説明

プリル化方法

【課題】機械的な攪拌を用いたプリル化方法を提供する。
【解決手段】溶融した第一の成分を提供する工程15、該溶融した第一の成分と、少なくとも第二の成分17とを混合する工程、該成分を反応させ、ずり減粘可能な混合物19を形成する工程:および、ずり減粘可能な混合物21をプリルする工程を含み、ここで、該プリルする工程は、前記ずり減粘可能な混合物をプリルヘッドで機械的に撹拌して、プリル化可能なように十分にずり減粘を起こさせることを含む。本発明の方法は、アンモニウム硫酸塩・硝酸塩を含む肥料生成物を生産するのに用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、プリル化方法に関する。より詳細には、本発明は、溶融可能な第一の成分と、第二の成分とのずり減粘可能な(shear-thinning)混合物をずり減粘する(shear thin)ための、プリルヘッドでの機械的な撹拌を用いた上記混合物のプリル化方法に関する。
【0002】
2.関連技術の簡単な説明
NPK(窒素、リン、カリウム)のような混合肥料生成物の生産は、典型的には、望ましいサイズと栄養分析を有する肥料粒子を得ることができるドラム型およびパン型顆粒器具で塩基性の肥料生成物(炭酸カリウム、尿素など)を凝集させることによって達成されていた。芝生や特殊な用途のための肥料は、それでもなおこの方法で製造されているが、ほとんどの農業の顧客は、塩基性のNPK成分を粒子に固めないで単に一緒に混合した簡単な配合肥料に移行している。配合肥料は、同じNPK含量を有する均一な粒子を有さないが、凝集工程をなくすことで、製造コストを減少させる。しかしながら、配合物を製造するために用いられたそれぞれの塩基性肥料の粒子のサイズと重さが異なるために、肥料配合物の均一な拡散はより困難である。
【0003】
混合型の凝集した肥料生成物は、より簡単な拡散ということに加えて、その他の利点を有するといえる。このような肥料には、微量栄養素(微量ミネラル元素の化合物)を包含させることができる。微量栄養素は、微量(1%未満)で用いられるために、これらの化合物に配合し均一な散布を達成することは、細粒化した微量栄養素が散布器具中で分離すると予想されるために実用的ではない。均一な肥料のその他の利点は、生成物の特性(例えば、貯蔵中の耐湿性)を成分の選択によって制御することができる点である。
【0004】
混合肥料を、凝集を分離する追加工程を行うことなく生産することが望ましいといえる。この目的を達成する際の難点は、塩基性肥料の種類に応じて、それぞれ異なる、さらに一般的には相性が悪い製造プロセスを要することである。多くの肥料(例えば:炭酸カリウム、硫酸アンモニウム)は、溶液から結晶化されるが、それ以外(硝酸アンモニウム、尿素)は、それらの溶融物からプリルされる。結晶化した肥料は、溶融しないか、または、非現実的な高い融解温度を有するかのいずれかである。肥料の共結晶化は、化合物が形成されるような場合にのみ機能すると予想されるが、あるいは、可溶性が最も低い肥料が結晶化し、その他の成分は、不純物として母液に拒絶されると予想される。
【0005】
追加の凝集工程を回避するために、プリル化によって混合肥料を生産する数種のアプローチが開発されてきた。プリル化の利点は、当業界周知であり、例えば以下が挙げられる:望ましい生成物サイズが高い割合であるため、再利用がほとんどなく、水分含量が少なく、従って、乾燥作業が低減され、かつ優れた球形度が得られる。プリル化によって混合肥料を生産するアプローチの1つは、USP3,820,971で示されるような肥料溶融物に完全に可溶性の成分を添加することである。この特許は、標準的な手段でプリル化を可能にするために、メタリン酸カリウムの硝酸アンモニウム溶融物への最大添加量を、溶解可能な量に限定している。プリル化を介して混合肥料を生産するその他のアプローチは、通常は溶融していない肥料を肥料溶融物に混合することであり、このアプローチは、スラリーが少量の細粒化した固体で作製される場合に成功する可能性があり、これは流れ特性が、純粋な肥料溶融物とほぼ同一と予想されるためである。それゆえに、このような溶融スラリーは、よく確立された技術でプリル可能である。しかしながら、それより大量の溶融していない材料が要求される場合、それによって生じた粘度の高い混合物を従来のプリル化システムによって流動させることが困難になる可能性がある。
【0006】
