説明

プラントモデル生成装置およびプラント運転支援システム

【課題】初期プラントモデル構築時の作業負担を軽減する。
【解決手段】演算制御装置13は、プラント稼働前、入力されるプラント機器の機器接続情報にしたがいプラントモデル・ユニットライブラリの中から必要なプラントモデルユニットを抽出し、続いて入力されるプラント機器の機器情報を抽出されたプラントモデルユニットのモデルパラメータに反映させて初期プラントモデルを構築し、プラントの稼働を契機に取得される運転データを初期プラントモデルに入力してモデル出力値を計算して乖離度を判定してモデルパラメータを調整し、モデル出力値が予め設定された乖離度の許容範囲に入るまでモデルパラメータの調整およびシミュレーションを繰り返し実行してプラントモデルを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラントモデル生成装置、および同装置により作成されたプラントモデルを用いてプラントの運転を支援するプラント運転支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
化学、石油、電力、ガス、鉄鋼、薬品、上下水道等のプラントでは、プラントモデルを用いたシミュレーションにより、湿度、温度、圧力等の物理量を算出してプラントの最適運転を行なう。ここで、プラントモデルとは、実プラントを構成する各種プラント機器をモデル化したもので、例えば、熱交換機、ドラム、ポンプ、バルブ、配管等があり、プラント建設時、これらを独立した機器としてモデル化する必要がある。
【0003】
そしてこのプラントモデルを用いたシミュレータは、常にプラントを構成する各プラント機器の状態を示す運転データを受信し、プラントモデルの出力値が、取得した運転データに適応するようにプラントパラメータを調整する。このように制御することでプラントモデルとプラントとをリアルタイムに追従させることができ、シミュレーションを実行することにより実プラントの挙動を予測することが可能になる。このプラントパラメータの調整に関する技術は従来から多数提案されており、先行技術文献として、例えば、以下に列挙する公開公報が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−160309号公報
【特許文献2】特開平09−179604号公報
【特許文献3】特開2001−154705号公報
【特許文献4】特開2005−078545号公報
【特許文献5】特開2005−332360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、プラント訓練シミュレータやプラントの運転を支援するオンラインプラントシミュレータは、プラントを所有する企業からプラントモデルを作成するための情報を受領してプラントモデルを構築し、運転データ等を利用してチューニングを行う。このチューニングに際し、例えば、上記した各特許文献に開示された技術を用いることができる。すなわち、プラントから取得した運転データに基づきプラントモデルのパラメータを選択してシミュレーションを実行し、プラントモデルの出力値が許容範囲内に入るまでパラメータを変更し、プラントモデルを常にプラントの状態に追従させる。このことにより、異常診断や未来予測を正確に行うことが可能になる。
【0006】
ところで、従来、プラントモデルの構築は、プラントを所有する企業から運転訓練シミュレータや運転支援ツールの導入要請を受けてから行なう。特に、石油化学や一般化学では、化学反応を伴う化学プラントモデルは、反応毎にプラントモデルを必要とし、このため、プラントモデルの蓄積に時間を要する。これに対し、プラントモデルは、一から構築することなく、できれば過去に作成したモデルを参照し、あるいは市販のプラントモデル・ユニットライブラリを活用することができれば効率的である。
【0007】
本発明は上記した要望に基づいてなされたものであり、プラント建設時、予め準備されたプラントモデル・ユニットライブラリの中から必要なモデルを抽出してプラントモデルの原型を自動生成させる仕組みを構築することにより初期プラントモデル構築時の作業負担を軽減し、また、プラントの立ち上げから安定運転期に移行する迄、プラントから収集される運転データを用いて調整を行ない生成したプラントモデルを使用した運転支援ツールが使えるようなプラントモデルに修正してプラントの運転支援が可能な、プラントモデル生成装置およびプラント運転支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために本発明の第1の観点に係るプラントモデル生成装置は、プラント構成機器をモデル化したプラントモデルを作成する、少なくとも、入出力装置と、記憶装置と、演算制御装置とを備えたプラントモデル生成装置であって、前記演算制御装置は、前記入出力装置を介して入力されるプラント機器の機器接続情報にしたがい、前記記憶装置に格納されたプラントモデル・ユニットライブラリの中から必要なプラントモデルユニットを抽出し、前記抽出されたプラントモデルユニットの間を結線し、続いて入力される前記プラント機器の機器情報を、前記抽出されたプラントモデルユニットのモデルパラメータに反映させて初期プラントモデルを生成する初期モデル構築部と、前記プラントの稼働を契機に、前記プラントから取得される運転データを前記初期プラントモデルに入力してモデル出力値を計算し、前記計算されたモデル出力値と前記運転データとを比較してその乖離度を判定し、前記判定された乖離度に基づき前記初期プラントモデルのモデルパラメータを調整すると共に、前記調整されたモデルパラメータを用いてシミュレーションを行い、前記モデル出力値が予め設定された乖離度の許容範囲に入るまで前記モデルパラメータの調整、および前記シミュレーションを繰り返し実行するモデル更新部と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の第1の観点に係るプラントモデル生成装置によれば、演算制御装置は、初期モデル構築部により、入力されるプラント機器の機器接続情報にしたがい、予め準備されたプラントモデル・ユニットライブラリの中から必要なプラントモデルユニットを抽出する。そして、抽出されたプラントモデルユニットの間を結線し、続いて入力されるプラント機器の機器情報を、抽出されたプラントモデルユニットのモデルパラメータに反映させて初期プラントモデルを生成する。そして、モデル更新部により、プラントから取得される運転データを初期プラントモデルに入力してモデル出力値を計算し、計算されたモデル出力値と運転データとを比較してその乖離度を判定する。そして、判定された乖離度に基づき初期プラントモデルのモデルパラメータを調整すると共に、調整されたモデルパラメータを用いてシミュレーションを行い、モデル出力値が予め設定された乖離度の許容範囲に入るまでモデルパラメータの調整およびシミュレーションを繰り返し実行する。このように、あらかじめ準備されたプラントモデル・ユニットライブラリを活用して初期プラントモデルを作成することができ、したがって、一から初期プラントモデルを構築する場合に比べて作業負担が大幅に軽減される。
【0010】
本発明の第1の観点に係るブラントモデル作成装置において、前記演算制御装置は、前記判定された乖離度と、前記プラントモデルユニットにおけるモデルパラメータの更新記録を前記記憶装置に格納し、前記更新記録を分析して前記乖離度の変動幅、前記モデルパラメータの更新回数のうち少なくとも一つから前記初期プラントモデルが収束したことを検出し、前記入出力装置に報知するモデル判定機能を更に有することを特徴とする。本発明によれば、演算制御装置は、モデル判定部により、モデル更新記録を分析して乖離度の変動幅、モデルパラメータの更新回数のうち少なくとも一つから初期プラントモデルが収束したことを検出して外部に報知する。このため、オペレータまたはベンダーは、プラントの運転が安定状態に移行したことができる。またプラントの立ち上げから安定運転期に移行した後もプラントから収集される運転データを用いてチューニングを行なうことで、プラントモデルを常に実プラントの状態に追従させることができる。
【0011】
上記した課題を解決するために本発明の第2の観点に係るプラント運転支援システムは、プラントの運転を制御するプラント運転制御装置と、前記プラント運転制御装置とはネッワーク経由で接続されるプラントモデル生成装置とからなり、前記プラントモデル生成装置により作成されるプラントモデルを用いて前記プラントの運転支援補行うプラント運転支援システムであって、前記プラントモデル生成装置は、入力されるプラント機器の機器接続情報にしたがい、予め準備されたプラントモデル・ユニットライブラリの中から必要なプラントモデルユニットを抽出し、前記抽出されたプラントモデルユニットの間を結線し、続いて入力される前記プラント機器の機器情報を、前記抽出されたプラントモデルユニットのモデルパラメータに反映させて初期プラントモデルを生成する初期モデル構築機能と、前記プラントの稼働を契機に、前記プラントから取得される運転データを前記初期プラントモデルに入力してモデル出力値を計算し、前記計算されたモデル出力値と前記運転データとを比較してその乖離度を判定し、前記判定された乖離度に基づき前記初期プラントモデルのモデルパラメータを調整すると共に、前記調整されたモデルパラメータを用いてシミュレーションを行い、前記モデル出力値が予め設定された乖離度の許容範囲に入るまで前記モデルパラメータの調整、および前記シミュレーションを繰り返し実行するモデル更新機能と、前記判定された乖離度と、前記プラントモデルユニットにおけるモデルパラメータの更新記録を保存し、前記保存した更新記録を分析して前記乖離度の変動幅、前記モデルパラメータの更新回数のうち少なくとも一つから前記初期プラントモデルが収束したことを検出し、前記入出力装置に報知するモデル判定機能と、を有し、前記プラント運転制御装置は、前記プラントモデル生成装置により作成され、前記収束したプラントモデルにしたがい前記プラントの運転を行うことを特徴とする。
