説明

プラント監視制御システムのテスト装置及びそのプログラム

【課題】旧計算機と新計算機とのパララン試験で使用する比較検証条件を自動で決定する。
【解決手段】旧計算機検証情報記憶部は、プラント設備から出力されるプラントデータを監視してプラント設備の制御を行う旧計算機でプラントデータに対して出力される実績値の収集開始条件及び収集終了条件を記憶する。比較検証条件生成部は、旧計算機検証情報記憶部に記憶された収集開始条件の成立時点から収集終了条件の成立時点までの旧計算機の実績値を旧計算機から所定の周期で収集し、所定の基準値との偏差から検証範囲上限値及び検証範囲下限値からなる比較検証条件を予め生成する。比較検証部は、旧計算機及びプラント設備から旧計算機と同一のプラントデータを取得可能な新計算機に接続され、比較検証条件生成部で生成された比較検証条件に基づいて旧計算機及び新計算機から各々出力される実績値を比較検証する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プラント監視制御システムのテスト装置及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼所など各種のプラントにおいては、プラント機器の状態を多系統に亘って監視するために、プラント機器から出力されるプラントデータをプラント監視サーバーが収集し、プラントデータの解析結果に基づいてプラント機器の制御を行うプラント監視制御システムが導入されている。
【0003】
このプラント監視制御システムでは、実操業中のプラント監視制御サーバ(以下、「旧計算機」という。)を新型のサーバ(以下、「新計算機」という。)に置換する前には、旧計算機と新計算機とのパララン(平行稼働)試験を行い、旧計算機の実績値と新計算機の実績値の一致を確認する動作検証が必要となる。この動作検証では、予め定義した比較検証条件を考慮してプラントデータに対する旧計算機及び新計算機の実績値の誤差が一定の許容範囲内にあるか否かを判定することで行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−337800号公報
【特許文献2】特開2005−322157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の技術においては、動作検証を行う前に、比較検証条件を人間系で決定する必要があった。このため、(1)新旧の計算機の比較検証条件を決定する際に人的ミスが発生する可能性がある、(2)検証作業に工数を要する、(3)デジタル値とアナログ値を区別して比較検証条件を決定することは経験や高いスキルを備えた人材が必要となる、等の問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題に鑑み、旧計算機の実操業中に、旧計算機と新計算機とのパララン試験で使用する比較検証条件を自動で決定できるプラント監視制御システムのテスト装置及びそのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係るプラント監視制御システムのテスト装置は、旧計算機検証情報記憶部、比較検証条件生成部及び比較検証部を備えている。旧計算機検証情報記憶部は、プラント設備から出力されるプラントデータを監視してプラント設備の制御を行う旧計算機においてプラントデータに対して出力される実績値の収集開始条件及び収集終了条件を記憶する。比較検証条件生成部は、旧計算機に接続され、旧計算機検証情報記憶部に記憶された収集開始条件の成立時点から収集終了条件の成立時点までの旧計算機の実績値を旧計算機から所定の周期で収集し、所定の基準値との偏差から検証範囲上限値及び検証範囲下限値からなる比較検証条件を予め生成する。比較検証部は、旧計算機及びプラント設備から旧計算機と同一のプラントデータを取得可能に設定された新計算機に接続され、比較検証条件生成部で生成された比較検証条件に基づいて旧計算機及び新計算機から各々出力される実績値を比較検証する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係るテスト装置が使用されるプラント監視制御システムの全体構成例を示すブロック図。
【図2】図1に示すテスト装置1に適用されるコンピュータのハードウェア構成例を示す図。
【図3】図1に示すテスト装置1の全体構成例を示すブロック図。
【図4】図3に示す比較検証条件生成部の処理を説明する図。
【図5】図3に示す旧計算機検証情報記憶部の収集処理前後におけるデータ例を示す図。
【図6】図3に示す比較検証条件記憶部のデータ例を示す図。
【図7】図3に示す比較検証条件生成部及び比較検証部の処理を説明する図。
