説明

プリプログラミングレコーディングを実行する方法および該方法を用いて記録媒体からの読み出しおよび記録媒体への書き込みを行う装置

【課題】残留記憶スペースが不十分である記録媒体においてプリプログラミングレコーディングを実行する際、指定された記録品質でプリプログラミングされたレコーディングを実行できるようにした方法および装置を提供する。
【解決手段】1つまたは複数のプリプログラミングレコーディングを指定された品質で実行するために、記憶媒体において要求される記憶スペースを判定する。ついで記録媒体において利用可能な記憶スペースを要求された記憶スペースと比較する。要求された記憶スペースが利用可能な記憶スペースを超えているならば、1つまたは複数のプリプログラミングレコーディングに対して指定された記録品質を、要求された記憶スペースが利用可能な記憶スペースをもはや超えないよう、プリプログラミングレコーディングに対して設定可能な優先度識別子に従い低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体からの読み出しおよび記録媒体への書き込みを行う装置においてプリプログラミングレコーディングを実行する方法、ならびに該方法を用いて記録媒体からの読み出しおよび記録媒体への書き込みを行う装置に関する。
【背景技術】
【0002】
VCR(video cassette recorder)、DVD(digital versatile disk)レコーダ、HDDレコーダ(hard disk drive)あるいはこれらのオーディオ・ビデオ装置の組み合わせなど、多くのオーディオ・ビデオ装置によれば、記録ないしはレコーディングをスケジューリングできるようになっており、つまり何時に記録ないしはレコーディングを開始させるべきであるかを指定できるようになっている。殊に圧縮されたディジタルオーディオ・ビデオデータにおいて、たとえばDVDレコーダにおいては、記録ないしはレコーディングのために異なるビットレートを選択できるようにするのが一般的である。この場合、ユーザは、高品質(ハイビットレート)から低品質(ロービットレート)に至るまで記録品質ないしはレコーディング品質を選択して、オーディオ・ビデオデータを記録媒体にレコーディングさせることができる。これに応じてレコーディング全体の長さは、短いものから長いものまで変化する。単一の記録媒体に、異なる記録品質のオーディオ・ビデオデータを混在させることができる。記録品質は一般に、レコーディングをプリプログラミングすなわち事前にプログラミングする時点で各レコーディングについて個別に、あるいはすべてのレコーディングについて全般的に指定することができる。残留記憶スペースが、指定された記録品質でプリプログラミングレコーディングを記録するには十分でない場合、いくつかのオーディオ・ビデオ装置においては記録品質が利用可能な記憶スペースに自動的に整合される。整合されたこの品質は、同じ記録媒体に記録すべき残りすべてのプリプログラミングレコーディングについて使用される。その結果、いずれのレコーディングも高品質では記録されなくなるという問題が発生し、このことはユーザを困惑させ不快にさせる可能性がある。
【0003】
上述の問題点を克服するため、JP09-138698に開示されているサウンドデータレコーディング方法によれば、記録媒体における残留記憶スペースが高い記録品質でレコーディングするには不十分である場合、利用可能な記憶スペースを増やす目的で、以前のレコーディングが記録媒体にもっと低い記録品質でレコーディングしなおされる。以前のレコーディングをレコーディングしなおすために使用される記録品質は、複数の優先度パラメータによって決定される。このようなアプローチによれば、望ましい品質でプリプログラミングレコーディングを実行できるようになるけれども、殊にビデオデータの場合には以前のレコーディングを記録しなおすために多くの時間が必要とされてしまう。このことはやはりユーザにとって不快となる可能性がある。
【0004】
本発明に一番近い従来技術とみなされるEP 092907には、可変のレコーディングレートを利用したディジタルレコーディングシステムが開示されている。1つまたは複数のレコーディングをスケジューリングする場合、それらのレコーディングを所望のビットレートで実行できるか否かについてシステムがチェックする。利用可能な空きスペースが不十分であれば、システムはスケジュールされたレコーディングのうち少なくともいくつかについてスケジューリング順序に基づきビットレートを低減する。
【特許文献1】JP09-138698
【特許文献2】EP 092907
