説明

プラントの寿命診断・保守管理システム

【課題】多様なメニューで幅広い要求に応えることができるプラントの寿命診断・保守管理システムを提供すること。
【解決手段】プラントを構成しているプラント機器の寿命診断・保守管理を依頼するプラント利用者及び該プラント機器の診断・保守を行う受託業者に対してネットワークを介してサービス提供サーバが各種情報をプラント利用者の情報端末1及び受託業者の情報端末2に提供し、該プラント機器の寿命診断・保守管理を行うものであり、サービス提供サーバは、Webサイト5と、取引窓口6と、データベース群10と、寿命診断モジュール群8と、保守管理計画モジュール群9と、契約・課金モジュール群11を備え、ネットワークとして依頼者−受託者間ネットワーク3、受託者内ネットワーク4とから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば火力発電プラントに適用される寿命診断・保守管理システムに関し、特にネットワークを通じてプラント利用者(電力供給者及び発電設備保守管理者)と情報交換しながら寿命診断および保守管理計画立案を行うプラントの寿命診断・保守管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギーの有効利用と低コスト化の観点から、発電プラントを効率良く利用し、保守管理コストを低減することが望まれている。合理的な保守管理においては、寿命診断を行って計画的な検査、補修、交換を行うことが重要であるが、これまで、寿命診断は大規模プラントを中心に行われてきたが、一般プラントについても寿命診断を基にした保守管理を広く行っていく必要がある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
そこで、プラントの規模・状態・使用条件に応じた選択肢が幅広く、いつでも簡便に実施できるようにする必要がある。
【0004】
一方、社会のインターネット化の進展に伴い、個々の事業者や個人レベルでの情報交換が日常的に行われるようになり、Webサイトを開いて幅広い需要者の要望を吸収できるようになってきている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004-234536号公報
【特許文献2】特開2001-32724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、 プラントの診断及び保守管理についても、インターネットを利用した幅広い要求に対応したメニューを用意し対応できる体制を整える必要がある。しかしながら、寿命診断技術は、長年の蓄積からほぼ固まってきており、事業者ごとには手法が異なり多様ではあるものの、個々の事業者の中では固定化している面があり、多様な診断・保守管理メニューを整え、ネットワーク化に対応したシステムは構築されていない。
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、プラント利用者の情報端末と受託業者の情報端末をネットワークで結び、該ネットワークに寿命診断・保守管理手段及び契約課金手段を含むサービス提供サーバを接続することにより、プラント利用者の要求に応じた診断および保守管理メニューを提供することができ、幅広いプラントユーザーが容易にかつ多岐にわたる要求に応えた最適な診断および保守管理が行えるプラントの寿命診断・保守管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、請求項1に対応する発明は、プラント利用者の情報端末及びプラント利用者が扱うプラント機器の診断・保守を行う受託業者の情報端末及び寿命診断/保守管理サービス提供サーバーとをネットワークを介して接続し、前記寿命診断/保守管理サービス提供サーバー から各種情報を前記プラント利用者の情報端末及び前記受託業者の情報端末に提供し、該プラント機器の寿命診断・保守管理を行うものであって、前記サービス提供サーバはデータベース手段と、寿命診断手段と、保守管理計画手段と、契約・課金手段を備え、前記データベース手段は前記プラント利用者からのプラント据付時から現在までのプラント機器の寿命診断に必要なプラント機器情報をデータベース化したものであり、前記寿命診断手段は、前記データベース手段のプラント機器情報に基づいて該プラント機器の寿命を判断するものであり、前記保守管理計画手段は、前記寿命診断手段からの診断結果と前記データベース手段からのプラント機器情報に基づいてプラント機器の保守管理計画を作成し、前記プラント利用者の情報端末に出力するものであり、前記契約・課金手段は前記保守管理計画手段からの保守管理計画内容を前記プラント利用者が納得した上で前記受託業者と契約を結び、前記保守管理手段からの該保守管理計画を前記受託業者が実行したことに基づき、寿命診断・保守管理費用を前記プラント利用者に対して費用請求を行い、前記プラント利用者の支払を確認するものであるプラントの寿命診断・保守管理システムである。
