説明

プリオンを含まないナノ粒子組成物および方法

アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬物を含むナノ粒子を含むプリオン非含有組成物が開示される。プリオン非含有組成物を作製する方法およびそのナノ粒子組成物からプリオンタンパク質を除去する方法もまた提供される。それらの組成物を使用する方法、ならびにそれらの方法を行うために有用なキットも提供される。いくつかの実施形態において、組成物は、約100fg/ml未満のプリオンタンパク質を有する。いくつかの実施形態において、組成物は、約10IU−ic/ml未満のプリオン感染性を有する。いくつかの実施形態において、組成物は、約1LD50/ml未満のプリオン感染性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2009年4月15日に出願された米国仮特許出願第61/169,665号および2009年8月28日に出願された米国仮特許出願第61/238,052号(これらの各々の内容は、参考として本明細書に援用される)への優先権の利益を主張する。
【0002】
技術分野
本発明は、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬物を含むナノ粒子を含むプリオン非含有組成物、それを作製する方法およびそれを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
伝達性海綿状脳症(TSE)としても知られるプリオン病は、致死性の伝染性神経変性疾患の一群である。TSEの具体例としては、ヒツジおよびヤギが発症するスクレイピー、ウシ海綿状脳症(BSE)、伝染性ミンク脳症、ネコ海綿状脳症、ならびに慢性消耗病(CWD)が挙げられる。ヒトにおいては、TSE病は、クールー、クロイツフェルト・ヤコブ(Creutzfeldt−Jekob)病(CJD)、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー症候群(GSS)、致死性不眠症および変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)として紹介されることがある。vCJDは、英国で流行したBSEの結果としてヒトにおいて出現したものであり、十中八九、BSEまたは「狂牛病」に感染したウシに由来する食品を消費したことによって引き起こされる(非特許文献1)。経口的にかかった疾患に対する潜伏期間は、ヒトにおいて20年を超えることがあるので、vCJDの真の発生率は、長年にわたって明らかにならないかもしれない。
【0004】
ウシ起源の感染した製品を摂取することに加えて、輸血および臓器移植が、vCJDのヒト間における別の伝播様式である(Brownら(1998)Transfusion 38:810−816;Diringerら(1984)Archives of Virology 82:105−109;Manuelidisら(1978)Nature 271:778−779)。1990年代中頃以来、vCJDがTSE感染個体からの輸血またはそのような個体から製造された他の血液製剤によって伝染しうるという重大な懸念が持ち上がった。これらの個体は、vCJDの長い症状発現前の期間および潜伏期の間は無症候性である場合があり、そのようなドナーから得られた血液は、そのドナーに由来する血液または血液製剤を投与された人にその疾患を伝染させることができる可能性がある。
【0005】
輸血によってvCJDに感染したヒトの症例は英国でこれまでに少なくとも4例報告されている。22人のドナーから全血を輸血された64人のうち、4人がvCJDを発症した。第1の事象(incidence)では、レシピエントは、無症候性のままで血液提供の3年後になってvCJDの徴候を示しただけのドナーから赤血球を得た7年後に発病した(Llewelyら(2004)Lancet 363:417−421)。第2の事象では、ドナーは、血液提供の2年後にvCJDが原因で死亡し、レシピエントは、血液提供の5年後に動脈瘤が原因で(vCJDではない)死亡した(Pedenら(2004)Lancet 364:527−529)。そのレシピエントの剖検では、PrPscがリンパ節および脾臓に存在していたが、脳には存在していなかった。第3の事象では、レシピエントは、血液提供の20ヶ月後にvCJDを発症したドナーからの輸血の7年半後にvCJDが原因で死亡した(Wroeら(2006)Lancet 368:2061−2067)。第4の事象は、第3の症例と同じドナーからの輸血の8年半後にレシピエントにおいて起きた(Health Protection Agency−Health Protection Report,(2007)Vol 1,No 3,26。http://www.hpa.org.uk/hpr/archives/2007/news2007/news0307.htmにおいて入手可能)。
【0006】
すべてのプリオン病に共通する特徴は、正常な細胞プリオンタンパク質(PrPc)から異常なアイソフォーム(PrPsc)への変換である。PrPcとPrPscとの違いは、単にコンフォメーションであると考えられており、PrPcは、主にアルファヘリックス構造を有し、PrPscは、主に、集合することにより凝集物を形成することが多いベータシートを有する。PrPscは、同じ異常なアイソフォームに変換するように正常なタンパク質分子を誘導する鋳型として作用し、その異常なアイソフォームは、その後順番に、より多くのPrPcをPrPscに変換する(Prusinerら(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:13363−13383)。この自己触媒プロセスによって、神経毒性のあるPrPsc凝集物が指数関数的に形成される(Aguzziら(2007)Nat Rev Mol.Cell Biol.8:552−561)。プリオンタンパク質リガンドおよびその使用は、特許文献1、特許文献25、特許文献3および特許文献4に記載されている。
【0007】
研究によって、血液にプリオン感染性が現れる最も早い段階は、その疾患の潜伏期間の初期であり得ることが示されている(Brownら(2006)Blood infectivity in the transmissible spongiform encephalopathies.Chapter 4 In:Turner ML,ed.95−118)。疾患症状が発症するまで長い時間が経過しうるので、静止感染した個体は、なおも健常で有効な血液ドナーとして見なされ得る。さらに、一部の個体は、疾患を発症しないまま永続的または一過性に感染し得る。ゆえに、血液由来の生成物用の血液の供給源がプリオンを含まないことを確実にすることは、不可能ではないにしても困難である。
【0008】
アルブミンに基づくナノ粒子組成物は、実質的に水に溶けない薬物を送達するための薬物送達系として開発された。例えば、米国特許第5,916,596号;同第6,506,405号;同第6,749,868号および同第6,537,579号、また、米国特許公開番号2005/0004002および2007/0082838を参照のこと。アルブミンに基づくナノ粒子の技術は、実質的に水に溶けない薬物を疾患部位に輸送するためおよび送達するために、アルブミンタンパク質の独特の天然の特性を利用している。これらのナノ粒子は、身体自体の輸送プロセスに容易に取り込まれ、腫瘍がアルブミンに引きつけられる傾向を活用することができることから、より高濃度の活性な薬物を標的部位に送達することができる。さらに、アルブミンに基づくナノ粒子の技術は、投与プロセスにおける溶媒などの有毒な化学物質の必要性を回避することによって薬物の溶解性を改善することも可能にするので、溶媒関連の副作用を排除することによって安全性を改善する可能性を秘めている。
【0009】
本明細書中で言及されるすべての刊行物、特許、特許出願および公開特許出願の開示は、本明細書中でそれらの全体が本明細書によって参考として援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第04/050851号
【特許文献2】国際公開第06/010915号
【特許文献3】国際公開第04/090102号
【特許文献4】国際公開第06/044459号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Willら、Lancet(1996)347:921〜925
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の簡単な要旨
本発明は、1つの局面において、プリオン非含有ナノ粒子組成物(例えば、薬学的組成物)を提供する。いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物が提供され、ここで、その組成物は、プリオンタンパク質を実質的に含まない。いくつかの実施形態において、組成物は、無菌である。いくつかの実施形態において、組成物は、濾過滅菌可能(sterile filterable)である。いくつかの実施形態において、組成物は、薬学的に許容可能なキャリアをさらに含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、組成物は、約100fg/ml未満のプリオンタンパク質を有する。いくつかの実施形態において、組成物は、約10IU−ic/ml未満のプリオン感染性を有する。いくつかの実施形態において、組成物は、約1LD50/ml未満のプリオン感染性を有する。
【0014】
いくつかの実施形態において、組成物は、タンパク質ミスフォールディング周期的増幅(protein misfolding cyclic amplification)(PMCA)アッセイに基づいてプリオンタンパク質の存在を示さない。いくつかの実施形態において、組成物は、IPCRアッセイに基づいてプリオンタンパク質の存在を示さない。いくつかの実施形態において、組成物は、約10IU−ic/ml未満のプリオン感染性を有し、PMCAアッセイに基づいてプリオンタンパク質の存在を示さない。いくつかの実施形態において、組成物は、約10IU−ic/ml未満のプリオン感染性を有し、IPRCアッセイに基づいてプリオンタンパク質の存在を示さない。
【0015】
本明細書中に記載される組成物は、通常、PrPscを実質的に含まない。いくつかの実施形態において、組成物は、PrPcも実質的に含まない。いくつかの実施形態において、組成物中のPrPscとPrPcとのモル比は、約1:1を超えず、例えば、約1:10、1:100、1:1000、1:10000または1:100000のいずれか1つを超えない。
【0016】
本明細書中に記載される組成物は、いくつかの実施形態において、プリオン除去処理中に導入されるある量(例えば、痕跡量)の物質を含む。例えば、いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物が提供され、ここで、その組成物は、プリオンタンパク質を実質的に含まず、その組成物は、プリオンタンパク質に結合することができるある量(例えば、痕跡量)のリガンドを含む。いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物が提供され、ここで、その組成物は、プリオンタンパク質を実質的に含まず、その組成物は、ある量(例えば、痕跡量)の支持材料(例えば、樹脂をはじめとした本明細書中に記載される支持材料)を含む。いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物が提供され、ここで、その組成物は、プリオンタンパク質を実質的に含まず、その組成物は、ある量のPRDT樹脂(例えば、痕跡量のPRDT樹脂)を含む。いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物が提供され、ここで、その組成物は、プリオンタンパク質を実質的に含まず、その組成物は、ある量のDVR樹脂(例えば、痕跡量のDVR樹脂)を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、本組成物中のアルブミン安定剤のレベルは、プリオン除去処理によってアルブミンが清浄にされていない組成物中のレベルより低い。これらのアルブミン安定剤としては、例えば、N−アセチルトリプトファネートおよびカプリル酸ナトリウムが挙げられる。
【0018】
いくつかの実施形態において、本組成物は、プリオン除去処理によってアルブミンが清浄にされていない組成物と生物学的に等価である。
【0019】
いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物が提供され、ここで、その組成物中のアルブミンは、プリオン除去処理を包含する方法によって得られたものであり、前記プリオン除去処理は、最初のアルブミン組成物をプリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させる工程を包含する。いくつかの実施形態において、プリオン除去処理は、前記リガンドおよび該リガンドに結合したタンパク質を前記アルブミン組成物から除去する工程をさらに包含する。
【0020】
いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物が提供され、ここで、その組成物中のアルブミンは、a)最初のアルブミン組成物をプリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させることにより、リガンドとプリオンタンパク質との複合体を形成させる工程、およびb)その複合体を最初の組成物から除去する工程を包含する方法によって得られたものである。
【0021】
いくつかの実施形態において、最初のアルブミン組成物は、血液由来の生成物である。いくつかの実施形態において、最初のアルブミン組成物は、体液(例えば、血液)から調製されたアルブミン組成物である。いくつかの実施形態において、アルブミンは、ヒト血清アルブミンである。
【0022】
いくつかの実施形態において、リガンドは、ペプチド(例えば、表1に提供される任意のペプチド)である。いくつかの実施形態において、リガンドは、プリオンタンパク質を認識する抗体である。いくつかの実施形態において、リガンドは、化合物(例えば、トリアジンに基づく化合物)である。いくつかの実施形態において、リガンドは、アミノ樹脂上にアミノ基などのアミノ基を備える。
【0023】
上記リガンドは、例えば、カラム、ビーズ、マトリックス、フィルターおよび膜をはじめとした支持材料に接着され得る。
【0024】
別の局面において、プリオン非含有ナノ粒子組成物を作製する方法が提供される。例えば、いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物を作製する方法が提供され、前記方法は、アルブミン溶液と、有機溶媒に分散された前記実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含む有機相とを含む混合物を高剪断条件に供する工程を包含し、ここで、そのアルブミンは、プリオンタンパク質を最初のアルブミン組成物から除去する工程を包含する方法によって得られたものである。いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物を作製する方法が提供され、前記方法は、アルブミン溶液と、有機溶媒に分散された前記実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含む有機相とを含む混合物を高剪断条件に供する工程を包含し、ここで、そのアルブミンは、最初のアルブミン組成物をプリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させる工程を包含する方法によって得られたものである。いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物を作製する方法が提供され、前記方法は、アルブミン溶液と、有機溶媒に分散された前記実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含む有機相とを含む混合物を高剪断条件に供する工程を包含し、ここで、そのアルブミンは:a)最初のアルブミン組成物をプリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させる工程、およびb)そのリガンドおよび該リガンドに結合したタンパク質を最初の組成物から除去する工程を包含する方法によって得られたものである。
【0025】
いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物を作製する方法が提供され、前記方法は:a)プリオンタンパク質を最初のアルブミン組成物から除去する工程;b)プリオンが除去されたアルブミンを含む溶液と、有機溶媒に分散された前記実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含む有機相とを含む混合物を高剪断条件に供する工程を包含する。いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物を作製する方法が提供され、前記方法は:a)最初のアルブミン組成物をプリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させることにより、そのリガンドとプリオンタンパク質との複合体を形成させる工程、b)その複合体を最初のアルブミン組成物から除去する工程;およびc)プリオンが除去されたアルブミンを含む溶液と有機溶媒に分散された前記実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含む有機相とを含む混合物を高剪断条件に供する工程を包含する。
【0026】
いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物を作製する方法が提供され、その方法は:a)アルブミン溶液をプリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させる工程、b)そのリガンドおよび該リガンドに結合したタンパク質をアルブミン溶液から除去する工程、およびc)前記アルブミン溶液と、有機溶媒に分散された前記実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含む有機相とを含む混合物を高剪断条件に供する工程を包含する。いくつかの実施形態において、その混合物は、界面活性物質を実質的に含まない。
【0027】
上記プリオンは、ナノ粒子の形成中に除去され得る。例えば、いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物を作製する方法が提供され、その方法は:a)アルブミン溶液と、有機溶媒に分散された前記実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含む有機相とを含む混合物を、プリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させる工程を包含する。いくつかの実施形態において、その方法は:b)リガンドおよび該リガンドに結合したタンパク質を混合物から除去する工程をさらに包含する。いくつかの実施形態において、その方法は、c)その混合物を高剪断条件に供する工程をさらに包含する。いくつかの実施形態において、その混合物は、界面活性物質を実質的に含まない。
【0028】
上記プリオンタンパク質は、ナノ粒子組成物を形成した後でも除去され得る。例えば、いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物を作製する方法が提供され、その方法は、有機溶媒に分散された前記実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含む有機相とアルブミン溶液とを含む混合物を、プリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させる工程を包含し、ここで、その混合物は、リガンドと接触する前に高剪断条件に供されている。いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物を作製する方法が提供され、その方法は:a)有機溶媒に分散された前記実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含む有機相とアルブミン溶液とを含む混合物を高剪断条件に供する工程、およびb)その混合物をプリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させる工程を包含する。いくつかの実施形態において、その方法は:c)リガンドおよび該リガンドに結合したタンパク質を混合物から除去する工程をさらに包含する。いくつかの実施形態において、その混合物は、界面活性物質を実質的に含まない。
【0029】
いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含み、プリオンタンパク質を含むと疑われる組成物からプリオンタンパク質を除去する方法が提供され、前記方法は、a)そのナノ粒子組成物をプリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させる工程、b)そのリガンドおよび該リガンドに結合したタンパク質をナノ粒子組成物から除去する工程を包含する。いくつかの実施形態において、異常なプリオンタンパク質を含むと疑われるアルブミン組成物からプリオンタンパク質を除去する方法が提供され、その方法は:a)アルブミンを含む組成物をプリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させる工程、b)そのリガンドおよび該リガンドに結合したタンパク質をアルブミン組成物から除去する工程を包含し、ここで、前記アルブミン組成物は、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含むナノ粒子を含む組成物を作製するために使用される。
【0030】
いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物からプリオンタンパク質を除去する方法が提供され、その方法は:a)その組成物中のプリオンタンパク質の有無を判定する工程、b)その組成物をプリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させる工程、およびc)そのリガンドおよび該リガンドに結合したタンパク質を組成物から除去する工程を包含する。
【0031】
プリオン除去処理によって生成された組成物も提供される。例えば、いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含み、プリオンタンパク質に結合することができるリガンドをさらに含む組成物が提供される。いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子と、支持材料(例えば、本明細書中に記載される1つ以上の支持材料)に接着されたプリオンタンパク質に結合することができるリガンドとを含む混合物が提供される。いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物が充填されたカラムが提供され、ここで、そのカラムは、プリオンタンパク質に結合することができるリガンドを備える。
【0032】
本明細書中に記載される方法によって生成される組成物も提供される。本明細書中に記載されるプリオン非含有組成物を使用する方法も提供される。例えば、いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物を投与する方法が提供され、ここで、その組成物は、プリオンタンパク質を実質的に含まない。いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物を投与する工程を包含する、疾患(例えば、癌)を処置する方法が提供され、ここで、その組成物は、プリオンタンパク質を実質的に含まない。
【0033】
いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物を投与する方法が提供され、ここで、その組成物中のアルブミンは、プリオン除去処理を包含する方法によって得られたものであり、前記プリオン除去処理は、最初のアルブミン組成物をプリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させる工程を包含する。いくつかの実施形態において、そのプリオン除去処理は、前記リガンドおよび該リガンドに結合したタンパク質を前記アルブミン組成物から除去する工程をさらに包含する。いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物を投与する工程を包含する、疾患(例えば、癌)を処置する方法が提供され、ここで、その組成物中のアルブミンは、プリオン除去処理を包含する方法によって得られたものであり、前記プリオン除去処理は、最初のアルブミン組成物をプリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させる工程を包含する。
【0034】
本明細書中に記載されるプリオン非含有ナノ粒子組成物を含むキットおよび剤形(例えば、バイアル、例えば、密封バイアル)、ならびに本明細書中に記載される方法にとって有用なキットも提供される。さらに、本明細書中に記載される1つ以上の方法を行うためのシステム(装置を含む)が提供される。
【0035】
本発明のこれらおよび他の局面および利点は、この後に続く詳細な説明および添付の請求項から明らかになるだろう。本明細書中に記載される様々な実施形態の特性の1つ、いくつか、またはすべてが組み合わされることにより、本発明の他の実施形態が形成され得ることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、20%または25%アルブミン中の0.01%および0.005%のスクレイピーハムスター脳ホモジネートを曝露されたDVR樹脂のウエスタンブロットおよびSDS−PAGEゲルを提供している。AMN31は、ポジティブコントロール樹脂だった。観察されたシグナルは、結合画分だった。「−PK」および「+PK」は、プロテイナーゼKによる消化なしまたは消化ありを表している。
【図2】図2は、20%または25%アルブミン中の0.01%および0.005%のスクレイピーハムスター脳ホモジネートを曝露されたYVHEA樹脂およびSYA樹脂のウエスタンブロットおよびSDS−PAGEゲルを提供している。AMN31は、ポジティブコントロール樹脂だった。観察されたシグナルは、結合画分だった。「−PK」および「+PK」は、プロテイナーゼKによる消化なしまたは消化ありを表している。
【図3】図3は、20%または25%アルブミン中の0.01%および0.005%のスクレイピーハムスター脳ホモジネートを曝露されたD4樹脂のウエスタンブロットおよびSDS−PAGEゲルを提供している。AMN31は、ポジティブコントロール樹脂だった。観察されたシグナルは、結合画分だった。「−PK」および「+PK」は、プロテイナーゼKによる消化なしまたは消化ありを表している。
【図4】図4は、20%アルブミンに対するプリオン低減樹脂カラム(PRDT(Pathogen Removal and Diagnostic Technologies)カラム)によるTSE除去のプロセスのフロースキームを表している。
【図5】図5は、20%アルブミンに対するPRDTカラムによるTSE除去研究におけるスパイクラン(spiked run)のクロマトグラフィプロファイルを示している。
【図6】図6は、遠心分離を用いた20%アルブミン溶液のウエスタンブロット干渉試験を示している(10倍濃縮ありおよびなし)。
【図7】図7は、25%アルブミンに対するプリオン低減樹脂カラム(PRDTカラム)によるTSE除去のプロセスのフロースキームを表している。
【図8】図8は、25%アルブミンに対するPRDTカラムによるTSE除去研究におけるスパイクランのクロマトグラフィプロファイルを示している。
【図9】図9は、遠心分離を用いた25%アルブミン溶液のウエスタンブロット干渉試験を示している(10倍濃縮ありおよびなし)。
【発明を実施するための形態】
【0037】
発明の詳細な説明
本発明は、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含むプリオン非含有組成物(例えば、薬学的組成物)、ならびにプリオン非含有組成物を作製する方法を提供する。
【0038】
本発明は、1つの局面において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物(例えば、薬学的組成物)を提供し、ここで、その組成物は、プリオンタンパク質を実質的に含まない。
【0039】
別の局面において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含むプリオン非含有組成物(例えば、薬学的組成物)を作製する方法が提供される。その作製プロセスの方法によって作製された組成物もまた提供される。
【0040】
別の局面において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含むプリオン非含有組成物(例えば、薬学的組成物)を使用する方法が提供される。
【0041】
本明細書中に記載されるプリオン非含有ナノ粒子組成物を含むキットおよび剤形(例えば、バイアル、例えば、密封バイアル)、ならびに本明細書中に記載される方法にとって有用なキットおよびシステム(装置を含む)も提供される。
【0042】
「プリオン非含有」は、便宜のため、かつ通常、発明性のある組成物を記載するために本明細書で使用され、本明細書中に記載されるすべての実施形態を包含すると意図される。
【0043】
本明細書中の「約」ある値またはパラメータに対する言及は、その値またはパラメータそれ自体に関する実施形態を含む(および記載する)。例えば、「約X」と言及している記載は、「X」の記載を包含する。
【0044】
本明細書中に記載される本発明の局面および実施形態は、局面および実施形態「からなる」ことならびに/または「から本質的になる」ことを含むと理解される。
【0045】
プリオン非含有ナノ粒子組成物
本発明は、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物(例えば、薬学的組成物)を提供し、ここで、その組成物は、プリオンタンパク質を実質的に含まない。いくつかの実施形態において、組成物は、無菌である。いくつかの実施形態において、組成物は、濾過滅菌可能である。いくつかの実施形態において、組成物は、薬学的に許容可能なキャリアをさらに含む。
【0046】
いくつかの実施形態において、プリオンタンパク質は、約100fg/mlまたはそれより高い検出感度を有する検出方法では組成物中で検出され得ず、すなわち、約100fg/mlまたはそれより高い検出感度(例えば、約50fg/ml、約10fg/ml、約1fg/ml、約0.1fg/mlという検出感度)を有する方法を用いたアッセイでは試験結果は陰性である。本組成物中のプリオン含有量は、その組成物から直接測定され得る。あるいは、本組成物は、組成物中のプリオンタンパク質の検出および定量化を容易にするために、測定の前に処理され得、例えば、濃縮され得るかまたは濃厚にされ得る。
【0047】
組成物がプリオンタンパク質を実質的に含まないか否かを判定する1つの方法は、インビボ感染性アッセイである。例えば、インビボにおける感染性は、試験組成物をマウス、ミンク、ハムスターまたはヤギのモデルに接種することによって証明され得る。感染性は、致死量(LD50)、すなわち、所与の経路(例えば、脳内経路)によって投与されたときに、曝露された動物の50%において疾患を誘導する用量によって測定され得る。あるいは、感染性は、感染単位、すなわち、所与の経路によって1匹の実験動物から別の実験動物に疾患を伝染させることができる最少の感染用量によって測定され得る。一般に、100IU−ic/ml(脳内経路によって測定される感染単位)は、約10LD50/mlおよび1pg/mlのプリオンタンパク質に相当する。
【0048】
組成物中のプリオンタンパク質を測定するための別の方法は、イムノ−ポリメラーゼ連鎖反応(IPCR)であり、これは、PCRの指数関数的な増幅能力を、ELISA形式での抗体によるタンパク質の検出と結合させ、改変リアルタイムIPCR法において適用することにより超低レベルのプリオンタンパク質を検出することによる手法である。Barlettaら、J.Virology Method,127(2005):154−104を参照のこと。IPCRを用いると、組換えハムスターPrPcは、ばらつきなく1fg/mlで検出され、プロテイナーゼK(PK)で消化され、10−8(およそ10〜100感染単位)に希釈されたスクレイピー感染ハムスター脳ホモジネートは、半定量的用量反応で検出された。
【0049】
いくつかの実施形態において、組成物中のプリオンタンパク質は、タンパク質ミスフォールディング周期的増幅(PMCA)によって測定される。この方法は、血液中のPrPscを検出するために使用されている。組成物中のプリオンタンパク質の測定に適した他の方法としては:時間分解解離−増強蛍光法(time−resolved dissociation−enhanced fluorescence technology)を用いた定量的サンドイッチELISA;二色蛍光共焦点スキャニング(dual−color fluorescent confocal scanning);コンフォメーション依存性イムノアッセイ(CDI)が挙げられるがこれらに限定されない。ウエスタンブロッティング、ビーズブロット、ゲル移動度シフトアッセイ、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション解析(FISH)、放射性マーカーもしくは生物発光性マーカーの追跡、核磁気共鳴、電子常磁性共鳴、ストップトフロー分光法(stopped−flow spectroscopy)、カラムクロマトグラフィ、キャピラリー電気泳動または他の方法もまた組成物中のプリオンタンパク質を検出するために発展され得る。
【0050】
いくつかの実施形態において、組成物は、プリオンタンパク質を検出するためのアッセイのうちの1つ(例えば、上に記載されたアッセイのいずれか1つ)に基づいて、プリオンタンパク質を実質的に含まない。いくつかの実施形態において、組成物を解析するために2つ以上のアッセイが使用され、これらの異なるアッセイ間の相互関係を用いることにより、その組成物がプリオンタンパク質を含まないか否かが判定される。
【0051】
したがって、いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物が提供され、ここで、その組成物は、プリオンタンパク質を実質的に含まない。いくつかの実施形態において、組成物は、約100fg/ml未満のプリオン感染性を有する。いくつかの実施形態において、組成物は、約10IU−ic/ml未満のプリオン感染性を有する。いくつかの実施形態において、組成物は、約1LD50/ml未満のプリオン感染性を有する。いくつかの実施形態において、組成物は、タンパク質ミスフォールディング周期的増幅(PMCA)アッセイに基づいて、プリオンタンパク質の存在を示さない。いくつかの実施形態において、組成物は、IPCRアッセイに基づいてプリオンタンパク質の存在を示さない。いくつかの実施形態において、組成物は、約10IU−ic/ml未満のプリオン感染性を有し、かつPMCAアッセイに基づいてプリオンタンパク質の存在を示さない。いくつかの実施形態において、いくつかの実施形態において、組成物は、約10IU−ic/ml未満のプリオン感染性を有し、かつIPRCアッセイに基づいてプリオンタンパク質の存在を示さない。いくつかの実施形態において、組成物は、http://www.emea.europa.eu/pdfs/human/bwp/513603en.pdfで入手可能なGuideline for the Investigation of Manufacturing Processes for Plasma−Derived Medicinal Products with Regard to vCJD Risk(CPMP5136/03)(その内容の全体が本明細書中で援用される)において提供される基準に基づいてプリオンタンパク質を含まない。
【0052】
本明細書中に記載される組成物は、通常、PrPscを実質的に含まない。いくつかの実施形態において、組成物は、PrPcも実質的に含まない。いくつかの実施形態において、組成物中のPrPscとPrPcとのモル比は、約1:1を超えない(例えば、約1:10、1:100、1:1000、1:10000または1:100000のいずれか1つを超えない)。
【0053】
いくつかの実施形態において、組成物は、ヒト、ウシ、ヒツジおよびげっ歯類(例えば、ハムスター、マウスおよびミンク)由来のプリオンタンパク質を実質的に含まない。いくつかの実施形態において、組成物は、H型プリオンタンパク質、L型プリオンタンパク質またはその両方を実質的に含まない。いくつかの実施形態において、組成物は、細胞に結合したプリオンタンパク質、遊離プリオンタンパク質またはその両方を実質的に含まない。
【0054】
本明細書中で使用される用語「PrPc」とは、哺乳動物の身体内で天然に発現される天然型プリオンタンパク質分子のことを指す。本明細書中で使用される用語「PrPsc」とは、感染性であると考えられる立体構造的に変化した形態のPrPc分子のことを指す。
【0055】
本明細書中で使用される「アルブミン」とは、天然に存在するアルブミンのことを指し、組換え的に生成されたアルブミンを包含しない。天然に存在するアルブミンは、インビボにおけるアルブミンレセプターに対する天然のリガンドであるので、組換えアルブミンよりも都合がよい。本明細書中に記載される方法において使用されるアルブミンは、通常、アルブミンの翻訳後修飾を受けており、ゆえに、免疫原性のリスクが低い。いくつかの実施形態において、アルブミンは、血液由来の組成物から得られる。本明細書中で使用される「血液由来の組成物」には、全血、赤血球濃縮物、血漿、血清、血小板が豊富な画分および血小板が少ない画分、血小板濃縮物、白血球(while blood cell)、血漿沈殿物、血漿画分の沈殿物および上清、血漿画分の中間物、血液に由来する様々な他の物質などが含まれる。いくつかの実施形態において、アルブミンは、ヒト由来である。いくつかの実施形態において、アルブミンは、動物(例えば、ウシ、ヒツジおよびげっ歯類(例えば、マウス、ハムスターおよびミンク))由来である。いくつかの実施形態において、アルブミンは、個体(例えば、ヒト)の集団から得られ、その集団の少なくとも一部は、プリオンに感染している。いくつかの実施形態において、アルブミンは、個体(例えば、ヒト)の集団から得られ、その集団の少なくとも一部は、プリオンに感染していると疑われる。いくつかの実施形態において、アルブミンは、大きなバッチサイズの個体のプールから得られる。
【0056】
本明細書中に記載される組成物は、いくつかの実施形態において、プリオン除去処理によって導入された痕跡量の物質を含む。例えば、いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物が提供され、ここで、その組成物は、プリオンタンパク質を実質的に含まず、その組成物は、プリオンタンパク質に結合することができる痕跡量のリガンドを含む。いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物が提供され、ここで、その組成物は、プリオンタンパク質を実質的に含まず、その組成物は、痕跡量の支持材料(例えば、樹脂をはじめとした本明細書中に記載される支持材料で作製された材料)を含む。いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物が提供され、ここで、その組成物は、プリオンタンパク質を実質的に含まず、その組成物は、プリオンタンパク質に結合することができる痕跡量のリガンドおよび痕跡量の支持材料(例えば、樹脂をはじめとした本明細書中に記載される支持材料で作製された材料)を含む。
【0057】
「痕跡量」とは、組成物の特性、例えば、バイオアベイラビリティおよび/または生物学的等価性に関して影響しない検出可能な量のことを指す。
【0058】
いくつかの実施形態において、本組成物は、プリオン除去処理によってアルブミンが清浄にされていない組成物と生物学的に等価である。生物学的等価性は、例えば、CmaxとAUCの両方に対して0.80〜1.25の90%信頼区間、またはAUCに関して0.80〜1.25の90%信頼区間およびCmaxに対して0.70〜1.43の90%信頼区間によって確証され得る。
【0059】
いくつかの実施形態において、組成物中のアルブミン安定剤のレベルは、プリオン除去処理によってアルブミンが清浄にされていない組成物のレベルより低い。これらのアルブミン安定剤としては、例えば、N−アセチルトリプトファネートおよびカプリル酸ナトリウムが挙げられる。
【0060】
本明細書中に記載される組成物は、通常、実質的に水に溶けない薬学的に活性な薬剤およびアルブミンを含むナノ粒子を含む。いくつかの実施形態において、ナノ粒子組成物は、実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤およびアルブミンを含むナノ粒子を含む。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される組成物中のナノ粒子は、約1000nmを超えない平均直径(例えば、約900、800、700、600、500、400、300、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70または60nmのいずれか1つを超えない平均直径を含む)を有する。いくつかの実施形態において、組成物中の全ナノ粒子の少なくとも約50%(例えば、少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%または99%のいずれか1つ)が、約1000nmを超えない直径(例えば、約900、800、700、600、500、400、300、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70または60nmのいずれか1つを超えない直径を含む)を有する。いくつかの実施形態において、組成物中の全ナノ粒子の少なくとも約50%(例えば、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%または99%のいずれか1つ)は、約20〜約200nm(例えば、約30〜約180nmのいずれか1つならびに約40〜約150、約50〜約120および約60〜約100nmのいずれか1つを含む)の範囲内に入る。
