】
「SPFS検出部」としては、超高感度の観点からは光電子増倍管(浜松ホトニクス(株)製のフォトマルチプライヤー)が好ましい。また、これらに比べると感度は下がるが、画像として見ることができ、かつノイズ光の除去が容易なことから、多点計測が可能なCCDイメージセンサも好適である。
【0098】
〔工程(d)〕
工程(d)とは、上記工程(c)で得られた測定結果から、検体中に含有されるアナライトの量を算出する工程である。
【0099】
より具体的には、工程(d)は、既知濃度の標的抗原もしくは標的抗体での測定を実施することで検量線を作成し、作成された検量線に基づいて被測定検体中のアナライト(標的抗原量もしくは標的抗体)量を測定シグナルから算出する工程である。
【0100】
(アナライト)
アナライトとしては、第1のリガンドに特異的に認識され(または、認識し)結合し得る分子または分子断片であって、このような「分子」または「分子断片」としては、例えば、核酸(一本鎖であっても二本鎖であってもよいDNA,RNA,ポリヌクレオチド,オリゴヌクレオチド,PNA〔ペプチド核酸〕等,またはヌクレオシド,ヌクレオチドおよびそれらの修飾分子),タンパク質(ポリペプチド,オリゴペプチド等),アミノ酸(修飾アミノ酸も含む。),糖質(オリゴ糖,多糖類,糖鎖等),脂質,またはこれらの修飾分子,複合体などが挙げられ、具体的には、AFP〔αフェトプロテイン〕等のがん胎児性抗原や腫瘍マーカー,シグナル伝達物質,ホルモンなどであってもよく、特に限定されない。
【0101】
(アッセイシグナル変化量)
さらに、工程(d)は、上記工程(b)の前に測定したシグナルを“ブランクシグナル”としたとき、下記式で表されるアッセイシグナル変化量を算出することができる。
シグナル変化量=|(アッセイ蛍光シグナル)−(ブランク蛍光シグナル)|
【0102】
<アッセイ用装置>
本発明のアッセイ用装置は、少なくとも、上記工程(b)を経て得られたプラズモン励起センサ,レーザ光の光源,光学フィルタ,プリズム,カットフィルタ,集光レンズおよび表面プラズモン励起増強蛍光検出部を含み、上記工程(c)に用いられることを特徴とするものである。
【0103】
すなわち、本発明の装置は、本発明のプラズモン励起センサを用いて、本発明のアッセイ法を実施するためのものである。
このような装置としては、少なくともレーザ光の光源,各種光学フィルタ,プリズム,カットフィルタ,集光レンズおよび表面プラズモン励起増強蛍光〔SPFS〕検出部を含むものとし、検体液,洗浄液または標識抗体液などを取り扱う際に、プラズモン励起センサと組み合った送液系を有することが好ましい。送液系としては、例えば、送液ポンプと連結したマイクロ流路デバイスなどでもよい。
【0104】
また、表面プラズモン共鳴〔SPR〕検出部、すなわちSPR専用の受光センサとしてのフォトダイオード,SPRおよびSPFSの最適角度を調製するための角度可変部(サーボモータで全反射減衰〔ATR〕条件を求めるためにフォトダイオードと光源とを同期して、45〜85°の角度変更を可能とする。分解能は0.01°以上が好ましい。)、SPFS検出部に入力された情報を処理するためのコンピュータなども含んでもよい。さらに、誘電体層(2)を複数個設けたプラズモン励起センサを用いる場合、スプリッタも含むことができる。
【0105】
光源,光学フィルタ,カットフィルタ,集光レンズおよびSPFS検出部の好ましい態様は上述したものと同様である。
「送液ポンプ」としては、例えば、送液が微量な場合に好適なマイクロポンプ,送り精度が高く脈動が少ないが循環することができないシリンジポンプ,簡易で取り扱い性に優れるが微量送液が困難な場合があるチューブポンプなどが挙げられる。
【0106】
<アッセイ用のキット>
本発明のアッセイ用のキットは、少なくとも、上記透明支持体と上記金属薄膜と上記の誘電体からなる被覆層(誘電体層(2))とを含むセンサおよび蛍光色素を含み、本発明のアッセイ法に用いられることを特徴とするものであって、アッセイ法を実施するにあたり、1次抗体,抗原などのリガンド,検体および2次抗体以外に必要とされるすべてのものを含むことが好ましい。
【0107】
本発明のアッセイ用のキットと、検体として、例えば、血液,血漿または血清と、特定の腫瘍マーカーに対する抗体とを用いることによって、特定の腫瘍マーカーの含有量を、高感度かつ高精度で検出することができる。この結果から、触診などによって検出することができない前臨床期の非浸潤癌(上皮内癌)の存在も高精度で予測することができる。
【0108】