【0012】
本発明の第2の観点に係るプラント運転支援システムによれば、プラントモデル生成装置に、予め準備されたプラントモデル・ユニットライブラリを用い、建設対象となるプラントに適合したプラントモデルを自動生成させる機能を持たせることにより初期プラントモデルを作成することにより初期プラントモデル構築時の作業負担を大幅に軽減することができ、かつ、プラントの立ち上げから安定運転期に移行した後もプラントから収集される運転データを用いて調整を行ない、作成したプラントモデルの原型を使用した運転支援ツールが使えるようなプラントモデルに修正とチューニングを施すことにより、プラントモデルを常に実プラントの状態に追従させることができるプラントの運転支援が可能になる。このことにより、異常診断や未来予測を正確に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、プラント建設時、予め準備されたプラントモデル・ユニットライブラリの中から必要なモデルを抽出してプラントモデルの原型を自動生成させる仕組みを構築することで初期プラントモデル構築時の作業負担を軽減し、また、プラントの立ち上げから安定運転期に移行する迄、プラントから収集される運転データを用いて調整を行ない、作成したプラントモデルを使用した運転支援ツールが使えるようなプラントモデルに修正してプラントの運転転支援が可能な、プラントモデル生成装置およびプラント運転支援システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係るプラント運転支援システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るプラントモデル生成装置のプラント稼働前の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態に係るプラントモデル生成装置のプラント稼働後の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための実施の形態(以下、単に本実施形態という)について詳細に説明する。
【0016】
(実施形態の構成)
図1に示すプラント運転支援システム1は、プラント20に、プラントモデル生成装置10が、IP(Internet Protocol)回線等のネットワーク30経由で接続された構成からなる。ここで、プラント20には、プラントを運転管理する制御コンピュータであるプラント運転制御装置が含まれるものとし、また、プラントモデル生成装置10が実行する初期プラントモデルの構築、および更新によるチューニングは、分散制御システム(DCS;Distributed Control System)で実現されるものとする。初期プラントモデルの構築、および更新に関する処理は、図2、図3に示すフローチャートを参照することにより後述する。
【0017】
プラントモデル生成装置10は、ハードウエア的には、入出力装置11と、記憶装置12と、演算制御装置13とにより構成される。
【0018】
入出力装置11は、演算制御装置13に対し、プラント20を構成する各プラント機器の機器接続情報(P&ID)、機器リスト、機器情報(TAG)リストを入力する他に、演算制御装置13によって処理された結果を表示する、例えば、キーボートディスプレイで構成される。記憶装置12は、例えば、ハードディスク等の大容量記憶装置で構成され、ここには、演算制御装置13が実行するプログラムがプログラム記憶領域に割り当てられて格納される他に、プロセスモデル・ユニットライブラリが予め登録されており、更に、作業記憶領域には、モデル更新記録が割り当てられ格納される。
【0019】
なお、本実施形態に係るプラントモデル生成装置10において、初期プラントモデルを構築するにあたり予め用意されるプロセスモデル・ユニットライブラリは、株式会社オメガシミュレーションから提供されているダイナミックシミュレータ「Visual Modeler V2」をベースとして提供される標準ユニットモデルである。ここでは、バルブ、ポンプ、配管系機器、混合・分流、系外との出入り、タンク、熱交換機、蒸留塔、圧縮機/送風機、タービン、炉、反応器等のプラント機器の少なくとも1以上がモデルとして含まれている。
