説明

プリテンショナー、これを有するシートベルトリトラクタおよびこれを備えたシートベルト装置

【課題】プリテンショナーの作動終了後に、パイプ内に残留するガスをパイプ外に容易に排気可能にする。
【解決手段】ガスジェネレータ14のケース14aの平坦面14bには、閉塞部材25が接合される。この閉塞部材25は、ガスジェネレータ14のガスジェネレータ装着部13内への装着状態で排気穴13bのすべてに対向する位置に設けられる。したがって、ガスジェネレータ14がガスジェネレータ装着部13内に装着された状態では、閉塞部材25の外面はパイプ10のガスジェネレータ装着部13の内面13a2に当接して排気穴13
bを閉塞する。緊急時にガスジェネレータ14が発生するガスの圧力でケース14aが膨張して、閉塞部材25の外面がガスジェネレータ装着部13の内面13a2に密着し、排
気穴13bが閉塞される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝突時等の通常の減速度より大きな減速度が自動車等の車両に加えられた緊急時の初期に作動してガスジェネレータがガスを発生するタイプのプリテンショナーの技術分野、プリテンショナーの作動によってシートベルトを巻き取るシートベルトリトラクタの技術分野、およびこのシートベルトリトラクタを用いて緊急時にシートベルトで乗員を拘束するシートベルト装置の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両に装備されるシートベルト装置においては、プリテンショナーを備えたシートベルトリトラクタが種々開発されている。このプリテンショナーは、前述の緊急時の初期に、ガスジェネレータで発生したガスによりシートベルトリトラクタのスプールをシートベルト巻取り方向に回転させて、このスプールによりシートベルトを巻き取る。これにより、シートベルトのたるみが迅速に除去されるとともにシートベルトに張力が付与されて、乗員に対するシートベルトの拘束力が高められる。
【0003】
従来のプリテンショナの一例として、パイプ内にボールからなる複数の力伝達部材が収容され、これらの力伝達部材が緊急時にガスジェネレータにより発生されたガスによる力を受けてパイプ内に沿って移動してリングギアのレバーからなる複数の被押圧部を押圧してリングギアが回転することで、スプールがシートベルト巻取り方向に回転されるプリテンショナーが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この特許文献1に記載のプリテンショナーにおいては、パイプにその内部と外部とを連通する孔が設けられているとともに、この孔を閉塞部材により閉塞している。そして、プリテンショナーの作動中に、パイプ内のガス圧が過度に上昇して予め設定された所定の圧力以上になったとき、そのガス圧で閉塞部材を外して孔を開放することで、パイプ内のガスがパイプの外部に排出するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−63520号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、緊急時に作動したプリテンショナーを搭載した車両において、使用可能な車両の部品をリサイクルすることが求められている。しかし、一般には、プリテンショナーの作動後にパイプ内には、ある程度の圧力のガスが残留している。このようにパイプ内にガス圧が残留していると、使用可能な車両の部品をリサイクルするために車両を解体することが難しい。このため、車両の解体にあたってパイプ内のガスを排気する必要があるという問題がある。
【0007】
パイプ内のガスを排気する技術としては、前述の特許文献1に記載された技術が知られている。しかしながら、特許文献1に記載のガス排出の技術は、パイプ内のガス圧が過度に上昇して所定の圧力以上になったときに、そのガス圧でガス抜きを行う技術である。このため、プリテンショナーの作動中にパイプ内のガス圧が過度に上昇しなく所定の圧力以上にならなかったときは、パイプからピストンが排出されなかった場合、プリテンショナーの作動終了後にパイプ内にガス圧が残留した状態となる。したがって、特許文献1に記
載のガス抜きの技術では、上記問題を解決することはできない。特に、プリテンショナーが作動したときに、プリテンショナーの作動中にパイプ内のガス圧が所定の圧力以上にならない場合が多い。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、作動終了後に、パイプ内に残留するガスをパイプ外に容易に排気することのできるプリテンショナー、これを有するシートベルトリトラクタおよびこれを備えたシートベルト装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するために、本発明に係るプリテンショナーは、パイプと、緊急時に前記パイプ内にガスを発生するガスジェネレータと、前記ガスジェネレータが装着されるガスジェネレータ装着部と、前記パイプ内に発生されたガスによりスプールをシートベルト巻取り方向に回転させるスプール駆動機構とを備え、緊急時に前記ガスジェネレータで発生した前記ガスにより前記スプール駆動機構が前記スプールをシートベルト巻取り方向に回転させるプリテンショナーにおいて、前記パイプの内部と外部とを連通する排気穴が設けられるとともに、前記排気穴を前記パイプの内部側から閉塞するとともに、前記パイプの外部側から、予め設定された所定押圧力以上の押圧力で押圧されることで移動して前記排気穴を開放する閉塞部材が配設されていることを特徴としている。
【0010】
また、本発明に係るプリテンショナーは、前記スプール駆動機構が、前記ガスによりスプールをシートベルト巻取り方向に回転させるための力を発生するとともに力を伝達する複数の力伝達部材と、少なくとも回転可能に設けられるとともに、内周に複数の内歯を有しかつ外周に被押圧部を有するリングギアと、スプール側部材に設けられるとともに、前記内歯に噛み合う外歯を有しかつ前記スプールを回転させるピニオンとを有することを特徴としている。
更に、本発明に係るプリテンショナーは、前記閉塞部材が、前記ガスジェネレータのケースに接合された薄板で構成されていることを特徴としている。
【0011】
更に、本発明に係るプリテンショナーは、前記閉塞部材が、前記ガスジェネレータのケースにクリップ機能で嵌合支持されることを特徴としている。
更に、本発明に係るプリテンショナーは、前記閉塞部材が、前記ガスジェネレータのケースに、前記ケースのガス噴出端側から前記ケースの長手方向に嵌合されて支持されることを特徴としている。
【0012】
更に、本発明に係るプリテンショナーは、前記閉塞部材が、前記ガスジェネレータのケースに、前記ケースの側方から嵌合されて支持されることを特徴としている。
更に、本発明に係るプリテンショナーは、前記閉塞部材が前記ガスジェネレータのケースに嵌合支持される嵌合支持部と前記排気穴を閉塞する閉塞部とを個別に有するとともに、前記嵌合支持部が前記ケースのガス噴出端側から前記ケースの長手方向に嵌合されて支持されることを特徴としている。
【0013】
