説明

プリプレグ用剥離紙

【課題】離解性および寸法安定性に優れ、リサイクル可能なプリプレグ用剥離紙を提供する。
【解決手段】熱硬化シリコーン層(I)、電離放射線硬化樹脂層(I)、目止め層(I)、紙基材、目止め層(II)、電離放射線硬化樹脂層(II)がこの順に積層され、所定の離解性を有するプリプレグ用剥離紙である。内添サイズ剤が0〜0.4質量%、乾燥紙力剤が0〜0.5%質量部である紙基材を使用して製造することができるため、安価であり、離解性に優れるため、使用後のリサイクルが可能となり、使用後の剥離紙の廃棄量を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリプレグ用剥離紙に関し、より詳細には、離解時残渣量および寸法安定性に優れるプリプレグ用剥離紙に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフシャフト、釣り竿、テニスラケット、スキーストック、車の部品、自転車のボディ等のレジャースポーツ用品、航空機、宇宙および軍事関連等の分野の材料には、炭素繊維にエポキシ樹脂を含浸させた炭素繊維強化樹脂が剥離紙に剥離可能に接着された炭素繊維プリプレグが利用されている。
【0003】
このような炭素繊維プリプレグは、プリプレグ用剥離紙に加熱溶融したエポキシ樹脂を一定の厚さで塗工し、これを冷却して半硬化状態のエポキシ樹脂層を積層させたエポキシ樹脂積層剥離紙を使用して製造される。具体的には、予めプリプレグ用剥離紙にエポキシ樹脂を積層してエポキシ樹脂積層剥離紙を調製し、このエポキシ樹脂積層剥離紙を2枚用意し、図3に示すように、2枚の前記エポキシ樹脂積層剥離紙(10)、(10’)のエポキシ樹脂層(13)、(13’)を対向して配置させ、その間に炭素繊維(20)を入れて挟み込む。エポキシ樹脂層(13)、(13’)をヒーター(30)で昇温すると前記炭素繊維(20)の間にエポキシ樹脂(13)、(13’)が含浸され、炭素繊維(20)とエポキシ樹脂(13)、(13’)が一体化した炭素繊維含浸エポキシ樹脂層(25)が形成される。次いで、プリプレグ用剥離紙(11)の上の炭素繊維含浸エポキシ樹脂層(25)の表面にポリエチレンフィルムなどの保護フィルム(40)を積層すれば、炭素繊維用プリプレグとなる。なお、炭素繊維用プリプレグは製品巻き取りロール(50)に巻き取られ、製造工程で除去されたプリプレグ用剥離紙(11’)は、剥離紙回収ロール(60)に巻き取られる。
【0004】
このようにして得られた炭素繊維用プリプレグは、プリプレグ用剥離紙(11)と保護フィルム(40)との間にある炭素繊維含浸エポキシ樹脂層(25)を未架橋の状態に維持するため、低温条件で保存される。使用時には、板状または反物状の炭素繊維プリプレグから保護フィルム(40)とプリプレグ用剥離紙(11)とを除去し、未架橋の炭素繊維含浸エポキシ樹脂層(25)を所定の厚さに積層し、次いで加熱成形して各種の形状に成形し、炭素製品を製造することができる。
【0005】
一方、炭素繊維含浸エポキシ樹脂層(25)を積層する際に、炭素繊維含浸エポキシ樹脂層(25)間に空気などが入ると空隙が生じ、層構成が破壊されるため衝撃強度が低下する場合がある。このような層構成の乱れは、層間の空隙の他に、炭素繊維含浸エポキシ樹脂層(25)がたるんだ状態で積層される場合にも発生する。例えば、炭素繊維用プリプレグを構成するプリプレグ用剥離紙(11)が収縮すると、プリプレグ用剥離紙(11)と炭素繊維含浸エポキシ樹脂層(25)との間に剥がれが生じ、積層の際に炭素繊維含浸エポキシ樹脂層(25)が均一に積層されず、層間に乱れが発生する場合がある。炭素繊維用プリプレグは、前記したように、炭素繊維(20)をエポキシ樹脂(13)、(13’)に含浸させる際に加熱され、保存時には未架橋を維持しうる程度に冷却される。このため、プリプレグ用剥離紙は、このような温度変化の大きな環境下にも寸法安定性に優れる必要がある。現在、炭素繊維の強靭性を利用して、炭素繊維プリプレグから航空機の主翼などが製造されているが、航空機には高度の安全性が要求され、したがって、炭素繊維プリプレグを構成するプリプレグ用剥離紙にも、高度の寸法安定性が要求される。
【0006】
このようなプリプレグ用剥離紙として、基紙である上質紙の両面に顔料塗被層および剥離層を積層した剥離紙の表面の平滑度が、スムースター平滑度計による測定値が60〜200mmHgであることを特徴とする剥離紙がある(特許文献1)。剥離紙上のエポキシ樹脂を加温し炭素繊維内に含浸させて一体化する際に空気を抱き込み易く、熱伝導性が悪いため均一に加熱できず含浸むらができることなどに鑑みてなされたものであり、スムースター平滑度計による測定値が60〜200mmHgであると、エポキシ樹脂を炭素繊維内に含浸させ一体化する際に、適度の平滑度によって抱き込もうとする空気が逃げ易く、熱の伝導性も均一になる、という。
【0007】
また寸法安定性に優れる剥離紙として、両面に防湿層を有する原紙の少なくとも片面に剥離処理を施したプリプレグ用工程紙であって、JIS Z 0208に準拠して測定した透湿度が、200g/m2・24時間以下であることを特徴とするプリプレグ用工程紙もある(特許文献2)。貯蔵雰囲気での湿度や温度の変化により、工程紙がプリプレグから部分的に剥がれ、プリプレグ表面に凹凸が発生し、成形体にも前記凹凸によるシワやボイドが発生するという問題に鑑みてなされたものであり、工程紙の水分率の変化を抑制することによりプリプレグから工程紙が浮き剥がれることを防止し、プリプレグ表面に凹凸の生じない、高品質なプリプレグ材を提供しうるという。
【0008】
また、カナダ標準ろ水度が所定範囲の木材パルプからなる基紙に、ガラス転移温度が20℃〜100℃のアクリル系樹脂を含浸させてなる原紙に顔料とバインダーからなる目止め層を設けた加工用原紙であって、前記バインダーが、ゲル含量が80質量%以上であるラテックスであり、前記目止め層の顔料とラテックスの質量比が100/45〜100/15であることを特徴とする加工用原紙もある(特許文献3)。寸法安定性や剥離剤の目止め性に優れると共に、製紙原料として再生可能な加工用原紙が提供される、という。
【0009】
更に、木材パルプを主体とした基紙に、耐水化剤によって耐水化処理されたポリビニルアルコールが塗工又は含浸されてなり、110℃で2時間加熱後、23℃で相対湿度50%の条件下に60分放置後の幅方向の伸び率が1.0%以下であることを特徴とする工程剥離紙原紙もある(特許文献4)。プリプレグの製造工程で、中間工程用剥離紙は、加熱による紙中の水分減少により縮み、その後の冷却工程で空気中の水分を吸収して伸び、この伸縮によって炭素繊維強化樹脂と剥離紙との間で剥離が生じるという問題に鑑みてなされたものであり、加熱後に冷却により水分を吸収しても、冷却途中で一定時間が経過するまで伸びを少なくして、炭素繊維強化樹脂と剥離紙との剥離や変形を解消しうる、という。
【特許文献1】特開平8−174767号公報
【特許文献2】特開2005−220482号公報
【特許文献3】特開2006−274483号公報
【特許文献4】特開2007−009348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記したように、プリプレグ用剥離紙には、高度の寸法安定性が要求される。特許文献1や特許文献2では、剥離紙を構成する紙基材の表面の平滑度や透湿度を規定し、特許文献3ではカナダ標準ろ水度が所定範囲の木材パルプからなる基紙を使用し、特許文献4では剥離紙の伸び率を制限することで、プリプレグ用剥離紙の寸法安定性を確保し、プリプレグの部分的な剥離を防止している。しかしながら、このような剥離紙に使用される紙基材は高価である。図3に示すように、プリプレグは、2枚のエポキシ樹脂積層剥離紙(10)、(10’)を使用して製造されるため、プリプレグの2倍の長さのプリプレグ用剥離紙が使用され、すなわちプリプレグ用剥離紙に使用される紙基材もプリプレグの2倍の長さが必要となる。したがって、安価な紙基材を使用し、かつ寸法安定性に優れるプリプレグ用剥離紙の開発が望まれる。
【0011】
また、炭素繊維プリプレグに使用される剥離紙は、一度プリプレグ用剥離紙として使用された後は、廃棄されることが一般的である。上記したように、プリプレグの2倍の長さの剥離紙が使用され、プリプレグの使用後にはこれら剥離紙の全てが廃棄されるため、廃棄処理に所定の時間や労力が課される。したがって、一度使用したプリプレグ用剥離紙は、リサイクルできるものであることが好ましいが、吸湿寸法安定性や吸湿率を確保するため、尿素樹脂や酸コロイドメラミン樹脂などの湿潤紙力剤やカチオンデンプン、ポリアクリルアミドなどの紙力増強剤を1〜3%と多量に添加し、もしくはメラミン系、スチレンアクリル系の湿潤紙力剤を3%と多量に含浸させ、またはガラス繊維を混抄するなどの方法がとられている。このため、パルプと疎水性の紙力増強剤や樹脂、ガラス繊維が強固に結合しているため水に溶解せず、古紙としてのリサイクルが困難である。なお、古紙の再生には、パルプに戻す離解工程、脱インク工程、漂白工程、パルプにサイズ剤その他を配合する調成工程、抄紙工程などを経て再生される。古紙として再利用するには、離解性に優れることが重要である。このため、使用後に離解性に優れ、かつ使用時には所定の剛性を確保できるプリプレグ用剥離紙の開発が望まれる。
【0012】