このような、溶融物中の高濃度の溶融していない成分が原因の粘性の混合物の問題を解決するために、様々なアプローチが用いられてきた。いくつかの成分系において、成分間の化学的相互作用が限定されている。限定された化学的相互作用によって起こり得る結果は、複塩、溶解性および凝固点の低下である。例えば、USP3,785,796は、尿素溶融物における硫酸アンモニウムの限定された溶解性により、70%もの高い硫酸アンモニウム配合でさえも、標準的な回転バケットのプリルヘッドでプリル可能な予想外の流体混合物が得られたことを開示している。
【0007】
しかしながら、その他のたくさんの成分系において、プリル化プロセスを複雑にする化学的相互作用がある。これらの複雑さを反応時間を最小化することによって処理する様々な方法が考案されてきた。GB1,481,038は、あらゆる有害な作用が進展する前に混合物がプリル可能になるように、加工時間(溶融物がミキサーにフィードされる時間から、プリル化装置からドロップが放出される時間までの時間)を10秒間またはそれ未満に著しく制限する簡単な概念を教示している。USP3,617,235は、プリル化の前の反応を遅くするための、より大きいサイズの固体粒子の使用を教示している。USP4,323,386は、反応することを不可能にするために、再度プリル化する直前まで総ての成分の添加を遅らせることによる、試薬の添加の管理方法を教示している。USP3,856.269は、プリル化の前に、標準的な有孔回転バケットで極めて迅速かつ十分な肥料成分の混合を提供することによって、プリル化を容易にするための混合装置を開示している。
【0008】
引用された例では有効だとしても、反応時間が限定された方法は、不利な制限を生じる。これらの方法は、極めて短い滞留時間を達成するために、組成が限定された供給材料を必要とすること、または、生産システムの一部または全体を扱う費用のためにプリル化操作に対するコストと複雑さを増す。反応時間を短縮することのその他の不利点は、望ましい特性が、肥料原料の反応中に生じる、という点にある。このような望ましい特性の利点は、反応の程度を縮小することによって除去または減少されると予想される。
【0009】
溶融スラリー中の高濃度の成分をプリル化する異なるアプローチは、スラリーの流れを押し出すプリル化器具を設計することである。スウェーデン特許第70,119号は、硝酸アンモニウム溶融物を硫酸アンモニウム固体と配合するための、垂直のスクリューを有する機械を教示している。スクリューの下部に、スクリューと固定ヘッドにより発生した圧力を、スプレーノズルの背後から注入することによって追加する。この設計もまた、分解を回避するために反応時間を最小化することを目的とする。DE2,355,660は、遠心ポンプに類似したスターラー−インペラー機械装置が組み込まれたプリルヘッドを教示しており、それによって、スラリーは中心に導入され、加圧下でプリル化ディスク円周上の穴の外に押し出される。不都合なことに、プリル穴をディスク円周に限定すると、生産速度が低くなる:それにもかかわらず、直径は約600ミリメートル(mm)(約2フィート)であり、このプリルヘッドは、10〜12トン/時間の生成物しか生産しないことが報告されている。総体的に言えば、これらの機械装置は、その製造に相当なコストを必要とする。その上、肥料スラリーの摩耗性の性質が、効率的なポンプ輸送に必要な密閉された空隙を摩耗させると予想され、それにより、顕著な維持費用がかかる。
【0010】
機械的な撹拌は、混合肥料の生産ですでに用いられている。最小限でも、混合のいくつかの形態は、原料を一緒に配合し、溶解していない固体を懸濁された状態のままにすることが必要である。先の特許は、撹拌の使用を利用しているか、または、述べている。GB1,481,038は、その反応時間の制御の使用に対する代替法として、激しい撹拌を教示している。それによれば、6分間余計に混合することが必要であると述べられており、この方法の望ましくない結果として、弱い機械的強度とアンモニアの損失に言及している。DE2,355,660は、比較として、撹拌ブレードを有する円柱形チャンバーを提供する。稼働中、この形態は、例えば、増粘、プリル穴の目詰まり、不均一な生成物、大量の不合格な目の粗い粒子、および、プリル塔で凝固しなかった偶発的な大きい凝集などのいくつもの様々な問題を生じる。
【0011】