更に、本発明に係るプリテンショナーは、前記閉塞部が前記嵌合支持部と異なる面に設けられることを特徴としている。
更に、本発明に係るプリテンショナーは、前記閉塞部が前記嵌合支持部と同一面に設けられることを特徴としている。
更に、本発明に係るプリテンショナーは、前記閉塞部に、前記排気穴に進入可能な閉塞突部が設けられている特徴としている。
【0014】
更に、本発明に係るプリテンショナーは、前記閉塞部材が、前記排気穴を閉塞する閉塞
面を有する頭部と、前記頭部から突設されるとともに前記排気穴に進入可能な軸部とを有し、前記ガスジェネレータ装着部の外部から前記押圧力で前記軸部が押圧されて前記閉塞部材が移動することで前記排気穴が開放されることを特徴としている。
【0015】
更に、本発明に係るシートベルトリトラクタは、シートベルトを巻き取るスプールと、緊急時に前記スプールをシートベルト巻取り方向に回転させるプリテンショナーとを少なくとも有し、前記プリテンショナーが前述の本発明のプリテンショナーのいずれか1つであることを特徴としている。
【0016】
更に、本発明に係るシートベルト装置は、シートベルトと、前記シートベルトを巻き取るシートベルトリトラクタと、前記シートベルトに摺動可能に支持されたタングと、車体に設けられるとともに前記タングが係脱可能に係止されるバックルとを少なくとも有し、前記シートベルトリトラクタが前述の本発明のシートベルトリトラクタであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
このような構成をした本発明のプリテンショナーによれば、パイプに設けられた排気穴をパイプの内部から閉塞するとともにパイプの外部から予め設定された所定押圧力以上の押圧力で押圧されることで移動して排気穴を開放する閉塞部材が配設される。したがって、プリテンショナーの作動終了後にパイプ内の各ガスを排出する場合、閉塞部材を押圧して排気穴を開放することで、パイプ内の各ガスを外部に容易に排出することができる。
【0018】
特に、発生したガスにより閉塞部材を、排気穴がより気密に閉塞する方向に押圧するようにしているので、プリテンショナーの作動中、閉塞部材により排気穴をより効果的に閉塞することができる。これにより、発生したガスの圧力ロスを抑制することができ、乗員を更に一層に効率よく拘束することができる。
【0019】
また、閉塞部材に嵌合支持部と閉塞部とがそれぞれ個別に設けられることで、嵌合支持部の閉塞部材の支持機能がより効果的に発揮することが可能となるとともに、閉塞部の排気穴の閉塞機能がより効果的に発揮することが可能となる。更に、排気穴内に進入する閉塞突部が閉塞部に設けられることにより、排気穴を更に一層気密に閉塞することが可能となる。
【0020】
一方、本発明のシートベルトリトラクタおよびシートベルト装置によれば、本発明のプリテンショナーを備えている。これにより、プリテンショナーの作動終了後にガスジェネレータ装着部内およびパイプ内の各ガスを容易に外部に排出することができる。したがって、作動したプリテンショナーが装着されていた自動車等の車両の部品をリサイクルするために、自動車等の車両を容易に解体することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明にかかるプリテンショナーの実施の形態の第1例を有するシートベルトリトラクタを備えたシートベルト装置を模式的に示す図である。
【図2】図1に示す第1例のシートベルトリトラクタおよび第1例のプリテンショナーの各一部を部分的に切り欠いて示す側面図である。
【図3】(a)は図1に示す第1例のプリテンショナーの作動途中時の状態を示す図、(b)は同プリテンショナーの作動終了時の状態を示す図である。
【図4】(a)は第1例のガスジェネレータおよび閉塞部材を模式的に示す斜視図、(b)は第1例のガスジェネレータ装着部を示す斜視図、(c)は(b)におけるIVC−IVC線に沿う断面図、(d)は(c)におけるIVD部の部分拡大断面図である。
【図5】本発明にかかるプリテンショナーの実施の形態の第2例を示し、(a)は第2例のガスジェネレータおよび閉塞部材を模式的に示す斜視図、(b)は第2例のガスジェネレータ装着部を示す斜視図、(c)は(b)におけるVC−VC線に沿う断面図である。
【図6】本発明にかかるプリテンショナーの実施の形態の第3例を示し、(a)は第3例のガスジェネレータおよび閉塞部材を模式的に示す斜視図、(b)は第3例のガスジェネレータ装着部を示す斜視図、(c)は(b)におけるVIC−VIC線に沿う断面図である。
【図7】本発明にかかるプリテンショナーの実施の形態の第4例を示し、(a)は第4例のプリテンショナーに用いられる閉塞部材を模式的に示す斜視図、(b)は、ガスジェネレータが装着された状態を部分的に示す、図5(c)の一部と同様の部分拡大断面図、(c)は(b)におけるVIIC部の部分拡大断面図である。
【図8】本発明にかかるプリテンショナーの実施の形態の第5例を示し、(a)は第5例のプリテンショナーに用いられる閉塞部材を模式的に示す斜視図、(b)は、ガスジェネレータが装着された状態を部分的に示す、図7(b)と同様の部分拡大断面図、(c)は(b)におけるVIIIC部の部分拡大断面図である。
【図9】本発明にかかるプリテンショナーの実施の形態の第6例を示し、(a)は第6例のプリテンショナーに用いられる閉塞部材を模式的に示す斜視図、(b)は、ガスジェネレータが装着された状態を部分的に示す、図7(b)と同様の部分拡大断面図、(c)は(b)におけるIXC部の部分拡大断面図である。
【図10】本発明にかかるプリテンショナーの実施の形態の第7例を示し、(a)は図4(c)と同様の断面図、(b)は閉塞部材を示す正面図、(c)は(b)におけるXC−XC線に沿う断面に対応しかつ作動を説明する図、(d)は(a)におけるXD部の部分拡大断面図、(e)は第7例の変形例を示す正面図、(f)は(e)の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明にかかるプリテンショナーの実施の形態の第1例を有するシートベルトリトラクタを備えたシートベルト装置を模式的に示す図である。
【0023】
図1に示すように、この第1例のシートベルト装置1は、基本的には従来公知の三点式シートベルト装置と同じである。図中、1はシートベルト装置、2は車両シート、3は車両シート2の近傍に配設されたシートベルトリトラクタ、4はシートベルトリトラクタ3に引き出し可能に巻き取られかつ先端のベルトアンカー4aが車体の床あるいは車両シート2に固定されるシートベルト、5はシートベルトリトラクタ3から引き出されたシートベルト4を乗員のショルダーの方へガイドするガイドアンカー5、このガイドアンカー5からガイドされてきたシートベルト4に摺動自在に支持されたタング6、車体の床あるいは車両シートに固定されかつタング6が係脱可能に挿入係合されるバックル7である。
このシートベルト装置1におけるシートベルト4の装着操作および装着解除操作も、従来公知のシートベルト装置と同じである。
【0024】