【0008】
前記目的を達成するため、請求項2に対応する発明は、次のようにしたものである。すなわち、前記寿命診断手段は、前記プラント利用者の情報端末に対して寿命診断手法のメニューを提供するものであり、前記プラント利用者の情報端末を介して前記寿命診断手法を選択することにより寿命診断の契約をネット上で行い、該契約に従って寿命診断を実施するものであり、更に該寿命診断結果を前記プラント利用者の情報端末に表示するものであり、
前記契約・課金手段は該寿命診断結果を前記プラント利用者の承認により前記ネットワーク上で課金することを特徴とする請求項1に記載のプラントの寿命診断・保守管理システムである。
【0009】
前記目的を達成するため、請求項3に対応する発明は、次のようにしたものである。すなわち、前記保守管理計画手段は、前記プラント利用者の情報端末に対して保守管理手法のメニューを提供するものであり、前記プラント利用者の情報端末を介して前記保守管理手法を選択することにより寿命診断の契約をネット上で行い、該契約に従って保守管理を実施するものであり、更に該保守管理結果を前記プラント利用者の情報端末に表示するものであり、
前記契約・課金手段は該保守管理結果を前記プラント利用者の承認により前記ネットワーク上で課金することを特徴とする請求項1に記載のプラントの寿命診断・保守管理システムである。
【0010】
前記目的を達成するため、請求項4に対応する発明は、次のようにしたものである。すなわち、前記寿命診断手段は、硬さまたはレプリカから非破壊的にクリープ、疲労、クリープ疲労損傷蓄積による余寿命を予測することを特徴とする請求項1に記載のプラントの寿命診断・保守管理システムである。
【0011】
前記目的を達成するため、請求項5に対応する発明は、次のようにしたものである。すなわち、前記寿命診断手段は、解析に基づく方法と非破壊計測に基づく方法を組合せて用いることを特徴とする請求項1に記載のプラントの寿命診断・保守管理システムである。
【0012】
前記目的を達成するため、請求項6に対応する発明は、次のようにしたものである。すなわち、前記寿命診断手段は、オンラインでプラントの使用条件をモニタすることによりリアルタイムで寿命診断を行うことを特徴とする請求項1に記載のプラントの寿命診断・保守管理システムである。
【0013】
前記目的を達成するため、請求項7に対応する発明は、次のようにしたものである。すなわち、前記プラント利用者の端末は、寿命診断に必要な計測機能を有する携帯入力装置であり、寿命診断機能に、入力された画像を処理して損傷を判定することを特徴とする請求項1に記載のプラントの寿命診断・保守管理システムである。
【0014】
前記目的を達成するため、請求項8に対応する発明は、次のようにしたものである。すなわち、前記保守管理計画手段は、該寿命診断結果をもとに保守管理方法を選択して立案することを特徴とする請求項1に記載のプラントの寿命診断・保守管理システムである。
【0015】
前記目的を達成するため、請求項9に対応する発明は、次のようにしたものである。すなわち、前記保守管理計画手段は、該寿命診断によるリスク分析結果をもとに保守管理方法を選択して立案することを特徴とする請求項1に記載のプラントの寿命診断・保守管理システムである。
【0016】
前記目的を達成するため、請求項10に対応する発明は、次のようにしたものである。すなわち、前記保守管理計画手段は、寿命診断結果をもとにライフサイクルコストを算定して保守管理方法を選択して行うことを特徴とする請求項1に記載のプラントの寿命診断・保守管理システムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によるプラントの寿命診断・保守管理システムによれば、プラント利用者の情報端末と受託業者の情報端末をネットワークで結び、該ネットワークに寿命診断・保守管理手段及び契約課金手段を含むサービス提供サーバを接続することにより、プラント利用者の要求に応じた診断および保守管理メニューを提供することができ、幅広いプラントユーザーが容易にかつ多岐にわたる要求に応えた最適な診断および保守管理が行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0019】