解決すべき課題は、費用がかかる新しい器具または追加の工程を必要とすることなくずり減粘可能な混合物をプリルする方法を提供することである。本発明は、この課題を、プリルヘッドそのもので機械的に撹拌することによって混合物の粘度をずり減粘のメカニズムにより減少させるプリル化によって解決する。続いて、このようにして減粘された混合物は、純粋な肥料(例えば、硝酸アンモニウムおよび尿素)と実質的に同じ方法でプリルすることができる。この改変されたプリルヘッドは、現行のプリル塔に容易に取り付けることができる。プリルヘッドで撹拌が行われるため、化学反応による増粘に伴う困難がなく、従って、著しく滞留時間を制限する大規模な再構築が必要ない。実際に、望ましい化学反応を達成するために、システム全体で十分な滞留時間を容易に用いることができる。プリルヘッドの攪拌器は、溶融スラリー混合物を混合し剪断する時しか必要でなく、それをプリルヘッド穴を通過させて押し出さなくてもいいので、プリルヘッドに密閉された空隙は必要ないだけでなく、プリルヘッドの攪拌器の構造およびモーターを、システム中で圧力を発生させるような大きさにする必要もない。一例として、アンモニウム硫酸塩・硝酸塩(硫硝安、ASN)は、垂直の撹拌式のプリルヘッドを用いて、さらに、撹拌式の回転バケットのプリルカップを用いて、うまくプリルされている。実際には、垂直のプリルヘッドにおける200rpm(毎分回転数)の回転速度、または、回転バケットのプリルカップ内部に固定混合ブレードを簡単に取り込むことによって、ASNにとってプリル可能な粘度を達成するのに十分な剪断が提供される。本発明は、ずり減粘の挙動を示すあらゆる混合物において等しく有用であることを証明するものである。
【0012】
発明の要約
本発明は、プリル化方法であって、本方法は:溶融した第一の成分を提供する工程、該溶融した第一の成分と、少なくとも第二の成分とを混合する工程、該成分を反応させ、ずり減粘可能な混合物を形成する工程:および、該ずり減粘可能な混合物をプリルする工程、を含み、ここで、前記プリルする工程は、プリルヘッドで、上記ずり減粘可能な混合物を機械的に撹拌して、プリル化可能なように十分にずり減粘を起こさせることを含む。この方法は、容易かつ安価に現行のプリル塔に適合させることができる。加えて、本方法は、得られた有益な特性が有効に用いられるように、原料を十分に混合および反応させることができる。
【0013】
好ましい実施形態において、硫酸アンモニウムは、硝酸アンモニウム溶融物に添加され、この混合物が反応して、複塩のアンモニウム硫酸塩・硝酸塩が形成され、続いて、このようにして得られたずり減粘可能な溶融スラリーは、本発明のプロセスでプリルされる。得られたプリルは、優れた強度、球形度および貯蔵特性を有する。
【0014】
好ましい実施形態の詳細な説明
本明細書で用いられる用語「アンモニウム硫酸塩・硝酸塩」は、硫酸アンモニウムと硝酸アンモニウムとの複塩を意味する。
【0015】
本明細書で用いられる用語「プリル化」は、開放された塔において、プリルヘッドから落下する液滴として凝固した固体粒子が形成されることを意味する。プリル化は、ほぼ完全に、または完全に揮発性溶媒を含まないという点で、噴霧乾燥と区別される。プリルヘッドは、プリル塔の頂上にある装置であり、ここで、溶融した材料が、プリルを製造するためのストリームに分けられる。
【0016】
本明細書で用いられる用語「ずり減粘」は、剪断速度が増すにつれて粘度が減少する現象を意味する。総ての混合物がずり減粘を示すわけではなく、混合物が、この挙動を有するのか、有さないのかを予測することはできない。
【0017】
本明細書で用いられる用語「ずり減粘可能な混合物」とは、溶融した溶融物である第一の成分と、高粘性を有し、ずり減粘の挙動を示す混合物を得るための少なくとも第二の成分を有する、少なくとも二つの成分の系を意味する。「ずり減粘可能な混合物」は、溶融したスラリーを含むことができ、そのスラリーでは、限定された溶融可能性及び/または限定された溶解性を有する溶融した混合物が固体粒子を含んでいる。
【0018】
