説明

プリオンタンパク不活化肥料とその製造法

【課題】目的:日本において、殆んどのと畜場の汚泥は、乾燥後焼却炉において 焼却処理されている。と畜場の汚泥に含まれる正常・異常プリオンタンパクをアルカリにより不活化し、プリオンタンパクの不活化された汚泥発酵肥料とその製造する方法を提供する。
【解決手段】と畜場の汚泥にアルカリ性化学薬品として 生石灰又は消石灰を加えて反応させ、と畜場汚泥に含まれる正常・異常プリオンタンパクを不活化し 反応によって得られたPH12以上の反応物を 乾燥及び発酵させ 水酸化カルシュウム及び炭酸カルシュウム、有機酸カルシュウム等を含有するPH8〜10を呈する汚泥発酵肥料である。この汚泥発酵肥料は アルカリ性ないし弱アルカリ性を呈し、土壌に混合した場合に 酸性土壌の中性・アルカリ化、カルシュウムの作用により 作物の生育の促進等の土壌の改良に資する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、と畜場の汚泥に含まれるプリオンを不活化した汚泥発酵肥料とその製造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、異常型のプリオンタンパクが引き起こす牛のBSE、羊のスクレピー、人のクロイツフェルトヤコブ病があり、と畜場では、従来、汚泥は乾燥後、焼却して最終処分場に埋却するかまたは、セメントの原料として、再利用する場合と、汚泥を発酵させて、汚泥発酵肥料として 農地に還元されていた。しかし、と畜場の汚泥発酵肥料には、プリオンタンパクが含まれている。
【0003】
プリオンタンパクの不活化法として
(1)焼却。
(2)3%SDS(ドデシル硫酸ナトリュウム)、100℃、5分間。
(3)高圧蒸気滅菌:132℃で1時間、オートクレーブにて、高圧滅菌。
(4)1N水酸化ナトリュウム溶液に1時間浸す。
(5)1〜5%次亜塩素酸ナトリュウムに2時間、室温にて浸す。
等が 知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今までの と畜場汚泥の処理法には、次のような欠点があった。
(イ) 今現在、牛をと殺すると畜場の汚泥には、プリオンタンパクが含まれており、牛BSEの発生予防のため、放牧場、牧草地、飼料作物栽培農地に還元することが 認められていない。
(ロ) 汚泥を乾燥・焼却後 最終処分場に埋却処理することは、最終処分場の設置が 環境に対する影響等から 困難になってきており、近い将来において、埋却処理は困難になると 考えられる。焼却することにより燃料費等 処分経費の負担の増加がある。
(ハ) アルカリ処理する場合において アルカリ材として劇薬の水酸化ナトリュウムを使用することは、取り扱い・保管に特段の注意を要する。
本発明は、以上のような欠点を無くするために なされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
と畜場の汚泥に存在するプリオンを 不活化した後 乾燥・発酵させ、全ての農地に還元できる汚泥発酵肥料を製造する方法である。
【0006】
本汚泥発酵肥料製造法は、処理対象物であると畜場の汚泥に含まれている正常・異常プリオンタンパクをアルカリ材を添加・混合することにより 不活性化処理した中間処理物を、乾燥・発酵処理をして、汚泥発酵肥料を製造するものである。
【0007】
と畜場汚泥で 汚泥発酵肥料を製造し 農地還元することにより と畜場の処理料金・畜産農家の経費の低減化、食肉の価格の安定化が、計れる。
【0008】
アルカリ材として、肥料として使用されている石灰資材を添加・混合して汚泥発酵肥料を製造すると、農地に、石灰と有機物を還元することになり、酸性土壌の矯正、土壌の団粒構造化を促進し、農地の通水性、保水性の改善をする。
【0009】