図1は、本発明に係るは本発明の実施形態であるプラントの寿命診断・保守管理システムのブロック構成図であり、図2は図1の実施形態の詳細なフローである。
【0020】
図1で示すように、本実施形態は、プラント利用者の情報端末(図1では利用者用端末群1としてある)及びプラント利用者が扱うプラント機器の診断・保守を行う受託業者の情報端末(図1では受託者用端末群2としてある)及び寿命診断/保守管理サービス提供サーバーとをネットワーク(利用者―受託者間ネットワーク3、受託者内ネットワーク4)を介して接続し、前記寿命診断/保守管理サービス提供サーバー から各種情報を前記プラント利用者の情報端末及び前記受託業者の情報端末に提供し、該プラント機器の寿命診断・保守管理を行うものである。
【0021】
そして、サービス提供サーバは、Webサイト5に開設された取引窓口(取引口座)6と、データベース手段例えばデータベース群10と、寿命診断手段例えば寿命診断モジュール群8と、保守管理計画手段例えば保守管理計画モジュール群9と、契約・課金手段例えば契約・課金モジュール群11を備え、ネットワークとして依頼者−受託者間ネットワーク3、受託者内ネットワーク4とから構成されている。
【0022】
ここで、プラント利用者(プラント事業者)とは、例えば電力会社、IPP、自家発など発電設備を所持・運転しかつ売電している機関及びそれに所属する保守管理担当・責任者である。また、受託業者は、発電設備の保守管理・修理・整備などを請け負う者で、メーカー、メンテナンス専門会社、コンサルタント会社又は保険会社などのグループ又は単独会社のことである。受託業者側には、診断及び保守管理技術があり、利用者側にはプラント使用・運転・点検情報がある。
以下、図2を参照して詳細に説明する。利用者用端末群1は、運転者端末01、保守担当者端末02、管理者端末03からなり、依頼者−受託者間ネットワーク3を介してWebサイト5に接続するためのものであって、これらは携帯パソコン、ハンディターミナル、携帯電話のいずれかで構成されている。
【0023】
受託者用端末群2は、図2に示すようにPj管理者端末04、診断担当端末05、保守担当端末06からなり、受託者内ネットワーク4を介してwebサイト5に接続するための、複数のワークステーションや携帯端末である。
【0024】
依頼対応モジュール群7は、利用者登録モジュール12、寿命診断法ガイドモジュール13、保守管理法ガイドモジュール14、回答作成モジュール15、回答承認モジュール16から構成され、利用者登録モジュール12では、利用者に登録入力を促し、入力情報を利用者リストに登録する。
【0025】
これらの構成により、Webサイト5において入力された寿命診断・保守管理の依頼事項に関する情報をシステム内の要求項目に変換し、要求項目に対応する寿命診断法および保守管理方法を選択すると共に、診断に必要なプラント情報入力を促す。
【0026】
寿命診断モジュール群8は、簡易寿命診断モジュール17、標準寿命診断モジュール18、詳細寿命診断モジュール19、オンライン寿命診断モジュール20、損傷画像同定モジュール21からなり、選択された寿命診断手法により入力情報とデータベース群10の情報を用いて寿命診断を行う。
【0027】
データベース群10は、利用者・プラントリスト25、プラント製造・運転・検査・診断経歴データベース26、材料データベース27、劣化・損傷数値データベース28、劣化・損傷画像データベース29から構成されている。
【0028】
保守管理計画モジュール群9は、保守管理計画モジュール22、リスク管理計画モジュール23、運用管理計画モジュール24からなり、寿命診断結果と入力情報により選択された手法を用いて保守管理計画を作成する。
【0029】
さらに、契約・課金モジュール群11は、寿命診断契約モジュール30、保守管理契約モジュール31、課金モジュール32からなり、依頼者の依頼内容に基づいてWebサイト5上で契約するとともに診断・保守管理計画作成内容に基づいて課金を行う。ここで、