図1のフローチャートで示されるように、本発明は、ずり減粘可能な混合物のプリル化方法であって、本方法の工程は:溶融した第一の成分15を提供する工程、少なくとも第二の成分17を溶融した成分に混合する工程、該成分を反応させ、ずり減粘可能な混合物19を生産する工程;および、ずり減粘可能な混合物21をプリルする工程であり、ここで、プリルヘッド装置は、ずり減粘可能な混合物をずり減粘するために、プリルヘッド中で、機械的に撹拌することを含む。図2は、等モルの硝酸アンモニウム(AN)/硫酸アンモニウム(AS)溶融スラリーに関するレオロジーのデータを示す。極めて低い剪断の頻度では、混合物の粘度は極めて高い。剪断の頻度が増加するにつれて、劇的な粘度の減少が起こる。本発明の方法は、このずり減粘現象の利点が利用されるようにプリル化方法を改変し、既知のプリル化方法を用いて粘性溶液をプリルすることに関連する問題を克服している。
【0019】
本発明の重要点は、プリルヘッドに撹拌を導入して、高粘性の溶融した混合物にずり減粘を導入することにある。このずり減粘を起こさせる撹拌によって、プリル穴を通過する流れが、固定プリルヘッド中の液体深さによる静圧または回転バケットで発生した遠心力の結果として起こるのに十分な程度に粘度が減少する。撹拌式のプリルヘッドのあらゆる実施形態におけるずり減粘に必要な撹拌の程度は、プリルさせようとする混合物のずり減粘の挙動に依存する。撹拌の程度は、経験に基づく試験によって容易に決定することができる。
【0020】
プリルヘッドでの撹拌は、多数の方法で導入することができる。好ましくは、プリルヘッド中の液体の実質的に総ての体積が攪拌器でかき混ぜられる撹拌装置である。プリルヘッドの一実施形態は、固定ブレードがずり減粘を起こさせる撹拌が導入されるように配置された回転バケットである。図3は、上部が開いた回転バケットのプリルヘッド23の中心部を通った垂直断面図を示し、右下の部分に、プリル穴25を有する回転バケットの表面を示す。回転バケット23は、ドライブシャフトおよび支持メカニズム27によって固定されて、モーター(示さず)に連結されている。固定ブレード29は、バケット内に配置されており、そして、アーム手段31によって外部的に固定されている。第二のプリルヘッドの実施形態は、ずり減粘を起こさせる撹拌を導入するための回転スクレーパーおよびブレードを内包する固定プリルヘッドである。図4は、プリル穴(示さず)を有するプリルプレート35を有する上部が開いた固定プリルヘッド33の中心部を通った垂直断面図を示す。プリルヘッド33の内部には、スクレーパー39およびブレード41を有する回転部品37がある。小さいプリルのほうが好まれる業界でそのようなプリルが望ましい場合、プリルプレート35でより小さいプリル穴を使用することが必要であり、ここで、ブレード41は、プレートをワイピングするために、プリルプレート35の面の上に空隙なく配置される。このような実施形態は、本明細書において、「表面ワイピングブレード」を有する、と定義される。
【0021】
本発明のプロセスで、必要なずり減粘を起こさせるために、プリルヘッド中の撹拌が維持される限り、スプレーヘッド(加圧式のノズルアセンブリ)を用いてもよい。圧力を発生させるために、開放された垂直のプリルカップの上部をカバーと軸封で閉じてもよいし、さらに、システム(ポンプ、ヘッドタンクなど)によって、密閉された撹拌式プリルヘッドの内部圧力を発生させてもよい。
【0022】
撹拌式のプリルヘッドの総ての実施形態において、プリル穴は、下に向かうストリームおよび/またはプリルが互いに接触して合体しないように、互いに十分に離れて設置されるべきである。プリル穴の直径は、当業界において通常実施されるあらゆるサイズが可能であり、本発明のプロセスおよび装置において有用なのは、約2.0mm〜約4.0mmのプリル穴の直径である。撹拌式のプリルヘッドには、2.0mm未満のより小さいプリル穴の直径を用いてもよく、プリルプレートをワイピングするための、表面ワイピングブレードを利用してもよい。
【0023】
本発明の撹拌式のプリルヘッドは、あらゆる既知のプリル化装置に容易に包含することができる。同様に、本発明の方法は、プリルヘッドが撹拌に適するように改変されたあらゆる既知のプリル化装置で用ることもできる。プリル化のために溶融したずり減粘可能な混合物をプリルヘッドに移送するあらゆる既知の方法が使用可能である。
【0024】
