説明

プラント構成部材の応力腐食割れ抑制方法

【課題】き裂の進展をさらに抑制することができるプラント構成部材の応力腐食割れ抑制方法を提供する。
【解決手段】渦電流探傷等で発見した、炉心シュラウド6に生じているき裂1と向き合うようにノズル11を配置する。酸素が窒素・酸素供給装置14から薬液タンク12内の純水13中に吹き込まれる。この酸素を含む純水13は、ポンプ15で加圧されて高圧ホース21を経て加熱器16に導かれ、553Kに加熱される。加熱された純水13は、ノズル11からき裂1の開口部に向って噴射され、炉心シュラウド6に生じているき裂1内に流入する。き裂1内に流入した純水13は、き裂1内を流動してき裂1の先端まで到達し、反転してき裂1の外に流出する。純水13の温度及び酸素の作用によって、き裂1の開口からき裂1の先端に至るき裂1の内面全体に酸化皮膜2が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラント構成部材の応力腐食割れ抑制方法に係り、特に、沸騰水型原子力プラントに適用するのに好適なプラント構成部材の応力腐食割れ抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子力プラントでは、原子炉内における核燃料物質の核反応によって発生した熱で冷却水(冷却材)を加熱し、蒸気を発生させる。この蒸気がタービンに供給されてタービンが回転される。タービンに連結された発電機も回転し、発電が行われる。沸騰水型原子力プラントでは、稼働率向上の観点から、プラント構成部材の応力腐食割れ抑制が重要な課題である。
【0003】
応力腐食割れは、材料因子、応力因子及び環境因子が重畳して生じることが知られている。そのうち環境因子は、冷却水の放射線分解によって生成する過酸化水素及び酸素によって形成される。プラント構成部材の冷却水と接触する表面から電子を奪う、(1)式及び(2)式で示されるカソード反応が生じ、過酸化水素及び酸素が水に還元される。この対反応である(3)式のアノード反応が生じる結果、プラント構成部材の金属が溶出する。
+ 4H + 4e = 2HO (1)
+ 2H + 2e = 2HO (2)
M = Mn+ + ne (3)
応力腐食割れにおいて、金属は、プラント構成部材の粒界等の溶出しやすい部位からより多く溶出する。応力腐食割れが生じているき裂内部の環境に着目すると、き裂先端近傍は、き裂の進展により新生面が露出した後に、徐々に酸化皮膜が形成される。沸騰水型原子力プラントでは、前述した酸素及び過酸化水素によりプラント構成部材の表面に酸化皮膜が形成される。それらの酸化剤は、拡散によってき裂内に進入してゆく。しかしながら、それらの酸化剤は、き裂先端に到達するまでに、き裂の内面に酸化皮膜を生成することにより消費される。このため、一定以上の深さまで進展したき裂においては、酸化剤がき裂先端まで到達しない。もし、酸化剤がき裂先端まで到達しても、き裂先端での酸化剤の濃度は、き裂の開口部近傍に比べて極めて低くなる。したがって、き裂先端近傍は、き裂開口部近傍に比べて形成される酸化皮膜が薄い状態となる。このことから、カソード反応部位はき裂開口部近傍に固定され、アノード反応部位、すなわち前述の「溶出しやすい部位」はき裂先端に固定される。このため、き裂開口部近傍では主としてカソード反応が、き裂先端では主としてアノード反応が生じ、電気的な閉回路が形成される。この閉回路における電気の流れに沿って、硫酸イオン及び塩化物イオンが、き裂内部に移動し、濃縮される。これにより、き裂内のpHは酸性になり、より腐食が生じやすい環境がき裂内に生じる。
【0004】
以上のことから、応力腐食割れを抑制する方法として、以下の4つの方法が考えられる。まず、カソード側に着目すると、(A)カソード反応部位における酸素及び過酸化水素などの酸化種の濃度を低減すること、または、(B)プラント構成部材の表面への酸素及び過酸化水素などの酸化種の到達量を減じてカソード電流を低減すること、が挙げられる。更に、アノード側に着目すれば、(C)アノード反応部位での金属の溶出を抑制してアノード電流を低減すること、または、(D)金属の溶出に代わるアノード電流を増加させること、が挙げられる。これらの方法のうち何れか1つ以上の方法を適用することによって、応力腐食割れの進展を抑制することができる。
【0005】
(A)の方法である、カソード反応部位における酸素及び過酸化水素などの酸化種の濃度を低減する応力腐食割れ抑制方法としては、水素を給水に注入して原子炉内に導き、この水素を、原子炉内の冷却水に含まれている過酸化水素及び酸素と反応させて過酸化水素及び酸素を水に還元する技術が知られている。この技術は、一般的に水素注入と呼ばれており、多数の沸騰水型原子力プラントで採用されている。しかしながら、過剰に水素を注入した場合には、主蒸気系(例えば、主蒸気配管)の表面線量率が上昇する事象が発生する。このため、注入される水素の量は、主蒸気系の表面線量率が上昇しない程度に抑えられている。この場合、応力腐食割れの発生及び進展の抑制が不十分となる部位が生じる可能性がある。
