説明

プランジャポンプの故障診断装置

【課題】プランジャポンプに異常があるか否かの判定を安定して行うことができるプランジャポンプの故障診断装置を提供する。
【解決手段】油圧ポンプ17から吐出された圧油を油圧シリンダ22に導く吐出管路20の途中に切換弁25を設ける。切換弁25に接続された分岐管路26には、該分岐管路26を流れる作動油の圧力を設定値に保持するリリーフ弁27を設ける。さらに、油圧ポンプ17の駆動時に該油圧ポンプ17の内部でリークする作動油を作動油タンク18へ排出するドレン管路28には、圧力センサ29を設ける。そして、コントローラ31は、切換弁25を戻り位置(ロ)に切換えた状態における圧力センサ29の検出値に基づいて、油圧ポンプ17に異常があるか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建設機械に搭載されるプランジャポンプの故障診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の代表例としての油圧ショベルには、油圧機器の油圧源としてプランジャポンプ(シリンダポンプ)が搭載されている。このプランジャポンプは、作動油タンクから吸込んだ作動油を、油圧シリンダ、油圧モータ等の油圧アクチュエータに圧油として吐出するものである。
【0003】
このようなプランジャポンプは、例えばプランジャ(ピストン)をシリンダブロックの軸方向に往復動させてなるアキシャル型の液圧ポンプ、プランジャをシリンダブロックの径方向に往復動させてなるラジアル型の液圧ポンプ等として知られている。また、例えば、アキシャル型の液圧ポンプとしては、斜板式、斜軸式のものがある。
【0004】
ところで、油圧機器を正常に作動させるためには、アキシャルポンプに異常があるか否かを判定できることが好ましい。例えば、油圧エレベータでは、作動油の温度を上昇させるためのヒーティング運転時に、ポンプの吐出圧力を計測し、この計測された吐出圧力値と前回の計測値との相関関係に基づいて、異常があるか否かの判定を行う異常診断装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−21040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1による異常診断装置を、例えば油圧ショベル等の建設機械に適用することが考えられる。しかし、油圧エレベータのヒーティング運転のような一定の負荷が連続してポンプに加わる定常動作がない建設機械では、異常があるか否かの判定を十分に行うことができないという問題がある。
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、プランジャポンプに異常があるか否かの判定を安定して行うことができ、異常と判定した場合には早期に必要な措置を講じることができるプランジャポンプの故障診断装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、請求項1によるプランジャポンプの故障診断装置は、作動油タンクから吸込んだ作動油を圧油として吐出するプランジャポンプと、該プランジャポンプから吐出された圧油を油圧アクチュエータに導く吐出管路と、該吐出管路の途中に設けられ、前記圧油を前記油圧アクチュエータ側に供給する供給位置と前記圧油を前記吐出管路から分岐管路を通じて前記作動油タンク側へ戻す戻り位置とに切換える切換装置と、前記分岐管路に設けられ該分岐管路を流れる作動油の圧力を設定値に保持するリリーフ弁と、前記プランジャポンプの駆動時に該プランジャポンプの内部でリークする作動油を前記作動油タンクへ排出するドレン管路と、該ドレン管路を流れる作動油の圧力を検出する圧力センサと、前記切換装置を前記戻り位置に切換えた状態における前記圧力センサの検出値に基づいて、前記プランジャポンプに異常があるか否かを判定するプランジャポンプ異常判定手段とを備えてなる構成としている。
【0009】
請求項2の発明は、前記プランジャポンプ異常判定手段は、前記圧力センサにより検出した現在検出値と予め設定した正常値または前回の判定を行ったときに検出した前回検出値とを比較し、前記現在検出値が、前記正常値または前回検出値に対して予め設定した閾値を超える差がある場合に、前記プランジャポンプに異常があると判定する構成としている。
【0010】
請求項3の発明は、前記プランジャポンプ異常判定手段は、前記現在検出値が前記正常値または前回検出値に対して大きい場合に、前記プランジャポンプの内部で異常なリークが発生していると判定し、前記現在検出値が前記正常値または前回検出値に対して小さい場合に、前記ドレン管路に異常な目詰まりが発生していると判定する構成としている。
【0011】
請求項4の発明は、前記プランジャポンプ異常判定手段は、前記切換装置を前記戻り位置に切換えてから所定時間経過したときの前記圧力センサの検出値に基づいて判定する構成としている。
【0012】
請求項5の発明は、前記分岐管路には、該分岐管路を流れる作動油の圧力が前記設定値になったことを検出するための別の圧力センサを設け、前記プランジャポンプ異常判定手段は、前記別の圧力センサにより前記分岐通路内の圧力が前記設定値になったと判定したときの前記圧力センサの検出値に基づいて判定する構成としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、切換装置を戻り位置に切換えると、分岐管路に設けられたリリーフ弁により、該リリーフ弁よりも上流側を流れる作動油の圧力がリリーフ弁の設定値に保持される。これにより、プランジャポンプには、リリーフ弁の設定値に応じた一定の負荷が加わり、該プランジャポンプの内部でリークしてドレン管路を流れる作動油の量が、前記一定の負荷に応じたものとなる。
【0014】
