説明

プラットホームの構造

【課題】配送センター等の建屋において、トラック等の車両を、荷台の扉を向けて建屋に近接して止め、物資の積み込みや積み降ろしを行うためのプラットホームを構築するに際し、現場施工の省力化、工期の短縮化、さらにはコストの低減化等を図ることのできるプラットホームの構造を提供する。
【解決手段】盛土によって周囲の地盤面より高く形成された盛土地盤4の上にプラットホーム土間床5を配置する。盛土地盤4の周囲に盛土地盤4の土圧および盛土地盤4に作用する土間床自重と土間床の積載荷重による水平力に対して自立する擁壁3を配置する。擁壁3は擁壁基礎部3Bと擁壁基礎部3Bの上に立設された擁壁壁体部3Aとから構築する。擁壁壁体部3Aと擁壁基礎部3Bは鉄筋コンクリートによって断面ほぼL字状に一体に構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配送センター、工場、倉庫などの建屋において、トラック等の車両を、荷台の扉を向けて建屋に近接して止め、物資の積み込みや積み降ろしを行うためのフロアとして利用されるプラットホームの構造に関し、特に施工に際して現場施工の省力化、工期の短縮化、さらにはコストの低減化等を可能にしたものである。
【背景技術】
【0002】
配送センター、工場、倉庫などの建屋において、トラック等の車両によって物資の搬入や搬出を行う際に、車両の荷台の扉を向けて建屋に近接して止め、車両の荷台から建屋内に段差なく物資の積み込みや積み降ろしができれば、物資の搬入・搬出をきわめて効率的に行うことができる。
【0003】
このため、配送センター等の物資を大量に取り扱う建屋においては、物資の積み込みや積み降ろしを行うための「プラットホーム」として利用される一階の床は、周囲の地盤面より1m程度高い位置に設けられている。
【0004】
また、この種のプラットホームには、たとえ一時的であっても大量の物資が置かれるため積載荷重はかなり大きくなる。
【0005】
このため、この種の床(構造床)および積載荷重を地中梁を介して建屋の基礎で支持する構造にすると、基礎が大きくなり建設コストが増大することから、周辺地盤と床との高低差を盛土によって埋め、盛土地盤の上に土間床を直接設置することで、土間床および積載荷重による鉛直方向の荷重を盛土地盤によって直接支持する構造とする場合がある。
【0006】
しかし、この場合でも周辺の地盤面と床下の盛土地盤との高低差によって生じる土圧などの水平方向の荷重は支持することが必要であり、従来、上記したプラットホームにおいて、周辺地盤面と一階床下の盛土地盤面との高低差によって生じる土圧などの水平方向の荷重は、盛土地盤を囲う鉄筋コンクリート構造の地中梁によって支持させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3240964号
【特許文献2】特開平6−57768号公報
【特許文献3】特開平7−26650号公報
【特許文献4】特開平10−96286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、鉄筋コンクリート構造の地中梁は、鉄筋を組み立て、コンクリートを打設する際の型枠の加工・組み立てとその支持材(斜め支柱等)の設置などをすべて現場で行っており、しかも型枠は解体が必要なこと等から基礎工事に多くの労力と長い工期を必要とする。
【0009】
また、地中梁は、基礎と一体構造とされることから地中梁の重量は基礎が支持することになるため、地盤の支持力が小さい場合には基礎杭を設けることが必要になる。
【0010】
また、地盤の支持力が大きい場合には直接基礎とすることも可能であるが、そうすると基礎が大きくなり、いづれの場合も建設コストが嵩む要因になっている。
【0011】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、物資の積み込みや積み降ろしを行うためのプラットホーム土間床を盛土地盤の上に直接構築するにあたって、盛土地盤および盛土地盤を介して作用する土間床自重と土間床の積載荷重による水平力を鉄筋コンクリート構造の擁壁によって支持する構造とし、かつ鋼板製の折畳み捨て型枠を使用して形成した鉄筋コンクリート構造の基礎と組み合わせることにより、地中梁を省略して現場施工の省力化、工期の短縮化、さらにはコスト低減等を可能にしたプラットホームの構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のプラットホームは、盛土によって周囲の地盤面より高く形成された盛土地盤の上に土間床を配置することにより構成されるプラットホームにおいて、前記盛土地盤の周囲に当該盛土地盤の土圧および盛土地盤に作用する土間床自重と土間床の積載荷重による水平力に対して自立する擁壁と、盛土によって周囲の地盤面より高く形成された盛土地盤の上に、土間床を配置することにより構成されるプラットホームの構造において、前記盛土地盤の周囲に当該盛土地盤の土圧および当該盛土地盤に作用する土間床自重と土間床の積載荷重による水平力に対して自立する擁壁を配置してなることを特徴とするものである。