【0006】
水素注入効果を向上させる技術として、貴金属注入がある(特許第3002129号公報)。貴金属注入は、給水に注入した貴金属の粒子をプラント構成部材の表面に付着させることによってプラント構成部材の応力腐食割れを抑制する技術である。具体的には、原子炉の停止中に貴金属を含有する水溶液を原子炉内に循環させ、貴金属を含有する水溶液が接触したプラント構成部材の表面に貴金属を付着させる。(4)式で示される水素の酸化反応が、プラント構成部材に付着された貴金属の作用により、プラント構成部材の表面において促進される。この結果、アノード電流が増大される。プラント構成部材の金属の溶出により生じるアノード電流に代わり、水素の酸化反応によるアノード電流が増加する。このため、(D)の方法によって、金属の溶出に代わるアノード電流を増加させ、応力腐食割れが抑制される。
= 2H + 2e (4)
また、光触媒を使用した応力腐食割れ抑制技術が、特開2001−4789号公報に記載されている。この技術は、原子炉停止中に原子炉に注入された光触媒(例えばチタン酸化物)を原子炉内に注入し、プラント構成部材の表面に光触媒の皮膜を形成させる。この皮膜を形成した光触媒に、原子炉内の炉心で発生するチェレンコフ光が照射される。チェレンコフ光の照射によって光触媒で励起された電子がアノード電流となるため、金属の溶出に代わるアノード電流を増加させる(D)の方法で応力腐食割れが抑制される。
【0007】
以上述べた従来技術は、応力腐食割れを抑制するための表面処理技術である。一方、表面処理技術の適用によってプラント構成部材の全面腐食を抑制し、表面の酸化皮膜内への放射能取り込みを抑制して被ばく低減を図ることが特開平9−157828号公報に記載されている。これは、沸騰水型原子炉の停止中に、高温の水、または水蒸気を含む空気を、系統の炭素鋼製配管内に供給して炭素鋼製配管の内面に所定時間接触させることによって、その内面に鉄酸化物の皮膜を形成させる技術である。
【0008】
配管近傍の線量率は、原子炉の運転中に配管内面に生成される酸化皮膜内に取り込まれる放射能量に依存する。酸化皮膜の生成速度は腐食速度に依存するが、腐食速度は数百時間の経過の後には飽和傾向を示すことが知られている。これは、原子炉の運転中に表面に形成した酸化皮膜厚さの増加が飽和傾向を示すことに対応する。したがって、原子炉の運転開始前に炭素鋼製配管の内面に予め酸化皮膜を付与しておくことで、アノード反応部位での金属の溶出を抑制してアノード電流が低減され、腐食速度が小さくなるため、放射能取り込みが少なくなる(上記の(C)参照)。このため、炭素鋼製配管の線量率を低減できる。
【0009】
【特許文献1】特許第3002129号公報
【特許文献2】特開2001−4789号公報
【特許文献3】特開平9−157828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記した各公知例に記載された従来技術は、施工対象である炉内機器の一部または全部を冷却水に浸漬してその表面に表面処理成分(貴金属及び光触媒等)を付着させて皮膜を形成する技術である。炉内機器を冷却水中に浸漬させることにより炉内機器の冷却水と接触する表面に皮膜を形成する。炉内機器の表面に皮膜を形成するため、き裂が存在しない、炉内機器の表面では、高温水または水蒸気、あるいは貴金属及び光触媒(例えば、酸化チタン)など表面処理成分が均等に行き渡る。しかしながら、炉内機器の表面にき裂が存在する場合には、このき裂内への表面処理成分の進入は冷却水中の拡散に依るところが大きい。この場合、炉内機器の表面に接触する冷却水に含まれている表面処理成分がき裂内へ拡散してゆく過程で、き裂の内面に表面処理成分の皮膜が形成された場合には、き裂内の冷却水に含まれる表面処理成分の濃度が減少する。このため、き裂先端ではき裂内面に存在する冷却水内の表面処理成分の濃度が必要な濃度に到達しない可能性がある。したがって、き裂の先端においては目的としている表面処理がなされない可能性がある。
【0011】
本発明の目的は、き裂の進展をさらに抑制することができるプラント構成部材の応力腐食割れ抑制方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、原子力プラントのプラント構成部材に生じているき裂に対向させて噴射装置を配置し、その噴射装置からき裂に向って酸化剤を含む加熱された流体を噴射させ、このき裂内に流入した流体に含まれる酸化剤によってき裂の内面に酸化皮膜を形成することにある。
【0013】