このため、この状態におけるドレン管路を流れる作動油の圧力を圧力センサにより検出し、その検出値に基づいてプランジャポンプに異常があるか否かを判定することにより、その判定を安定して行うことができる。そして、異常と判定した場合には、早期に点検、修理、清掃、交換等の必要な措置を講じることができ、油圧機器、延いてはこの油圧機器を搭載した建設機械等の各種機械装置の信頼性を向上することができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、圧力センサにより検出した現在検出値と予め設定した正常値または前回の判定を行ったときに検出した前回検出値とを比較することにより、プランジャポンプに異常があるか否かの判定を行う構成としている。このため、現在検出値と正常値または前回検出値とに基づいて、プランジャポンプに異常があるか否かの判定を、精度よく安定して行うことができる。これにより、異常が深刻になる前にその異常を早期に発見することができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、現在検出値と正常値または前回検出値との差に基づいて、具体的な異常の特定、即ち、プランジャポンプの内部で異常なリークが発生しているか、ドレン管路に異常な目詰まりが発生しているかを、精度よく安定して判定することができる。そして、このように異常を特定することにより、その異常に応じた点検、修理、清掃、交換等の措置を早期に講じることができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、切換装置を戻り位置に切換えてから所定時間経過したときの圧力センサの検出値に基づいて判定を行う構成としている。このため、所定時間経過することにより、リリーフ弁よりも上流側を流れる作動油の圧力が、リリーフ弁の設定値に確実に保持された状態(設定値に落ち着いた状態)で、圧力センサによる検出を行うことができる。これにより、判定精度を高めることができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、別の圧力センサにより分岐通路内の圧力がリリーフ弁の設定値になったと判定したときの圧力センサの検出値に基づいて判定を行う構成としている。このため、リリーフ弁よりも上流側を流れる作動油の圧力が、リリーフ弁の設定値に確実に保持された状態(設定値に落ち着いた状態)で、圧力センサによる検出を行うことができる。これにより、判定精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施の形態による故障診断装置が搭載された油圧ショベルを示す全体図である。
【図2】図1中の油圧ショベルの油圧駆動回路図である。
【図3】図2中のコントローラによる制御処理を示す流れ図である。
【図4】図3中の異常診断対応処理を示す流れ図である。
【図5】コントロールバルブ、切換弁、エンジン、油圧ポンプ等の時間変化の一例を示す説明図である。
【図6】第2の実施の形態による油圧ショベルの油圧駆動回路図である。
【図7】図6中のコントローラによる制御処理を示す流れ図である。
【図8】コントロールバルブ、切換弁、エンジン、油圧ポンプ、圧力スイッチ等の時間変化の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態によるプランジャポンプの故障診断装置を、大型の油圧ショベルに搭載した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0021】
図1ないし図5は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は建設機械の代表例としての油圧ショベルで、該油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、後述する作業装置8とにより大略構成されている。下部走行体2には、油圧アクチュエータとしての左,右の走行用油圧モータ(図示せず)が設けられている。
【0022】
油圧ショベル1の上部旋回体3は、下部走行体2と共に建設機械の車体を構成するものである。上部旋回体3は、下部走行体2上で旋回駆動される旋回フレーム4を有し、この旋回フレーム4上には、後述のキャブ5、カウンタウエイト6および建屋カバー7等が設けられている。また、上部旋回体3の旋回フレーム4上には、油圧アクチュエータとしての旋回用油圧モータ(図示せず)が設けられている。
【0023】
5は旋回フレーム4の前部左側に配設された運転室を構成するキャブで、該キャブ5内には、オペレータが着座する運転席、各種の操作レバー、後述する異常診断スイッチ30(図2参照)等が配設されている。
【0024】
6は旋回フレーム4の後端側に設けられたカウンタウエイトで、該カウンタウエイト6は、旋回フレーム4の後端側に着脱可能に搭載され、前側の作業装置8に対して上部旋回体3全体の重量バランスをとるものである。また、カウンタウエイト6の前側には、後述するエンジン16、油圧ポンプ17(いずれも図2参照)等を収容する建屋カバー7が設けられている。
【0025】
7はキャブ5とカウンタウエイト6との間に位置して旋回フレーム4上に立設された建屋カバーで、該建屋カバー7は、例えば複数枚の金属パネル等を用いて形成され、内部に後述のエンジン16、油圧ポンプ17等を収容する機械室(図示せず)を画成するものである。また、建屋カバー7内には、例えばキャブ5に近い位置に後述するコントロールバルブ24(図2参照)等が設けられている。
【0026】
8は上部旋回体3の前部に俯仰動可能に設けられた作業装置で、該作業装置8は、基端側が旋回フレーム4に俯仰動可能に取付けられたブーム9と、該ブーム9の先端側に俯仰動可能に取付けられたアーム10と、例えば土砂等の掘削作業を行うため該アーム10の先端側に回動可能に設けられた作業具としてのバケット11とにより大略構成されている。
【0027】
そして、作業装置8のブーム9は、ブームシリンダ12により旋回フレーム4に対して上,下に俯仰動され、アーム10は、ブーム9の先端側でアームシリンダ13により上,下に俯仰動される。また、バケット11は、アーム10の先端側で作業具用シリンダとしてのバケットシリンダ14により上,下に回動される。