このようなキットとしては、具体的に、透明支持体と,該支持体の一方の表面に形成された上記金属薄膜と,該薄膜の、該支持体とは接していないもう一方の表面に形成された上記の誘電体からなる被覆層(誘電体層(2))とを含むセンサ;SAMを形成するためのシランカップリング剤;蛍光色素;検体を溶解または希釈するための溶解液または希釈液;プラズモン励起センサと検体とを反応させるための各種反応試薬および洗浄試薬が挙げられ、本発明のアッセイ法を実施するために必要とされる各種器材または資材や上記アッセイ用装置を含めることもできる。
【0109】
さらに、キット要素として、検量線作成用の標準物質,説明書,多数検体の同時処理ができるマイクロタイタープレートなどの必要な器材一式などを含んでもよい。
【実施例】
【0110】
次に、本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0111】
[作製例1](Alexa Fluor(登録商標)647標識2次抗体の作製)
2次抗体として、抗αフェトプロテイン〔AFP〕モノクローナル抗体(6D2,2.5mg/mL、(株)日本医学臨床検査研究所製)を、市販のビオチン化キット((株)同仁化学研究所製)を用いてビオチン化した。その手順は、該キットに添付のプロトコールに従った。
【0112】
次に、得られたビオチン化抗AFPモノクローナル抗体の溶液とストレプトアビジン標識Alexa Fluor(登録商標)647(Molecular Probes社製)溶液とを混合し、4℃で60分間、攪拌混合することで反応させた。
【0113】
最後に、未反応抗体および未反応酵素を、分子量カットフィルタ(日本ミリポア(株)製)を用いて精製することで、Alexa Fluor(登録商標)647標識抗AFPモノクローナル抗体溶液を得た。
【0114】
(プラズモン励起センサの製造)
[実施例1]
透明支持体(BK7;屈折率1.51,厚さ1mm,2mm×14mm)に、スパッタリング法により金からなる薄膜を形成した。このようにして得られた金薄膜の、該支持体とは接していないもう一方の表面にSiO2をスパッタリング法にて蒸着することによって誘電体層(1)を形成した。誘電体層(1)の厚さは5nmであった。該支持体とは接していないもう一方の表面(S)の上に、誘電体層(2)を形成するその一部の領域(Sa)以外の領域(Sb)に遮光板を置き、誘電体層(2)に用いる誘電体の材料としてSiO2をスパッタリング法にて蒸着を行った。このときの誘電体層(1)+(2)の厚さは1000nm、誘電体層(2)の面積は1.3×105μm2、屈折率〔nD〕は1.54であった。
【0115】
このようにして得られた支持体を、(Me)2SiCl−(CH23-CONHS(アルテック(株)製)を1mM含むエタノール溶液に24時間以上浸漬し、誘電体薄膜の片面にSAM〔Self Assembled Monolayer;自己組織化単分子膜〕を形成した。支持体を該溶液から取り出し、エタノールおよびイソプロパノールで洗浄した後、エアガンで乾燥させた。
【0116】
SAMの表面に、流路高さ0.5mmを有するポリジメチルシロキサン〔PDMS〕製シートを設け、SAM表面が流路の内側となるように支持体を配置し(ただし、該シリコンゴムスペーサは送液に触れない状態とする。)、流路の外側から圧着し、ビスで流路シートと該支持体とを固定した。
【0117】
続いて、N−ヒドロキシコハク酸イミド〔NHS〕を50mMと、水溶性カルボジイミド〔WSC〕を100mMとを含むPBSを5mL送液し、20分間循環送液させた後に、抗αフェトプロテイン〔AFP〕モノクローナル抗体(1D5,2.5mg/mL、(株)日本医学臨床検査研究所製)溶液2.5mLを30分間循環送液することで、SAM上に1次抗体を固相化した。なお、1重量%牛血清アルブミン〔BSA〕を含むPBS緩衝生理食塩水にて30分間循環送液することで、非特異的吸着防止処理を行った。
【0118】
[実施例2]
実施例1において、誘電体層(1)+(2)の厚さを400nmに変更した以外は実施例1と同様にしてプラズモン励起センサを製造した。
【0119】
[実施例3]
実施例2において、誘電体層(2)としてTiO2を用いて屈折率〔nD〕を1.8に変更した以外は実施例2と同様にしてプラズモン励起センサを製造した。
(複数個の誘電体層(2)を有するプラズモン励起センサの製造)
【0120】
[実施例4]
実施例1において、金薄膜の形成後かつ誘電体層(2)の形成前に、厚さのみが異なる誘電体層(2)を2個形成した以外は実施例1と同様にしてプラズモン励起センサを製造した。
【0121】