この第1例のシートベルトリトラクタ3は従来公知の緊急ロック式シートベルトリトラクタ(ELR)または従来公知の自動ロック式シートベルトリトラクタ(ALR)である。そして、このシートベルトリトラクタ3はプリテンショナーを備えている。このプリテンショナーは従来公知のプリテンショナーと同様に、車両衝突時等の、通常走行時の減速度よりはるかに大きな減速度が車両に加えられた緊急時に作動して、シートベルトリトラクタ3のスプール(不図示)をシートベルト巻取り方向に回転させ、シートベルト4を所定量巻き取り、乗員に対するシートベルトの拘束力を高めるものである。
【0025】
図2は、この第1例のプリテンショナーを備えるシートベルトリトラクタの一部を部分的に切り欠いて示す側面図である。
図2に示すように、この第1例のプリテンショナー8は、シートベルトリトラクタ3の
フレーム9に支持されている。フレーム9は、車室内側(図2において左側)に位置して車体に取り付けられるベース部9aと、このベース部9aから折り曲げることで設けられる一対の側壁9b,9cとを有する。
【0026】
プリテンショナー8はパイプ10を有しており、このパイプ10の先端部10aにガイド部材11が設けられている。これらのパイプ10の先端部10aおよびガイド部材11はボルト等の適宜の固着具によって側壁9bに固定されたパイプ取り付け部23に取り付けられている。また、パイプ10の先端部10aには、パイプ10の内部と外部とを連通するとともにパイプ10の長手方向に延びる切欠部10cが設けられている。
【0027】
パイプ10内には、鉄あるいはアルミニウム等の金属製の複数のボール12aおよびガス圧を受けてボール12aを押圧する図示しないピストンからなる複数の力伝達部材12が移動可能にかつ互いに接触して配設されている。また、パイプ10の基端部10bは、パイプ10の力伝達部材収容部より大径のガスジェネレータ装着部13となっている。このガスジェネレータ装着部13には、ガスジェネレータ14が装着されている。
【0028】
プリテンショナー8は、フレーム9の側壁9bに取り付けられたケース本体(不図示)を有している。このケース本体内には、リングギア15が回転可能にかつ図2において右方へ移動可能に配設されている。このリングギア15は内周面に形成された複数の内歯15aを有している。リングギア15は、その一部がパイプ10の切欠部10cからパイプ10内に進入可能になっている。
【0029】
リングギア15の外周面には、通常時(プリテンショナー8の非作動時)に最初(先頭)の第1のボール12aが当接する周方向に所定長さの外周端縁16cを有する1つの略円弧状のストッパ16(本発明の被押圧部にも相当)と、複数(図示第1例では、6個)の略三角形状のレバー17(本発明の被押圧部に相当)とが突設されている。これらのストッパ16およびすべてのレバー17は切欠部10cからパイプ10内に進入可能になっている。
【0030】
シートベルトリトラクタ3のロッキングベース(不図示)の回転軸18には、ピニオン19がこの回転軸18と一体回転可能に取り付けられている(なお、ピニオン19は、図示しないがシートベルトリトラクタ3のスプールの回転軸に一体回転可能に取り付けることもできる)。ロッキングベースは従来公知のELRやALRに設けられるものである。すなわち、ロッキングベースは、通常時はシートベルト4を巻き取るシートベルトリトラクタ3のスプールと一体回転し、前述の緊急時に作動されるロック機構によりその回転がロックされることでスプールのシートベルト引き出し方向の回転を阻止するものである。複数のボールを用いたプリテンショナーおよびロッキングベースを有するELRとして、例えば特開2001−233172号公報等の公知の特許文献に記載されたELRがあり、この特開2001−233172号公報を参照すればロッキングベースの作動を理解することができるので、その詳細な説明は省略する。
【0031】
ピニオン19は複数の外歯19aを有している。このピニオン19の外歯19aにリングギア15の内歯15aが噛み合い可能となっている。そして、プリテンショナー8の作動時に、各ボール12aはパイプ10の切欠部10cからパイプ10内に進入するストッパ16および各レバー17を上方から押圧して、リングギア15にシートベルト巻取り方向(図2において反時計回り)の回転駆動力を加えるとともに、リングギア15にピニオン19の方へ直進移動力を加えるようになっている。
【0032】
通常時は、リングギア15はシェアピン20で図2に示す非作動位置に保持されている。リングギア15の非作動位置では、内歯15aは外歯19aに噛み合わなく、これらの
外歯19aから離間している。また、緊急時は、プリテンショナー8が作動してガスジェネレータ14で発生されたガスの圧力による押圧力が力伝達部材12に作用することで、力伝達部材12がリングギア15に回転駆動力および直進移動力を加えることにより、シェアピン20がせん断破壊し、図3(a)に示す作動位置となる。リングギア15の作動位置では、内歯15aが外歯19aに噛み合う。したがって、ピニオン19(つまり、スプール)の回転とリングギア15とが回転的に連結される。これにより、ガスジェネレータ14で発生されたガスの圧力による押圧力で、複数の力伝達部材12、リングギア15、およびピニオン19を介して回転軸18つまりスプールがシートベルト巻取り方向に回転される。このようにして、複数の力伝達部材12、リングギア15、およびピニオン19により、本発明のスプール駆動機構が構成される。
【0033】
更に、図4(a)に示すようにガスジェネレータ14は段付きの円筒状のケース14aを有している。このケース14aのガス噴出側端部(図4(a)において下端部)における外周面に平坦面14bが形成されている。なお、この平坦面14bに対応するケース14aの内周面は同様に平坦面に形成することもできるし、円筒面に形成することもできる。
【0034】
また、図4(b)に示すようにガスジェネレータ装着部13には平坦部13aが形成されている。図4(c)および(d)に示すように、この平坦部10の外面13a1および
内面13a2はともに平坦面とされている。この平坦部13aには、ガスジェネレータ装
着部13(つまり、パイプ10)の外部と内部とを連通する排気穴13bが設けられている。そして、図4(b)に二点鎖線で示すようにガスジェネレータ14がガスジェネレータ装着部13内に装着された状態では、ガスジェネレータ14のケース14aの平坦面14bの少なくとも一部と、ガスジェネレータ装着部13の平坦な内面13a2の少なくと
も排気穴13bを含む一部とが対向するようにされている。
【0035】
図4(a)ないし(d)に示すように、ガスジェネレータ14のケース14aの平坦面14bには、鉄等の金属や樹脂からなる所定形状(図示例では矩形)の平坦な薄板からなる閉塞部材25が例えば接着剤等により接合される(図4(a),(b)には二点鎖線で
示す)。その場合、この閉塞部材25は、ガスジェネレータ14のガスジェネレータ装着部13内への装着状態で排気穴13bのすべてに対向する位置に設けられる。したがって、図4(b)および(c)に示すようにガスジェネレータ14がガスジェネレータ装着部13内に装着された状態では、閉塞部材25の外面はパイプ10のガスジェネレータ装着部13の内面13a2に当接して排気穴13bをガスジェネレータ装着部13の内部(つ