【0028】
ここで、バケット11は、大型の油圧ショベル1の場合に、例えば地面等に沿って水平押出しされるローダバケットが用いられ、リヤバケット11Aとフロントバケット11Bからなるバケット11は、図1中に点線で示すバケット開閉シリンダ15により、フロントバケット11Bがリヤバケット11Aに対して開,閉するように回動される。ブームシリンダ12、アームシリンダ13、バケットシリンダ14およびバケット開閉シリンダ15は、いずれも油圧アクチュエータ(後述の油圧シリンダ22)に対応するものである。
【0029】
次に、図2を参照して油圧ショベル1の上部旋回体3等に搭載された油圧駆動回路について説明する。
【0030】
16は上部旋回体3に搭載されたエンジンで、該エンジン16は、例えばディーゼルエンジンを用いて構成され、後述の油圧ポンプ17を回転駆動するものである。
【0031】
17はエンジン16により回転駆動されるプランジャポンプとしての油圧ポンプで、該油圧ポンプ17は、図2に示すように、作動油タンク18と共に油圧ショベル1の油圧源を構成している。ここで、油圧ポンプ17は、例えば可変容量型で斜板式のアキシャルポンプとして構成され、プランジャ(ピストン)をシリンダブロック(いずれも図示せず)に対して往復動させることにより、作動油タンク18から吸込んだ作動油(油液)を圧油として吐出する。油圧ポンプ17は、例えば斜板、弁板等からなる容量可変部17Aを有し、該容量可変部17Aは、後述のレギュレータ19により駆動される。
【0032】
19は油圧ポンプ17に付設されたレギュレータで、該レギュレータ19は、油圧ポンプ17の容量を可変に制御するものである。レギュレータ19は、例えば油圧シリンダ等の傾転アクチュエータにより構成され、例えば後述するコントローラ31の制御信号に従って油圧ポンプ17の容量可変部17Aを駆動し、該油圧ポンプ17の吐出容量を可変に制御する。
【0033】
20は油圧ポンプ17の吐出側に接続された吐出管路で、該吐出管路20は、油圧ポンプ17から吐出された圧油を後述の油圧シリンダ22に導くものである。ここで、吐出管路20は、図2中に示すように、後述するコントロールバルブ24の位置まで延び、該コントロールバルブ24よりも下流側となる位置で戻し管路21と接続されている。そして、戻し管路21に導かれた圧油等の油液は順次作動油タンク18に還流される。また、吐出管路20の途中には、後述する切換弁25が設けられている。
【0034】
22は油圧アクチュエータを構成する油圧シリンダで、該油圧シリンダ22は、例えば作業装置8のブームシリンダ12、アームシリンダ13、バケットシリンダ14またはバケット開閉シリンダ15等を構成するものである。そして、油圧シリンダ22は、図2に示す如くチューブ22A、ピストン22B、ロッド22C、油室22D,22E等を有し、ロッド22Cは、油室22D,22Eに給排される圧油により伸長,縮小されるものである。
【0035】
なお、油圧ショベル1には、ブームシリンダ12、アームシリンダ13、バケットシリンダ14、バケット開閉シリンダ15の他、走行用油圧モータ、旋回用油圧モータ等の油圧アクチュエータも設けられている。しかし、図2に示す油圧回路では、その説明を簡略化するために、複数の油圧アクチュエータの代表例として油圧シリンダ22を示している。
【0036】
23A,23Bは油圧シリンダ22の油室22D,22Eに接続された一対の油圧管路を示している。この油圧管路23A,23Bは、油圧ポンプ17からの圧油を後述のコントロールバルブ24を介して油圧シリンダ22の油室22D,22Eに給排することにより、油圧シリンダ22のロッド22Cを伸縮動作させるものである。
【0037】
24は油圧シリンダ22に対する作動油の給排を制御するコントロールバルブで、該コントロールバルブ24は、例えば複数の方向制御弁を含んだ多連弁からなるものである。コントロールバルブ24は、油圧ポンプ17から吐出される圧油を油圧シリンダ22、即ち、作業装置8の各シリンダ12,13,14,15、旋回用油圧モータ、走行用油圧モータ等の油圧アクチュエータに給排するときに、各油圧アクチュエータ毎にそれぞれ個別に給排する圧油の流量と給排方向を制御するものである。本実施の形態では、コントロールバルブ24は、後述のコントローラ31に接続され、該コントローラ31の制御信号(ないし該制御信号に対応するパイロット圧)に従ってその切換位置を制御できるように構成している。
【0038】
この場合、コントロールバルブ24が中立位置のときには、油圧ポンプ17からの圧油が吐出管路20、戻し管路21を通じて作動油タンク18に還流される。また、コントロールバルブ24が例えば中立位置から一の切換位置に切換えられたときには、油圧ポンプ17からの圧油が吐出管路20、油圧管路23Aを介して油圧シリンダ22の油室22Dに供給され、油室22Eからの戻り油は油圧管路23B、戻し管路21を介して作動油タンク18に戻される。これにより、油圧シリンダ22は、ロッド22Cが伸長する方向に駆動される。
【0039】
また、コントロールバルブ24が例えば中立位置から他の切換位置に切換えられたときには、油圧ポンプ17からの圧油が吐出管路20、油圧管路23Bを介して油圧シリンダ22の油室22Eに供給され、油室22Dからの戻り油は、油圧管路23A、戻し管路21を介して作動油タンク18に戻される。これにより、油圧シリンダ22は、ロッド22Cが縮小する方向に駆動される。
【0040】
25は吐出管路20の途中に設けられた切換装置としての切換弁で、該切換弁25は、油圧ポンプ17とコントロールバルブ24との間に配置され、吐出管路20と分岐管路26とに接続されている。切換弁25は、例えば電磁パイロット部25Aを有する3ポート2位置の電磁弁からなる。
【0041】