【図8】図3に示す比較検証条件生成部及び比較検証部の処理を説明する図。
【図9】図3に示す比較検証結果記憶部のデータ例を示す図。
【図10】図3に示す旧計算機偏差計算モジュールの処理の具体例を示すフローチャート。
【図11】図10のS1005の具体例を示すフローチャート。
【図12】図3に示す比較検証条件生成・保存モジュールの処理の具体例を示すフローチャート。
【図13】図3に示す比較検証部の処理の具体例を示すフローチャート。
【図14】図13に示すS1306の具体例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るテスト装置1が使用されるプラント監視制御システムの全体構成例を示すブロック図である。同図に示されるように、本実施形態に係るテスト装置1は、プラント監視制御のメイン計算機である実操業中の既存プラント監視制御サーバ(以下、「旧計算機」という。)2及びこのサーバとの置換が予定されている検証対象の新設プラント監視制御サーバ(以下、「新計算機」という。)3に情報系LAN4を介して接続されている。また、プラント監視制御システムは、旧計算機2に対して、応答性に優れた制御用LAN5を介して複数の下位コントローラ6が接続され、下位コントローラ6の各々がリアルタイム通信専用プロトコルによってプラント機器7に対して行う制御を上位の旧計算機2側で監視・制御できるように構成されている。このプラント監視制御システム内において新計算機3は、旧計算機2と同様に制御用LAN5を介して下位コントローラ6に接続されており、プラント機器7からリアルタイムで出力される同一のプラントデータを下位コントローラ6から旧計算機2と平行して取得できるように設定されている。しかし、新計算機3はプラントデータの解析処理を行って実績値としてテスト装置1へ出力するが、下位コントローラ6に対する制御処理を行えない点で旧計算機2と異なっている。すなわち、パララン試験によって動作確認が行われた後に、旧計算機2から新計算機3への置換処理が行われ、メイン計算機として稼働するものとする。
【0010】
図2は、図1に示すテスト装置1に適用されるコンピュータのハードウェア構成例を示す図である。同図に示されるように、テスト装置1に適用されるコンピュータは、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、入出力インターフェース14、システムバス15、入力装置16、表示装置17、補助記憶装置18および通信装置19から構成される。
【0011】
CPU11は、ROM12やRAM13に格納されたプログラムやデータなどを用いて各種の演算処理を実行する処理装置である。ROM12は、コンピュータを機能させるための基本プログラムや環境ファイルなどを記憶する読み取り専用の記憶装置である。RAM13は、CPU11が実行する新旧計算機の比較検証プログラム及び各プログラムの実行に必要なデータを記憶する記憶装置であり、高速な読み出しと書き込みが可能である。入出力インターフェース14は、各種のハードウェアとシステムバス15との接続を仲介する装置及びプログラムである。システムバス15は、CPU11、ROM12、RAM13および入出力インターフェース14で共有される情報伝達路である。
【0012】
また、入出力インターフェース14には、入力装置16、表示装置17、補助記憶装置18及び通信装置19などのハードウェアが接続されている。入力装置16は、ユーザからの入力を処理する装置であり、例えばキーボードやマウスなどである。表示装置17は、ユーザに対して演算結果や作成画面などを表示する装置であり、例えばCRT、液晶ディスプレイ及びプラズマディスプレイなどである。補助記憶装置18は、後述する新旧計算機の比較検証プログラムやデータを蓄積する大容量の記憶装置であり、例えばハードディスク装置などである。
【0013】
図3は、図1に示すテスト装置1の全体構成例を示すブロック図である。同図に示されるように、テスト装置1は、比較検証条件生成部101、旧計算機検証情報記憶部102、比較検証条件記憶部103、操作画面表示部104、比較検証部105及び比較検証結果記憶部106を備えている。
【0014】
比較検証条件生成部101は、旧計算機偏差計算モジュール101aと比較検証条件生成・保存モジュール101bから構成されたプログラムである。旧計算機偏差計算モジュール101aは、旧計算機2から実績値を読込み、各実績値毎に実績収集開始点から実績収集終了点までの偏差を計算し、基準値として旧計算機検証情報記憶部102へ格納する。比較検証条件生成・保存モジュール101bは、操作画面からの要求により、旧計算機検証情報記憶部102の情報を比較検証条件記憶部103へ格納する。
【0015】