本発明によれば、き裂に向って酸化剤を含む流体を噴射するので、酸化剤を含む加熱された流体がき裂内に流入し、き裂の開口からき裂の先端までのき裂の内面全体に酸化皮膜を形成することができる。これにより、プラント構成部材に生じているき裂内面への酸素及び過酸化水素などの酸化種の到達量を低減させてカソード電流を低減することができ、またはき裂のアノード反応部位でのプラント構成部材の溶出を抑制してアノード電流を低減することができるので、き裂進展速度を抑制することができる。したがって、プラント構成部材の応力腐食割れを抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、原子力プラントのプラント構成部材に生じるき裂の進展をさらに抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
発明者らは、沸騰水型原子力プラントのオーステナイトステンレス鋼製のプラント構成部材の応力腐食割れについて検討を行った。発明者らは、応力腐食割れが生じているプラント構成部材のき裂の内部環境の検討に基づいて以下に述べる事項を新たに見出した。発明者らが把握したこの新たな事項は、き裂内外での酸化皮膜の厚さの違いによって応力腐食割れによるき裂が進展するため、き裂外と同等の酸化皮膜をき裂内に予め付与することで、応力腐食割れの進展を抑制できる可能性があることである。そこで、発明者らは、き裂外と同等の酸化皮膜をき裂内に予め付与することによって得られる効果を確認するための実験を行なった。
【0016】
前述したように、水溶液中におけるプラント構成部材の腐食反応は、プラント構成部材を構成する金属と水溶液に含まれる成分との間で行われる電荷の授受で説明される。電荷の授受の駆動力は電位であり、この結果、電荷の授受が行われる電気化学反応量は電流として測定可能である。したがって、金属が任意の電位に置かれた場合における電荷の授受の量を評価することによって、金属の腐食速度の高低を判断できる。金属に、所定の電位を与え、その時々の電荷の授受の量を電流として測定した線図を分極曲線と呼ぶ。応力腐食割れを対象とした場合は、き裂内の水質を模擬した環境下で、金属の電位を変化させながら、その時々の電流を測ることで、き裂先端における金属の溶出しやすさを評価できる。
【0017】
そこで、発明者らは、定格運転中の沸騰水型原子炉内のき裂内を模擬した環境で、き裂先端における金属と水との電荷授受のしやすさが、酸化皮膜の有無によってどのように影響を受けるかを、分極曲線の測定により検討した。ここで、き裂内の水質について述べる。前述したように、原子炉内の冷却水(冷却材)にはイオン交換樹脂から溶出した硫酸イオンが1ppb以下の濃度で存在する。この硫酸イオンは、き裂先端近傍においてその数百から数千倍に濃縮されることが知られている。このため、アノード分極曲線は、き裂先端の水質を模擬するために、硫酸を1ppm添加して測定した。カソード分極曲線は、硫酸が濃縮されていないき裂外、及びき裂の開口部近傍でのみ生じるものと考え、硫酸を添加しない純水中で測定した。酸化皮膜の有無による差異を調べるために、280℃、8MPa、酸素濃度300ppb、500時間の条件で酸化皮膜を予め付与したSUS304ステンレス鋼と、酸化皮膜を前もって付与していないSUS304ステンレス鋼の二種に対し、定格運転中の沸騰水型原子炉内を模擬した条件において分極曲線をそれぞれ測定した。これら二種類のSUS304ステンレス鋼のそれぞれの分極曲線を比較した。分極曲線により、金属が所定の電位に置かれたときの金属の溶出速度を電流として測定できるので、金属表面におけるアノード反応の電荷の授受が阻害されること((C)アノード反応部位での金属の溶出を抑制してアノード電流を低減する作用)の確認を、酸化皮膜の形成によって行った。
【0018】
実験条件は、導電率0.056μS・cm−1の純水を、沸騰を防ぐ目的で8MPaに加圧して温度を280℃に制御し、試験片を装荷した高温槽内に導いた。硫酸は、高温槽の上流側から添加し、高温槽内で1ppmの濃度となる流量比で連続的に注入した。試験片として、市販のφ0.5mmのSUS304ステンレス鋼線を使用し、予め酸化皮膜を表面に形成したSUS304ステンレス鋼線(予備酸化試験片)及び酸化皮膜を前もって表面に形成していない研磨した状態のSUS304ステンレス鋼線(非予備酸化試験片)を準備した。予備酸化試験片は、280℃、8MPa、酸素濃度300ppbの純水中で500hr保持し、SUS304ステンレス鋼線の表面に酸化皮膜を形成した。それぞれの試験片に対する分極曲線の測定は、ポテンショスタットを用いて各試験片に電位を印加し、その時々の電流を測定した。
【0019】
上記の実験における電流の測定結果を図3に示す。図3は電位と電流密度の関係を示している。予備酸化試験片では、予備酸化によって形成された酸化皮膜の影響により、沸騰水型原子炉の原子炉圧力容器内でステンレス鋼が指示し得る電位域(−0.5から+0.2Vvs.SHE)全域において、電流密度が減少した。予備酸化試験片では、非予備酸化試験片に比べて電流密度が約1/3に低下した。−0.4Vvs.SHE以下の電位においては、予備酸化試験片のアノード電流密度は観察されなかった。予備酸化試験片における電流密度の低下は、その試験片の腐食速度が減少したことを示している。すなわち、硫酸がき裂先端において濃度1ppmに濃縮される条件であっても、予備酸化処理により予め形成された酸化皮膜が、試験片の母材である金属の溶出を抑制している。