【0061】
いくつかの実施形態において、組成物のナノ粒子部分におけるアルブミンの少なくとも約5%(例えば、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%のいずれか1つを含む)は、架橋されている(例えば、1つ以上のジスルフィド結合によって架橋されている)。
【0062】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)でコーティングされた実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤(例えば、パクリタキセル)を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤をナノ粒子と非ナノ粒子の両方の形態として含み、ここで、その組成物中の実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤の少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%のいずれか1つは、ナノ粒子の形態である。いくつかの実施形態において、ナノ粒子中の実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤は、そのナノ粒子の約50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%または99重量%のいずれか1つよりも多くを占める。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、非ポリマーマトリックスを有する。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、ポリマー材料(例えば、ポリマーマトリックス)を実質的に含まない実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤のコアを含む。
【0063】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子組成物は、界面活性物質または有機溶媒(例えば、Cremophor(登録商標)、Tween80、または実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤の投与のために使用される他の任意の有機溶媒)を実質的に含まない(例えば、含まない)。いくつかの実施形態において、ナノ粒子組成物は、約20%未満、15%未満、10%未満、7.5%未満、5%未満、2.5%未満、1%未満のいずれか1つまたはそれ以下の有機溶媒を含む。
【0064】
アルブミン含有組成物からプリオンを除去することにより、プリオンについて心配せずに、より多い量のアルブミンを投与することが可能になる。したがって、本発明は、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物(例えば、薬学的組成物)も企図し、ここで、アルブミンと実質的に水に溶けない医薬品との重量比は、約20:1またはそれ以上(例えば、約30:1もしくはそれ以上、約40:1もしくはそれ以上または約50:1もしくはそれ以上のいずれか1つ)である。例示的な比としては、例えば、約20:1〜約40:1、約40:1〜約60:1、約60:1〜約80:1または約90:1〜約100:1が挙げられる。いくつかの実施形態において、ナノ粒子組成物中のアルブミンと実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤との重量比は、約18:1またはそれ以下(例えば、約15:1またはそれ以下、例えば、約10:1またはそれ以下)である。いくつかの実施形態において、組成物中のアルブミンと実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤との重量比は、約1:1〜約18:1、約2:1〜約15:1、約3:1〜約13:1、約4:1〜約12:1、約5:1〜約10:1のいずれか1つの範囲内に入る。いくつかの実施形態において、組成物のナノ粒子部分におけるアルブミンと実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤との重量比は、約1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:11、1:12、1:13、1:14、1:15のいずれか1つまたはそれ以下である。
【0065】
いくつかの実施形態において、粒子組成物は、上記の特性の1つ以上を備える。
【0066】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子組成物は、AbraxaneTMである。他の実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤(例えば、ドセタキセルおよびオルタタキセル(ortataxel))を含むナノ粒子組成物もまた、上記の特性の1つ以上を備え得る。
【0067】
いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物が提供され、ここで、その組成物中のアルブミンは、プリオン除去処理を包含する方法によって得られたものであり、前記プリオン除去処理は、最初のアルブミン組成物をプリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させる工程を包含する。いくつかの実施形態において、プリオン除去処理は、前記リガンドおよび該リガンドに結合したタンパク質を前記アルブミン組成物から除去する工程をさらに包含する。
【0068】
いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物が提供され、ここで、その組成物中のアルブミンは、a)アルブミンを含む最初の組成物を、プリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させることにより、そのリガンドとプリオンタンパク質との複合体を形成させる工程、およびb)その複合体を最初の組成物から除去する工程を包含する方法によって得られたものである。
【0069】
アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬物を含むナノ粒子は、さらに下記においてより詳細に記載される。組成物(例えば、最初のアルブミン組成物、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子組成物、またはナノ粒子を作製するプロセス中に形成される中間体組成物)からプリオンを除去する方法が、さらに下記においてより詳細に記載される。本発明は、本明細書中に記載される方法のいずれかによって作製される組成物を包含する。
【0070】
本明細書中に記載される組成物は、通常、プリオン除去処理によってアルブミンが清浄にされていない組成物と比べて、低いプリオンタンパク質レベルを有する。例えば、いくつかの実施形態において、組成物は、プリオン除去処理によってアルブミンが清浄にされていない組成物よりも約50%、40%、30%、20%、10%、5%、4%、3%、2%、1%のいずれかよりも少ないかまたはそれ以下のプリオンタンパク質を有する。いくつかの実施形態において、組成物は、プリオン除去処理によってアルブミンが清浄にされていない組成物よりも約1、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7または8logのいずれかだけ少ないプリオンタンパク質を有する。いくつかの実施形態において、組成物は、プリオン除去処理によってアルブミンが清浄にされていない組成物よりも約1、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7または8logのいずれかだけ低い感染性を有する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、プリオン除去処理によってアルブミンが清浄にされていない組成物と生物学的に等価である。
【0071】
本願は、アルブミンに焦点を当てているが、血液または血漿中に通常見られる他のタンパク質(それらとしては、免疫グロブリン(IgAおよびIgGを含む)、リポタンパク質、アポリポタンパク質B、アルファ酸糖タンパク質、ベータ−2−マクログロブリン、チログロブリン、トランスフェリン(transferin)、フィブロネクチン、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子などが挙げられるが、これらに限定されない)もまた企図されることが理解されるべきである。本明細書中に提供されるアルブミンについて関連する記載のすべてが、これらの他のタンパク質がナノ粒子の形成において利用される限り、それらの他のタンパク質に等しく適用可能である。
【0072】
プリオン非含有ナノ粒子組成物を作製する方法
別の局面において、プリオン非含有ナノ粒子組成物を作製する方法が提供される。例えば、いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物を作製する方法が提供され、前記方法は、アルブミン溶液と、有機溶媒に分散された前記実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含む有機相とを含む混合物を高剪断条件に供する工程を包含し、ここで、そのアルブミンは、プリオンタンパク質を最初のアルブミン組成物から除去する工程を包含する方法によって得られたものである。いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物を作製する方法が提供され、前記方法は、アルブミン溶液と、有機溶媒に分散された前記実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含む有機相とを含む混合物を高剪断条件に供する工程を包含し、ここで、そのアルブミンは、最初のアルブミン組成物をプリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させる工程を包含する方法によって得られたものである。いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物を作製する方法が提供され、前記方法は、アルブミン溶液と、有機溶媒に分散された前記実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含む有機相とを含む混合物を高剪断条件に供する工程を包含し、ここで、そのアルブミンは、a)最初のアルブミン組成物をプリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させる工程、およびb)そのリガンドおよび該リガンドに結合したタンパク質を最初の組成物から除去する工程を包含する方法によって得られたものである。
【0073】
いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物を作製する方法が提供され、前記方法は:a)プリオンタンパク質を最初のアルブミン組成物から除去する工程;b)プリオンが除去されたアルブミンを含む溶液と、有機溶媒に分散された前記実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含む有機相とを含む混合物を高剪断条件に供する工程を包含する。いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物を作製する方法が提供され、前記方法は:a)最初のアルブミン組成物をプリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させることにより、そのリガンドとプリオンタンパク質との複合体を形成させる工程、およびb)その複合体を最初のアルブミン組成物から除去する工程;c)プリオンが除去されたアルブミンを含む溶液と有機溶媒に分散された前記実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含む有機相とを含む混合物を高剪断条件に供する工程を包含する。
【0074】
いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物を作製する方法が提供され、その方法は:a)アルブミン溶液をプリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させる工程、b)そのリガンドおよび該リガンドに結合したタンパク質をアルブミン溶液から除去する工程、c)前記アルブミン溶液と、有機溶媒に分散された前記実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含む有機相とを含む混合物を高剪断条件に供する工程を包含する。いくつかの実施形態において、混合物は、界面活性物質を実質的に含まない。
【0075】
上記プリオンは、ナノ粒子の形成中に除去され得る。例えば、いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物を作製する方法が提供され、その方法は:a)アルブミン溶液と、有機溶媒に分散された前記実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含む有機相とを含む混合物を、プリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させる工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記方法は:b)リガンドおよび該リガンドに結合したタンパク質を混合物から除去する工程をさらに包含する。いくつかの実施形態において、上記方法は、c)その混合物を高剪断条件に供する工程をさらに包含する。いくつかの実施形態において、上記方法は、有機溶媒を混合物から除去する工程をさらに包含する。いくつかの実施形態において、混合物は、界面活性物質を実質的に含まない。
【0076】
いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物を作製する方法が提供され、その方法は:a)アルブミン溶液と、有機溶媒に分散された実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含む有機相とを含む混合物を高剪断条件に供する工程;およびb)その混合物をプリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させる工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記方法は:c)リガンドおよび該リガンドに結合したタンパク質を混合物から除去する工程をさらに包含する。いくつかの実施形態において、上記方法は、有機溶媒を混合物から除去する工程をさらに包含する。いくつかの実施形態において、混合物は、界面活性物質を実質的に含まない。
【0077】
いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物を作製する方法が提供され、その方法は、有機溶媒に分散された前記実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含む有機相とアルブミン溶液とを含む混合物を、プリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させる工程を包含し、ここで、その混合物は、リガンドに接触する前に高剪断条件に供されている。いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物を作製する方法が提供され、その方法は:a)有機溶媒に分散された前記実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含む有機相とアルブミン溶液とを含む混合物を高剪断条件に供する工程、およびb)その混合物をプリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させる工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記方法は:c)リガンドおよび該リガンドに結合したタンパク質を混合物から除去する工程をさらに包含する。いくつかの実施形態において、上記方法は:d)水相を混合物から除去する工程をさらに包含する。いくつかの実施形態において、混合物は、界面活性物質を実質的に含まない。
【0078】
いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物を作製する方法が提供され、その方法は:a)有機溶媒に分散された前記実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含む有機相とアルブミン溶液とを含む混合物を高剪断条件に供する工程、b)前記有機溶媒を除去する工程、およびc)有機溶媒が除去された混合物をプリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させる工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記方法は:d)リガンドおよび該リガンドに結合したタンパク質を混合物から除去する工程をさらに包含する。いくつかの実施形態において、上記方法は:d)水相を混合物から除去する工程をさらに包含する。いくつかの実施形態において、混合物は、界面活性物質を実質的に含まない。
【0079】
いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物を作製する方法が提供され、その方法は:a)有機溶媒に分散された前記実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含む有機相とアルブミン溶液とを含む混合物を高剪断条件に供する工程、b)前記有機溶媒を除去する工程、c)その混合物にアルブミンを加える工程、およびd)その混合物をプリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させる工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記方法は:e)リガンドおよび該リガンドに結合したタンパク質を混合物から除去する工程をさらに包含する。いくつかの実施形態において、上記方法は:f)水相を混合物から除去する工程をさらに包含する。いくつかの実施形態において、混合物は、界面活性物質を実質的に含まない。
【0080】
本明細書中に記載される方法は、通常、有機溶媒に分散された実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含む有機相とアルブミン溶液とを含む混合物を高剪断条件に供する工程を包含する。いくつかの実施形態において、高剪断条件は、例えば、約3000〜約30,000psi(例えば、約6000〜約25,000psi、約9000〜約18,000psi、約10,000〜約25,000psi、約15,000〜約25,000psiを含む)の範囲内の圧力での、高圧均質化である。いくつかの実施形態において、有機溶媒は、実質的に水不混和性の有機溶媒(例えば、クロロホルムまたは塩化メチレン)と、水溶性有機溶媒(例えば、エタノールおよびt−ブタノールをはじめとした水溶性アルコール)との混合物である。いくつかの実施形態において、実質的に水不混和性の有機溶媒と水溶性有機溶媒との比(v/v)(例えば、クロロホルム/エタノールまたはクロロホルム/ブタノールの比)は、約1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1もしくは9:1のいずれか、または約3:7、5:7、4:6.6:4、5:5、6:5、8:5、9:5、9.5:5、5:3、7:3、6:4もしくは9.5:0.5のいずれかの比である。
【0081】
いくつかの実施形態において、上記方法は、有機相を混合物から除去する工程(例えば、減圧下での蒸発による除去)をさらに包含する。いくつかの実施形態において、上記方法は、水相を混合物から除去する工程をさらに包含する。いくつかの実施形態において、上記方法は、上に記載された方法によって形成されたナノ粒子を濾過滅菌する工程をさらに包含する。
【0082】
いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含み、プリオンタンパク質を含むと疑われる組成物からプリオンタンパク質を除去する方法が提供され、前記方法は:a)そのナノ粒子組成物をプリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させる工程、b)そのリガンドおよび該リガンドに結合したタンパク質をナノ粒子組成物から除去する工程を包含する。いくつかの実施形態において、異常なプリオンタンパク質を含むと疑われるアルブミン組成物からプリオンタンパク質を除去する方法が提供され、その方法は:a)アルブミンを含む組成物をプリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させる工程、b)そのリガンドおよび該リガンドに結合したタンパク質をアルブミン組成物から除去する工程を包含し、ここで、前記アルブミン組成物は、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含むナノ粒子を含む組成物を作製するために使用される。
【0083】
いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物からプリオンタンパク質を除去する方法が提供され、その方法は:a)その組成物中のプリオンタンパク質の有無を判定する工程、b)その組成物をプリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させる工程、およびc)そのリガンドおよび該リガンドに結合したタンパク質を組成物から除去する工程を包含する。
【0084】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される方法の1つ以上の工程は、バッチモードで行われる。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される方法の1つ以上の(one of more)工程は、連続モードで行われる。
【0085】
ナノ粒子形成前のプリオンの除去
上記プリオンタンパク質は、アルブミン含有ナノ粒子組成物が作製される前に最初のアルブミン組成物から除去され得る。通常、上記方法は、最初のアルブミン組成物をプリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させる工程、ならびにそのリガンドおよび該リガンドに結合したタンパク質をアルブミン組成物から除去する工程を包含する。このプロセスは、同じまたは異なるリガンドを用いて1回以上繰り返され得る。プリオン除去処理において、同時に2つ以上のリガンドも使用され得る。
【0086】
いくつかの実施形態において、最初のアルブミン組成物は、血液由来の組成物である。例えば、いくつかの実施形態において、最初のアルブミン組成物は、全血、赤血球濃縮物、血漿、血清、血小板が豊富な画分および血小板が少ない画分、血小板濃縮物、白血球、血漿沈殿物、血漿画分の沈殿物ならびに上清または血漿画分の中間物である。いくつかの実施形態において、最初のアルブミン組成物は、ヒトから得られる。いくつかの実施形態において、最初のアルブミン組成物は、動物(例えば、ウシ、ヒツジおよびげっ歯類(例えば、マウス、ハムスターおよびミンク))由来である。いくつかの実施形態において、最初のアルブミン組成物は、個体(例えば、ヒト)の集団から得られ、その集団の少なくとも一部は、プリオンに感染している。いくつかの実施形態において、最初のアルブミン組成物は、個体(例えば、ヒト)の集団から得られ、その集団の少なくとも一部は、プリオンに感染していると疑われる。
【0087】
いくつかの実施形態において、最初のアルブミン組成物は、イオン交換クロマトグラフィ、アフィニティークロマトグラフィ、ゲル浸透クロマトグラフィおよび/もしくは疎水性クロマトグラフィ、ならびに/または示差沈殿(differential precipitation)をはじめとした、当該分野において通常の様々な方法のいずれかによって体液(例えば、血液)から調製されたアルブミン組成物である。いくつかの実施形態において、最初の組成物は、血液(例えば、ヒト血液)から精製されたアルブミン組成物である。いくつかの実施形態において、最初のアルブミン組成物は、血清(例えば、ヒト血清)から精製されたアルブミン組成物である。いくつかの実施形態において、最初のアルブミン組成物は、約100IU−ic/ml、90IU−ic/ml、50IU−ic/mlまたは10IU−ic/mlというプリオン感染性を有する。いくつかの実施形態において、最初のアルブミン組成物中のアルブミンの濃度は、約1%(w/v)(例えば、約2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%または30%を含む)である。
【0088】
プリオン除去処理において、リガンドは、最初のアルブミン組成物と接触され、最初のアルブミン組成物中のプリオンタンパク質に結合する。この結合に適した条件は、リガンドの性質およびプリオンタンパク質への結合特異性に基づいて決定され得、また、リガンドがプリオンタンパク質に結合するのを促進するように最適化され得る。いくつかの実施形態における結合は、約0℃〜約39℃の温度(例えば、約20℃〜約25℃を含む)において行われる。結合は、約4〜約10のpH(例えば、約5〜約9、約6〜約8、約6.8〜約7.5、約6.9〜約7.4または約7を含む)において行われ得る。必要に応じて、リガンドへの非特異的結合を減少させるためにブロッキング剤が使用され得る。
【0089】
接触工程の後、リガンドおよび該リガンドに結合したタンパク質が、組成物の残りの部分から除去される。本明細書中で使用される用語「除去する」とは、リガンドおよび該リガンドに結合したタンパク質をアルブミン含有組成物から分離することを指す。この分離は、リガンド、および分離を促進するために使用される支持材料(もしあれば)の性質に応じて、種々の方法において行われ得る。例えば、リガンドおよび該リガンドに結合したタンパク質は、クロマトグラフィ(例えば、薄層クロマトグラフィ、カラムクロマトグラフィおよびバッチクロマトグラフィであるがこれらに限定されない);固体支持体および膜を用いた分離;リアクターを用いた分離;磁気分離、免疫分離;コロイド分離(colloidal separation);沈降;沈殿;または遠心分離によって分離され得る。
【0090】
いくつかの実施形態において、リガンドは、ビーズまたは膜などの支持材料に接着され得、そしてその支持材料は、最初のアルブミン組成物に接触される。リガンドが固定化された支持体は、プリオン−リガンド複合体を形成させるのに十分な条件下で最初のアルブミン組成物に接触される。次いで、その固相を組成物から分離し、それによって、リガンドに結合したプリオンタンパク質がサンプルから除去される。例えば、1つの例示的な実施形態において、リガンドをクロマトグラフィカラムなどのカラムに固定化し、次いで、サンプル(例えば、最初のアルブミン組成物)を、重力によって、または高圧液体クロマトグラフィカラムにおけるような加圧下で、カラムに通す。サンプル中のプリオンタンパク質は、カラムに固定化されたリガンドに結合し、通過したサンプルが回収され得る。このプロセスを、同じまたは異なるリガンドを用いて数回繰り返すことにより、所望の結果を得ることができる。
【0091】
カラムにおけるサンプル(例えば、最初のアルブミン組成物)の流速は、リガンドとサンプル中のプリオンタンパク質との結合を最大にするように調整され得る。いくつかの実施形態において、結合は、約0.1ml/分〜約5.0ml/分、約0.1ml/分〜約2.5ml/分、約0.1ml/分〜約0.25ml/分、約0.25/分〜約0.5ml/分、約0.5ml/分〜約1.0ml/分、約1.0ml/分〜約1.5ml/分、約1.5ml/分〜約2.0ml/分、約2.0ml/分〜約2.5ml/分、約2.5ml/分〜約3.0ml/分、約3.0ml/分〜約3.5ml/分、約3.5ml/分〜約4.0ml/分、約4.0ml/分〜約4.5ml/分または約4.5ml/分〜約5.0ml/分(例えば、約0.1ml/分、0.25ml/分、0.5ml/分、1.0ml/分、1.5ml/分、1.7ml/分、1.8ml/分、1.9ml/分、2.0ml/分、2.1ml/分、2.3ml/分、2.5ml/分、2.7ml/分、3.0ml/分、3.5ml/分、4.0ml/分、4.5ml/分または5.0ml/分を含む)の流速で行われる。いくつかの実施形態において、流速は、少なくとも約10ml/分(例えば、少なくとも約20ml/分、30ml/分、40ml/分、50ml/分のいずれか)である。
【0092】
結合プロセスにおける総フロースルー体積または総通過時間もまた、リガンドとサンプル(例えば、最初のアルブミン組成物)中のプリオンタンパク質との結合を最大にするように調整され得る。いくつかの実施形態において、総フロースルー体積は、カラム体積の約1倍〜約1000倍(例えば、カラム体積の約2倍〜約10倍、カラム体積の約10倍〜約20倍、カラム体積の約20倍〜約30倍、カラム体積の約30倍〜約40倍、カラム体積の約40倍〜約50倍、カラム体積の約50倍〜約1000倍、カラム体積の約50倍〜約500倍、カラム体積の約100倍〜約600倍またはカラム体積の約200倍〜約800倍を含む)である。いくつかの実施形態において、総フロースルー体積は、カラム体積の約100倍である。他の実施形態において、総フロースルー体積は、カラム体積の約500倍である。いくつかの実施形態において、総通過時間は、約1時間〜約30時間(例えば、約2時間〜約25時間、約3時間〜約20時間または約3時間〜約17時間を含む)である。いくつかの実施形態において、総通過時間は、約3時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、14時間、16時間、17時間、18時間、19時間または20時間のいずれかである。いくつかの実施形態において、総通過時間は、約24時間超である。いくつかの実施形態において、総通過時間は、約8時間未満(例えば、7、6、5、4、3、2、1または0.5時間未満のいずれかを含む)である。
【0093】
あるいは、まずリガンドが、プリオン−リガンド複合体を形成させるのに十分な条件下で最初のアルブミン組成物に接触され得る。次いで、そのプリオン−リガンド複合体が、親和性に基づくクロマトグラフィなどのカラムを用いることによって除去される。分離を促進するために、リガンドは、結合パートナーに結合体化され得、その結果、リガンド/プリオン複合体は、例えば、結合パートナーを認識する分子を備えるアフィニティーカラムを用いることによって、その結合パートナーを介して除去され得る。
【0094】
バッチクロマトグラフィまたはカラムクロマトグラフィに加えて、プリオンタンパク質結合のためのリガンドの使用の他の種々の設定、変法およびバリエーションもまた構想される。そのようなバリエーションおよび変法としては:バッチプロセス、連続プロセス、移動床クロマトグラフィプロセス;低圧、中圧もしくは高圧プロセス;またはスモールスケール、ミディアムスケールもしくはラージスケールプロセスが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、リガンドは、膜上、繊維上、ビーズ上に存在するか、不織メッシュに含浸されるか、またはフィルターハウジング内に入れられたコーティング繊維の上に存在する。
【0095】
いくつかの実施形態において、除去工程は、収量損失、ならびに/またはアルブミンの特性および/もしくは安定性の変化を著しくもたらさない。いくつかの実施形態において、元の生物学的状態でのアルブミンの回収は、少なくとも50%超のレベル(例えば、80%もしくは90%またはそれ以上を含む)に実質的に維持される。いくつかの実施形態において、プリオン除去処理からのアルブミンの回収率は、約80%、90%、95%または99%のいずれかよりも高い。いくつかの実施形態において、最初のアルブミン組成物中のアルブミンの濃度は、プロセス中の非特異的結合およびアルブミンの損失を最小にするために、プリオン除去工程の前に調整されるかまたは制御される。例えば、アルブミンの濃度は、約1%〜約50%、約5%〜約25%、約5%〜約30%、約5%〜約40%、約5%〜約10%、約10%〜約15%、約15%〜約20%、約20%〜約25%、約25%〜約30%などの範囲内(例えば、約5%、10%、15%、20%、25%または30%のアルブミンを含む)であり得る。
【0096】
プリオン除去処理の浄化率(clearance rate)を測定するために、得られたアルブミン組成物が解析され得る。浄化率を測定するために、プリオンタンパク質が結合したリガンドもまた解析され得る(直接または溶出後に)。
【0097】
プリオンタンパク質の除去は、プリオンタンパク質の減少または感染性の低下に基づいて評価され得る。いくつかの実施形態において、プリオンタンパク質の少なくとも約50%(例えば、少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%を含む)が、最初のアルブミン組成物から除去される。いくつかの実施形態において、除去後のアルブミン組成物の感染性は、最初のアルブミン組成物の感染性よりも少なくとも約10×、20×、30×、40×、50×、80×、100×、200×、500×、1000×、10×、10×、10×、10×、10×、10×低い。
【0098】
いくつかの実施形態において、段階的な感染性(serial infectivity)を用いることにより、プリオン除去処理の浄化率が測定される。サンプルの段階希釈物を作製し、希釈物を、感染活性について、例えばアッセイ動物において調べる。その動物の半数が感染する希釈度が、感染力価である。例えば、5倍希釈が必要である場合、サンプルは、5logの感染性を有すると定義され得る。最初のアルブミン組成物のlog感染性と除去後のアルブミン組成物のlog感染性とを比較することによって、プリオン除去処理の浄化率が決定され得る。いくつかの実施形態において、プリオン除去方法によって、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、3または4、5、6、7、8、9または10logのいずれか1つの感染性の低下がもたらされる。
【0099】
いくつかの実施形態において、プリオン除去処理の浄化率は、プリオン除去方法に対する本明細書中に記載される工程に従うことによる感染性材料を用いたスパイク実験に基づいて測定される。適当なスパイク物質(spiking agent)としては、脳ホモジネート、ミクロソーム、カベオラ様ドメイン、精製PrPscおよびプリオン原線維が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、スパイク物質は、洗浄剤に可溶性(solublized)(例えば、サルコシルに可溶性)である。いくつかの実施形態において、組成物中のスパイク比率は、約0.001%〜約5%、約0.001%〜約0.25%、約0.001%〜約0.1%、約0.001%〜約0.005%、約0.005%〜約0.075%、約0.075%〜約0.01%、約0.01%〜約0.1%、約0.1%〜約0.5%、約0.5%〜約0.75%、約0.75%〜約1%、約1%〜約2%、約2%〜約3%または約3%〜約5%の範囲内(例えば、約0.001%、0.005%、0.075%、0.01%、0.1%、0.5%、0.75%、1%、2%、3%または5%を含む)である。
【0100】
いくつかの実施形態において、プリオン除去処理の浄化率を決定するために減少係数(reduction factors)(RF)が使用される。RFは、式:
RF=(V×T)/(V×T
または
Log10[RF]=[Log10(V)+Log10(T)]−[Log10(V)+Log10(T)]
を用いて計算され得る。式中、VおよびTは、それぞれ最初のアルブミン組成物の体積および力価であり、VおよびTは、除去後のアルブミン組成物の体積および力価である。減少係数は、最後の計算の後に小数第1位に丸められ得る。いくつかの実施形態において、少なくとも約1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5または8.0log10感染性という減少係数のプリオンタンパク質が、最初のアルブミン組成物から除去される。例えば、プリオンタンパク質は、20%アルブミン組成物にスパイクされた0.5%サルコシル可溶性画分において2.5log10と等しいかまたはそれより高い減少係数だけ除去される。別の例として、プリオンタンパク質は、25%アルブミン組成物にスパイクされた0.5%サルコシル可溶性画分において2.0log10と等しいかまたはそれより高い減少係数だけ除去され得る。
【0101】
プリオンの除去は、標準的なウエスタンブロット解析によって評価され得る。例えば、まず、結合後のリガンドを、すべてのPrPcを消化するがPrPscを消化しないプロテイナーゼKで処理し得る。次いで、その消化物をSDSゲルにおいて泳動し、ニトロセルロースのシートまたはPVDF膜にトランスブロットする。次いで、分離されたPrPscバンドを、3F4または6H4を用いて可視化する。3F4は、ヒト、ハムスターおよびネコ由来のアミノ酸残基109〜112PrPと反応する。1つの例示的な実施形態において、0.6μg/mlという濃度で最低1時間インキュベーションを行い、その後、過剰の抗体を洗い流し、膜をウサギ抗マウス西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体(1:1000希釈)とともに最低1時間インキュベートした。その膜をTTBSでしっかり洗浄した後、高感度化学発光を用いて現像した。いくつかの実施形態において、プリオンタンパク質の除去は、Guideline for the Investigation of Manufacturing Processes for Plasma−Derived Medicinal Products with Regard to vCJD Risk(CPMP5136/03)に従って評価される。
【0102】
プリオンタンパク質に結合することができるリガンドおよび支持材料
本明細書中で使用される「リガンド」とは、プリオンタンパク質またはプリオンペプチドに結合する分子のことを指す。「プリオンタンパク質に結合することができるリガンド」とは、適当な条件下でプリオンタンパク質に特異的に結合するリガンドのことを指す。いくつかの実施形態において、リガンドは、ヒトプリオンタンパク質に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、リガンドは、ハムスタープリオンタンパク質に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、リガンドは、マウスタンパク質に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、リガンドは、複数の種由来のプリオンタンパク質に結合する。例えば、いくつかの実施形態において、リガンドは、ヒトプリオンタンパク質、ハムスタープリオンタンパク質およびマウスプリオンタンパク質に結合する。
【0103】
いくつかの実施形態において、リガンドは、高結合親和性でプリオンタンパク質(例えば、ヒトプリオンタンパク質、ハムスタープリオンタンパク質および/またはマウスプリオンタンパク質)に結合する。例えば、いくつかの実施形態において、リガンドは、約10、10、10、1010または1011のいずれかよりも高い結合会合定数(binding Kassociation)を有する。
【0104】
プリオンタンパク質に結合するいくつかのリガンドが同定されており、ゆえに、それらは本発明の方法において使用され得る。例えば、WO04/090102、WO04/050851、WO06/010915およびWO06/044459を参照のこと。これらとしては、例えば、ペプチド、化合物、およびプリオンタンパク質を特異的に認識する抗体が挙げられる。そのリガンドは、すべての形態のプリオンタンパク質を組成物から除去するために使用され得るか、または1つの形態のプリオンタンパク質を検出するためもしくは除去するために選択的に選ばれ得る。
【0105】
いくつかの実施形態において、プリオンを除去するためのリガンドは、PCT公開出願番号WO04/05051に記載されているペプチドなどのペプチドである。例えば、いくつかの実施形態において、リガンドは、表1に示されるような配列番号1〜232のいずれかのアミノ酸を有するペプチドである。いくつかの実施形態において、リガンドは、配列番号48、102、105、108、109、110、111、143、148、193、194、195、202、203、204または210のいずれか1つのアミノ酸配列を有するペプチドなどのトリペプチドである。いくつかの実施形態において、リガンドは、配列番号152、153、180、181、182、183、185、186、187、188、189または190のいずれか1つのアミノ酸配列を有する6−merなどの6アミノ酸を有するペプチドである。いくつかの実施形態において、リガンドは、配列番号150または151のアミノ酸配列を有する。
【0106】
【表1−1】