まり、パイプ10の内部)から閉塞する。すなわち、閉塞部材25の外面は排気穴13bを閉塞する閉塞面25b1を構成する。
【0036】
また、このように閉塞部材25が排気穴13bを閉塞した状態で、図4(d)に示すように閉塞部材25は、例えば工具等の押圧具(不図示)によりガスジェネレータ装着部13の外部(つまり、パイプ10の外部)から排気穴13bを通して予め設定された所定の押圧力以上の押圧力Fで押圧することで、排気穴13bを開放するようになる。すなわち、閉塞部材25が所定の押圧力以上の押圧力Fで押圧されて、ガスジェネレータ14のケース14aの閉塞部材25接合部を含む所定の領域が凹むように変形することで、閉塞部材25が変形しながら移動して閉塞面25b1がガスジェネレータ装着部13の内面13
2から離間する。これにより、排気穴13bが開放され、排気穴13bの内部と外部と
が連通する。
【0037】
このように構成された第1例のプリテンショナー8の作動について説明する。
この第1例のプリテンショナー8の作動は、基本的には前述の緊急時に作動してシートベルトリトラクタ3のスプールをシートベルト巻取り方向に回転させるまでは、従来の複
数のボールを用いたプリテンショナーの作動と同じである。
【0038】
すなわち、プリテンショナー8の非作動時には、図2に示すようにリングギア15が非作動位置にされている。したがって、リングギア15はその内歯15aがピニオン19の外歯19aに噛み合わない状態に保持されている。また、最初の第1のボール12aがストッパ16のリングギア回転方向上流側の側縁16aに当接した状態に保持される(なお、リングギア15の回転方向は図2において反時計回り、すなわちシートベルト巻取り方向である)。更に、これ以後のボール12aは順次互いに隣接するボール12aどうしが当接した状態にされている。このとき、ガスジェネレータ14がガスを発生しなく、ボール12aがリングギア15側のストッパ16を実質的に押圧しない。更に、排気穴13bは閉塞部材25によって気密に閉塞されている。
【0039】
前述の緊急時が発生すると、プリテンショナー8が作動する。すなわち、ガスジェネレータ14が作動してガスを発生し、発生したガスの圧力により、ガスジェネレータ14のケース14aが外側に膨張する。このケース14aの膨張により、閉塞部材25の閉塞面25b1がガスジェネレータ装着部13の内面13a2に強固に密着する。これにより、排気穴13bは閉塞部材25によってより一層気密に閉塞される。
【0040】
一方、ガスジェネレータ14で発生したガスは、ケース14aのガス噴出側端面14dを開放してガスジェネレータ装着部13内に進出する。このとき、排気穴13bが閉塞部材25によって気密に閉塞されているので、ガスジェネレータ装着部13内及びパイプ10内の各ガスはガスジェネレータ装着部13およびパイプ10の各外部に漏出しなく、ガス圧のロスがほとんど発生しない。
【0041】
ガスジェネレータ装着部13内のガスは更にパイプ10内に進入する。そして、パイプ10内に進入したガスによってピストン24(図3(a)に図示)を介してボール12aに大きな押圧力が加えられる。すると、リングギア15のストッパ16がボール12aで押圧されるので、シェアピン20がせん断破壊する。これにより、リングギア15がボール12aを介した押圧力で図2おいて右方へ移動するとともに反時計回りに回転する。そして、図3(a)に示すようにリングギア15の内歯15aがピニオン19の外歯19aに噛み合い、ピニオン19がリングギア15と同方向に回転開始する。これにより、回転軸18つまりスプールがシートベルト巻取り方向に回転開始し、乗員に装着されているシートベルト4が巻取り開始される。
【0042】
以後、図3(a)に示すように次のボール12aから順次レバー17を押圧するので、リングギア15およびピニオン19がともにシートベルト巻取り方向(図3(a)において反時計回り)に回転する。これにより、シートベルト4がスプールに更に巻きられる。
【0043】
新たなボール12aがレバー17を押圧開始すると、先にレバー17を押圧したボール12aの押圧力が実質的に消滅する。押圧力が消滅したボール12aはガイド溝21にガイドされてリングギア15の回転とともに移動する。そして、図3(a)に示すように最初のボール12aがケース本体側のストッパ22に当接する。このとき、リングギア15のストッパ16のリングギア回転方向下流側の側縁16bが対向するボール12aに当接していない。
【0044】
最初のボール12aがストッパ22に当接すると、図3(b)に示すようにストッパ22はこのボール12aの押圧力で変形し、リングギア15は更に反時計回りに回転する。このストッパ22の変形により、各ボール12aの運動エネルギが部分的に吸収される。リングギア15の更なる反時計回りの回転により、図3(b)に示すようにリングギア15のストッパ16の外周端縁16cが対向するボール12aに当接し、このボール12a
はストッパ16の外周端縁16cと、切欠部23cと反対側のパイプ10の内周面10dとの間に挟圧される。これにより、リングギア15の回転が停止する。したがって、ピニオン19およびスプールの回転も停止してスプールによるシートベルト巻取りが終了し、プリテンショナー8の作動が終了する。このプリテンショナー8によるシートベルト4の巻取りにより、シートベルト4による乗員に対する拘束力が高められる。
【0045】
このとき、ガスジェネレータ装着部13内部に直に連通するパイプ10内の空間(ボール12aがない領域の空間)の容積が増大しているので、ガスジェネレータ装着部13内およびパイプ10内のガスの圧力は発生ガスの最大圧力よりはある程度低圧となっているが、ガスジェネレータ装着部13内およびパイプ10内にはガスによる残圧は生じている。また、プリテンショナー8の作動終了後にも、排気穴13bは閉塞部材25によって気密に閉塞されている。
【0046】
プリテンショナー8が作動終了した後、適当な時期にガスジェネレータ装着部13内およびパイプ10内のガスを排出する場合、図4(d)に示すように閉塞部材25が所定の押圧力以上の押圧力Fで押圧される。これにより、閉塞部材25はガスジェネレータ装着部13における閉塞部材25の接合部を含む所定の領域を変形しながら移動するとともに変形してガスジェネレータ装着部13の内面13a2から離間する。したがって、排気穴
13bが開放され、パイプ10内のガスが同図に矢印αで示すように排気穴13bを通して外部に流出し、ガスジェネレータ装着部13内およびパイプ10内が実質的に大気圧となる。なお、図4(d)には閉塞部材25が設けられるケース14aの外面である平坦面14bとガスジェネレータ装着部13の内面13a2との間隙を通ってガスが流動するよ
うに示されているが、ガスはケース14aの他の外面とガスジェネレータ装着部13の他の内面との間隙を通っても流動して排出される。
【0047】
この第1例のプリテンショナー8の他の構成および他の作動は、それぞれ、従来の複数のボールを用いたプリテンショナーの構成および作動と実質的に同じである。また、この第1例のシートベルトリトラクタ3の他の構成および他の作動も、それぞれ、従来のELRあるいはALRの構成および作動と実質的に同じである。
【0048】