契約・課金モジュール群11の具体的な機能について、図2を参照して説明する。寿命診断契約モジュール30では、寿命診断モジュール群8において選択された診断メニュー情報を基に診断費用見積り計算を行い、Webサイト5を介して利用者に提示する。利用者の電子承認が得られれば、課金モジュール32にて所定金額を課金し診断実行司令信号を寿命診断モジュール群8に送信し、診断を実行する。保守管理契約モジュール31の機能も同様であり、保守管理計画モジュール群9において選択された保守管理メニュー情報を基に保守管理費用見積り計算を行い、Webサイト5を介して利用者に提示する。利用者の電子承認が得られれば、課金モジュール32にて所定金額を課金し保守管理契約を実行させる。
【0030】
図2において、依頼者用端末群1は、依頼者内の運転者、保守担当者、管理者の各担当の端末から構成されており、依頼者−受託者ネットワーク3は、インターネット3’を利用する。受託者用端末群2は、受託者内ネットワーク4はLANなどのイントラネット4’を利用する。
【0031】
寿命診断法ガイドモジュール13では、図3に示すように、利用者への入力ガイダンスを促し(S1)、利用者要求確認リストをWebサイト5上に提示して利用者の要求を確認し(S2)、これに対応する対応技術リスト(寿命診断技術)34を選択して(寿命診断手法選択:S3)、診断メニューと手法、データ入力法ならびに得られる結果のガイドを行い(S4,S6)、情報をデータベース群10に格納する(S5,S7)。
【0032】
ここで、利用者要求確認リスト(寿命診断に対する要求)33は、診断費用が安い、診断が迅速、診断精度がよい、木目細かい診断、損傷量が予測できる、補修量が予測できる、リアルタイムで診断ができる、リスクが予測できるかのいずれかの項目である。
【0033】
対応技術リスト34は、簡易寿命診断、標準寿命診断、詳細寿命診断、オンライン寿命診断、リスク分析である。
【0034】
保守管理法ガイドモジュール14では、図4に示すように、利用者要求確認リスト(保守管理に対する要求)35と、対応技術リスト(保守管理技術)36をWebサイト5上に提示して利用者の要求(S11,S12,S14)と、寿命診断結果を確認し、これに対応する保守管理法を選択して(S13)、保守管理メニューと得られる効果およびデータ入力法のガイドを行い、情報をデータベース群10に格納する(S15,S16,S17,S18)。
【0035】
回答作成モジュール15は、寿命診断結果および保守管理計画をレポートにまとめ、回答承認モジュール16において、受託者内ネットワーク4を通じて受託者内での承認を得た後レポート内容をWebサイト5上に提示する(S19)。
【0036】
ここで、利用者要求確認リスト35は、保守管理計画に役立つ、保守管理費用低減に役立つ、運転管理計画に役立つ、運転柔軟性が増す、リスクを正確に把握できる、リスクを低減できる、ライフサイクルコストを低減できる、長寿命化ができる、性能向上ができるということを記載したものである。
【0037】
応技術リスト36は、診断ベース保守管理計画、リスクベース保守管理計画、ライフサイクルコスト分析、補修、長寿命化改造、性能向上改造ということを記載したものである。
【0038】
図2の簡易寿命診断モジュール17の詳細は図5に示すように、クリープや疲労などにより損傷を受けている部位(クリープ単独損傷部位S21、疲労単独損傷部位S22、クリープ疲労重畳損傷部位S23)の硬さなどの計測データ(入力データ:S20)を、寿命評価マスターカーブに適用して評価するものである。硬さHVは、クリープ、疲労、クリープ疲労のそれぞれについて、次のような関数関係がある。
【0039】
1)クリープ(評価時硬さHV,初期硬さHVo,運転時間t,温度T:既知とする)
応力:σ=f1(HV,HVo,t,T)
寿命:tr=f2(HVo,T,σ)
余寿命:tl=tr−t
2)低サイクル疲労
ひずみ範囲:Δε=g1(HV,HVo,HVa,N,T)
寿命:Nf=g2(HV,Hvo,T,Δε)
余寿命:Nl=Nf−N
3)クリープ疲労(保持時間を持つ繰返し)
ひずみ範囲:Δε=h1(HV,HVo,N,t,T)
保持時間中の応力:σ=h2(HV,Hvo,N,t,T)
寿命:Nf=h2(HV,HVo,N,t,T,Δε,σ)
ただし、HV:評価時の各損傷部位の硬さ、HVa:評価時の損傷部位と同等の熱劣化のみ受けている部位の硬さ、HVo:製造時の硬さ、t:運転時間、N:起動停止回数、T:温度、σ:応力、Δε:ひずみ範囲
図2の標準寿命診断モジュール18の詳細は、図6に示すように、構造部材の運転条件(入力データS25)の変化、すなわちクリープ単独損傷部位(S26)、疲労単独損傷部位(S27)、クリープ疲労重畳損傷部位(S28)を示す運転曲線に基づく有限要素法温度・応力解析と初期の寿命評価用材料特性に基づき寿命評価を行うものである。評価部位の温度T,応力σ,ひずみ範囲Δεの解析結果に基づき、データベース群10の材料データベース27から寿命評価カーブを選択し、寿命評価に用いる。