【0020】
発明者らは、更に、予備酸化で形成した酸化皮膜が、カソード分極曲線の酸素濃度依存性にどのような影響を及ぼすかについて調べるための実験を行った。この実験は、圧力8MPaの高温槽内に充填した、温度280℃及び導電率0.056μS・cm−1の硫酸を添加していない純水内に、予備酸化試験片及び非予備酸化試験片を浸漬させて行った。これらの試験片に流れる電流を測定し、各々の電流を比較した。この実験の結果、酸化皮膜形成によって、金属表面におけるカソード反応の電荷の授受が阻害される((B)材料表面への酸素及び過酸化水素などの酸化種の到達量を減じてカソード電流を低減する)ことを確認することができた。図4は、カソード分極曲線に対する酸化皮膜の有無による差異の一例を、酸素濃度300ppbにおける測定結果により示す。この結果から、予め酸化皮膜を形成した予備酸化試験片が、全電位域で非予備酸化試験片よりも電流密度が減少することが明らかになった。カソード分極曲線における電流密度は、任意の電位になっている金属の表面における、酸素などの酸化種の還元反応量を表している。したがって、酸化皮膜の形成による電流密度の減少は、酸素の還元反応量が酸化皮膜によって阻害されたことを意味する。これは、プラント構成部材の表面で酸化皮膜の形成により、その構成部材において腐食の駆動力が減少されることを表している。
【0021】
発明者らは、前述した実験結果に基づいて、予備酸化処理によりプラント構成部材の冷却水に接触する表面に予め酸化皮膜を形成することによって、プラント構成部材の腐食の駆動力が減じられること、及びき裂先端において硫酸が1ppmに濃縮された場合であっても、単位時間あたりのき裂先端からの金属の溶出量、すなわち腐食速度が減じられることを見出した。この事実から、定期検査でプラント構成部材に応力腐食割れが生じていることを検出してから原子炉を起動するまでの期間内で任意の時点で、検出されたき裂内に所定厚さの酸化皮膜を形成すればよいことが分かった。この酸化皮膜の形成によって、プラント構成部材の腐食速度を抑制することができ、結果として、プラント構成部材における応力腐食割れの進展を抑制できるのである。
【0022】
以上の実験結果を基に発明者らが新たに考えたプラント構成部材の応力腐食割れ抑制方法の概要を以下に述べる。
【0023】
応力腐食割れによるき裂が存在する、沸騰水型原子炉のプラント構成部材に対して、き裂内にこのき裂が検出された時点から次に沸騰水型原子炉を起動するまでの期間において、固液界面での電荷移動を阻害する性質を有する皮膜(例えば、酸化皮膜)を、き裂の内面に形成する。この結果、プラント構成部材に存在するき裂の進展速度を低減でき、プラント構成部材を健全な状態に維持して沸騰水型原子炉を運転することができる。
【0024】
き裂の内面における酸化皮膜は、プラント構成部材を構成する化学成分のうち、少なくとも1種の化学成分を含む酸化物によってき裂の内面全体に形成するとよい。これによって、沸騰水型原子炉の運転中に、き裂外において、プラント構成部材の冷却材と接触する表面に形成される酸化皮膜と同等の電気化学的性質を有する酸化皮膜を、き裂内に形成することができる。このため、き裂先端がプラント構成部材の母材である金属の溶出しやすい部位として固定されることを回避することができ、そのき裂の進展速度を抑制できる。
【0025】
き裂の内面への酸化皮膜の形成は、酸化剤を含む473Kから873Kの高温流体を、8MPa以下の圧力でき裂内に注入することによって行うと良い。この高温流体をき裂内に注入することによって、き裂内の雰囲気が高温及び高酸化雰囲気に調整される。き裂内の高温及び高酸化雰囲気は、所定の期間、保持される。き裂内に注入される、酸化剤を含む高温流体の温度を、473Kから873Kの範囲にした理由は以下の通りである。酸化皮膜は化学反応で生成され、温度の上昇と共に酸化皮膜を形成する反応速度が上昇する。しかしながら、プラント構成部材の対象材料によっては873Kを上回ると熱鋭敏化する恐れがあるので、これを回避するために注入する高温流体の温度を873K以下にする。また、高温流体の温度を473K未満にした場合には、プラント構成部材の腐食速度が遅くなり、き裂内面への酸化皮膜形成に時間を要することになる。き裂内面への酸化皮膜形成をより短時間で行うためには、高温流体の温度を473K以上にするとよい。
【0026】
注入する高温流体の圧力を8MPa以下にした理由を以下に述べる。プラント構成部材に存在するき裂内で高温流体を流動させるためには、その高温流体はより高圧であることが好ましい。しかしながら、注入される高温流体の圧力が原子炉運転中においてプラント構成部材にかかる圧力を上回った場合には、高温流体をき裂に向って噴射してき裂内面に酸化皮膜を形成している間にそのき裂が進展する恐れがある。これを回避するためには、注入する高温流体の圧力を8MPa以下にする必要がある。
【0027】