この第1例のプリテンショナー8によれば、ガスジェネレータ装着部13に排気穴13bが設けられるとともに通常時はこの排気穴13bを閉塞部材25によってガスジェネレータ装着部13の内部から閉塞している。そして、プリテンショナー8の作動終了後に所定の押圧力以上の押圧力Fによってガスジェネレータ装着部13の外部から排気穴13bを通して閉塞部材25を押圧することで排気穴13bを開放するようにしている。したがって、プリテンショナー8の作動終了後にガスジェネレータ装着部13内およびパイプ10内の各ガスを排出する場合、閉塞部材25を押圧して排気穴13bを開放することで、ガスジェネレータ装着部13内およびパイプ10内の各ガスを容易に排出することができる。
【0049】
特に、発生したガスにより閉塞部材25を、排気穴13bがより強固に閉塞する方向に押圧しているので、プリテンショナー8の作動中、閉塞部材25により排気穴13bをより効果的に閉塞することができる。これにより、発生したガスの圧力ロスを抑制することができ、乗員を更に一層に効率よく拘束することができる。
【0050】
この第1例のシートベルトリトラクタ3およびシートベルト装置1によれば、プリテンショナー8の作動後にガスジェネレータ装着部13内およびパイプ10内の各ガスを容易に排出することができることから、作動したプリテンショナー8が装着されていた自動車等の車両の部品をリサイクルするために、自動車等の車両を容易に解体することが可能となる。
【0051】
図5は、本発明にかかるプリテンショナーの実施の形態の第2例を示し、(a)は第2例のガスジェネレータおよび閉塞部材を模式的に示す斜視図、(b)は第2例のガスジェネレータ装着部を示す斜視図、(c)は(b)におけるVC−VC線に沿う断面図である。なお、以下の各例の実施の形態の説明において、それより前の例と同じ構成要素には同じ符号を付すことにより、その詳細な説明は省略する。
【0052】
前述の第1例のプリテンショナー8では、ガスジェネレータ14のケース14aの外面に形成された1つの平坦面14bが設けられているが、図5(a)ないし(c)に示すように、この第2例のプリテンショナー8では、一対の平坦面14b,14cが設けられて
いる。その場合、一対の平坦面14b,14cは円筒状のケース14aの方向の中心線に
関して対称の位置に設けられる。また、一対の平坦面14b,14cが設けられるケース
14aの部分は、その外面および内面がともに互いに平行な平坦面にされた平坦部とされている。
【0053】
また、前述の第1例のプリテンショナー8では、閉塞部材25が薄板で構成されているが、図5(a)および(c)に示すように、この第2例のプリテンショナー8では、閉塞部材25が平坦な薄い帯状板で構成されている。その場合、閉塞部材25は帯状板の両端部を折り曲げて側面視ほぼコ字状(あるいはほぼU字状)に形成されていて、中央に底部25a、この底部25aの両端にそれぞれ設けられた一対の側壁部25b,25cとを有
する。一対の側壁部25b,25cはばね性(弾性)を有していて、閉塞部材25はクリ
ップ機能を有している。そして、この閉塞部材25は、底部25aがケース14aのガス噴出側端面14d(図4(a)において下端面)に当接し、各側壁部25b,25cがそ
れぞれクリップ機能により対応するケース14aの平坦面14b,14cに弾性的に当接
するようにしてケース14aに着脱可能に嵌合支持される。したがって、各側壁部25b,25cの外面(互いに対向する面と反対側の面)は、排気穴13bを閉塞可能な閉塞面
25b1,25c1とされている。また、各側壁部25b,25cの内面(互いに対向する面)は、ケース14aの平坦面14b,14cに当接する嵌合支持面25b2,25c2とされている(この第2例では、側壁部25bの閉塞面25b1が排気穴13bを閉塞している
が、他方の側壁部25cの閉塞面25c1が排気穴13bを閉塞することも可能である)

【0054】
そして、閉塞部材25がケース14aに嵌合支持された閉塞部材25がガスジェネレータ装着部13に装着された状態では、閉塞部材25の各側壁部25b,25cの一方(図
示例では、側壁部25b)がガスジェネレータ装着部13の平坦な内面13a2に当接し
て排気穴13bを閉塞する。このとき、閉塞部材25の各側壁部25b,25cがクリッ
プ機能を有するとともにガスジェネレータ14のケース14aの外面とガスジェネレータ装着部13の内面13a2との間に挟持されるので、通常時は閉塞部材25がガスジェネ
レータ14のケース14aから離脱することはない。
第2例のプリテンショナー8の他の構成は第1例と同じである。
【0055】
このように構成された第2例のプリテンショナー8においては、プリテンショナー8の作動時ガスジェネレータ14から発生されたガスの圧力によりケース14aが膨張することで側壁部25bがガスジェネレータ装着部13の内面13a2に効果的に密着するよう
になる。したがって、側壁部25bにより排気穴13bがより一層気密に閉塞され、排気穴13bを通したガスの漏出が抑制されてガス圧のロスが低減される。
【0056】
一方、プリテンショナー8の作動後にパイプ10内およびガスジェネレータ装着部13内の各ガスを排気するために、前述の第1例と同様に排気穴13bを通して所定の押圧力F以上の押圧力で側壁部25bを押圧すると、ケース14aが凹み変形するとともに側壁
部25bが撓み変形することで、側壁部25bがガスジェネレータ装着部13の内面13a2から離間する。これにより、排気穴13bが開放されてパイプ10内およびガスジェ
ネレータ装着部13内のガスが外部に排出されて、パイプ10内およびガスジェネレータ装着部13内の各圧力がいずれも大気圧となる。
第2例のプリテンショナー8の他の作動は第1例と同じである。また、第2例のプリテンショナー8の効果は実質的に第1例と同じである。
【0057】
更に、第2例のプリテンショナー8を有するシートベルトリトラクタ3の他の構成および効果、この第2例のシートベルトリトラクタ3を備えたシートベルト装置1の他の構成および効果は、いずれも第1例のシートベルトリトラクタ3および第1例のシートベルト装置と同じである。
【0058】
図6は、本発明にかかるプリテンショナーの実施の形態の第3例を示し、(a)は第3例のガスジェネレータおよび閉塞部材を模式的に示す斜視図、(b)は第3例のガスジェネレータ装着部を示す斜視図、(c)は(b)におけるVIC−VIC線に沿う断面図である。
【0059】
前述の第2例のプリテンショナー8では、閉塞部材25が帯状板の両端部を折り曲げて側面視ほぼコ字状(あるいはほぼU字状)に形成されるが、図5(a)ないし(c)に示すように、この第3例のプリテンショナー8では、閉塞部材25の中央の底部25aが湾曲に曲げられて側面視ほぼU字状(あるいはほぼコ字状)に形成されている。この第3例の閉塞部材25の両側壁25b,25cもクリップ機能を有している。そして、図5(a
)に示すように、閉塞部材25はケース14aの側方から弾性的に着脱可能に嵌合支持される。このとき、湾曲した底部25aの内面はケース14aの円弧状の外周面に当接する。
第3例のプリテンショナー8の作動および効果は実質的に第2例と同じである。
【0060】