【0020】
演算制御装置13は、機能的には、初期モデル構築部131と、モデル更新部132と、モデル判定部133とを含み構成される。ここで、初期モデル構築部131、モデル更新部132、モデル判定部133として示されるブロックは、運算制御装置13が記憶装置12のプログラム領域に記憶されたプログラムを逐次読み出し実行することにより後述する機能が実現される機能ブロックである。
【0021】
初期モデル構築部131は、入出力装置11を介して入力されるP&IDにしたがい、記憶装置12に格納されたプラントモデル・ユニットライブラリの中から必要なプラントモデルユニットを抽出し、抽出されたプラントモデルユニットの間を結線し、続いて入力される機器リストやTAGリストを、抽出されたプラントモデルユニットのモデルパラメータに反映させて初期プラントモデル(プラントモデルの原型)を生成する機能を実行する。
【0022】
モデル更新部132は、プラント20の稼働を契機に、プラント20から取得される運転データを初期プラントモデルに入力してモデル出力値を計算し、計算されたモデル出力値と運転データとを比較してその乖離度を判定し、判定された乖離度に基づき初期プラントモデルのモデルパラメータを調整すると共に、調整されたモデルパラメータを用いてシミュレーションを行い、モデル出力値が予め設定された乖離度の許容範囲に入るまでモデルパラメータの調整、およびシミュレーションを繰り返し実行する機能を有する。
【0023】
モデル判定部133は、モデル更新部132で判定された乖離度と、プラントモデルユニットにおけるモデルパラメータの更新記録を記憶装置12(モデル更新記録)に格納し、その更新記録を分析して乖離度の変動幅、モデルパラメータの更新回数のうち少なくとも一つから初期プラントモデルが収束したことを検出し、入出力装置11に報知する機能を有する。
【0024】
なお、図1では図示省略されているが、ネットワーク30とプラントモデル生成装置10との間には、ネットワーク30とのインタフェースを司る通信装置が必要であり、ここでは、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)にしたがうプロトコルによってより、プラント20から運転データを取得するものとする。
【0025】
(実施形態の動作)
以下、図2、図3に示すフローチャートを参照しながら、図1に示すプラントモデル生成装置10の動作について詳細に説明する。
【0026】
まず、図2のフローチャートを参照してプラントモデル生成装置10によるプラント稼働前の初期プラントモデル生成処理から説明する。演算制御装置13は、初期モデル構築部131が、入出力装置11からP&IDの入力を検知すると(ステップS101“YES”)、その入力情報を取り込み(ステップS102)、記憶装置12に記憶されたプロセスモデル・ユニットライブラリを参照する(ステップS103)。そして、その中から対応するプロセスモデルユニットを選択して選択されたプロセスユニットモデル間を結線する処理を実行する(ステップS104)。
【0027】
次に、初期モデル構築部131は、続いて入出力装置11を介して入力される機器リストおよびTAGリストを取り込み(ステップS105“YES”、S106)、これらリストで示されるサイズ、材質、性能係数などの機器情報を、選択されたプロセスモデルユニットにおけるモデルパラメータに反映させることにより、プラントモデルの原型である初期プラントモデルを構築し(ステップS107)、記憶装置12の作業領域に保存する(ステップS108)。
【0028】
次に、図3のフローチャートを参照してプラント稼働後の初期プラントモデルのチューニング処理について説明する。演算制御装置13は、モデル更新部132が、プラント20の稼動に伴い(ステップS201”YES”)シミュレーションの実行を開始する(ステップS202)。このため、プラント20からネットワーク30経由で通信により運転データを取得し(ステップS203)、先に構築して記憶装置12に保存してある初期プラントモデルの入力として与え、モデル出力値を計算する(ステップS204)。
【0029】
ステップS202のシミュレーションにあたり、本実施形態に係るプラントモデル生成装置10では、プラントが非安定な状態にあっても最小二乗法によりモデルを運転データに合わせ込む動的補償付きデータ・リコンシエーション(DDR)技術を加えたトラッキング・シミュレータによるシミュレーションを実行するものとする。このDDR技術については、横河技報VOL.52,No.1(2008年)のpp35−pp37「トラッキング・シミュレータによるプラントの運転革新」に詳細に開示されている。