高温流体に入れる酸化剤として酸素、過酸化水素及びオゾンの少なくとも1つを使用する。これらの物質は、何れも酸素及び水素以外の元素を含まない化学物質である。酸素、過酸化水素及びオゾンは、き裂内面に酸化皮膜を形成した後に原子炉内に残留した場合であっても、酸化皮膜形成部位以外での腐食挙動及び放射化挙動に対して悪影響を与えることがない。したがって、酸化皮膜形成時の所定期間の間、き裂内に注入した高温流体の酸化力を保持でき、所定厚みの酸化皮膜をき裂の内面に形成できる。
【0028】
き裂内に注入する流体として、水、水蒸気、空気、窒素ガス及びアルゴンガスのうち、何れか1種以上を含む流体を使用する。水、水蒸気、空気及び窒素ガスは、定期検査中に常に原子炉内の冷却水に溶存している成分である。これらの物質は、き裂内面への酸化皮膜形成後に原子炉内に残留した場合であっても、酸化皮膜形成部位以外での腐食挙動及び放射化挙動に対して悪影響を与えることがない。また、アルゴンガスは不活性ガスであって、き裂内面への酸化皮膜形成時には他の部位と化学反応を生じることがない。このため、アルゴンガスは原子炉上部から大気中に放出することができる。アルゴンガスも、酸化皮膜形成部位以外での腐食挙動及び放射化挙動に対して悪影響を与えることがない。
【0029】
高温流体のき裂内への注入には表面処理装置を用いる。この表面処理装置は、注入される高温流体に所定の温度、圧力、及び供給速度を付与する。この表面処理装置を用いることによって、き裂内部に代表される狭隘部内で高温流体を流動させることができ、狭隘部内への酸化皮膜の形成が可能になった。
【0030】
図5は、発明者らが考えた新たなプラント構成部材の応力腐食割れ抑制方法を実施する前後におけるき裂の縦断面を模式的に示している。この新たな応力腐食割れ進展抑制方法を実施する前では、図5(A)に示すように、酸化皮膜2は、プラント構成部材の冷却水と接触する表面、及びき裂1の開口部付近の内面に形成されている。き裂1の先端付近に形成される酸化皮膜2の厚みは極めて薄くなっている。これに対し、上記の新たな応力腐食割れ進展抑制方法を実施した後では、き裂1の内面全体にき裂1の外部に形成される酸化皮膜2と同じ厚みの酸化皮膜2がき裂1の内面全体に亘って形成される(図5(B)参照)。き裂1の先端付近にも同じ厚みの酸化皮膜2が形成される。
【0031】
前述の検討結果に基づいて成された本発明の実施例を、以下に説明する。
【実施例1】
【0032】
本発明の好適な一実施例である、沸騰水型原子炉に適用したプラント構成部材の応力腐食割れ抑制方法を、図1及び図2を用いて説明する。図1は図2のI部の拡大図である。
【0033】
本実施例のプラント構成部材の応力腐食割れ抑制方法に用いられる表面処理装置10は、ノズル11、薬液タンク12、酸素・窒素供給装置14、ポンプ15、加熱器16及びノズル移動装置26を備えている。ノズル移動装置26は、旋回装置27、水平方向移動装置29及び上下方向移動装置30を備える。旋回装置27は、原子炉ウエル7の上端を取り囲むように運転床31上に設置された環状のレール(図示せず)上に旋回可能に設置されている。旋回装置27は原子炉ウエル7を跨いでいるレール保持部材28を有する。水平方向移動装置29は、レール保持部材28に設けられた直線状のレール(図示せず)の上に設置され、原子炉ウエル7の上方を移動する。上下方向移動装置30は、水平方向移動装置29に取り付けられ、原子炉圧力容器5の軸方向に移動する。固定治具23が上下方向移動装置30の下端部に設けられる。
【0034】
ノズル11及び加熱器16が固定治具(固定部材)23に取り付けられる。薬液タンク12及びポンプ15は運転床31の上に置かれる。酸素・窒素供給装置14が、純水13が充填された薬液タンク12に接続される。酸素濃度センサ17が、薬液タンク12に取り付けられ、表記装置18に接続される。ポンプ15は、薬液タンク12の底部に取り付けられた配管20に接続される。さらに、ポンプ15は、圧力計19が取り付けられた可撓性の高圧ホース21によって加熱器16に接続される。ノズル11と加熱器16は配管22によって接続される。上下方向移動装置30の、原子炉圧力容器5の軸方向における移動量、すなわち、ノズル11のその軸方向における位置を検出するノズル位置検出器25が、水平方向移動装置29に設置される。ノズル位置検出器25は、運転床31上に置かれた制御装置24に接続される。
【0035】
沸騰水型原子炉の運転が停止された後、沸騰水型原子炉の定期検査が実施される。この定期検査を行う前に、沸騰水型原子炉の原子炉圧力容器5の上方に位置する原子炉ウエル7内に冷却水32が充填される。その後、原子炉圧力容器5の蓋(図示せず)が取り外される。原子炉圧力容器5内に設置されている蒸気乾燥器(図示せず)及び気水分離器(図示せず)が、取り外されて原子炉圧力容器5の外に取り出される。炉心シュラウド6が、原子炉圧力容器5内で炉心を取り囲んでいる。炉心内に装荷されている全燃料集合体が、原子炉圧力容器5の外に順次取り出され、燃料貯蔵プール(図示せず)に保管される。
【0036】