更に、プリプレグ用剥離紙は、寸法安定性、離解性と共に優れた炭素繊維を容易に剥離できる剥離性が要求される。上記特許文献1〜4ではシリコーン系樹脂などが剥離層として使用されているが、剥離層自体はプリプレグ用剥離紙に所定の強度で積層される必要があり、使用後のプリプレグ用剥離紙の離解性低下の一因となりうる。そこで、寸法安定性、剥離性に優れ、かつ使用後の離解性に優れるプリプレグ用剥離紙の開発が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、炭素繊維プリプレグ用剥離紙について詳細に検討した結果、内添サイズ剤の含有量が0〜0.4質量%、内添する乾燥紙力剤の含有量が0〜0.5質量部である紙基材を使用するとプリプレグ用剥離紙の離解性に優れること、紙基材の両面に電離放射線硬化樹脂層と熱硬化シリコーン層とを積層することで寸法安定性を確保することができかつ剥離性に優れるプリプレグ用剥離紙を製造することができること、特に、電離放射線硬化樹脂層として重量平均分子量(Mw)と分散比(Mw/Mn)、およびガラス転移点温度(Tg)を所定範囲に限定した(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体からなる電離放射線硬化性組成物を電離放射線により硬化させてなる電離放射線硬化樹脂層は、寸法安定性と共に優れた剛性を有することなどを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0014】
本発明で使用する(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体からなる電離放射線硬化樹脂層は、使用後の離解性に優れるため、紙基材のリサイクルが可能となり、資源の有効利用を図ることができる。
【0015】
また、本発明のプリプレグ用剥離紙は、安価な紙基材を使用して製造することができ、経済的である。
また、本発明のプリプレグ用剥離紙で使用する(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体は、剛性を有しかつタックフリーであるため、プリプレグ用剥離紙の製造が容易である。
【0016】
更に、本発明のプリプレグ用剥離紙は、(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体からなる電離放射線硬化樹脂層の上に剥離層として熱硬化シリコーン層を使用することで、剥離性に優れるプリプレグ用剥離紙を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の第一は、熱硬化シリコーン層(I)、電離放射線硬化樹脂層(I)、目止め層(I)、紙基材、目止め層(II)、電離放射線硬化樹脂層(II)がこの順に積層され、離解時残渣量が0〜1.0%であることを特徴とする、プリプレグ用剥離紙である。内添サイズ剤の含有量が0〜0.4質量部である紙基材や乾燥紙力剤の含有量が0〜0.5質量%の紙基材を使用すると離解性に優れるプリプレグ用剥離紙を調製することができる。また、紙基材に目止め層を形成することで電離放線硬化樹脂層との接着性を付与し、電離放射線硬化樹脂層の積層によって寸法安定性および剛性を付与し、更に熱硬化シリコーン層を積層することで、剥離性を付与することができる。なお、本発明における離解時残渣量は、実施例に記載する方法で評価した値とする。本発明の好適な態様の一例を示す図1を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。
【0018】
(1)プリプレグ用剥離紙
本発明のプリプレグ用剥離紙は、図1に示すように、熱硬化シリコーン層(I)(140)、電離放射線硬化樹脂層(I)(130)、目止め層(I)(120)、紙基材(110)、目止め層(II)(120’)、電離放射線硬化樹脂層(II)(130’)がこの順に積層されたものである。熱硬化シリコーン層(I)(140)にエポキシ樹脂層を積層することで、エポキシ樹脂積層剥離紙として使用することができる。
【0019】
一方、図2に示すように、前記電離放射線硬化樹脂層(II)(130’)に次いで熱硬化シリコーン層(II)(140’)が積層されていてもよい。プリプレグ用剥離紙は、片面にエポキシ樹脂が積層されてエポキシ樹脂積層剥離紙となり、長尺のエポキシ樹脂積層剥離紙を保存する際にロール状に巻き取られる。したがって、巻取り後のエポキシ樹脂積層剥離紙の円滑な引き出しを確保するため、紙基材の最外層の両面に、それぞれ熱硬化シリコーン層(I)(140)、熱硬化シリコーン層(II)(140’)が積層された両面剥離紙であることが好ましい。この際、熱硬化シリコーン層(I)と熱硬化シリコーン層(II)との剥離強度は、異なっていることが好ましい。剥離強度の低い面にエポキシ樹脂層を積層させロール状に巻き取ると、剥離紙とエポキシ樹脂層との密着性を確保しつつ、かつ容易にエポキシ樹脂積層剥離紙をロールからを引き出すことができる。
【0020】
本発明では、紙基材の双方に積層される目止め層(I)(120)、目止め層(II)(120’)は、熱可塑性樹脂層または造膜性を有する樹脂と無機顔料との混合物層から構成されることが好ましい。目止め層(120)は、単層に限定されず多層であってもよく、例えば、熱可塑性樹脂層(120A)が、異なる2種以上の熱可塑性樹脂からなる2層以上で構成されていてもよい。また、本発明では、目止め層(I)、目止め層(II)は、同一であっても異なっていてもよい。したがって、紙基材の片面に熱可塑性樹脂層からなる目止め層を形成し、他面に熱可塑性樹脂層または造膜性を有する樹脂と無機顔料との混合物層から構成される目止め層を形成するものであってもよい。
【0021】
また、本発明のプリプレグ用剥離紙を構成する電離放射線硬化樹脂層(I)(130)、電離放射線硬化樹脂層(II)(130’)は、無機顔料を含有するものであってもよい。電離放射線硬化樹脂層(130,130’)も、単層でもよく2層以上の多層であってもよく、例えば、電離放射線硬化樹脂層(130)が、無機顔料の含有量の異なる2層以上の電離放射線硬化樹脂層であってもよい。本発明では、無機顔料を含有する電離放射線硬化樹脂層(130A)を、前記した造膜性を有する樹脂と無機顔料との混合物からなる目止め層(120)の上に積層すると、特に目止め効果に優れる。なお、電離放射線硬化樹脂層(I)(130)と電離放射線硬化樹脂層(II)(130’)も、同一であっても異なっていてもよい。
【0022】
本発明のプリプレグ用剥離紙は、離解時残渣量が0〜1.0%、より好ましくは0〜0.5%、特に好ましくは0〜0.3%であることを特徴とする。従来のプリプレグ用剥離紙は、寸法安定性を確保するために内添サイズ剤や乾燥紙力剤、湿潤紙力剤などの添加剤を大量に配合して紙基材を調製したため、使用後のプリプレグ用剥離紙を紙資源として再利用する際に離解性に劣り、リサイクルが困難であった。しかしながら本発明では、熱硬化シリコーン層(I)、電離放射線硬化樹脂層(I)、目止め層(I)、紙基材、目止め層(II)、電離放射線硬化樹脂層(II)をこの順に積層することで、紙基材の寸法安定性が十分でない場合でも、プリプレグ用剥離紙の高い寸法安定性を確保しうることが判明した。このため、紙基材に配合する内添サイズ剤を使用せず、また乾燥紙力剤の配合量を低減した場合でも強度や寸法安定性に優れるプリプレグ用剥離紙を調製できる。本発明において、「離解時残渣量」とは、後記する実施例の離解性の項で記載する方法で測定した残渣量を、プリプレグ用剥離紙の単位あたりの残渣の百分率で評価したものである。
【0023】
(2)紙基材
本発明で使用する紙基材は、電離放射線硬化樹脂層(130)および熱硬化シリコーン層(140)を積層する工程に耐え、炭素繊維をエポキシ樹脂に含浸させるための加熱温度に耐えるものであり、内添サイズ剤の含有量は0〜0.4質量%、より好ましくは0〜0.3質量%、より好ましくは0〜0.2質量%である。この条件であれば、クラフト紙、上質紙、片艶クラフト紙、純白ロール紙、グラシン紙、カップ原紙などの非塗工紙の他、天然パルプを用いない合成紙なども用いることができる。前記したように、電離放射線硬化樹脂層(I)、電離放射線硬化樹脂層(II)を積層することで脱水や吸水を防止して寸法安定性を確保できるため、従来からプリプレグ用剥離紙の紙基材として使用されない上記紙基材を使用して寸法安定性を確保でき、かつ内添サイズ剤の含有量を上記に限定することで離解性を確保し、上記紙基材を使用することで寸法安定性および離解性に優れるプリプレグ用剥離紙を製造することができる。
【0024】
なお、紙とは、植物繊維その他の繊維を水の中でバラバラにほぐして漉き上げ薄く平らにしたものであり、JIS(日本工業規格)には、「紙とは植物繊維その他の繊維をこう着させて製造したもの」と定義され、繊維を取り出してこう着させものであることが要求され、古紙のリサイクルでも同様である。本発明では、リサイクルの際のプリプレグ用剥離紙の離解性について検討したところ、紙基材に含まれるサイズ剤の含有量が所定範囲内であると解離性に優れることを見出したものである。サイズ剤には、パルプに調合する内添サイズ剤と紙の表面に塗布する外添サイズ剤とがあるが、本発明では、パルプ調合時に添加された内添サイズ剤の含有量を上記範囲とする。外添サイズ剤は、使用済みプリプレグ用剥離紙のリサイクルの際に物理的操作によってパルプと分離されやすいが、内添サイズ剤は、物理的操作でパルプと分離され難く、その含有量が解離性を左右することが判明したからである。なお、内添サイズ剤の定着剤は、上記内添サイズ剤の含有量に含まない。
【0025】
本発明で好ましく使用できる内添サイズ剤としては、中性ロジンやアルキルケテンダイマー(alkyl ketene dymer)、アルケニル無水コハク酸(alkenyl succinic anhydride)などがある。これらは、溶液、エマルジョンなどとして添加することができる。本発明では、内添サイズ剤の含有量は0〜0.4質量%と低量である。従来のプリプレグ用剥離紙に使用される紙基材には、寸法安定性を確保するために多量の内添サイズ剤が配合されているが、本発明のプリプレグ用剥離紙は、熱硬化シリコーン層(I)、電離放射線硬化樹脂層(I)、目止め層(I)、紙基材、目止め層(II)、電離放射線硬化樹脂層(II)をこの順に積層することで寸法安定性を確保することができるため、紙基材自体の寸法安定性を高度に維持する必要はなく、このため内添サイズ剤の配合量を低減し、これによって紙基材としてのリサイクル時の離解性を向上させることができるからである。