製造上の安全性において、アルカリ材として、苛性ソーダと生石灰と消石灰の化学的性質の比較において、有害性、危険性、毒性の点において、廃棄処理上において、苛性ソーダより、生石灰、消石灰の使用がより 安全、安心である。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、上記のプリオン不活化処理法として、アルカリ性の化学薬品を処理対象物に混合し、所定の時間維持することにより、プリオンを不活化する処理方法が知られている。アルカリ材として、使用しやすい生石灰・消石灰を使用し、汚泥発酵肥料を製造する方法である。
【0011】
と畜場の汚泥を汚泥発酵肥料として 農地に還元することは 乾燥・焼却し、最終処分場に埋却処理するより安価に処理し、最終的には 農地還元できる資源として、再利用し、最終処分場の延命、及び、と畜場の処分経費の削減し、畜産農家の経費の低減化が計られる。
【0012】
耕作農家の農地に対する石灰、有機物の供給をし、酸性土壌の改善、土壌の団粒化を図り、収量の増加、作物の抗病性を増加する。結果的に と畜場の汚泥の処理法の拡大、食肉の供給経費の低減化、農作物の生産増加、品質の向上が 期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の形態について、説明する。本発明は、と畜場の排水汚泥に 生石灰を 5〜30重量部添加し、混合・攪拌した反応物である。
【0014】
上記反応物は、PH12以上のアルカリ反応物であり、天日又は強制的に乾燥し、自然発酵又は、生産してある土壌改良材を添加・混合して発酵させ、PH10〜8の水分30%〜40%の汚泥発酵肥料を製造する方法である。
【0015】
次に 実施例に係る肥料の製造方法を述べる。図1は、と畜場より搬入された85〜90%のと畜場汚泥を 1の原料投入ホッパーに投入。原料投入ホッパーに投入されたと畜場汚泥を 2のラセンコンベアーにて 4の攪拌機に搬入する。5の石灰サイロに保管している石灰を 3のラセンコンベアーで4の攪拌機に搬入し、混合・攪拌した反応物を 4の攪拌機の下部より落下させ 6のベルトコンベアーにて 7の排出ヤードに排出し、反応物を マニアスプレッダーにて 8の発酵ヤードにある汚泥発酵物を水分調整・発酵促進材として 1/3〜2/3量を添加し 混合・攪拌し、8の発酵ヤードにて7〜10日毎に マニアスプレッダー又はショベルローダーを用い切り返しし、発酵を促進させ、できた半製品を 破砕・篩機で破砕し、篩をかけて、シール機を用い袋詰めし、トラック等で 出荷する土壌改良材製造方法である。
【0016】
この製造システムを使用して、反応物を1トン製造する場合について説明するとショベルローダーにて 1の原料投入ポッパーに 水分90%の反流動状と畜場汚泥900kgを投入し、ラセンコンベアーにて 4の攪拌機に搬入する。5の石灰サイロに保管している生石灰100kgをラセンコンベアーで4の攪拌機に搬入、10〜15分混合・反応させる。尚、生石灰の量は必要に応じて、通常5〜30%程度添加する。
【0017】
この場合、4の攪拌機にて、生石灰が汚泥中の水分と反応し、水酸化カルシュウムが育成されるとともに、水中・空気中の 二酸化炭素との反応により 炭酸カルシュウムが育成される。
【0018】
また、汚泥中の脂肪酸、アミノ酸と酸化カルシュウムとの反応により、有機酸カルシュウムを、りん酸との反応により、りん酸カルシュウムを形成する。
【0019】
上記のように反応育成されたPH12以上のアルカリ性を呈する半流動の反応物を 4の攪拌機の下部より落下させ ベルトコンベアーにて 7の搬出・発酵ヤードに排出し、ショベルローターにて8の発酵ヤードにて保管されている製品を水分調整・発酵促進材として300〜700kg加え、マニアアスプレッダー等を用い混合する。
【0020】
反流動の反応物は、そのまま乾燥すると、塊状を呈し、排出・発酵ヤードにて 7〜10日毎に マニアスプレッダー等を用い攪拌し、空気、酸素を供給し 乾燥・発酵を促進させる。乾燥・発酵すると、PH8〜10の砂粒〜塊状を呈し、水分30〜40%の800〜1000Kgの製品となる。