【0107】
【表1−2】

【0108】
【表1−3】

いくつかの実施形態において、リガンドは、DVR、SYA、AMN31、D4またはYVHEAのアミノ酸配列のペプチドである。いくつかの実施形態において、リガンドは、DVR、SYA、AMN31、D4またはYVHEAと同様またはそれ以上の親和性でプリオンタンパク質に結合するペプチドである。いくつかの実施形態において、リガンドは、DVRである。他の実施形態において、リガンドは、AMN31である。いくつかの実施形態において、ペプチドリガンドは、樹脂の形態で(例えば、樹脂に結合した状態で)提供される。
【0109】
いくつかの実施形態において、リガンドは、プリオンタンパク質を認識する抗体である。プリオンタンパク質を認識する抗体は、当該分野で公知である。これらとしては、モノクローナル抗体3F4、6H4または16A18が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、その抗体は、ICSM−4およびICSM−10などのグリコフォーム特異的抗体である。本明細書中に記載される方法に有用な適当な抗体としては、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、一本鎖抗体、FabフラグメントならびにFvフラグメントが挙げられる。
【0110】
いくつかの実施形態において、リガンドは、プリオンタンパク質の特定配列に結合する。例えば、いくつかの実施形態において、リガンド(例えば、ペプチドリガンドまたは抗体リガンド)は、表2に列挙されるプリオンタンパク質配列である配列番号133〜146のいずれか1つに結合する。
【0111】
【表2】

いくつかの実施形態において、リガンドは、化合物である。プリオンタンパク質に結合することができる化合物は、例えば、PCT出願公開番号WO06/010915(その全体が本明細書中で援用される)に見られる。いくつかの実施形態において、リガンドは、置換トリアジンである。いくつかの実施形態において、リガンドは、式(I):
【0112】
【化1】

を有する化合物であり、
式中、RおよびRは、同じかまたは異なり、各々、必要に応じて置換されるアルキル、必要に応じて置換されるシクロアルキル、必要に応じて置換されるアリールまたは必要に応じて置換されるヘテロアリール基であり;Rは、水素もしくはアリール置換基であるか、またはRは、スペーサーを介して必要に応じて接着される固体支持体であり;Zは、酸素原子、硫黄原子またはNRに相当し;Yは、酸素原子、硫黄原子またはNRに相当し;ここで、同じかまたは異なり得るRおよびRは、水素、1〜6個の炭素原子を含む必要に応じて置換されるアルキル、必要に応じて置換されるフェニル、必要に応じて置換されるベンジルまたは必要に応じて置換されるβ−フェニルエチルに相当し;そしてXおよびXのうちの一方は、窒素原子に相当し、XおよびXの他方は、窒素原子またはCRに相当し、ここで、Rは、水素またはアリール置換基に相当し;この化合物は、プリオンタンパク質の親和性結合のためのものである。
【0113】
いくつかの実施形態において、リガンドは、式(II)
【0114】
【化2】

の化合物であり、式中、R1は、−(CH−Q基に相当し、ここで、mは、0〜7であり、Qは、−CR111213または−NR1112に相当し、ここで、R11、R12およびR13は、独立して、水素、アルキル、シクロアルキルもしくはヘテロシクロアルキルに相当するか、またはR11、R12およびR13のうちの2つが、それらが結合している炭素原子または窒素原子と一体となって、必要に応じて置換されるシクロアルキル基または必要に応じて置換されるヘテロシクロアルキル基を形成し;Rは、−(CH−Q基に相当し、ここで、nは、0〜7であり、Qは、−CR212223または−NR2122に相当し、ここで、R21、R22およびR23は、独立して、水素、アルキル、シクロアルキルもしくはヘテロシクロアルキルに相当するか、またはR11、R12およびR13のうちの2つが、それらが結合している炭素原子または窒素原子と一体となって、必要に応じて置換されるシクロアルキル基または必要に応じて置換されるヘテロシクロアルキル基を形成し、Rは、水素もしくはアリール置換基であるか、またはRは、スペーサーを介して必要に応じて接着される固体支持体であり;Zは、酸素原子、硫黄原子またはNRに相当し;Yは、酸素原子、硫黄原子またはNRに相当し;ここで、同じかまたは異なり得るRおよびRは、水素、1〜6個の炭素原子を含む必要に応じて置換されるアルキル、必要に応じて置換されるフェニル、必要に応じて置換されるベンジルまたは必要に応じて置換されるβ−フェニルエチルに相当し;そしてXおよびXのうちの一方は、窒素原子に相当し、XおよびXの他方は、窒素原子またはCRに相当し、ここで、Rは、水素またはアリール置換基に相当し;この化合物は、プリオンタンパク質の親和性結合のためのものである。
【0115】
いくつかの実施形態において、a)XおよびXは、両方とも窒素であり;b)ZとYの両方がNRに相当し、特にRは水素であり;c)mは、0〜4、より好ましくは、0〜3、最も好ましくは、1〜3であり;d)Qは、−NR1112であり;そしてR11およびR12は、好ましくは、それらが結合している窒素原子と一体となって、ヘテロシクロアルキル基を形成し;e)nは、0〜4、より好ましくは、0〜2、最も好ましくは、0であり;そしてf)R21およびR22は、それらが結合している炭素原子または窒素原子と一体となって、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキル基を形成する。
【0116】
いくつかの実施形態において、Qは、疎水性のシクロアルキル基またはヘテロシクロアルキル基、特に、少なくとも6個の原子を含む環系を有するものに相当する。
【0117】
いくつかの実施形態において、Qは、ヘテロシクロアルキル基、特に、ピペリジル、特に、1−ピペリジル、またはピペラジニル、特に、1−ピペラジニルに相当する。
【0118】
いくつかの実施形態において、リガンドは、式(III)
【0119】
【化3】