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、残留記憶スペースが不十分である記録媒体においてプリプログラミングレコーディングを実行する際、指定された記録品質でプリプログラミングされたレコーディングを実行できるようにした方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば上述の課題は、1つまたは複数のプリプログラミングレコーディングを指定された品質で実行するために、記憶媒体において要求される記憶スペースを判定するステップと、記録媒体において利用可能な記憶スペースを要求された記憶スペースと比較するステップと、要求された記憶スペースが利用可能な記憶スペースを超えているならば、1つまたは複数のプリプログラミングレコーディングに対して指定された記録品質を、要求された記憶スペースが利用可能な記憶スペースをもはや超えないよう、プリプログラミングレコーディングに対して設定可能な優先度識別子に従い低減するステップを有する方法によって解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
レコーディングが指定された記録品質によってプリプログラミングされる場合、記録媒体において利用可能な記憶スペースが、プリプログラミングされたすべてのレコーディングに対しそれらについて指定された品質で実行するのに十分であるか否かがチェックされる。十分でなければ、利用可能な記憶スペースがすべてのプリプログラミングレコーディングを完了するのに十分になるまで、1つまたは複数のプリプログラミングレコーディングに対する記録品質が低減される。その際、記録品質の低減は1つまたは複数の優先度識別子に基づき実行される。ここで可能な優先度識別子には、レコーディングのジャンルたとえば映画であるかニュースであるかなどが含まれる。ユーザは、映画またはスポーツイベントについては高い記録品質を好む可能性が高い一方、ニュースマガジンについてはそれよりも低い品質でかまわないと思われる。レコーディングジャンルの代わりに、あるいはそれに加えて、レコーディング長またはレコーディング日時を用いることもできる。映画あるいは他のタイプの番組には典型的な放送の時間や期間があるので、レコーディングの重要性の判定にはこの情報が役立つ。さらに別の識別子は、レコーディング形式すなわち単発のレコーディングあるいは毎日繰り返されるレコーディング、レコーディングソースたとえば衛星であるかケーブルであるか等、レコーディングされるチャネル(ニュースチャネル、スポーツチャネル、映画チャネル等)、あるいはレコーディングのオーナーすなわちレコーディングをプリプログラミングする人である。当然ながら、他の優先度識別子も可能である。有利には、優先度識別子をユーザによって定義および/または調整することができる。
【0008】
記録媒体で利用可能な記憶スペースを、要求された記憶スペースと1つまたは複数の段階において比較すると有利である。レコーディングのプリプログラミング中、利用可能な記憶スペースが十分であるか否かについてただちにチェックすることができる。十分でなければ、プリプログラミングを実行しているユーザに対し、異なる記録媒体を用意するよう要求を出すのが有利であり、あるいは現在プリプログラミングしているレコーディングまたは以前にプリプログラミングした1つまたは複数のレコーディングについて、たとえば異なる記録品質を指定するなどして優先度識別子を指定するよう要求を出すのが有利である。ユーザが記録媒体を交換したときにも、同じことが適用される。このケースでは、新たな記録媒体において利用可能な記憶スペースがもはや十分ではないことが起こる可能性がある。そのときにはユーザに対し、優先度識別子を要求すべきである。これらに対する代案として、利用可能な記憶スペースについてプリプログラミングレコーディングの開始直前にチェックすることもできる。このケースでは、ユーザは異なる記録品質を指定したり記録媒体を交換したりすることが通常は不可能となるので、利用可能な優先度識別子に基づき記録品質が自動的に決定される。利用可能な記憶スペースをチェックするさらに別の段階は、プリプログラミングではないレコーディングが完了したときである。ユーザが即座にレコーディングをスタートさせるとき、そのレコーディングに必要とされる記憶スペースがどれくらいであるかは一般的に事前にはわからない。したがって、プリプログラミングではないレコーディングが完了したときに、プリプログラミングレコーディングのために残留記憶スペースがまだ十分であるか否かをチェックするのが有利である。
【0009】
有利には、プリプログラミングレコーディングの記録品質が低減されたとき、もともと指定されていた記録品質が記憶装置に格納される。このようにすれば、利用可能な記憶スペースが増加したと判定されたとき、1つまたは複数のプリプログラミングレコーディングについてもともと指定されていた記録品質に戻すことができるようになる。このようなことが発生する可能性のあるのはたとえば、記録媒体を交換したとき、以前にレコーディングされていた番組をユーザが消去したとき、あるいはユーザが1つまたは複数のプリプログラミングレコーディングを変更したときなどである。
【0010】
現在実行中のプリプログラミングレコーディングについて指定された品質を、現在のレコーディング長がプリプログラミングされたレコーディング長を超えたという指示の受け取りに応答して低減すると有利である。たとえば、多くの放送局はプリプログラミングレコーディングをコントロールするためにVPS(Video Programming System)信号を送信している。ライブイベントなどのような番組がプリプログラミングレコーディング時間を超えたと判定されたならば、残留記憶スペースに及ぼされる影響を最低限に抑える目的で記録品質が低減される。