【0030】
次に、モデル更新部132は、モデル出力値と運転データとを比較して乖離度を判定し(ステップS205)、この乖離度に基づき選択されたプロセスユニットモデルにおけるモデルパラメータを調整して、モデル更新記録として記憶装置12に格納する(ステップS206)。続いてモデル更新部132は、判定された乖離度と、あらかじめ乖離度の上下限値からなる変動幅が定義されている許容範囲とを比較する(ステップS207)。こで、乖離度が許容範囲に含まれない場合は、統計的手法によりプラントモデルを一部置換し(ステップS208)、記憶装置12への格納処理を実行し(ステップS209)、ステップS202の処理に戻ってシミュレーションの実行を再開する。
【0031】
すなわち、モデル更新部133は、調整されたモデルパラメータを用いて初期プラントモデルでシミュレーションを行い、モデル出力値が予め設定された乖離度の変動幅に入るまでパラメータの調整、およびシミュレーションを繰り返し実行する(ステップS207“YES”)。例えば、モデルが反応器であれば、反応器出口温度等を計算し、この計算値と取得した運転データで示される実測値とを比較し、乖離度が大きい場合には反応器モデル内における伝熱係数パラメータを修正して乖離幅が最も小さくなるように調整する。
【0032】
このとき、モデル判定部133は、モデル更新部132で判定された乖離度と、プロセスモデルユニットにおけるモデルパラメータの更新記録を、都度、記憶装置12に保存しており、この記録を分析することで、乖離度の変動幅、モデルパラメータの更新回数のうちの少なくとも一つから初期プラントモデルが収束(確定)したことを検出する。ここで、収束した判定されると(ステップS207“YES”)、その旨を入出力装置12に報知する(ステップS210)。
【0033】
すなわち、モデル判定部133は、プラント200が安定運転状態に入り、モデル調整のためのパラメータ更新も収束すると、入出力装置11に対してモデルが確定したことを示す信号を送出する。DCSベンダーはそのサインを契機に成長したプラントモデルを取り出し、このプラントモデルをベースにオンラインシミュレータで利用するモデルを構築する。すなわち、乖離度の大きな部分は標準ユニットモデルでは対応できないと判断して最適なモデルを再構築することができる。
【0034】
(実施形態の効果)
以上説明のように本実施形態に係るプラントモデル生成装置10によれば、あらかじめ準備されたプラントモデル・ユニットライブラリを活用して初期プラントモデルを作成するこができ、したがって、DCSベンダーは、一から初期プラントモデルを構築する場合に比べて作業負担が大幅に軽減される。また、モデル更新記録を分析して乖離度の変動幅、モデルパラメータの更新回数のうち少なくとも一つから初期プラントモデルが収束したことを検出して外部に報知することで、プラントの運転が安定状態に移行したことを確認でき、また、プラントの立ち上げから安定運転期に移行した後もプラントから収集される運転データを用いてチューニングを行なうことで、プラントモデルを常に実プラントの状態に追従させることができる。
【0035】
つまり、プラントモデル生成装置10が、オンラインシミュレータにより、プラントの操業支援(最適運転、回避操作、予測運転等)を実現するプラントモデルの原形を自動生成してチューニングすることで、初期モデル構築の手間が省くことができる。すなわち、稼働時の実運用状態でのプラントモデルの不具合箇所が判明しているため、モデル構築での注力箇所がわかり、このため、プラントモデルの原型を利用することにより、プラント建設企業に対してDCSベンダーが提供する操業支援ツールの効果を示すことができる。
【0036】
なお、本実施形態に係るプラントモデル生成装置10によれば、入出力装置11にモデル確定の通知を行いオペレータに報知する構成としたが、単なるDCS画面への表示にとどまらず、直接、通信等によりDCSベンダーに通知してもよい。また、本実施形態に係るプラントモデル生成装置10では、この機能をDCSに実装するものとして説明したが、DCSと通信可能なコンピュータ上にこの機能を実装してもよい。
【0037】