炉心シュラウド6内に渦電流探傷装置(または超音波探傷装置)を搬入し、炉心シュラウド6の内面に沿って渦電流探傷装置(または超音波探傷装置)を走査する。渦電流探傷装置(または超音波探傷装置)は、原子炉圧力容器5の軸方向及び周方向に走査され、炉心シュラウド6に対する渦電流探傷(または超音波探傷)が実施される。本実施例は、この探傷により炉心シュラウド6にき裂1が検出された場合、この検出されたき裂1の内面に酸化皮膜を形成する。
【0037】
定期検査の期間中に、本実施例のプラント構成部材の応力腐食割れ抑制方法が表面処理装置10を用いて以下のように実施される。
【0038】
検出されたき裂1の位置に対向するように、冷却水32内でノズル11を移動させる。ノズル11の移動は、ノズル移動装置26を用いて原子炉圧力容器5の軸方向及び周方向に対して行われる。ノズル11は、炉心シュラウド5内で、上下方向移動装置30の移動によって原子炉圧力容器5の軸方向に移動され、旋回装置27の旋回によって原子炉圧力容器5の周方向に移動される。さらに、水平方向移動装置29の移動によって、ノズル11は、炉心シュラウド6の内面近くまで移動される。このようなノズル11の移動によって、固定治具23に設けられているノズル11は、炉心シュラウド6の内側から、炉心シュラウド6に形成されているき裂1に対向させられる。
【0039】
酸素及び窒素が、窒素・酸素供給装置14によって薬液タンク12内の純水13に吹き込まれ、純水13に溶解する。酸素濃度センサ17が、薬液タンク12内の純水13の酸素濃度を計測し、表示装置18に計測した酸素濃度を出力する。表示装置18は、酸素濃度計測値を表示する。オペレータは、表示装置18に表示された純水13の酸素濃度を監視しながら窒素・酸素供給装置14を調節して窒素・酸素供給装置14から純水13への酸素及び窒素の吹き込み量を制御する。これにより、薬液タンク12内の純水4の酸素濃度が8ppmに予め調節される。
【0040】
沸騰水型原子炉の運転中において、炉心シュラウドの表面には酸化皮膜2が形成される。き裂1内でも、き裂開口部付近でもき裂1の内面に酸化皮膜2が形成される。しかしながら、き裂1の先端付近では酸化皮膜2が極めて薄い状態にある(図5(A)参照)。
【0041】
ポンプ15が駆動され、薬液タンク12内の窒素及び所定濃度の酸素を含む純水(薬液)13が配管20を通してポンプ15に供給される。この純水13は、ポンプ15によって昇圧され、高圧ホース21を通って加熱器16に導かれる。加熱器16において、酸素等を含む純水13は、温度が553Kになるまで加熱される。加熱された純水13は、配管22を通ってノズル11に到達し、ノズル11から炉心シュラウド6に生じているき裂1の開口に向って噴射される。
【0042】
冷却水32内では、ノズル11の噴出口に水圧が加わる。このため、ノズル11から所定流量で純水13を噴出させるためには、ノズル11が位置する原子炉圧力容器5の軸方向における位置(水深)に基づいて、ノズル11から噴出する純水13の圧力を調節する必要がある。この純水13の圧力制御は、制御装置24によってポンプ15の回転数を制御することによって行われる。ノズル11の原子炉圧力容器5の軸方向における位置は、ノズル位置検出器25によって検出される。検出されたノズル11の原子炉圧力容器5の軸方向の位置は、ノズル位置検出器25から制御装置24に伝えられる。制御装置24は、入力したノズル位置に基づいて、原子炉ウエル7内の冷却水32の液面からノズル11までの水深を求め、この水深に基づいてそのノズル位置での水圧を求める。制御装置24は、得られた圧力に基づいてポンプ15の回転数を制御し、ノズル11から噴出される純水13の圧力がノズル位置での水圧よりも高く8MPa以下の設定圧力になるように調節する。ノズル11から純水13を噴射するためには、ノズル11に供給する純水13の圧力を、ノズル位置での水圧よりも高くする必要がある。本実施例では、ノズル11から噴出される純水13の圧力を8MPaに調節する。加圧された純水13の圧力は、圧力計19で計測される。圧力計19で計測された圧力は、表示装置18に表示される。
【0043】
加熱された純水13のノズル11からの噴射は、設定時間の間、継続して行われる。ノズル11から噴射された、553Kで酸素を含む純水13は、炉心シュラウド6に生じているき裂1内に流入する。き裂1内に流入した純水13は、き裂1内を流動してき裂1の先端まで到達する。き裂1の先端まで到達した高圧の純水13は、逆向きになってき裂1の開口部に向って流れる。このように、ノズル11から噴射された、553Kで酸素を含む純水13がき裂1内で流動するため、純水13の温度及び酸素の作用によって、き裂1の開口からき裂1の先端に至るき裂1の内面全体に酸化皮膜2が形成される(図5(B)参照)。ノズル11がき裂1の開口全体を覆っていないので、き裂1内に流入した純水13は、上記のようにき裂1内を流動してき裂1の外に流出する。
【0044】