【0026】
また、本発明で使用する紙基材は、乾燥紙力剤の含有量を0〜0.5質量%、好ましくは0〜0.3質量%、特に好ましくは0.1〜0.3質量%に制限することができる。内添サイズ剤と同様に、紙基材に配合する乾燥紙力剤の配合量を低減してもプリプレグ用剥離紙の寸法安定性を確保できるからである。なお、このような乾燥紙力剤としては、ポリアクリルアミド系化合物があり、変性ポリアクリルアミド、逆カチオンポリアクリルアミド、ノニオン系ポリアクリルアミドなど各種市販の乾燥紙力剤を使用することができる。
【0027】
本発明の紙基材には、上記内添サイズ剤や乾燥紙力剤のほかに、サイズ剤の定着剤、填料、紙力増強剤などを含めてもよい。このような配合剤として、カチオン性のポリアクリルアミドやカチオン性デンプン、酸化デンプン、カチオニックスターチ、ポリアクリルアミド等があり、例えばカチオンデンプンの場合の含有量は、紙基材に対して0.4〜0.6質量である。また、填料は、繊維間の隙間を埋め、不透明度・白色度・平滑度・インク吸収性を向上させるものであり、カオリンなどのクレー、タルク(滑石)、炭酸カルシウム、二酸化チタン、ホワイトカーボンなどがある。填料の含有量は、紙基材の5〜25質量%である。
【0028】
本発明において、紙基材として使用する紙としては、秤量50〜300g/m2、好ましくは100〜200g/m2である。この範囲であれば、目止め層、電離放射線硬化樹脂層および熱硬化シリコーン層を積層することができ、かつ再使用に適する強度を有する剥離紙を製造することができる。また、紙は、中性紙であることが好ましい。硫酸バンドなどを含む酸性紙は、繰り返し使用されると熱劣化が発生し、このため早期に再使用が困難となる場合がある。中性紙であれば、このような熱劣化を防止することができる。
【0029】
また、硫酸バンドを使用しない中性紙であることが最も好ましいが、硫酸バンドを使用してpH6〜9の中性領域で抄紙することも可能である。その他、必要に応じて上記の他、製紙用各種填料、歩留向上剤、結合剤、分散剤、凝集剤、可塑剤、接着剤を適宜含有していてもよい。
【0030】
更に、本発明で使用する紙基材としては、例えば一般的な、クレイコート紙、微塗工印刷用紙、塗工印刷用紙、樹脂コート紙、加工原紙、剥離原紙、両面コート剥離原紙などの予め後記する目止め層が形成された市販品を使用することもできる。
【0031】
なお、本発明のプリプレグ用剥離紙を構成する紙基材は、紙基材自体の離解時残渣量が0〜1.0%であることが好ましい。紙基材の離解時残渣量が上記範囲であれば、この紙基材を使用して製造したプリプレグ用剥離紙の離解時残渣量を0〜1.0%に調整することができ、プリプレグ用剥離紙の紙資源としてのリサイクルを可能とすることができる。なお、本発明において、紙基材の離解時残渣量とは、後記する実施例の離解性の評価方法において、プリプレグ用剥離紙5.00g±0.05gに代えて同量の紙基材を使用して測定した残渣量から算出したものとする。
【0032】
(3)目止め層
目止め層は、紙基材と電離放射線硬化樹脂層との間に形成される層であり、単層に限らず2層以上の多層であってもよく、耐熱性、平滑性、耐溶剤性、目止め効果を確保するために配設される。本発明では、目止め層は、熱可塑性樹脂層または造膜性を有する樹脂と無機顔料との混合物層から構成されることが好ましい。更に、熱可塑性樹脂は、2種以上の熱可塑性樹脂を使用して、2層以上の多層としてもよい。
【0033】
(i)熱可塑性樹脂層
使用しうる熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂の他、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂、その他、シリコーン系樹脂、アミノアルキッドを含むアルキッド系樹脂などが例示される。この中でも、ポリプロピレン系樹脂やポリメチルペンテン系樹脂は、耐熱性、加工性に優れる点で好ましい。
【0034】
本発明で使用するポリプロピレン系樹脂は、プリプレグ用剥離紙としての耐熱性を損なわない限り、プロピレン単独重合体に限らず、プロピレンを主体とし、このプロピレンと例えば、エチレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、4−ポリメチルペンテン−1などのα−オレフィンとの共重合体であってもよい。
【0035】
また、ポリメチルペンテン系樹脂は、4−メチル−1−ペンテンを主成分とするポリマーであり、4−メチル−1−ペンテンの単独重合体の他、4−メチル−1−ペンテンと他のα−オレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−テトラデセン、1−オクタデセン等の炭素数2〜20のα−オレフィンとの共重合体であってもよい。
【0036】
前記したように、熱可塑性樹脂層は、単層に限定されない。例えば、ポリプロピレン系樹脂およびポリメチルペンテン系樹脂から選ばれる第一ポリオレフィン系樹脂層(120A1)と、前記第一ポリオレフィン系樹脂層を構成する樹脂とポリエチレン系樹脂との組成物からなる第二ポリオレフィン系樹脂層(120A2)とからなる2層としてもよい。この際、第二ポリオレフィン系樹脂層において、ポリエチレン系樹脂の配合量は、5〜80質量%、より好ましくは10〜50質量%である。ポリエチレンはポリプロピレン系樹脂やポリメチルペンテン系樹脂などよりも融点が低いが、上記範囲であれば、第一ポリオレフィン系樹脂層(120A1)と紙基材(110)とを好適に接着することができ、かつエポキシ樹脂含浸時の耐熱性を確保することができるからである。なお、使用するポリエチレン系樹脂としては特に制限はなく、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンのいずれでもよい。ただし、密度によって融点が相違するため、好ましくは融点が90〜130℃、より好ましくは110〜120℃のものである。
【0037】
上記熱可塑性樹脂層は、前記ポリオレフィン系樹脂または組成物樹脂を、ロールコート、グラビアコート、押出しコート、ナイフコート、ミヤバーコート、ディップコートなどで紙基材に積層することで調製することができる。なお、熱可塑性樹脂層が多層である場合には、共押出しなどに紙基材に積層してもよい。
【0038】
熱可塑性樹脂層の厚さは、3〜40μmであることが好ましく、より好ましくは5〜20μmである。3μmより薄いと紙基材との接着性が低下する場合があり、一方、40μmを超えると剥離紙のカールが大きくなる場合がある。
【0039】
本発明では、熱可塑性樹脂層に表面処理がなされていてもよい。このような表面処理によって電離放射線硬化樹脂層との密着性を向上させることができる。このような表面処理としては、フレーム処理、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理、その他等の前処理などがある。また、予め、プライマーコート剤、アンダーコート剤、アンカーコート剤、接着剤、あるいは、蒸着アンカーコート剤等を任意に塗布し、表面処理することもできる。なお、前記コート剤としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂あるいはその共重合体ないし変性樹脂、セルロース系樹脂、その他等をビヒクルの主成分とする樹脂組成物を使用することができる。
【0040】
このような表面処理の中でも、特に、コロナ処理やプラズマ処理を行うことが好適である。また、プラズマ処理としては、気体をアーク放電により電離させることにより生じるプラズマガスを利用して表面改質を行なうプラズマ処理がある。プラズマガスとしては、上記のほかに、酸素ガス、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の無機ガスを使用することができる。すなわち、後記する物理的気相成長法または化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜を形成する直前に、インラインでプラズマ処理を行うことにより、基材フィルムの表面の水分、塵などを除去すると共にその表面の平滑化、活性化、その他等の表面処理を可能とすることができる。更に、本発明では、プラズマ処理としては、プラズマ出力、プラズマガスの種類、プラズマガスの供給量、処理時間、その他の条件を考慮してプラズマ放電処理を行うことが好ましい。また、プラズマを発生する方法としては、直流グロー放電、高周波放電、マイクロ波放電、その他の装置を使用することができる。また、大気圧プラズマ処理法によりプラズマ処理を行なうこともできる。
【0041】
(ii)無機顔料との混合物層
混合物層としては、造膜性を有する樹脂に対して無機顔料を0.5〜50質量%含有したものを好適に使用することができる。造膜性を有する樹脂としては、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、セルロース誘導体、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、アミノアルキッド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、SBRなどの合成ラテックス、天然ゴム、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン系重合体、アクリロニトリル−ブタジエン系重合体、メチルメタアクリレート−ブタジエン系重合体、2−ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン系重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリレート系重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル共重合体、酢ビ−エチレン系共重合体、アクリレート−スチレン系重合体、ポリエチレン、塩化ビニル系重合体、塩化ビニリデン系重合体、エポキシ含有樹脂などを好適に使用することができる。これらは、2種以上を混合して使用してもよい。