の化合物であり、式中、R1は、1つ以上のカルボキシル基によって置換され、1つ以上のさらなるアルキル置換基によって必要に応じて置換される、アルキレン鎖−(CH−CH(pは、0〜6である)に相当し;Rは、−(CH−Ar基(qは0〜7であり、Arは必要に応じて置換されるアリール基に相当する)に相当し;そしてRは、水素もしくはアリール置換基であるか、またはRは、スペーサーを介して必要に応じて接着される固体支持体であり;Zは、酸素原子、硫黄原子またはNRに相当し;Yは、酸素原子、硫黄原子またはNRに相当し;ここで、同じかまたは異なり得るRおよびRは、水素、1〜6個の炭素原子を含む必要に応じて置換されるアルキル、必要に応じて置換されるフェニル、必要に応じて置換されるベンジルまたは必要に応じて置換されるβ−フェニルエチルに相当し;そしてXおよびXのうちの一方は、窒素原子に相当し、XおよびXの他方は、窒素原子またはCRに相当し、ここで、Rは、水素またはアリール置換基に相当し;この化合物は、プリオンタンパク質の親和性結合のためのものである。
【0120】
いくつかの実施形態において、a)XおよびXは、両方とも窒素であり;b)ZとYの両方がNRに相当し、特にRは水素であり;c)pは、0〜4、より好ましくは、0〜3であり;d)Rは、1つまたは2つのカルボキシル基で置換され、それらのカルボキシル基のうちの少なくとも1つは、アルキレン鎖−(CH−CHの末端炭素原子によって保持され;e)qは、0〜4、より好ましくは、0〜3、最も好ましくは、1または2であり;そしてf)Arは、フェニル、フェノキシ、トリル、クロロベンジル、メトキシベンジル、フルオロベンジル、ピリジルおよびインドイルからなる群から選択される1つ以上の置換基によって必要に応じて置換される、単環式の炭素環式または複素環式の芳香族基である。
【0121】
いくつかの実施形態において、Rは、カルボキシメチル、4−カルボキシブチルまたは1−(1,3−ジカルボキシ)プロピルである。
【0122】
いくつかの実施形態において、Arは、フェニル、4−ヒドロキシフェニルまたはピリジル、特に、2−ピリジルである。
【0123】
いくつかの実施形態において、Rは、水素もしくはアリール置換基であるか、またはRは、スペーサーを介して必要に応じて接着される固体支持体であり;XおよびXは、両方ともNであり;YおよびZは、両方ともNHに相当し;mは、2に相当し;Qは、ピペリジルまたはピペラジニルに相当し;nは、0または2に相当し;そしてQは、1−ピペリジルまたはアダマンチルに相当する。
【0124】
いくつかの実施形態において、Rは、水素もしくはアリール置換基であるか、またはRは、スペーサーを介して必要に応じて接着される固体支持体であり;XおよびXは、両方ともNであり;YおよびZは、両方ともNHに相当し;Rは、カルボキシメチル、4−カルボキシブチルおよび1−(1,3−ジカルボキシ)プロピルに相当し;qは、2に相当し;そしてArは、フェニル、2−ピリジルまたは4−ヒドロキシフェニルを表す。
【0125】
いくつかの実施形態において、リガンドは、無機化合物または無機成分(例えば、アルミニウム(例えば、酸化アルミニウム)またはシリカ(例えば、溶融石英)であるがこれらに限定されない)である。いくつかの実施形態において、無機化合物は、A1203またはSiO2である。
【0126】
いくつかの実施形態において、リガンドは、1つ以上の官能基を含む。用語「官能基」は、特徴的な化学的作用、物理的作用または物理化学的作用を分子または材料に付与する化学基、部分基(subgroups)または下部構造を表すために本明細書中で使用される。本明細書中に記載される官能基としては、親水性(例えば、正電荷、負電荷もしくは無電荷または中性)または疎水性のものが挙げられるが、これらに限定されない。両親媒性または多官能性の官能基もまた考えられ、それらも本発明の範囲内に入る。官能基には、有機官能基および無機官能基が含まれる。好ましい官能基は、アミン基、フェニル基または亜硫酸(sulfite)基を含む。好ましいアミン基は、一級、二級、三級または四級アンモニウムイオン(例えば、ジメチルアミノエチル(DMAE)またはトリメチルアミノエチル(TMAE))である。
【0127】
他の例示的な官能基としては:−CH2−CHOH−CH2NH2;−C6H5;−(CH2)3−CII3;−CH2−CH2−NH(C2H5)2;−SO2−CH2−CF3’−CH2−CH2−H(CH3)2;−CH2−CH2−(CH3)3;−SO32−が挙げられるが、これらに限定されない。さらに有用な官能基としては、スルホニル基およびトレシル基が挙げられる。官能基は、本来的にリガンドに存在し得るか、または化学修飾によってリガンドに付加され得ることが理解されるべきである。
【0128】
いくつかの実施形態において、リガンドは、アミノ基を含む。これらとしては、例えば、アミノ樹脂(例えば、ToyopearlTMAmino−650M、ToyopearlTMAmino−AMN31、TSK−GELTM−Amino750C)またはその機能的等価物が挙げられる。いくつかの実施形態において、リガンドは、フェニル基を含む。これらとしては、例えば、TSK−GELTMPhenyl−5PWまたはその機能的等価物が挙げられる。
【0129】
いくつかの実施形態において、リガンドは、選択的および特異的にプリオンタンパク質に結合する、クロマトグラフィ樹脂(例えば、アミノ樹脂)などのポリマー材料である。クロマトグラフィ樹脂の例は、PRDT Prion Reduction Resins(ProMetic Biosciences,Ltd,211 Cambridge Science Park,Milton Road,Cambridge,CB4 0WA,UK)である。いくつかの実施形態において、ポリマー材料は、上に記載された官能基などの1つ以上の官能基を含む。いくつかの実施形態において、リガンドは、メタアクリレート骨格を有するポリマー材料(例えば、商業的に入手可能なTSK樹脂、TOYOPEARL樹脂またはFACTOGEL樹脂(Tosoh Bioscience,Montgomeryville,PA)であるがこれらに限定されない)である。
【0130】
本発明の方法において使用され得る他のリガンドとしては、例えば、アミロイド斑と相互作用するリガンド、例えば、Congo:E;Led(Ingrosso,L.ら、Congo Red:Prolongs the Incubation Period in Scrapie−infected Hamsters.Virology 69:506−508(1995));1,4−ヨード,4−デオキシドキソルビシン(Tagliavini,F.ら、Effectiveness of Anthracycline Against Experimental Prion Diseases in Syrian Hamsters.Science 276:1119−1122(1997));アンホテリシン13、ポルフィリン(porphyrin)およびフタロシアニン(Priola,S.A.ら、Porphyrin and Phthalocyanine Antiscrapie Compounds,Science 287:1503−1506(2000));金属(Stockerら、Biochemistry,37,7185−7193(1998));PrPと相互作用して複合体を形成するペプチド(Prusinerらに対する米国特許第5,750,361号およびSolo,C.ら、Reversion of Prion Protein Conformational Changes in Synthetic p−sheet Breaker Peptides,Lances,355:192−197(2000)を参照のこと);ヘパリンおよび他の多硫酸化(polysulphated)ポリアニオン(Caughey,B.ら、Binding of the Protease−sensitive Form of Prion Protein PrP to Sulphated Glycosaminoglycan and Congo Red,J.Virology 68:2135−2141(1994));抗体(Kascsak,R.J.ら、Immunodiagnosis of Prion Disease,Immunological Invest.26:259−268(1997));ならびに他のタンパク質、例えば、プラスミノゲン(Fischer,M.B.ら、Binding of Disease−associated Prion Protein to:Plasminogen.,Nature 408:479−483(2000))が挙げられる。
【0131】
上記リガンドは、任意の支持材料に接着され得る。本明細書中で使用される「支持材料」とは、リガンドおよび該リガンドに結合したタンパク質を組成物の残りの部分から分離する物理的手段または化学的手段を提供し得る任意の化合物または材料のことを指す。その支持材料は、粒状または非粒状、可溶性または不溶性、多孔性または非多孔性であり得る。
【0132】
支持材料の例としては、天然に存在するポリマー、例えば、多糖(例えば、アガロース、アルギネート、カラギナン、キチン、セルロース、デキストランまたはデンプン);合成ポリマー(例えば、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリアクロレイン、ポリビニルアルコール、ポリメチルアクリレート、パーフルオロカーボン);無機化合物(例えば、シリカ、ガラス、珪藻土(kieselquhr)、アルミナ、酸化鉄または他の金属酸化物)または2種以上の天然に存在するポリマー、合成ポリマーもしくは無機化合物の任意の組み合わせからなる共重合体が挙げられるがこれらに限定されない。液体分割において使用するための親和性−リガンドマトリックス結合体を提供する、ポリマー(例えば、デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールまたは加水分解デンプン)を含む可溶性支持材料もまた企図される。
【0133】
いくつかの実施形態において、支持材料は、固体支持体(例えば、カラム、ビーズ、膜、カートリッジ、フィルター、計深棒、マイクロタイタープレート、試験管、固体粉末、注型モジュールまたは押出成形されたモジュール、メッシュ、磁性粒子複合物)または他の任意の固体材料である。その固体材料は、物質(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルブテン)、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリエチレンテレフタレート、レーヨン、ナイロン、ポリ(ビニルブチレート)、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)、シリコーン、ポリホルムアルデヒド、セルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロースなど)でコーティングされ得る。あるいは、ゲルを形成する物質(例えば、タンパク質(例えば、ゼラチン)、リポ多糖類、シリケート、アガロースおよびポリアクリルアミド)が使用される。ポリマー(例えば、デキストラン、ポリアルキレングリコールまたは界面活性物質(例えば、リン脂質、長鎖(12〜24炭素原子)アルキルアンモニウム塩など))もまた使用され得る。リガンドは、支持材料に接着されるか、または支持材料全体に散在される。
【0134】
いくつかの実施形態において、支持材料は、活性化されたアガロース、シリカ、セルロース、ガラス、メタアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、スチレンジビニルベンゼン、Hyper Dまたはパーフルオロカーボンである。いくつかの実施形態において、支持材料は、商品名Toyopearl(Tosoh Bioscience LLC,156 Keystone Drive,Montgomeryville,PA I 18936,USAから入手可能)として販売されているタイプのメタアクリレート材料である。WO97/10887には、親和性リガンドを支持マトリックスに接着する方法、例えば、活性化する方法の使用、およびスペーサーを介して親和性リガンドをマトリックスに接着することにより(例えば縮合反応によって)、親和性リガンド−マトリックス結合体を形成する方法が記載されている。
【0135】
いくつかの実施形態において、リガンドおよび/または支持材料は、再利用可能である。いくつかの実施形態において、リガンドおよび/または支持材料は、単なる使い捨てである。
【0136】
リガンドのプリオン結合能は、リガンドにおける感染力価を測定することによって評価され得る。例えば、参照原液の段階希釈物を調製し、標準的なウエスタンブロットアッセイにおいて試験する。参照原液から観察された力価をバイオアッセイにおいて観察された対応する力価と比較する。次いで、式:力価[バイオアッセイ]=力価[ウエスタンブロット]+(線形回帰分析の切片)/(線形回帰分析の傾き)を用いて、ウエスタンブロット力価を感染力価に変換することができる。1mlあたりの感染力価が計算されたら、カラムに結合している総プリオンタンパク質を決定することができる。リガンドのプリオン結合能は、リガンドに直接結合したと観察されたプリオンタンパク質の量を用いて測定される。いくつかの実施形態において、リガンドのプリオン結合能は、リガンド1mlあたり少なくとも約2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.5または10.0log10ID50である。いくつかの実施形態において、リガンドのプリオン結合能は、リガンド1mlあたり少なくとも約10、10、10、10、10、10または10ID50である。
【0137】
ナノ粒子を作製する方法
アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含む組成物を作製する方法は、当該分野で公知である。例えば、実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤およびアルブミンを含むナノ粒子は、高剪断力(例えば、超音波処理、高圧均質化など)の条件下で調製され得る。これらの方法は、例えば、米国特許第5,916,596号;同第6,506,405号;同第6,749,868号および同第6,537,579号、ならびに米国特許公開番号2005/0004002および2007/0082838、ならびにPCT公開WO99/00113(これらの各々の全体が本明細書によって参考として援用される)に開示されている。
【0138】
1つの例示的な実施形態において、実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤(例えば、パクリタキセル)は、有機溶媒に溶解される。適当な有機溶媒としては、例えば、ケトン類、エステル類、エーテル類、塩素系溶媒および当該分野で公知の他の溶媒が挙げられる。例えば、有機溶媒は、塩化メチレンであり得る。いくつかの実施形態において、有機溶媒は、水不混和性の溶媒(例えば、クロロホルム)と水混和性の溶媒(例えば、水混和性のアルコール溶媒)との混合物(例えば、クロロホルム/メタノール、クロロホルム/エタノール、クロロホルム/プロパノールまたはクロロホルム/t−ブタノール)(例えば、約1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1もしくは9:1のいずれかの比(v/v)または約3:7、5:7、4:6、5:5、6:5、8:5、9:5、9.5:5、5:3、7:3、6:4もしくは9.5:0.5のいずれかの比(v/v)での混合物)であり得る。その溶液は、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)に加えられる。その混合物は、高圧均質化に供される(例えば、標準的な均質化デバイスを用いて)。そのエマルジョンは、約2〜約100サイクル(例えば、約5〜約50サイクルまたは約8〜約20サイクル(例えば、約8、10、12、14、16、18または20サイクルのいずれか))だけ高圧ホモジナイザーに通して循環され得る。次いで、有機溶媒が、この目的で知られている適当な装置(ロータリーエバポレーター、薄膜蒸発装置(thin file evaporators)、流下液膜式蒸発装置、ワイプ式薄膜蒸発装置(wiped film evaporator)、噴霧乾燥機などが挙げられるがこれらに限定されない)を利用した蒸発によって除去され得る。溶媒は、例えば、減圧下(例えば、約5mmHg、10mmHg、15mmHg、20mmHg、25mmHg、30mmHg、40mmHg、50mmHg、100mmHg、200mmHgまたは300mmHgのいずれか)において除去され得る。減圧下で溶媒を除去するために使用される時間の長さは、製剤の体積に基づいて調整され得る。例えば、300mLのスケールで作製される製剤の場合、溶媒は、約1〜約300mmHg(例えば、約5〜100mmHg、10〜50mmHg、20〜40mmHgまたは25mmHgのいずれか)で、約1〜約120分間(約5〜約60分間(例えば、約7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、18、20、25または30分間のいずれか)を含む)にわたって除去され得る。
【0139】
所望であれば、アルブミン溶液(例えば、プリオンが除去されたアルブミン溶液)を、分散物中のアルブミンと薬物(例えば、パクリタキセル)との比を調整するためまたは分散物中のタキサン(例えば、パクリタキセル)の濃度を調整するために、その分散物に加えてもよい。例えば、アルブミン溶液(例えば、25%w/v)と実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤(例えば、パクリタキセル)との比を約18:1、15:1、14:1、13:1、12:1、11:1、10:1、9:1、8:1、7.5:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:11、1:12、1:13、1:14、1:15、1:16、1:17または1:18のいずれかに調整するために、上記アルブミンが加えられ得る。例えば、分散物中の実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤(例えば、パクリタキセル)の濃度を約0.5mg/ml、1.3mg/ml、1.5mg/ml、2mg/ml、3mg/ml、4mg/ml、5mg/ml、6mg/ml、7mg/ml、8mg/ml、9mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、25mg/ml、30mg/ml、40mg/mlまたは50mg/mlのいずれかに調整するために、アルブミン溶液(例えば、25%w/v)または別の溶液が加えられる。分散物は、個別にまたは連続的に1つ以上のフィルター(例えば、1.2μm、0.8μm、0.45μmおよび0.22μmフィルター);その2つ以上の組み合わせ、または当該分野で公知の他の任意のフィルターとの組み合わせで濾過され得る。
【0140】
所望であれば、第2の治療薬(例えば、癌を処置するために有用な1つ以上の化合物)、抗菌剤(例えば、クエン酸塩またはエデト酸塩)、糖(例えば、スクロース)および/または安定化剤もまた、組成物中に含められ得る。この追加の薬剤は、組成物の調製中に実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤(例えば、パクリタキセル)および/もしくはアルブミンと混合され得るか、またはナノ粒子組成物が調製された後に加えられ得る。いくつかの実施形態において、その薬剤は、凍結乾燥前にナノ粒子組成物と混合される。いくつかの実施形態において、その薬剤は、凍結乾燥された組成物に加えられる。薬剤の添加によって組成物のpHが変化するいくつかの実施形態において、その組成物のpHは、通常、所望のpHに調整される(が必ずしもそうではない)。組成物の例示的なpH値は、例えば、約5〜約8.5の範囲内に含まれる。いくつかの実施形態において、組成物のpHは、約6を下回らないように調整される(例えば、約6.5、7または8(例えば、約8)のいずれかを下回らない値を含む)。
【0141】
下記でより詳細に論じられるように、プリオン除去処理は、製造プロセスと同時に行われ得る。例えば、プリオン除去処理は、アルブミンと実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤との混合物が形成された後、かつ、その混合物を高剪断条件に供する前に、行われ得る。いくつかの実施形態において、プリオン除去処理は、上記混合物が高剪断条件に供された後、かつ、有機溶媒の除去前に、行われ得る。いくつかの実施形態において、プリオン除去処理は、有機溶媒の除去後に行われる。いくつかの実施形態において、プリオン除去処理の前に、蒸発後の懸濁液に追加のアルブミンが加えられる。いくつかの実施形態において、プリオン除去処理は、無菌条件下で行われる。いくつかの実施形態において、プリオン除去処理は、同時に組成物を濾過滅菌するカートリッジを用いることによって行われる。
【0142】
プリオンをナノ粒子組成物または中間体組成物から除去する方法
本発明は、1つの局面において、プリオンタンパク質をナノ粒子組成物(例えば、上に記載された方法によって形成されたナノ粒子組成物)から除去する工程を包含する方法を提供する。別の局面において、ナノ粒子製造プロセス中に生成される中間体組成物(本明細書中以後、「中間体組成物」と呼ぶ)からプリオンタンパク質を除去する方法が提供される。
【0143】
通常、上記方法は、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含む組成物をプリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させる工程、ならびにそのリガンドおよび該リガンドに結合したタンパク質をナノ粒子組成物から除去する工程を包含する。このプロセスは、同じまたは異なるリガンドを用いて1回以上繰り返され得る。このプリオン除去処理では、同時に2つ以上のリガンドも使用され得る。
【0144】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子組成物または中間体組成物は、約100IU−ic/ml、90IU−ic/ml、50IU−ic/mlまたは10IU−ic/mlというプリオン感染性を有する。
【0145】
プリオン除去処理中に、リガンドは、ナノ粒子組成物または中間体組成物と接触され、ナノ粒子組成物中または中間体組成物中のプリオンタンパク質に結合することが可能になる。この結合に適した条件は、リガンドの性質およびプリオンタンパク質への結合特異性に基づいて、決定され得、また、リガンドがプリオンタンパク質に結合するのを促進するように最適化され得る。いくつかの実施形態において、結合は、約0℃〜約39℃の温度(例えば、約20℃〜約25℃を含む)において行われる。結合は、約4〜約10のpH(例えば、約5〜約9、約6〜約8、約6.8〜約7.5、約6.9〜約7.4または約7を含む)において行われ得る。必要に応じて、リガンドへの非特異的結合を減少させるためにブロッキング剤が使用され得る。
【0146】
接触工程の後、リガンドおよび該リガンドに結合したタンパク質は、組成物の残りの部分から除去される。その除去は、リガンド、および分離を促進するために使用される支持材料(もしあれば)の性質に応じて、種々の方法において行われ得る。例えば、リガンドおよび該リガンドに結合したタンパク質は、クロマトグラフィ(例えば、薄層クロマトグラフィ、カラムクロマトグラフィおよびバッチクロマトグラフィであるがこれらに限定されない);固体支持体および膜を用いた分離;リアクターを用いた分離;磁気分離、免疫分離;およびコロイド分離によって分離され得る。
【0147】
いくつかの実施形態において、リガンドは、ビーズまたは膜などの支持体に固定化され得、そしてその支持体は、ナノ粒子組成物または中間体組成物に接触される。リガンドが固定化された支持体は、プリオン−リガンド複合体を形成させるのに十分な条件下でナノ粒子組成物または中間体組成物に接触される。次いで、その固相を組成物から分離し、それによって、リガンドに結合したプリオンタンパク質をサンプルから除去する。例えば、1つの例示的な実施形態において、リガンドをクロマトグラフィカラムなどのカラムに固定化し、次いで、サンプル(例えば、ナノ粒子組成物)を、重力によって、または高圧液体クロマトグラフィカラムにおけるような加圧下で、カラムに通す。サンプル中のプリオンタンパク質は、カラムに固定化されたリガンドに結合し、通過したサンプルが回収され得る。このプロセスを、数回繰り返すことにより、所望の結果を得ることができる。
【0148】
カラムにおけるサンプル(例えば、ナノ粒子組成物または中間体組成物)の流速は、リガンドとサンプル中のプリオンタンパク質との結合を最大にするように調整され得る。いくつかの実施形態において、結合は、約0.1ml/分〜約5.0ml/分、約0.1ml/分〜約2.5ml/分、約0.1ml/分〜約0.25ml/分、約0.25/分〜約0.5ml/分、約0.5ml/分〜約1.0ml/分、約1.0ml/分〜約1.5ml/分、約1.5ml/分〜約2.0ml/分、約2.0ml/分〜約2.5ml/分、約2.5ml/分〜約3.0ml/分、約3.0ml/分〜約3.5ml/分、約3.5ml/分〜約4.0ml/分、約4.0ml/分〜約4.5ml/分または約4.5ml/分〜約5.0ml/分(例えば、約0.1ml/分、0.25ml/分、0.5ml/分、1.0ml/分、1.5ml/分、1.7ml/分、1.8ml/分、1.9ml/分、2.0ml/分、2.1ml/分、2.3ml/分、2.5ml/分、2.7ml/分、3.0ml/分、3.5ml/分、4.0ml/分、4.5ml/分または5.0ml/分を含む)の流速で行われる。いくつかの実施形態において、流速は、少なくとも約10ml/分(例えば、少なくとも約20ml/分、30ml/分、40ml/分、50ml/分のいずれか)である。
【0149】
結合プロセスにおける総フロースルー体積または総通過時間もまた、リガンドとサンプル(例えば、ナノ粒子組成物または中間体組成物)中のプリオンタンパク質との結合を最大にするために調整され得る。いくつかの実施形態において、総フロースルー体積は、カラム体積の約50倍〜約1000倍(例えば、カラム体積の約50倍〜約500倍、カラム体積の約100倍〜約600倍またはカラム体積の約200倍〜約800倍を含む)である。いくつかの実施形態において、総フロースルー体積は、カラム体積の約100倍である。他の実施形態において、総フロースルー体積は、カラム体積の約500倍である。いくつかの実施形態において、総通過時間は、約1時間〜約30時間(例えば、約2時間〜約25時間、約3時間〜約20時間または約3時間〜約17時間を含む)である。いくつかの実施形態において、総通過時間は、約3時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、14時間、16時間、17時間、18時間、19時間または20時間のいずれかである。いくつかの実施形態において、総通過時間は、約24時間超である。いくつかの実施形態において、総通過時間は、約8時間未満(例えば、7、6、5、4、3、2、1または0.5時間未満のいずれかを含む)である。
【0150】
あるいは、まず、リガンドが、プリオン−リガンド複合体を形成させるのに十分な条件下でナノ粒子組成物または中間体組成物に接触され得る。次いで、そのプリオン−リガンド複合体を、親和性に基づくクロマトグラフィなどのカラムを用いることによって除去する。分離を促進するために、リガンドは、結合パートナーに結合体化され得、その結果、リガンド/プリオン複合体は、結合パートナーを認識する分子を備えるアフィニティーカラムを用いることによって除去され得る。
【0151】
バッチクロマトグラフィまたはカラムクロマトグラフィに加えて、プリオンタンパク質結合のためのリガンドの使用の種々の設定、変法およびバリエーションもまた構想される。そのようなバリエーションおよび変法としては:バッチプロセス、連続プロセス、移動床クロマトグラフィプロセス;低圧、中圧もしくは高圧プロセス;またはスモールスケール、ミディアムスケールもしくはラージスケールプロセスが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、リガンドは、膜上、繊維上、ビーズ上に存在するか、不織メッシュに含浸されるか、またはフィルターハウジング内に入れられたコーティング繊維の上に存在する。
【0152】
いくつかの実施形態において、除去工程は、収量損失、ならびに/またはアルブミンの特性および/もしくは安定性の変化を著しくもたらさない。実際的には、元の生物学的状態でのアルブミンの回収は、少なくとも50%超のレベル(例えば、80%もしくは90%またはそれ以上を含む)で実質的に維持されるべきである。いくつかの実施形態において、プリオンプロセスからのアルブミンの回収率は、約80%、90%、95%または99%のいずれかよりも高い。いくつかの実施形態において、ナノ粒子組成物中のアルブミンの濃度は、プロセス中の非特異的結合およびアルブミンの損失を最小にするために、プリオン除去工程の前に調整されるかまたは制御される。例えば、アルブミンの濃度は、約1%〜約50%、約5%〜約25%、約5%〜約30%、約5%〜約40%、約5%〜約10%、約10%〜約15%、約15%〜約20%、約20%〜約25%、約25%〜約30%などの範囲内(例えば、約5%、10%、15%、20%、25%または30%のアルブミンを含む)であり得る。
【0153】
いくつかの実施形態において、除去工程は、収量損失、ならびに/または組成物中のナノ粒子の特性および/もしくは安定性の変化を著しくもたらさない。
【0154】
いくつかの実施形態において、除去工程は、収量損失、ならびに/または組成物中の実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤の特性もしくは充填性の変化を著しくもたらさない。
【0155】
いくつかの実施形態において、除去工程は、組成物中のアルブミンと実質的に水に溶けない薬理学的物質との比の変化を著しくもたらさない。
【0156】
プリオン除去処理の浄化率を測定するために、プリオンが除去された組成物が解析され得る。浄化率を測定するために、プリオンタンパク質が結合したリガンドもまた解析され得る(直接または溶出後に)。
【0157】
プリオンタンパク質の除去は、プリオンタンパク質レベルの低下および/または感染性の低下に基づいて判定され得る。いくつかの実施形態において、プリオンタンパク質の少なくとも約50%(例えば、少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%を含む)が、ナノ粒子組成物から除去される。いくつかの実施形態において、除去後のアルブミン組成物の感染性は、ナノ粒子組成物の感染性の少なくとも約10×、20×、30×、40×、50×、80×、100×、200×、500×、1000×、10×、10×、10×低い。
【0158】
いくつかの実施形態において、段階的な感染性を用いることにより、プリオン除去処理の浄化率が測定される。サンプルの段階希釈物が生成され、希釈物は、感染活性について、例えばアッセイ動物において調べられる。その動物の半数が感染する希釈度が、感染力価である。例えば、5倍希釈が必要である場合、サンプルは、5logの感染性を有すると定義され得る。ナノ粒子組成物のlog感染性と除去後のナノ粒子組成物のlog感染性とを比較することによって、プリオン除去処理の浄化率が決定され得る。いくつかの実施形態において、プリオン除去方法によって、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、3または4、5、6、7、8、9または10logのいずれか1つの感染性の減少がもたらされる。
【0159】
いくつかの実施形態において、プリオン除去処理の浄化率は、プリオン除去方法に対する本明細書中に記載される工程に従うことによる感染性材料を用いたスパイク実験に基づいて測定される。適当なスパイク物質としては、脳ホモジネート、ミクロソーム、カベオラ様ドメイン、精製PrPscおよびプリオン原線維が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、スパイク物質は、洗浄剤に可溶性(例えば、サルコシルに可溶性)である。いくつかの実施形態において、組成物中のスパイク比率は、約0.001%〜約5%、約0.001%〜約0.25%、約0.001%〜約0.1%、約0.001%〜約0.005%、約0.005%〜約0.075%、約0.075%〜約0.01%、約0.01%〜約0.1%、約0.1%〜約0.5%、約0.5%〜約0.75%、約0.75%〜約1%、約1%〜約2%、約2%〜約3%または約3%〜約5%の範囲内(例えば、約0.001%、0.005%、0.075%、0.01%、0.1%、0.5%、0.75%、1%、2%、3%または5%を含む)である。
【0160】
いくつかの実施形態において、プリオン除去処理の浄化率を測定するために減少係数(RF)が使用される。RFは、式:
RF=(V×T)/(V×T
または
Log10[RF]=[Log10(V)+Log10(T)]−[Log10(V)+Log10(T)]