切換弁25は、後述するコントローラ31からの制御信号に従って、油圧ポンプ17からの圧油を、コントロールバルブ24を通じて油圧シリンダ22側に供給する供給位置(イ)と、同じく圧油を、吐出管路20から分岐管路26を通じて作動油タンク18側へ戻す戻り位置(ロ)とに切換えるものである。具体的には、切換弁25は、常時は供給位置(イ)となり、後述する油圧ポンプ17の異常診断(故障診断)を行うときに、コントローラ31からの制御信号に従って戻り位置(ロ)に切換えられる。
【0042】
27は分岐管路26に設けられたリリーフ弁で、該リリーフ弁27は、分岐管路26を流れる作動油、換言すれば、リリーフ弁27よりも上流側の圧力を設定値(設定圧)に保持するものである。このために、リリーフ弁27は、該リリーフ弁27よりも上流側を流れる作動油の圧力が設定値を超えると開弁し、このときの過剰圧を作動油タンク18側にリリーフさせるものである。これにより、例えば、切換弁25が戻り位置(ロ)に切換えられたときは、吐出管路20を含むリリーフ弁27の上流側が設定値に保持され、油圧ポンプ17には、該設定値に応じた一定の負荷が加わる。
【0043】
ここで、リリーフ弁27の設定圧は、例えば、油圧ポンプ17の最大吐出圧力よりも小さい圧力で、かつ、油圧ポンプ17等に異常が発生したときに後述のドレン管路28内の圧力変化が検出し易いような圧力に設定する。具体的には、油圧ショベル1の場合は、例えば油圧ポンプ17の最大吐出圧力が30MPa程度とすると、リリーフ弁27の設定圧は5〜10MPa程度とすることができる。換言すれば、リリーフ弁27の設定圧は、油圧ポンプ17の最大吐出圧力の15〜35%程度とすることができる。
【0044】
28は油圧ポンプ17と作動油タンク18とを接続するドレン管路を示している。このドレン管路28は、油圧ポンプ17の駆動時に該油圧ポンプ17の内部でリークする作動油を作動油タンク18へ排出するものである。この場合、例えば、切換弁25が戻り位置(ロ)に切換えられることにより、油圧ポンプ17にリリーフ弁27の設定値に応じた一定の負荷が加わると、油圧ポンプ17の内部でリークしてドレン管路28を流れる作動油の量は、上記一定の負荷に応じたものとなる。
【0045】
このため、油圧ポンプ17等に異常が生じた場合には、切換弁25を戻り位置(ロ)に切換えた状態でのドレン管路28を流れる作動油の圧力は、その異常に応じて変化する。即ち、異常が生じると、その異常に応じて、ドレン管路28の圧力が正常時の値からずれる(増大または減少する)。そこで、本実施の形態では、後述するように、切換弁25が戻り位置(ロ)の状態におけるドレン管路28の圧力に基づいて、油圧ポンプ17等に異常(故障)があるか否かを判定する構成としている。
【0046】
29はドレン管路28に設けられた圧力センサで、該圧力センサ29は、ドレン管路28を流れる作動油の圧力を検出し、その検出信号を後述のコントローラ31に出力する。そして、コントローラ31は、後述するように、圧力センサ29で検出したドレン管路28の圧力に基づいて、油圧ポンプ17に異常があるか否かの判定を行うものである。
【0047】
30はキャブ5内で運転席の近傍に設けられた異常診断スイッチで、該異常診断スイッチ30は、後述のコントローラ31に接続され、オペレータの操作に基づいてコントローラ31に対して異常判定(故障診断)を行う旨の指令信号を出力するものである。即ち、オペレータが異常診断スイッチ30を操作(ONに)すると、コントローラ31に対してスイッチ30が操作された旨の信号が出力され、これにより、コントローラ31は、後述の図3および図4に示す油圧ポンプ17の異常判定(故障診断)処理を行う構成となっている。
【0048】
31はマイクロコンピュータ等からなるコントローラで、該コントローラ31は、その入力側がコントロールバルブ24、圧力センサ29、異常診断スイッチ30等に接続され、その出力側はレギュレータ19、コントロールバルブ24、切換弁25等に接続されている。また、コントローラ31は、ROM,RAM等からなるメモリ(記憶部)31A、経過時間Sをカウントするカウンタ(図示せず)を有し、メモリ31A内には、後述の図3および図4に示す故障診断用の処理プログラムと、所定時間S1、圧力センサ29の現在検出値P1、前回検出値P2、正常値P3、閾値T等とが格納されている。
【0049】
そして、コントローラ31は、後述する図3および図4の処理プログラムに従って、油圧ポンプ17の異常診断処理(故障診断処理)の制御を行う。即ち、コントローラ29は、例えばエンジン16の始動時に自動的に、或いは、オペレータが異常診断スイッチ30を操作(ONに)したことを条件に、切換弁25を戻り位置(ロ)に切換え、圧力センサ29によりドレン管路28を流れる作動油の圧力を検出する。そして、切換弁25を戻り位置(ロ)に切換えた状態における圧力センサ29の検出値に基づいて、油圧ポンプ17に異常があるか否かを判定する。
【0050】
具体的には、コントローラ31は、圧力センサ29により検出した現在検出値P1と前回の判定を行ったときに検出した前回検出値P2とを比較し、現在検出値P1が、前回検出値P2に対して予め設定した閾値Tを超える差がある場合に、油圧ポンプ17に異常があると判定する。なお、閾値Tは、例えば0に設定してもよい(少しでも差があれば異常があると判定するようにしてもよい)が、異常があるか否かを適切に判定できるような不感帯としての閾値Tを設定することもできる。このような閾値Tは、例えば計算や実験等により予め求める。
【0051】
何れにしても、コントローラ31は、例えば、現在検出値P1が前回検出値P2に対して大きい場合は、油圧ポンプ17の内部で異常なリークが発生していると判定する。即ち、油圧ポンプ17を構成するピストン、シリンダブロック、シリンダ等の摺動部等で過度の摩耗が生じたり、ピストンシューが損傷等することにより、油圧ポンプ17の内部で異常なリークが発生していると判定することができる。
【0052】
一方、現在検出値P1が前回検出値P2に対して小さい場合は、コントローラ31は、ドレン管路28に異常な目詰まりが発生していると判定する。即ち、ドレン管路28に作動油中の異物(コンタミ)等が付着する(詰まる)等により、ドレン管路28に異常な目詰まりが発生していると判定することができる。