【0042】
無機顔料としては、タルク、カオリンクレイ、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛などがあり、無機顔料100質量部に対して、前記造膜性を有する樹脂を20〜30質量部を配合する。造膜性を有する樹脂が30質量部を上回ると目止め効果が低減する場合があり、一方、20質量部を下回ると平滑性を阻害する場合がある。この目止め層は、好ましくは0.5〜20g/m2で十分である。目止め材料の塗工は、前記した熱可塑性樹脂層と同様の方法で行うことができる。目止め材料のコーティングは、固形分100質量部に対して通常10〜1000質量部の溶剤で希釈して塗工される。溶剤の希釈により塗工に適正な粘度、例えば25℃において10〜3000mPa・秒の粘度を付与することができる。
【0043】
なお、紙基材に目止め層を形成した後、カレンダー処理などを行って平滑化を行ってもよい。
(4)電離放射線硬化樹脂層
本発明で使用する電離放射線硬化樹脂層は、(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)からなる電離放射線硬化性組成物、または(メタ)アクリル酸エステル35〜80質量部、グリシジル(メタ)アクリル酸エステル20〜60質量部、他の(メタ)アクリル酸エステル0〜30質量部からなる共重合体に、(メタ)アクリル酸を10〜30質量部反応させてなる(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(II)からなる電離放射線硬化性組成物を電離放射線により硬化させたものであり、当該(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)は、重量平均分子量(Mw)が5,000〜200,000、より好ましくは15,000〜100,000、特に好ましくは15,000〜70,000である。また、(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)の分散比(Mw/Mn)は1.0〜5.0、より好ましくは1.5〜4.0、特に好ましくは1.9〜3.5であり、ガラス転移点温度(Tg)は40〜150℃、より好ましくは65〜120℃、特に好ましくは65〜90℃である。なお、本発明において、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によりポリスチレン換算で求めた値である。プリプレグ用剥離紙は、寸法安定性と共に、ガラス繊維にエポキシ樹脂を含浸する工程に耐えうる耐熱性が要求される。本発明によれば、上記(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体からなる電離放射線硬化性組成物は、寸法安定性に優れると共に、エポキシ樹脂含浸時にも過度に軟化せず賦型性に優れ、しかも電離放射線硬化樹脂層形成時にタックフリーであるため原反の巻き取りが容易で、極めて操作性に優れる。
【0044】
このような(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)としては、例えば(メタ)アクリレート系単量体単位(A)とエポキシ基含有(メタ)アクリレート系単量体単位(B)とを含むエポキシ基含有共重合体(C)に、(メタ)アクリル酸を反応させて得ることができる。
【0045】
本発明において(メタ)アクリレート系単量体単位(A)としては、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、2−(ジシクロペンタニルオキシ)エチルアクリレート、2−(ジシクロペンタニルオキシ)エチルメタクリレート、2−(ジシクロペンタニルオキシ)エチル−2'−(アクリロイルオキシ)エチルエーテル、2−(ジシクロペンタニルオキシ)エチル−2'−(メタクリロイルオキシ)エチルエーテル、2−{2−(ジシクロペンタニルオキシ)エチルオキシ}−1−{2'−(アクリロイルオキシ)エチルオキシ}エタン、2−{2−(ジシクロペンタニルオキシ)エチルオキシ}−1−{2'−(メタクリロイルオキシ)エチルオキシ}エタン、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、2−(ジシクロペンテニルオキシ)エチルアクリレート、2−(ジシクロペンテニルオキシ)エチルメタクリレート、2−(ジシクロペンテニルオキシ)エチル−2'−(アクリロイルオキシ)エチルエーテル、2−(ジシクロペンテニルオキシ)エチル−2'−(メタクリロイルオキシ)エチルエーテル、2−{2−(ジシクロペンテニルオキシ)エチルオキシ}−1−{2'−(アクリロイルオキシ)エチルオキシ}エタン、2−{2−(ジシクロペンテニルオキシ)エチルオキシ}−1−{2'−(メタクリロイルオキシ)エチルオキシ}エタン、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレートなどがある。これらの中でも、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレートなどを好適に使用することができる。
【0046】
また、エポキシ基含有(メタ)アクリレート系単量体単位(B)としては、グリシジルメタクリレート、メチルグリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、アジリジニル(メタ)アクリレートなどがある。
【0047】
上記(メタ)アクリレート系単量体単位(A)とエポキシ基含有(メタ)アクリレート系単量体単位(B)との配合比は、単量体単位の合計質量中に上記エポキシ基含有(メタ)アクリレート系単量体単位(B)を5〜95質量%となるように配合することである。5質量%を下回ると、十分な二重結合当量を確保することができず、(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)の硬化後の耐溶剤性、耐擦過性が損なわれる場合がある。一方、95質量%を超えるとTgが低くなりすぎることによる未硬化膜のタック感が生じ、賦型性が損なわれる場合がある。
【0048】
また、本発明で使用する電離放射線硬化性組成物は、(メタ)アクリル酸エステル35〜80質量部、グリシジル(メタ)アクリル酸エステル20〜60質量部、他の(メタ)アクリル酸エステル0〜30質量部からなる共重合体に、(メタ)アクリル酸を10〜30質量部反応させてなる(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(II)であってもよい。(メタ)アクリル酸エステルおよび他の(メタ)アクリル酸エステルは、上記(メタ)アクリレート系単量体単位(A)に該当し、グリシジル(メタ)アクリル酸エステルはエポキシ基含有(メタ)アクリレート系単量体単位(B)に該当する。したがって、他の(メタ)アクリル酸エステルは、上記(メタ)アクリレート系単量体単位(A)の中から適宜選択することができる。
【0049】
反応は、上記単量体単位をラジカル開始剤の存在下で共重合して得られる。ラジカル開始剤としては特に制限されるものではないが、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1′−アゾビス−(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、アゾビスメチルブチロニトリル、2,2′−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビスイソ酪酸ジメチル等のアゾ化合物;過酸化水素;ラウロイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、サクシニックアシッドパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエイト、m−トルオイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ−t−ブチル−ジパーオキシイソフタレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイドなどのパーオキサイド;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、塩素酸ソーダ等の過酸化物、あるいはこれら過酸化物と還元剤との組合せによるレドツクス系開始剤等一般的なラジカル開始剤を重合方法に合わせて適宜採択し得る。上記重合開始剤の使用量は、その種類や重合条件で異なるが、上記単量体100質量部に対して通常、0.1〜10質量部である。
【0050】
重合温度は、重合開始剤の種類によるが、通常40〜180℃、好ましくは50〜150℃、より好ましくは60〜130℃である。また、反応圧は、大気圧でもよく、加圧条件でもよく、通常0.15〜0.5MPである。なお、重合時間は、3〜15時間である。
【0051】
上記のような単量体単位(A)、単量体単位(B)を溶液重合により重合する。溶液重合に使用しうる溶媒としては、n−ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素化合物;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンなどの芳香族炭化水素化合物;テトラヒドロフラン、ジ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル化合物などの有機溶媒、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、エチルベンゼン、メチルエチルケトン、酢酸ブチル等の公知の溶剤が使用できる。中でも、メチルエチルケトン、メタノール、トルエン、エチルベンゼン、酢酸ブチル等を用いることが好ましい。このような溶媒は1種を用いても2種以上を併用してもよい。