【0013】
本発明は、盛土によって周囲の地盤面より高く形成された盛土地盤の上に土間床を直接配置してプラットホームを構築するに際し、盛土地盤の周囲に当該盛土地盤の土圧および当該盛土地盤に作用する土間床自重と土間床の積載荷重による水平力に対して自立する擁壁を配置することで、現場施工の省力化、工期の短縮化、さらにはコスト低減等を可能にしたものである。
【0014】
本発明によれば、地中梁を無くすることができ、またこれにより地中梁を支える建屋の基礎を小型化することができるため、現場施工の省力化、工期の短縮化、さらにはコスト低減等が可能になる。
【0015】
この場合の擁壁としては、建屋の各基礎間に立ち上がる擁壁壁体部と擁壁壁体部の下端部に敷設された擁壁基礎部とからL字型あるいは逆T字型に構築される片持梁式擁壁、あるいは擁壁の重量で背後からの水平力に抗する重力式擁壁を適用することができ、特に片持梁式擁壁は擁壁基礎部を有し、また背後からの盛土地盤の土圧等による水平力が擁壁基礎部を持ち上げる力に変換されるようになっており、この擁壁基礎部を持ち上げる力に対して、擁壁自重に加えて盛土地盤、土間床自重および土間床の積載荷重が抗するようになっているため、この場合の擁壁形式として特に適している。
【0016】
なお、背後からの大きな土圧に備えて、擁壁壁体部と擁壁基礎部との間に擁壁壁体部と擁壁基礎部とを強固に連結する三角形状等の控え壁を設置することもでき、また、擁壁基礎部の下方にすべり止めの突起を設置することもできる。
【0017】
さらに、建屋の外部に床を設置する必要がある場合は、擁壁壁体部の頂部に鉄筋コンクリート構造などの床を設けて、プラットホームの床を外部に延長することができる。
【0018】
また、柱などの上部構造体を受ける位置に鉄筋コンクリート構造の基礎を配置し、当該基礎の型枠には特に複数の鋼製パネルから折畳めるに構成された折畳み捨て型枠を使用することにより基礎工事の大幅な省力化と工期の短縮化等を図ることができる。
【0019】
施工に際しては、特に擁壁の外側には仕上げ材を兼ねた化粧型枠を設置し、盛土する擁壁の背面側にはキーストンプレート等の鋼製捨て型枠を採用することにより、型枠の解体工事が不要となり工期の短縮化等を図ることができる。
【0020】
また、擁壁の型枠は、工場で加工した形鋼などからなる柱、梁、胴縁などによって支持し、これらの型枠支持部材は主としてボルト接合によって自立可能なL字型または逆T字型に組み立てることにより、コンクリート打設時の倒れ防止用の支持材(斜め支柱等)が不要になり、さらに型枠はこれらの型枠支持部材にビス等によって止め付けることにより、現場での型枠工事が容易なものとなり、工期の短縮化等を図ることができる。
【0021】
また、柱、梁、胴縁などの型枠支持部材は、砕石の上に打設した捨てコンクリートの上にレベル調整機能を備えた治具を介して設置することにより、捨てコンクリートのレベル誤差(不陸)を解消し、さらに全体のレベル調整も容易に行うことができる。
【0022】
補強鉄筋には、複数の縦鉄筋と横鉄筋を工場などで予め格子状に組み立てた組鉄筋を利用し、現場での鉄筋工事は組鉄筋の据え付け、ジョイント部分の結束のみとすることにより、現場での鉄筋工事を容易なものとして工期の短縮化等を図ることができ、しかも熟練した鉄筋工の手配も不要になる。
【0023】
なお、組鉄筋の据え付けと結束は、柱に胴縁を設置する前に行い、また組鉄筋相互の結束は結束線によって行うことにより、鉄筋の配筋をスムーズに行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、物資の積み込みや積み降ろしを行うためのプラットホーム土間床を盛土地盤の上に構築するにあたって、盛土地盤による水平力および盛土地盤を介して作用する土間床自重と土間床の積載荷重による水平力を鉄筋コンクリート構造の擁壁によって支持する構造とし、かつ鋼板製の折畳み捨て型枠を使用して形成した鉄筋コンクリート構造の基礎と組み合わせることにより、基礎型枠の撤去作業と地中梁を省略することができ、また地中梁の省略により建屋の基礎を小型化することができ、これにより現場施工の省力化、工期の短縮化、さらにはコスト低減等を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】配送センター等の物資の積み込みや積み降ろし用のプラットホームとして利用される建屋の一階土間床を示し、(a)はその一部平面図、(b)はイ−イ線断面図である。