2個の誘電体層(2)の形成方法として、具体的には、金薄膜の表面に、誘電体層(2)を形成する領域以外の領域に遮光板を置き、1つはSiO2をスパッタリング法にて蒸着し、さらにもう1つはSi/SiO2=30重量%にしてスパッタリングを行い、誘電体層(2)を2個形成した。これら誘電体層(2)形成時のスパッタリング時間をそれぞれ30分間,60分間とすることによって、厚さを400nm,1000nmとする誘電体層(1)+(2)が2個得られた。なお、面積はともに1.0×106μm2であった。
【0122】
(製造したプラズモン励起センサを用いたアッセイ法の実施)
[実施例5]
工程(a)として、まず、実施例1で得られたプラズモン励起センサに標的抗原としてAFPを1ng/mL含むPBS溶液を0.5mL添加し、25分間循環させた。
【0123】
工程(b)として、Tween20を0.05重量%含むトリス緩衝生理食塩水〔TBS〕を送液として10分間循環させることによって洗浄した後、作製例1で得られたAlexa Fluor(登録商標)647標識2次抗体(1,000ng/mLとなるように調製したPBS溶液)を2.5mL添加し、20分間循環させた。
【0124】
工程(c)として、まず、Tween20を0.05重量%含むTBSを送液として10分間循環させることによって洗浄した。プラズモン励起センサに、ガラス製の透明支持体の、金薄膜を形成していないもう一方の表面から、プリズム(シグマ光機(株)製)を経由してレーザ光(640nm,40μW)を照射し、励起された蛍光色素から発光された蛍光量をCCDから観察したときのシグナル値を計測し「アッセイシグナル」とした。
【0125】
なお、AFPが0ng/mLの場合におけるSPFSシグナルを「アッセイノイズシグナル」とした。
工程(d)として、上記工程(c)で得られた測定結果から、アッセイS/N比を以下の式を用いて算出し、各条件での感度に関して、マスクしない測定結果(比較例1)を基準とした規格値(S/N増倍率)により評価した。
【0126】
アッセイS/N比=|(アッセイ蛍光シグナル)|/|(アッセイノイズシグナル)|
すなわち、規格値(S/N増倍率)が大きければアッセイS/N比が向上していることを意味し、イムノアッセイ測定の信頼性が高いことがわかる。
得られた結果を表2にまとめた。
【0127】
[実施例6]
実施例5において、実施例1で得られたプラズモン励起センサを用いる代わりに、実施例2で得られたプラズモン励起センサを用いた以外は実施例5と同様にしてアッセイ法を実施した。得られた結果を表2にまとめた。
【0128】
[実施例7]
実施例5において、実施例1で得られたプラズモン励起センサを用いる代わりに、実施例3で得られたプラズモン励起センサを用いた以外は実施例5と同様にしてアッセイ法を実施した。得られた結果を表2にまとめた。
【0129】
[実施例8]
実施例5において、実施例1で得られたプラズモン励起センサを用いる代わりに、実施例4で得られたプラズモン励起センサを用いた以外は実施例5と同様にしてアッセイ法を実施した。得られた結果を表2にまとめた。
【0130】
(プラズモン励起センサの製造)
[比較例1]
実施例1において、誘電体層(2)を形成しなかった以外は実施例1と同様にしてプラズモン励起センサを製造した。
【0131】
[比較例2]
実施例2において、誘電体層(2)を、金薄膜の表面全部に形成した以外は実施例2と同様にしてプラズモン励起センサを製造した。
【0132】
[比較例3]
比較例2において、誘電体層(1)+(2)の厚さを50nmに変更した以外は比較例2と同様にしてプラズモン励起センサを製造した。
【0133】
[比較例4]
実施例3において、誘電体層(1)の厚さを150nmに変更した以外は実施例3と同様にしてプラズモン励起センサを製造した。
【0134】
(製造したプラズモン励起センサを用いたアッセイ法の実施)
[比較例5]
実施例5において、実施例1で得られたプラズモン励起センサを用いる代わりに、比較例1で得られたプラズモン励起センサを用いた以外は実施例5と同様にしてアッセイ法を実施した。得られた結果を表2にまとめた。
【0135】
[比較例6]
実施例5において、実施例1で得られたプラズモン励起センサを用いる代わりに、比較例2で得られたプラズモン励起センサを用いた以外は実施例5と同様にしてアッセイ法を実施した。得られた結果を表2にまとめた。
【0136】
[比較例7]
実施例5において、実施例1で得られたプラズモン励起センサを用いる代わりに、比較例3で得られたプラズモン励起センサを用いた以外は実施例5と同様にしてアッセイ法を実施した。得られた結果を表2にまとめた。
【0137】
[比較例8]