【0052】
反応溶媒中の単量体濃度は10〜80質量%が好ましい。単量体濃度が10重量%より小さいと十分な反応速度が得られないことがあり、80質量%より高いと反応中にゲル化物が生じる恐れがある。
【0053】
十分な反応速度を得るために、本反応は触媒を用いて行うのが好ましい。触媒としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィンなどのホスフィン類、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミンなどのアミン類、ジメチルスルフィド、ジフェニルスルフィドなどのスルフィド類などを用いることができるが、反応速度の面からホスフィン類が好ましく、特にトリフェニルホスフィンが好ましい。
【0054】
これらの触媒の量はエポキシ基含有(メタ)アクリレート系単量体単位(B)に対して、通常、0.1〜10質量%である。触媒量がエポキシ基含有(メタ)アクリレート系単量体単位(B)に対して0.1重量%より少ない場合には十分な反応速度が得られないことがあり、10質量%より多く加えると生成した樹脂の諸物性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0055】
反応中のゲル化物の生成を防止するために、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−アセトアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ベンゾオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルなどのN−オキシラジカル系化合物;ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−N,N−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルカテコール、4,4'−チオ−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)などのフェノール系化合物;フェノチアジン、N,N'−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、N,N'−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N'−イソプロピル−p−フェニレンジアミンなどのアミン化合物;1,4−ジヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ジヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのヒドロキシルアミン系化合物;ベンゾキノン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンなどのキノン系化合物;塩化第一鉄、ジメチルジチオカルバミン酸銅などの銅化合物などが挙げられる。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの重合禁止剤の量は反応液全体に対して1〜10000ppmであるのが好ましい。
【0056】
次いで、得られた共重合体(C)に(メタ)アクリル酸を反応させると(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)、(II)を得ることができる。(メタ)アクリル酸、より好ましくはアクリル酸で変性することで(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体に二重結合を導入することができる。本発明で使用する(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)は電離放射線硬化膜をなすものであり、硬化によって耐溶媒性、耐熱性などを確保するため、二重結合当量が0.5〜4.5であることが好ましく、より好ましくは0.5〜4.0、特に好ましくは0.7〜3.6である。したがって、(メタ)アクリル酸は、二重結合当量が上記範囲となるように共重合体(C)と反応させるとよい。
【0057】
共重合体(C)と(メタ)アクリル酸との反応は、溶液中で3級アミン触媒、4級アンモニウム塩触媒、3級ホスフィン触媒、4級ホフフィン塩触媒、有機錫化合物触媒の存在下で行うことが好ましい。具体的には、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィンなどのホスフィン類、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミンなどのアミン類、ジメチルスルフィド、ジフェニルスルフィドなどのスルフィド類などを用いることができる。
【0058】
上記反応時間、反応温度は、選択した溶媒や反応圧力などによって異なるが、圧力が大気圧〜0.2MPaで、通常、温度50〜160℃、反応時間は3〜50時間である。
本発明の電離放射線硬化性組成物は、重量平均分子量(Mw)が5,000〜200,000であり、分散比(Mw/Mn)が1.0〜5.0であり、ガラス転移点温度(Tg)が40〜150℃の(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)を含む。(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)のTgが40℃より低いと、未硬化の膜にタックが発生し、シートの巻き取りが損なわれる場合がある。一方、150℃を超えると、硬化後の可撓性が損なわれる場合がある。本発明に規定するTgの測定は、後記する実施例に記載する方法で測定するものとする。
【0059】
なお、(メタ)アクリル酸エステル35〜80質量部、グリシジル(メタ)アクリル酸エステル20〜60質量部、他の(メタ)アクリル酸エステル0〜30質量部からなる共重合体に、(メタ)アクリル酸を10〜30質量部反応させてなる(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(II)は、重量平均分子量(Mw)やTgの制限はないが、プリプレグ用剥離紙とするには、ガラス転移温度が40〜150℃であることが好ましく、より好ましくは65〜120℃である。Tgは重量平均分子量(Mw)や二重結合当量と相関するため、上記ガラス転移温度を満たすように二重結合を含め、かつ重量平均分子量(Mw)を調製すればよい。好ましくは5,000〜200,000、より好ましくは15,000〜100,000、特に好ましくは15,000〜70,000である。5,000を下回ると、耐溶剤性や強靭性に劣る場合があり、一方、200,000を超えると樹脂粘度が高くなり、取り扱いが困難となる場合がある。また、ガラス転移点温度(Tg)は40〜150℃、より好ましくは65〜120℃、特に好ましくは65〜90℃である。この範囲であれば、(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(II)を硬化させた後に、耐溶剤性、耐擦過性に優れ、かつ未硬化膜のタック感がなく、優れるからである。
【0060】
本発明で用いられる電離放射線硬化性組成物は、上記(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)、(II)のみからなるものであってもよい。組成物とは2種以上の物質が配合されたものであるが、(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)の分散比から明らかなように、異なる分子量の(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体が含まれているため、本願では(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体のみからなる場合も電離放射線硬化性組成物と称する。
【0061】
本発明で使用する電離放射線硬化性組成物には、更に無機顔料、光重合開始剤、その他を配合してもよい。無機顔料の配合により、目止め層との密着性を向上させることができる。このような無機顔料として、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛などが例示できる。無機顔料は、電離放射線硬化膜に0.5〜50質量%、より好ましくは1〜10質量%となるように配合することが好ましい。電離放射線硬化樹脂層が2層以上の多層で構成される場合には、各層における無機顔料の配合量が上記範囲となる。
【0062】
電離放射線硬化性組成物に配合しうる光重合開始剤としては、ベンゾインエチルエーテル、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントンなどがある。光重合開始剤の配合量は、(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体100質量部に対して、1〜10質量部である。
【0063】
更に、該(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体の硬化特性を改質するために、電離放射線硬化性組成物に任意成分として他の樹脂、シリコーン化合物、反応性モノマーなどをその特性を害しない範囲で含有させてもよい。
【0064】