純水13をノズル11から噴射する設定時間は、予め予備実験により決定されている。この予備実験において、温度及び酸素濃度をパラメータにしてノズルからの噴射継続時間を変えて、試験片に形成された模擬き裂に酸化剤を含む純水を噴出させ、模擬き裂の内面に形成される酸化皮膜の厚みを計測する。この形成された酸化皮膜の厚みと温度、酸素濃度及び噴射継続時間の関係に基づいて、ノズル11から純水13を噴射する設定時間を予め決定する。この設定時間は、き裂1の内面全体に亘って厚さ10μm以下の酸化皮膜2が形成されるように設定する。酸化皮膜2は、厚みが10μmを越えると割れが発生する可能性がある。このため、酸化皮膜2の厚みは10μm以下にすることが望ましい。また、酸化皮膜2の厚みは0.001μm以上にするとよい。本実施例では、き裂1の開口からき裂1の先端に至るき裂1の内面全体に亘って厚さ10μmの酸化皮膜2が形成される。
【0045】
き裂1の内面に酸化皮膜2を形成している間、加熱器16で加熱されてノズル11に供給される純水13の温度を配管22に設けた温度計測装置である熱電対(図示せず)で検出し、この検出された純水13の温度に基づいて設定温度になるように加熱器16による加熱量を制御する。
【0046】
炉心シュラウド6に形成された該当するき裂1の内面に対する酸化皮膜2の形成が終了し且つ定期検査が終了した後、沸騰水型原子炉が、起動され、その後、定格出力で運転される。
【0047】
本実施例によれば、炉心シュラウド6で発生した応力腐食割れに起因して形成されたき裂1の内面全体(き裂1の開口からき裂1の先端に至るき裂1の内面全体)に所定厚みの酸化皮膜2を形成することができる。このため、き裂1の内面全体に形成された酸化皮膜2の作用によって、き裂1の内面への酸素及び過酸化水素などの酸化種の到達量が減少してカソード電流を低減することができ、さらに、き裂1内のアノード反応部位での炉心シュラウド6の溶出を抑制してアノード電流を低減することができる。本実施例は、き裂1内でのカソード電流及びアノード電流を低減できるので、き裂1の先端からのき裂進展速度を抑制することができる。すなわち、本実施例によれば、炉心シュラウド6の応力腐食割れを抑制することができる。
【0048】
本実施例は、ノズル11からき裂1に向って噴射する純水13の温度を553Kにしているので、き裂内面への酸化皮膜形成をより短時間で行うことができ、炉心シュラウド6の熱鋭敏化を防止することができる。ノズル11から噴射する純水13の圧力を8MPaにしているので、炉心シュラウド6が沸騰水型原子炉の定格運転中に受ける圧力よりも低くすることができる。これによって、き裂進展速度をさらに抑制できる。
【0049】
本実施例は、窒素を含む純水13をノズル11からき裂1の開口に向って噴射しているので、この純水13がき裂1内を流動してき裂1外に流出しても、炉心シュラウド6のき裂1外の表面及び炉心シュラウド6以外のプラント構成部材に対する腐食挙動及び放射化挙動に対して悪影響を与えることがない。本実施例は、純水13に酸素以外に窒素を供給しているので、酸素濃度の調節を容易に行うことができる。
【0050】
本実施例は、き裂1に対向するノズル11の原子炉圧力容器5の軸方向における位置に基づいてノズル11から噴射される純水13の圧力が制御されるので、炉心シュラウド6に発生した複数のき裂までの水深に応じてノズル11に供給する純水13の圧力を調節することができる。このため、原子炉ウエル7内の冷却水32の液面からき裂1までの水深が異なった場合でも、ノズル11から必要な圧力の純水13を所定流量噴射させることができる。
【0051】
酸化剤として、モリブデン酸、クロム酸及びタングステン酸のいずれかを含む水溶液を使用しても良い。
【0052】
本実施例は、炉心シュラウド6以外のプラント構成部材、例えば、シュラウドサポートに発生しているき裂の内面に酸化皮膜2を形成する場合にも適用することができる。
【実施例2】
【0053】
本発明の他の実施例である、沸騰水型原子炉に適用したプラント構成部材の応力腐食割れ抑制方法を、図6を用いて説明する。図6は本実施例に用いられる表面処理装置10Aを示している。表面処理装置10Aは、実施例1に用いられる表面処理装置10において薬液タンク12及び酸素・窒素供給装置14の替りに空気を充填したボンベ(空気供給装置)33を設けた構成を有する。酸素濃度計17がボンベ33に取り付けられている。ボンベ33は配管20によってポンプ(または送風機)15に接続される。ノズル11は、噴射口を取り囲むように環状のノズルカバー34を設けている。
【0054】
本実施例も、実施例1と同様に、沸騰水型原子炉の定期検査期間において渦電流探傷等で発見されたき裂に対して内面に酸化皮膜を形成する。炉心シュラウド6に発生しているき裂1に対して実施する本実施例のプラント構成部材の応力腐食割れ抑制方法を、実施例1と相違している部分について説明する。
【0055】