【0053】
そして、コントローラ31は、運転席近傍に設けられたモニタやブザー等の警報器(図示せず)により、異常が発生している旨の警告音を発したり、警告信号の点灯、モニタへの表示等を行うことにより、オペレータに報知する。これにより、異常(故障)の判定、異常の特定を精度よく安定して行うことができると共に、異常が深刻になる前にその異常を早期にオペレータに報知することができる。そして、オペレータは、報知された異常に応じて、油圧ポンプ17の内部の点検、部品の交換、修理等を行ったり(依頼したり)、ドレン管路28を構成する油圧配管、油圧ホース等の点検、清掃、修理、交換等を行う(依頼する)ことにより、油圧ショベル1に過度の不具合が生じる以前に対処することができる。
【0054】
本実施の形態による油圧ショベル1に搭載した油圧駆動回路に用いる故障診断装置は、上述の如き構成を有するもので、次に図3、図4を参照してコントローラ31による故障診断処理(異常判定処理)について説明する。
【0055】
エンジン16の稼働(始動)により、図3の処理動作がスタートすると、ステップ1では、エンジン16を始動したときか否かと、異常診断スイッチ30が操作(ON)されたか否かとの判定を行う。即ち、ステップ1は、診断を開始するか否かを判定するもので、このステップ1は、エンジン16を始動させたときに(オペレータによる異常診断スイッチ30の操作を必要とすることなく)自動的に診断を行うことと、オペレータが異常診断スイッチ30を操作したときに診断を行うこととができるように構成している。
【0056】
ステップ1で、「NO」、即ち、エンジン16が始動したときではなく、かつ、異常診断スイッチ30が操作されていない(OFFである)と判定されたときは、診断を開始する条件を満たしていないので、再度ステップ1に戻り、異常診断を開始するか否かの判定を行う。一方、ステップ1で、「YES」、即ち、エンジン16が始動したときである、または、異常診断スイッチ30が操作(ON)されたと判定されたときは、診断を開始する条件を満たしたので、ステップ2に進む。
【0057】
ステップ2は、異常診断の開始から経過時間Sをカウントするための処理をおこなうものである。即ち、ステップ2では、コントローラ31のカウンタをリセット(経過時間Sを0に)すると共に、経過時間Sのカウントを開始し、ステップ3に進む。
【0058】
ステップ3では、コントロールバルブ24を中立位置に固定する。即ち、コントローラ31からコントロールバルブ24に中立位置にするための制御信号を出力する。ステップ3で、コントロールバルブ24を中立位置にする理由は、後述するステップ4で行う切換弁25の切換えが、例えば切換弁25の故障等により正常に行うことができない場合でも、各種油圧アクチュエータ、即ち、油圧シリンダ22が動く(伸縮)ことを防止するためである。
【0059】
ステップ3で、コントロールバルブ24を中立位置に固定したならば、ステップ4で、切換弁25を戻り位置(ロ)に切換える。即ち、コントローラ31から切換弁25に戻り位置(ロ)に切換える旨の制御信号を出力する。これにより、切換弁25が戻り位置(ロ)に切換わると、油圧ポンプ17から吐出された作動油は、吐出管路20から分岐管路26を通じて作動油タンク18側へ還流する。
【0060】
ステップ4で、切換弁25を戻り位置(ロ)に切換えたならば、ステップ5で、エンジン16の回転数(回転速度)を上昇させる。即ち、ステップ5では、コントローラ31からエンジン16の燃料噴射装置(図示せず)に制御信号を出力し、エンジン16の回転数を、例えばリリーフ弁27よりも上流側の作動油の圧力が該リリーフ弁27の設定値となるような回転数に調節する。
【0061】
続くステップ6では、油圧ポンプ17の吐出圧力を上昇させる。即ち、コントローラ31からレギュレータ19に制御信号を出力し、油圧ポンプ17の吐出容量(吐出圧力)を例えば最大にする。
【0062】
ステップ6で、油圧ポンプ17の吐出圧力を上昇させたならば、ステップ7に進み、ステップ2で経過時間Sのカウントを開始してから所定時間S1が経過したか否か、即ち、経過時間Sが所定時間S1以上(S≧S1)になったか否かを判定する。このステップ7は、切換弁25を戻り位置(ロ)に切換えてから所定時間S1が経過したことを判定するためのものである。
【0063】
なお、本実施の形態の場合は、ステップ2でカウントを開始するため、ステップ4の切換弁25の切換え開始よりも若干早くカウントが開始される可能性がある。しかし、それによる時間の差は極くわずかであるため、切換弁25を戻り位置(ロ)に切換えてから所定時間S1が経過したことと同義とすることができる。また、ステップ2のカウント開始の処理は、ステップ4の次に行うように構成してもよい。
【0064】
何れにしても、ステップ7は、経過時間Sが所定時間S1の経過を条件に、ステップ8に進むように構成している。これにより、ステップ7では、続くステップ8で行う圧力センサ29の読み込みを、リリーフ弁27よりも上流側の作動油の圧力が該リリーフ弁27の設定値に確実に保持された(落ち着いた)状態で行えるようにするものである。従って、所定時間S1は、切換弁25を切換えてからリリーフ弁27よりも上流側の作動油の圧力が設定値に保持されるまでに必要な時間として設定することができる。
【0065】
このような所定時間S1は、例えば計算や実験等により予め設定しておくことができる。具体的には、油圧ショベル1の場合は、例えば油圧ポンプ17の最大吐出圧力を30MPa程度とし、リリーフ弁27の設定圧を5MPa程度とすると、設定圧となるまでの時間は、切換弁25を切換えると共に油圧ポンプ17の吐出圧力を最大にしてから1秒程度となる(例えば1秒を要しない)。そこで、所定時間S1は、余裕を見て例えば2〜5秒程度に設定することができる。
【0066】