図4は、図3に示す比較検証条件生成部101の処理を説明する図である。実施例開始準備として、ユーザは操作画面から旧計算機検証情報記憶部102へ、検証対象実績値を収集するための情報を設定する。そして、パララン試験開始までの期間の実操業中に、ユーザが操作画面から比較検証条件の生成を要求すると、比較検証条件生成部101が旧計算機検証情報記憶部102に設定されている検証対象に該当する実績値を旧計算機2から読込む。ここでは、旧計算機が定周期で収集した実績値のうち、初回値を基準値(図4(c))として周期2回目以降の実績値(図4(d))との差から、旧計算機実績値偏差上限(図4(e))、旧計算機実績値偏差下限(図4(f))を算出し、算出値を旧計算機検証情報記憶部102へ保存する。算出式は以下の通りである。
旧計算機実績値偏差上限 = MAX((2回目以降の実績値) − (基準値))
旧計算機実績値偏差下限 = MIN((2回目以降の実績値) − (基準値))
この一連の動作は、旧計算機2において、各製品製造の際に実績値収集時の実績収集終了点(図4(b))まで所定のサンプリング周期で行う。これにより、パララン試験開始前には、旧計算機検証情報記憶部102内に旧計算機に関する実績値の偏差上限、下限が記憶される。尚、ここでは初回実績値を基準値としているが、基準値をどのように設定するかは、任意に設計変更可能である。例えば、収集開始条件の成立時点から収集終了条件の成立時点までに所望の回数収集した実績値の平均値を基準値として設定し、この間或いはその後に収集した実績値との差を求めるように構成してもよい。または、補助記憶装置に十分な容量があれば、1製品分のデータ(開始点から終了点)を時系列に記録しておき、次の製品からは先のデータとの実績値との差を求めるように構成してもよい
旧計算機検証情報記憶部102は、旧計算機2の実績値の収集条件(検証対象実績値番号、収集開始条件、収集終了条件)及び収集データの統計結果(実績値収集サンプリング数、旧計算機実績値偏差上限、旧計算機実績値偏差下限)を格納する記憶装置である。図5は、図3に示す旧計算機検証情報記憶部102の収集処理前後におけるデータ例を示す図である。図5(a)は、旧計算機2からの実績値の収集前における記憶内容を示しており、検証対象の偏差上限値・下限値以外の実績値の情報が操作画面から予め人間系で格納されたものである。図5(b)は、予め設定された検証対象実績値番号、収集開始条件及び収集終了条件に基づいて旧計算機2から収集された実績値に関する実績値収集サンプリング数、旧計算機実績値偏差上限及び旧計算機実績値偏差下限の具体例を示している。
【0016】
比較検証条件記憶部103は、旧計算機検証情報記憶部102の実績値偏差上限値、実績値偏差下限値を検証範囲上限、検証範囲下限として格納する記憶装置である。この比較検証条件記憶部103への格納処理は、パララン試験開始準備時にユーザが操作画面から比較検証条件の設定要求をすることで行うと最新の比較検証条件で処理できるため好適である。図6は、図3に示す比較検証条件記憶部103のデータ例を示す図である。比較検証条件記憶部103には、上記の図5(b)に示される旧計算機検証情報記憶部102とデータ内容がリンクして記憶されている。
【0017】
操作画面表示部104は、ユーザが旧計算機検証情報記憶部102の設定、比較検証条件記憶部103の設定要求を行う時に使用する操作画面を表示装置上に出力すると共に、この操作画面上でユーザが入力した情報を比較検証条件生成部101や比較検証部105へ仲介するプログラムである。
【0018】
比較検証部105は、新旧計算機比較検証モジュール105a及び比較検証結果保存モジュール105bから構成され、新旧計算機比較検証モジュール105aで旧計算機2と新計算機3からそれぞれの実績値を読込み、実績値の誤差が検証範囲であるかを判定し、比較検証結果保存モジュール105bで比較検証結果記憶部106へ検証結果を格納するプログラムである。
【0019】
図7及び図8は、図3に示す比較検証条件生成部101及び比較検証部105の処理を説明する図である。パララン試験開始時に、ユーザは操作画面から、旧計算機検証情報記憶部102の旧計算機実績値偏差上限、下限を検証範囲上限(図7(e))、下限(図7(f))として設定する。パララン試験開始後、比較検証部105は、旧計算機実績値と新計算機実績値を読込み、双方の実績値の差(図7(d))を誤差として、検証範囲上限(図7(e))と検証範囲下限(図7(f))の間に含まれるか否かを検証する。図7の場合には、新計算機3の実績値を合格とする検証結果が比較検証結果記憶部106へ格納される。これに対して、図8の場合には、実績値の差(図8(d))が、検証範囲上限(図8(e))と検証範囲下限(図8(f))の間に収まっていないため、新計算機3の実績値を不合格とする検証結果が比較検証結果記憶部106へ格納される。