また、本実施形態に係るプラント運転支援システム1によれば、プラントモデル生成装置10に、予め準備されたプラントモデル・ユニットライブラリを用い、建設対象となるプラントに適合したプラントモデルを自動生成させる機能を持たせることで初期プラントモデルを作成することにより初期プラントモデル構築時の作業負担を大幅に軽減することができ、かつ、プラントの立ち上げから安定運転期に移行した後もプラントから収集される運転データを用いて調整を行ない、作成したプラントモデルの原型を使用した運転支援ツールが使えるようなプラントモデルに修正を施すことにより、プラントモデルを常に実プラントの状態に追従させることができるプラントの運転支援が可能になる。このことにより、異常診断や未来予測を正確に行うことができる。また、プラントモデルとして、物理、化学則に基づいた厳密モデルを示したが、入力と出力の関係から構築する統計モデルを用いてもよい。
【0038】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0039】
1・・・プラント運転支援システム、10・・・プラントモデル生成装置、11・・・入出力装置、12・・・記憶装置、13・・・演算制御装置、20・・・プラント、30・・・ネットワーク、131・・・初期モデル構築部、132・・・モデル更新部、133・・・モデル判定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラント構成機器をモデル化したプラントモデルを作成する、少なくとも、入出力装置と、記憶装置と、演算制御装置とを備えたプラントモデル生成装置であって、
前記演算制御装置は、
前記入出力装置を介して入力されるプラント機器の機器接続情報にしたがい、前記記憶装置に格納されたプラントモデル・ユニットライブラリの中から必要なプラントモデルユニットを抽出し、前記抽出されたプラントモデルユニットの間を結線し、続いて入力される前記プラント機器の機器情報を、前記抽出されたプラントモデルユニットのモデルパラメータに反映させて初期プラントモデルを生成する初期モデル構築部と、
前記プラントの稼働を契機に、前記プラントから取得される運転データを前記初期プラントモデルに入力してモデル出力値を計算し、前記計算されたモデル出力値と前記運転データとを比較してその乖離度を判定し、前記判定された乖離度に基づき前記初期プラントモデルのモデルパラメータを調整すると共に、前記調整されたモデルパラメータを用いてシミュレーションを行い、前記モデル出力値が予め設定された乖離度の許容範囲に入るまで前記モデルパラメータの調整、および前記シミュレーションを繰り返し実行するモデル更新部と、
を有することを特徴とするプラントモデル生成装置。
【請求項2】
前記演算制御装置は、
前記判定された乖離度と、前記プラントモデルユニットにおけるモデルパラメータの更新記録を前記記憶装置に格納し、前記更新記録を分析して前記乖離度の変動幅、前記モデルパラメータの更新回数のうち少なくとも一つから前記初期プラントモデルが収束したことを検出し、前記入出力装置に報知するモデル判定機能を更に有することを特徴とする請求項1記載のプラントデル生成装置。
【請求項3】
プラントの運転を制御するプラント運転制御装置と、前記プラント運転制御装置とはネッワーク経由で接続されるプラントモデル生成装置とからなり、前記プラントモデル生成装置により作成されるプラントモデルを用いて前記プラントの運転支援補行うプラント運転支援システムであって、
前記プラントモデル生成装置は、
入力されるプラント機器の機器接続情報にしたがい、予め準備されたプラントモデル・ユニットライブラリの中から必要なプラントモデルユニットを抽出し、前記抽出されたプラントモデルユニットの間を結線し、続いて入力される前記プラント機器の機器情報を、前記抽出されたプラントモデルユニットのモデルパラメータに反映させて初期プラントモデルを生成する初期モデル構築機能と、
前記プラントの稼働を契機に、前記プラントから取得される運転データを前記初期プラントモデルに入力してモデル出力値を計算し、前記計算されたモデル出力値と前記運転データとを比較してその乖離度を判定し、前記判定された乖離度に基づき前記初期プラントモデルのモデルパラメータを調整すると共に、前記調整されたモデルパラメータを用いてシミュレーションを行い、前記モデル出力値が予め設定された乖離度の許容範囲に入るまで前記モデルパラメータの調整、および前記シミュレーションを繰り返し実行するモデル更新機能と、
前記判定された乖離度と、前記プラントモデルユニットにおけるモデルパラメータの更新記録を保存し、前記保存した更新記録を分析して前記乖離度の変動幅、前記モデルパラメータの更新回数のうち少なくとも一つから前記初期プラントモデルが収束したことを検出し、前記入出力装置に報知するモデル判定機能と、
を有し、
前記プラント運転制御装置は、
前記プラントモデル生成装置により作成され、前記収束したプラントモデルにしたがい前記プラントの運転を行う、
ことを特徴とするプラント運転支援システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate