説明

プラネタリウムの恒星投影機

【課題】投影ユニットとその光源を恒星投影機の中心を挟んで配置することにより、投影ユニットに集光するコンデンサレンズを小型化し、投影ユニットを極力恒星投影機の中心付近まで接近させることが可能となり、恒星投影機の機構シェル(恒星球)の小型軽量化を図ることができるプラネタリウムの恒星投影機を提供する。
【解決手段】北天構造シェル2Nに設置される投影ユニット1Naに対し、恒星投影機の中心を挟んで反対側に光源モジュール8Saが設置される。他の投影ユニットも同様に恒星投影機の中心を挟んで反対側に光源モジュールが設置される。4個の投影ユニットの場合には各投影ユニットは正4面体の各面に相当する構造シェルの面に設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造シェルである恒星球の小型化軽量を考慮したプラネタリウムの恒星投影機に関する。
【背景技術】
【0002】
プラネタリウムの恒星投影機では、従来、複数の投影ユニット手段を用いて全天の星を投影するに際し、恒星球の中心の回りに投影ユニット手段を球面上に配置し、その中心に光源を設置する方式が長く採用されてきた。
しかしこの方式では、光源から出る光を外部に漏洩させないように光源を密閉して設置しなければならず、光源が発散する熱により恒星球の温度が上昇しやすいため、冷却装置を設置したり、過熱を防ぐために恒星球の寸法をある程度大きくしたりする必要があった。しかし恒星球の寸法が大きくなることは、製造コストの増大を招き、また恒星投影球が観客の視界を妨げるなどの問題につながっていた。
【0003】
また、恒星球の内部に光源を設置することは、光源のメンテナンスを困難にし、万一光源として使用するランプが破損、破裂すると、恒星球の内部のレンズ系に損傷を与えたり、清掃に多大の時間を要したりするなどの問題点があった。さらにすべての方向の星空を均等な明るさで投影するためには、全方向に満遍なく光を放つ配光分布特性を持つ光源が求められるが、現実の光源では、フィラメントやアークの形状、および電極やバルブの封入痕などの影響により配光分布特性にむらが生じ、投影する星空の明るさにムラを生じさせていた。
【0004】
従来、恒星投影機では、投影面の分割数として、32面が多く使われてきた。これは天球を均等に分割する上で効率の良い数字ではあるが、同時にこれだけの数の投影ユニットを使用して恒星投影機を製作することは、恒星投影機の製作、調整コストを増大させ、コストダウンの妨げになっていた。
そこで、投影ユニット数を減少させる試みが行われてきており、かかる場合、コンデンサレンズ同士の距離が接近するため、恒星投影機を小型化しやすくなる。しかしながら恒星投影機の中心に光源がある場合、コンデンサレンズと光源の距離が極めて短くなり、コンデンサレンズに求められる屈折角が非常に大きくなるため、コンデンサレンズのサイズが大きくなってコストアップになり、しばしば設計上の問題点となっていた。
【0005】
そこで光源を恒星投影機の表面に設置することにより光源のパワーを上げず、昇温を抑え、組み立て修復が容易になる恒星投影機が提案されている(特許文献1)。
しかしながら、この提案は光源から各投影ユニットに光を分配するための光ファイバや光学系は重く寸法もかさむ構成となるため、恒星投影機の小型化の妨げになっていた。
【特許文献1】特開2001−109063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように従来のプラネタリウムの恒星投影機では、恒星球の中心に光源を設置することによる光源の選択の問題や、分割数を減らして小型化をはかる場合、コンデンサレンズと光源が接近することによる設計上の問題が生じ、小型軽量化を妨げ、また投影像の明るさムラを生じさせていた。これによりローコストで扱いやすい恒星投影機の実現が困難となっていた。
本発明の目的は投影ユニットとその光源を恒星投影機の中心を挟んで配置することにより、投影ユニットに集光するコンデンサレンズを小型化し、投影ユニットを極力恒星投影機の中心付近まで接近させることが可能となり、恒星投影機の構造シェル(恒星球)の小型軽量化を図ることができるプラネタリウムの恒星投影機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために本発明の請求項1は構造シェルに設置される複数の投影ユニット手段を用いて全天の恒星を投影するプラネタリウムの恒星投影機において、各投影ユニット手段は前記構造シェル面に配置され、前記各投影ユニット手段に対し前記恒星投影機の中心を挟んで反対側に光源をそれぞれ設け、各光源から出射される光が前記恒星投影機の中心または中心付近で交差して対応の投影ユニット手段を照明することを特徴とする。
本発明の請求項2は請求項1記載の発明において前記投影ユニット手段の数は4個であり、各投影ユニット手段は正4面体の各面に相当する前記構造シェルの面にそれぞれ配置されることを特徴とする。
本発明の請求項3は請求項1または2記載の発明において前記光源は発光ダイオードであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記構成によれば、光源と投影ユニットの距離を確保してコンデンサレンズを小型化し、また投影ユニットを極力、恒星投影機の中心付近まで接近させることを可能にし、構造シェル(恒星球)の小型軽量化を実現できる。
また、投影ユニットの数、すなわち投影面の分割数を減らすことでさらに小型軽量となり、光源に発光ダイオードを用いることによりメンテナンスの必要性を低減化しメンテナンスを容易にした扱いやすい恒星投影機を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳しく説明する。
図1は本発明によるプラネタリウムの恒星投影機の実施の形態を示す断面図であり、4分割投影の場合の例である。
投影ユニット1Na、1Nbは、北天構造シェル2Nに取り付けられており、南天構造シェル2Sには、日周回動軸3の中心3aを基準に90度ずれた姿勢で投影ユニット1Sa、1Sbが保持されている。つまり投影ユニットは北天構造シェル2N,南天構造シェル2Sにそれぞれ2個ずつ組み付けられており、それぞれが天球のあらかじめ決められた範囲の星空を投影し、南北合計4つの投影ユニットによって全天を投影するように構成されている。
【0010】
これら投影ユニットの位置関係は図2に示されている。図2は構造シェルを北天側および南天側から見たときの投影ユニットおよび電源モジュール配置を示すものである。図2から理解できるにように各投影ユニットは、正4面体の各面に対応した構造シェルの面に垂直に設置されている。この各投影ユニットの設置位置は、赤道義の角度で位置を示せば、表1に示す赤経,赤緯の位置となる。なお、表1には各投影ユニットに対応して設けられる光源モジュールの位置も示されている。unit1は投影ユニット1Naであり、赤経0°,赤緯45°の位置、unit2は投影ユニット1Nbであり、赤経180°,赤緯45°の位置、unit3は投影ユニット1Saであり、赤経90°,赤緯−45°の位置、unit4は投影ユニット1Sbであり、赤経270°,赤緯−45°の位置となる。
投影ユニットをこのような位置関係にすることにより投影面に対し均等な分割投影になるように投影ユニットを設置することができる。