他の樹脂としては、メタクリル樹脂、塩素化ポリプロピレン、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタールなどがあり、反応性モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどがある。
【0065】
この電離放射線硬化性組成物は、(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体100質量部に対して10〜1000質量部の溶剤で希釈して塗工してもよい。溶剤の希釈により塗工に適正な粘度、例えば、25℃において10〜3000mPa・秒の粘度を付与するとともに、これを乾燥する工程においてシリコーン化合物の適正な表面への移行を可能にする。
【0066】
溶媒としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶媒、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒などが用いられる。
【0067】
塗工方式としては、ダイレクトグラビアコート、リバースグラビアコート、グラビアオフセットコート、マイクログラビアコート、ダイレクトロールコート、リバースロールコート、カーテンコート、ナイフコート、エアナイフコート、バーコート、ダイコート、スプレーコートなどの公知の方法が用いられ、熱可塑性膜上に塗工後、温度90〜130℃で乾燥および加熱して、乾燥炉で溶剤を蒸発させて電離放射線硬化性組成物を熱硬化させる。この温度は、電離放射線硬化性組成物の軟化点より高く、かつ電離放射線硬化性組成物が溶融する温度より低い範囲である。
【0068】
電離放射線硬化膜の厚さは、1〜50μmであることが好ましく、より好ましくは3〜20μmである。1μmより薄いと寸法安定性に劣る場合があり、一方、50μmを超えると樹脂の硬化性が悪くなる場合がある。前記したように、電離放射線硬化膜が2層以上の多層で構成される場合には、全層の厚さを上記範囲とする。
【0069】
なお、上記熱硬化した電離放射線硬化性組成物は、塗工後に、熱硬化シリコーン層側から紫外線あるいは電子線を照射することで電離放射線硬化させることができる。紫外線の光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、タングステンランプなどが用いられる。電子線の照射方式としては、スキャンニング方式、カーテンビーム方式、ブロードビーム方式などが用いられ、電子線の加速電圧は、50〜300kVが適当である。
【0070】
(5)熱硬化シリコーン層
本発明で用いる熱硬化シリコーン層は、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサンおよび白金系硬化触媒からなる熱硬化性シリコーン組成物を熱硬化して形成したものを好適に使用することができる。
【0071】
アルケニル基含有オルガノポリシロキサンの一例としては下記の如き化合物が挙げられる。
【0072】
【化1】

(上記式中におけるRは主としてメチル基であるが、その他のアルキル基またはフェニル基等のアリール基或はそれらの組み合わせで有り、l+m+nは1以上の整数であり、各シロキサン単位はランダムに配置されていてもよい。X、YおよびZのうち少なくとも1個はビニル基、アリル(−CH2−CH=CH2)基または(メタ)アクリロイル基等に付加重合性基であり、R1〜R3は単結合或はアルキレン基である。)
以上のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンの分子量は特に限定されないが、一般的には3,500〜20,000の範囲が好適である。これらのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは市場から入手でき本発明で容易に使用することができる。
【0073】
本発明で使用するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、上記一般式において−R1−X、−R2−Z、および−R3−Yのうち少なくとも1個が水素原子であるものであり、他の置換基、シロキサン単位の配列、分子量等については前記一般式と同様である。これらのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは市場から入手でき本発明で容易に使用することができる。
【0074】
アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの使用割合は、両者の有する反応性基のモル比で決まり、前者と後者の比が4:1〜1:4、特に1:1〜1:3の範囲が好ましく、この範囲を外れると離型性の低下、塗膜強度の低下、未反応の反応性基による保存性の劣化等の点で満足した性能が得られない。
【0075】
本発明では、更に白金系硬化触媒を使用する。該触媒は前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサン100質量部当たり約5〜200質量部程度が好ましい使用量である。
【0076】
上記のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンおよび白金系硬化触媒からなる熱硬化性シリコーン組成物は、常温でも反応が進行し、塗工液中での反応の進行は離型性低下の原因となり、また、塗工液の保存性や取り扱い性に問題が生じる。本発明ではこの様な問題を解消する為に、常温では熱硬化性シリコーン組成物に対して反応抑制効果を有し、加熱処理時にはその抑制効果が解消する反応抑制剤を使用してもよい。具体的には、本発明で使用する反応抑制剤は、溶媒の溶液の状態では、上記の熱硬化性シリコーン組成物に対する硬化触媒の作用を抑制し、加熱された状態や溶剤が揮散した状態、即ち加熱または乾燥状態では上記硬化触媒の作用を抑制せず、むしろ促進する材料である。この様な硬化抑制剤としては、例えば、アセチレンアルコールのシリル化物等が挙げられる。これらの反応抑制剤は市場から入手して使用することができる。かかる反応抑制剤は前記熱硬化性シリコーン組成物100質量部当たり約5〜100質量部の割合で使用することが好ましい。
【0077】
このような熱硬化性シリコーン組成物としては、市販品を使用してもよく、例えば、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの混合物からなる付加重合型シリコーン材料の主剤(信越化学工業株式会社製、KS−3603)に白金系硬化触媒からなる硬化剤(信越化学工業株式会社製、CAT−PL−50T)を混合して調製することができる。
【0078】
上記熱硬化性シリコーン組成物は、常温では固体状態であるが、加工時には加熱により液体状態に変化する材料である。
本発明の熱硬化性シリコーン組成物は、強度等の充分な皮膜物性を得るために硬化性を必要とする。
【0079】
本発明の熱硬化性シリコーン層の形成方法自体は、前記熱硬化性シリコーン組成物の塗布、乾燥加熱、熟成等染料受容層の形成と同様でよく、形成される前記熱硬化シリコーン層の厚みは0.01〜10μmの範囲が好ましい。
【0080】
前記したように、本発明のプリプレグ用剥離紙が、熱硬化シリコーン層(I)と熱硬化シリコーン層(II)とを有する場合には、これらの剥離強度は異なることがこのましい。アルケニル基含有オルガノポリシロキサンやオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子量、置換基の種類、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの使用割合などを変えて熱硬化シリコーン樹脂を製造し、予めこれらの剥離強度を求めることで、異なる剥離強度の熱硬化シリコーン層を積層させることができる。また、剥離コントロール剤を配合して剥離強度を調整することもできる。
【0081】
(6)プリプレグ用剥離紙の製造方法
本発明のプリプレグ用剥離紙は、離解時残渣量が0〜1.0%となるものであればその製造方法に限定はないが、例えば、内添サイズ剤の含有量が0〜0.4質量部の紙基材や乾燥紙力剤の含有量が0〜0.5質量%の紙基材を調製し、この紙基材上に目止め層、電離放射線硬化樹脂層および熱硬化シリコーン層を積層し、電離放射線により電離放射線硬化樹脂層を硬化させて製造することができる。このような紙基材としては、市販品であってもよい。
【0082】
例えば、前記した、紙基材(110)の両面にそれぞれ、第二ポリオレフィン系樹脂層(120A2)、第一ポリオレフィン系樹脂層(120A1)、表面処理層(120C)、電離放射線硬化樹脂層(130)、および熱硬化シリコーン層(140)とが積層される場合には、押出機Aに、第二ポリオレフィン系樹脂層を構成する樹脂組成物と、押出機Bに第一ポリオレフィン系樹脂層を構成する樹脂とを仕込み、Tダイを介してこれらを紙基材の片面に共押出しし、バックアップロールと冷却ロールとで積層および接着し、次いで、上記と同様にして他の面に第二ポリオレフィン系樹脂層と第一ポリオレフィン系樹脂層とを積層し、ついで双方の前記第一ポリオレフィン系樹脂層(120A1)の上に、例えば、コロナ処理などの表面処理を行って表面処理層(120C)を形成する。なお、押出機Aや押出機Bの加熱温度は、使用する樹脂の融点やメルトフローレート、配合するマット剤の種類や配合量などに応じて適宜選択すればよい。
【0083】
次いで、双方の表面処理層(120C)の上に電離放射線硬化性組成物を塗工し、乾燥および熱硬化して電離放射線性組成物膜を熱硬化させる。次いで、少なくとも一方の熱硬化した電離放射線性組成物膜上に熱硬化性シリコーン組成物を塗工し、加熱乾燥して熱硬化シリコーン膜を形成する。
【0084】