を用いて計算され得る。式中、VおよびTは、それぞれ最初のアルブミン組成物の体積および力価であり、VおよびTは、除去後のアルブミン組成物の体積および力価である。減少係数は、最後の計算の後に小数第1位に丸められ得る。いくつかの実施形態において、少なくとも約1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5または8.0log10感染性という減少係数のプリオンタンパク質が、最初のアルブミン組成物から除去される。例えば、プリオンタンパク質は、20%アルブミン組成物にスパイクされた0.5%サルコシル可溶性画分において2.5log10と等しいかまたはそれより高い減少係数だけ除去される。別の例として、プリオンタンパク質は、25%アルブミン組成物にスパイクされた0.5%サルコシル可溶性画分において2.0log10と等しいかまたはそれより高い減少係数だけ除去され得る。
【0161】
プリオンの除去は、標準的なウエスタンブロット解析によって評価され得る。例えば、まず、結合後のリガンドを、すべてのPrPcを消化するがPrPscを消化しないプロテイナーゼKで処理し得る。次いで、その消化物をSDSゲルにおいて泳動し、ニトロセルロースのシートまたはPVDF膜にトランスブロットする。次いで、分離されたPrPscバンドを、3F4または6H4を用いて可視化する。3F4は、ヒト、ハムスターおよびネコ由来の残基109〜112PrPと反応する。1つの例示的な実施形態において、0.6μg/mlという濃度で最低1時間インキュベーションを行い、その後、過剰の抗体を洗い流し、膜をウサギ抗マウス西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体(1:1000希釈)とともに最低1時間インキュベートした。その膜をTTBSでしっかり洗浄した後、高感度化学発光を用いて現像した。いくつかの実施形態において、プリオンタンパク質の除去は、Guideline for the Investigation of Manufacturing Processes for Plasma−Derived Medicinal Products with Regard to vCJD Risk(CPMP5136/03)に従って評価される。
【0162】
プリオン除去処理によって作製される組成物もまた本明細書中で企図される。したがって、いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含み、さらにプリオンタンパク質に結合することができるリガンドを含む組成物が提供される。いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子と、本明細書中に記載される1つ以上の支持材料などの支持材料に接着されたプリオンタンパク質に結合することができるリガンドとを含む混合物が提供される。いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物が充填されたカラムが提供され、ここで、そのカラムは、プリオンタンパク質に結合することができるリガンドを備える。いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子、ならびにプリオン(prior)タンパク質に結合することができるリガンドを含む樹脂を含む組成物が提供される。例えば、いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子ならびにDVR樹脂を含む組成物が提供される。いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子ならびにPRDT樹脂を含む組成物が提供される。
【0163】
いくつかの実施形態において、水性アルブミン溶液と有機溶媒に分散された実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤との混合物を含み、さらにプリオンタンパク質に結合することができるリガンドを含む組成物が提供される。いくつかの実施形態において、水性アルブミン溶液と有機溶媒に分散された実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤との混合物、ならびに本明細書中に記載される1つ以上の支持材料などの支持材料に接着されたプリオンタンパク質に結合することができるリガンドを含む組成物が提供される。いくつかの実施形態において、水性アルブミン溶液と有機溶媒に分散された実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤との混合物を含む組成物が充填されたカラムが提供され、ここで、そのカラムは、プリオンタンパク質に結合することができるリガンドを備える。
【0164】
本明細書中に記載される方法によって作製される組成物もまた提供される。その組成物は、いくつかの実施形態において、プリオン除去処理に供されていない組成物と生物学的に等価である。
【0165】
ナノ粒子組成物
本明細書中に記載されるナノ粒子組成物は、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤(例えば、パクリタキセル)を含む(様々な実施形態では、それらから本質的になる)ナノ粒子を含む。水難溶性薬物(例えば、タキサン)のナノ粒子は、例えば、米国特許第5,916,596号;同第6,506,405号;同第6,749,868号および同第6,537,579号、ならびに米国特許公開番号2005/0004002および2007/0082838、ならびにPCT特許出願WO08/137148(これらの各々の内容の全体が本明細書中で援用される)に開示されている。
【0166】
いくつかの実施形態において、組成物は、約1000ナノメートル(nm)を超えない(例えば、約900、800、700、600、500、400、300、200および100nmのいずれかを超えない)平均直径または中間直径(mean diameter)を有するナノ粒子を含む。いくつかの実施形態において、ナノ粒子の平均直径または中間直径は、約200nmを超えない。いくつかの実施形態において、ナノ粒子の平均直径または中間直径は、約150nmを超えない。いくつかの実施形態において、ナノ粒子の平均直径または中間直径は、約100nmを超えない。いくつかの実施形態において、ナノ粒子の平均直径または中間直径は、約20〜約400nmである。いくつかの実施形態において、ナノ粒子の平均直径または中間直径は、約40〜約200nmである。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、濾過滅菌可能である。
【0167】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される組成物中のナノ粒子は、約200nmを超えない平均直径(例えば、約190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70または60nmのいずれか1つを超えない平均直径を含む)を有する。いくつかの実施形態において、組成物中の全ナノ粒子の少なくとも約50%(例えば、少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%または99%のいずれか1つ)は、約200nmを超えない直径(例えば、約190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70または60nmのいずれか1つを超えない直径を含む)を有する。いくつかの実施形態において、組成物中の全ナノ粒子の少なくとも約50%(例えば、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%または99%のいずれか1つ)は、約20〜約200nm(例えば、約30〜約180nmのいずれか1つ、ならびに約40〜約150、約50〜約120および約60〜約100nmのいずれか1つを含む)の範囲内に入る。
【0168】
いくつかの実施形態において、組成物のナノ粒子部分におけるアルブミンの少なくとも約5%(例えば、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%のいずれか1つを含む)は、架橋されている(例えば、1つ以上のジスルフィド結合によって架橋されている)。
【0169】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)でコーティングされた実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤(例えば、パクリタキセル)を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を非ナノ粒子の形態で含み、ここで、その組成物中の実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤の少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%のいずれか1つが、ナノ粒子の形態である。いくつかの実施形態において、ナノ粒子中の実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤は、そのナノ粒子の約50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%または99重量%のいずれか1つより多くを占める。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、非ポリマーマトリックスを有する。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、ポリマー材料(例えば、ポリマーマトリックス)を実質的に含まない実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤のコアを含む。
【0170】
いくつかの実施形態において、組成物は、その組成物のナノ粒子と非ナノ粒子の両方の部分においてアルブミンを含み、ここで、その組成物中のアルブミンの少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%のいずれか1つが、その組成物の非ナノ粒子の部分に存在する。
【0171】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子組成物は、界面活性物質(例えば、Cremophor(登録商標)、Tween80、または実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤の投与のために使用される他の有機溶媒)を実質的に含まない(例えば、含まない)。いくつかの実施形態において、ナノ粒子組成物は、約20%未満、15%未満、10%未満、7.5%未満、5%未満、2.5%未満、1%未満のいずれか1つまたはそれ以下の有機溶媒を含む。いくつかの実施形態において、ナノ粒子組成物中のアルブミンと実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤との重量比は、約18:1またはそれ以下(例えば、約15:1またはそれ以下、例えば、約10:1またはそれ以下)である。いくつかの実施形態において、組成物中のアルブミンと実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤との重量比は、約1:1〜約18:1、約2:1〜約15:1、約3:1〜約13:1、約4:1〜約12:1、約5:1〜約10:1のいずれか1つの範囲内に入る。いくつかの実施形態において、組成物のナノ粒子部分におけるアルブミンと実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤との重量比は、約1:2、1:3、1:4、1:5、1:10、1:15のいずれか1つまたはそれ以下である。いくつかの実施形態において、組成物中のアルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)と実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤との重量比は、以下:約1:1〜約18:1、約1:1〜約15:1、約1:1〜約12:1、約1:1〜約10:1、約1:1〜約9:1、約1:1〜約8:1、約1:1〜約7:1、約1:1〜約6:1、約1:1〜約5:1、約1:1〜約4:1、約1:1〜約3:1、約1:1〜約2:1または約1:1のいずれか1つである。
【0172】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子組成物は、上記の特性の1つ以上を備える。
【0173】
本明細書中に記載されるナノ粒子は、乾燥製剤(例えば、凍結乾燥された組成物)中に存在してもよいし、生体適合性の媒質中に懸濁されていてもよい。適当な生体適合性の媒質としては、水、緩衝水性媒質、食塩水、緩衝食塩水、必要に応じて緩衝されるアミノ酸溶液、必要に応じて緩衝されるタンパク質溶液、必要に応じて緩衝される糖溶液、必要に応じて緩衝されるビタミン溶液、必要に応じて緩衝される合成ポリマー溶液、脂質含有エマルジョンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0174】
いくつかの実施形態において、薬学的に許容可能なキャリアは、ヒト血清アルブミンを含む。ヒト血清アルブミン(HSA)は、Mr65Kの高度に可溶性の球状タンパク質であり、585アミノ酸からなる。HSAは、血漿中で最も豊富なタンパク質であり、ヒト血漿のコロイド浸透圧の70〜80%を占める。HSAのアミノ酸配列は、合計17個のジスルフィド架橋、1つの遊離チオール(Cys34)および単一のトリプトファン(Trp214)を含む。HSA溶液の静脈内での使用は、血液量減少性ショック(hypovolumic shock)の予防および処置のため、ならびに新生児高ビリルビン血症の処置における交換輸血と併用して、必要とされている。ウシ血清アルブミンなどの他のアルブミンも企図される。そのような非ヒトアルブミンの使用は、例えば、非ヒト哺乳動物において(例えば、獣医学において(家庭内のペットおよび農業の状況を含む))これらの組成物を使用する状況では適切であろう。
【0175】
ヒト血清アルブミン(HSA)は、複数の疎水性結合部位(HSAの内因性リガンドである脂肪酸に対しては合計8つ)を有し、実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤、特に、中性および負に帯電した疎水性化合物の多様なセットに結合する。2つの高親和性の結合部位が、HSAのサブドメインIIAおよびIIIAに存在すると提唱されており、それらは、極性リガンドの形に対する接着点として機能する帯電したリジン残基およびアルギニン残基を表面付近に有する非常に細長い疎水性ポケットである。
【0176】
組成物中のアルブミンは、通常、実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤に対するキャリアとして働き、すなわち、組成物中のアルブミンのおかげで、実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤は、アルブミンを含まない組成物よりも容易に水性媒質に懸濁可能になるか、またはその懸濁を維持するのが助けられる。このことにより、実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を可溶化するために毒性のある溶媒(または界面活性物質)の使用を回避することができ、それによって、個体(例えば、ヒト)への実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤の投与の1つ以上の副作用を低減することができる。したがって、いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、Cremophor(Cremophor EL(登録商標)(BASF)を含む)などの界面活性物質を実質的に含まない(例えば、含まない)。いくつかの実施形態において、ナノ粒子組成物は、界面活性物質を実質的に含まない(例えば、含まない)。組成物中のCremophorまたは界面活性物質の量が、ナノ粒子組成物が個体に投与されたときにその個体において1つ以上の副作用を引き起こすのに十分でない場合、その組成物は、「Cremophorを実質的に含まない」または「界面活性物質を実質的に含まない」。
【0177】
本明細書中に記載される組成物中のアルブミンの量は、組成物中の他の構成要素に応じて変動し得る。いくつかの実施形態において、組成物は、実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を水性懸濁液中で(例えば、安定なコロイド懸濁液(例えば、ナノ粒子の安定な懸濁液)の形態で)安定化するのに十分な量でアルブミンを含む。いくつかの実施形態において、アルブミンは、水性媒質中における、実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤の沈降速度を低下させる量で存在する。粒子含有組成物の場合、アルブミンの量は、実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤のナノ粒子のサイズおよび密度にも左右される。
【0178】
実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤が、長時間(例えば、少なくとも約0.1、0.2、0.25、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、24、36、48、60または72時間のいずれか)にわたって水性媒質中に懸濁されたまま(例えば、目に見える沈殿または沈降なく)である場合、その実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤は、水性懸濁液中で「安定化されている」。懸濁液は、通常、個体(例えば、ヒト)への投与に適しているが、必ずしもそうではない。懸濁液の安定性は、通常、貯蔵温度(例えば、室温(例えば、20〜25℃)または冷蔵条件(例えば、4℃))において評価される(が必ずしもそうではない)。例えば、懸濁液を調製した約15分後に、裸眼で見えるフロキュレーションもしくは粒子凝集を示さないか、または1000倍の光学顕微鏡下において観察されたときにフロキュレーションもしくは粒子凝集を示さない場合、その懸濁液は、貯蔵温度において安定である。安定性は、加速試験条件下(例えば、約40℃を超える温度)でも評価され得る。
【0179】
いくつかの実施形態において、アルブミンは、ある特定の濃度で実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を水性懸濁液中に安定化するのに十分な量で存在する。例えば、組成物中の実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤の濃度は、約0.1〜約100mg/ml(例えば、約0.1〜約50mg/ml、約0.1〜約20mg/ml、約1〜約10mg/ml、約2mg/ml〜約8mg/ml、約4〜約6mg/ml、約5mg/mlのいずれかを含む)である。いくつかの実施形態において、実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤の濃度は、少なくとも約1.3mg/ml、1.5mg/ml、2mg/ml、3mg/ml、4mg/ml、5mg/ml、6mg/ml、7mg/ml、8mg/ml、9mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、25mg/ml、30mg/ml、40mg/mlおよび50mg/mlのいずれかである。いくつかの実施形態において、アルブミンは、界面活性物質(例えば、Cremophor)の使用を回避する量で存在し、その結果、組成物は、界面活性物質(例えば、Cremophor)を含まないかまたは実質的に含まない。
【0180】
いくつかの実施形態において、液体の形態の組成物は、約0.1%〜約50%(w/v)(例えば、約0.5%(w/v)、約5%(w/v)、約10%(w/v)、約15%(w/v)、約20%(w/v)、約25%(w/v)、約30%(w/v)、約40%(w/v)または約50%(w/v))のアルブミンを含む。いくつかの実施形態において、液体の形態の組成物は、約0.5%〜約5%(w/v)のアルブミンを含む。
【0181】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子組成物中のアルブミンの重量比、例えば、アルブミンと実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤との重量比は、十分な量の実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤が細胞に結合するかまたは細胞によって運搬されるような重量比である。アルブミンと実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤との重量比は、アルブミンと実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤との種々の組み合わせに対して最適化されなければならないが、通常、アルブミンの重量比、例えば、アルブミンと実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤との重量比(w/w)は、約0.01:1〜約100:1、約0.02:1〜約50:1、約0.05:1〜約20:1、約0.1:1〜約20:1、約1:1〜約18:1、約2:1〜約15:1、約3:1〜約12:1、約4:1〜約10:1、約5:1〜約9:1または約9:1である。いくつかの実施形態において、アルブミンと実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤との重量比は、約18:1またはそれ以下、15:1またはそれ以下、14:1またはそれ以下、13:1またはそれ以下、12:1またはそれ以下、11:1またはそれ以下、10:1またはそれ以下、9:1またはそれ以下、8:1またはそれ以下、7:1またはそれ以下、6:1またはそれ以下、5:1またはそれ以下、4:1またはそれ以下および3:1またはそれ以下のいずれかである。
【0182】
いくつかの実施形態において、アルブミンは、著しい副作用なく組成物が個体(例えば、ヒト)に投与されるのを可能にする。いくつかの実施形態において、アルブミンは、ヒトへの実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤の投与の1つ以上の副作用を低減するのに有効な量で存在する。用語「実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤の投与の1つ以上の副作用を低減する」とは、実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤によって引き起こされる1つ以上の望ましくない作用、ならびに実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を送達するために使用される送達ビヒクル(例えば、実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を注射に適するものにする溶媒)によって引き起こされる副作用の低減、軽減、排除または回避のことを指す。そのような副作用としては、例えば、骨髄抑制、神経毒性、過敏症、炎症、静脈刺激、静脈炎、疼痛、皮膚過敏、末梢神経障害、好中球減少性発熱、アナフィラキシー反応、静脈血栓症、血管外遊出およびそれらの組み合わせが挙げられる。しかしながら、これらの副作用は、単なる例示であって、実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤に関連する他の副作用または副作用の組み合わせも低減され得る。
【0183】
いくつかの実施形態において、組成物は、Abraxane(登録商標)(またはNab−パクリタキセル)を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、Abraxane(登録商標)(またはNab−パクリタキセル)である。Abraxane(登録商標)は、ヒトアルブミンUSPによって安定化されたパクリタキセルの製剤であり、直接注射可能な生理学的溶液に分散され得るものである。AbraxaneTMは、0.9%塩化ナトリウム注射剤または5%デキストロース注射剤などの適当な水性媒質に分散されるとき、パクリタキセルの安定なコロイド懸濁液を形成する。そのコロイド懸濁液中のナノ粒子の中間粒径は、約130ナノメートルである。HSAは、自由に水に可溶性であるので、AbraxaneTMは、希薄(0.1mg/mlパクリタキセル)から濃厚(20mg/mlパクリタキセル)にわたる広範な濃度(例えば、約2mg/ml〜約8mg/ml、約5mg/mlを含む)において再構成され得る。
【0184】
実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤
本明細書中に記載される組成物は、実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含む。例えば、約20〜25℃での水難溶性の薬剤の水溶解性は、約10mg/ml未満(例えば、約5、2、1、0.5、0.2、0.1、0.05、0.02または0.01mg/mlのいずれか未満を含む)であり得る。いくつかの実施形態において、実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤は、固体である。いくつかの実施形態において、実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤は、液体である。本明細書中に記載される実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤は、例えば、医薬品、診断用薬剤または栄養的価値のある薬剤であり得る。
【0185】
適当な医薬品としては、抗癌剤または抗悪性腫瘍剤、抗微小管剤、免疫抑制剤、麻酔薬、ホルモン、心臓血管障害において使用するための薬剤、抗不整脈薬、抗生物質、抗真菌薬、血圧降下薬、抗喘息薬、抗炎症剤、抗関節炎薬、血管作動剤、鎮痛薬/解熱薬、抗うつ薬、抗糖尿病薬、抗真菌剤、抗炎症薬、抗不安剤、免疫抑制剤、抗片頭痛剤、鎮静薬、抗狭心症薬、抗精神病薬、抗躁剤、抗関節炎剤、抗痛風剤、抗凝固薬、血栓溶解剤、抗線溶剤、血液レオロジー剤(hemorheologic agents)、抗血小板薬、抗痙攣薬、抗パーキンソン病剤、抗ヒスタミン剤/鎮痒剤、カルシウム調節に有用な薬剤、抗ウイルス剤、抗菌薬、抗感染薬、気管支拡張薬(bronchodialators)、ホルモン、血糖降下剤、抗高脂血症薬、抗潰瘍剤/抗逆流剤、抗嘔吐薬/制吐薬および油溶性ビタミン(例えば、ビタミンA、D、E、Kなど)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0186】
いくつかの実施形態において、実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤は、以下:チロシンキナーゼインヒビター、セリン(series)/トレオニンキナーゼインヒビター、ヘッジホッグインヒビター、トポイソメラーゼインヒビター、微小管構築のインヒビター、AKTキナーゼ経路のインヒビター、プロテアソームインヒビター、代謝拮抗物質、および白金に基づく薬剤のうちのいずれか1つである。
【0187】
いくつかの実施形態において、実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤は、抗悪性腫瘍剤である。いくつかの実施形態において、実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤は、化学療法剤である。
【0188】
適当な実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤としては、タキサン(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、オルタタキセルおよび他のタキサン)、エポチロン、カンプトテシン、コルヒチン、ゲルダナマイシン(geladanamycins)、アミオダロン、甲状腺ホルモン、アンホテリシン、コルチコステロイド、プロポフォール、メラトニン、シクロスポリン、ラパマイシン(シロリムス)および誘導体、タクロリムス、ミコフェノール酸、イホスファミド、ビノレルビン、バンコマイシン、ゲムシタビン、SU5416、チオテパ、ブレオマイシン、診断用放射線造影剤ならびにそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。発明性のある組成物において有用な他の実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤は、例えば、米国特許第5,916,596号、同第6,096,331号、同第6,749,868号および同第6,537,539号に記載されている。実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤の追加の例としては、水難溶性であり、かつThe Merck Indexの“Therapeutic Category and Biological Activity Index”(12th Edition,1996)に列挙されている化合物が挙げられる。
【0189】
いくつかの実施形態において、実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤は、パクリタキセル、ドセタキセル、CY196、オルタタキセルまたは他のタキサンもしくはタキサンアナログ、17−アリルアミノゲルダナマイシン(geldanamycin)(17−AAG)、18−誘導体化ゲルダナマイシン、カンプトテシン、プロポフォール、アミオダロン、シクロスポリン、エポチロン、ラディシコール(radicicol)、コンブレタスタチン(combretastatin)、ラパマイシン、アンホテリシン、リオチロニン、エポチロン、コルヒチン、チオコルヒチンおよびその二量体、甲状腺ホルモン、血管作動性腸管ペプチド、コルチコステロイド、メラトニン、タクロリムス、ミコフェノール酸、エポチロン、ラディシコール、コンブレタスタチンおよびそれらのアナログまたは誘導体のいずれかである(いくつかの実施形態では、それらからなる群から選択される)。いくつかの実施形態において、実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤は、パクリタキセル、ドセタキセル、CY196、オルタタキセルまたは他のタキサン、ゲルダナマイシン、17−アリルアミノゲルダナマイシン、チオコルヒチンおよびその二量体、ラパマイシン、シクロスポリン、エポチロン、ラディシコールおよびコンブレタスタチンのいずれかである(いくつかの実施形態では、それらからなる群から選択される)。いくつかの実施形態において、実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤は、ラパマイシンである。いくつかの実施形態において、実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤は、17−AAGである。いくつかの実施形態において、実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤は、チオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)である。いくつかの実施形態において、実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤は、タキサンである。いくつかの実施形態において、実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤は、パクリタキセルである。いくつかの実施形態において、実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤は、ドセタキセルである。いくつかの実施形態において、実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤は、CY196である。
【0190】
いくつかの実施形態において、実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤は、タキサンまたはその誘導体であり、それらとしては、パクリタキセル、ドセタキセルおよびIDN5109(オルタタキセル)またはそれらの誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、組成物は、非晶質および/またはアモルファスのタキサン(例えば、パクリタキセルまたはその誘導体)を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、無水タキサン(例えば、無水ドセタキセルまたはその誘導体)を使用することによって調製される。無水ドセタキセルは、ドセタキセルの三水和物または半水和物などのドセタキセル水和物を用いて生成され得る製剤よりも安定な製剤を生成すると示されている。