【0020】
比較検証結果記憶部106は、比較検証部105から出力された比較検証結果を格納する記憶装置である。図9は、図3に示す比較検証結果記憶部106のデータ例を示す図である。ここでは、検証対象実績値番号と検証結果が項目として挙げられている。
【0021】
以下、上記のように構成されたテスト装置1の各部の動作を図面に基づいて説明する。図10は、図3に示す比較検証条件生成部101の処理の具体例を示すフローチャートである。
【0022】
S1001において、操作画面表示部は、ユーザからの要求に応じて操作画面を表示し、操作画面を介して旧計算機2の実績値の収集条件などの初期値を設定し、旧計算機検証情報記憶部102に格納する。
S1002において、比較検証条件生成部101は、旧計算機検証情報記憶部102に記憶されている検証対象実績値番号のデータを参照して旧計算機2から出力された実績値が対象実績値か否かを判定する。ここで、対象実績値と判定された場合には、S1003へ進む。これに対し、対象実績値ではないと判定された場合には、S1006へ進む。
【0023】
S1003において、比較検証条件生成部101は、旧計算機検証情報記憶部102に記憶されている収集開始条件及び収集終了条件のデータを参照して収集処理タイミングか否かを判定する。ここで、収集処理タイミングであると判定された場合には、S1004へ進む。これに対し、収集処理タイミングではないと判定された場合には、S1006へ進む。
S1004において、比較検証条件生成部101は、旧計算機偏差計算モジュール101a内に実績値(旧計算機用)を入力する。
【0024】
S1005において、比較検証条件生成部101は、実績値(旧計算機用)の偏差計算・保存処理を行う。この処理の詳細については後述する。
S1006において、比較検証条件生成部101は、全ての実績値の処理が完了したか否かを判定する。ここで、全ての実績値の処理が完了したと判定された場合には、S1007へ進む。これに対し、未処理の実績値があると判定された場合には、S1002へ戻り、完了するまでS1002〜S1006の処理を繰り返す。
【0025】
S1007において、比較検証条件生成部101は、操作画面からの収集終了要求の入力に備えて100ms遅延を行う。
S1008において、比較検証条件生成部101は、操作画面からの収集終了要求の入力有無を判定する。ここで、収集終了要求有りと判定された場合には、処理を終了する。これに対し、収集終了要求無しと判定された場合には、S1002へ戻り、収集終了要求が入力されるまでS1002〜S1008の処理を繰り返す。
【0026】
図11は、図9のS1005の具体例を示すフローチャートである。
S1101において、比較検証条件生成部101の旧計算機偏差計算モジュール101aは、収集した実績値(旧計算機用)が2回目以降のものか否かを判定する。ここで、2回目以降の収集時のものであると判定された場合には、S1102へ進む。これに対し、初回の収集時のものであると判定された場合には、S1107へ進む。
【0027】
S1102において、旧計算機偏差計算モジュール101aは、設定済みの基準値と新たに収集された実績値(旧計算機用)の偏差を計算する。
S1103において、旧計算機偏差計算モジュール101aは、S1102で計算された偏差が旧計算機検証情報記憶部102に記憶されている旧計算機実績値偏差上限を超えるか否かを判定する。ここで、旧計算機実績値偏差上限を超えると判定された場合には、S1104へ進む。これに対し、旧計算機実績値偏差上限を超えないと判定された場合には、S1105へ進む。
【0028】
S1104において、旧計算機偏差計算モジュール101aは、S1102で計算された偏差で旧計算機検証情報記憶部102に記憶されている旧計算機実績値偏差上限を置き換える。
S1105において、旧計算機偏差計算モジュール101aは、S1102で計算された偏差が旧計算機検証情報記憶部102に記憶されている旧計算機実績値偏差下限を下回るか否かを判定する。ここで、旧計算機実績値偏差下限を下回ると判定された場合には、S1106へ進む。これに対し、旧計算機実績値偏差下限を下回らないと判定された場合には、処理を終了する。
【0029】
S1106において、旧計算機偏差計算モジュール101aは、S1102で計算された偏差で旧計算機検証情報記憶部102に記憶されている旧計算機実績値偏差下限を置き換え、処理を終了する。
S1107において、旧計算機偏差計算モジュール101aは、実績値(旧計算機用)の初回実績値を基準値に設定し、処理を終了する。
【0030】