その後、電離放射線性組成物膜に直接、または熱硬化シリコーン膜の側から紫外線あるいは電子線を照射し、熱硬化電離放射線性組成物膜を硬化させ電離放射線硬化樹脂層とする。紫外線の光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、タングステンランプなどが用いられる。電子線の照射方式としては、スキャンニング方式、カーテンビーム方式、ブロードビーム方式などが用いられ、電子線の加速電圧は、50〜300kVが適当である。このように、電離放射線硬化性組成物の熱硬化によって、熱硬化性シリコーン組成物の塗工性を改良でき、その後に電離放射線で硬化させることで強度および剥離性を確保できる。
【0085】
なお、本発明のプリプレグ用剥離紙の厚さは、50〜300μmであることが好ましく、より好ましくは70〜150μmである。厚さが50μmを下回ると強度が低下し、製造工程で巻き取りの際に切断しやすくなるなどのライン適性が低下する場合がある。一方、300μmを超えると、プリプレグ用剥離紙の幅カールが大きくなり、加工性が低下する場合がある。
【0086】
(7)炭素繊維プリプレグ
本発明のプリプレグ用剥離紙を用いて、前記図3に例示する方法で炭素繊維プリプレグを製造することができる。本発明のプリプレグ用剥離紙を用いた炭素繊維プリプレグは、寸法安定性に優れ、エポキシ樹脂を未架橋に維持するため低温に保存しても、炭素繊維含浸エポキシ樹脂層と剥離紙との間に剥離を生ずることがない。また、炭素繊維含浸エポキシ樹脂層の積層時に炭素繊維含浸エポキシ樹脂層がたるまず、炭素繊維含浸エポキシ樹脂層の部分的な重複による凹凸や空隙の発生がなく、高い耐衝撃性を有する炭素製品を製造することができる。
【0087】
また、紙基材と目止め層との間における層間剥離が防止され、耐熱性にも優れかつ寸法安定性および機械的強度の高い電離放射線硬化樹脂層の存在および剥離性に優れる熱硬化シリコーン層の存在により安定した剥離性が維持される。
【0088】
更に、所定の紙基材を使用しているため、使用後の離解処理によって容易に離解することができ、古紙としてのリサイクル性に優れる。
【実施例】
【0089】
次に、具体的な実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
(合成例1)
撹拌機、滴下ロート、還流冷却器、窒素ガス導入管及び温度計を備えたガラスフラスコに、モノマーとしてメチルメタクリレートを30g、グリシジルメタクリレート70gと、溶剤としてメチルエチルケトン90gを入れて80℃に加熱した後、ここに重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.0gをメチルエチルケトン12gに溶解した溶液を3時間かけて滴下し、更に80℃で3時間重合させ、エポキシ基を有する共重合体A1のメチルエチルケトン溶液(固形分50.1%)を得た。続いて、80℃を保ったまま、乾燥空気を吹き込みながらハイドロキノンモノメチルエーテル0.05g、トリフェニルホスフィン1.0g、アクリル酸25g、メチルエチルケトン25gを加え、そのまま35時間反応させ、(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体のメチルエチルケトン溶液(固形分50.6%、Mn=11000、Mw=21000)を得た。該共重合体のガラス転移温度は、62℃であり、二重結合量は3.6であった。結果を表1に示す。
【0090】
(合成例2〜13)
表1、表2に示す原料に変更する以外は合成例1と同様に重合及び反応を行い、(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体のメチルエチルケトン溶液(固形分50.8%)を得た。該共重合体の重量平均分子量、数平均分子量、ガラス転移温度、二重結合量を表1、表2に示す。なお、合成例8のみ、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の使用量を2.6gに変更して、重量平均分子量を変化させた。
【0091】
なお、表中の略号は以下である。
IBX:イソボルニルメタクリレート、
MMA:メチルメタクリレート、
BMA:ブチルメタクリレート、
IBMA:イソブチルメタクリレート、
GMA:グリシジルメタクリレート、
AA:アクリル酸、
Mn:数平均分子量、
Mw:重量平均分子量、
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】

測定条件
(1)(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、以下の条件で測定した。
【0094】
(i) カラム ; 「TSK-GEL MULTIPORE HXL-M ×4」(東ソー社製)
(ii) カラム温度; 40℃
(iii)溶離液 ; テトラヒドロフラン(THF)
(iv) 検出器 ; RI
(v) 検出器温度; 40℃
(vi) 標準物質 ; ポリスチレン
(2)二重結合当量は、組成比から換算した。
【0095】
(3)Tgは、下記式にしたがって樹脂の設計Tg(ガラス転移温度)を算出した。なお、Tg1、Tg2...で示される単一重合体のガラス転移温度はポリマーハンドブックに記載の値を採用した。
【0096】
【数1】

(式中、1,2・・nは、構成するモノマー種類、Tgn:nモノマー単一重合体のガラス転移温度(K)、wn:構成中のnモノマー単位の重量比、Tg:ガラス転移温度(K)を示す。)
(実施例1)
合成例1の(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体100質量部につき光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製、イルガキュア907)を3質量部、希釈溶剤としてメチルエチルケトンを固形分濃度が30質量%となるように添加し電離放射線硬化性組成物を作製した。
【0097】
基材となる紙には内添サイズ剤を含まず、ポリアクリルアミドからなる内添乾燥紙力剤(星光PMC社製、商品名「DS4346」)を0.15質量部添加した紙(坪量104.7g/m2)の両面にコート層(カオリンクレイ60質量部、酸化チタン10質量部、炭酸カルシウム30質量部、SBRラテックス17質量部、分散剤0.5質量部、滑剤1質量部の混合物のスラリー)をブレードコーターにてそれぞれ16g/m2コーティングし、その後、ドライヤー乾燥の後、スーパーカレンダーに通紙した両面コート紙を使用した。このコート層の両面に上記電離放射線硬化性組成物をグラビアコーターで4g/m2コーティングし、続いて片面のみ付加重合タイプのシリコーン樹脂(信越化学工業社製、商品名「KS−3603」100質量部と信越化学工業社製、剥離コントロール剤「KS−3800」40質量部の混合物)を0.3g/m2コーティングし、もう片面にも付加重合タイプのシリコーン樹脂(信越化学工業社製、商品名「KS−3603」)100質量部を0.3g/m2コーティングした。
【0098】
ついで出力120W/cmの高圧水銀灯を用い、700mJ/cm2の積算光量の紫外線照射を両面に照射し、前記電離放射線硬化性組成物膜を硬化させ、プリプレグ用剥離紙を得た。
【0099】
このプリプレグ用剥離紙の吸湿率、吸湿寸法変化率、初期吸湿寸法変化率、離解性を下記方法で評価した。結果を表3に示す。なお、表3には、離解性の評価における残渣量から離解時残渣量を算出して併記した。
【0100】
(測定方法)
(1) 吸湿率
(i)プリプレグ用剥離紙を10cm×10cmの試験片とする。
【0101】
(ii)この試験片を23℃、50%RH条件下で24時間調湿する。
(iii)調湿した試験片の重量を測定する(WA)。
(iv)23℃、80%RHの高湿下で5時間放置し重量を測定する(WB)。これにより下記式に基づいて吸湿率を算出する。なお、1つの水準につき3サンプル測定し、その平均を吸湿伸び率とした。
【0102】
【数2】

(2) 吸湿寸法変化率
(i)プリプレグ用剥離紙を長手方向に100mmカットし、試験片を得る。
【0103】
(ii)この試験片を23℃50%RH環境下にて24時間調湿し、幅方向の長さを測定する(LA)。
(iii)次に23℃80%RH環境下へ移し、所定の時間にて幅方向(LB)の長さを測定する。これより吸湿伸び率を下記式に基づいて算出する。なお、1つの水準につき3サンプル測定し、その平均を吸湿伸び率とした。
【0104】
【数3】

(3)初期吸湿寸法変化率
上記吸湿寸法変化率の測定方法に従って、23℃80%RH環境下にて10分後の吸湿伸び率(N1)を測定する。これを1時間あたりに換算し、初期吸湿伸び率を下記式に基づいて算出する。
【0105】
【数4】

(4)離解性
下記(i)〜(x)に記載する方法で残渣量を測定し、プリプレグ用剥離紙の単位重量あたりの残渣の百分率で離解時残渣量を算出し、解離性を評価した。
【0106】
(i)30±2℃の用水2,000ml±10mlにNaOH(50g/l)10ml±1mlを加え、標準パルプ離解機(熊谷理機工業(株)社製)(JIS P8220附属書Aに規定)の離解槽に入れる。
【0107】
(ii)プリプレグ用剥離紙を30mm×30mm±3mmに切断し、切断したプリプレグ用剥離紙5.00±0.05gを秤量し、上質紙(王子製紙株式会社製OKプリンス:坪量64g)を30mm×30mm±3mmに切断したもの45.00±0.05gと合せて試験試料とし、この試験試料を前記離解槽に加えて蓋をし、3,000rpmで離解機を回転させる。
【0108】
(iii)離解機を20分間±5秒間回転させた後に、回転を止める。
(iv)標準型フラットスクリーン(熊谷理機工業(株)社製)に6カットスクリーンプレート(スリット幅0.15mm×45mm)をセットし、100mmの水位となし、通水量が10リットル毎分となるように調整する。
【0109】
(v)毎分690〜700回、3.2mm上下に振動させてスクリーンを起動し、前記(iii)で離解した試料スラリーをスクリーン内に投入する。なお、離解槽の洗液を前記スクリーンに加える。