ステップ7で、「YES」、即ち、経過時間Sが所定時間S1を経過したと判定された場合には、ステップ8に進む。ステップ8では、圧力センサ29によりドレン管路28を流れる作動油の圧力P1を読込む(検出する)。そして、ステップ9に進み、ステップ8で検出した圧力センサ29の圧力P1、即ち、今回の判定で検出した現在検出値P1を、コントローラ31のメモリ31Aに記録(保存)する。このステップ10では、現在検出値P1がメモリ31Aに記録されたか否かを判定し、その記録がされたことを条件に、ステップ10に進む。
【0067】
ステップ10では、ステップ8で検出された現在検出値P1と前回の異常判定(故障診断)を行ったときに検出され(ると共にコントローラ31のメモリ31Aに記録され)た前回検出値P2とを比較する。即ち、現在検出値P1が、前回検出値P2に対して予め設定した閾値Tを超える差があるか否かを判定し、閾値Tを超える差がある場合に、油圧ポンプ17に異常があると判定する。なお、前回検出値P2が記録されていない場合は、コントローラ31のメモリ31Aに予め記録した正常時における圧力(正常値P3)と比較することにより判定することができる。この正常値P3は、例えば計算や実験等により予め設定しておく。
【0068】
ステップ10で、「YES」、即ち、異常があると判定された場合は、ステップ11に進み、異常診断対応処理を行う。この異常診断対応処理は、図4に示すように、異常を特定すると共に、その異常をオペレータに報知する処理を行うものである。
【0069】
即ち、異常診断対応処理のステップ21では、ステップ8で検出された現在検出値P1が、前回の異常判定を行ったときに検出され(ると共にメモリ31Aに記録され)た前回検出値P2よりも大きいか否かを判定する。このステップ21で、「YES」、即ち、現在検出値P1が前回検出値P2に対して大きいと判定された場合は、ステップ22に進み、油圧ポンプ17の内部で異常なリークが発生していると判定する。
【0070】
そして、続くステップ23に進み、例えばキャブ5内のオペレータに油圧ポンプ17の内部で異常なリークが発生している旨を報知する。具体的には、運転席近傍に設けられたモニタやブザー等の警報器により、異常なリークが発生している旨の警告音を発したり、警告信号の点灯、モニタへの表示等を行う。次いで、図4のリターンを介して、図3のステップ12に進む。
【0071】
一方、図4のステップ21で、「NO」、即ち、現在検出値P1が前回検出値P2よりも大きくないと判定された場合は、ステップ24に進み、現在検出値P1が前回検出値P2よりも小さいか否かを判定する。このステップ24で、「YES」、即ち、現在検出値P1が前回検出値P2に対して小さいと判定された場合は、ステップ25に進み、ドレン管路28に異常な目詰まりが発生していると判定する。
【0072】
そして、続くステップ26に進み、例えばキャブ5内のオペレータにドレン管路28に異常な目詰まりが発生している旨を報知する。具体的には、運転席近傍に設けられたモニタやブザー等の警報器により、異常な目詰まりが発生している旨の警告音を発したり、警告信号の点灯、モニタへの表示等を行う。次いで、図4のリターンを介して、図3のステップ12に進む。なお、ステップ24で、「NO」、即ち、現在検出値P1が前回検出値P2に対して小さくないと判定された場合は、図4のリターンを介して、図3のステップ12に進む。なお、ステップ24は、省略することもできる。即ち、ステップ21で「NO」と判定されたら、ステップ25に進むようにしてもよい。
【0073】
一方、図3のステップ10で、「NO」、即ち、現在検出値P1が前回検出値P2に対して閾値Tを超える差がないと判定された場合は、異常がないと判定できるので、ステップ11の異常診断対応処理を介することなく、ステップ12に進む。この場合には、例えばモニタ等に異常がない旨の表示等をすることにより、オペレータに異常がない旨を報知することができる。
【0074】
ステップ12では、油圧ポンプ17の吐出圧力を下降させる。即ち、コントローラ31からレギュレータ19に制御信号を出力し、油圧ポンプ17の吐出容量を通常時の状態に戻す(復帰させる)。次いで、ステップ13で、エンジン16の回転数を下降させる。即ち、ステップ13では、コントローラ31からエンジン16の燃料噴射装置に制御信号を出力し、エンジン16の回転数を通常の状態に戻す(復帰させる)。続いて、ステップ14では、切換弁25を供給位置(イ)に切換える。即ち、コントローラ31から切換弁25に供給位置(イ)に切換える旨の制御信号を出力する。これにより、切換弁25が供給位置(イ)に切換わると、油圧ポンプ17から吐出された作動油は、中立位置に固定されたコントロールバルブ24を通じて作動油タンク18側へ還流する。
【0075】
そして、続くステップ15では、コントロールバルブ24の中立位置固定を解除する。即ち、コントローラ31からコントロールバルブ24に制御信号を出力し、コントロールバルブ24の切換位置を通常の状態(中立位置から切換えることができる状態)に戻す(復帰させる)。さらに、必要に応じて、コントローラ31のカウンタを停止すると共に、カウンタをリセット(経過時間Sを0に)する。そして、図3のリターンを介してスタートに戻り、ステップ1以降の処理を繰返す。
【0076】
なお、図5は、図3および図4の流れに従って故障診断処理(異常診断処理)を行ったときの、コントロールバルブ24、切換弁25、エンジン16、油圧ポンプ17等の時間変化の一例を示した特性線図である。
【0077】
かくして、本実施の形態によれば、油圧ポンプ17に異常があるか否かの判定を安定して行うことができる。
【0078】
即ち、油圧ポンプ17の故障診断(異常判定)を行うべく、切換弁25を戻り位置(ロ)に切換えると、分岐管路26に設けられたリリーフ弁27により、該リリーフ弁27よりも上流側を流れる作動油の圧力がリリーフ弁27の設定値に保持される。これにより、油圧ポンプ17には、リリーフ弁27の設定値に応じた一定の負荷が加わり、該油圧ポンプ17の内部でリークしてドレン管路28を流れる作動油の量が、前記一定の負荷に応じたものとなる。
【0079】