実施例5において、実施例1で得られたプラズモン励起センサを用いる代わりに、比較例4で得られたプラズモン励起センサを用いた以外は実施例5と同様にしてアッセイ法を実施した。得られた結果を表2にまとめた。
【0138】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明のプラズモン励起センサを用いたアッセイ法は、高感度かつ高精度に検出することができる方法であるから、例えば、血液中に含まれる極微量の腫瘍マーカーであっても検出することができ、この結果から、触診などによって検出することができない前臨床期の非浸潤癌(上皮内癌)の存在も高精度で予測することができる。
【符号の説明】
【0140】
1・・・・・・透明支持体
2・・・・・・金属薄膜
3・・・・・・誘電体層
4・・・・・・誘電体からなる被覆層
4a・・・・・屈折率n1の誘電体からなる被覆層
4b・・・・・屈折率n2の誘電体からなる被覆層
4c・・・・・被覆層4bとは厚さが異なる屈折率n2の誘電体からなる被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体と;
該支持体の一方の表面に形成された金属薄膜と;
該薄膜の、該支持体とは接していないもう一方の表面に形成された誘電体層と;
該誘電体層の、該薄膜とは接していないもう一方の表面(S)のうち、その一部の領域(Sa)に形成された誘電体からなる被覆層と;
該被覆層の、該誘電体層とは接していないもう一方の表面(T)に固定化されたリガンドと
を含み、
該誘電体層の厚さが、5nm以上100nm以下であり、
該誘電体層と該被複層との合計の厚さが、100nmを超えて1μm以下である
ことを特徴とするプラズモン励起センサ。
【請求項2】
上記被覆層が、二酸化ケイ素〔SiO2〕,二酸化チタン〔TiO2〕または酸化アルミニウム〔Al23〕を含む請求項1に記載のプラズモン励起センサ。
【請求項3】
上記誘電体層が、二酸化ケイ素〔SiO2〕,二酸化チタン〔TiO2〕または酸化アルミニウム〔Al23〕を含む請求項1または2に記載のプラズモン励起センサ。
【請求項4】
上記金属薄膜が、金,銀,アルミニウム,銅および白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属から形成されている請求項1〜3のいずれかに記載のプラズモン励起センサ。
【請求項5】
上記金属が、金からなる請求項4に記載のプラズモン励起センサ。
【請求項6】
下記工程(a)〜(d)を含むことを特徴とするアッセイ法;
工程(a):請求項1〜4のいずれかに記載のプラズモン励起センサに、検体を接触させる工程,
工程(b):該工程(a)を経て得られたプラズモン励起センサに、さらに、該プラズモン励起センサに含まれるリガンドとは同じであっても異なっていてもよいリガンドと蛍光色素とのコンジュゲートを反応させる工程,
工程(c):該工程(b)を経て得られたプラズモン励起センサに、透明支持体の、上記金属薄膜を形成していないもう一方の表面から、プリズムを経由してレーザ光を照射し、励起された蛍光色素から発光された蛍光量を測定する工程,および
工程(d):該工程(c)で得られた測定結果から、検体中に含有されるアナライトの量を算出する工程。
【請求項7】
上記アナライトとは異なるアナライトであって、上記アナライトと競合するアナライトが、上記コンジュゲートと予め結合している請求項6に記載のアッセイ法。
【請求項8】
上記検体が、血液,血清,血漿,尿,鼻孔液および唾液からなる群から選択される少なくとも1種の体液である請求項6または7に記載のアッセイ法。
【請求項9】
上記アナライトが、腫瘍マーカーまたはがん胎児性抗原である請求項6〜8のいずれかに記載のアッセイ法。
【請求項10】
少なくとも、上記工程(b)を経て得られたプラズモン励起センサ,レーザ光の光源,光学フィルタ,プリズム,カットフィルタ,集光レンズおよび表面プラズモン励起増強蛍光検出部を含み、請求項6に記載の工程(c)に用いられることを特徴とするアッセイ用装置。
【請求項11】
少なくとも、透明支持体と上記金属薄膜と上記の誘電体からなる被覆層とを含むセンサおよび蛍光色素を含み、請求項6〜9のいずれかに記載のアッセイ法に用いられることを特徴とするアッセイ用のキット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−32281(P2012−32281A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172151(P2010−172151)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】