図12は、図3に示す比較検証条件生成・保存モジュール101bの処理の具体例を示すフローチャートである。
S1201において、比較検証条件生成部101の比較検証条件生成・保存モジュール101bは、操作画面からの比較検証条件の設定要求の入力有無を判定する。ここで、設定要求有りと判定された場合は、S1202へ進む。これに対し、設定要求無しと判定された場合には、処理を終了する。
【0031】
S1202においては、比較検証条件生成・保存モジュール101bは、旧計算機検証情報記憶部102から旧計算機実績値偏差上限及び旧計算機実績値偏差下限を読込む。
S1203においては、比較検証条件生成・保存モジュール101bは、旧計算機実績値偏差上限を検証範囲上限値 、旧計算機実績値偏差下限を検証範囲下限値とする比較検証条件を比較検証条件記憶部103へ格納し、処理を終了する。
【0032】
図13は、図3に示す比較検証部105の処理の具体例を示すフローチャートである。
S1301において、比較検証部105は、比較検証条件記憶部103を参照し、パララン試験の初期値を設定する。
S1302において、比較検証部105は、比較検証条件記憶部103に記憶されている検証対象実績値番号のデータを参照して旧計算機2及び新計算機3の各々から出力された実績値が対象実績値か否かを判定する。ここで、対象実績値と判定された場合には、S1303へ進む。これに対し、対象実績値ではないと判定された場合には、S1308へ進む。
【0033】
S1303において、比較検証部105は、比較検証条件記憶部103に記憶されている検証開始条件及び検証終了条件のデータを参照して検証処理のタイミングか否かを判定する。ここで、検証処理のタイミングであると判定された場合には、S1304へ進む。これに対し、検証処理のタイミングではないと判定された場合には、S1308へ進む。
【0034】
S1304において、比較検証部105は、新旧計算機比較検証モジュール105a内に実績値(旧計算機用)を入力する。
S1305において、比較検証部105は、新旧計算機比較検証モジュール105a内に実績値(新計算機用)を入力する。
S1306において、比較検証部105は、新旧計算機比較検証モジュール105a内で新旧計算機の実績値の比較検証処理を行う。この処理の詳細については後述する。
【0035】
S1307において、比較検証部105は、比較結果保存モジュール105bによりS1306における比較検証結果を比較検証結果記憶部106へ格納する。
S1308において、比較検証部105は、新旧計算機比較検証モジュール105a内で全ての実績値の処理が完了したか否かを判定する。ここで、全ての実績値の処理が完了したと判定された場合には、S1309へ進む。これに対し、未処理の実績値があると判定された場合には、S1302へ戻り、完了するまでS1302〜S1308の処理を繰り返す。
【0036】
S1309において、比較検証部105は、操作画面からの検証終了要求の入力に備えて100ms遅延を行う。
S1310において、比較検証部105は、操作画面からの検証終了要求の入力有無を判定する。ここで、検証終了要求有りと判定された場合には、処理を終了する。これに対し、検証終了要求無しと判定された場合には、S1302へ戻り、検証終了要求が入力されるまでS1302〜S1310の処理を繰り返す。
【0037】
図14は、図13に示すS1306の具体例を示すフローチャートである。
S1401において、比較検証部105の新旧計算機比較検証モジュール105aは、比較検証条件記憶部103から比較検証条件を読込む。
S1402において、新旧計算機比較検証モジュール105aは、同一の検証対象実績値番号についての実績値(旧計算機用)と実績値(新計算機用)の誤差を算出する。
【0038】
S1403において、新旧計算機比較検証モジュール105aは、S1402で算出された誤差が検証範囲下限値以上、かつ、検証範囲上限値以内で表される合格範囲に含まれるか否かを判定する。ここで、誤差が合格範囲に含まれると判定された場合には、S1404へ進む。これに対し、誤差が合格範囲に含まれないと判定された場合には、S1405へ進む。
【0039】
S1404において、新旧計算機比較検証モジュール105aは、検証結果を“合格”とする判定結果を比較検証結果保存モジュール105bへ出力し、処理を終了する。
S1405において、検証結果を“不合格”とする判定結果を比較検証結果保存モジュール105bへ出力し、処理を終了する。
【0040】
このように、本実施形態に係るテスト装置1によれば、以下の効果が奏される。
(1)比較検証条件の範囲(旧計算機の誤差上限値、下限値)をパララン試験開始前に収集することにより、パララン試験の検証範囲を自動設定することが可能となる。