【0021】
できた製品を 破砕・篩機で選別し、袋詰め、フレコンバック、バラで出荷する汚泥発酵肥料である。
【0022】
上記の汚泥発酵肥料は 径10mm以下のクリーム色〜焦げ茶色の砂粒状を呈し、異臭が無く、若干の石灰臭を呈する製品となる。
【作用】
【0022】
この肥料の分析値を示す。分析値は 窒素全量、りん酸全量、加里全量が1%未満であり、石灰全量28.2%が含まれ、砂粒状を呈し、土壌に混入すると、透水性、保水性の上昇がみられる。
【0023】
含まれるりん酸カルシュウムは水に溶けにくく、く溶性りん酸カルシュウムとなり、長期間 土壌中に維持される。また、含まれる有機酸カルシュウムは、炭酸カルシュウムより 植物に吸収されやすく、野菜や果物等の植物の根より分泌される根酸により より吸収が促進される。
【0024】
植物のカルシュウム濃度が上昇することにより、植物細胞壁の強度が増加し、抗病性の上昇、果樹等の果実の皮の強度が増加し、さくらんぼ等の裂果、リンゴのつるわれの減少が認められた。
【0025】
さらに 水酸化カルシュウム等により、アルカリ性を呈することから、酸性土壌が中性、アルカリ性化し、また、炭酸カルシュウムは、水に難溶性を呈し、持続的に土壌の中性化を計る。土壌のPHが、中性・アルカリ性に移行することにより、土壌中に存在する病原性の細菌、カビ、線虫等の存在条件の変化により、殺菌及び殺カビ、線虫の発育条件の悪化により 病原体の増殖を抑制する。
【0026】
前記に示しているように 窒素、りん酸、加里成分が少ないので、作物に対する肥料設計や管理の大幅な変更は、必要としない。
【0027】
以上のように、と畜場の汚泥を 肥料化することは、廃棄物の再利用であり、廃棄物の資源化であり、農地の改良に寄与することができ、本発明は、産業上きわめて有用となる。
【実施例】

【0028】
この発明は、平成17年3月より、青森県十和田市の 農事組合法人 十和田土壌改良米田工場において、十和田食肉事務組合の十和田食肉センターの 排出汚泥を原料として、製造しており、十和田地域のにんにく、長いも、津軽のりんごに 施用している。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
と畜場の汚泥にアルカリ薬品を添加し、正常・異常プリオンを不活化して得られた処理物を乾燥、発酵して得られたPH8−12を呈する肥料。
【請求項2】
請求項1に記載の プリオンタンパクを不活化するために 添加するアルカリ薬品として 生石灰を使用して製造した請求項1に記載の肥料。
【請求項3】
請求項1に記載の プリオンタンパクを不活化するために 添加するアルカリ性薬品として 消石灰を使用して製造した請求項1に記載の肥料。
【請求項4】
と畜場の汚泥に生石灰を添加・混合し、と畜場の汚泥中のプリオンタンパクと 生石灰と水分との反応により生ずる水酸化カルシュウムとの 高いアルカリ環境下におけるアルカリ反応により プリオンタンパクの不活化をし、PH12以上の中間処理物を得て、乾燥・発酵させて製造する請求項1に記載の肥料の製造方法。
【請求項5】
と畜場の汚泥に消石灰を添加・混合し、と畜場の汚泥中のプリオンタンパクと水酸化カルシュウムとの反応により生ずる 高いアルカリ環境下におけるアルカリ反応により プリオンタンパクの不活化をし、PH12以上の中間処理物を得て、乾燥・発酵させて製造する請求項1に記載の肥料の製造方法。

【公開番号】特開2009−29685(P2009−29685A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215266(P2007−215266)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(504045008)農事組合法人 十和田土壌改良 (1)
【Fターム(参考)】