【0040】
図2の詳細寿命診断モジュール19の詳細は、図7に示すように、標準寿命診断モジュール18に、構造部材の運転条件(入力データS30)の変化、すなわちクリープ単独損傷部位(S31)、疲労単独損傷部位(S32)、クリープ疲労重畳損傷部位(S33)を示す運転曲線に材料の劣化を考慮するための熱時効部の硬さを用いて、寿命評価マスターカーブを補正することが特徴である。さらに、損傷部の硬さやレプリカなどの直接計測値に基づく評価も合わせて総合的に評価する。
【0041】
図2のオンライン寿命診断モジュール20の詳細は、図8に示すように、標準寿命診断モジュール18あるいは詳細寿命診断モジュール19で用いている解析に基づく評価を、実機の運転中の使用条件変化情報に基づいて温度・応力評価することによってリアルタイム診断を行うものである。具体的には、オンライン入力データ(S35)を、クリープ単独損傷部位(S36)、疲労単独損傷部位(S37)、クリープ疲労重畳損傷部位(S38)について温度・応力評価することである。
【0042】
図2の損傷画像同定モジュール21の詳細は、図9に示すように、レプリカの顕微鏡観察画像について、依頼者に代わって、ボイドや微小き裂などの損傷指標を画像処理を介して計測するものである。具体的には、クリープ単独損傷部位に付いて、レプリカミクロ組織SEM観察画像データ(S41)を、画像処理して(S42)、クリープボイド判定疲労き裂皆無判定を行い(S43)、その後クリープボイドの計測を行い(S44)、損傷率t/trの評価を行う(S45)。疲労単独損傷部位についても、またクリープ疲労重畳損傷部位についてもほぼ同様な処理を行う(S46〜S50、S51〜S55)。
【0043】
この場合、図2の寿命診断モジュール群8は、予め顧客の要求事項に応じた寿命診断法をシステム内のモジュールとして組込んでおき、選択された寿命診断法のモジュールを起動させ、寿命を算出する。このとき、データベース群10に組込まれた材料特性データベース群27を参照し、評価結果を追加して記憶する。寿命診断結果と対応させた保守管理メニューを管理計画モジュール群9において選択し、Webサイト5に表示する。
【0044】
図2のデータベース群10は、図10に示すように利用者登録モジュールS56からの利用者承認済み(S57)の利用者インプット情報(S58)を利用者・ブラントリスト25に登録するとともに、プラント製造・運転・検査・診断履歴データベース26に登録する。
【0045】
また、図2の材料データベース27、劣化・損傷の数値データベース28および劣化・損傷画像データベース29にも登録を行う。
【0046】
材料データベース27は、図11に示すように、予め実験データベース等に基づいて、クリープ破断特性、低サイクル疲労特性、クリープ疲労特性、き裂進展特性、破壊じん性のデータベースを構築しておく。さらに、劣化・損傷を考慮した特性も合わせて、クリープ軟化特性時効軟化特性、低サイクル疲労軟化特性、クリープ疲労軟化特性、時効劣化材き裂進展特性、クリープ劣化材き裂進展特性、時効劣化材破壊じん性、クリープ劣化材破じん性、クリープボイド発生・成長特性、低サイクル疲労江き裂発生・成長特性、き裂・クリープボイド発生・成長特性を記憶させておく。
【0047】
保守管理計画モジュール22は、図12に示すように、入力データ(寿命診断結果、補修量予測結果、運転履歴、運用予想)S60について、寿命診断ベース保守管理計画(S61)とライフサイクルコスト分析による保守管理計画(S62)が行えるようになっている。
【0048】
寿命診断ベース保守管理計画S61は、消費寿命(クリープ、疲労余寿命)の評価結果に基づき、次回点検時期、点検項目、補修方法を選択し、補修後の余寿命tr−tも評価する。
【0049】
ライフサイクルコスト分析S62では、余寿命と損傷量の予測結果に基づき、点検頻度、補修頻度、補修量、運用制限などを考慮してトータルコストが最適となる方法を選択するものである。
【0050】
リスク管理計画モジュール23は、図13に示すように、寿命および使用条件の統計的ばらつきを考慮した寿命診断結果をもとにして(S63)、き裂発生故障率およびき裂進展後の破壊故障率を求め(S64)、社会的影響度とコストを考慮してリスクの大小を判定する(S65)。さらに、補修/補強、運転制限などによるリスク回避方法を選択し(S66)、リスクの度合いに応じて保険料を設定する(S67)。