(2)パララン試験の人的作業工数を縮小することができる。
(3)検証範囲決定における人的ミスを取り除くことができる。
(4)デジタル値(0または1のみで定義される実績値)、アナログ値(範囲を持つ値で定義される実績値)の区別も自動設定することが可能となる。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
1…テスト装置
2…既存プラント監視制御サーバ(旧計算機)
3…新設プラント監視制御サーバ(新計算機)
4…情報系LAN
5…制御用LAN
6…下位コントローラ
7…プラント機器
11…CPU
12…ROM
13…RAM
14…入出力インターフェース
15…システムバス
16…入力装置
17…表示装置
18…補助記憶装置
19…通信装置
101…比較検証条件生成部
101a…旧計算機偏差計算モジュール
101b…比較検証条件生成・保存モジュール
102…旧計算機検証情報記憶部
103…比較検証条件記憶部
104…操作画面表示部
105…比較検証部
105a…新旧計算機比較検証モジュール
105b…比較検証結果保存モジュール
106…比較検証結果記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラント設備から出力されるプラントデータを監視して前記プラント設備の制御を行う旧計算機において前記プラントデータに対して出力される実績値の収集開始条件及び収集終了条件を記憶する旧計算機検証情報記憶部と、
前記旧計算機に接続され、前記旧計算機検証情報記憶部に記憶された前記収集開始条件の成立時点から前記収集終了条件の成立時点までの旧計算機の実績値を前記旧計算機から所定の周期で収集し、所定の基準値との偏差から検証範囲上限値及び検証範囲下限値からなる比較検証条件を予め生成する比較検証条件生成部と、
前記旧計算機及び前記プラント設備から前記旧計算機と同一のプラントデータを取得可能に設定された新計算機に接続され、前記比較検証条件生成部で生成された前記比較検証条件に基づいて前記旧計算機及び前記新計算機から各々出力される前記実績値を比較検証する比較検証部と、
を備えることを特徴とするプラント監視制御システムのテスト装置。
【請求項2】
前記比較検証条件生成部は、前記収集開始条件の成立時点で前記旧計算機から取得した実績値を基準値として用い、この基準値と前記旧計算機から二回目以降に取得した実績値との誤差を算出して前記比較検証条件を生成することを特徴とする請求項1記載のプラント監視制御システムのテスト装置。
【請求項3】
前記比較検証条件生成部は、前記収集開始条件の成立時点から前記収集終了条件の成立時点までの旧計算機の実績値の平均値を基準値として用い、この基準値と前記旧計算機から取得した実績値との誤差を算出して前記比較検証条件を生成することを特徴とする請求項1記載のプラント監視制御システムのテスト装置。
【請求項4】
プラント設備から出力されるプラントデータを監視して前記プラント設備の制御を行う旧計算機において前記プラントデータに対して出力される実績値の収集開始条件及び収集終了条件を記憶する旧計算機検証情報記憶ステップと、
前記旧計算機検証情報記憶ステップにおいて記憶された前記収集開始条件の成立時点から前記収集終了条件の成立時点までの旧計算機の実績値を所定の周期で前記旧計算機から収集し、所定の基準値との偏差から検証範囲上限値及び検証範囲下限値からなる比較検証条件を予め生成する比較検証条件生成ステップと、
前記旧計算機及び前記プラント設備から前記旧計算機と同一のプラントデータを取得可能に設定された新計算機から各々出力される前記実績値を収集し、これらの収集された実績値を前記比較検証条件生成ステップで生成された前記比較検証条件に基づいて比較検証する比較検証ステップと、
を有すること特徴とするプラント監視制御システムのテストプログラム。
【請求項5】
前記比較検証条件生成ステップにおいて、前記収集開始条件の成立時点で前記旧計算機から取得した実績値を基準値として用い、この基準値と前記旧計算機から二回目以降に取得した実績値との誤差を算出して前記比較検証条件を生成することを特徴とする請求項4記載のプラント監視制御システムのテストプログラム。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−68688(P2012−68688A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210366(P2010−210366)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(301063496)東芝ソリューション株式会社 (1,478)
【Fターム(参考)】