【0191】
ナノ粒子組成物中の他の構成要素
本明細書中に記載されるナノ粒子は、他の薬剤、賦形剤または安定剤を含む組成物中に存在し得る。例えば、ナノ粒子の負のゼータ電位を上昇させることによって安定性を高めるために、ある特定の負に帯電した構成要素が加えられ得る。そのような負に帯電した構成要素としては、グリココール酸、コール酸、ケノデオキシコール酸、タウロコール酸、グリコケノデオキシコール酸、タウロケノデオキシコール酸、リトコール酸(litocholic acid)、ウルソデオキシコール酸、デヒドロコール酸などからなる胆汁酸の胆汁酸塩;以下のホスファチジルコリン:パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン、パルミトイルリノレオイルホスファチジルコリン、ステアロイルリノレオイルホスファチジルコリン、ステアロイルオレオイルホスファチジルコリン、ステアロイルアラキドイルホスファチジルコリンおよびジパルミトイルホスファチジルコリンをはじめとした、レシチン(卵黄)に基づくリン脂質を含むリン脂質が挙げられるが、これらに限定されない。他のリン脂質としては、L−a−ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(distearyolphosphatidylcholine)(DSPC)、水素化ダイズホスファチジルコリン(HSPC)および他の関連化合物が挙げられる。負に帯電した界面活性物質または乳化剤(例えば、硫酸コレステリルナトリウムなど)もまた、添加物として適している。
【0192】
いくつかの実施形態において、組成物は、ヒトへの投与に適している。いくつかの実施形態において、組成物は、哺乳動物(例えば、獣医学の状況において、家庭内のペットおよび農業用動物)への投与に適している。ナノ粒子組成物の多種多様の適当な製剤が存在する(例えば、米国特許第5,916,596号および同第6,096,331号を参照のこと)。以下の製剤および方法は、単なる例示であって、決して限定ではない。経口投与に適した製剤は、(a)液体溶液(例えば、希釈剤(例えば、水、食塩水またはオレンジジュース)に溶解された有効量の化合物)、(b)カプセル、サシェまたは錠剤(各々が、所定の量の活性成分を固体または顆粒として含む)、(c)適切な液体における懸濁液、および(d)適当なエマルジョンからなり得る。錠剤の形態は、ラクトース、マンニトール、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、微結晶性セルロース、アカシア、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ならびに他の賦形剤、着色料、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存料、着香剤および薬理学的に適合性の賦形剤のうちの1つ以上を含み得る。不活性な基剤(例えば、ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシア)中に活性成分を含むトローチ剤、活性成分に加えて当該分野で公知であるような賦形剤を含むエマルジョン、ゲルなどと同様に、舐剤の形態は、香料、通常、スクロースおよびアカシアまたはトラガント中の活性成分を含み得る。
【0193】
適当なキャリア、賦形剤および希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、トラガント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、食塩水溶液、シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチルおよびヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ならびに鉱油が挙げられるが、これらに限定されない。上記の製剤は、さらに、滑沢剤、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、保存剤、甘味剤または着香剤を含み得る。
【0194】
非経口投与に適した製剤としては、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、およびその製剤を意図されるレシピエントの血液と適合性にする溶質を含み得る水性および非水性で等張性の無菌の注射溶液、ならびに懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤および保存料を含み得る水性および非水性の無菌懸濁液が挙げられる。それらの製剤は、単位用量または複数回用量の密封された容器(例えば、アンプルおよびバイアル)として提供され得、使用の直前に、注射用の無菌の液体賦形剤、例えば、注射用の水を加えることだけが必要なフリーズドライされた(凍結乾燥された)状態で保存され得る。即時調合の注射溶液および懸濁液は、先に記載された種類の無菌の散剤、顆粒剤および錠剤から調製され得る。注射可能な製剤が、好ましい。
【0195】
いくつかの実施形態において、組成物は、約4.5〜約9.0のpH範囲(例えば、約5.0〜約8.0、約6.5〜約7.5および約6.5〜約7.0のいずれかのpH範囲が挙げられる)を有するように製剤化される。いくつかの実施形態において、組成物のpHは、約6を下回らない(例えば、約6.5、7または8のいずれか(例えば、約8)を下回らないを含む)ように製剤化される。その組成物はまた、グリセロールなどの適当な張度調節物質(tonicity modifier)を加えることによって血液と等張性であるように作製され得る。
【0196】
プリオン非含有ナノ粒子組成物を使用する方法
本明細書中に記載されるプリオン非含有組成物を使用する方法も提供される。例えば、いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物を投与する方法が提供され、ここで、その組成物は、プリオンタンパク質を実質的に含まない。いくつかの実施形態において、疾患(例えば、癌)を処置する方法が提供され、その方法は、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む有効量の組成物を投与する工程を包含し、ここで、その組成物は、プリオンタンパク質を実質的に含まない。
【0197】
いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物を投与する方法が提供され、その組成物中のアルブミンは、プリオン除去処理を包含する方法によって得られたものであり、前記プリオン除去処理は、最初のアルブミン組成物をプリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させる工程を包含する。いくつかの実施形態において、プリオン除去処理は、前記リガンドおよび該リガンドに結合したタンパク質を前記アルブミン組成物から除去する工程をさらに包含する。いくつかの実施形態において、個体における疾患(例えば、癌)を処置する方法が提供され、その方法は、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む有効量の組成物をその個体に投与する工程を包含し、ここで、その組成物中のアルブミンは、プリオン除去処理を包含する方法によって得られたものであり、前記プリオン除去処理は、最初のアルブミン組成物をプリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させる工程を包含する。
【0198】
いくつかの実施形態において、個体は、vCJDを有する。いくつかの実施形態において、個体は、すでにプリオンタンパク質に感染している。いくつかの実施形態において、個体は、vCJDを有すると疑われるかまたはプリオンタンパク質に感染していると疑われる。いくつかの実施形態において、個体は、プリオンタンパク質の無症候性(asymptomic)保有者である。いくつかの実施形態において、個体は、少なくとも1回、輸血を受けたことがある。いくつかの実施形態において、個体は、少なくとも60歳であり、例えば、少なくとも約65、70または75歳である。いくつかの実施形態において、個体は、免疫低下している。いくつかの実施形態において、個体は、癌患者である。
【0199】
本明細書中で使用される用語「有効量」とは、特定の障害、状態または疾患を処置する(例えば、その症状の1つ以上を回復させる、緩和する、和らげるおよび/または遅延させる)のに十分な化合物または組成物の量のことを指す。癌または他の望まれない細胞の増殖に関して、有効量は、腫瘍を縮めるおよび/または腫瘍の成長速度を低下させる(例えば、腫瘍の成長を抑制する)のに十分な量を含む。いくつかの実施形態において、有効量は、発症を遅延させるのに十分な量である。いくつかの実施形態において、有効量は、出現および/または再発を予防するのに十分な量である。有効量は、1回以上の投与で投与され得る。
【0200】
本明細書中に記載される組成物(例えば、抗悪性腫瘍剤(例えば、タキサン、ラパマイシンおよび17−AAG)を含む組成物)によって処置される癌としては、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫および白血病が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中に記載される組成物によって処置され得る癌の例としては、扁平上皮細胞癌、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌および肺扁平上皮癌(扁平上皮NSCLCを含む)を含む)、腹膜癌、肝細胞癌、胃(gastric)癌または胃(stomach)癌(消化器癌を含む)、膵癌(例えば、進行膵癌)、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌(例えば、肝細胞癌腫)、膀胱癌、ヘパトーム(heptoma)、乳癌、結腸癌、メラノーマ、子宮内膜(endometrical)癌腫または子宮癌腫、唾液腺癌腫、腎臓癌または腎癌、肝臓癌、前立腺癌(例えば、進行前立腺癌)、外陰癌、甲状腺癌、肝臓癌腫、頭頸部癌、直腸結腸癌、直腸癌、軟部組織肉腫、カポジ肉腫、B細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽球性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL、巨大病変(bulky disease)NHL、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫およびワルデンシュトレームマクログロブリン血症を含む)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、ミエローマ、ヘアリーセル白血病、慢性骨髄芽球性白血病および移植後リンパ球増殖障害(PTLD)、ならびに母斑症に関連する異常な血管増殖、浮腫(例えば、脳腫瘍に関連する浮腫)およびメイグス症候群が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、転移性癌(すなわち、原発腫瘍から転移した癌)を処置する方法が提供される。いくつかの実施形態において、細胞増殖および/または細胞遊走を減少させる方法が提供される。いくつかの実施形態において、過形成を処置する方法が提供される。
【0201】
いくつかの実施形態において、進行期の癌を処置する方法が提供される。いくつかの実施形態において、例えば、進行乳癌、ステージIVの乳癌、局所進行乳癌および転移性乳癌をはじめとした、乳癌(HER2陽性またはHER2陰性であり得る)を処置する方法が提供される。いくつかの実施形態において、癌は、例えば、非小細胞肺癌(NSCLC、例えば、進行NSCLC)、小細胞肺癌(SCLC、例えば、進行SCLC)および肺における進行固形悪性腫瘍をはじめとした肺癌である。いくつかの実施形態において、癌は、卵巣癌、頭頸部癌、胃の悪性腫瘍、メラノーマ(転移性メラノーマを含む)、直腸結腸癌、膵癌および固形腫瘍(例えば、進行固形腫瘍)である。いくつかの実施形態において、癌は、乳癌、直腸結腸癌、直腸癌、非小細胞肺癌、非ホジキンリンパ腫(NHL)、腎細胞癌、前立腺癌、肝臓癌、膵癌、軟部組織肉腫、カポジ肉腫、カルチノイド癌腫(carcinoid carcinoma)、頭頸部癌、メラノーマ、卵巣癌、中皮腫、グリオーマ、神経膠芽腫、神経芽細胞腫および多発性骨髄腫のいずれかである(いくつかの実施形態では、それらからなる群から選択される)。いくつかの実施形態において、癌は、固形腫瘍である。
【0202】
これらの組成物の投与に適した個体は、水難溶性医薬品の性質、ならびに処置および/または予防される疾患/状態/障害に依存する。したがって、個体という用語は、脊椎動物、哺乳動物およびヒトのいずれかを含む。いくつかの実施形態において、個体は、哺乳動物であり、それらとしては、ヒト、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、げっ歯類または霊長類が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、個体は、ヒトである。
【0203】
個体(例えば、ヒト)に投与される発明性のある組成物の用量は、特定の組成物、投与方法および処置される特定の疾患によって変動し得る。用量は、望ましい反応(例えば、特定の疾患に対する治療的または予防的な反応)をもたらすのに十分であるべきである。例えば、組成物中のパクリタキセルの投薬量は、3週間のスケジュールで投与されるとき、100〜400mg/mの範囲内であり得るか、または毎週のスケジュールにおいて投与されるとき、50〜250mg/mの範囲内であり得る。さらに、規則正しいレジメン(例えば、毎日または1週間に数回)で投与される場合、投薬量は、約5〜75mg/mの範囲内であり得る。
【0204】
本明細書中に記載される組成物は、様々な経路(例えば、静脈内、動脈内、肺内、門脈内、肝臓内、経口、吸入、小胞内、筋肉内、気管内、皮下、眼内、鞘内、経粘膜および経皮が挙げられる)を介して個体(例えば、ヒト)に投与され得る。例えば、発明性のある組成物は、気道の状態を処置するために、吸入によって投与され得る。その組成物は、呼吸器の状態(例えば、肺線維症、閉塞性細気管支炎(broncheolitis obliterans)、肺癌、気管支肺胞癌腫など)を処置するために使用され得る。
【0205】
いくつかの実施形態において、組成物の投与は、プリオン除去フィルターと併用して行われる。
【0206】
ナノ粒子組成物の投与に関連する副作用を低減する方法もまた本明細書中に提供される。例えば、本発明は、水難溶性医薬品の投与に関連する様々な副作用を低減する方法を提供し、その副作用としては、骨髄抑制、神経毒性、過敏症、炎症、静脈刺激、静脈炎、疼痛、皮膚過敏、末梢神経障害、好中球減少性発熱、アナフィラキシー反応、血液学的毒性および脳または神経性の毒性、ならびにそれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、水難溶性医薬品の投与に関連する過敏症反応(例えば、重篤な発疹、蕁麻疹、潮紅、呼吸困難、頻拍などが挙げられる)を低減する方法が提供される。
【0207】
キットおよびシステム
本発明はまた、本方法において使用するためのキットも提供する。本発明のキットは、プリオン非含有ナノ粒子組成物を含む1つ以上の容器を備え、さらに、いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される方法のいずれかに従って使用するための指示書も備える。このキットはさらに、適当な個体の選択または処置に関する説明を備え得る。本発明のキットに供給される指示書は、代表的には、ラベルに記載された指示書または添付文書(例えば、キットに含められる紙のシート)であるが、機械読取り可能な指示書(例えば、磁気ディスクまたは光学式記憶ディスクに収められた指示書)もまた許容可能である。
【0208】
本発明のキットは、適当な包装の中に存在する。適当な包装としては、バイアル、ボトル、ジャー、可撓性のパッケージ(例えば、密閉されたMylarまたはプラスチックバッグ)などが挙げられるが、これらに限定されない。キットは、緩衝液および説明の情報などの追加の構成要素も必要に応じて提供し得る。
【0209】
ナノ粒子組成物の使用に関する指示書は、通常、意図される処置のための投薬量、投薬スケジュールおよび投与経路に関する情報を含む。容器は、単位用量、バルクパッケージ(例えば、複数回用量のパッケージ)または単位用量以下のものであり得る。例えば、長期間(例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、6週間、8週間、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月またはそれ以上のいずれか)にわたって個体を有効に処置するのに十分な投薬量の、本明細書中に開示されるような実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤(例えば、実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤)を備えるキットが提供され得る。キットはまた、複数の単位用量の実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤および薬学的組成物、ならびに使用するための指示書も備え得、薬局、例えば、院内薬局および調剤薬局(compounding pharmacies)での貯蔵および使用に十分な量で包装され得る。
【0210】
いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子組成物からプリオンタンパク質を除去するためのキットが提供され、そのキットは、プリオンタンパク質に結合することができるリガンドを備える。いくつかの実施形態において、そのキットはさらに、支持材料を備える。いくつかの実施形態において、そのキットはさらに、ナノ粒子組成物からプリオンを除去するためにリガンドを使用するための指示書を備える。
【0211】
本明細書中に記載される方法を行うためのシステムもまた提供される。例えば、いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むプリオン非含有ナノ粒子組成物を製造するためのシステムが提供され、前記システムは、1)ナノ粒子組成物を作製するための装置;および2)ナノ粒子組成物を作製するために使用されるアルブミンからプリオンタンパク質を除去するための装置を備える。いくつかの実施形態において、ナノ粒子組成物を作製するために使用される前記アルブミンからプリオンタンパク質を除去するための装置は、ナノ粒子組成物を作製するための装置に統合される。いくつかの実施形態において、ナノ粒子組成物を作製するための装置は、ナノ粒子組成物を作製するために使用されるアルブミンからプリオンタンパク質を除去するための装置から分離している。
【0212】
いくつかの実施形態において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むプリオン非含有ナノ粒子組成物を製造するためのシステムが提供され、前記システムは、1)ナノ粒子組成物を作製するための装置;および2)プリオンタンパク質を除去する(例えば、ナノ粒子の生成中に生成される中間体組成物または生成されたナノ粒子組成物から除去する)ための装置を備える。いくつかの実施形態において、プリオンタンパク質を除去するための装置は、ナノ粒子組成物を作製するための装置に統合される。いくつかの実施形態において、ナノ粒子組成物を作製するための装置は、プリオンタンパク質を除去するための装置から分離している。
【0213】
いくつかの実施形態が本発明の範囲内および精神内に存在し得ることを当業者は認識するだろう。
【0214】
本明細書中で引用されるすべての参考文献(刊行物、特許出願および特許を含む)は、各参考文献が、参考として援用されると個別かつ明確に示され、かつ本明細書中にその全体が示されたのと同程度に、本明細書によって参考として援用される。
【0215】
本発明を行うために本発明者らが知っている最良の形態を含む本発明の好ましい実施形態が、本明細書中に記載される。前述の説明を読めば、それらの好ましい実施形態の実施形態は当業者に明らかになり得る。本発明者らは、当業者が必要に応じてそのような実施形態を使用することを予想し、また、本発明者らは、本明細書中に明確に記載されるものとは別な方法で本発明が実施されることも意図している。したがって、本発明は、適用法が認めるように、本明細書に添付されている請求項に列挙されている内容の改変および等価物のすべてを包含する。さらに、すべての可能性のある実施形態における上に記載されたエレメントの任意の組み合わせは、本明細書中に別段示されないか、または文脈と明らかに矛盾しない限り、本発明によって包含される。
【0216】
本願の例示的な実施形態
1つの局面において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物が提供され、ここで、その組成物は、プリオンタンパク質を実質的に含まない。いくつかの実施形態において、組成物は、約100fg/ml未満のプリオン感染性を有する。いくつかの実施形態において、組成物は、上に記載された組成物のいずれか1つであり、ここで、その組成物は、約10IU−ic/ml未満のプリオン感染性を有する。いくつかの実施形態において、組成物は、上に記載された組成物のいずれか1つであり、ここで、その組成物は、タンパク質ミスフォールディング周期的増幅(PMCA)アッセイ基づくかまたはIPCRアッセイに基づいてプリオンタンパク質の存在を示さない。いくつかの実施形態において、組成物は、プリオンタンパク質に結合することができる痕跡量のリガンドをさらに含む上に記載された組成物のいずれか1つである。いくつかの実施形態において、組成物は、痕跡量の支持材料をさらに含む上に記載された組成物のいずれか1つである。
【0217】
別の局面において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物が提供され、ここで、その組成物中のアルブミンは、プリオン除去処理を包含する方法によって得られたものであり、前記プリオン除去処理は、最初のアルブミン組成物をプリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させる工程を包含する。いくつかの実施形態において、プリオン除去処理は、前記リガンドおよび該リガンドに結合したタンパク質を前記アルブミンおよび組成物から除去する工程をさらに包含する。いくつかの実施形態において、リガンドは、ペプチドである。いくつかの実施形態において、リガンドは、トリアジン(trazine)に基づく化合物である。
【0218】
別の局面において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物を作製する方法が提供され、前記方法は:a)プリオンタンパク質を最初のアルブミン組成物から除去する工程;b)プリオンが除去されたアルブミンを含む溶液と有機溶媒に分散された前記実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含む有機相とを含む混合物を高剪断条件に供する工程を包含する。いくつかの実施形態において、工程a)は:1)最初のアルブミン溶液をプリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させる工程を包含する。いくつかの実施形態において、工程a)は:2)リガンドおよび該リガンドに結合したタンパク質をアルブミン溶液から除去する工程をさらに包含する。いくつかの実施形態において、上記方法は、前記有機溶媒を混合物から除去する工程をさらに包含する、上に記載された方法のいずれかである。いくつかの実施形態において、前記有機溶媒の除去工程は、蒸発によるものである。いくつかの実施形態において、上記方法は、前記リガンドがペプチドである、上に記載された方法のいずれか1つである。いくつかの実施形態において、上記方法は、リガンドがトリアジンに基づく化合物である、上に記載された方法のいずれか1つである。いくつかの実施形態において、上記方法は、最初のアルブミン組成物が血液由来の生成物である、上に記載された方法のいずれか1つである。
【0219】
別の局面において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物を作製する方法が提供され、その方法は:a)前記実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含む有機相とアルブミン溶液とを含む混合物を高剪断条件に供する工程、およびb)前記混合物からプリオンタンパク質を除去する工程を包含する。いくつかの実施形態において、工程b)は:1)混合物をプリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させる工程を包含する。いくつかの実施形態において、工程b)は:2)リガンドおよび該リガンドに結合したタンパク質を前記混合物から除去する工程をさらに包含する。いくつかの実施形態において、リガンドは、ペプチドである。いくつかの実施形態において、リガンドは、トリアジンに基づく化合物である。
【0220】
請求項11〜23のいずれか1項に記載の方法によって作製される組成物も提供される。癌などの疾患を処置するための、上に記載された組成物のいずれか1つの使用も提供される。
【0221】
別の局面において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含み、プリオンタンパク質を含むと疑われる組成物からプリオンタンパク質を除去する方法が提供され、その方法は:a)その組成物をプリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させる工程、b)そのリガンドおよび該リガンドに結合したタンパク質を組成物から除去する工程を包含する。いくつかの実施形態において、リガンドは、ペプチドである。いくつかの実施形態において、リガンドは、トリアジンに基づく化合物である。上記方法の後に得られる組成物も提供される。
【0222】
別の局面において、アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含み、さらにプリオンタンパク質に結合することができるリガンドを含む、組成物が提供される。いくつかの実施形態において、リガンドは、ペプチドである。いくつかの実施形態において、リガンドは、トリアジンに基づく化合物である。
【0223】
以下の実施例は、本発明を例示するために提供されるものであって、限定するためのものではない。本明細書中に記載される実施例が、例示目的だけであること、およびそれに鑑みて様々な改変または変更が当業者に提案され、それらが本願の精神および範囲の中に含められるべきであることが、理解される。
【実施例】
【0224】
実施例1:プリオンタンパク質をアルブミン調製物から除去するためのアフィニティー吸着体の開発
本研究は、異なる2つの濃度(0.01%または0.005%)のスクレイピーハムスター脳ホモジネートでスパイクされた異なる2つの商業的に入手可能なアルブミン調製物(20%w/vまたは25%w/vアルブミンを含む)を4樹脂パネルに曝露することによってプリオン結合リガンドの4樹脂パネルをスクリーニングした。その4樹脂パネルは、以前に、25%アルブミンの存在下における良好なプリオン結合剤としてPRDT(Pathogen Removal and Diagnostic Technologies Inc;ProMetic Biosciences Ltd.,Cambridge,UK)によって同定されたものである。最適な樹脂の選択によって、アルブミンナノ粒子の生成へのプリオン低減工程の組み入れが最適化され得る。
【0225】
方法
6つのProtein Isolation Kit for Sorbent Identification(PIKSITM,ProMetic Biosciences Ltd)キットは、4種類のPRDT樹脂およびコントロール樹脂(Toyopearl Amino AMN31)の各々の12本のカラム(約0.5mL)とともに包装されていた。各樹脂のプリオンタンパク質への結合能を評価することを目指して、0.01%または0.005%のスクレイピーハムスター脳ホモジネート(SBH)でスパイクされた20%および25%アルブミンを含む溶液を各樹脂に3カラム連続形式で曝露した。樹脂性能の比較は、ウエスタンブロットおよびデンシトメトリーによって測定されたプリオンタンパク質への結合に基づいた。総タンパク質結合プロファイルを、SDS−PAGEゲルによって測定した。結合したタンパク質を、プリオンタンパク質結合の検出と総タンパク質結合の検出の両方のために樹脂から取り出した。280nmにおける吸光度を測定するNanoDrop(登録商標)ND−1000分光光度計を用いて、アルブミンの結合を測定した。ウエスタンブロットおよびSDS−PAGEゲルにおいて観察されたシグナルは、それぞれプリオンタンパク質の結合画分および総タンパク質に対応する。
【0226】
本発明において使用された市販のアルブミン調製物は、Albumin(Human)U.S.P.Human Albumin Grifols(登録商標)20%,Lot No.IBAB8MJ001およびAlbumin(Human),USP,25%溶液Baxter,Lot No.LA06D04AAだった。
【0227】
結果
ウエスタンブロットおよびSDS−PAGE
得られた結果は、4つすべての樹脂が、20%または25%ヒトアルブミン溶液にスパイクされたPrPscに結合したことを示している。ウエスタンブロットにおけるPrPscシグナル強度(図1〜3)は、プリオン結合が、DVRにおいて最も強く、それにYVHEA、SYAおよびD4樹脂が続いたことを示唆している。コントロール樹脂であるAMN31は、予想された強いシグナルを有した。DVR樹脂を使用することによって得られたシグナルのレベルは、高濃度のアルブミンがプリオン結合を干渉しなかったことを示唆している。
【0228】
試験された様々な条件においてDVR(図1)を使用したとき、より長い曝露時間を試験したときでさえも、第2および第3のカラムでは、検出可能なシグナルは観察されなかったことから、すべての検出可能なPrPscが第1のDVRカラムによって捕捉されたことが示唆される。
【0229】
他の樹脂については、第1のカラムにおけるシグナル強度はそれより弱く、そのシリーズの第2のカラムでもプリオンタンパク質が検出されたことから(図2および3)、プリオンタンパク質の結合に対するアルブミンの干渉の可能性が示唆される。3つすべてのリガンドが、第3のカラムにおいてプリオンシグナルを示さなかったことから、それらの樹脂が、SBHでスパイクされたアルブミン溶液からプリオンを選択的に除去することが可能であることが示唆される。ハムスター脳におけるPrPscの濃度は、250mg/mLアルブミン溶液にスパイクされた、0.01%SBHにおける約5ng/mLのPrPsc(アルブミンが50,000,000倍過剰となる)と等価である約50μg/gだった。
【0230】
クマシー染色されたSDS−PAGEゲルにおいて観察された総タンパク質のパターン(図1〜3)は、DVRが、残りのプリオン結合樹脂よりも一層低いレベルで総タンパク質と結合したことを示しているにもかかわらず、このことは、総タンパク質ゲルにおいて観察されたバンドのほとんどが脳ホモジネートスパイクに由来したという事実から、利点であると考えられる。予想どおり、DVRゲルにおいて確認できる1本のタンパク質バンドは、アルブミンと同様の見かけの分子量(66.5KDa)を有している。
【0231】
デンシトメトリー
SBHでスパイクされたアルブミン溶液中に存在するシグナルに対する、樹脂に結合したPrPscの濃度測定の(densitometric)シグナルの比を計算することによっても間接的にプリオン除去を評価した。DVR樹脂がプリオンに結合する能力は、ほぼすべての利用可能なPrPscを第1のカラムにおいて吸着するポジティブコントロール樹脂に匹敵するほどだった。プリオン結合に対する測定値として感染性の用量を用いると、0.5mLのDVRカラムは、SBHでスパイクされた10mLのアルブミン溶液中のプリオン(約10ID50と等価)を除去することができたことから、0.1%SBHは、約10ID50/mLを含むと考えられる。ウエスタンブロットにおいて観察された結果と同様に、DVRは、YVHEA、D4およびSYAよりもプリオン結合の最良の性能を有した。3種類の樹脂のすべてが、SBHでスパイクされたアルブミン溶液中に存在する任意の検出可能なプリオンタンパク質とさらに結合するために各シリーズの第2のカラムを必要とした。
【0232】
アルブミンの結合
タンパク質定量化のための吸光度280nmにおいてNanoDrop(登録商標)ND−1000分光光度計を用いて、アルブミン濃度を測定した。SBHでスパイクされたアルブミン溶液を4種類の樹脂(DVR、YVHEA、SYAおよびD4)およびコントロール樹脂(AMN31)の各々に通した後のアルブミンの濃度について、各フロースルーを測定した。0.01%または0.005%SBHスパイクの非存在下または存在下における20%および25%の上記市販アルブミン溶液のタンパク質濃度を、樹脂カラムに流す前に測定した。得られた結果を表3に示す。
【0233】
【表3】