プリルヘッド中に導入されれば、ずり減粘された混合物をプリルヘッド中の穴に通過させるのに、異常な圧力を撹拌式のプリルヘッド中で発生させる必要はない。有利には、本発明の方法は、プリルヘッド穴を通過する流れをつくるのに静圧の使用が可能であるが、本発明の方法および装置は、静圧の使用に限定されない。静圧は、プリルヘッドそれ自身において、または、ヘッドタンクの使用を介して、所定の液体深さを維持することにより発生させてもよい。ほとんどのプリルシステムは、小さいタンク、ヘッドタンクを含み、これらは、アキュムレーターおよびプリルヘッドへの供給装置としてプリルヘッドの上に位置する。均一なプリルサイズは、プリル穴を通過する安定した流れを得るために安定した圧力を必要とする。ポンプを締めて安定した圧力を維持しようとするよりも、液体をヘッドタンクにポンプ輸送し、プリルヘッド流出口より上の固定の液体深さを維持し、静圧(または「ヘッド」)を作るほうがより簡単である。この一定のレベルは、ヘッドタンクを液面調節下に置くこと(原料に戻す排液ラインを用いて)、または、原料に戻す固定のオーバーフローラインを提供することのいずれかによって達成することができる。プリルヘッドそれ自身で液体深さを維持するために類似のメカニズムを用いてもよいが、本発明の方法および装置は、液体深さの結果生じた静圧によるプリルヘッド中の流れに限定されない。
【0025】
本発明の方法において、一般的に、ずり減粘可能な混合物が得られるあらゆる成分の混合物を用いることができる。溶融した第一の成分として、硝酸アンモニウムがもっとも好ましい。その他の適切な溶融した第一の成分としては、尿素、および、リン酸アンモニウムが挙げられる。適切な第二の成分は、溶融した第一の成分に添加したら粘性のずり減粘可能な混合物が生じるあらゆる材料を含んでいてもよい。第二の成分は、溶融した第一の成分に、完全に溶融および/または溶解できるものでもよいし、完全でなくてもよい。第二の成分として、硫酸アンモニウムがもっとも好ましい。有用な硫酸アンモニウムは、ハネウェル・インターナショナル社(Honeywell International Inc.,ホープウェル,バージニア州,米国)から市販されている。その他の適切な第二の成分としては、塩化カリウムが挙げられる。プリル化に悪い影響を与えない限り、ずり減粘可能な混合物に、必要に応じてその他の材料を添加してもよい。例えば、可能性のある第三の成分としては、微量栄養素、例えば硫酸鉄、硫酸マグネシウム、ホウ素塩、および、固化防止剤が挙げられる。
【0026】
一般的に、上記混合物のための混合時間は、所定の混合物に望ましい程度に、または、有益な特性を生じさせるのに必要な程度に、長くてもよいし、または、短くてもよい。硝酸アンモニウムおよび硫酸アンモニウムの混合物の場合、複塩が生成する反応を起こさせるには、約10〜15分間の混合時間が望ましい。反応時間は、部分的に、硫酸アンモニウムのサイズに依存する。複塩を形成するためには、より大きいサイズの硫酸アンモニウムが添加される場合、より長い混合時間を必要とし、それに対して、より小さいサイズの硫酸アンモニウムが添加される場合、より短い混合時間を必要とする。細かく粉砕した硫酸アンモニウムは、処理がより簡単であり、より迅速な反応時間を提供し、プリル穴が目詰まりする危険が最小であるため、有利である。
【0027】
上記反応の際の温度の制限は、用いられる成分によって決定される。分解または爆燃の問題を起こすことなく、第一の成分が溶融する温度範囲を用いることが必要である。硝酸アンモニウムを用いる場合、最低の温度は約180℃(ASNの融点)であり、安全な最高の適切な取り扱い温度は、約200℃である。反応の熱が重要な混合物においては、溶融した第一の成分への添加前に第二の成分を予熱することが有用であり、一般的には、熱伝達によることが望ましい。
【0028】
一般的に、プリルするための混合物への水の添加は、過量の溶媒を除去する必要性をなくプリルが凝固可能なように最小化される。水の添加は、溶融を促進し、硝酸アンモニウムの発煙を抑制する。溶融した混合物への水の添加は、約2.0重量パーセント(重量%)以下であることが好ましく、好ましくは約1.0重量%未満またはそれと同等であり、より好ましくは約0.5重量%未満またはそれと同等である。約2重量%〜約6重量%の水の添加が可能だが、プリルの強度に有害な影響を与え、プリルを乾燥させる必要がある。
【0029】
ずり減粘可能な混合物の成分における化学量論の限定は、具体的な成分の化学的性質によって決定される。本発明の実施例において、複塩のアンモニウム硫酸塩・硝酸塩を生産するために、等モルのANおよびASの混合物が用いられる。その結果は、無視できるほどにわずかな未反応の硝酸アンモニウムしか存在しない生成物であり、アンモニウム硫酸塩・硝酸塩に懸濁された過量の未反応の硫酸アンモニウムの均一な混合物である。その他の割合を用いて複塩を生産してもよい。
【0030】