【0110】
(vi)スクリーンの振動及び通水を、試料スラリーの投入から7分間±10秒間継続した後、通水及び振動を停止する。
(vii)スクリーンプレート上の残渣を安全カミソリの刃を利用して集め、予め乾燥、秤量したアルミホイール製カップに回収する。
【0111】
(viii)アルミホイール製カップを105℃±5℃に調整した乾燥器中で4時間乾燥させて恒量とする。
(ix)乾燥後、秤量する。
【0112】
(x)以上の操作を3組の試料について繰り返し、平均値をとって残渣量とした。
(比較例1)
内添乾燥紙力剤としてポリアクリルアミド(星光PMC社製、商品名「DS4346」)を0.15質量%を内添した紙(坪量104.7g)に代えて、内添乾燥紙力剤としてポリアクリルアミド(星光PMC社製、商品名「DS4346」)を2質量%、湿潤紙力剤であるカチオン性ポリアミド樹脂(星光PMC社製、商品名「WS4002」)を1質量%内添した紙を用いた以外は、実施例1と同様に操作してプリプレグ用剥離紙を製造した。
【0113】
このプリプレグ用剥離紙の吸湿率、吸湿寸法変化率、初期吸湿寸法変化率、離解性を下記方法で評価した。結果を表3に示す。
(比較例2)
内添乾燥紙力剤としてポリアクリルアミド(星光PMC社製、商品名「DS4346」)を0.15質量%を内添した紙(坪量104.7g)に代えて、内添乾燥紙力剤としてポリアクリルアミド(星光PMC社製、商品名「XP−106」)を35質量%含浸させた紙を使用した以外は、実施例1と同様に操作してプリプレグ用剥離紙を製造した。
【0114】
このプリプレグ用剥離紙の吸湿率、吸湿寸法変化率、初期吸湿寸法変化率、離解性を下記方法で評価した。結果を表3に示す。
【0115】
【表3】

(実験例1)
実施例1で得たプリプレグ用剥離紙にビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製 JER828を40質量部とジャパンエポキシレジン製 JER1001を50質量部)とジシアンジアミド(ジャパンエポキシレジン製 DICY7)5質量部と3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア(保土ヶ谷化学工業性DCMU−99)5質量部とを70℃の温浴で30分撹拌して溶解し、約65℃の状態で前記工程紙に約40g/m2を塗布し、炭素繊維を貼り付け、温度125℃、0.75MPaでニップロールで4回繰り返しニップし、エポキシ樹脂層積層剥離紙を得た。
【0116】
このエポキシ樹脂層積層剥離紙について、剥離強度(15mm巾)および外観観察を評価した。結果を表4に示す。
なお、剥離強度は、エポキシ樹脂層積層剥離紙における、プリプレグ用剥離紙とエポキシ樹脂層との剥離強度(15mm巾)を測定する方法で評価した。また、外観観察は、エポキシ樹脂層積層剥離紙の外観の変化を評価した。
【0117】
(実験例2〜10)
合成例1の(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体に代えて、合成例2〜9、および合成例13の(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体を使用した以外は実験例1と同様に操作してプリプレグ用剥離紙を作成し、実験例1と同様にしてエポキシ樹脂層積層剥離紙を作成し、実験例1と同様にエポキシ樹脂層積層剥離紙の剥離強度と外観観察を評価した。結果を表4に示す。
【0118】
(比較例3)
両面コート紙に、電離放射線硬化性組成物を塗工せずに、その両面に付加重合タイプのシリコーン樹脂(信越化学工業社製、商品名「KS−3603」100質量部と信越化学工業社製、剥離コントロール剤「KS−3800」2質量部の混合物)を0.3g/m2コーティングし、UV照射を行わない以外は、実施例1と同様に操作してプリプレグ用剥離紙を製造し、実験例1と同様にしてエポキシ樹脂層積層剥離紙を作成し、実験例1と同様にエポキシ樹脂層積層剥離紙の剥離強度および外観観察を評価した。結果を表4に示す。
【0119】
(比較例4)
比較例2で製造したプリプレグ用剥離紙を用い、実験例1と同様にしてエポキシ樹脂層積層剥離紙を作成し、実験例1と同様にエポキシ樹脂層積層剥離紙の剥離強度および外観観察を評価した。結果を表4に示す。
【0120】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】図1は、熱硬化シリコーン層(I)、電離放射線硬化樹脂層(I)、目止め層(I)、紙基材、目止め層(II)、電離放射線硬化樹脂層(II)がこの順に積層されることを特徴とする、本発明のプリプレグ用剥離紙の積層構成を説明する図である。
【図2】図2は、図1の電離放射線硬化樹脂層(II)に次いで熱硬化シリコーン層(II)が積層された、本発明のプリプレグ用剥離紙の積層構成を説明する図である。
【図3】本発明によるプリプレグ用剥離紙を用いた炭素繊維プリプレグの製造方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0122】
10、10’ ・・・エポキシ樹脂積層剥離紙、
11、11’ ・・・剥離紙、
13、13’ ・・・エポキシ樹脂層、
20・・・炭素繊維、
25・・・炭素繊維含浸エポキシ樹脂層、
30・・・ヒーター、
40・・・保護フィルム、
50・・・製品巻き取りロール、
60・・・剥離紙回収ロール、
110・・・紙基材、
120・・・目止め層、
130・・・電離放射線硬化樹脂層、
140・・・熱硬化シリコーン層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化シリコーン層(I)、電離放射線硬化樹脂層(I)、目止め層(I)、紙基材、目止め層(II)、電離放射線硬化樹脂層(II)がこの順に積層され、
離解時残渣量が0〜1.0%であることを特徴とする、プリプレグ用剥離紙。
【請求項2】
前記紙基材は、内添サイズ剤の含有量が0〜0.4質量部であることを特徴とする、請求項1記載のプリプレグ用剥離紙。
【請求項3】
前記紙基材は、乾燥紙力剤の含有量が0〜0.5質量部であることを特徴とする、請求項1または2記載のプリプレグ用剥離紙。
【請求項4】
前記電離放射線硬化樹脂層(II)に次いで熱硬化シリコーン層(II)が積層されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のプリプレグ用剥離紙。
【請求項5】
前記熱硬化シリコーン層(I)と熱硬化シリコーン層(II)との剥離強度が異なることを特徴とする、請求項4記載のプリプレグ用剥離紙。
【請求項6】
前記熱硬化シリコーン層(I)および/または熱硬化シリコーン層(II)は、付加重合型シリコーン樹脂からなることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のプリプレグ用剥離紙。
【請求項7】
前記熱硬化シリコーン層(I)および/または熱硬化シリコーン層(II)は、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサンおよび白金系硬化触媒からなる熱硬化性シリコーン組成物を熱硬化して形成したものである、請求項1〜6のいずれかに記載のプリプレグ用剥離紙。
【請求項8】
前記電離放射線硬化膜(I)および/または電離放射線硬化膜(II)は、
重量平均分子量(Mw)が5,000〜200,000であり、分散比(Mw/Mn)が1.0〜5.0であり、ガラス転移点温度(Tg)が40〜150℃である(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)からなる電離放射線硬化性組成物を電離放射線により硬化させたものである、請求項1〜7のいずれかに記載のプリプレグ用剥離紙。
【請求項9】
前記(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)は、(メタ)アクリレート系単量体単位(A)とエポキシ基含有(メタ)アクリレート系単量体単位(B)とを含むエポキシ基含有共重合体(C)に、(メタ)アクリル酸を反応させてなる共重合体である、請求項8記載のプリプレグ用剥離紙。
【請求項10】
前記アクリル系共重合体は、二重結合当量が0.5〜4.5である請求項9記載のプリプレグ用剥離紙。
【請求項11】
前記電離放射線硬化膜(I)および/または電離放射線硬化膜(II)は、
(メタ)アクリル酸エステル35〜80質量部、グリシジル(メタ)アクリル酸エステル20〜60質量部、他の(メタ)アクリル酸エステル0〜30質量部からなる共重合体に、(メタ)アクリル酸を10〜30質量部反応させてなる(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(II)からなる電離放射線硬化性組成物を電離放射線により硬化させたものである、請求項1〜7のいずれかに記載のプリプレグ用剥離紙。
【請求項12】
前記電離放射線硬化膜(I)および/または電離放射線硬化膜(II)は、無機顔料を0.5〜50質量%の範囲で含有するものである、請求項1〜11のいずれかに記載のプリプレグ用剥離紙。
【請求項13】
前記目止め層(I)および/または目止め層(II)は、熱可塑性樹脂層または造膜性を有する樹脂と無機顔料との混合物層から構成されることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載のプリプレグ用剥離紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−280930(P2009−280930A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133824(P2008−133824)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】