【図2】擁壁基礎部の構造を示す一部横断面図である。
【図3】擁壁壁体部の構造を示す一部縦断面図である。
【図4】擁壁の構造を示す図3におけるロ−ロ線断面図である。
【図5】擁壁の構造を示す図3におけるハ−ハ線断面図である。
【図6】基礎型枠として使用される折畳み捨て型枠を示し、(a)は矩形状に広げた状態を示す斜視図、(b)は扁平状に折畳んだ状態を示す斜視図、(c)は折畳み捨て型枠を構成する鋼製パネルの縦断面図である。
【図7】基礎型枠を示し、(a)は二段に組み立てた折畳み捨て型枠の斜視図、(b)は捨てコンクリートの上に設置された折畳み捨て型枠の一部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1〜図7は、本発明の一実施形態を示し、図において、配送センター等として利用される建屋1の外周に、建屋1の外回りの基礎2が建屋1の妻方向と桁行き方向にそれぞれ一定間隔おきに構築されている。
【0027】
また、建屋1の妻方向と桁行き方向の各基礎2,2間に擁壁3が建屋1の妻方向と桁行き方向にそれぞれ連続して構築され、両方向の擁壁3は結果として建屋1の外周を完全に取り巻くように平面矩形の環状に連続して構築されている。
【0028】
そして、擁壁3の内側に周囲の地盤面より1m程度高く盛土することにより盛土地盤4が構築され、盛土地盤4の上に建屋1の一階の土間床、すなわち、物資の積み込みや積み降ろしを行うためのプラットホーム土間床5が構築されている。
【0029】
基礎2は、主として建屋1の柱6などの上部構造体を支える独立基礎として構築され、特に鋼板製の折畳み捨て型枠7を基礎型枠として設置し、鉄筋コンクリートによって構築されており、当該基礎2の上に柱6が鉄筋コンクリート構造の柱型8を介して接合されている。
【0030】
折畳み捨て型枠7は、上下の2辺に上部リブ9aと下部リブ9bをそれぞれ備えた複数の鋼板パネル9から構成され、鋼板パネル9は平面形状が矩形状をなすように立てて設置され、かつ各鋼製パネル9どうしの隣接する縁を蝶番などの屈曲可能な接合部材(図省略)を介して接合することにより扁平な形状に折り畳めるように構成されている。
【0031】
また、矩形状に広げて複数段に積み上げて設置し、かつ上下の折畳み捨て型枠7をそれぞれ構成する鋼製パネル9の下部リブ9bと上部リブ9aどうしを結合することにより、構築される基礎2の高さに応じて任意の高さに組み立てられるように構成されている。
【0032】
さらに、対向する鋼製パネル9,9間にタイバー9cを配置することで、上下のリブ9a,9bと相まって容易に変形しないように補強されている。
【0033】
なお、各鋼製パネル9の上部リブ9aと下部リブ9bは、各パネルの縁端部を折り曲げるか、あるいはリブ材を溶接する等して形成されている。
【0034】
また、折畳み捨て型枠7は、捨てコンクリート10の上に矩形状に広げられ、各鋼製パネル9の下部リブ9bを捨てコンクリート10にアンカーボルト9dによって固定することにより立て付けられている。
【0035】
擁壁3は、主として盛土地盤4の土圧による水平力と盛土地盤4を介して作用する土間床自重と物資などの積載荷重による水平力を支える連続壁として構築され、基礎2,2間に鉛直に立ち上がる擁壁壁体部3Aと擁壁壁体部3Aの背面側に水平に敷設された擁壁基礎部3Bとから断面略L字状に一体に構築されている。
【0036】
また、擁壁壁体部3Aと擁壁基礎部3Bは鉄筋コンクリートによって一体に構築され、特に擁壁基礎部3Bは砕石の上に打設した捨てコンクリート10の上に治具11を介して敷設された複数の下地梁12によって下地柱13と胴縁14を支持し、各下地梁12,12間に配筋された複数の補強筋15によって補強されている。
【0037】
なお、この場合の治具11は、捨てコンクリート10の上に建屋1の桁行き方向と妻方向に沿ってそれぞれ敷設され、下地梁12は治具11の上に建屋1の桁行き方向と妻方向にそれぞれ一定間隔おきに敷設されている。
【0038】