【0051】
運用管理計画モジュール24は、図14に示すように、寿命診断結果(S68)から、許容運転時間および許容起動停止回数を計算し(S69)、起動停止パターンの変更(S70)による、許容運転時間および許容起動停止回数の修正等の許容値の緩和を評価し、利用者の要望を考慮して最適な運用計画を策定する(S72)。
【0052】
契約・課金モジュール群11は、図2に示すように、寿命診断契約モジュール30、保守管理契約モジュール31および課金モジュール32から構成されており、依頼対応モジュール7で受け付けた利用者の要求に合致した診断メニューに基づいてWebサイト5の取引窓口6において契約を行う。保守管理契約モジュール31も同様である。さらに、契約に基づき、登録された利用者からネットを通じて課金を行う。
【0053】
以上述べた実施形態によれば、次のような作用効果が得られる。
【0054】
(1)利用者とのネットワークを介した相互情報交換により、寿命診断・保守管理の要求を明らかにし、利用者の要求に応じた診断および保守管理メニューを提供し、かつ契約・課金までを行い、これらの手順につきガイダンス機能を備えているため、幅広いプラントユーザーが容易にかつ多岐にわたる要求に応えた最適な診断および保守管理が行える。
【0055】
(2)従来、プラント利用者(電力供給者及びその発電設備保守管理者)と提供者(発電 設備メーカ及びその技術専門家)の協議よって行ってきた診断・保守管理方法の選択並びに実施計画策定がネット上で、評価技術専門家以外にもわかりやすく、迅速・簡便に実施できるため、時間とコストの大幅節約が可能となる。
【0056】
(3)多様なメニューの提示により、プラントの使用状態に応じた最適な診断・保守管理方法の選択が可能となる。
(変形例)
なお、前述したインターネットは有線であっても無線であってもよく、デジタル通信が行えればよく、また、公衆回線を含む場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態のプラントの寿命診断・保守管理システムのブロック構成図。
【図2】本発明の実施形態のプラントの寿命診断・保守管理システムのブロック詳細構成図。
【図3】本発明の実施形態における寿命診断ガイドモジュールの処理手順フロー説明図。
【図4】本発明の実施形態における保守管理法ガイドモジュールの処理手順フロー説明図。
【図5】本発明の実施形態における簡易寿命診断モジュールの処理手順フロー説明図。
【図6】本発明の実施形態における標準寿命診断モジュールの処理手順フロー説明図。
【図7】本発明の実施形態における詳細寿命診断モジュールの処理手順フロー説明図。
【図8】本発明の実施形態におけるオンライン寿命診断モジュールの処理手順フロー説明図。
【図9】本発明の実施形態における損傷画像処理同定モジュールの処理手順フロー説明図。
【図10】本発明の実施形態におけるデータベース登録の処理手順フロー説明図。
【図11】本発明の実施形態における材料データベースの構成説明図。
【図12】本発明の実施形態における保守管理計画モジュールの処理手順フロー説明図。
【図13】本発明の実施形態におけるリスク管理計画モジュールの処理手順フロー説明図。
【図14】本発明の実施形態における運用管理計画モジュールの処理手順フロー説明図。
【符号の説明】
【0058】
1……利用者用端末群、2……利用者−受託者間ネットワーク、3……受託者用端末群
4……受託者内ネットワーク、5……Webサイト、6……取引窓口、7……依頼対応モジュール群、8……データベース群、9……寿命診断モジュール群、10…契約・課金モジュール群、11…保守管理計画モジュール群、12…利用者登録モジュール、13…寿命診断法ガイドモジュール、14…保守管理法ガイドモジュール、15…回答作成モジュール、16…回答承認モジュール、17…簡易寿命診断モジュール、18…標準寿命診断モジュール、19…詳細寿命診断モジュール、20…オンライン寿命診断モジュール、 21…損傷画像同定モジュール、22…保守管理計画モジュール、23…リスク管理計画モジュール、24…運用管理計画モジュール、25…利用者・プラントリスト、26…プラント製造・運転・検査・診断履歴データベース、27…材料データベース、28…劣化・損傷数値データベース、29…劣化・損傷画像データベース、30…寿命診断契約モジュール、31…保守管理契約モジュール、32…課金モジュール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラント利用者の情報端末及びプラント利用者が扱うプラント機器の診断・保守を行う受託業者の情報端末及び寿命診断/保守管理サービス提供サーバーとをネットワークを介して接続し、前記寿命診断/保守管理サービス提供サーバー から各種情報を前記プラント利用者の情報端末及び前記受託業者の情報端末に提供し、該プラント機器の寿命診断・保守管理を行うものであって、