更に、第3例のプリテンショナー8を有するシートベルトリトラクタ3の他の構成および効果、この第3例のシートベルトリトラクタ3を備えたシートベルト装置1の他の構成および効果は、いずれも第1例のシートベルトリトラクタ3および第1例のシートベルト装置と同じである。
【0061】
図7は、本発明にかかるプリテンショナーの実施の形態の第4例を示し、(a)は第4例のプリテンショナーに用いられる閉塞部材を模式的に示す斜視図、(b)は、ガスジェネレータが装着された状態を部分的に示す、図5(c)の一部と同様の部分拡大断面図、(c)は(b)におけるVIIC部の部分拡大断面図である。
【0062】
前述の第2例のプリテンショナー8では、閉塞部材25の各側壁部25b,25cが、
それぞれ外面側の閉塞面25b1,25c1と内面側の嵌合支持面25b2,25c2(図5(a)に図示)とを有しているが、図7(a)ないし(c)に示すように、この第4例のプリテンショナー8では、各側壁部25b,25cは、それぞれ内面側の嵌合支持面25b2,25c2のみを有している。すなわち、各側壁部25b,25cは、閉塞部材25をケー
ス14aに支持させるための嵌合支持部とされている。
【0063】
また、第4例のプリテンショナー8では、各側壁部25b,25cの一部がそれぞれ部
分的に切断されるとともに切断部が外側に折り曲げられて閉塞部25d,25eが設けら
れている。これらの閉塞部25d,25eはそれぞれ対応する側壁部25b,25cに平行またはほぼ平行に設けられている。そして、これら閉塞部25d,25eの外面側に閉塞
面25d1,25e1が設けられている。この第4例の閉塞部材25においても、各側壁部
25b,25cおよび各閉塞部25d,25eはいずれもクリップ機能を有する。
第4例のプリテンショナー8の他の構成は第2例と同じである。
【0064】
閉塞部材25は、それぞれ各側壁部25b,25cの嵌合支持面25b2,25c2がケース14aの平坦面14b,14cに弾性的に当接するようにしてガスジェネレータ14の
ケース14aに着脱可能に嵌合支持される。また、ガスジェネレータ14がガスジェネレータ装着部13内に装着された状態では、閉塞部25d,25eの一方(図示例では、閉
塞部25d)の閉塞面25d1がガスジェネレータ装着部13の平坦な内面13a2に離間可能に当接し、排気穴13bが閉塞される。
【0065】
そして、緊急時にガスジェネレータ14がガスを発生すると、このガスの圧力によりケース14aが膨張することで、閉塞部25dがガスジェネレータ装着部13の内面13a2側に押圧される。これにより、閉塞部25dの閉塞面25d1が内面13a2に効果的に
密着し、排気穴13bはより一層気密に閉塞される。
【0066】
一方、プリテンショナー8の作動後にパイプ10内のガスを排気するために、前述の各例と同様に排気穴13bを通して所定の押圧力F以上の押圧力で閉塞面25d1を押圧す
ると、図7(c)に二点鎖線で示すように閉塞部25dが撓み変形することで、閉塞面25d1がガスジェネレータ装着部13の内面13a2から離間する。これにより、排気穴13bが開放されてパイプ10内およびガスジェネレータ装着部13内のガスが外部に排出されて、パイプ10内およびガスジェネレータ装着部13内の各圧力がいずれも大気圧となる。なお、閉塞部25dが撓み変形する際、ガスジェネレータ14のケース14aが凹み変形しながら閉塞部25dが撓み変形するようにすることもできる。
【0067】
この第4例のプリテンショナー8によれば、嵌合支持部と閉塞部25d,25eとがそ
れぞれ個別に設けられるので、嵌合支持部の閉塞部材25の支持機能がより効果的に発揮することが可能となるとともに、閉塞部25d,25eの排気穴13bの閉塞機能がより
効果的に発揮することが可能となる。
第4例のプリテンショナー8の作動および効果は実質的に第2例と同じである。
【0068】
更に、第4例のプリテンショナー8を有するシートベルトリトラクタ3の他の構成および効果、この第4例のシートベルトリトラクタ3を備えたシートベルト装置1の他の構成および効果は、いずれも第1例のシートベルトリトラクタ3および第1例のシートベルト装置と同じである。
【0069】
図8は、本発明にかかるプリテンショナーの実施の形態の第5例を示し、(a)は第5例のプリテンショナーに用いられる閉塞部材を模式的に示す斜視図、(b)は、ガスジェネレータが装着された状態を部分的に示す、図7(b)と同様の部分拡大断面図、(c)は(b)におけるVIIIC部の部分拡大断面図である。
【0070】
図8(a)ないし(c)に示すように、この第5例のプリテンショナー8では、前述の第4例のプリテンショナー8の両閉塞部25d,25eのうち、排気穴13bを閉塞する
閉塞部に、一部が排気穴13b内に進入可能な閉塞突部25fが外方側に突出するようにして突設されている。この閉塞突部25fは部分球状またはほぼ部分球状に形成されている。
第5例のプリテンショナー8の他の構成は第4例と同じである。
【0071】
ガスジェネレータ14がガスジェネレータ装着部13内に装着された状態では、閉塞突部25fが設けられている閉塞部(図示例では、閉塞部25d)の閉塞突部25fが排気穴13b内に進入するとともに、閉塞突部25fの根元における閉塞面25d1がガスジ
ェネレータ装着部13の平坦な内面13a2に当接して排気穴13bを閉塞する。そして
、前述の各例と同様にガスジェネレータ14が発生したガスにより、閉塞部25dの閉塞
面25d1が内面13a2に効果的に密着し、排気穴13bはより一層気密に閉塞される。このとき、排気穴13b内に進入する閉塞突部25fにより、排気穴13bが更に一層気密に閉塞される。
【0072】
また、プリテンショナー8の作動後にパイプ10内のガスを排気するために、前述の各例と同様に排気穴13bを通して所定の押圧力F以上の押圧力で閉塞面25d1を押圧す
る場合、この第5例の場合には閉塞突部25fを所定の押圧力F以上の押圧力で押圧する。これにより、閉塞部25dが撓み変形して、排気穴13bが開放される。
第5例のプリテンショナー8の作動および効果は実質的に第4例と同じである。
【0073】
更に、第5例のプリテンショナー8を有するシートベルトリトラクタ3の他の構成および効果、この第5例のシートベルトリトラクタ3を備えたシートベルト装置1の他の構成および効果は、いずれも第1例のシートベルトリトラクタ3および第1例のシートベルト装置と同じである。
【0074】
図9は、本発明にかかるプリテンショナーの実施の形態の第6例を示し、(a)は第6例のプリテンショナーに用いられる閉塞部材を模式的に示す斜視図、(b)は、ガスジェネレータが装着された状態を部分的に示す、図7(b)と同様の部分拡大断面図、(c)は(b)におけるIXC部の部分拡大断面図である。
【0075】
図9(a)ないし(c)に示すように、この第6例のプリテンショナー8では、前述の第5例のプリテンショナー8と同様に、閉塞部材25が嵌合支持部である一対の側壁部25b,25cと閉塞部25dとを有する。なお、第5例では一対の閉塞部25d,25eが設けられるが、この第6例では1つの閉塞部25dのみが設けられる。しかし、第6例でも一対の閉塞部25d,25eを設けることもできる。以下の説明では、1つの閉塞部2