本発明のプロセスの利点の1つは、生成物において有利な特性を生じさせるのに十分な反応時間を可能にすることである。例えば、純粋な硝酸アンモニウムのプリルは、以下のようないくつかの理由で問題を含む;1)その吸湿性のために貯蔵の問題が起こる:2)32℃での相転位により、温度の変動によるプリルの分裂(「粒状化(sugaring)」)を引き起こす可能性がある:および、3)硝酸アンモニウムは、酸化剤である。それに対して、本発明のプロセスにおいて硝酸アンモニウムおよび硫酸アンモニウムを用いることにより、無視できるほどにわずかな未反応の硝酸アンモニウムしか含まない複塩のASN生成物が得られる。この生成物は、以下のような多くの有利な特性を有する;1)吸湿性の問題の減少;2)「粒状化」がないこと:および、3)ASNは酸化剤ではないこと。
【0031】
ANおよびASを用いた本発明のプロセスのASN生成物は、それ単独で、肥料として有用である。加えて、ASNを尿素と共に配合することができるため、肥料成分が異なる比率のその他の肥料を製造することができる。これは、ANは尿素と混合すると共融材料を形成するため、純粋なANに対するASNの利点である。また、このようにして得られたASNプリルは、同一出願人により1999年2月12日付けで出願された仮出願第60/119822号に係る方法を用いて凝集させるのに十分な酸性度も有する。
【0032】
試験方法
プリルの破砕強さを、顆粒を押し砕くのにアマテック社(Amatek.Inc.)のカデット・フォース・ゲージ(Cadet Force Gage)を用いることによって測定した。報告する破砕強さは、数個のプリルの平均である。
【0033】
直径25mmを有する振動ディスクを用いて、さらに1.8mmのギャップを用いて、粘度対剪断の頻度(shear frequency)のデータを得た。温度は180℃とし、20%のひずみ振幅を用いた。
【0034】
実施例
比較例A;のこ歯状の分配器(saw tooth distributor)を用いたプリル化
のこ歯状の分配器を用いた材料のプリル化は、一般的に、汚染や目詰まりを起こしやすいシステムである。この装置の開放された上部の性質のために、溶融スラリー中の過大な固体に起因する可能性があるプラグゲージが入りにくく、そして、のこ歯を有するプリル化装置のクリーニングは簡単に達成される。のこ歯状の分配器を模擬実験するために設計された装置によって、アンモニウム硫酸塩・硝酸塩の溶融スラリーのプリルを試みた。332.3グラム(g)のAS、159.7gのAN、および、8.0gの水を用いて、ASNの溶融スラリーを製造した。次に、この溶融物スラリーを、ストリームを得るために流れを滑らかにし、まとめるためのロッド(直径1/8インチ、長さ2.75インチ)を備えた、ノッチ流し込み口(notch pouring spout)を有するステンレス鋼容器(直径3.5インチ、高さ6インチ)に手動で移した。次に、この容器を傾けて、流れを、ノッチから外に、さらにロッドの下方に誘導した。しかしながら、高粘性のために、ASN溶融スラリーは、ストリームを形成するためのロッドの下方に滑らかに流れなかった。むしろASNは、大きな凝集性のかたまり状で、容器からあふれた。従って、のこ歯状の分配器を用いては、溶融スラリーが高粘性で滑らかな流れが得られなかったためにプリルを得ることができなかった。
【0035】
比較例B:加圧噴霧ヘッド(pressurized spray head)を用いたプリル化
加圧噴霧ヘッドを用いて高粘度のASN溶融物スラリーがプリルできるかどうかを試験するため、一端に取り外し可能なプリルプレート、および、もう一端に圧縮空気のためのホース結合部を有する、直径2と5/8インチ、長さ10.5インチのチャンバーを製造した。407.6gのAS、188.6gのAN、および、3.8gの水から、ASN溶融スラリーを製造した。加圧噴霧ヘッドを190℃に予熱した。この装置に、溶融スラリーを充填し、空気のホースを取り付け、加圧して、プリルプレートを通過する流れを発生させた。このプリルプレートは、4個の直径2.0mmのプリル穴を有していた。次に、スプレーヘッドを、空気で20psig(ゲージpsi)に加圧したところ、穴の外への流れが観察された。しかしながら、このような比較的高い圧力では、流れは穴から吹き出しやすく、その結果、サイズが劣ったプリル、および、容認し難い程低い1.38ポンド(lb−f)の破砕強さが生じる。
【0036】