上記市販アルブミン溶液の濃度は、特に、20%w/vアルブミン溶液を含む調製物に対して、商業的にラベル表示されている値よりも高く測定された。しかしながら、この研究は、比較値で論じられるので、これは問題ではなかった。3つの値の平均を得たところ、スパイクの量は、タンパク質濃度を測定する際の溶液中に存在するアルブミンの量と比べるとき、無視できると考えられた。SBHでスパイクされたアルブミン溶液を、表4および5に示されるような樹脂に通した後に、アルブミンの濃度を得た。
【0234】
【表4】

【0235】
【表5】

試験された樹脂のいずれもが、著しいアルブミンの損失を示さなかった。実際に、上記条件のほとんどについて、損失は検出されなかった。実測値は、約±5%のばらつきを示す。上記データから、アルブミンの損失が、試験された条件の範囲内のこのスケールにおいて上記樹脂から1つを選択するための因子になることはありそうもないことが示唆される。
【0236】
結論
得られた結果に基づくと、市販のアルブミン溶液からプリオンを除去するためには、試験された4種類の樹脂のうちDVRが、最良の樹脂である。この樹脂は、0.5mLカラムにおいておよそ10ID50を除去することができた。この値は、他の曝露に対して以前に行われた試みで得られた値と似ている。20個の20または25%アルブミン/樹脂を用いた試験された曝露の比において、アルブミンの損失はほとんど検出されなかった。この比は増加する可能性があるので、アルブミンの結合は、プロセス条件においてより少なくなるはずである。
【0237】
実施例2:パクリタキセルを含む製剤化された懸濁液およびヒトアルブミン溶液のプリオン除去の実行可能性研究
ナノ粒子組成物におけるプリオン除去技術の適用を、パクリタキセル(例えば、AbraxaneTM)を含む製剤化された懸濁液および様々なパーセンテージのアルブミン(%w/v)を含むヒトアルブミン溶液を用いて評価した。
【0238】
実験条件
研究の系
AbraxaneTMおよび糖−パクリタキセル製剤に対する製剤化された懸濁液を評価した。AbraxaneTMに対する製剤化された懸濁液(FS)は、上記製品から得られた蒸発後の(post−evaporated)懸濁液(PE)およびヒトアルブミン溶液(25%,Baxter,Deerfield,IL)を用いて製剤化されたものであり、これは、およそ7mg/mLパクリタキセルおよび56mg/mLヒトアルブミンを含んでいた。糖−パクリタキセル製剤に対する製剤化された懸濁液(FS)は、上記製品から得られた蒸発後の懸濁液(PE)、ヒトアルブミン溶液(25%,Baxter)、スクロース、塩化ナトリウムおよびエデト酸二ナトリウム二水和物を用いて製剤化されたものであり、これは、およそ7mg/mlパクリタキセル、56mg/mlヒトアルブミン;32mg/mlスクロース、8.4NaClmg/mlおよび0.07mg/mlEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を含んでいた。
【0239】
25%、20%および5%のヒトアルブミン溶液も評価した。25%または250mg/mlのヒトアルブミン溶液は、Baxterから入手し;20%または200mg/mlのヒトアルブミン溶液(例えば、Grifols(登録商標))は、Grifols Biologicals,Inc.(Los Angeles,CA)から入手した。ヒトアルブミン溶液5%は、25%ヒトアルブミン(Baxter)を注射用の滅菌水で希釈することによって作製した。
【0240】
プリオン除去カラム
本研究において使用されたプリオン除去カラム(1ml)は、ProMetic Biosciences,Ltd(Cambridge,UK)から供給される、Toyopearl Amino 650CU樹脂(サンプルAMN31)を備える商業的に入手可能なPIKSI(登録商標)(Protein isolation Kit for Sorbent Identification)キットカラムだった。
【0241】
フロースルー条件
製剤化懸濁液における研究について、総フロースルー体積は、約500mLであり、これは、カラム体積(1ml)の500倍だった。流速は、約0.5ml/分だった。総通過時間は、16時間超だった。サンプルは、2時間ごとに採取した。カラムの目詰まりは観察されなかった。
【0242】
アルブミン溶液における研究について、総フロースルー体積は、少なくとも100mLであり、これは、カラム体積(1ml)の100倍だった。流速は、約0.5ml/分だった。総通過時間は、3時間超だった。サンプルは、1時間ごとに採取した。カラムの目詰まりは観察されなかった。
【0243】
結果および考察
製剤化された懸濁液についてのプリオン除去の実行可能性研究の結果を表6および表7にまとめる。AbraxaneTMに対する製剤化された懸濁液についての物理的および化学的な試験結果は、粒径、pH、パクリタキセルアッセイ結果および不純物、ヒトアルブミンアッセイ結果ならびにヒトアルブミン組成に関して、カラム前の懸濁液とカラム後の懸濁液との間に著しい差がないことを示している。同様に、糖−パクリタキセル製剤に対する製剤化された懸濁液についての物理的および化学的な試験結果は、粒径、pH、パクリタキセルアッセイ結果および不純物、ヒトアルブミンアッセイ結果、ヒトアルブミン組成、スクロースならびにEDTAに関して、カラム前の懸濁液とカラム後の懸濁液との間に著しい差がないことを示している。
【0244】
【表6】

【0245】
【表7】

アルブミン溶液についてのプリオン除去の実行可能性研究の結果を表8にまとめる。ヒトアルブミンアッセイおよびヒトアルブミン組成に関して、カラム前の溶液とカラム後の溶液との間に著しい差はない。
【0246】
【表8−1】

本研究から、プリオン除去カラム処理が、ヒトアルブミン溶液、ならびにAbraxaneTMと糖−パクリタキセル製剤の両方に対する製剤化された懸濁液の物理的特性および化学的特性に対して悪影響を及ぼさないことが証明される。
【0247】
実施例3:20%アルブミンに対するプリオン低減樹脂によるTSE除去
本研究では、20%(w/v)アルブミン(Grifols(登録商標))におけるプリオン低減樹脂(PRDTカラム;ProMetic Biosciences,Ltd)によるTSE除去の可能性を評価した。TSE除去プロセス工程に対する出発物質を、モデルTSE物質でスパイクした。このプロセス工程は、VirusSure laboratories(Virusure Forschung und Entwicklung GmbH,Vienna,Austria)において行われた。プロセス工程の実施中に様々な画分を回収し、PrPscの検出のためにウエスタンブロットアッセイを用いて、そのプロセスのTSE除去能をTSE物質のレベルの測定値に基づいて計算した。
【0248】
本研究は、1)CPMP/BWP/268/95(1996年改訂版),Note for Guidance on Virus Validation Studies:The Design,Contribution,and Interpretation of Studies Validating the Inactivation and Removal of Viruses;2)CPMP/BWP/5136/03 Guideline on the Investigation of Manufacturing Processes for Plasma−Derived Medicinal Products with Regards to vCJD Risk;3)ENV/MC/CHEM(98)17に概要が示されているOECD Principles of Good Laboratory Practice(1997年改訂版);4)21 CFR part 58,Good Laboratory Practice,US FDA;5)EU directive 2004/9/EG,Inspection und Ueberpruefung der Guten Laborpraxis(GLP);6)EU Directive 2004/10/EG,Anwendung der Grundsaetze der guten Laborpraxis und zur Kontrolle ihrer Anwendung bei Versunchen mit chemischen Stoffen;7)Austrian BGBI.II,211.Verordnung,Chemikalien−GLP−Inspektionsverordnung,Jahrgang 2000;および8)Austrian BGBI.II,450.Verordnung,gute Laborpraxis 2006,Jahrgang 2006を含む上記のガイドラインに従い、それらを参照した。
【0249】
材料および方法
以下の試験物質、試薬および材料を、20%アルブミン(Grifols(登録商標))に対するプリオン低減樹脂(PRDTカラム)によるTSE除去を調べるために本研究の進行中に使用した。
【0250】
Grifols(登録商標)Albumin(ヒト)(USP20%溶液(Lot:IBAB7GX001/TA09/0122))を、スパイクランおよび干渉試験のために使用した。
【0251】
9%食塩水が充填された5mlのプリオン除去樹脂を備える使い捨てSepFastTMColumn(ProMetic Biosciences Ltd.)をプロセスラン(process run)のために使用した。
【0252】
様々な緩衝液を調製した。それらは、以下のものを含んでいた:
1)0.9%NaCL(9g/l)は、プリオン低減樹脂用の平衡緩衝液として調製された;
2)Tris緩衝食塩水(TBS)は、クロマトグラフィ後の樹脂の再懸濁液として調製された;
3)2M NaCl(116.88g/l)は、プリオン低減樹脂の再生緩衝液として調製された;
4)NaOH(0.1M、0.5Mおよび1.0M)緩衝液は、スパイクされた研究サンプルのpH調整および感染性材料のプロセス中間体の不活性化のために調製された;および
5)HCL(0.1Mおよび1.0M)緩衝液は、スパイクされた研究サンプルおよびプロセス中間体のpH調整のために調製された。
【0253】
263スクレイピー
263K株ハムスター順化スクレイピー(0.5%サルコシル処理済み)を本研究において使用した。ハムスター順化スクレイピーの263K株は、ハムスター脳における高力価という利点を提供する。10%脳ホモジネートについての代表的な力価は、10〜1010ID50単位/mlの範囲内である。この物質によって沈着されたPrPscタンパク質は、プロテイナーゼK消化に対して比較的抵抗性であることから、疾患に関連しない形態のPrPcタンパク質と識別できる可能性がある。ハムスター順化スクレイピーの種(seed)の263K株は、Dr.Robert Rohwerの研究室(Baltimore Research and Education Foundation,Mail Stop 151−A,10 North Greene Street,Baltimore,MD 21201,USA)から10%ホモジネートとして供給された。0.5%サルコシルで処理された画分を、この実験のために選択した。この画分は、0.5%サルコシルで処理した後、分画遠心法によって大きな凝集物を除去し、洗浄剤で可溶化されたフラグメントだけを上清中に残すことによって、粗脳ホモジネート(このホモジネートからはミクロソーム/サイトゾルの263K画分がすでに除去されている)から調製された。この0.5%サルコシルで処理された画分は、洗浄剤で可溶化された汚染物質を模倣するように(すなわち、溶媒洗浄剤を含むプロセスに見られるように)調製されたものであり、このタイプの画分は、ヒト血漿製品および組換え製品に対するプリオンクリアランス研究において広く使用されている。
【0254】
PrPscを検出するためのウエスタンブロットアッセイ
PrPscを検出するためのウエスタンブロットアッセイを、様々なサンプル中のTSEレベル(PrPsc)の半定量的測定のために使用した。ウエスタンブロットアッセイの測定範囲(dynamic range)は、通常、シグナルが失われる前は4〜5log10希釈の範囲内であり、よって、このアッセイは、ハムスターバイオアッセイよりも感度が低い。しかしながら、このウエスタンブロットアッセイは、生物医薬品製造プロセスによるプリオン除去を評価する際の有用なツールである。
【0255】
ウエスタンブロットアッセイでは、まず、サンプルをプロテイナーゼKで消化することにより、正常型のタンパク質であるPrPcを除去した(すべてのプロセスサンプルが、83pg/mlというプロテイナーゼK濃度を用いて消化された)。タンパク分解性反応を阻止した後、サンプルをSDS緩衝液と混合し、煮沸することにより、PrPscをその凝集型から変性させた。次いで、サンプルの0.5log10希釈物を調製し、分子量マーカーとともにSDS−PAGEゲルに充填する。電気泳動の後、ゲルをPVDF膜にウエスタンブロットした後、ブロッキングし、抗体でプロービングすることにより、結合したPrPscタンパク質の検出が抗体3F4によって可能になった。スクレイピーの263K株は、25〜33KDaの範囲に特徴的なバンドパターンをもたらす(このバンドパターンは、サンプル中のPrPscタンパク質の存在の確認を補助する)。サンプルの力価の終点を、ウエスタンブロットにおいてシグナルが観察されなかった1番目の希釈度と定義した。
【0256】
減少係数の計算
減少係数(RF)を以下のとおり計算した:
RF=(V×T)/(V×T
式中:
およびTは、それぞれ、出発物質の体積および力価であり、そして
およびTは、それぞれ、生成画分の体積および力価である。
【0257】
対数では、この式は、以下のように表され得る:
Log10[RF]=[Log10(V)+Log10(T)]−[Log10(V)+Log10(T)] 。
【0258】
減少係数は、最後の計算の後に小数第1位に丸められ得る。
【0259】
干渉試験
出発物質を希釈せずに試験し、その後、TBSA中に1.0log10に事前希釈した。未希釈の出発物質サンプルおよび事前希釈した出発物質サンプルを、スパイクのために使用されたスクレイピー原液の終点のおよそ2log10以内の力価に等しい最終濃度に263Kでスパイクした後、室温にて60分間、15.558×gで遠心分離した。遠心分離後、上清を慎重にデカントし、ペレットを、遠心分離した元のサンプル体積の1/10のTBSAで再懸濁した(事前に1.0log10希釈されたサンプルに対しては効果のない濃度に等しく、かつ未希釈サンプルに対しては10倍濃度に等しい)。次いで、標準的なプロトコルに従って、プロテアーゼK消化およびウエスタンブロッティングを行った。再生サンプルおよびカラムサンプルを、ウエスタンブロッティングによる解析前に、それぞれ、0.5log10に希釈するか、または希釈せずに試験した(すなわち、遠心分離なし)。
【0260】
pHの調整
等分前かつ≦−60℃での貯蔵の前に、サンプルをpH6〜8であるか調べた(いずれのサンプルについてもpH調整は必要なかった)。
【0261】
装置
以下の主要な設備機器を、本研究を行うために使用した。Sterile Class II Biohazard Safety Cabinet、Sanyo & Angelantoni ≦−60℃冷凍庫、Angelantoni 2〜8℃冷蔵庫および≦−15℃冷凍庫、SartoriusまたはKern(化学)天秤およびプリンター、Hanna電子式温度計、Mettler Toledo pHメーター、GrantまたはSelectaウォーターバス、Oregon Laboratory Timer、Hettich痕跡量遠心機、BioRad Criterion Electrophoresis Cell、BioRad Criterion Blotter、AKTA Chromatographyシステム、Wealtec Power Supply、Agfa Film DeveloperおよびPRDT樹脂が充填されたBiotoolomicsカラム。
【0262】
プロセスの流れ
プロセスのフロースキームを、回収されたサンプルとともに図4に表す。各サンプルの体積は、結果の項の表9に見られる。
【0263】
プロセスフローに備えて、Laminar Flow(LF)安全キャビネットを清掃し、少なくとも10〜15分間運転することにより、平衡化した。上記ウォーターバスを30±2℃に平衡化し、29.5℃の温度に達するまで出発物質を平衡化した。0.5%サルコシルで可溶化されたスパイクを同じウォーターバスにおいて解凍し、解凍したらすぐに、使用するまで氷上に置いた。PRDTカラムを一晩、外界温度(23.0±5.0℃)に平衡化した。
【0264】
カラム入口の管材料(上部)をAKTAの出口に接続した。カラム出口の管材料(下部)に適切な回収容器(ビーカーまたは50ml使い捨て遠心管)をあてがった。気泡がシステムに入らないように、前もってすべての管材料にWFI(注入用の水)を入れておいた。
【0265】
上記カラムをまず5カラム体積(CV)のWFI、次いで、10CVの平衡緩衝液で平衡化した。全体を通して目標流速は、2.0±0.1ml/分だった。
【0266】
サンプルの調製およびプリオン低減樹脂クロマトグラフィ
50.7mlの平衡化された出発物質を、0.5%サルコシルで可溶化された0.51mlの263Kホモジネートでスパイクした。次いで、pHを調べたところ、pHが6.9〜7.4の標的範囲内であることが見出された。続いて、0.5mlのアリコートを取り出し(サンプルSSM)、等分して≦−60℃で保存した。
【0267】
次いで、スパイクされたサンプルを、1.8±0.1ml/分の流速で上記平衡化されたPRDTカラムに適用し、フロースルーを以下の画分として回収した:
【0268】
【表8−2】