5dのみが設けられるとして説明する。
【0076】
その場合、この第6例のプリテンショナー8では、一対の側壁部25b,25cは、図
6に示す第3例と同様の湾曲した底部25aで連結されているとともに、クリップ機能を有している。また、第5例では一対の閉塞部25d,25eが対応する側壁部25b,25cから外側に突出して設けられる、つまり、一対の閉塞部25d,25eとこれらに対応
する側壁部25b,25cとは異なる平面上に配設されている。これに対して、第6例の
プリテンショナー8では、閉塞部25dが側壁部25bと同一またはほぼ同一平面上で閉塞部材25の湾曲方向と直交またはほぼ直交する方向に配設されている。
【0077】
この閉塞部材25は、第3例の閉塞部材と同様に一対の側壁部25b,25cがガスジ
ェネレータ14の長手方向と直交する方向つまり側方からケース14aに着脱可能に嵌合支持される。また、ガスジェネレータ14がガスジェネレータ装着部13内に装着された状態では、閉塞部25dの閉塞突部25fが排気穴13b内に進入するとともに、閉塞突部25fの根元における閉塞部25dの閉塞面25d1がガスジェネレータ装着部13の
平坦な内面13a2に当接して排気穴13bを閉塞する。その場合、この第6例では各側
壁部25b,25cの外面もガスジェネレータ装着部13の平坦な内面13a2に当接する。しかし、各側壁部25b,25cの外面はガスジェネレータ装着部13の内面13a2から離間するように設けることもできる。
第6例のプリテンショナー8の構成は第5例と同じである。
【0078】
そして、プリテンショナー8の作動後にパイプ10内のガスを排気するために、前述の各例と同様に排気穴13bを通して所定の押圧力F以上の押圧力で閉塞面25d1を押圧
する場合、この第5例の場合には閉塞突部25fを所定の押圧力F以上の押圧力で押圧する。これにより、閉塞部25dが撓み変形して、排気穴13bが開放される。その場合、
この第6例では閉塞部25dは撓み変形するが、側壁部25bはほとんど変形しない。
第6例のプリテンショナー8の作動および効果は実質的に第5例と同じである。
【0079】
更に、第6例のプリテンショナー8を有するシートベルトリトラクタ3の他の構成および効果、この第6例のシートベルトリトラクタ3を備えたシートベルト装置1の他の構成および効果は、いずれも第1例のシートベルトリトラクタ3および第1例のシートベルト装置と同じである。
【0080】
図10は、本発明にかかるプリテンショナーの実施の形態の第7例を示し、(a)は図4(c)と同様の断面図、(b)は閉塞部材を示す正面図、(c)は(b)におけるXC−XC線に沿う断面に対応しかつ作動を説明する図、(d)は(a)におけるXD部の部分拡大断面図、(e)は第7例の変形例を示す正面図、(f)は(e)の右側面図である。
【0081】
前述の第1例では閉塞部材25がケース14aに接合された薄板から構成しているが、図10(a)および(b)に示すように第7例のプリテンショナー8の閉塞部材25は、円板状の頭部25gとこの頭部25gの中心から突設されるとともに排気穴13bに嵌合される軸部25hとを有するピン状に形成されている。その場合、軸部25hの径は排気穴13bにほとんど隙間なく嵌合可能な大きさに設定されている。また、頭部25gの外径は排気穴13bの径より大きく設定されている。そして、閉塞部材25がガスジェネレータ装着部13に装着された状態では、軸部25hが突設される頭部25gの面がガスジェネレータ装着部13の内面13a2に密着して排気穴13bを閉塞する閉塞面25g1とされている。
【0082】
頭部25gの閉塞面25g1と反対側の面の外周縁は面取り25g2が設けられている。また、軸部25hの外周面には、軸方向に延びる所定数(図示例では、4個)の排気溝25h1が設けられている。
【0083】
ガスジェネレータ14がガスジェネレータ装着部13内に装着される際は、まず、図10(a)に示すように閉塞部材25が予め装着される。その場合、軸部25hが排気穴13b内に嵌合されるとともに、閉塞面25g1がガスジェネレータ装着部13の内面13
2に当接される。次にこの状態で、ガスジェネレータ14が図10(a)において左方
からガスジェネレータ装着部13内に挿入されて装着される。その場合、閉塞部材25が予め装着されても、ガスジェネレータ14のケース14aにおけるガス噴出端のR部14eと頭部25gの面取り25g2との相互作用により、ガスジェネレータ14は比較的滑
らかに装着される。
第7例のプリテンショナー8の他の構成は第1例と同じである。
【0084】
ガスジェネレータ14がガスジェネレータ装着部13内に装着された状態では、閉塞部材25の閉塞面25g1がガスジェネレータ装着部13の平坦な内面13a2に当接して排気穴13bを閉塞する。そして、前述の各例と同様に緊急時にガスジェネレータ14で発生されたガスの圧力によりケース14aが膨張することで、閉塞部材25の閉塞面25g1がガスジェネレータ装着部13の内面13a2に密着し、この閉塞部材25により排気穴13bが気密に閉塞される。
【0085】
また、プリテンショナー8の作動後にパイプ10内のガスを排気するために、図10(d)に示すように排気穴13bを通して所定の押圧力F以上の押圧力で軸部25hを所定の押圧力F以上の押圧力で押圧する。これにより、閉塞部材25がケース14aを凹み変形させつつ移動して、閉塞面25g1が内面13a2から離間し、排気穴13bが排気溝25h1を通して開放される。
第7例のプリテンショナー8の作動および効果は実質的に第1例と同じである。
【0086】
更に、第7例のプリテンショナー8を有するシートベルトリトラクタ3の他の構成および効果、この第7例のシートベルトリトラクタ3を備えたシートベルト装置1の他の構成および効果は、いずれも第1例のシートベルトリトラクタ3および第1例のシートベルト装置と同じである。
【0087】
更に、図10(e)および(f)に示すように、軸部25hは、外径が排気穴13bにほとんど隙間なく嵌合可能な大径部25h2とこの大径部25h2の外径より小径の小径部25h3とにより段付きに形成することもできる。そして、通常時は大径部25h2と小径部25h3とが排気穴13b内に嵌合されることで、閉塞部材25が安定してガスジェネ
レータ装着部13に装着される。また、ガス排出時には所定の押圧力F以上の押圧力で閉塞部材25が、少なくとも大径部25h2が排気穴13bから脱出するまで移動されるこ
とで、小径部25h3の外周面と排気穴13bの内周面との間隙を通してガスが排出可能
となる。したがって、この場合には軸部25hに排気溝25h1を設けなくても済む。
【0088】
また、軸部25hは大径部25h2のみで、つまり、図10(a)に示す例の軸部25
hより軸方向の長さを短い軸部25hで構成することもできる。この場合には、所定の押圧力F以上の押圧力で閉塞部材25が押圧されたとき、軸部25hが排気穴13bから脱出することで、排気穴13bが開放される。更に、軸部25hは小径部25h3のみで段
付きに形成することなく構成することもできる。
【0089】