また、加圧噴霧ヘッド中、より小さい穴のサイズ(穴の直径は1.0mm、および、1.5mm)を有するプリルプレート、および、より高い圧力(〜120psig)を用いてプリルする試みも不成功だった。結果は、一様に許容できないものであった。
【0037】
本発明の実施例1:固定ブレード(stationary blade)を有する回転バケット(rotating bucket)を用いたプリル化
228gの硝酸アンモニウムを溶融させ、約190℃に加熱した372gの細粒化した硫酸アンモニウム(モル比1:1)を加えることによって、600グラムのASNを製造した。アライドシグナル社(AlliedSignal Inc.)製の硫酸アンモニウムを用いた。この混合物には水を添加しなかった。得られた混合物を、207℃の温度に達し、溶融スラリーが完全に混合されて流動するまで、加熱しながら混合した。次に、この溶融スラリーを、手動で、直径3.5インチ(89mm)×高さ6.0インチ(152mm)で4つの直径2.5mmのプリル穴を備えた回転バケットのプリルヘッドに注いだ。次に、このバケットを、その中心軸で基準速度500rpmで回転させ、固定された攪拌器のブレードを、プリルヘッド中の溶融物に挿入した(図3で説明されている通り)。2〜3秒回転させたところ、遠心力によって溶融スラリーのストリームが穴から流れ出て、プリルが形成された。プリルは、約35フィート垂直落下し、解析のために回収された。低い水分含量(約0.05重量%)で、平均破砕強さが7.62lb−fのうまく形成されたプリルが、良好な量で回収された。
【0038】
本発明の実施例2:回転ブレード(rotating blade)およびスクレーパー(scrapper)を有する固定プリルヘッド(stationary prill head)を用いた垂直プリル化
30.4ポンド(13.8キログラム)の硝酸アンモニウムを溶融させ、49.6ポンド(22.5キログラム)の細粒化した(Tyler−40)加熱した硫酸アンモニウム中に混合することによって、80ポンド(36.3キログラム)のアンモニウム硫酸塩・硝酸塩を製造した。150℃に設定された流動床ヒーターを用いてASを加熱した。アライドシグナル社製の硫酸アンモニウムを用いた。発煙の抑制を補助するために少量の水(1.1ポンド:500グラム)を添加した。この溶融スラリーを混合し、数分間反応させ、181℃に加熱した。内径6インチ(152mm)、および、液体深さ16.5インチ(419mm)の、上部が開放された垂直のプリルヘッド(図4で図示されたように)に、10個の直径2.5mmの穴を有するプリルプレートを備え付けた。このプリルヘッドは、ジャケット付き容器であり、かきまぜを起こすための回転ブレードを有していた。プリルヘッドの攪拌器を回転速度200rpmにして、ASN溶融スラリーを、反応装置から直接プリルカップの上部の開口部にポンプ輸送した。次に、溶融スラリーは、それ自身の静圧下で、全ての10個のプリル穴を通過させて、354ポンド/時間(167キログラム/時間)の合計速度で流れた。溶融スラリーの10個の滑らかなうまく形成されたストリームが観察された。
【0039】
比較例C:より小さいプリル穴を用いたプリル化
図4で図示されたタイプの直径4インチのプリルカップに2個の直径1.5mmのプリル穴を備え付け、攪拌器のブレードを、プリルプレートの内部にわずかな空隙が生じるように配置した。Tyler−48のサイズに細粒化した600gのASを190℃に加熱し、167.7gの溶融したANと混合した。この混合物を30分間反応させ、次に、200℃に予熱したプリルカップに移した。攪拌器を600rpmで運転させて、プリルカップを密閉し、窒素で圧力を加え、流れを穴の外へ誘導することを試みた。しかしながら、50psiもの圧力でも流れは達成されなかった。
【0040】
本発明の実施例3:より小さいプリル穴、および、ワイピングされたプレートの攪拌器(wiped-plate agitator)を用いたプリル化
比較例Cで用いたのと同じプリルカップを用いて、下部のブレードとプリルプレートの面の内部との間に空隙ができないように攪拌器を付け直した。比較例Cと同様にしてASNを製造し、改変されたプリルカップに移した。ワイピングされたプリルプレートを用いて、ASN溶融スラリーは、それ自身の静圧下でプリル穴の外に流れ(液体深さ約5インチ)、滑らかなストリームを形成した。約2psiまで窒素圧を加えたところ、流速が増加することが観察された。2psiを超える圧力では、ストリームが滑らかに流れなくなり、噴霧が始まり、さらにより小さい不規則な粒子が生じた。

【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は本発明の方法の概略図を示す。
【図2】図2は硝酸アンモニウムおよび硫酸アンモニウムの等モルの混合物の溶融スラリーのずり減粘の挙動を示す。
【図3】図3は本発明の実施において有用なプリルヘッドの設計を示す。
【図4】図4は本発明の実施において有用な別のプリルヘッドの設計を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ずり減粘可能な混合物をプリルするプリル化方法であって、
a)溶融した第一の成分を提供する工程:
b)前記溶融した第一の成分と、少なくとも1種の第二の成分とを混合する工程:
c)前記成分を反応させ、ずり減粘可能な混合物を形成する工程:および、
d)前記ずり減粘可能な混合物をプリルする工程、
を含み、ここで、前記プリルする工程は、前記ずり減粘可能な混合物をプリルヘッドで機械的に撹拌して、プリル化可能なように十分にずり減粘を起こさせることを含む、前記方法。
【請求項2】
前記ずり減粘可能な混合物は、溶融スラリーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一の成分は、硝酸アンモニウムであり、前記第二の成分は、硫酸アンモニウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ずり減粘可能な混合物は、約2重量パーセント以下の水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ずり減粘可能な混合物は、微量栄養素をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記プリルヘッドは、固定ブレードを供えた回転バケット、回転スクレーパーおよびブレードを供えた固定バケット、ならびに、撹拌式、加圧式のノズルアセンブリのいずれか1種である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
小さいプリル穴を通過してずり減粘可能な混合物をプリルするプリル化方法であって、
a)溶融した第一の成分を提供する工程;
b)前記溶融した第一の成分と、少なくとも1種の第二の成分とを混合する工程:
c)前記成分を反応させ、ずり減粘可能な混合物を形成する工程:および、
d)前記ずり減粘可能な混合物をプリルする工程、
を含み、ここで、前記プリルする工程は、前記ずり減粘可能な混合物をプリルヘッドで機械的に撹拌して、十分にずり減粘を起こさせること、および、プリル化可能なように表面ワイピングブレードを提供することを含む、前記方法。
【請求項8】
前記第一の成分は、硝酸アンモニウムであり、前記第二の成分は、硫酸アンモニウムである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ずり減粘可能な混合物は、約2重量パーセント以下の水を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ずり減粘可能な混合物は、微量栄養素をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
ずり減粘可能な混合物を機械的に撹拌し、ずり減粘するための手段を有するプリルヘッドを含むプリル化装置。
【請求項12】
前記プリルヘッドは、固定ブレードを供えた回転バケット、回転スクレーパーおよびブレードを供えた固定バケット、ならびに、撹拌式、加圧式のノズルアセンブリのいずれか1種である、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記機械的に撹拌する手段は、表面ワイピングブレードをさらに含む、請求項11に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−73586(P2008−73586A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−253829(P2006−253829)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】