【表1】

【0011】
図1において構造シェル2A,2Bおよび投影ユニット1は、日周回動軸3に取り付けられており、日周回動軸3は日周ボールベアリング4によって日周回動中心3aを軸にして自在に回動可能なように日周ベースリング5に保持されている。さらに日周ボールベアリング4を保持する日周ベースリング5は、緯度回動軸6に取り付けられ、緯度回動軸6は緯度ボールベアリング10によって緯度回動中心6aを軸にして自在に回動可能なように架台フォーク7に保持されている。各回動軸の回動は、図示しないモータ等によって駆動制御される。
【0012】
つぎに南天構造シェル2Sに取り付けられる光源モジュール8Saは、指向性のある発光ダイオード11と、楕円面ミラー12によって構成されている。光源モジュール8Saは恒星投影機の中心2を挟んで投影ユニット1Naに向くように設置されている。
光源モジュール8Saを出射した光は、恒星投影機の中心2を通って投影ユニット1Naを照明する。同様の構成で光源モジュール8Sbも投影ユニット1Nbを照明する。各光源モジュールを出た光束は恒星投影機の中心で互いに交差するが干渉することはない。南天構造シェル2Sの光源モジュール8Sa,8Sbの設置位置は赤道義の角度で位置を示せば表1のunit1の行に示される光源赤経180°,光源赤緯−45°およびunit2の行に示される光源赤経0°,光源赤緯−45°度の位置となる。
【0013】
図1には示されていないが、北天構造シェルについても、これと日周回動中心を基準に直交する形で投影ユニットと光源モジュールが取り付けられており、各光源モジュールから出射する光はお互いに干渉することはなく、南天と北天の各光源モジュールから出射する光も干渉することはない。
投影ユニット1Naにおいて、光源モジュール8Saから入射した光はコンデンサレンズ13に入射し集光されて投影原板14を照射する。投影原板14で形成された恒星像は投影レンズ15によって当該投影ユニット1Naの対応する図示しない投影面に映し出される。投影ユニット1Nb,1Saおよび1Sbにおいても同様に恒星像が形成され、その投影像はそれぞれの投影面に映し出される。
【0014】
このように構成することにより、光源を恒星投影機の中心に設置する場合に比して光源とコンデンサレンズの距離を長く確保でき、コンデンサレンズに極端に焦点距離の短いレンズを用いることはない。また、近年は指向性があることを特長にする高輝度の発光ダイオードが実用化されているため、この発光ダイオードを使って本発明を効果的に実施することができる。
発光ダイオードは極めて寿命が長い上、恒星球の外側に配置できるために、万一の故障時でも、簡単に取り外し、交換ができ、極めてメンテナンス性が高い。
【0015】
以上の実施の形態は、投影ユニットを正4面体の各面の位置対応の構造シェル面に設けた例を説明したが、この他に実現できるものとして正12面体,正20面体の各面対応に投影ユニットを設けても本発明を実施することが可能である。これら正多面体の各面の反対位置には同じ方向に向く面が形成されず、投影面に対し均等に分割投影することができるからである。
なお、正6面体,正8面体,正32面体では各面の恒星投影機の中心を挟む反対位置には同じ方向の面が形成されるため、全ての面に投影ユニットを設置し均等に分割投影することができないため実施は不可である。
【産業上の利用可能性】
【0016】
イベント会場やプラネタリウム施設などに設置される、小型化軽量の恒星球から構成されるプラネタリウムの恒星投影機である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明によるプラネタリウムの恒星投影機の実施の形態を示す断面図である。
【図2】北天側および南天側の投影ユニットおよび光源の配置状態を説明するための図で、(a)は北天側を、(b)は南天側をそれぞれ示している。
【符号の説明】
【0018】
1Na,1Nb,1Sa,1Sb 投影ユニット
2 恒星投影機の中心(恒星球の中心)
2N 北天構造シェル
2S 南天構造シェル
3 日周回動軸
4 日周ボールベアリング
5 日周ベースリング
6 緯度回動軸
7 架台フォーク
8Sa,8Sb,8Na,8Nb 光源モジュール
10 緯度ボールベアリング
11 発光ダイオード
12 楕円面ミラー(集光レンズ)
13 コンデンサレンズ
14 投影原板
15 投影レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造シェルに設置される複数の投影ユニット手段を用いて全天の恒星を投影するプラネタリウムの恒星投影機において、
各投影ユニット手段は前記構造シェル面に配置され、
前記各投影ユニット手段に対し前記恒星投影機の中心を挟んで反対側に光源をそれぞれ設け、
各光源から出射される光が前記恒星投影機の中心または中心付近で交差して対応の投影ユニット手段を照明することを特徴とするプラネタリウムの恒星投影機。
【請求項2】
前記投影ユニット手段の数は4個であり、
各投影ユニット手段は正4面体の各面に相当する前記構造シェルの面にそれぞれ配置されることを特徴とする請求項1記載のプラネタリウムの恒星投影機。
【請求項3】
前記光源は発光ダイオードであることを特徴とする請求項1または2記載のプラネタリウムの恒星投影機。

【図1】
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【図2】
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