なお、本発明に係るプリテンショナーおよびシートベルトリトラクタは、前述の各例に限定されることはなく、種々の設計変更が可能である。例えば、パイプ10の基端部10bがガスジェネレータ装着部13とされてパイプ10とガスジェネレータ装着部13が単一部材で形成されるものとしているが、パイプ10とガスジェネレータ装着部13とを別体に形成してこれらのパイプ10とガスジェネレータ装着部13とを気密にかつ一体に接続して構成することもできる。
また、スプール駆動機構は、前述の各例の複数の力伝達部材12、リングギア15、およびピニオン19に限定されることはなく、ガスジェネレータ14でパイプ10内に発生されたガスによりスプールをシートベルト巻取り方向に回転するスプール駆動機構であれば、例えばラック・ピニオン機構等の他のどのようなスプール駆動機構を用いることもできる。
更に、排気穴13bはガスジェネレータ装着部13以外に、ガスジェネレータ14と力伝達部材12との間にパイプ10の部分に設けることもできる。
【0090】
更に、必ずしもリングギア15に円弧状のストッパ16を設ける必要はなく、特許文献1に記載されているプリテンショナーや前述の特開2001−233172号公報に記載されているプリテンショナーにも適用することができる。
要は、緊急時にガスを発生するガスジェネレータを有するプリテンショナーであれば、どのようなプリテンショナーでも、本発明は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のプリテンショナー、シートベルトリトラクタおよびシートベルト装置は、前述の緊急時の初期に作動してガスを発生するガスジェネレータを有するプリテンショナー、このプリテンショナーの作動によってシートベルトを巻き取るシートベルトリトラクタ、およびこのシートベルトリトラクタを用いて緊急時にシートベルトで乗員を拘束するシートベルト装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0092】
1…シートベルト装置、3…シートベルトリトラクタ、4…シートベルト、6…タング、7…バックル、8…プリテンショナー、9…フレーム、9b,9c…側壁、10…パイプ
、10c…切欠部、12…力伝達部材、12a…ボール、13…ガスジェネレータ装着部、13a…平坦部、13a1…外面、13a2…内面、13b…排気穴、14…ガスジェネレータ、14a…ケース、14b…平坦面、15…リングギア、16…ストッパ、17…レバー、18…回転軸、19…ピニオン、25…閉塞部材、25b…側壁部、25b1
閉塞面、25b2…嵌合支持面、25c…側壁部、25c2…嵌合支持面、25d…閉塞部、25d1…閉塞面、25e…閉塞部、25e1…閉塞面、25f…閉塞突部、25g…頭部、25g1…閉塞面、25h…軸部、25h1…排気溝、25h2…大径部、25h3…小径部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプと、緊急時に前記パイプ内にガスを発生するガスジェネレータと、前記ガスジェネレータが装着されるガスジェネレータ装着部と、前記パイプ内に発生されたガスによりスプールをシートベルト巻取り方向に回転させるスプール駆動機構とを備え、緊急時に前記ガスジェネレータで発生した前記ガスにより前記スプール駆動機構が前記スプールをシートベルト巻取り方向に回転させるプリテンショナーにおいて、
前記パイプの内部と外部とを連通する排気穴が設けられるとともに、前記排気穴を前記パイプの内部側から閉塞するとともに、前記パイプの外部側から、予め設定された所定押圧力以上の押圧力で押圧されることで移動して前記排気穴を開放する閉塞部材が配設されていることを特徴とするプリテンショナー。
【請求項2】
前記スプール駆動機構は、前記ガスによりスプールをシートベルト巻取り方向に回転させるための力を発生するとともに力を伝達する複数の力伝達部材と、少なくとも回転可能に設けられるとともに、内周に複数の内歯を有しかつ外周に被押圧部を有するリングギアと、スプール側部材に設けられるとともに、前記内歯に噛み合う外歯を有しかつ前記スプールを回転させるピニオンとを有することを特徴と請求項1に記載のプリテンショナー。
【請求項3】
前記閉塞部材は、前記ガスジェネレータのケースに接合された薄板で構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のプリテンショナー。
【請求項4】
前記閉塞部材は、前記ガスジェネレータのケースにクリップ機能で嵌合支持されることを特徴とする請求項1または2に記載のプリテンショナー。
【請求項5】
前記閉塞部材は、前記ガスジェネレータのケースに、前記ケースのガス噴出端側から前記ケースの長手方向に嵌合されて支持されることを特徴とする請求項4に記載のプリテンショナー。
【請求項6】
前記閉塞部材は、前記ガスジェネレータのケースに、前記ケースの側方から嵌合されて支持されることを特徴とする請求項4に記載のプリテンショナー。
【請求項7】
前記閉塞部材は前記ガスジェネレータのケースに嵌合支持される嵌合支持部と前記排気穴を閉塞する閉塞部とを個別に有するとともに、前記嵌合支持部が前記ケースのガス噴出端側から前記ケースの長手方向に嵌合されて支持されることを特徴とする請求項4に記載のプリテンショナー。
【請求項8】
前記閉塞部は前記嵌合支持部と異なる面に設けられることを特徴とする請求項7に記載のプリテンショナー。
【請求項9】
前記閉塞部は前記嵌合支持部と同一面に設けられることを特徴とする請求項7に記載のプリテンショナー。
【請求項10】
前記閉塞部に、前記排気穴に進入可能な閉塞突部が設けられている特徴とする請求項8または9に記載のプリテンショナー。
【請求項11】
前記閉塞部材は、前記排気穴を閉塞する閉塞面を有する頭部と、前記頭部から突設されるとともに前記排気穴に進入可能な軸部とを有し、
前記ガスジェネレータ装着部の外部から前記押圧力で前記軸部が押圧されて前記閉塞部材が移動することで前記排気穴が開放されることを特徴とする請求項1または2に記載のプリテンショナー。
【請求項12】
シートベルトを巻き取るスプールと、緊急時に前記スプールをシートベルト巻取り方向に回転させるプリテンショナーとを少なくとも有し、
前記プリテンショナーは請求項1ないし11のいずれか1に記載のプリテンショナーであることを特徴とするシートベルトリトラクタ。
【請求項13】
シートベルトと、前記シートベルトを巻き取るシートベルトリトラクタと、前記シートベルトに摺動可能に支持されたタングと、車体に設けられるとともに前記タングが係脱可能に係止されるバックルとを少なくとも有し、
前記シートベルトリトラクタは請求項12に記載のシートベルトリトラクタであることを特徴とするシートベルト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−171445(P2012−171445A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34179(P2011−34179)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(306009581)タカタ株式会社 (812)
【Fターム(参考)】