このため、この状態におけるドレン管路28を流れる作動油の圧力を圧力センサ29により検出し、その検出値P1、P2に基づいて油圧ポンプ17に異常があるか否かを判定することにより、その判定を安定して行うことができる。そして、異常と判定した場合には、早期に点検、清掃、修理、交換等の必要な措置を講じることができ、油圧ポンプ17、コントロールバルブ24、油圧シリンダ22等を含む各種油圧機器、延いては各種油圧機器を搭載した油圧ショベル1の信頼性を向上することができる。
【0080】
また、本実施の形態によれば、圧力センサ29により検出した現在検出値P1と前回の判定を行ったときに検出した前回検出値P2とを比較することにより、異常があるか否かの判定を行う構成としている。このため、現在検出値P1と前回検出値P2とに基づいて、異常があるか否かの判定を、精度よく安定して行うことができる。これにより、異常が深刻になる前にその異常を早期に発見することができる。
【0081】
この場合、現在検出値P1と前回検出値P2との差に基づいて、具体的な異常の特定、即ち、油圧ポンプ17の内部で異常なリークが発生しているか、ドレン管路28に異常な目詰まりが発生しているかを、精度よく安定して判定することができる。そして、このように異常を特定することにより、その異常に応じた修理、清掃、交換等の措置を早期に講じることができる。
【0082】
さらに、本実施の形態によれば、切換弁25を戻り位置(ロ)に切換えてから所定時間S1が経過したときの圧力センサ29の検出値P1、P2に基づいて判定を行う構成としている。このため、所定時間S1の経過により、リリーフ弁27よりも上流側を流れる作動油の圧力が、リリーフ弁27の設定値に確実に保持された状態(設定値に落ち着いた状態)で、圧力センサ29による検出を行うことができる。これにより、判定精度を高めることができる。
【0083】
次に、図6ないし図8は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、分岐管路に設けた別の圧力センサにより該分岐管路の圧力がリリーフ弁の設定圧になったことを判定し、このときの圧力センサの検出値に基づいて異常の判定を行う構成としたことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0084】
図中、41は分岐管路26に設けられた別の圧力センサとしての圧力スイッチで、該圧力スイッチ41は、分岐管路26を流れる作動油の圧力がリリーフ弁27の設定値(例えば5MPa)になったことを検出するためのものである。ここで、圧力スイッチ41は、コントローラ31の入力側に接続されている。
【0085】
そして、圧力スイッチ41は、分岐管路26を流れる作動油の圧力がリリーフ弁27の設定値以上(例えば5MPa以上)になると、その旨の検出信号(ON信号)をコントローラ31に出力する。そして、コントローラ31は、圧力スイッチ41からの検出信号により、分岐管路26内の圧力が設定値になったと判定し、このときの圧力センサ29の検出値P1、P2に基づいて異常の判定を行う構成としている。
【0086】
次に、図7を用いて、コントローラ31による異常診断処理について説明する。なお、本実施の形態は、上述した第1の実施の形態のステップ2およびステップ7の処理に代えて、ステップ36の処理を行う構成としている。即ち、第1の実施の形態のような、所定時間S1の経過を条件に圧力センサ29による検出を行う構成は採用せずに、本実施の形態では、圧力スイッチ41の検出信号(ON信号)を条件に圧力センサ29による検出を行う構成としている。
【0087】
エンジン16の稼働(始動)により、図7の処理動作がスタートすると、ステップ31では、上述した図3のステップ1と同様に、エンジン16を始動したときか否かと、異常診断スイッチ30が操作(ON)されたか否かとの判定を行う。ステップ31で、「YES」と判定されたときは、ステップ32に進み、該ステップ32からステップ35の処理を行う。このステップ32からステップ35は、上述した図3のステップ3からステップ6と同様の処理である。即ち、本実施の形態では、上述した図3のステップ2の処理は行わない。
【0088】
ステップ36では、圧力スイッチ41がONされたか否かを判定する。即ち、ステップ36では、分岐管路26内の圧力が設定値になった旨の検出信号(ON信号)が、圧力スイッチ41からコントローラ31に入力されたか否かを判定する。そして、ステップ36は、圧力スイッチ41から検出信号(ON信号)が入力されたと判定された場合、即ち、分岐管路26内の圧力が設定値になったと判定された場合に、ステップ37に進むように構成している。
【0089】
これにより、続くステップ37で行う圧力センサ29の読み込みを、リリーフ弁27よりも上流側の作動油の圧力が該リリーフ弁27の設定値に確実に保持された(落ち着いた)状態で行うことができる。なお、ステップ37からステップ44の処理は、上述した図3のステップ8からステップ15までの処理および図4のステップ21から26の処理と同様である。また、図8は、図7および図4の流れに従って異常診断処理を行ったときの、コントロールバルブ24、切換弁25、エンジン16、油圧ポンプ17、圧力スイッチ41等の時間変化の一例を示した特性線図である。
【0090】
本実施の形態は、上述の如き圧力スイッチ41の検出信号を条件に圧力センサ29による検出を行うもので、その基本的作用については、上述した第1の実施の形態によるものと格別差異はない。
【0091】
特に、本実施の形態の場合は、コントローラ31は、圧力スイッチ41により分岐通路26内の圧力が設定値になったと判定したときの圧力センサ29の検出値P1、P2に基づいて、異常の判定を行う構成としている。このため、リリーフ弁27よりも上流側を流れる作動油の圧力が、リリーフ弁27の設定値に確実に保持された状態(設定値に落ち着いた状態)で、圧力センサ29による検出を行うことができる。これにより、判定精度を高めることができる。
【0092】