【0011】
本発明による方法を、記録媒体上でプリプログラミングレコーディングを実行するために記録媒体からの読み出しおよび記録媒体への書き込みを行う装置において使用すると有利である。
【0012】
本発明をよく理解できるようにするため、以下では図面を参照しながら本発明について詳しく説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく本発明の特徴を好都合に組み合わせたり変形したりすることができるのは自明である。
【実施例】
【0013】
図1には、本発明によるプリプログラミングレコーディングを実行する方法が描かれている。ユーザがタイマを入力すると(ステップ1)、すなわちユーザがプリプログラミングレコーディングをスケジューリングすると、番組ないしはプログラムをレコーディングすべき記録媒体において利用可能な記憶スペースが、指定された記録品質ですべてのプリプログラミングレコーディングを記録するのに十分であるか否かがただちにチェックされる(ステップ2)。十分でなければ、ユーザに対し適合された優先度識別子を入力するよう、あるいは別の記録媒体を用意するよう要求が出される(ステップ3)。これに対する代案として、ユーザは1つまたは複数の以前のレコーディングまたはプリプログラミングされたレコーディングを消去することもできる。その後、利用可能な記憶スペースが十分であるか否かが再度チェックされる。ユーザに入力を要求するステップ3の代わりに、後述のように利用可能な記憶スペースに合わせて記録品質を自動的に整合させることもできる。プリプログラミングレコーディングの開始時点にまだ達していないかぎり(ステップ4)、種々の形式のユーザアクセスについて常にチェックが行われる(ステップ5)。たとえばユーザアクセスとして、プリプログラミングではないレコーディングの実行、記録媒体の交換、あるいは1つまたは複数の以前のレコーディングまたはプリプログラミングレコーディングの消去を挙げることができる。これらのケースのいずれについても、利用可能な記憶スペースが十分であるか否かについてチェックされる(ステップ2)。プリプログラミングレコーディングの開始時点に達すると(ステップ4)、利用可能な記憶スペースが十分であるか否かについてもう一度判定される(ステップ6)。十分なスペースがなければ、少なくとも1つのプリプログラミングレコーディングの記録品質が低減される(ステップ7)。これを現在のレコーディングとしてもよいし、あるいはあとでスタートするいずれのプリプログラミングレコーディングとしてもよい。レコーディング動作がスタートすると(ステップ8)、たとえばライブイベント等における時間超過などに起因して、現在のレコーディング長がプリプログラミングされた長さを超えたか否かが分析される(ステップ9)。このことが発生した場合、レコーディング動作が完了するまで記録品質が低減される(ステップ10)。
【0014】
図1の実施例の場合、利用可能な記憶スペースがそれぞれ異なる段階でチェックされる(ステップ2,ステップ6)。これによって考慮されるのは、何らかの段階において、他の段階では実行不可能でありながらもユーザに対し別の入力を供給するよう要求できることである(ステップ3)。当然ながら、レコーディング開始(ステップ8)の直前にのみ、あるいはタイマ入力受け取り(ステップ1)の直後にのみ、利用可能な記憶スペースをチェックすることも可能である。
【0015】
図2には、本発明による方法を実行可能であり記録媒体からの読み出しおよび記録媒体への書き込みを行う装置20が描かれている。この場合、入力側21においてオーディオ・ビデオ信号を受け取り、受け取ったオーディオ・ビデオ信号は、その信号を指定されたビットレートでコーディングまたはレコーディングするためのコーディングユニット22を介してレコーディングユニット23へ転送される。装置20は、たとえばタイマ情報をユーザから受け取るためのユーザインタフェース24を有している。受け取ったタイマ情報は、タイマ処理ブロック25のメモリに格納される。タイマ処理ブロック25は、すべてのプリプログラミングレコーディングをそれらについて指定された品質で実行するために必要とされる記憶媒体上の記憶スペースを計算し、現在装填されている記録媒体において利用可能な記憶スペースに基づきレコーディングユニット23から情報を受け取る。ついでタイマ処理ブロック25は、要求された記憶スペースを利用可能な記憶スペースと比較する。利用可能な記憶スペースが十分でなければ、タイマ処理ブロック25はユーザに対しディスプレイ26を介して相応の通知を行う。その後、ユーザはユーザインタフェース24を介して、1つまたは複数のプリプログラミングレコーディングに対し優先度識別子を入力することができる。ユーザ入力がなければタイマ処理ブロック25は、利用可能な優先度識別子に従い少なくとも1つのプリプログラミングレコーディングの品質を低減する。プリプログラミングレコーディングがスタートすると、タイマ処理ブロック25はオーディオ・ビデオ信号のコーディングまたはレコーディングに使用すべきビットレートに関してコーディングユニット22に通知を行う。その後、コーディングされたオーディオ・ビデオ信号はレコーディングユニット23によってレコーディングされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明によるプリプログラミングレコーディングを実行する方法を示すフローチャート