実施例1と同様に、旋回装置27、水平方向移動装置29及び上下方向移動装置30を駆動してノズル11を、内面に酸化皮膜2を形成するき裂1の開口に対向させる。これにより、ノズル11と炉心シュラウド6の間にノズルカバー34が配置される(図7参照)。ポンプ15を駆動してボンベ33内の空気を配管20及び高圧ホース21を通して加熱器16に供給する。ポンプ15で8MPaに加圧された空気は、加熱器16で873Kまで温度が高められる。8MPa及び873Kの空気が、ノズル11からき裂1の開口に向って噴射され、炉心シュラウド6に生じているき裂1内に供給する。この空気は、実施例1の純水13と同様に、き裂1の開口からき裂1の先端に向ってき裂1内を流動し、き裂1の先端に到達した後、き裂1の開口に向って流れる。この高温高圧の空気(酸素を含む)のき裂1内の流動によって、実施例1と同様に、き裂1の開口からき裂1の先端に至るき裂1の内面全体に酸化皮膜2が形成される(図5(B)参照)。
【0056】
本実施例も、実施例1で生じる各効果を得ることができる。ノズルカバー34を設けることによって、炉心シュラウド6に生じているき裂1をノズルカバー34でき裂1を覆うことができ、き裂1内に供給する空気の圧力をより高めることができる。このため、き裂1内に供給される空気量を増大させることができ、き裂1の内面への酸化皮膜2の形成を促進させることができる。
【0057】
実施例1及び2のプラント構成部材の応力腐食割れ抑制方法は、沸騰水型原子力プラントだけでなく、加圧水型原子力プラントにもそれぞれ適用することができる。それらの実施例は、例えば、加圧水型原子力プラントの原子炉圧力容器内のプラント構成部材に生じたき裂の内面に酸化皮膜を形成する場合に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1のプラント構成部材の応力腐食割れ抑制方法に用いられる表面処理装置の構成図である。
【図2】実施例1のプラント構成部材の応力腐食割れ抑制方法を適用する沸騰水型原子炉の縦断面図である。
【図3】き裂先端を模擬した水溶液中におけるアノード分極曲線に及ぼす予備酸化の影響を示す特性図である。
【図4】酸素濃度300ppbにおけるカソード分極曲線に及ぼす予備酸化の影響を示す特性図である。
【図5】き裂内面の酸化皮膜の形成状態を示す説明図で、(A)は酸素を含む水をき裂に向って噴射する前におけるき裂内面の酸化皮膜の形成状態を示す説明図、及び(B)は酸素を含む水をき裂に向って噴射した後におけるき裂内面の酸化皮膜の形成状態を示す説明図である。
【図6】本発明の他の実施例である実施例2のプラント構成部材の応力腐食割れ抑制方法に用いられる表面処理装置の構成図である。
【図7】図6に示すノズル先端部の拡大縦断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1…き裂、2…酸化皮膜、5…原子炉圧力容器、6…炉心シュラウド、10,10A…表面処理装置、11…ノズル、12…薬液タンク、13…純水、14…酸素・窒素供給装置、15…ポンプ、16…加熱器、17…酸素センサ、21…高圧ホース、26…ノズル移動装置、27…旋回装置、29…水平方向移動装置、30…上下方向移動装置、33…ボンベ、34…ノズルカバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力プラントのプラント構成部材に生じているき裂に対向させて噴射装置を配置し、前記噴射装置から前記き裂に向って酸化剤を含む加熱された流体を噴射させ、前記き裂内に流入した前記流体に含まれる前記酸化剤によって前記き裂の内面に酸化皮膜を形成することを特徴とするプラント構成部材の応力腐食割れ抑制方法。
【請求項2】
前記酸化皮膜は、前記プラント構成部材に含まれる金属成分のうち、少なくとも1種を含んでいる請求項1に記載のプラント構成部材の応力腐食割れ抑制方法。
【請求項3】
前記き裂に向って噴射される前記流体の温度が、473K乃至873Kの温度範囲にある請求項1または2に記載のプラント構成部材の応力腐食割れ抑制方法。
【請求項4】
前記プラント構造部材が冷却水と接触している状態において、噴射される前記流体の圧力は、前記噴射装置が配置される位置での水圧よりも高く8MPa以下の範囲にある請求項3に記載のプラント構成部材の応力腐食割れ抑制方法。
【請求項5】
前記酸化剤が酸素、過酸化水素及びオゾンのうちの少なくとも一種である請求項1ないし3のいずれか1項に記載のプラント構成部材の応力腐食割れ抑制方法。
【請求項6】
前記流体は、水、水蒸気、空気、窒素ガス、アルゴンガスのうち、何れか1種以上を含んでいる請求項1ないし3及び5のいずれか1項に記載のプラント構成部材の応力腐食割れ抑制方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−150633(P2010−150633A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332400(P2008−332400)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】