なお、上述した第1の実施の形態では、図3に示すステップ10の処理(必要に応じて、ステップ2、ステップ4、ステップ7、ステップ8、ステップ11の処理)が本発明の構成要件であるプランジャポンプ異常判定手段の具体例を示している。また、上述した第2の実施の形態では、図7に示すステップ39の処理(必要に応じて、ステップ33、ステップ36、ステップ38、ステップ40の処理)が本発明の構成要件であるプランジャポンプ異常判定手段の具体例を示している。
【0093】
上述した各実施の形態では、現在検出値P1と前回検出値P2(必要に応じて予め設定した正常値P3)とを比較することにより異常の判定を行う構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、前回検出値P2を用いずに、常に現在検出値P1と予め設定した正常値P3とを比較することにより、異常の判定を行う構成としてもよい。また、現在検出値P1と前回検出値P2を比較すると共に現在検出値P1と正常値P3も比較し、両者のうち何れか一方でも閾値を超える差がある場合に、異常と判定するように構成してもよい。要は、前回検出値P2と正常値P3とのうちの少なくとも何れかの値と現在検出値P1とを比較することにより、異常の判定を行うことができる。
【0094】
上述した各実施の形態では、プランジャポンプとしての油圧ポンプ17を、可変容量型で斜板式のアキシャルポンプとして構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、油圧ポンプとして、他の形式のプランジャポンプ、具体的には、斜軸式でアキシャル型のもの、ラジアル型のもの、容量固定型のもの等、各種のプランジャポンプを用いることができる。また、作動油に関しても油以外のものを用いてもよい。
【0095】
上述した第2の実施の形態では、分岐管路26の圧力がリリーフ弁27の設定圧になったことを圧力スイッチ41により検出する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、分岐管路の圧力がリリーフ弁の設定圧になったことを検出できるものであれば各種の圧力センサを用いることができる。
【0096】
さらに、上述した各実施の形態では、プランジャポンプの故障診断装置を油圧ショベルに適用した場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えば油圧クレーン、ホイールローダ等の建設機械を含む各種の産業機械、即ち、プランジャポンプを有する種々の油圧駆動回路を採用した産業機械に広く適用できるものである。
【符号の説明】
【0097】
12 ブームシリンダ(油圧アクチュエータ)
13 アームシリンダ(油圧アクチュエータ)
14 バケットシリンダ(油圧アクチュエータ)
15 バケット開閉シリンダ(油圧アクチュエータ)
17 油圧ポンプ(プランジャポンプ)
18 作動油タンク
20 吐出管路
22 油圧シリンダ(油圧アクチュエータ)
25 切換弁(切換装置)
26 分岐回路
27 リリーフ弁
28 ドレン管路
29 圧力センサ
41 圧力スイッチ(別の圧力センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動油タンクから吸込んだ作動油を圧油として吐出するプランジャポンプと、
該プランジャポンプから吐出された圧油を油圧アクチュエータに導く吐出管路と、
該吐出管路の途中に設けられ、前記圧油を前記油圧アクチュエータ側に供給する供給位置と前記圧油を前記吐出管路から分岐管路を通じて前記作動油タンク側へ戻す戻り位置とに切換える切換装置と、
前記分岐管路に設けられ該分岐管路を流れる作動油の圧力を設定値に保持するリリーフ弁と、
前記プランジャポンプの駆動時に該プランジャポンプの内部でリークする作動油を前記作動油タンクへ排出するドレン管路と、
該ドレン管路を流れる作動油の圧力を検出する圧力センサと、
前記切換装置を前記戻り位置に切換えた状態における前記圧力センサの検出値に基づいて、前記プランジャポンプに異常があるか否かを判定するプランジャポンプ異常判定手段とを備えてなるプランジャポンプの故障診断装置。
【請求項2】
前記プランジャポンプ異常判定手段は、前記圧力センサにより検出した現在検出値と予め設定した正常値または前回の判定を行ったときに検出した前回検出値とを比較し、前記現在検出値が、前記正常値または前回検出値に対して予め設定した閾値を超える差がある場合に、前記プランジャポンプに異常があると判定する構成としてなる請求項1に記載のプランジャポンプの故障診断装置。
【請求項3】
前記プランジャポンプ異常判定手段は、前記現在検出値が前記正常値または前回検出値に対して大きい場合に、前記プランジャポンプの内部で異常なリークが発生していると判定し、前記現在検出値が前記正常値または前回検出値に対して小さい場合に、前記ドレン管路に異常な目詰まりが発生していると判定する構成としてなる請求項2に記載のプランジャポンプの故障診断装置。
【請求項4】
前記プランジャポンプ異常判定手段は、前記切換装置を前記戻り位置に切換えてから所定時間経過したときの前記圧力センサの検出値に基づいて判定する構成としてなる請求項1,2または3に記載のプランジャポンプの故障診断装置。
【請求項5】
前記分岐管路には、該分岐管路を流れる作動油の圧力が前記設定値になったことを検出するための別の圧力センサを設け、
前記プランジャポンプ異常判定手段は、前記別の圧力センサにより前記分岐通路内の圧力が前記設定値になったと判定したときの前記圧力センサの検出値に基づいて判定する構成としてなる請求項1,2または3に記載のプランジャポンプの故障診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−104369(P2013−104369A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249491(P2011−249491)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】