【図2】本発明による方法を用いて記録媒体からの読み出しおよび記録媒体への書き込みを行う装置を示す図
【符号の説明】
【0017】
20 記録媒体からの読み出しおよび記録媒体への書き込みを行う装置
21 入力
22 コーディングユニット
23 レコーディングユニット
24 ユーザインタフェース
25 タイマ処理ブロック
26 ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数のプリプログラミングレコーディングを指定された品質で実行するために、記憶媒体において要求される記憶スペースを判定するステップと、
記録媒体において利用可能な記憶スペースを要求された記憶スペースと比較するステップ(2,6)と、
要求された記憶スペースが利用可能な記憶スペースを超えているならば、1つまたは複数のプリプログラミングレコーディングに対して指定された記録品質を、要求された記憶スペースが利用可能な記憶スペースをもはや超えないよう低減するステップ(7,10)を有する、
プリプログラミングレコーディングを実行する方法において、
指定された記録品質を、プリプログラミングレコーディングに対して設定可能な優先度識別子に従い低減するステップ(7,10)が設けられていることを特徴とする、
プリプログラミングレコーディングを実行する方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、
レコーディングのプリプログラミング中、プリプログラミングレコーディングの開始前、記録媒体が交換されたとき、および/またはプリプログラミングではないレコーディングが完了したとき、記録媒体上で利用可能な記憶スペースを要求された記憶スペースと比較することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の方法において、
プリプログラミングレコーディングの記録品質が低減されたとき、もともと指定されていた記録品質を記憶装置に格納することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3記載の方法において、
利用可能な記憶スペースが増加したと判定されたとき、1つまたは複数のプリプログラミングレコーディングについてもともと指定されていた記録品質に戻されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載の方法において、
1つまたは複数のプリプログラミングレコーディングについて優先度識別子を指定するようユーザに要求が出されるステップ(3)が設けられていることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項記載の方法において、
現在実行中のプリプログラミングレコーディングについて、現在のレコーディング長がプリプログラミングされた長さを超えたという指示の受け取り(9)に応答して、指定された記録品質を低減するステップ(10)が設けられていることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項記載の方法において、
プリプログラミングレコーディングに対する前記優先度識別子には、レコーディングのジャンル、レコーディング長、レコーディング日時、レコーディング形式、レコーディングソース、レコーディングされるチャネルまたはレコーディングの所有者のうち少なくとも1つが含まれることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項記載の方法において、
プリプログラミングレコーディングの優先度に対する前記識別子はユーザにより調整可能であることを特徴とする方法。
【請求項9】
記録媒体からの読み出しおよび記録媒体への書き込みを行う装置において、
記録媒体におけるプリプログラミングレコーディングを実行するために請求項1から8のいずれか1項記載の方法を実施する手段が設けられていることを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−196162(P2006−196162A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−4663(P2006−4663)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing 
【住所又は居所原語表記】46 Quai A. Le Gallo, F−92100 Boulogne−Billancourt, France
【Fターム(参考)】