擁壁壁体部3Aは、各下地梁12の先端に建て付けられた複数の下地柱13と、各下地柱13,13間に架け渡された複数の胴縁14によって後述する化粧型枠16と捨て型枠17を支持し、各下地柱13,13間に配筋された補強筋18によって補強されている。
【0039】
治具11、下地梁12、下地柱13および胴縁14にはH形鋼、I形鋼、溝形鋼、山形鋼などの形鋼等が使用され、補強筋15および18には複数の縦鉄筋と横鉄筋を溶接などによって格子状に組み付けられた組鉄筋が使用されており、いずれも工場などにおいて最適な寸法、形状に加工されている。
【0040】
また、これらの部材は主として接合ボルトで接合することにより自立可能なL字状に組み立てられ、治具11は高さを自由に変更できるように構成され、これにより捨てコンクリート10の不陸を解消し、さらには下地梁12と下地柱13のレベル調整を自由に行えるようになっている。
【0041】
さらに、擁壁壁体部3Aの表側にコンクリート打設時の型枠として仕上げ材を兼ねた化粧型枠16が取り付けられ、擁壁壁体部3Aおよび擁壁基礎部3Bの背面側には捨て型枠17が取り付けられている。
【0042】
化粧型枠16と捨て型枠17は、いずれも胴縁14などにビス止めすることにより止め付けられている。そして、化粧型枠16と捨て型枠17の間にコンクリート19が打設されている。以上の構成により擁壁3の擁壁壁体部3Aと擁壁基礎部3BがL字状に一体に構築されている。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、配送センター、工場、倉庫などの建屋において、トラック等の車両を、荷台の扉を向けて建屋に近接して止め、物資の積み込みや積み降ろしを行うためのプラットホームを構築するに際し、特に現場施工の省力化、工期の短縮化、さらにはコストの低減化等を図ることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 建屋
2 建屋の基礎
3 擁壁
3A 擁壁壁体部
3B 擁壁基礎部
4 盛土地盤
5 プラットホーム土間床(一階の床)
6 建屋の柱
7 折畳み捨て型枠
8 柱型
9 鋼板パネル
9a 上部リブ
9b 下部リブ
9c タイバー
9d アンカーボルト
10 捨てコンクリート
11 治具
12 下地梁
13 下地柱
14 胴縁
15 補強筋
16 化粧型枠
17 捨て型枠
18 補強筋
19 コンクリート
20 スペーサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
盛土によって周囲の地盤面より高く形成された盛土地盤の上に、土間床を配置することにより構成されるプラットホームの構造において、前記盛土地盤の周囲に当該盛土地盤の土圧および当該盛土地盤に作用する土間床自重と土間床の積載荷重による水平力に対して自立する擁壁を配置してなることを特徴とするプラットホームの構造。
【請求項2】
請求項1記載のプラットホームの構造において、擁壁は擁壁基礎部と当該擁壁基礎部の上に立設された擁壁壁体部とを備え、鉄筋コンクリートによって断面ほぼL字状または逆T字状に一体に構築されていることを特徴とするプラットホームの構造。
【請求項3】
請求項1または2記載のプラットホームの構造において、擁壁基礎部に下地梁、擁壁壁体部に下地柱と下地胴縁がそれぞれ配置されていることを特徴とするプラットホームの構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかひとつに記載のプラットホームの構造において、擁壁の型枠として仕上げ材を兼ねた化粧型枠と捨て型枠が設置されていることを特徴とするプラットホームの構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかひとつに記載のプラットホームの構造において、複数の鋼製パネルから折畳めるように構成された折畳み捨て型枠を基礎型枠として構築された鉄筋コンクリート構造の基礎を配置してなることを特徴とするプラットホームの構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−83052(P2013−83052A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222423(P2011−222423)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(507327730)株式会社住金システム建築 (8)
【Fターム(参考)】