吸光度が、最大測定限界(full scale deflection)の80%に達したら、E1の回収を開始した。各ランについて、フロースルー画分を回収した(回収された各溶出液サンプルの体積は、秤量によって測定された)。スパイクされたアルブミン溶液を充填した後、カラムを10.0mlの平衡緩衝液で洗浄した。吸光度が最大測定限界の80%未満に低下したら、E5サンプルの回収を停止した。カラムを、平衡緩衝液で洗浄した後、>20.0mlの2M NaClを用いて再生し(サンプルREG)、再生後、樹脂を取り出し、5mlのTBSに再懸濁した(サンプルCOL)。
【0269】
結果
スパイクランからのサンプル
下記の表9には、各サンプルの体積とともに、スパイクランから回収されたサンプルが列挙されている。サンプルサイズが重量によって決定された場合、1.0g/mlという密度を仮定して、各サンプルに対する体積の計算を行った。すべてのサンプルを、解析するまで、等分して−60℃で保存した。スパイクランからのスキャンされたクロマトグラフィプロファイルの再現を図5に示す。
【0270】
【表9】

干渉結果
干渉に打ち勝つために、再生サンプルおよび樹脂サンプルを除くすべてのサンプルを、0.1%BSAを含むTBSで1.0log10希釈した後、遠心分離および1/10濃縮を行った。10×濃度で干渉について試験された未希釈のサンプルは、強い干渉を示した。再生サンプルについては、NaClの濃度を低下させるために試験前に0.5log10希釈物を調製した。樹脂サンプルについては、樹脂がTBS緩衝液に再懸濁されたので、これらのサンプルを事前希釈することなく試験した。
【0271】
アルブミンによる干渉に打ち勝つために必要なサンプルの希釈は、遠心分離および元の1/10の体積での再懸濁とともに、1.0Log10の事前希釈を用いて行われた。図6を参照のこと。
【0272】
プリオンの滴定データおよび減少係数の計算
上記プロセスランに対するプリオン低減係数の計算結果を表10に示す。干渉に打ち勝つために使用されたサンプルの希釈も表10に示す。
【0273】
【表10】

PRDTカラムを通過した最初の2.0mlに相当するE1サンプルについては、スパイクされた出発材料を基準として2.5log10という減少係数が計算された。サンプルE2〜E5では、フロースルー画分へのPrPscの突破が観察された(サンプルE5について減少係数1.5log10)。PrPscは、再生サンプル中に検出されず、PRDT樹脂に結合したPrPscの等価物は、下記のPRDT樹脂のプリオン結合能の計算の項でより詳細に論じられた。
【0274】
プリオン低減樹脂のプリオン結合能の計算
感染性プリオンタンパク質用のプリオン低減樹脂(PRDT樹脂)に対する結合能を推定するために、ウエスタンブロット試験において観察された力価を感染力価と結びつけた。上記ウエスタンブロットアッセイでは、既知の力価の263K原液を使用した。ウエスタンブロットアッセイでは、参照原液の希釈系列を調製し、試験した。得られた力価を、ハムスターバイオアッセイにおいて観察されたそれぞれの力価に対してプロットした後、線形回帰分析を行うことにより、2つの試験系の関係を評価した。回帰直線についての傾きおよび切片は、それぞれ1.0667および−4.5867と計算された。それらの回帰パラメータを用いることにより、以下の式を用いてウエスタンブロット力価を感染力価に変換した:
力価[バイオアッセイ]=(力価[ウエスタンブロット]+4.5867)/(1.0667) 。
【0275】
1mlあたりの感染力価が計算されたら、カラムに結合した総プリオンを決定することができた。プリオン低減樹脂のプリオンタンパク質結合能の計算値を下記の表11に示す。この能力は、プリオン低減樹脂に直接結合したと観察されたPrPscの量を用いて決定された(サンプルRegおよびCol)。
【0276】
【表11−1】

2Mの塩で洗浄した後のPRDT樹脂へのPrPscの総結合は、7.4log10ID50/mlだった。PrPscは、ウエスタンブロットによって塩洗浄画分中に検出されなかった。著しいPrPscの除去(≧2.5log10)も観察された。
【0277】
干渉試験を行った際、出発物質を未希釈のまま、遠心分離および10倍濃縮を用いて試験した。これを行うことにより、サンプル濃縮についての可能性の評価が可能になり、ゆえに、より高い減少係数が達成される。
【0278】
実施例4:25%アルブミンに対するプリオン低減樹脂によるTSE除去
本研究では、25%アルブミン(Baxter,Deerfield,IL)におけるプリオン低減樹脂(PRDTカラム)によるTSE除去の可能性を評価した。Baxter製のAlbumin(Human)USP25%溶液(Lot:LA07D051AB/TA09/0123)をスパイクランおよび干渉試験のための出発物質として使用したことを除いて、使用した材料および方法は、実施例3に記載したものと同じだった。
【0279】
プロセスの流れ
規模を縮小したプロセスを確立し、ViruSure facilitiesにおいて行った。プロセスのフロースキームを、回収されたサンプルとともに図7に表した。各サンプルの体積は、結果の項の表12に見られる。プロセスの流れの説明に使用されたパラメータおよび手順(AKTAとカラムとの接続、カラムの平衡を含む)は、実施例3に記載されたものと同じである。
【0280】
サンプルの調製およびプリオン低減樹脂クロマトグラフィ
50.1mlの平衡化された出発物質を、0.5%サルコシルで可溶化された0.51mlの263Kホモジネートでスパイクした。次いで、pHを調べたところ、0.1M HCLまたは0.5M NaOHを用いて6.9〜7.4の標的範囲内であることが見出された。スパイクされた出発物質のpH(6.85)は、6.9〜7.4の標的範囲外だった(Deviationの項を参照のこと)。65μLの0.1M NaOHおよび50μlの1M NaOHを加えた後、pH値が変化しないままだったことから、このpHで出発物質が充填されたと判定された。続いて、0.5mlのアリコートを取り出し(サンプルSSM)、等分して≦−60℃で保存した。
【0281】
次いで、スパイクされたサンプルを、1.8±0.1ml/分の流速で上記平衡化されたPRDTカラムに適用し、フロースルーを以下の画分として回収した:
【0282】
【表11−2】

吸光度が最大測定限界の80%に達したら、E1の回収を開始した。各ランについて、フロースルー画分を回収した(回収された各溶出液サンプルの体積は、秤量によって測定された)。スパイクされたアルブミン溶液を充填した後、カラムを10.0mlの平衡緩衝液で洗浄した。吸光度が最大測定限界の80%未満に低下したら、E5サンプルの回収を停止した。カラムを、平衡緩衝液で洗浄した後、>20.0mlの2M NaClを用いて再生し(サンプルREG)、再生後、樹脂を取り出し、5mlのTBSに再懸濁した(サンプルCOL)。
【0283】
結果
スパイクランからのサンプル
下記の表12には、各サンプルの体積とともに、スパイクランから回収されたサンプルが列挙されている。サンプルサイズが重量によって決定された場合、1.0g/mlという密度を仮定して、各サンプルに対する体積の計算を行った。すべてのサンプルを、解析するまで、等分して≦−60℃で保存した。スパイクランからのスキャンされたクロマトグラフィプロファイルの再現を図8に示す。
【0284】
【表12】

干渉結果
アルブミンによる干渉に打ち勝つために、再生サンプルおよび樹脂サンプルを除くすべてのサンプルを、0.1%BSAを含むTBSで1.0log10希釈した後、遠心分離および1/10濃縮を行った。10倍濃度で干渉について試験された未希釈のサンプルは、強い干渉を示した。再生サンプルについては、NaClの濃度を低下させるために試験前に0.5log10希釈物を調製した。樹脂サンプルについては、樹脂がTBS緩衝液に再懸濁されたので、これらのサンプルを事前希釈することなく試験した。
【0285】
干渉に打ち勝つために必要なサンプルの希釈は、遠心分離および元の1/10の体積での再懸濁とともに、1.0Log10の事前希釈を用いて行われた。図9を参照のこと。
【0286】
プリオンの滴定データおよび減少係数の計算
上記プロセスランに対するプリオン低減係数の計算を表13に示す。干渉に打ち勝つために使用されたサンプルの希釈も表13に示す。
【0287】
【表13】

PRDTカラムを通過した最初の2.0mlに相当するE1サンプルについては、スパイクされた出発材料を基準として≧2.5log10という減少係数が計算された。サンプルE2〜E5では、フロースルー画分へのPrPscの突破が観察された(サンプルE5について減少係数1.5log10)。PrPscは、再生サンプル中に検出されず、PRDT樹脂に結合したPrPscの等価物は、下記のPRDT樹脂のプリオン結合能の計算の項でより詳細に論じられた。
【0288】
プリオン低減樹脂のプリオン結合能の計算
感染性プリオンタンパク質用のプリオン低減樹脂(PRDT樹脂)に対する結合能を推定するために、ウエスタンブロット試験において観察された力価を感染力価と結びつけた。上記ウエスタンブロットアッセイでは、既知の力価の263K原液を使用した。ウエスタンブロットアッセイでは、参照原液の希釈系列を調製し、試験した。得られた力価を、ハムスターバイオアッセイにおいて観察されたそれぞれの力価に対してプロットした後、線形回帰分析を行うことにより、2つの試験系の関係を評価した。回帰直線についての傾きおよび切片は、それぞれ1.0667および−4.5867と計算された。それらの回帰パラメータを用いることにより、以下の式を用いてウエスタンブロット力価を感染力価に変換した:
力価[バイオアッセイ]=(力価[ウエスタンブロット]+4.5867)/(1.0667) 。
【0289】
1mlあたりの感染力価が計算されたら、カラムに結合した総プリオンが決定された。PRDT樹脂のプリオンタンパク質結合能の計算値を下記の表14に示す。その能力は、PRDT樹脂に直接結合したと観察されたPrPscの量を用いて決定された(サンプルRegおよびCol)。
【0290】
【表14】

2Mの塩で洗浄した後のPRDTマトリックスへのPrPscの総結合は、7.4log10ID50/mlだった。PrPscは、ウエスタンブロットによって塩洗浄画分中に検出されなかった。著しいPrPscの除去(≧2.0log10)もまた観察された。
【0291】
スパイクされた出発物質のpHは、6.85だった。65μlの0.1M NaOHおよび50μlの1M NaOHを加えた後も、pH値は、変化しないままだった。この作用は、おそらく、25%アルブミンの著しい緩衝能力に起因した。
【0292】
干渉試験を行った際、出発物質を未希釈のまま、遠心分離および10倍濃縮を用いて試験した。これは、研究計画に記載された干渉試験に加えられたものであり、これを行うことにより、サンプル濃縮についての可能性の評価が可能になり、ゆえに、より高い減少係数が達成される。
【0293】
実施例5.プリオン除去によって処理されたヒトアルブミンについてのプロセス途中の解析および安定性解析
この実験では、ヒトアルブミンの濃度および組成に対するプリオン除去カラムの影響を評価した。2つの別個の実験において、1リットルのアルブミンをPRIOCLEARTMBカラム(50ml)(ProMetic Biosciences)で処理した。次いで、無処理サンプル、ランの始めに回収されたサンプル、およびランの終わりに回収されたサンプルを濃度および組成の解析に供した。結果を表15および16に示す。
【0294】
【表15】

【0295】
【表16】

プリオン除去処理の前後のアルブミンについて著しい差は観察されなかった。
【0296】
本発明者らはさらに、プリオン除去のために処理されたヒトアルブミン、およびプリオン除去のために処理されたヒトアルブミンを用いて製造されたAbraxane(登録商標)懸濁液のプロセス途中の安定性を評価した。結果を表17および18に示す。
【0297】
【表17】

【0298】
【表18】

本発明者らはさらに、プリオン除去のために処理されたヒトアルブミンを用いて製造されたAbraxane(登録商標)完成品(プリオン除去のために処理されたヒトアルブミンを用いたパイロットプラントバッチ)およびプリオン除去のために処理されていないヒトアルブミンを用いて製造されたAbraxane(登録商標)完成品(Abraxane Exhibit lot、Abraxane Validation lotおよびAbraxaneパイロットプラントバッチ)におけるヒトアルブミンの加速安定性を比較した。結果を表19に示す。
【0299】
【表19】

安定性データの比較から、55℃での2週間にわたる貯蔵は、40℃での3ヶ月間にわたる貯蔵と等しいことが示される。製造プロセス中およびプロセス途中の試験中において、プリオン除去のために処理されたヒトアルブミンを用いて製造されたパイロットプラントバッチと無処理ヒトアルブミンを用いて製造されたパイロットプラントバッチとの間に著しい差は観察されなかった。プリオン除去のために処理されたヒトアルブミンを用いて製造された完成品の特性と無処理ヒトアルブミンを用いて製造された完成品の特性との間に著しい差はなかった。
【0300】
実施例6:Abraxane(登録商標)プロセス途中懸濁液に対するプリオン除去カラムの影響の評価
この実験は、Abraxane(登録商標)プロセス途中懸濁液、すなわち、凍結乾燥前のAbtaxane(登録商標)の懸濁液に対するプリオン除去の影響を評価する。Toyopearl Amino 650CU樹脂,ProMetic Biosciencesを含む商業的に入手可能なPIKSIキットカラム(1cc)をこの実験において使用した。
【0301】
2つの別個の実験において、ヒトアルブミンを含む0.5LのAbraxane(登録商標)プロセス途中懸濁液を上記カラムに通した。解析の結果を表20にまとめている。
【0302】
【表20】

サンプル1:無処理のAbraxaneプロセス途中懸濁液
サンプル2:ランの始めに回収されたサンプルであるプリオン除去カラム後のAbraxaneプロセス途中懸濁液
サンプル3:ランの終わりに回収されたサンプルであるプリオン除去カラム後のAbraxaneプロセス途中懸濁液(0.5L)
表20に示されるように、プリオン除去のために処理されたAbraxane(登録商標)プロセス途中懸濁液の物理的試験および化学的試験から、粒径、pH、パクリタキセルアッセイ値および不純物、ヒトアルブミン(HA)アッセイ値ならびにHA組成に関して、無処理懸濁液と処理懸濁液との間に著しい差がないことが示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物であって、ここで、該組成物は、プリオンタンパク質を実質的に含まない、組成物。
【請求項2】
前記組成物が、約100fg/ml未満のプリオン感染性を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、約10IU−ic/ml未満のプリオン感染性を有する、請求項1または2のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、タンパク質ミスフォールディング周期的増幅(PMCA)アッセイに基づくかまたはIPCRアッセイに基づいて、プリオンタンパク質の存在を示さない、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
プリオンタンパク質に結合することができる痕跡量のリガンドをさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
痕跡量の支持材料をさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物であって、ここで、該組成物中のアルブミンは、プリオン除去処理を包含する方法によって得られたものであり、該プリオン除去処理は、最初のアルブミン組成物をプリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させる工程を包含する、組成物。
【請求項8】
前記プリオン除去処理が、前記リガンドおよび該リガンドに結合したタンパク質を前記アルブミンおよび前記組成物から除去する工程をさらに包含する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記リガンドが、ペプチドである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記リガンドが、トリアジンに基づく化合物である、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物を作製する方法であって、該方法は:a)最初のアルブミン組成物からプリオンタンパク質を除去する工程;b)該プリオンが除去されたアルブミンを含む溶液と、有機溶媒に分散された該実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含む有機相とを含む混合物を高剪断条件に供する工程を包含する、方法。
【請求項12】
工程a)が:1)前記最初のアルブミン溶液をプリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させる工程を包含する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程a)が:2)前記リガンドおよび該リガンドに結合したタンパク質を前記アルブミン溶液から除去する工程をさらに包含する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記有機溶媒を前記混合物から除去する工程をさらに包含する、請求項11〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記有機溶媒の除去が、蒸発による、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記リガンドが、ペプチドである、請求項12〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記リガンドが、トリアジンに基づく化合物である、請求項12〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記最初のアルブミン組成物が、血液由来の生成物である、請求項11〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物を作製する方法であって、該方法は:a)該実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含む有機相とアルブミン溶液とを含む混合物を高剪断条件に供する工程、およびb)プリオンタンパク質を該混合物から除去する工程を包含する、方法。
【請求項20】
工程b)が:1)前記混合物を、プリオンタンパク質に結合することができるリガンドと接触させる工程を包含する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
工程b)が:2)前記リガンドおよび該リガンドに結合したタンパク質を前記混合物から除去する工程をさらに包含する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記リガンドが、ペプチドである、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記リガンドが、トリアジンに基づく化合物である、請求項20または21に記載の方法。
【請求項24】
請求項11〜23のいずれか1項に記載の方法によって作製された組成物。
【請求項25】
アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含み、プリオンタンパク質を含むと疑われる組成物からプリオンタンパク質を除去する方法であって、該方法は:a)プリオンタンパク質に結合することができるリガンドと該組成物を接触させる工程、b)該リガンドおよび該リガンドに結合したタンパク質を該組成物から除去する工程を包含する、方法。
【請求項26】
前記リガンドが、ペプチドである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記リガンドが、トリアジンに基づく化合物である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
アルブミンおよび実質的に水に溶けない薬理学的に活性な薬剤を含むナノ粒子を含む組成物であって、プリオンタンパク質に結合することができるリガンドをさらに含む、組成物。
【請求項29】
前記リガンドが、ペプチドである、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記リガンドが、トリアジンに基づく化合物である、請求項28に記載の組成物。
【請求項31】
疾患を処置するための、請求項1〜10および24のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項32】
前記疾患が癌である、請求項31に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−524104(P2012−524104A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506210(P2012−506210)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/031197
【国際公開番号】WO2010/121000
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(508061974)アブラクシス バイオサイエンス, エルエルシー (18)
【Fターム(参考)】