前記サービス提供サーバはデータベース手段と、寿命診断手段と、保守管理計画手段と、契約・課金手段を備え、
前記データベース手段は前記プラント利用者からのプラント据付時から現在までのプラント機器の寿命診断に必要なプラント機器情報をデータベース化したものであり、
前記寿命診断手段は、前記データベース手段のプラント機器情報に基づいて該プラント機器の寿命を判断するものであり、
前記保守管理計画手段は、前記寿命診断手段からの診断結果と前記データベース手段からのプラント機器情報に基づいてプラント機器の保守管理計画を作成し、前記プラント利用者の情報端末に出力するものであり、
前記契約・課金手段は前記保守管理計画手段からの保守管理計画内容を前記プラント利用者が納得した上で前記受託業者と契約を結び、前記保守管理手段からの該保守管理計画を前記受託業者が実行したことに基づき、寿命診断・保守管理費用を前記プラント利用者に対して費用請求を行い、前記プラント利用者の支払を確認するものであるプラントの寿命診断・保守管理システム。
【請求項2】
前記寿命診断手段は、前記プラント利用者の情報端末に対して寿命診断手法のメニューを提供するものであり、前記プラント利用者の情報端末を介して前記寿命診断手法を選択することにより寿命診断の契約をネット上で行い、該契約に従って寿命診断を実施するものであり、更に該寿命診断結果を前記プラント利用者の情報端末に表示するものであり、
前記契約・課金手段は該寿命診断結果を前記プラント利用者の承認により前記ネットワーク上で課金することを特徴とする請求項1に記載のプラントの寿命診断・保守管理システム。
【請求項3】
前記保守管理計画手段は、前記プラント利用者の情報端末に対して保守管理手法のメニューを提供するものであり、前記プラント利用者の情報端末を介して前記保守管理手法を選択することにより寿命診断の契約をネット上で行い、該契約に従って保守管理を実施するものであり、更に該保守管理結果を前記プラント利用者の情報端末に表示するものであり、
前記契約・課金手段は該保守管理結果を前記プラント利用者の承認により前記ネットワーク上で課金することを特徴とする請求項1に記載のプラントの寿命診断・保守管理システム。
【請求項4】
前記寿命診断手段は、硬さまたはレプリカから非破壊的にクリープ、疲労、クリープ疲労損傷蓄積による余寿命を予測することを特徴とする請求項1に記載のプラントの寿命診断・保守管理システム。
【請求項5】
前記寿命診断手段は、解析に基づく方法と非破壊計測に基づく方法を組合せて用いることを特徴とする請求項1に記載のプラントの寿命診断・保守管理システム。
【請求項6】
前記寿命診断手段は、オンラインでプラントの使用条件をモニタすることによりリアルタイムで寿命診断を行うことを特徴とする請求項1に記載のプラントの寿命診断・保守管理システム。
【請求項7】
前記プラント利用者の端末は、寿命診断に必要な計測機能を有する携帯入力装置であり、寿命診断機能に、入力された画像を処理して損傷を判定することを特徴とする請求項1に記載のプラントの寿命診断・保守管理システム。
【請求項8】
前記保守管理計画手段は、該寿命診断結果をもとに保守管理方法を選択して立案することを特徴とする請求項1に記載のプラントの寿命診断・保守管理システム。
【請求項9】
前記保守管理計画手段は、該寿命診断によるリスク分析結果をもとに保守管理方法を選択して立案することを特徴とする請求項1に記載のプラントの寿命診断・保守管理システム。
【請求項10】
前記保守管理計画手段は、寿命診断結果をもとにライフサイクルコストを算定して保守管理方法を選択して行うことを特徴とする請求項1に記載のプラントの寿命診断・保守管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−109070(P2007−109070A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−300335(P2005−300335)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】